【実施例】
【0046】
<実施例1>人工突然変異法を用いた変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼ(acetohydroxy acid synthase)をコードするDNAライブラリの製作
本実施例では、アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異体を取得するために、下記の方法で染色体内の1次交差挿入用のベクターライブラリを製作した。コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ(配列番号1)をコードするilvB遺伝子(配列番号2)を対象に、Error−prone PCR法を行い、塩基置換変異がランダムに導入されたilvB遺伝子変異体(2395bp)を獲得した。Error−prone PCRはGenemorphII Random Mutagenesis Kit(Stratagene)を用いて行い、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067のゲノムDNAを鋳型とし、プライマー1(配列番号3)及びプライマー2(配列番号4)を用いた。
【0047】
プライマー1(配列番号3):5’− AACCG GTATC GACAA TCCAA T -3’
プライマー2(配列番号4):5’− GGGTC TCTCC TTATG CCTC -3’
増幅された遺伝子断片内に変異が1kb当り0〜3.5個が導入されるようにし、PCR条件は、変性96℃、30秒;アニーリング53℃、30秒;及び重合反応72℃、2分を30回繰り返した。
【0048】
増幅された遺伝子断片をpCR2.1−TOPO TAクローニングキット(Invitrogen社)を用いてpCR2.1−TOPOベクター(以下、「pCR2.1」)に連結し、大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。形質転換されたコロニー20種を選別した後、プラスミドを獲得して塩基配列を分析した結果、2.1変異/kbの頻度で互いに異なる位置に変異が導入されたことを確認した。約20,000個の形質転換された大腸菌コロニーをとり、プラスミドを抽出し、これをpCR2.1−ilvB(mt)ライブラリと命名した。
【0049】
また、対照群として用いるための野生型のilvB遺伝子を有するプラスミドを製作した。プライマー1(配列番号3)及びプライマー2(配列番号4)を用いて、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067のゲノムDNAを鋳型とし、前記のような条件でPCRした。ポリメラーゼはPfuUltra High−Fidelity DNAポリメラーゼ(Stratagene)を用いた。製作されたプラスミドをpCR2.1−ilvB(WT)と命名した。
【0050】
<実施例2>ilvB欠損菌株の製作
KCCM11201P(特許文献5)菌株を親菌株にしてpCR2.1−ilvB(mt)ライブラリを導入するためのilvB欠損菌株を製作した。
【0051】
ilvB欠損ベクターを製作するために、野生型コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067の染色体を鋳型とし、プライマー3(配列番号5)及びプライマー4(配列番号6)、プライマー5(配列番号7)及びプライマー6(配列番号8)を用いてPCRを行った。
【0052】
プライマー3(配列番号5):5’− GCGTC TAGAG ACTTG CACGA GGAAA CG−3’
プライマー4(配列番号6):5’− CAGCC AAGTC CCTCA GAATT GATGT AGCAA TTATC C−3’
プライマー5(配列番号7):5’− GGATA ATTGC TACAT CAATT CTGAG GGACT TGGCT G−3’
プライマー6(配列番号8):5’− GCGTC TAGAA CCACA GAGTC TGGAG CC−3’
PCR条件は、95℃で5分間変性した後、95℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で30秒の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
【0053】
その結果、ilvB遺伝子プロモーターの前部分とilvB遺伝子の3’末端をそれぞれ含む731bpの配列番号9のDNA断片と712bpの配列番号10のDNA断片を収得した。
【0054】
増幅された配列番号9と配列番号10を鋳型とし、プライマー3(配列番号5)及びプライマー6(配列番号8)でPCRを行った。PCR条件は、95℃で5分間変性した後、95℃で30秒の変性、55℃で30秒のアニーリング、72℃で60秒の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
【0055】
その結果、ilvB遺伝子プロモーターの前部分を含むDNA断片と3’末端を含むDNA断片が連結された1407bpの配列番号11のDNA断片(以下、ilvB断片)が増幅された。
【0056】
コリネバクテリウム・グルタミカム内で複製が不可能なpDZベクター(特許文献6)と前記増幅されたilvB断片を制限酵素XbaIで処理した後、DNA接合酵素を用いて連結した後、クローニングすることによりプラスミドを獲得し、これをpDZ−ilvBと命名した。
【0057】
pDZ−ilvBをコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201Pに電気パルス法(非特許文献9)でそれぞれ形質転換した後、カナマイシン(kanamycin)25mg/l及びL−バリン、L−ロイシン、L−イソロイシンをそれぞれ2mMずつ含有した選別培地から形質転換菌株を獲得した。2次組換え過程(cross−over)でゲノム上に挿入されたilvB断片によってilvB遺伝子が不活性化された菌株を取得し、これをKCCM11201PilvBと命名した。
【0058】
<実施例3>アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異菌株のライブラリ製作及びL−アミノ酸の生産能の増加菌株の選別
前記製作したKCCM11201PilvB菌株を親菌株にして前記製作されたpCR2.1−ilvB(mt)ライブラリを相同染色体組換えによって形質転換した。これをカナマイシン(25mg/L)が含まれた複合平板培地に塗抹して約10,000個のコロニーを確保し、各コロニーをKCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(mt)−1から KCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(mt)−10000までと命名した。
【0059】
また、前記製作したpCR2.1−ilvB(WT)のベクターをKCCM11201PilvB菌株に形質転換して対照群菌株を製作し、KCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(WT)と命名した。
【0060】
<複合平板培地(pH 7.0)>
ブドウ糖10g、ペプトン10g、牛肉抽出物5g、酵母抽出物5g、脳心臓浸出液(Brain Heart Infusion)18.5g、NaCl 2.5g、尿素2g、ソルビトール(sorbitol)91g、寒天20g(蒸留水1L基準)
確保された約10,000個のコロニーをそれぞれ300μlの選別培地に接種して、96ディープウェルプレートで32℃、1000rpmで約24時間培養した。培養液の中に生産されたL−アミノ酸の生産量を分析するためにニンヒドリン方法を用いた(非特許文献10)。培養が完了した後、培養上澄み液10μlとニンヒドリン反応溶液190μlとを65℃で30分間反応させた後、波長570nmで分光光度計(spectrophotometer)で吸光度を測定した。対照群KCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(WT)菌株の吸光度と比較して10%以上増加した吸光度を示す変異菌株のコロニー約213個を選別した。その他のコロニーは対照区に比べて類似または減少した吸光度を示した。
【0061】
<選別培地(pH 8.0)>
ブドウ糖10g、硫酸アンモニウム5.5g、硫酸マグネシウム7水塩1.2g、第1リン酸カリウム 0.8 g、第2リン酸カリウム 16.4g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド2000μg( 蒸留水1L基準 )
選別された213個の菌株は、前記と同様の方法でニンヒドリン反応を繰り返して行い、KCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(WT)菌株に比べてL−アミノ酸生産能が向上された菌株の上位60種を選別した。
【0062】
<実施例4>アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異菌株ライブラリ選別株のL−バリン生産能の確認
前記実施例3で選別した60種の菌株のL−バリン生産能を比較するために、以下のような方法で培養し、培養液の成分を分析した。
【0063】
生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を1白金耳を接種して、30℃、72時間、200rpmで振とう培養した。HPLCを用いてL−バリンの濃度を分析した。
【0064】
<生産培地(pH7.0)>
ブドウ糖100g、硫酸アンモニウム40g、大豆タンパク質2.5g、トウモロコシ浸漬固形分(Corn Steep Solids)5g、尿素3g、第2リン酸カリウム1g、硫酸マグネシウム7水塩0.5g、ビオチン100μg、チアミン塩酸塩1000μg、パントテン酸カルシウム2000μg、ニコチンアミド3000μg、炭酸カルシウム30(蒸留水1リットルあたり)
60種の菌株のうち、L−バリン濃度が向上された菌株2種を選別して、前記培養及び分析を繰り返して行い、分析されたL−バリンの濃度は下記表1の通りである。残り58種の菌株は、L−バリン濃度がむしろ下がる結果を示した。
【0065】
【表1】
【0066】
L−バリン濃度分析の結果、前記2種の選別株のL−バリンの収率が対照群KCCM11201PilvB/pCR2.1−ilvB(WT)菌株に比べて最大20.7%増加したことを確認した。
【0067】
<実施例5>アセトヒドロキシ酸シンターゼの変異菌株ライブラリ選別株のilvB遺伝子変異の確認
前記実施例4で選別した2種菌株のアセトヒドロキシ酸シンターゼに導入されたランダム変異を確認するために、ilvB遺伝子の塩基配列を分析した。塩基配列を決定するためにプライマー7(配列番号12)及びプライマー8(配列番号13)を用いてPCRを行った。
プライマー7(配列番号12):5’− CGCTT GATAA TACGC ATG −3’
プライマー8(配列番号13):5’− GAACA TACCT GATAC GCG −3’
【0068】
確保されたそれぞれの変異型ilvB遺伝子断片の塩基配列分析を通じて、配列番号2の野生型ilvB遺伝子の塩基配列と比較して変異型ilvB遺伝子の塩基配列を確認した。これにより、変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼタンパク質のアミノ酸配列を確認した。選別した菌株2種の変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼタンパク質の情報は、下記の表2の通りである。
【0069】
【表2】
【0070】
<実施例6>アセトヒドロキシ酸シンターゼ変異導入用ベクターの製作
前記実施例5で確認した変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼタンパク質の効果を確認するために、これを染色体上に導入しうるベクターを製作した。
【0071】
確認された塩基配列に基づいて、5’末端にXbaI制限酵素部位を挿入したプライマー9(配列番号14)とプライマー10(配列番号15)、及びプライマー11(配列番号16)とプライマー12(配列番号17)を合成した。このプライマー対を用いて、前記選別された2種の染色体をそれぞれ鋳型としてPCRを行い、2種の変異型ilvB遺伝子断片を増幅した。PCR条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、56℃で30秒のアニーリング、72℃で2分の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
プライマー9(配列番号14):5’− CGCTC TAGAC AAGCA GGTTG AGGTT CC −3’
プライマー10(配列番号15):5’− CGCTC TAGAC ACGAG GTTGA ATGCG CG −3’
プライマー11(配列番号16):5’− CGCTC TAGAC CCTCG ACAAC ACTCA CC −3’
プライマー12(配列番号17):5’− CGCTC TAGAT GCCAT CAAGG TGGTG AC −3’
【0072】
PCRで増幅した2種の遺伝子断片を制限酵素XbaIで処理して、それぞれのDNA切片を獲得した後、これを制限酵素XbaI末端を有する染色体導入用pDZベクターに連結した後、大腸菌DH5αに形質転換し、カナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。
【0073】
PCRにより目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、このプラスミドのilvB遺伝子に挿入された変異に応じて、それぞれpDZ−ilvB(W503Q)、pDZ−ilvB (T96S)と命名した。
【0074】
<実施例7>KCCM11201P由来のアセトヒドロキシ酸シンターゼ変異導入菌株の製作及びL−バリン生産能の比較
前記実施例6で製造した新規変異の導入ベクター2種をそれぞれ2段階相同染色体組換えによりL−バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201Pに形質転換させた。その後、染色体上のilvB変異が導入された菌株を塩基配列分析によって選別し、前記ilvB変異が導入された菌株をそれぞれKCCM11201P::ilvB(W503Q)及びKCCM11201P::ilvB(T96S)と命名した。そして、前記変異導入ベクターの中で、pDZ−ilvB(T96S)を前記製作した菌株KCCM11201P::ilvB(W503Q)に形質転換させた。その後、染色体上のilvB変異2種の両方が導入された菌株をKCCM11201P::ilvB(W503Q/ T96S)と命名した。
【0075】
実施例4と同様の方法で培養して、そこからL−バリンの濃度を分析した(表3)。
【0076】
【表3】
【0077】
2種の新規変異導入菌株(KCCM11201P::ilvB(W503Q)、KCCM11201P::ilvB(T96S))は、親菌株に比べてL−バリン生産能が最大17.8%増加し、2種の変異両方が導入された菌株(KCCM11201P::ilvB(W503Q/T96S))は、親菌株に比べてL−バリン生産能が21.4%増加した。
【0078】
そこで、本発明のアセトヒドロキシ酸シンターゼの大サブユニットの変異体は、L−分岐鎖アミノ酸の生合成経路の最初の酵素であるため、L−バリンだけでなく、L−イソロイシン及びL−ロイシン生産能の増加にも影響を与えることが予想される。
【0079】
本発明者らは、前記L−バリンが向上された菌株であるKCCM11201P::ilvB(W503Q)及びKCCM11201P::ilvB(T96S)をコリネバクテリウム・グルタミカムKCJ−0793及びKCJ−0796と命名し、韓国微生物保存センター(KCCM)に2016年1月25日付で寄託し、受託番号KCCM11809P及びKCCM11810Pを与えられた。
【0080】
<実施例8>変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするDNAが含まれたL−バリン生合成過発現ベクターの製作
対照群として、L−バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201PからL−バリン生合成過発現ベクターを製作した。また、前記実施例7で製造したそれぞれのKCCM11201P::ilvB(W503Q)、KCCM11201P::ilvB(T96S)から変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするDNAが含まれたL−バリン生合成過発現ベクターを製作した。
【0081】
前記ベクターの製作のために5’末端にBamHI制限酵素部位を挿入したプライマー13(配列番号18)と3’末端にXbaI制限酵素部位を挿入したプライマー14(配列番号19)を合成した。このプライマー対を用いて、L−バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201P及び前記実施例7で製造したKCCM11201P::ilvB(W503Q)、KCCM11201P::ilvB(T96S)の染色体をそれぞれ鋳型としてPCRを行い、2種の変異型ilvBN遺伝子断片を増幅した。PCR条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、56℃で30秒のアニーリング、72℃で4分の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
【0082】
プライマー13(配列番号18):5’− CGAGG ATCCA ACCGG TATCG ACAAT CCAAT −3’
プライマー14(配列番号19):5’− CTGTC TAGAA ATCGT GGGAG TTAAA CTCGC −3’
【0083】
前記PCRで増幅された2種の遺伝子断片を制限酵素BamHIとXbaIで処理して、それぞれのDNA切片を獲得した後、これを制限酵素BamHIとXbaI末端を有する過発現ベクターpECCG117に連結した後、大腸菌DH5αに形質転換してカナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。
【0084】
PCRにより目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、このプラスミドのilvB遺伝子に挿入された変異に応じて、それぞれpECCG117−ilvBN、pECCG117−ilvB(W503Q)N、pECCG117−ilvB(T96S)Nと命名した。
【0085】
<実施例9>同じ変異位置で他のアミノ酸に置換されたアセトヒドロキシ酸シンターゼをコードするDNAが含まれたL−バリン生合成過発現ベクターの製作
実施例5で確認した変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼタンパク質において、変異位置の効果を確認するために、96番目のアミノ酸がトレオニンまたはセリン以外のアミノ酸に、503番目のアミノ酸がトリプトファンまたはグルタミン以外のアミノ酸に置換された変異を含むベクターを製作した。
【0086】
具体的には、L−バリン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201Pからアセトヒドロキシ酸シンターゼの503番目のアミノ酸がアスパラギンまたはロイシンに置換された形態の変異または96番目のアミノ酸がアラニンまたはシステインに置換された形態の変異が含まれたL−バリン生合成過発現ベクターを製作した。前記置換されたアミノ酸は、置換できるアミノ酸の代表的な例であるだけで、これに制限されるものではない。
【0087】
前記ベクターの製作のために、まず、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201P菌株の染色体を鋳型とし、プライマー13(配列番号18)及びプライマー15(配列番号20)、プライマー16(配列番号21)及びプライマー14(配列番号19)を用いてPCRを行い、5’末端にBamHI制限酵素部位を有する約2041bpのDNA断片と3’末端にXbaI制限酵素部位を有する1055bpのDNA断片を増幅した。PCR条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、56℃で30秒のアニーリング、72℃で2分重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
【0088】
プライマー15(配列番号20):5’− CTTCA TAGAA TAGGG TCTGG TTTTG GCGAA CCATG CCCAG −3’
プライマー16(配列番号21):5’− CTGGG CATGG TTCGC CAAAA CCAGA CCCTA TTCTA TGAAG −3’
その後、増幅された2つのDNA断片を鋳型として、プライマー13(配列番号18)及びプライマー14(配列番号19)でPCRを行った。PCR条件は、94℃で5分間変性した後、94℃で30秒の変性、56℃で30秒のアニーリング、72℃で4分の重合を30回繰り返した後、72℃で7分間重合反応を行った。
【0089】
その結果、アセトヒドロキシ酸シンターゼの503番目のアミノ酸がアスパラギンに置換された形態の変異が含まれたilvBN遺伝子断片を収得した。
【0090】
同様の方法で、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201P菌株の染色体を鋳型としてプライマー13(配列番号18)及びプライマー17(配列番号22)、プライマー18(配列番号23)及びプライマー14(配列番号19)を用いてPCRを行い、5’末端にBamHI制限酵素部位を有する約2041bpのDNA断片と3’末端にXbaI制限酵素部位を有する1055bpのDNA断片を増幅した。
【0091】
プライマー17(配列番号22):5’− CTTCA TAGAA TAGGG TCTGC AGTTG GCGAA CCATG CCCAG −3’
プライマー18(配列番号23):5’− CTGGG CATGG TTCGC CAACT GCAGA CCCTA TTCTA TGAAG −3’
その後、増幅された2つのDNA断片を鋳型とし、プライマー13(配列番号18)及びプライマー14(配列番号19)でPCRを行った。
【0092】
その結果、アセトヒドロキシ酸シンターゼの503番目のアミノ酸がロイシンに置換された形態の変異が含まれたilvBN遺伝子断片を収得した。
【0093】
同様の方法で、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201P菌株の染色体を鋳型としてプライマー13(配列番号18)及びプライマー19(配列番号24)、プライマー20(配列番号25)及びプライマー14(配列番号19)を用いてPCRを行い、5’末端にBamHI制限酵素部位を有する約819bpのDNA断片と3’末端にXbaI制限酵素部位を有する2276bpのDNA断片を増幅した。
【0094】
プライマー19(配列番号24):5’− GGTTG CGCCT GGGCC AGATG CTGCA ATGCA GACGC CAAC −3’
プライマー20(配列番号25):5’− GTTGG CGTCT GCATT GCAGC ATCTG GCCCA GGCGC AACC −3’
その後、増幅された2つのDNA断片を鋳型とし、プライマー13(配列番号18)及びプライマー14(配列番号19)でPCRを行った。
【0095】
その結果、アセトヒドロキシ酸シンターゼの96番目のアミノ酸がアラニンに置換された形態の変異が含まれたilvBN遺伝子断片を収得した。
【0096】
同様の方法で、コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11201P菌株の染色体を鋳型としてプライマー13(配列番号18)及びプライマー21(配列番号26)、プライマー22(配列番号27)及びプライマー14(配列番号19)を用いてPCRを行い、5’末端にBamHI制限酵素部位を有する約819bpのDNA断片と3’末端にXbaI制限酵素部位を有する2276bpのDNA断片を増幅した。
【0097】
プライマー21(配列番号26):5’− GGTTG CGCCT GGGCC AGAGC ATGCA ATGCA GACGC CAAC −3’
プライマー22(配列番号27):5’− GTTGG CGTCT GCATT GCATG CTCTG GCCCA GGCGC AACC −3’
その後、増幅された2つのDNA断片を鋳型とし、プライマー13(配列番号18)及びプライマー14(配列番号19)でPCRを行った。
【0098】
その結果、アセトヒドロキシ酸シンターゼの96番目のアミノ酸がシステインに置換された形態の変異が含まれたilvBN遺伝子断片を収得した。
実施例8と同様の方法で、PCRで増幅された前記4種の変異型遺伝子断片を制限酵素BamHIとXbaIで処理して、それぞれのDNA切片を獲得した後、これを制限酵素BamHIとXbaI末端を有する過発現ベクターpECCG117に連結した後、大腸菌DH5αに形質転換して、カナマイシン(25mg/l)が含まれたLB固体培地に塗抹した。
【0099】
PCRにより目的の遺伝子が挿入されたベクターで形質転換されたコロニーを選別した後、通常知られているプラスミド抽出法を用いてプラスミドを獲得し、このプラスミドのilvB遺伝子に挿入された変異に応じて、それぞれ順にpECCG117−ilvB(W503N)N、pECCG117−ilvB(W503L)N、pECCG117−ilvB(T96A)N、pECCG117−ilvB(T96C)Nと命名した。
【0100】
<実施例10>野生型由来の変異アセトヒドロキシ酸シンターゼ導入菌株の製作及びL−バリン生産能の比較
前記実施例8及び実施例9で製造したL−バリン生合成過発現ベクターpECCG117−ilvBN、pECCG117−ilvB(W503Q)N、pECCG117−ilvB(T96S)N及びpECCG117−ilvB(W503N)N、pECCG117−ilvB(W503L)N、pECCG117−ilvB(T96A)N、pECCG117−ilvB(T96C)Nをコリネバクテリウム・グルタミカム野生型菌株ATCC13032に電気穿孔法でそれぞれ挿入した。製作された菌株は、それぞれコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvBN、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB(W503Q)N、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB (T96S)N、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB(W503N)N、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB(W503L)N、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB(T96A)N及びコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13032::pECCG117−ilvB(T96C)Nと命名した。ベクターが形質転換された場合、カナマイシン耐性を有するようになるため、カナマイシンが25mg/lの濃度で含まれた培地での生長有無を介して形質転換を確認した。
【0101】
製作した菌株を評価するために実施例4で用いた培地と同様の方法で、生産培地25mlを含有する250mlコーナーバッフルフラスコに各菌株を接種し、30℃で72時間、200rpmで振とう培養した。HPLCを用いてL−バリンの濃度を分析した(表4)。
【0102】
【表4】
【0103】
その結果、アセトヒドロキシ酸シンターゼの96番目または503番目のアミノ酸が他のアミノ酸に置換された新規変異は、対照群に比べてL−バリン生産能が最大700%増加したことを確認した。このことから、前記の96番目と503番目の位置の重要性を確認し、さらに、L−バリンだけでなく、他の分岐鎖アミノ酸の生産能にも影響を与えると予想される。
【0104】
<実施例11>変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼ導入菌株の製作及びL−ロイシン生産能の比較
本出願のアセトヒドロキシ酸シンターゼの大サブユニットの変異体は、他のL−分岐鎖アミノ酸の生産能の増加にも影響を与えるかを確認するために、L−分岐鎖アミノ酸の別の例として、L−ロイシンの生産能を確認した。
【0105】
具体的には、前記実施例6で製造した新規変異の導入ベクター2種をそれぞれ2段階相同染色体組換えによりL−ロイシン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11661P(特許文献7及び8)に形質転換させた。その後、染色体上のilvB変異が導入された菌株を塩基配列分析によって選別し、前記ilvB変異が導入された菌株をそれぞれKCCM11661P::ilvB(W503Q)及びKCCM11661P::ilvB(T96S)と命名した。
【0106】
前記コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11661Pは、ノルロイシン(Norleucine、NL)に対する耐性を有するコリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067由来の突然変異株であって、次のような方法により収得した。
【0107】
具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC14067を活性化培地で16時間培養して、活性化された菌株を121℃で5分間滅菌した種培地に接種し、14時間培養した後、培養液5mlを回収した。回収した培養液を100mMクエン酸緩衝溶液(citric buffer)で洗浄した後、NTG(N-Methyl-N'-nitro-N-nitrosoguanidine)を最終濃度200mg/Lとなるよう添加した後、20分間処理し、100mMリン酸緩衝溶液(phosphate buffer)で洗浄した。NTGで処理された菌株を最小培地に塗抹して死滅率を計算した結果、死滅率は85%であった。L−ロイシンの誘導体に該当するノルロイシン(Norleucine、NL)に対する耐性変異株を取得するために、NTGが処理された菌株をNLの最終濃度がそれぞれ20mM、30mL、40mM及び50mMになるように添加された最小培地に塗抹し、30℃で5日間培養してNL耐性変異株を取得した。
【0108】
<活性化培地>
肉汁1%、ポリペプトン1%、塩化ナトリウム0.5%、酵母エキス1%、寒天2%、pH7.2
【0109】
<種培地>
ぶどう糖5%、バクトペプトン1%、塩化ナトリウム0.25%、酵母エキス1%、尿素0.4%、 pH7.2
【0110】
<最小培地>
ぶどう糖1.0%、硫酸アンモニウム0.4%、硫酸マグネシウム0.04%、リン酸第1カリウム0.1%、尿素0.1%、チアミン0.001%、ビオチン200μg/L、寒天2%、pH7.0
前記の方法で得られた変異株は、コリネバクテリウム・グルタミカムKCJ−24(Corynebacterium glutamicum KCJ−24)と命名し、2015年1月22日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センターに寄託し、受託番号KCCM11661Pを与えられた。
【0111】
前記KCCM11661P::ilvB(W503Q)及びKCCM11661P::ilvB(T96S)を実施例4と同様の方法で培養し、そこからL−ロイシンの濃度を分析した(表5)。
【0112】
【表5】
【0113】
2種の新規変異の導入菌株(KCCM11661P::ilvB(W503Q)、KCCM11661P::ilvB(T96S))は、親菌株に比べてL−ロイシン生産能が最大26.9%増加した。
【0114】
<実施例12>KCCM11662P由来の変異されたアセトヒドロキシ酸シンターゼ導入菌株の製作及びL−ロイシン生産能の比較
前記実施例6で製造した新規変異の導入ベクター2種をそれぞれ2段階相同染色体組換えにより他のL−ロイシン生産菌株であるコリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11662P(特許文献7及び8)に形質転換させた。その後、染色体上のilvB変異が導入された菌株を塩基配列分析によって選別し、前記ilvB変異が導入された菌株をそれぞれKCCM11662P::ilvB(W503Q)及びKCCM11662P::ilvB(T96S)と命名した。
【0115】
前記コリネバクテリウム・グルタミカムKCCM11662Pは、ノルロイシン(Norleucine、NL)に対する耐性を有するコリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869由来の突然変異株であって、次のような方法により収得した。
具体的には、コリネバクテリウム・グルタミカムATCC13869を親菌株にして、実施例11のKCCM11662Pを収得する方法と同様の方法で培養し、最終的にNL耐性変異株を獲得した。
【0116】
前記方法で得られた変異株は、コリネバクテリウム・グルタミカムKCJ−28(Corynebacterium glutamicum KCJ−28)と命名し、2015年1月22日付でブダペスト条約下の国際寄託機関である韓国微生物保存センターに寄託し、それぞれ受託番号KCCM11662Pを与えられた。
【0117】
前記KCCM11662P::ilvB(W503Q)及びKCCM11662P::ilvB(T96S)を実施例4と同様の方法で培養して、そこからL−ロイシンの濃度を分析した(表6)。
【0118】
【表6】
【0119】
前記2種の新規変異の導入菌株(KCCM11662P::ilvB(W503Q)、KCCM11662P::ilvB(T96S))は、親菌株に比べてL−ロイシン生産能が最大13.3%増加した。
以上の説明から、本出願が属する技術分野の当業者は、本出願がその技術的思想や必須の特徴を変更せず、他の具体的な形態で実施されうることを理解できるだろう。これに関連し、以上で記述した実施例はすべての面で例示的なものであり、限定的なものではないものと理解しなければならない。本出願の範囲は、前記詳細な説明より、後述する特許請求の範囲の意味及び範囲、そしてその等価概念から導き出されるすべての変更または変形された形態が本出願の範囲に含まれるものと解釈されるべきである。