【実施例】
【0049】
<実施例1:2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示したチャート(特許戦略チャート)を
図18に示す。
図1乃至
図5に示した単一の特許請求の範囲とそれに関連する実施態様を表す二次元図形の基本図の組み合わせによって、複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を表現することができる。特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)は、一つの発明に対応して一つ描く。一つの発明とは、特許請求の範囲における一つの独立項とそれに従属する1又は2以上の従属項からなる群をいう。同一特許においてカテゴリーが異なる発明や、同一の特許出願に由来する分割出願の発明や、利用関係にある発明は特許発明が重なる場合があるので、その場合は特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)は重畳的に描く。座標の設定の仕方により、高いポジションと低いポジションが観念されるので、ポジションの高低を反映することを考慮して、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置する。
【0050】
<実施例2:2本の座標軸によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示したチャート(特許戦略チャート)を
図19に示す。基本的には
図18に示したチャートの作成と同様の規則に基づいて特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置する。座標の設定の仕方は
図8乃至
図17に例を示したが、これらに限らず種々の態様があり得る。時間、数量又は比率など数字で表される定量的な指標に限定されず、技術的特徴の観点や法域の観点やビジネスやマーケティングなどのフレームワークで用いられる観点によって表した定性的な指標であってもよい。また、チャートの目的によって、ポジションを観念しない分析ならば座標のない領域を全部又は一部に設け、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)とそれに関連した実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)を配置してもよい。
【0051】
<実施例3:同心半円によって構成された座標が設けられた平面に複数の特許請求の範囲と実施態様を表す二次元図形が配置された例>
複数の特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性の図示したチャート(特許戦略チャート)を
図20に示す。同心半円又は同心円によって構成された座標は、地形図における等高線と同じように、中心が高いポジションで周辺が低いポジションである場合、あるいはその逆である場合に利用することが好ましい。
【0052】
<実施例4:OTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬の分野において、本発明の特許戦略チャートを作成した事例>
以下に示す工程からなる手順によって、本発明の特許戦略チャートを作成した。
【0053】
工程1)解析対象とする製品分野と、その製品に関連する技術分野を設定する。
解析対象とする製品分野をOTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬の分野と定めた。
【0054】
工程2)その製品分野に属する実施態様の情報を収集する。
販売されているOTC医薬品(いわゆる一般用医薬品)であるアレルギー用点眼薬のメーカー及び成分に関する情報を『「2018−19 OTC医薬品事典第16版」編集 一般社団法人日本OTC医薬品情報研究会、編集協力 日本OTC医薬品協会、発行所 株式会社じほう、2018年4月15日発行』から製品関連情報を収集した。
図21に示す。
【0055】
工程3)その技術分野に属する特許及び特許出願を抽出する。
特許データベースを用い、「FI=A61K9/08」and「特許権者=上記製品関連情報から抽出したメーカー」and「請求項にアレルギー又は花粉をキーワードとして含む」、という条件で検索を行い、特許権が存続中の特許11件を抽出した。
【0056】
工程4)抽出した個々の特許又は特許出願の特許請求の範囲を、独立項及びその従属項からなる発明ごとに群分けする。
各特許について特許請求の範囲を独立項及びその従属項からなる発明ごとに群分けした。
【0057】
工程5)各請求項において文言を構成要素ごとに分節する。
各請求項において、文言を構成要素ごとに分節した。以下、工程9までの処理について、
図21に示したB社の特許に関して行った事例を
図22に示す。
【0058】
工程6)各構成要素を、記載ぶりの抽象性の程度によって上位概念、明細書に列挙された下位概念又は実施例における具体的な記載の3段階のレベルに仕分けする。
各構成要素を、記載ぶりの抽象性の程度によって上位概念、明細書に列挙された下位概念又は実施例における具体的な記載の3段階のレベルに仕分けした。
【0059】
工程7)群分けした各発明の中で最も範囲が広い請求項の構成要素において、最も抽象性の程度の低いものが上記のレベルのどれにあたるか、また同レベルのものの個数について、情報を抽出する。
群分けした各発明の中で最も範囲が広い請求項1の構成要素において、最も抽象性の程度の低いものは、実施例における具体的な記載のレベルだった。具体的には、構成要素Aの「プラノプロフェンまたはその薬理学的に許容される塩」と構成要素Bの「クロモグリク酸およびその塩」が実施例における具体的な記載にあたり、それらは2個だった。
【0060】
工程8)特許請求の範囲を略扇形(第2表示)で表現するにあたり、上位概念、下位概念及び実施例における具体的な記載の3段階のレベルに対応して、順に、略扇形の半径の長さを「長」、「中」、「短」のいずれかに決定する。
上記のとおり、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の半径の長さを「短」と決定した。
【0061】
工程9)さらに、記載ぶり抽象性の程度が最も低い構成要素の個数が1のとき略扇形の中心角は「広」、同程度のものの個数が2以上のとき略扇形(第2表示)の中心角は「狭」と決定する。
上記のとおり、特許B1は、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであり、その個数は2だったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の中心角を「狭」と決定した。特許B2は、最も抽象性の程度の低いものは実施例における具体的な記載レベルであり、その個数は1だったので、それに対応して、略扇形(第2表示)の中心角を「広」と決定した。
【0062】
工程10)ある特許の特許権者または出願人と、ある実施態様の実施者とが同一である場合、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の中心角が当該実施態様を表す点又は点に近似しうる文字又は図形等(第1表示)に重なるか、その付近に位置するよう配置する。ここで、略扇形(第2表示)が複数になるときは、放射状に配置する。
B社の製品b1、b2、b3及びb4ならびに特許B1及び特許B2を図形で表したものを
図23に示す。
【0063】
工程11)一方、実施者が第三者の場合、実施態様が特許請求の範囲に包含されるときは、実施態様を表す点等(第1表示)を特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の内部に位置する様に配置し、包含されないときは、実施態様を表す点等(第1表示)を特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)の外部に位置する様に配置する。このとき、具備しない構成要素が一つならば近い距離に、具備しない構成要素が二つ、三つとなるにつれて遠い距離に配置する。また、発明の構成要素を上位概念化して拡張していくことを仮定したとき、その範囲に実施態様が該当する場合は、その発明に対応する略扇形(第2表示)の中心角の頂点を始点とし円弧上の一点を通過して延長した直線上に実施態様を表す点等を配置する。
【0064】
工程12)当該製品分野、技術分野における任意の指標によって設定された二次元の座標を設定し、その製品分野に属する実施態様の情報と技術分野に関連する特許及び/又は特許出願の情報に基づいて、実施態様を表す点等(第1表示)ならびに特許及び/又は特許出願を表す略扇形(第2表示)を配置する。
ここで、工程11及び工程12においては、付箋紙、模型又は駒等ならびに型紙を利用して配置を検討することが可能である。
【0065】
具体的には、付箋紙、模型又は駒等ならびに型紙を利用して、コラージュ又は貼り絵の技法によって特許戦略チャートの部品を作製しても良い。より詳細には、実施態様を表す図形(第1表示)を船形の第1部材として形成し、特許請求の範囲を表す略扇形(第2表示)を第2部材として形成する。そして、第2部材の扇形の中心角に船形の第1部材が接し、第2部材の扇形の(内側の)円弧が船形の第1部材と接しないように配置されて結合する。
【0066】
ただし、工程11及び工程12においては、Microsoft(登録商標)Office PowerPointなどのコンピューターソフトウェアによる操作性を利用することがさらに望ましい。長さ、角度及び位置を数値入力で微調整したり、複数の図形をグループ化して複製や移動をしたり、操作を戻して前後を比較したり、途中の状態又は結果を保存したり、という操作はコンピューターソフトウェアならではである。これらの操作性が綿密な検討を反映させた結果物の仕上がりに大きく影響する。
【0067】
工程13)さらに、周辺状況を表す補助線、記号及び図形(第3表示)を任意に配置する。
B社以外の製品関連情報、特許関連情報も解析し、工程11、12及び13も加えてチャート全体を作成したのが
図24及び
図25である。
【0068】
上記の手順で作成した、実施態様を点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形(第1表示)、特許請求の範囲を略扇形(第2表示)及び任意の座標軸からなる座標、ならびに周辺状況を表す補助線、記号、図形(第3表示)を任意に含む、特許請求の範囲に対する実施態様の包含関係及び/又は関連性を図示する電子的手段により表示したチャートにおいて、点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形(第1表示)を他のアプリケーションに格納された製品関連情報(メーカー、原材料、成分、構成など)とリンクし、略扇形(第2表示)を他のアプリケーションに格納された特許関連情報(出願情報、経過情報、登録情報、公報情報など)とリンクし、さらに当該製品関連情報と特許関連情報をデータベースとして構成すれば、製品及び特許情報の管理を行うための管理システムとして有用である。その概念図を
図26に示す。
【0069】
<実施例5:PETボトル詰め緑茶飲料の分野において、本発明の特許戦略チャートを時系列に複数回作成し、アニメーション映像化した事例>
実施例4に示したのと同様の手順で経時的に複数回にわたり特許戦略チャートを作成すると、
図27、
図28、
図29及び
図30のような変化を有するチャートの集合が想定される。
図27乃至
図30は、具体的な個々の特許の解析には基づかないイメージ図である。チャート内の各要素(すなわち、点又は点に近似しうる任意の文字及び又は図形等(第1表示)、略扇形(第2表示)、補助線、記号及び図形(第3表示)の存否、位置、大きさ及び方向等)の変化を、コンピュータープログラムを用いて連続的なアニメーション映像として表示することができる。
【0070】
上記4枚の特許戦略チャート(イメージ図)につき、Microsoft(登録商標)Office PowerPointを用い、4枚のスライドに編集し、スライドショー機能を用いて1秒間隔で連続表示した。画面切り替えのフェードや時系列を表す時間軸の表示も用い、連続的なイメージの切り替えを補助する効果を加えて1本のアニメーション映像を作製した。これにより、俯瞰的かつ経時的に当該分野の製品及びそれに関連する特許の状況変化の経緯を短時間で認識することが可能となった。
【0071】
なお、日本国特許庁から特許情報標準データが週1回の頻度でリリースされており、日本国内の商用データベースでも同程度の頻度でデータ更新されている。それらの情報源に基づき、週1回の頻度で変更点を反映した特許戦略チャートを作製し蓄積することは可能である。更新作業を継続することで、作業者は状況変化をモニターすることができ、また、関係者と情報共有することが可能となる。