特許第6794543号(P6794543)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6794543変性反応性樹脂組成物、およびプロップ剤をコーティングするためのそれらの使用
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794543
(24)【登録日】2020年11月13日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】変性反応性樹脂組成物、およびプロップ剤をコーティングするためのそれらの使用
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/02 20060101AFI20201119BHJP
   C08L 83/04 20060101ALI20201119BHJP
   C09K 8/16 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20201119BHJP
   C09D 183/04 20060101ALI20201119BHJP
   C08L 61/04 20060101ALN20201119BHJP
   C09D 161/04 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   C08L101/02
   C08L83/04
   C09K8/16
   C09D201/00
   C09D183/04
   !C08L61/04
   !C09D161/04
【請求項の数】11
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-523087(P2019-523087)
(86)(22)【出願日】2017年6月29日
(65)【公表番号】特表2020-502296(P2020-502296A)
(43)【公表日】2020年1月23日
(86)【国際出願番号】EP2017066220
(87)【国際公開番号】WO2018082818
(87)【国際公開日】20180511
【審査請求日】2019年6月19日
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2016/076383
(32)【優先日】2016年11月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】390008969
【氏名又は名称】ワッカー ケミー アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Wacker Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100120617
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 真理
(74)【代理人】
【識別番号】100152423
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 一真
(72)【発明者】
【氏名】セバスティアン、クネール
(72)【発明者】
【氏名】ダニエル、カリメント
(72)【発明者】
【氏名】アルント、シュロッサー
【審査官】 幸田 俊希
(56)【参考文献】
【文献】 特開平07−053870(JP,A)
【文献】 特表2016−502572(JP,A)
【文献】 特開平05−310887(JP,A)
【文献】 特開平06−298897(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2012/0279703(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2015/0322335(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/04
C08L 61/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)92重量%〜99.5重量%の、少なくとも1種の反応性樹脂と、
(B)0.5重量%〜8重量%の、式(Ia)、(Ib)、(VII)および(Id):
【化1】
(式中、R17は、同一であるかまたは独立して異なる、官能基を有するかもしくは有さない一価の置換もしくは非置換の有機基、−OH基、または水素基である)
の単位からなる少なくとも1種のシリコーン樹脂と、
を含んでなり、
但し、
(B)において、少なくとも20mol%の前記式(Ia)もしくは(Ib)の単位、または前記2種の単位の混合物が存在すること、
(B)において、最大50mol%の前記式(Ib)の単位が存在すること、
(B)において、R17として、アルコキシ基が少なくとも5重量%の範囲で存在すること
を条件とする反応性樹脂組成物の、プロパントをコーティングするための使用。
【請求項2】
(B)が、少なくとも8.5重量%のアルコキシ基を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の使用
【請求項3】
すべてのR17基のうちの少なくとも10mol%が、独立して、同一のまたは異なる、少なくとも3個の炭素原子を有する一価の置換または非置換有機基であることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用
【請求項4】
すべてのR17基のうちの少なくとも1mol%が、独立して、有機官能性基およびケイ素結合水素から選択されることを特徴とする、請求項1または2に記載の使用
【請求項5】
同時に、さらなるR17基として、別の少なくとも1mol%が、独立して、有機官能性基およびケイ素結合水素から選択されることを特徴とする、請求項3に記載の使用
【請求項6】
コーティングされたプロパントの製造方法であって、
(A)92重量%〜99.5重量%の、少なくとも1種の反応性樹脂と、
(B)0.5重量%〜8重量%の、式(Ia)、(Ib)、(VII)および(Id):
【化2】
(式中、R17は、同一であるかまたは独立して異なる、官能基を有するかもしくは有さない一価の置換もしくは非置換の有機基、−OH基、または水素基である)
の単位からなる少なくとも1種のシリコーン樹脂と、
を含んでなり、
但し、
(B)において、少なくとも20mol%の前記式(Ia)もしくは(Ib)の単位、または前記2種の単位の混合物が存在すること、
(B)において、最大50mol%の前記式(Ib)の単位が存在すること、
(B)において、R17として、アルコキシ基が少なくとも5重量%の範囲で存在すること
を条件とする反応性樹脂組成物を、自由流動形態(すなわち、20℃で既に自由流動性であるか、または250℃までの加熱により溶融し、それゆえ自由流動性であるか、または好適な溶媒に溶解され、それゆえ自由流動性である形態)で、少なくとも1つの硬化剤(C)と一緒にまたは無しで、および少なくとも1つの添加剤(D)と一緒にまたは無しで、前記プロパントに塗布し、次いで硬化させることを特徴とする、方法。
【請求項7】
(B)が、少なくとも8.5重量%のアルコキシ基を含んでなることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
すべてのR17基のうちの少なくとも10mol%が、独立して、同一のまたは異なる、少なくとも3個の炭素原子を有する一価の置換または非置換有機基であることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項9】
すべてのR17基のうちの少なくとも1mol%が、独立して、有機官能性基およびケイ素結合水素から選択されることを特徴とする、請求項6または7に記載の方法。
【請求項10】
同時に、さらなるR17基として、別の少なくとも1mol%が、独立して、有機官能性基およびケイ素結合水素から選択されることを特徴とする、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
コーティングされたプロパントの製造方法であって、
i)(A)92重量%〜99.5重量%の、少なくとも1種の反応性樹脂と、
(B)0.5重量%〜8重量%の、式(Ia)、(Ib)、(VII)および(Id):
(式中、R17は、同一であるかまたは独立して異なる、官能基を有するかもしくは有さない一価の置換もしくは非置換の有機基、−OH基、または水素基である)
の単位からなる少なくとも1種のシリコーン樹脂と、
を含んでなり、
但し、
(B)において、少なくとも20mol%の前記式(Ia)もしくは(Ib)の単位、または前記2種の単位の混合物が存在すること、
(B)において、最大50mol%の前記式(Ib)の単位が存在すること、
(B)において、R17として、アルコキシ基が少なくとも5重量%の範囲で存在すること
を条件とする反応性樹脂組成物の製造が、
少なくとも1種の(B)と、
少なくとも1種の20℃で自由流動性である(A)、250℃まで予備加熱することによって自由流動性になっている(A)、または好適な溶媒に溶かされている(A)と、
少なくとも1種のプロパントとを、
少なくとも1種の硬化剤(C)とともにまたはそれ無しで、
少なくとも1種の添加物(D)とともにまたはそれ無しで
混合することによって、前記プロパントの存在下において現場プロセスで行われ、
ii)その後、初めて硬化が行われる
ことを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、変性反応性樹脂組成物、および、水圧破砕法(=フラッキング法)に使用されるプロパント材料用のコーティング組成物としての、それらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
フラッキング法は、デポジットボックス(deposit box)の透水性を増加させる目的で、地中深くにある鉱床(deposit)の岩石に、割れを生じさせ、広げ、かつ安定化させる方法であり、鉱物油および天然ガスの製造に用いられる。その結果、鉱床中に存在するガスや液体を、より簡単にかつ安定して井へと流動させ、製造することができる。
【0003】
生じた割れは、プロパントを用いて、開いた状態に維持しなければならない。現在利用可能な、コーティングされた、またはコーティングされていないプロパントは、脆く、深い深度での製造に必要な圧縮強度を持たない。高圧下でプロパントが破砕すると微粒子が放出され、それらが割れを塞ぎ、油またはガスの製造率を低下させる。
【0004】
従来技術により得られるコーティングされたプロパントは、コーティングさていないプロパントと比較して、改善された安定性を有する。しかしながら、得られるコーティング自体が非常に脆く、その上破砕または剥離する傾向があるため、コーティングの効果、例えば有機樹脂によるコーティングの効果は、限定的である。
【0005】
国際公開第2008088449 A2号は、そのような粒子のコーティングの脆さを低減する手段を開示しており、当該手段では、熱硬化性反応性樹脂、例えばエポキシ樹脂を、ブロックコポリマーおよび接着プロモーターと混合することにより、コーティングの耐衝撃性を改善している。この手段には、2種の添加剤を使用することに加え、靱性改良剤が、調製が難しい高価なブロックコポリマーであるという、さらなる不利益もある。
【0006】
米国特許第8852682 B2号は、互いに合わさった複数の部分コーティングを有する、プロパント材料用の粒子を開示している。開示される技術では、個々のプロセスの工程の間に、充填剤を明確に計量供給する。不利な点は、複雑なプロセスである。例えば、強化用の充填剤としてヒュームドシリカを含む、フェノール樹脂などの各種樹脂が、コーティング用に使用される。
【0007】
米国特許第5422183 A号は、同様に樹脂からなる二層のコーティングを有する、フラッキング法においてプロパント材料として用いるための粒子を開示している。例えば、フェノール樹脂がコーティングに使用され、その際、ヒュームドシリカが同様に充填剤として使用される。この充填剤は、第一のコーティング工程の後に、個々の層の間に導入される。両開示の技術における不利益は、高価で、加えて制御が難しい、非常に複雑な多段のプロセスである。
【0008】
米国特許出願公開第20140124200 A号は、有機樹脂とシリコーン樹脂との化学結合により製造されるハイブリッド材料の、プロパント材料のコーティングのための使用を開示している。この技術の不利な点は、化学変性のための追加の複雑なプロセス、および2種の分岐ポリマーを反応させる場合の、品質制御の難しさである。
【0009】
米国特許出願公開第2012088699 A号は、1:0.1〜10の比率の、少なくとも2種の親油性樹脂および疎水性樹脂でコーティングされた粒子を開示しており、ここでは特にシリコーン樹脂が使用され得る。この粒子の不利な点は、シリコーン樹脂の使用量が、少なくとも10重量%と大変多く、経済的に魅力が無いことである。
【0010】
また、先行技術における一般的な知識は、それ自体は既に比較的脆性が低い反応性樹脂、例えばエポキシ樹脂を使用する、コーティングの脆性の低減をもたらす方法である。国際公開第2010060861A1号には、例えば、硬化熱硬化性樹脂として破壊靭性および耐衝撃性の化学的性質の改善を示す均質な反応樹脂が記載されている。この場合、例えば、少なくとも1種のオルガノポリシロキサンが、分散剤として機能するシリコーンオルガノコポリマーを用いて未硬化エポキシ樹脂中に均一に分布している。同様に、Koenczoel L.ら(KONCZOl L. et al; ISSN: 2021-8995; DOI: 10.1002/APP.1994.070540612)は、エポキシ樹脂の衝撃改質のためのポリシロキサン−ポリカプロラクトンブロック共重合体の使用を教示している。
【0011】
しかし先行技術は、エポキシ樹脂の場合のように、反応性樹脂それ自体が、ある固有の靭性を有する場合にのみ、この外部からの衝撃改質が機能することを教示している。その方法は、非常に脆い、ガラス質の反応性樹脂には適さない(Li Zhongatao; doctoral thesis from 2000, entitled: "High fracture toughness and high modules silicone resins", published at http://hdl.handle.net/1721.1/8301)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、安価なプロパント用コーティング組成物、プロパントをコーティングするための方法、およびコーティングされたプロパントを提供することである。これらのプロパントは、コーティングの破砕または剥離が生じないようにするため、コーティングおよび硬化後に、必要な硬度および圧縮強さを有すると同時に弾性を示すべきである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の課題は、驚くべきことに、本発明の変性反応性樹脂組成物により達成される。
【0014】
本発明の反応性樹脂組成物は、
(A)92重量%〜99.5重量%の、少なくとも1種の反応性樹脂と、
(B)0.5重量%〜8重量%の、式(Ia)、(Ib)、(VII)および(Id):
【化1】
(式中、R17は、同一であるかまたは独立して異なる、官能基を有するかもしくは有さない一価の置換もしくは非置換の有機基、−OH基、または水素基である)
の単位からなる少なくとも1種のシリコーン樹脂と、
を含んでなり、
但し、
(B)において、少なくとも20mol%の前記式(Ia)もしくは(Ib)の単位、または前記2種の単位の混合物が存在すること、
(B)において、最大50mol%の前記式(Ib)の単位が存在すること、
(B)において、R17として、アルコキシ基が少なくとも5重量%の範囲で存在すること
を条件とする。
【発明を実施するための形態】
【0015】
構成成分(A)
本発明の反応性樹脂組成物は、反応性樹脂(A)を1種のみ含んでなることが好ましい。
【0016】
反応性樹脂(A)は、周囲温度にて、堅固な、非粘着性のコーティングを形成するものでなければいけない。これは、コーティングされた粒子が、通常の保管条件下で凝集しないよう、自由流動性を維持するために必要である。前記コーティングは、ボーリング孔内での条件下で、本質的に、ほとんどまたは全く架橋せずに硬化し得る。前記コーティングを、一部のみ硬化させてもよく、またはボーリング孔内の条件下で、共有結合による架橋が生じるように、他の反応性基とともに提供してもよい。
【0017】
本発明に係る好適な反応性樹脂(A)はすべて、充分な数の、硬化反応に好適な反応性基を有する、ポリマーまたはオリゴマーの有機化合物である。熱硬化性樹脂に加工し得る、従来技術において公知のすべての反応性樹脂が、それぞれの反応性樹脂の硬化において進行するそれぞれの架橋メカニズムに関わらず、好適である。原則として、付加、縮合、またはフリーラジカル重合による、架橋メカニズムの性質に応じて、反応性樹脂(A)を3つの群に分けることができる。
【0018】
第一の群である、重付加−架橋型反応性樹脂(A)からは、1つまたは複数のエポキシ樹脂、ウレタン樹脂および/または風乾アルキッド樹脂を出発材料として選択することが好ましい。エポキシ樹脂およびウレタン樹脂は、一般的に、ヒドロキシル基、アミノ基、カルボキシル基またはカルボン酸無水物基を含む、化学量論量の硬化剤の添加により架橋され、硬化反応は、前記樹脂中のオキシラン基またはイソシアネート基が、前記硬化剤中の対応する基に付加することにより行われる。エポキシ樹脂の場合は、オキシラン基自体の重付加により、触媒硬化も可能である。風乾アルキッド樹脂は、大気中の酸素による自動酸化を介して架橋する。付加硬化型のシリコーン樹脂もまた公知であり、さらなる遊離シランは存在しないとう条件を満たすものが好ましい。
【0019】
重縮合により架橋する、反応性樹脂(A)の第二の群の例は、好ましくはアルデヒド類の縮合物、例えばホルムアルデヒドと、アミン基を含む脂肪族もしくは芳香族の化合物、例えば尿素もしくはメラミンとの縮合物、またはホルムアルデヒドと、フェノール、レゾルシノール、クレゾールなどの芳香族化合物との縮合物であり、ならびに純粋な樹脂、飽和ポリエステル樹脂、および縮合硬化型シリコーン樹脂も挙げられる。硬化は通常、温度を上げ、水、低分子量のアルコールまたは、他の低分子量化合物を除去することにより生じる。
【0020】
第三の群である、重合−架橋型反応性樹脂からの、本発明に従って変性される反応性樹脂の好ましい出発樹脂は、アクリル酸および/もしくはメタアクリル酸またはそのエステルの、1つまたは複数のホモポリマーまたはコポリマーであり、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂および/またはマレイミド樹脂もまた好ましい。これらの樹脂は重合可能な二重結合を有し、それらの重合または共重合により、三次元の架橋が生じる。使用される開始剤は、例えば過酸化物、ペルオキソ化合物、またはアゾ基を含む化合物などの、フリーラジカルを形成可能な化合物である。
【0021】
また、UVまたは電子ビームなどの高エネルギー放射線により、架橋反応を開始させることも可能である。
【0022】
前述の反応性樹脂(A)だけでなく、熱硬化性樹脂の製造に好適なすべての他の樹脂を、本発明に従って提案される方法で変性することができ、その結果、架橋および硬化後に、熱硬化性樹脂の特徴である他の必須の特性、例えば強度、耐熱変形性および耐薬品性などを、本質的に変わらない状態で保持しつつ、顕著に改善された破壊抵抗および耐衝撃性を有する熱硬化性樹脂が得られる。
【0023】
好ましい反応性樹脂(A)は、フェノール−ホルムアルデヒド樹脂である。これらの反応性樹脂(A)には、レゾール型の熱硬化性フェノール樹脂およびフェノール−ノボラック樹脂が含まれ、これらの樹脂は、触媒およびホルムアルデヒドの添加により熱反応性にすることができる。反応性樹脂(A)を、プロパント粒子のコーティング中に完全に硬化させることもでき、または一部のみ硬化させることもできる。一部のみ硬化したコーティングを有するプロパントは、当該プロパントが、フラッキング中、より深い層に導入されるまで硬化しない。
【0024】
特に好ましい反応性樹脂(A)は、フェノール−ノボラック樹脂である。フェノール−ノボラック樹脂は、例えば、米国、シボイガンの、プラスチックエンジニアリング社(Plastics Engineering Company)から、Resin 14772の名称で入手可能である。そのような反応性樹脂を使用する場合、混合物に架橋剤(C)を添加することが、その後の反応性樹脂の硬化のために必要である。ヘキサメチレン−テトラミンは、触媒およびホルムアルデヒド源の両方の役割を果たすため、この機能のための架橋剤(C)として好ましい材料である。
【0025】
(A)は、92重量%、好ましくは少なくとも93重量%、特に好ましくは少なくとも94重量%の量で使用され、かつ最大99.5重量%、好ましくは最大99重量%、特に好ましくは最大98重量%の量で使用される。
【0026】
構成成分(B)
本発明の反応性樹脂組成物は、少なくとも1種のシリコーン樹脂(B)を、少なくとも0.5重量%および最大8重量%の量、好ましくは1重量%〜最大7重量%の量、特に好ましくは少なくとも2〜6重量%の量で含んでなる。
【0027】
シリコーン樹脂(B)は、室温で、固体であっても、液体であってもよい。
【0028】
シリコーン樹脂(B)は、好ましくは少なくとも500、好ましくは少なくとも600、より好ましくは少なくとも700の分子量:Mwを有し、かつ最大で5,000、好ましくは最大で4,000、より好ましくは最大3,000の分子量:Mwを有するものであり、多分散性は、最大で20、好ましくは最大で18、より好ましくは最大で16、特に好ましくは最大で15である。
【0029】
シリコーン樹脂(B)は、少なくとも20mol%、好ましくは少なくとも25mol%、より好ましくは少なくとも30mol%、特に好ましくは少なくとも35mol%の、前記式(Ia)もしくは(Ib)の繰り返し単位、または、前記式(Ia)および(Ib)の繰り返し単位の混合物を含み、ここで前記式(Ib)の繰り返し単位は、最大で50mol%、好ましくは最大で40mol%、より好ましくは最大で20mol%の量で存在する。特に好ましい実施形態では、シリコーン樹脂(B)中に、前記式(Ib)の繰り返し単位は存在しない。
【0030】
前記式(Id)の繰り返し単位は、シリコーン樹脂(B)中に、最大80mol%、好ましくは最大70mol%、より好ましくは最大60mol%、特に好ましくは、最大50mol%の量で存在してもよい。さらなる実施形態では、本発明に従って調製されるシリコーン樹脂(B)中に、前記式(Id)の繰り返し単位は存在しない。
【0031】
シリコーン樹脂(B)は、R17として、アルコキシ基を、少なくとも5重量%、好ましくは少なくとも8.5重量%、および特に好ましくは少なくとも12重量%の範囲で含む。
【0032】
17としての好適なアルコキシ基の例は、置換されていてもよい、1〜16個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。特に好適であり、それゆえ好ましいものは、メトキシ基、エトキシ基、イソプロポキシ基およびtert−ブトキシ基、ならびにp−ニトロフェノキシ基である。
【0033】
すべての他のR17は、独立して、置換または非置換の、一価のヒドロカルビル基であってもよい。これらは、好ましくは純粋なヒドロカルビル基であり、好ましくは1〜16個の炭素原子を有するものである。好適なヒドロカルビル基R17の選択された例は:メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基などのヘキシル基、n−ヘプチル基などのヘプチル基、n−オクチル基およびイソオクチル基(例えば2,2,4−トリメチルペンチル基)などのオクチル基、n−ノニル基などのノニル基、n−デシル基などのデシル基、n−ドデシル基などのドデシル基、ならびにn−オクタデシル基などのオクタデシル基、などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基などのアリール基;トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基などのアルカリール基;ならびにベンジル基およびβ−フェニルエチル基などのアラルキル基である。R17基として好ましいヒドロカルビル基は、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、n−オクチル基、またはイソオクチル基であり、メチル基、n−プロピル基、フェニル基およびイソオクチル基が特に好ましく、メチル基およびフェニル基が特に好ましい。
【0034】
前述のアルコキシ基と組み合わせて、好ましい実施形態におけるシリコーン樹脂(B)において、すべてのR17基のうちの少なくとも10mol%が、独立して、同一のまたは異なる、少なくとも3個の炭素原子を有する一価の置換または非置換有機基である。好ましくは、すべてのR17基のうちの少なくとも15mol%、より好ましくは少なくとも20mol%、特に好ましくは少なくとも25mol%が、独立して、同一のまたは異なる、少なくとも3個の炭素原子を有する一価の置換または非置換有機基である。前述のヒドロカルビル基は、3〜18個の炭素原子を有することが好ましい。
【0035】
また、少なくとも3個の炭素原子を有する有機置換基の例は、一般式(XIX):
−CHCH(CHO(CO)(CO)(CO)
(XIX)
で表されるポリエーテル基であり、
式中、
は1〜6個の炭素原子を有するドロカルビル基またはHであり、好ましくはMeまたはHであり;
Uは0または1〜16、好ましくは1〜4の整数であり;
vは0または1〜35、好ましくは1〜25の整数であり;
wは0または1〜35、好ましくは1〜25の整数であり;および
Xは0または1〜35、好ましくは1〜25の整数であるが、
但し、v+w+xの合計は、1〜70、好ましくは1〜50である。
【0036】
シリコーン樹脂(B)のさらに好ましい実施形態において、前記R17基のうち、独立して、別の少なくとも1mol%、好ましくは少なくとも2mol%、より好ましくは少なくとも3mol%、特に好ましくは少なくとも4mol%、非常に特に好ましくは少なくとも6mol%の、独立した官能基またはケイ素結合水素が、前述のアルコキシ基との組み合わせでのみ存在する。
【0037】
シリコーン樹脂(B)の特に好ましい実施形態において、前記R17基のうち、独立して、別の少なくとも1mol%、好ましくは少なくとも2mol%、より好ましくは少なくとも3mol%、特に好ましくは少なくとも4mol%、非常に特に好ましくは少なくとも6mol%の、独立した官能基またはケイ素結合水素が、前述のアルコキシ基との組み合わせで、または同時に、少なくとも3個の炭素原子を有する一価の置換または非置換有機基とともに、存在する。
【0038】
官能基を有するこのようなR17基の例は、リン酸エステル、ホスホン酸エステル、エポキシ官能基、アミノ官能基、メタクリレート官能基、カルボキシル官能基、アクリレート官能基、オレフィン性不飽和炭化水素、およびアセチレン性不飽和炭化水素の群から選択される官能性有機基を有する、グリコール基およびヒドロカルビル基である。
【0039】
それぞれの官能基は、所望により置換されていてもよい。
【0040】
前記R17基は所望により、末端に、ヒドロキシ基、アルキルオキシ基またはトリメチルシリル基を有していてもよい。主鎖中、隣接していない炭素原子は、酸素原子で置換されていてもよい。
【0041】
17における官能基は、一般的に、ケイ素原子に直接結合してはいない。これに対する例外は、ケイ素に直接結合した形態で存在し得る、オレフィン基またはアセチレン基、より詳細には、ビニル基である。R17における他の官能基は、スペーサー基を介してケイ素原子に結合しており、前記スペーサーは、常にSi−C−結合の形態である。前記スペーサーは、1〜30個の炭素原子を含んでなり、隣接していない炭素原子は酸素原子により置換されていてもよい、二価のヒドロカルビル基である。前記スペーサーはまた、他のヘテロ原子またはヘテロ原子基をも含んでいてもよいが、好ましくはない。
【0042】
好ましい官能基であるメタクリレート基、アクリレート基およびエポキシ基は、スペーサーを介して、ケイ素原子に結合していることが好ましく、前記スペーサーは、3〜15個の炭素原子、好ましくは3〜8個の炭素原子、特に好ましくは3個の炭素原子、および所望により、さらに追加の最大1〜3個の酸素原子、好ましくは最大1個の酸素原子からなる。
【0043】
同様に、好ましいカルボキシル基も、スペーサーを介してケイ素原子に結合していることが好ましく、前記スペーサーは、3〜30個の炭素原子、好ましくは3〜20個の炭素原子、特に好ましくは3〜15個の炭素原子、および所望により、さらに追加のヘテロ原子からなるが、好ましくは最大1〜3個の酸素原子、好ましくは最大1個の酸素原子を含み、特に好ましくは、酸素原子を含まない。官能基としてカルボキシル基を有するR17基は、一般式(VIII):
−COOH (VIII)
により表される。
式中、Yは好ましくは、最大30個の炭素原子を有する二価の直鎖または分岐ヒドロカルビル基であり、ここでYはまた、オレフィン性不飽和基またはヘテロ原子を含んでいてもよく、Y基から、ケイ素原子に直接結合している原子は炭素原子である。前記Y基中に典型的に存在し得るヘテロ原子を含む断片は:
−N(R)−C(=O)−、−C−O−C−、−N(R)−、−C(=O)−、−O−C(=O)−、−C−S−C−、−O−C(=O)−O−、−N(R)−C(=O)−N(R)−であり、ここで非対称の基は、いずれかの可能な方向から、前記Y基に導入されていてもよく、Rはヒドロカルビル基または水素である。
【0044】
式(VIII)で表される基が、例えば、無水マレイン酸の開環およびシラノール官能基への凝縮により生成される場合は、(cis)−C=C−COOHの形態の基なる。
【0045】
官能基を有し、かつヘテロ原子を含むR17基は、例えば、一般式(IXa):
−C(=O)O−Y (IXa)
で表されるカルボン酸エステル基であり、式中、Yは、上述の定義の通りであるか、または、さらなる実施形態において、Yは前記式(IXa)中に全く存在しない。Y基は、極めて一般的には、有機基である。Yはまた、さらにヘテロ原子および有機官能基、例えば二重結合または酸素原子などを含んでいてもよいが、好ましくはない。Yとして好ましいものは、ヒドロカルビル基であり、例えば:メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基などのヘキシル基、n−ヘプチル基などのヘプチル基、n−オクチル基およびイソオクチル基(例えば2,2,4−トリメチルペンチル基)などのオクチル基、n−ノニル基などのノニル基、n−デシル基などのデシル基、n−ドデシル基などのドデシル基、ならびにn−オクタデシル基などのオクタデシル基、などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびメチルシクロヘキシル基などのシクロアルキル基;フェニル基、ナフチル基、アントリル基およびフェナントリル基などのアリール基;トリル基、キシリル基およびエチルフェニル基などのアルカリール基;ならびにベンジル基およびβ−フェニルエチル基などのアラルキル基である。特に好ましいヒドロカルビル基Yは、メチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、フェニル基、n−オクチル基およびイソオクチル基である。
【0046】
17はまた、官能基として、逆に結合したカルボン酸エステル基、すなわち式(IXb):
−OC(=O)Y (IXb)
で表される形態の基を有していてもよく、式中、YおよびYは、式(IXa)における定義の通りである。
【0047】
官能基を有するR17基はまた、一般式(X)または(XI):
−C−C(=O)−O−C(=O) (X)
−R14C−C(=O)−O−C(=O)R15 (XI)
で表されるカルボン酸無水物基であってもよく、式中、Yは、上述の定義の通りであり、R14およびR15はそれぞれ独立して、炭素数1〜8のヒドロカルビル基であり、このヒドロカルビル基は、所望によりヘテロ原子を含んでいてもよいが、好ましくはない。
【0048】
官能基を有するR17基のさらなる例は、一般式(XII):
−P(=O)(OR16 (XII)
で表される、ホスホン酸基およびホスホン酸エステル基であり、式中、Yは上述の定義の通りであり、R16基は好ましくは、独立して、水素、または最大18個の炭素原子を有するヒドロカルビル基である。好ましいホスホン酸基は、R16が水素、メチル基またはエチル基であるものであるが、この列挙は、非限定的なものと解釈されるべきである。
【0049】
さらなる官能基を有するR17基の例は、メタクリル酸エステルまたはアクリル酸エステルのアクリロキシ基またはメタクリルオキシ基、例えばメチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルアクリレート、イソブチルメタクリレート、t−ブチルアクリレート、t−ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびノルボルニルアクリレートなどである。特に好ましいものは、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、およびノルボルニルアクリレートである。
【0050】
官能基を有するR17基のさらなる例は、式(XIII)および(XIV):
−CR=CR (XIII)
−C≡CR10 (XIV)
で表される、好ましいオレフィン性不飽和ヒドロカルビル基R17であり、式中、Yは上述の定義の通りであるか、またはさらなる実施形態において、前記式(XIII)および(XIV)中に全く存在せず、R、R、RおよびR10基は独立して水素原子、または所望によりヘテロ原子を含んでいてもよい炭素数1〜8のヒドロカルビル基であり、ここで水素原子が最も好ましい基である。特に好ましい式(XIII)の基は、ビニル基、プロペニル基およびブテニル基であり、特に好ましくはビニル基である。式(XIII)の基はまた、スペーサーを介して結合したジエニル基であってもよく、例えば1,3−ブタジエニル、またはスペーサーを介して結合したイソプレニル基であってもよい。
【0051】
官能基を有する基R17のさらなる例は、式(XV)および(XVI):
【化2】
または、
【化3】
で表されるエポキシ基を有するものであり、
式中、
12は、基あたり1〜10個の炭素原子を有し、かつエーテル酸素原子により中断されていてもよい、二価のヒドロカルビル基であり;
13は、水素原子、または、基あたり1〜10個の炭素原子を有し、かつエーテル酸素原子により中断されていてもよい、一価のヒドロカルビル基であり;
11は、基あたり3〜12個の炭素原子を有する、三価のヒドロカルビル基であり;および
Zは0または1である。
【0052】
このようなエポキシ官能性R17基の好適な例は、
3−グリシドキシプロピル基、
3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基、
2−(3,4−エポキシ−4−メチルシクロヘキシル)−2−メチルエチル基
3,4−エポキシブチル基、
5,6−エポキシヘキシル基、
7,8−エポキシデシル基、
11,12−エポキシドデシル基、および
13,14−エポキシテトラデシル基
である。
【0053】
好ましいエポキシ基R17は、3−グリシドキシプロピル基および3,4−エポキシシクロヘキシルエチル基である。
【0054】
官能基を有するR17基のさらなる例は、一般式(XVIII):
−R20−[NR21−R22−]NR21 (XVIII)
で表されるアミノ基を有するものであり、
式中、
20は、3〜18個の炭素原子を有する二価の直鎖または分岐ヒドロカルビル基であり、好ましくは3〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり;
21は水素原子、1〜8個の炭素原子を有するアルキル基、またはアセチル基などのアシル基であり、好ましくは水素原子であり;
22は1〜6個の炭素原子を有する二価のヒドロカルビル基であり、好ましくは1〜6個の炭素原子を有するアルキレン基であり;
nは0、1、2、3または4であり、好ましくは0または1である。
【0055】
官能基を有する特に好ましいR17基は、カルボン酸官能性、アミノ官能性、およびエポキシ官能性の基である。特に、アミノ官能性およびエポキシ官能性の基が好ましい。
【0056】
原則として、シリコーン樹脂(B)は様々な官能基を有していてもよい。しかしながら、これは、選択された基が、通常の保管条件下、すなわち、空気と湿気を遮断する密閉容器中、23℃、1,013mbarで6か月保管しても、互いに反応しない場合のみ、可能である。例えば、ビニル基とSi−H−基との組み合わせが可能である。なぜなら、これらの基が互いに反応するには、例えば触媒および昇温などの、通常の保管条件とは明らかに異なる条件を必要とするからである。官能基の組み合わせの好適な選択は、当業者が、(有機)官能基の化学反応性に関する文献から、簡単に導き出すことができる。
【0057】
前記式(VII)の単位中に、官能基を有するR17基が複数存在する場合、これらは独立して、可能な基の特定の群内の異なる基であってもよいが、その際、前述の官能基についての条件に注意しなければならない。
【0058】
本発明はさらに、前記反応性樹脂組成物を製造するための方法を提供する。
【0059】
一実施形態において、前記反応性樹脂組成物の製造は、(B)を、20℃で自由流動性である(A)、または250℃まで予備加熱することにより自由流動性にした(A)、または自由流動性にするために好適な溶媒に溶解された(A)に、分散すことにより行われる。当業者ならば、(A)が硬化を開始することなくどのようにして自由流動形態に変換されうるかを知っているであろう。溶媒を使用した場合は、その後溶媒を蒸発させることができる。好適な溶媒は当業者に公知であり、反応性樹脂(A)に応じて選択される。フェノール樹脂の場合、好適な溶媒は、例えば、酢酸エチルおよびアセトンなどである。どの溶媒がどの反応性樹脂に好適かについては、例えば、以下の参考書に記載されている:Polymer Handbook, Volume 2, 4th ed.; J. Brandrup, E. H. Immergut, E. A. Grulke; John Wiley & Sons, Inc., 1999 (ISBN 0-471-48172-6)。
【0060】
好適なミキサーは、例えば、ラボミキサー、プラネタリーミキサー、もしくは溶解機;回転子−固定子システム;または押出機、ロール、もしくは3ロールミルなどである。
【0061】
(A)および反応性樹脂組成物に関連した「自由流動性(Free-flowing)」とは、これらが、(250℃まで予め加熱することによって自由流動性になって、または好適な溶媒に溶解されて)プロパントの表面への分布を可能にする物質の物理的状態にあることを意味する。
【0062】
分散操作において、(B)を、完全にまたは部分的に、(A)に溶解することができる。未溶解画分は、(A)中に、第二相として分散した形態で存在する。これらの領域の平均サイズは、好ましくは50μm未満、好ましくは20μm未満、より好ましくは10μm未満である。
【0063】
本発明はさらに、本発明の反応性樹脂組成物の、コーティングとしての使用、ならびに成形品、工作物および型枠の製造のための使用を提供する。より詳細には、本発明の反応性樹脂組成物は、プロパントをコーティングするために使用される。
【0064】
本発明はさらに、本発明に従ってコーティングされたプロパントを製造するための方法を提供する。
【0065】
当業者は、プロパントを樹脂でコーティングするための様々な方法を、従来技術から知っているであろう。これらの方法を、本発明の反応性樹脂組成物でプロパントをコーティングするためにも、使用することができる。
【0066】
コーティングの有利な効果を最大限に活用するためには、確実に(A)と(B)を特に良好に分散させることが重要である。好ましい実施形態では、自由流動形態(すなわち、20℃で既に自由流動性であるか、または250℃までの加熱により溶融し、それゆえ自由流動性であるか、または好適な溶媒に溶解され、それゆえ自由流動性である形態)の、本発明の反応性樹脂組成物を、少なくとも1つの硬化剤(C)と一緒にまたは無しで、および少なくとも1つの添加剤(D)と一緒にまたは無しで、例えば、スプレー噴霧または混合することにより前記プロパントに塗布し、次いで硬化させる。
【0067】
好適な溶媒は、すでに上述されている。
【0068】
特に好ましい実施形態では、本発明の反応性樹脂組成物を、250℃まで加熱することにより溶融させ、それゆえ自由流動形態で、少なくとも1つの硬化剤(C)と一緒にまたは無しで、および少なくとも1つの添加剤(D)と一緒にまたは無しで、例えば、スプレー噴霧または混合することにより前記プロパントに塗布し、次いで硬化させる。
【0069】
さらに上述の記載は、溶媒についても適用可能である。
【0070】
対照的に、経済的な利点がより重要であるか、またはコーティングされたプロパントの製造方法の柔軟性が最大であることが好都合である場合、以下の代替的な製造方法が使用される。第1の構成要素工程は、プロパントの存在下で行われるので、本発明の反応性樹脂組成物を製造するための現場プロセス(in situ process)と呼ぶこともできる。この製造方法では、(B)は、20℃で自由流動性である(A)、または250℃までの予備加熱によって自由流動性になった(A)、または好適な溶媒に溶かされた(A)、プロパント、任意選択でさらなる硬化剤(C)、および任意選択でさらなる添加剤(D)と一緒に混合され、硬化される。ここで成分(A)、(B)、(C)、および(D)の添加順序は、反応性樹脂の実質的な硬化が起こる前に成分(B)が混合されるということを条件として、変えることができる。これは、(B)に対する(A)の比の迅速な調整がいつでも簡単で複雑でない方法で行うことができるという利点を有する。
【0071】
したがって、コーティングされたプロパントを製造するこの方法は、
i)反応性樹脂組成物のその場製造(in situ production)が、少なくとも1種の(B)と、少なくとも1種の20℃で自由流動性である(A)、250℃まで予備加熱することよって自由流動性になっている(A)、または好適な溶媒に溶かされている(A)および少なくとも1種のプロパントを、少なくとも1種の硬化剤(C)とともにまたはそれ無しで、かつ少なくとも1種の添加物(D)とともにまたはそれ無しで混合することによって行われ、
ii)その後、初めて硬化が行われる
ことを特徴とする。
【0072】
本発明に従ってコーティングされたプロパントの、さらなる代替の製造方法では、(A)を、好適な溶媒、プロパントおよび(B)と混合する。所望により、硬化剤(C)、および場合によってはさらに添加剤(D)を、混合物に添加することも可能である。続いて溶媒を蒸発させ、コーティングされたプロパントを硬化させる。成分(A)、(B)、(C)および(D)を添加する順番は、変更可能である。
【0073】
特に好ましい、可能な実施形態では、好適なプロパント、例えば砂を、約170〜260℃に予備加熱する。ミキサー中で、本発明の反応性樹脂組成物、好適な硬化剤(C)、および所望により、様々な添加剤(D)を次いで添加する。
【0074】
別の代替の方法では、好適なプロパント、例えば砂を、約170〜260℃に予備加熱する。ミキサー中で、(A)、(B)、好適な硬化剤(C)、および所望により、様々な添加剤(D)を次いで添加する。
【0075】
層の生成は、以下のように理解されるべきである:複数の層は、コーティングおよび硬化のサイクルを、連続して複数回行うことにより生成される。言い換えると、プロパントの表面を本発明の反応性樹脂組成物で濡らした後、この層をまず部分的にまたは完全に硬化させる。次いで、本発明の反応性樹脂組成物の新たな層を塗布し、再度部分的にまたは完全に硬化させる。
【0076】
これと対照的なのは、小分けにした本発明の反応性樹脂組成物を、複数の工程で塗布し、個々の部分のいかなる実質的な中間硬化も行わずに、最後に一度だけ、部分的または完全に硬化させる方法である。従って、この方法では、単層しか形成されない。
【0077】
プロパント
好適なプロパントは、従来技術から長く当業者に公知であり、本発明のコーティングのために使用することができる。プロパントは典型的に、高強度の硬質粒子、例えば、石灰岩、大理石、ドロマイト、花崗岩などの岩石からなる砂または砂利であるが、ガラスビーズ、セラミック粒子、セラミック球等も挙げられる。このリストは、例示的かつ非限定的なものである。プロパント粒子は、本質的に球形、すなわち、ボール型の形状を示すことが好ましい。なぜなら、この形状の粒子は、未精製の油またはガスが流動できるように、充分な粒子間の空間を残せるからである。したがって、粗粒砂、ガラスビーズ、および中空のガラス球(マイクロバルーンと呼ばれる)が、プロパントとして好ましい。特に好ましいのは、プロパントとして、砂を用いることである。
【0078】
プロパント粒子は、5,000〜50μmの平均粒径を有することが好ましく、1,500〜100μmの平均粒径を有することが、より好ましい。さらに、プロパント粒子の長さ/幅の比率は、2:1以下であることが好ましい。
【0079】
硬化剤(C)
好適な硬化剤は、従来技術から長く当業者に公知であり、使用される反応性樹脂に応じて選択される。ノボラック用の好ましい硬化剤(C)はウロトロピンである。(C)は、したがってウロトロピンも同様に、本発明の反応性樹脂組成物の量に基づいて、典型的に8%〜20重量%の範囲の量で使用される。ウロトロピンは、前記反応性樹脂の溶融物に、水溶液として添加することが好ましい。この種の方法も同様に当業者に公知であり、例えば、米国特許第4732920号に記載されている。
【0080】
添加剤(D)
好適な添加剤(D)も同様に、従来技術から長く当業者に公知である。非排他的な例としては、帯電防止剤、分離剤、接着プロモーターなどである。
【0081】
好適なプロパント、硬化剤(C)および添加剤(D)は、例えば、米国特許第4732920号、および米国特許出願公開第2007/0036977 A1号に記載されている。
【0082】
本発明に従ってコーティングされたプロパントの最適な性能のために、プロパントの種類および仕様、反応性樹脂(A)、オルガノポリシロキサン(B)、硬化剤(C)およびあらゆる添加剤(D)の種類および仕様、混合およびコーティング方法の種類、ならびに諸成分の添加の順番および混合時間は、特定の用途の要件に応じて、互いに調和させなければならない。プロパントに何らか変更がある場合、状況によっては、コーティング方法、および/または使用される硬化剤(C)および添加剤(D)の調整が必要である。
【0083】
したがって本発明は、本発明に従ってコーティングされ、上述の方法により得ることができる、コーティングされたプロパントをも、さらに提供する。
【0084】
本発明のプロパントにおいて、プロパントの表面は、全体的にまたは部分的にコーティングされていてもよい。走査型電子顕微鏡による検査において、プロパントの可視表面の少なくとも20%、より好ましくは少なくとも50%が、本発明の反応性樹脂組成物でコーティングされていることが好ましい。
【0085】
走査型電子顕微鏡による検査において、好ましくは、プロパント粒子の少なくとも5%、より好ましくは少なくとも10%が、その可視側において完全にコーティングされている。
【0086】
本発明のプロパント上のコーティングの大部分の厚みは、0.1〜100μm、好ましくは0.1〜30μm、より好ましくは1〜20μmである。
【0087】
本発明のプロパントは、三層よりも少ない、本発明の反応性樹脂組成物の層でコーティングされていることが好ましい。また、本発明のプロパントは、1層のみでコーティングされていることがより好ましい。
【0088】
本発明の反応性樹脂組成物は、プロパントの重量に基づいて、0.1〜20重量%の量で使用されることが好ましい。本発明の反応性樹脂組成物は、好ましくは0.5〜10重量%、特に好ましくは1〜5重量%の量で用いられる。
【0089】
本発明はさらに、本発明に従ってコーティングされたプロパントの、鉱物油および天然ガスのフラッキング製造法における使用を提供する。
【0090】
本発明の優位性
本発明の反応性樹脂組成物は、コーティングプロセスにおける、改善されたレベリング性を有する。その結果、表面はより均一にコーティングされ、より滑らかでより光沢のある表面を得ることができる。
【0091】
本発明の反応性樹脂組成物は、プロパントのコーティングにおいて、プロパントの粘着に起因するリジェクト材料(reject material)のレベルが著しく減少するという優位性を示す。
【0092】
本発明の反応性樹脂組成物は、プロパントのための硬化したコーティングとして、改善された破壊抵抗、靱性および弾性、ならびに改善された同硬度での形成性を有する。前記コーティングは破砕および剥離する傾向が低く、高圧および衝撃に対して、プロパントをより効果的に、より長い期間保護する。それゆえ、全体的なプロパントの安定性が向上する。
【0093】
従来技術による従来のプロパントは非常に脆く、破砕する傾向が高い。プロパントの破砕は、微粒子の放出につながる。微粒子が放出されると、プロパントの粒子間の間隙が塞がれ、それゆえ油源またはガス源がすぐに利用不可能になってしまうことから、未精製の油または天然ガスが流動する速度に悪影響を及ぼす。このような場合、新たな井、または再フラッキングが必要になる。
【0094】
対照的に、本発明に従ってコーティングされたプロパントは、衝撃、圧力の形成などのストレスに対してより耐性があり、それゆえ破砕する傾向が低い。
【0095】
本発明のコーティングのさらなる優位性は、その形成性にある。すなわち、脆いプロパント粒子が破砕してもコーティング自体は破砕しないことが多く、その結果、生じた微粒子を、プラスチックの外殻のように包み込むかまたは保持し、それにより全体的に微粒子の放出を減少させる。
【0096】
本発明に従ってコーティングされたプロパントのこれらの有利な特性により、油またはガスをより長い間維持することができる。この結果、重要な経済的および環境的優位性をもたらす。
【実施例】
【0097】
以下の実施例は、いかなる制限もなく、本発明を解明するものである。以下に記載する実施例において、すべての「部」および「%」で表される数値は、特に指示が無い限り重量基準である。特に指示が無い限り、以下の実施例は、周囲雰囲気の圧力、すなわち約1,000hPa、および室温、すなわち25℃、または、追加の加熱または冷却をすることなく、室温での反応物の組み合わせにより確立される温度で、実施される。以下のすべての粘度の数値は、温度25℃に関するものである。
【0098】
使用される略語
先に使用される略語の意味は、実施例においても適用される。
PTFE=ポリテトラフルオロエチレン
rpm=毎分回転数
【0099】
分子量分布
分子量分布は、重量平均Mwおよび数平均Mnとして、ポリスチレン標準および屈折率検出器(RI検出器)を用いて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPCまたはサイズ排除クロマトグラフィー(SEC))法により測定される。特に断りがない限り、THFを溶出剤として使用し、DIN 55672−1に従って測定する。多分散性は、Mw/Mnの比率である。
【0100】
実施例1
ガラスフラスコを窒素でパージし、475gのノボラック「Resin 14772」(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)を充填し、もう一度窒素でパージした。材料を120℃で溶融させた。次いで、420rpmにて、攪拌機を作動させた。以下の組成を有するシリコーン樹脂1:[PhSiO3/27.35[(3−グリシドキシプロピル)SiO3/24.20[MeSiO2/23.45[MeO1/26.68[BuO1/20.64(SECによる分子量(溶出剤:THF):Mw=2,100g/mol;Mn=1,300g/mol;粘度:90〜135cSt;エポキシ当量:660〜680g/mol;エポキシ価:1.85mmol/g)を、25g添加し、混合物を420rpmで10分間撹拌した。液体材料を、熱い状態でPTFEフィルムの上に注ぎ、機械的に粉砕し、それにより、粒状材料を製造する。
【0101】
実施例2
実施例1の方法により、シリコーン樹脂1の代わりに、以下の組成を有するシリコーン樹脂2:[PhSiO3/27.30[(2−アミノ−エチル)−3−アミノプロピル−SiO3/22.62[MeSiO2/23.86[MeO1/25.88[BuO1/20.57(SECによる分子量(溶出剤:THF/無水酢酸):Mw=1,800g/mol;Mn=1,200g/mol;粘度(動粘度、25℃):120mm/s;アミン価:2.6〜2.9mmol/g)を、25g配合して、粒状材料を製造した。
【0102】
実施例3
実施例1の方法により、シリコーン樹脂1の代わりに、以下の組成を有するシリコーン樹脂3:[PhSiO3/29.44[MeSiO3/25.67[MeSiO2/20.63[MeO1/26.77(SECによる分子量(溶出剤:THF):Mw=1,800g/mol;Mn=900g/mol;粘度(動粘度、25℃):280mm/s)を、25g配合して、粒状材料を製造した。
【0103】
実施例4
実施例1の方法により、シリコーン樹脂1の代わりに、以下の組成を有するシリコーン樹脂4:[MeSiO3/223.14[EtO1/227.28(SECによる分子量(溶出剤:トルエン):Mw=2,560g/mol;Mn=900g/mol;粘度(絶対粘度、25℃):25mPa.s)を、25g配合して、粒状材料を製造した。
【0104】
比較例1(V1)
実施例1の方法により、シリコーン樹脂1の代わりに、以下の組成を有するシリコーン樹脂5:[MeSiO1/226.65[ViMeSiO1/23.72[SiO4/242.78[HO1/21.02[EtO1/25.93(SECによる分子量(溶出剤:トルエン):Mw=5,300g/mol;Mn=2,560g/mol)を、25g配合して、粒状材料を製造した。
【0105】
比較例2(V2)
ガラスフラスコを窒素でパージし、475gのノボラック「Resin 14772」(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)を充填し、もう一度窒素でパージした。材料を120℃で溶融させた。次いで、420rpmにて、攪拌機を作動させた。以下の組成を有するシリコーン樹脂3:[PhSiO3/29.44[MeSiO3/25.67[MeSiO2/20.63[MeO1/26.77(SECによる分子量(溶出剤:THF):Mw=1,800g/mol;Mn=900g/mol;粘度(動粘度、25℃):280mm/s)を25g、およびシュウ酸を5g添加し、混合物を最初に、還流下、130℃で1時間、420rpmにて撹拌した。次いで、前記混合物を180℃まで2時間以内で加熱し、生じた凝縮物を取り除いた。その後、180℃でさらに30分間蒸留した。流動塊をPTFEフィルムの上に注ぎ、機械的に粉砕し、それにより粒状材料を製造した。
【0106】
本発明の実施例1〜4、および本発明に係らない比較例V1において、シリコーン樹脂(B)および反応性樹脂(A)を混合する際、触媒は添加しなかった。これにより、物理的混合物が形成される。本発明に係らない比較例V2においては、触媒を添加し、高温で長い間反応させた。ノボラックおよびシリコーン樹脂の化学反応の結果として、ハイブリッド材料が得られる。比較例V2においては、米国特許出願公開第20140124200 A号に記載される、式[MeSiO2/2]のD基を含むシリコーン樹脂を使用した。
【0107】
意外なことに、本発明のシリコーン樹脂(B)は、反応性樹脂(A)中に、均一かつ細かく分布していることがわかった。第二相が形成される場合、それは本質的に球状の液滴の形態である。対照的に、比較例V1で得た本発明に係らない固体のポリシロキサンは細かく分散せず、フェノール樹脂中に不均一な塊および断片を形成し、それらのうちのいくつかは、最大100μmのサイズである。
【0108】
比較例3(V3)
比較例V3は、未変性のノボラック「Resin 14772」(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)であった。
【0109】
実施例6
試験片の作成およびQ−パネル試験シートのコーティングのための反応性樹脂溶液の調製
実施例3で得た本発明の変性フェノール樹脂を、それぞれの場合において10部、または比較例V2で得た本発明に係らない変性フェノール樹脂を10部、または純粋な変性フェノール樹脂、Resin 14772(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)10部を、それぞれの場合において、1部のウロトロピンおよび10.0部の酢酸エチル(ベルントクラフト社(Bernd Kraft)製;>=99%)とともに、一晩撹拌することにより溶解した。
【0110】
実施例7
フェノール樹脂でコーティングされたQ−パネル試験シートの作成
脆さ測定実験のために、Q−パネル試験シートの、ブラシをかけた側をアセトンで3回清浄し、ヒュームフード内で1時間フラッシュオフ(flashed off)した。その後、3mLの、実施例6で得た適切なフェノール樹脂の溶液を各シートに塗布し、100μmのコーティングバーで広げた後、溶液をヒュームフード内で一晩蒸発させた。
【0111】
硬化のために、サンプルを冷たい乾燥キャビネットに入れ、3時間以内、窒素でパージしながら160℃まで加熱し、この温度で2時間維持し、23℃まで一晩冷却した。
【0112】
溶媒が蒸発すると、厚さ約50μmの硬化した樹脂層が、シート上に形成される。
【0113】
実施例8
耐久性の試験
ボール衝撃試験機により、独立した形態で、コーティングの安定性を調べることができる。この試験により、コーティングの弾性、耐衝撃性および破壊抵抗に関する結果が得られる。
【0114】
実施例6および7による、改善された特性、すなわち、衝撃および圧力に対する靱性および耐衝撃性の改善を確認するために、実施例3で得た本発明の樹脂の、それぞれの場合における厚さ約50μmの硬化層を、Q−パネル試験シート上に作成し、または比較例として、未変性のResin 14772(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)、および比較例V2で得た本発明に係らない樹脂の、厚さ約50μmの硬化層を、それぞれQ−パネル試験シート上に作成した。コーティングされたシートを、エリクセン社(Erichsen)製のボール衝撃試験機、モデル304−ASTMで試験し、熟練した試験者が、目視により結果を評価した。この目的のために、定義された可変の落下高さから、ボールをシートの裏側に落とした(それぞれの場合において、異なる部位で、二回の実験を行った)。衝撃エネルギーは、落下高さに落下重量を乗じて求め、インチ(in)×ポンド(lbs)として表す。衝撃エネルギーは、以下のように変化させる:5、10、15、20、25、30、35、40(インチ×ポンド)。膨らんだ衝撃部位における亀裂や割れを目視により評価し、基準と比較して評価した。
【0115】
表1は、ボール衝撃試験機による、Q−パネル試験シート上の樹脂コーティングの評価およびその安定性を示す。
【0116】
【表1】
【0117】
各数値は以下のように理解されるべきである:
【0118】
「0」は、割れプロファイルが基準と同様であることを意味する。基準は、5インチ×ポンドの最少エネルギーにおいても、明確な割れを示す。割れの程度は、基準と同様である。
【0119】
「+」は、割れプロファイルが基準よりも優れていることを意味し、明確な割れは、10〜30インチ×ポンドより高いエネルギーの範囲でのみ明白であるか、または割れの程度が基準と比較して、明らかに全体的に減少していることを意味する。
【0120】
「++」は、最大30インチ×ポンドのエネルギーまで、明確な割れが生じないことを意味する。
【0121】
全く驚くべきことに、実施例3で得た樹脂による、本発明の硬化したコーティングは、比較例V3の未変性の樹脂、および、同じシリコーン樹脂を含み、手間をかけて作成可能な、本発明に係らない比較例V2で得たハイブリッド材料によるコーティングと比較して、有意に改善された弾性、耐衝撃性および破壊抵抗を有する。
【0122】
実施例9
コーティングされたプロパントの製造
20〜40メッシュのフラッキング砂を、3.5%の実施例1および2で得た本発明の樹脂、または、比較例として、3.5%の未変性のResin 14772(プラスチックエンジニアリング社、米国、シボイガン)および比較例V1で得た本発明に係らない樹脂で、溶融法によりコーティングし、樹脂の量に基づいて、10重量%のウロトロピンを用いて硬化した。
【0123】
実施例10
コーティングされたプロパントの圧力安定性の調査
実施例8に係るコーティングされたプロパントの圧力安定性を、DIN EN ISO 13503−2に従い、圧力14,000PSIおよび18,000PSIにて、調べた。結果を表2に示す。
【0124】
【表2】
【0125】
全く驚くべきことに、本発明に従ってコーティングされたプロパントの場合、未変性コーティング、および比較例V1で得た本発明に係らない樹脂のコーティングを有するプロパントと比較して、微粒子の形成が、約15〜20%少ないことがわかった。本発明に従って変性された反応性樹脂の破砕および衝撃抵抗性の向上が、自ずと圧縮強さの向上にもつながることになるといういかなる基本的な結論も許容しなかったので、本発明に従ってコーティングされたプロパントの圧縮強さの向上は全く予想外であった。