(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記平角導体は、前記スロットに設けられる前記線状部と、異なる前記スロットの間において前記線状部を連結する架橋部と、を有する複数のコイルセグメントが、互いに接合されて構成され、
前記コイルセグメントの各々において、前記線状部には、異なる前記スロットに設けられる第1線状部と、第2線状部と、が含まれ、
第1のコイルセグメントの前記第1線状部と前記第2線状部とが、異なる前記スロットの前記径方向の最も内側に位置する部分にそれぞれ配置され、
第2のコイルセグメントの前記第1線状部と前記第2線状部とが、前記第1のコイルセグメントの前記第1線状部と前記第2線状部とを前記周方向の両側から挟み込むようにして、前記第1のコイルセグメントが挿通された前記スロットとは異なる前記スロットの前記径方向の最も内側に位置する部分にそれぞれ配置され、
前記第1のコイルセグメントおよび前記第2のコイルセグメントの少なくとも一方は、前記第1平角導体に含まれている請求項1に記載の回転電機の固定子。
前記第1のコイルセグメントは、前記第1線状部および前記第2線状部の前記短辺側がそれぞれ前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部を有し、
前記第2のコイルセグメントは、前記第1線状部および前記第2線状部の前記短辺側がそれぞれ前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部を有する請求項2に記載の回転電機の固定子。
前記第1のコイルセグメントは、前記第1線状部および前記第2線状部の前記長辺側がそれぞれ前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部と2つの前記捩部とを有し、
前記第2のコイルセグメントは、前記第1線状部および前記第2線状部の前記短辺側がそれぞれ前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部を有する請求項2に記載の回転電機の固定子。
前記第1のコイルセグメントは、前記第1線状部および前記第2線状部の前記長辺側がそれぞれ前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部と2つの前記捩部とを有し、
前記第2のコイルセグメントは、前記第1線状部の前記短辺側が前記径方向に向き、前記第2線状部の前記長辺側が前記径方向に向き、挿通された異なる前記スロットの間の区間において、2つの前記折曲部と1つの前記捩部を有する請求項2に記載の回転電機の固定子。
少なくとも1つの前記スロットには、前記径方向の最も外側に位置し前記断面における一対の前記短辺側が前記径方向に向いた前記線状部が配置されている請求項1に記載の回転電機の固定子。
少なくとも1つの前記スロットは、前記径方向の内側において互いに平行となる側面を有し、前記側面に対して、前記線状部の前記長辺側が対向して配置されている請求項1に記載の回転電機の固定子。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に、図面を参照しながら、本発明の第1から第5実施形態について説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の第1から第5実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。
【0009】
(第1実施形態)
図1を参照して、回転電機100を構成する固定子110の概要および回転子120について説明する。
図1は、第1実施形態に係る回転電機100の横断面図である。
【0010】
図1に示すように、回転電機100は、例えば、永久磁石型として構成されている。回転電機100は、円筒状の固定子110、および固定子110の内側に中心軸線C1の回りで回転自在に固定子110と同軸的に設けられ固定子110の界磁空間に配置された回転子120と、を有している。
以下の説明では、回転電機100の中心軸線C1の延在方向を軸方向、中心軸線C1回りに回転する方向を周方向、軸方向および周方向に直交する方向を径方向と称する。
【0011】
図1に示すように、固定子110は、円筒状の固定子鉄心10と、固定子鉄心10に巻き付けられたコイル20(平角導体から構成された回転子巻線)等を有している。固定子鉄心10は、ヨーク16と複数のティース14とを有している。固定子鉄心10は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板を複数枚、中心軸線C1において同芯状に積層して構成されている。複数枚の電磁鋼板は、固定子鉄心10の外周面の複数個所を溶接することにより、互いに積層された状態で連結されている。固定子鉄心10は、複数枚の電磁鋼板が積層された状態において、軸方向の一端に位置する一端面10aと、軸方向の他端に位置する他端面10bと、を有している。一端面10aおよび他端面10bは、中心軸線C1と直交して延在している。固定子鉄心10は、回転子120に対向する内周面10cと、図示せぬケーシングに支持される外周面10dと、を有している。
【0012】
固定子鉄心10の内周部には、固定子鉄心10の周方向に離間した複数(例えば48個)のティース14が形成されている。各ティース14は、
図1に示す中心軸線C1に向かって延在し、固定子鉄心10の周方向に沿って等間隔を置いて並んでいる。すなわち、固定子鉄心10は、径方向外方に位置する円環状のヨーク16と、ヨーク16の内周面から中心軸線C1に向かって径方向内方に延出した複数のティース14と、を一体に有している。
【0013】
固定子鉄心10の内周部には、固定子鉄心10の周方向に隣合うティース14の間に、複数(例えば48個)のスロット12が形成されている。スロット12の幅は、固定子鉄心10の径方向の外側から内側に向かって相対的に狭く形成されている。少なくとも1つのスロット12には、複数本のコイル20のうち、固定子鉄心10の径方向の最も内側に位置し断面における一対の短辺側が径方向に向いた第1平角導体と、第1平角導体よりも径方向の外側に位置し断面における一対の長辺側が径方向に向いた第2平角導体とが配置されている。平角導体の詳細は、後述する。
各スロット12は、複数種類のコイルセグメント(第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27)が軸方向に挿通され固定子鉄心10の径方向に並べて配置される複数の領域1T、2T、3T、4T、5T、6T、7Tおよび8Tを有している。ここで、各スロット12の複数の領域1Tから8Tは、固定子鉄心10の周方向に環状に並べられた状態において、後述するようにコイルセグメントの1レーンから8レーンを構成する。各スロット12は、固定子鉄心10の一端面10aから他端面10bまで中心軸線C1に延在し、固定子鉄心10の周方向に等間隔を置いて並んでいる。各スロット12は、固定子鉄心10の内周面に開口し、この内周面から固定子鉄心10の放射方向(径方向外方)に延出されている。各スロット12は、固定子鉄心10の軸方向の全長に亘って延在し、その一端が固定子鉄心10の一端面10aに開口し、その他端が固定子鉄心10の他端面10bに開口している。
なお、各スロット12は、本実施の形態において、固定子鉄心10の内周面に開口した例を示したが、固定子鉄心10の内周面に開口しない構成とすることもできる。また、各スロット12は、固定子鉄心10の軸方向に平行に延在する例を示したが、各スロット12が軸方向に対して傾いて延在した、すなわち、いわゆるスキューした構成とすることもできる。
【0014】
複数本のコイル20は、断面が長方形状に構成されている。各々のコイル20は、各スロット12に挿通され、隣合う各スロット12の間に位置する各ティース14に装着されている。コイル20は、スロット12に設けられる線状部と、異なるスロット12の間において線状部を連結する架橋部と、を有する複数のコイルセグメントが、互いに接合されて構成されている。コイルセグメントの各々において、線状部には、異なるスロット12に設けられる第1線状部と、第2線状部と、が含まれている。コイル20は、第1のコイルセグメントと第2のコイルセグメントとを含む複数のコイルセグメントが互いに接合されて構成されている。第1のコイルセグメントの第1線状部と第2線状部とが、異なるスロット12の径方向の最も内側に位置する部分にそれぞれ配置される。第2のコイルセグメントの第1線状部と第2線状部とが、第1のコイルセグメントの第1線状部と第2線状部とを周方向の両側から挟み込むようにして、第1のコイルセグメントが挿通されたスロットとは異なるスロットの径方向の最も内側に位置する部分にそれぞれ配置される。第1のコイルセグメントおよび第2のコイルセグメントの少なくとも一方は、第1平角導体に含まれている。コイルセグメントの詳細は、後述する。
図2および
図3に示すように、コイル20は、固定子鉄心10の一端面10aから軸方向の外側に向かって延出する第1コイルエンド20aと、固定子鉄心10の他端面10bから軸方向の外側に向かって延出する第2コイルエンド20bと、を有している。複数本のコイル20のうちの一部のコイル20は、スロット12から導出された部分において、固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部を有している。また、複数本のコイル20のうちの一部のコイル20は、スロット12から導出された部分において、固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部と、周方向の回りで捩られた捩部と、を有している。折曲部や捩部の詳細は、後述する。
【0015】
図1に示すように、回転子120は、中心軸線C1を中心に回転される円柱形状のシャフト(回転軸)40と、シャフト40の軸方向のほぼ中央部を挿通して接合した円筒形状の回転子鉄心42と、回転子鉄心42に埋め込まれた複数の永久磁石44と、を有している。
【0016】
回転子鉄心42は、磁性材、例えば、ケイ素鋼などの円環状の電磁鋼板42Sを複数枚、同芯状に積層した積層体として構成されている。回転子鉄心42は、中心軸線C1と同軸的に形成された内孔42aを有している。回転子鉄心42の内孔42aに、シャフト40が挿通および嵌合されて、回転子鉄心42からシャフト40が中心軸線C1と同軸的に延在している。回転子鉄心42は、固定子鉄心10の内側に僅かな隙間(エアギャップ)を置いて、固定子鉄心10と同軸的に配置されている。すなわち、回転子鉄心42の外周面は、僅かな隙間をおいて、固定子鉄心10の内周面に相当するティース14の先端面に対向している。
回転子鉄心42は、それぞれ回転子鉄心42の放射方向(径方向外方)に延びるd軸、およびd軸に対して電気的に90°離間したq軸を有している。実施形態では、隣合う磁極間の境界および中心軸線C1を通って放射方向に延びる軸をq軸とし、q軸に対して電気的に直角な方向をd軸としている。d軸およびq軸は、回転子鉄心42の周方向に交互に、かつ、所定の位相で設けられている。回転子鉄心42には、軸方向に貫通する複数の永久磁石44用の孔が形成されている。
【0017】
永久磁石44は、回転子鉄心42に複数設けられた孔に装填されて固定されている。永久磁石44は、回転子鉄心42の軸方向の全長に亘って延在し、回転子鉄心42の周方向に所定の間隔を置いて配列されている。各永久磁石44は、回転子鉄心42の周方向において、各d軸の両側に配置されている。各永久磁石44は、断面が矩形状の細長い平板状に形成され、回転子鉄心42の軸方向の長さとほぼ等しい長さを有している。永久磁石44は、回転子鉄心42の中心軸線C1と直交する断面で視認した場合、それぞれd軸に対して傾斜している。各d軸の両側に配置されている2つの永久磁石44は、例えば、ほぼV字状に並んで配置されている。ここでは、永久磁石44の内周側の端はそれぞれd軸に隣接し、僅かな隙間をおいて互いに対向している。永久磁石44の外周側の端は、回転子鉄心42の周方向に沿ってd軸から離間し、回転子鉄心42の外周面の近傍およびq軸の近傍に位置している。これにより、永久磁石44の外周側の端は、隣合う磁極の永久磁石44の外周側の端に対して、q軸を挟んで隣接している。
なお、各永久磁石44は、本実施の形態において、それぞれd軸に対して傾斜している例を示したが、各永久磁石44がd軸に対して傾斜しない構成とすることもできる。
【0018】
ここで、回転電機100は、各相(U相、V相およびW相の3相)の交流電源によって駆動される。例えば、U相に対応し並列接続された2本のコイル20、V相に対応し並列接続された2本のコイル20、およびW相に対応し並列接続された2本のコイル20が、分布型の配置により、ティース14に装着されている。すなわち、それぞれ並列接続された各相に対応する合計8本のコイル20が、ティース14に装着されている。ここで、固定子鉄心10の周方向に配置された48個のスロット12のうち、任意のスロット12を基準としたn番目(n番は不図示、以下同様)およびn+1番目のスロット12には、U相の2本のコイル20が挿通されている。nは、1、7、13、19、25、31、37および43である。同様に、48個のスロット12のうち、n+2番目およびn+3番目には、V相の2本のコイル20が挿通されている。同様に、48個のスロット12のうち、n+4番目およびn+5番目には、W相の2本のコイル20が挿通されている。各スロット12には、合計8本のコイルセグメントが整列された状態で挿通されている。
【0019】
図1から
図4を参照して、固定子110を構成するコイル20の概要について説明する。
図2は、固定子110を固定子鉄心10の一端面10a側(各コイルセグメントの非溶接側)から示す斜視図、
図3は、固定子110を固定子鉄心10の他端面10b側(各コイルセグメントの溶接側)から示す斜視図、
図4は、固定子鉄心10のスロット12に挿通される第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27を示す斜視図である。
ここで、
図1には、スロット12の内部が固定子鉄心10の径方向外方から内方に向かって区切られた複数の領域1T(スロット12の最も外方に位置する領域)、2T、3T、4T、5T、6T、7Tおよび8T(スロット12の最も内方に位置する領域)を表記している。各々の領域に、コイル20が挿通される。
また、
図4には、固定子鉄心10の周方向に配置された各スロット12の領域1T、2T、3T、4T、5T、6T、7Tおよび8Tに対応した、1レーン(最外周レーン)、2レーン、3レーン、4レーン、5レーン、6レーン、7レーンおよび8レーン(最内周レーン)を、1L、2L、3L、4L、5L、6L、7Lおよび8Lで表記している。ここで、例えば、固定子鉄心10の周方向に環状に配置された48個のスロット12の各々の領域1Tをつなぐ仮想的な同一円を、48個のスロット12における1レーンと称している。同様に、例えば、48個のスロット12の各々の領域8Tをつなぐ仮想的な同一円を、48個のスロット12における8レーンと称している。
【0020】
図2と
図4を併用して示すように、固定子鉄心10の一端面10a側において、各相のそれぞれ1本目のコイル20は、各スロット12の領域1T(最外周の1レーンに相当)に挿通された第1コイルセグメント21、各スロット12の領域2T(2レーンに相当)と領域3T(3レーンに相当)にまたがって挿通された第5コイルセグメント25、各スロット12の領域4T(4レーンに相当)と領域5T(5レーンに相当)にまたがって挿通された第6コイルセグメント26、各スロット12の領域6T(6レーンに相当)と領域7T(7レーンに相当)にまたがって挿通された第7コイルセグメント27、および各スロット12の領域8T(最内周の8レーンに相当)に挿通された第3コイルセグメント23により構成されている。
各相のそれぞれ2本目のコイル20は、1本目のコイル20と電気的に並列接続される。各相のそれぞれ2本目のコイル20は、各スロット12の領域1Tに挿通された第2コイルセグメント22、第5コイルセグメント25、第6コイルセグメント26、第7コイルセグメント27、および各スロット12の領域8Tに挿通された第4コイルセグメント24により構成されている。
【0021】
図3と
図4を併用して示すように、固定子鉄心10の他端面10b側において、各相のそれぞれ1本目のコイル20を構成する第1コイルセグメント21、第5コイルセグメント25、第6コイルセグメント26、第7コイルセグメント27、および第3コイルセグメント23は、その順番で溶接されて、溶接ビード35が形成されている。同様に、各相のそれぞれ2本目のコイル20を構成する第2コイルセグメント22、第5コイルセグメント25、第6コイルセグメント26、第7コイルセグメント27、および第4コイルセグメント24は、その順番で溶接されて、溶接ビード35が形成されている。溶接ビード35は、互いに隣接した異なるコイルセグメントの接合面に相当する端部同士が、例えばレーザー光の照射により部分的に溶融および冷却硬化されて形成されている。
ここで、コイル20に対する電力の入力端子である接続端子30は、U相の位相の電流が入力される2本のコイル20の口出し線に接続されたU相接続端子31と、V相の位相の電流が入力される2本のコイル20の口出し線に接続されたV相接続端子32と、W相の位相の電流が入力される2本のコイル20の口出し線に接続されたW相接続端子33と、によって構成されている。U相接続端子31を介してU相の2本のコイル20に交流電流が入力され、V相接続端子32を介してV相の2本のコイル20に交流電流が入力され、W相接続端子33を介してW相の2本のコイル20に交流電流が入力されると、固定子110(ティース14)に所定の鎖交磁束が形成される。
【0022】
図4を参照して、コイル20を構成する複数のコイルセグメント(第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27)の概要について説明する。
【0023】
図4に示すように、第1コイルセグメント21、第2コイルセグメント22、第3コイルセグメント23、第4コイルセグメント24、第5コイルセグメント25および第7コイルセグメント27は、長手方向に垂直な断面(横断面)が矩形状からなる平角導体により構成されている。平角導線によって構成された各々のコイルセグメント(第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27)は、例えば、横断面において互いに対向した長辺20s(第1辺)と、互いに対向した短辺20t(第2辺)を有している。一対の長辺20sは、コイルセグメントの軸方向と交差して対向している。一対の短辺20tは、長辺20sよりも短く、長辺20sと交差した状態で、コイルセグメントの軸方向と交差して対向している。各々のコイルセグメントは、長辺20sとコイルセグメントの軸方向に延在した外縁20uとで構成され互いに対向した一対の長側面20M(第1側面)と、短辺20tと外縁20uとで構成され長側面20Mと交差し互いに対向した一対の短側面20N(第2側面)とを有している。各々のコイルセグメントにおいて、長側面(第1側面)を表す場合は符号の末尾の部分にMを付し、短側面(第2側面)を表す場合は符号の末尾の部分にNを付している。平角導体は、横断面における四隅をR加工している。平角導体は、横断面における四隅を面取り加工したり、あるいは横断面における四隅に加工を施すことなく直角のままとしてもよい。第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27は、十分な導電性を有する銅やアルミニウムで形成されている。
【0024】
各相のそれぞれ2本のコイル20において、第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27は、固定子鉄心10に周方向に複数並べて設けられた各スロット12に対して、分布型の配置により、相対的に2つずつ位置をずらして挿通されている。すなわち、n番目からn+47番目まで並んだ48個のスロット12のうち、例えば、n番目とn+1番目のスロット12にはU相のコイル20が挿通され、相対的に2つずれたn+2番目とn+3番目のスロット12にはV相のコイル20が挿通され、さらに相対的に2つずれたn+4番目とn+5番目のスロット12にはW相のコイル20が挿通されている。nは、1、7、13、19、25、31、37および43である。このように、各相のそれぞれ2本のコイル20は、挿通されるスロット12の位置が異なるだけで、コイル20を構成するコイルセグメント(第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27)間の結線状態については同一である。一方、各相のそれぞれ2本のコイル20は、同じ相の1本目と2本目のコイル20の結線状態が異なる。
【0025】
各相のそれぞれ1本目のコイル20は、一対の屈折部が反時計方向に屈折した第1コイルセグメント21、一対の屈折部が互いに離間するように時計方向と反時計方向に屈折した第5コイルセグメント25と第6コイルセグメント26と第7コイルセグメント27、および一対の屈折部が時計方向に屈折した第3コイルセグメント23において、固定子鉄心10の径方向に隣接する各接合面が溶接されることにより、1本の配線を構成する。なお、
図4においては、第1コイルセグメント21から第7コイルセグメント27を1つずつ図示している。
各相のそれぞれ2本目のコイル20は、一対の屈折部が反時計方向に屈折した第2コイルセグメント22、一対の屈折部が互いに離間するように時計方向と反時計方向に屈折した第5コイルセグメント25と第6コイルセグメント26と第7コイルセグメント27、および一対の屈折部が時計方向に屈折した第4コイルセグメント24において、固定子鉄心10の径方向に隣接する各接合面が溶接されることにより、1本の配線を構成する。
各相のそれぞれ2本のコイル20は、各コイルセグメントの接合面が、例えば、粉体塗装され、あるいはワニス等の絶縁材料で覆われて、電気的絶縁が担保されている。また、各コイルセグメントの接合面以外の表面は、例えば、エナメル等により被膜されて、電気的絶縁が担保されている。各コイルセグメントは、スロット12の内面に当接して環状に設けられた
図1に示す絶縁紙29の中に挿通されている。
【0026】
図5を参照して、スロット12の最も外方の領域1T(1レーンに相当)に位置する第1コイルセグメント21の構成について説明する。
図5は、スロット12の1レーン(最外周レーン)に位置する第1コイルセグメント21を示す斜視図である。
【0027】
図5に示すように、第1コイルセグメント21は、異なるスロット12の領域1Tに挿通されている。第1コイルセグメント21は、スロット12に挿通される第1延伸部21Pと、第1延伸部21Pが挿通されたスロット12から固定子鉄心10の周方向(固定子鉄心10の一端面10a側から他端面10bに向かって視認した場合、時計方向側)に5つ離れたスロット12に挿通される第2延伸部21Qと、固定子鉄心10の一端面10a側において第1延伸部21Pと第2延伸部21Qとを架橋する架橋部21Rと、を一体に有している。各々のコイルセグメントにおいて、第1延伸部に関する構成を表す場合は符号の末尾の部分にPを付し、第2延伸部に関する構成を表す場合は符号の末尾の部分にQを付し、架橋部に関する構成を表す場合は符号の末尾の部分にRを付している。
【0028】
第1コイルセグメント21の第1延伸部21Pは、第1線状部21Paと、第1屈折部21Pbと、第1接合面21Pcと、を有している。
第1線状部21Paは、固定子鉄心10の一端面10a側から他端面10b側まで貫通するように、スロット12に対して中心軸線C1と平行に挿通されている。
第1屈折部21Pbは、固定子鉄心10の他端面10b側において、第1線状部21Paの端部から延出されている。第1屈折部21Pbは、固定子鉄心10の一端面10a側から他端面10bに向かって視認した場合に、固定子鉄心10の周方向の反時計方向側に屈折している。第1屈折部21Pbは、固定子鉄心の軸方向、すなわち、中心軸線C1に平行な第1線状部21Paに対して反時計方向側に約80°屈折した状態で図示されているが、第1線状部21Paに対して例えば30°から85°程度屈折させてもよい。第1屈折部21Pbは、固定子鉄心10の周方向に隣合う各スロット12の領域1Tに沿うように、固定子鉄心10の周方向に若干湾曲している。
第1接合面21Pcは、第1屈折部21Pbの先端に位置し、固定子鉄心10の径方向に隣合うコイルセグメントと溶接により機械的および電気的に接合されて、溶接ビード35が形成される部分である。第1接合面21Pcは、固定子鉄心10の他端面10bとほぼ平行に位置している。
【0029】
第1コイルセグメント21の第2延伸部21Qは、第1延伸部21Pと相似形状に形成されている。第2延伸部21Qは、第1延伸部21Pと同様の構成からなる第2線状部21Qaと、第2屈折部21Qbと、第2接合面21Qcと、を有している。
【0030】
第1コイルセグメント21の架橋部21Rは、固定子鉄心10の一端面10a側において、第1線状部21Paと第2線状部21Qaとを連結している。架橋部21Rは、第1屈曲端部21Raと、第1延在部21Rbと、連結部21Rcと、第2延在部21Rdと、第2屈曲端部21Reと、第1捩部21Rfと、第2捩部21Rgと、をその順番で一体に有している。第1屈曲端部21Raは、第1線状部21Paと連なり固定子鉄心10の周方向の時計方向に向かって屈曲している。第1屈曲端部21Raは、スロット12から導出された部分において周方向に折り曲げられた折曲部に相当する。第1延在部21Rbは、第1屈曲端部21Raから固定子鉄心10の周方向の時計方向と径方向外方に延在している。第2屈曲端部21Reは、第2線状部21Qaと連なり固定子鉄心10の周方向の反時計方向に向かって屈曲している。第2屈曲端部21Reは、スロット12から導出された部分において周方向に折り曲げられた折曲部に相当する。第2延在部21Rdは、第2屈曲端部21Reから固定子鉄心10の周方向の反時計方向と径方向外方に延在している。連結部21Rcは、S字状に湾曲して形成され、第1延在部21Rbと第2延在部21Rdとを連結している。第1延在部21Rbの部分に、第1コイルセグメント21の軸方向の回りに捩れた第1捩部21Rfが形成されている。第1捩部21Rfは、固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部に相当する。第1コイルセグメント21には、固定子鉄心10に対する第1延伸部21Pと架橋部21Rの向きを異ならせるために、第1屈曲端部21Raおよび第1捩部21Rfが設けられている。同様に、第2延在部21Rdの部分に、第1コイルセグメント21の軸方向の回りに捩れた第2捩部21Rgが形成されている。第2捩部21Rgは、固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部に相当する。第1コイルセグメント21には、固定子鉄心10に対する第2延伸部21Qと架橋部21Rの向きを異ならせるために、第2屈曲端部21Reおよび第2捩部21Rgが設けられている。
架橋部21Rの連結部21Rcにおける長側面21M等は、固定子鉄心10の一端面10aに向いて配置される。架橋部21Rの連結部21Rcは、固定子鉄心10の一端面10aに対してほぼ平行の部分を含んでいる。第1線状部21Paの長側面21Mおよび第2線状部21Qaの長側面21Mは、それぞれ固定子鉄心10の径方向に向いて配置されている。
【0031】
第1コイルセグメント21において、架橋部21R、第1線状部21Paの上端、および第2線状部21Qaの上端は、固定子鉄心10の一端面10aにおいて、第1コイルエンド20aを構成している。一方、第1コイルセグメント21において、第1線状部21Paの下端と第1屈折部21Pbと第1接合面21Pc、および第2線状部21Qaの下端と第2屈折部21Qbと第2接合面21Qcは、固定子鉄心10の他端面10bにおいて、第2コイルエンド20bを構成している。この構成は、第2コイルセグメント22から第7コイルセグメント27についても、同様である。
【0032】
スロット12の領域1T(1レーンに相当)に位置する第2コイルセグメント22の構成について説明する。
第2コイルセグメント22は、上述した第1コイルセグメント21と相似形状で構成されている。
【0033】
第2コイルセグメント22は、異なるスロット12の領域1Tに挿通されている。第2コイルセグメント22は、第1コイルセグメント21よりも大きく形成されている。第2コイルセグメント22の第1線状部22Paと第2線状部22Qaは、第1コイルセグメント21の第1線状部21Paと第2線状部21Qaを、固定子鉄心10の周方向の両側から挟むように配置されている。
第2コイルセグメント22は、スロット12に挿通される第1延伸部と、第1延伸部が挿通されたスロット12から固定子鉄心10の周方向(時計方向側)に7つ離れたスロット12に挿通される第2延伸部と、固定子鉄心10の一端面10a側において第1延伸部と第2延伸部とを架橋する架橋部22Rと、を一体に有している。
第1延伸部は、第1線状部22Paと、第1屈折部22Pbと、第1接合面と、を有している。第1延伸部は、第1コイルセグメント21の第1延伸部21Pの構成と同様である。
第2延伸部は、第1延伸部と同様の構成からなる第2線状部22Qaと、第2屈折部22Qbと、第2接合面と、を有している。第2延伸部は、第1延伸部と相似形状に形成されている。
架橋部22Rは、第1屈曲端部と、第1延在部と、連結部と、第2延在部と、第2屈曲端部と、第1捩部と、第2捩部と、を一体に有している。架橋部22Rは、第1コイルセグメント21の架橋部21Rの構成と同様である。
【0034】
図6を参照して、スロット12の領域2Tおよび3T(2および3レーンに相当)に位置する第5コイルセグメント25の構成について説明する。
図6は、スロット12の2レーンと3レーンにまたがって位置する第5コイルセグメント25を示す斜視図である。
【0035】
図6に示すように、第5コイルセグメント25は、異なるスロット12の領域2Tと領域3Tにまたがって挿通されている。固定子鉄心10の径方向に相対的に1つ位置が異なる2つの領域3Tおよび2T(例えば3レーンと2レーンを構成)の一方の領域3Tには第5コイルセグメント25の第1線状部25Paが挿通され、他方の領域2Tには第5コイルセグメント25の第2線状部25Qaが挿通されている。
第5コイルセグメント25は、スロット12に挿通される第1延伸部25Pと、第1延伸部25Pが挿通されたスロット12から固定子鉄心10の周方向(反時計方向側)に6つ離れたスロット12に挿通される第2延伸部25Qと、固定子鉄心10の一端面10a側において第1延伸部25Pと第2延伸部25Qとを架橋する架橋部25Rと、を一体に有している。
第1延伸部25Pは、第1線状部25Paと、第1屈折部25Pbと、第1接合面25Pcと、を有している。第1延伸部25Pは、第1コイルセグメント21の第1延伸部21Pの構成と同様である。
第2延伸部25Qは、第1延伸部25Pと同様の構成からなる第2線状部25Qaと、第2屈折部25Qbと、第2接合面25Qcと、を有している。第2延伸部25Qは、第1延伸部25Pと相似形状に形成されている。但し、第2屈折部25Qbは、固定子鉄心10の一端面10a側から他端面10bに向かって視認した場合に、固定子鉄心10の周方向の時計方向側に屈折していることが相違する。
架橋部25Rは、第1屈曲端部25Raと、第1延在部25Rbと、連結部25Rcと、第2延在部25Rdと、第2屈曲端部25Reと、第1捩部25Rfと、第2捩部25Rgと、を一体に有している。第5コイルセグメント25の架橋部25Rは、第1コイルセグメント21の架橋部21Rの構成と同様である。第1屈曲端部25Raおよび第2屈曲端部25Reは、スロット12から導出された部分において周方向に折り曲げられた折曲部に相当する。
【0036】
スロット12の領域4Tおよび5T(4および5レーンに相当)に位置する第6コイルセグメント26の構成について説明する。
第6コイルセグメント26は、上述した第5コイルセグメント25と相似形状で構成されている。
【0037】
第6コイルセグメント26は、異なるスロット12の領域4Tと領域5Tにまたがって挿通されている。固定子鉄心10の径方向に相対的に1つ位置が異なる2つの領域5Tおよび4T(例えば5レーンと4レーンを構成)の一方の領域5Tには第6コイルセグメント26の第1線状部が挿通され、他方の領域4Tには第6コイルセグメント26の第2線状部が挿通されている。第6コイルセグメント26は、第5コイルセグメント25と相似形状である。
第1延伸部は、第1線状部と、第1屈折部26Pbと、第1接合面と、を有している。第1延伸部は、第5コイルセグメント25の第1延伸部25Pの構成と同様である。
第2延伸部は、第2線状部と、第2屈折部26Qbと、第2接合面と、を有している。第2延伸部は、第5コイルセグメント25の第2延伸部25Qの構成と同様である。
架橋部は、第1屈曲端部と、第1延在部と、連結部と、第2延在部と、第2屈曲端部と、第1捩部と、第2捩部と、を一体に有している。架橋部は、第5コイルセグメント25の架橋部25Rの構成と同様である。
【0038】
スロット12の領域6Tおよび7T(6および7レーンに相当)に位置する第7コイルセグメント27の構成について説明する。
第7コイルセグメント27は、上述した第5コイルセグメント25および第6コイルセグメント26と相似形状で構成されている。
【0039】
第7コイルセグメント27は、異なるスロット12の領域6Tと領域7Tにまたがって挿通されている。固定子鉄心10の径方向に相対的に1つ位置が異なる2つの領域7Tおよび6T(例えば7レーンと6レーンを構成)の一方の領域7Tには第7コイルセグメント27の第1線状部27Paが挿通され、他方の領域6Tには第7コイルセグメント27の第2線状部27Qaが挿通されている。第7コイルセグメント27は、第5コイルセグメント25と相似形状である。
第1延伸部は、第1線状部27Paと、第1屈折部27Pbと、第1接合面と、第3捩部と、を有している。第1延伸部は、短側面27Nが固定子鉄心10の径方向に向いていることと、第3捩部を有することを除いて、第5コイルセグメント25の第1延伸部25Pの構成と同様である。
第2延伸部は、第2線状部27Qaと、第2屈折部27Qbと、第2接合面と、を有している。第2延伸部は、第5コイルセグメント25の第2延伸部25Qの構成と同様である。
架橋部は、第1屈曲端部と、第1延在部と、連結部と、第2延在部と、第2屈曲端部と、第2捩部と、を一体に有している。架橋部は、第1捩部を有していないことを除いて、第5コイルセグメント25の架橋部25Rの構成と同様である。
【0040】
図7を参照して、スロット12の最も内方の領域8T(8レーンに相当)に位置する第3コイルセグメント23の構成について説明する。
図7は、スロット12の8レーン(最内周レーン)に位置する第3コイルセグメント23を示す斜視図である。
【0041】
図7に示すように、第3コイルセグメント23は、異なるスロット12の領域8Tに挿通されている。第3コイルセグメント23は、スロット12に挿通される第1延伸部23Pと、第1延伸部23Pが挿通されたスロット12から固定子鉄心10の周方向(時計方向側)に7つ離れたスロット12に挿通される第2延伸部23Qと、固定子鉄心10の一端面10a側において第1延伸部23Pと第2延伸部23Qとを架橋する架橋部23Rと、を一体に有している。
第1延伸部23Pは、第1線状部23Paと、第1屈折部23Pbと、第1接合面23Pcと、第3捩部23Pdと、を有している。第3捩部23Pdは、第1線状部23Paと第1屈折部23Pbとの間において、第3コイルセグメント23の軸方向の回りに捩れている。第1延伸部23Pは、第3捩部23Pdを除いて、第1コイルセグメント21の第1延伸部21Pの構成と同様である。但し、第1屈折部23Pbは、固定子鉄心10の一端面10a側から他端面10bに向かって視認した場合に、固定子鉄心10の周方向の時計方向側に屈折していること、および短側面24Nが固定子鉄心10の径方向に向いて配置されていることが、相違する。
第2延伸部23Qは、第1延伸部23Pと相似形状に形成されている。第2延伸部23Qは、第1延伸部23Pと同様の構成からなる第2線状部23Qaと、第2屈折部23Qbと、第2接合面23Qcと、第4捩部23Qdと、を有している。第4捩部23Qdは、第2線状部23Qaと第2屈折部23Qbとの間において、第3コイルセグメント23の軸方向の回りに捩れている。
架橋部23Rは、第1屈曲端部23Raと、第1延在部23Rbと、連結部23Rcと、第2延在部23Rdと、第2屈曲端部23Reと、を一体に有している。第3コイルセグメント23の架橋部23Rは、第1捩部および第2捩部を有していないことを除いて、第1コイルセグメント21の架橋部21Rの構成と同様である。第1屈曲端部23Raおよび第2屈曲端部23Reは、スロット12から導出された部分において周方向に折り曲げられた折曲部に相当する。
【0042】
スロット12の領域8T(8レーンに相当)に位置する第4コイルセグメント24の構成について説明する。
第4コイルセグメント24は、上述した第3コイルセグメント23と相似形状で構成されている。
【0043】
第4コイルセグメント24は、異なるスロット12の領域8Tに挿通されている。第4コイルセグメント24は、第3コイルセグメント23と相似形状であって、第3コイルセグメント23よりも小さく形成されている。第4コイルセグメント24の第1線状部24Paと第2線状部24Qaは、第3コイルセグメント23の第1線状部23Paと第2線状部23Qaによって、固定子鉄心10の周方向の両側から挟まれるように配置されている。
第4コイルセグメント24は、スロット12に挿通される第1延伸部と、第1延伸部が挿通されたスロット12から固定子鉄心10の周方向(時計方向側)に5つ離れたスロット12に挿通される第2延伸部と、固定子鉄心10の一端面10a側において第1延伸部と第2延伸部とを架橋する架橋部24Rと、を一体に有している。
第1延伸部は、第1線状部24Paと、第1屈折部24Pbと、第1接合面と、第3捩部と、を有している。第1延伸部は、第3コイルセグメント23の第1延伸部23Pの構成と同様である。
第2延伸部は、第1延伸部と同様の構成からなる第2線状部24Qaと、第2屈折部24Qbと、第2接合面と、第4捩部と、を有している。第2延伸部は、第1延伸部と相似形状に形成されている。
架橋部24Rは、第1屈曲端部と、第1延在部と、連結部と、第2延在部と、第2屈曲端部と、を一体に有している。架橋部24Rは、第3コイルセグメント23の架橋部23Rの構成と同様である。
【0044】
図8および
図9を参照して、スロット12における第3コイルセグメント23、第4コイルセグメント24および第7コイルセグメント27の配置(長側面と短側面の向き)について説明する。
図8は、第1実施形態に係る前記固定子の要部を示す斜視図、
図9は、
図8の前記要部を示す横断面図である。
【0045】
図8および
図9に示す第1実施形態において、第3コイルセグメント23および第4コイルセグメント24は、例えば、第1平角導体に含まれている。第1平角導体は、スロット12から導出された部分において、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部を有している。第1実施形態においては、第1平角導体は、スロット12から導出された部分において、固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部を有していない。
また、第7コイルセグメント27は、例えば、第2平角導体に含まれている。第2平角導体は、スロット12から導出された部分において、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部と、折曲部から延び固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部とを有している。
【0046】
第1のコイルセグメント(第3コイルセグメント23)は、第1線状部および第2線状部の短辺側がそれぞれ固定子鉄心10の径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部を有している。第2のコイルセグメント(第4コイルセグメント24)は、第1線状部および第2線状部の短辺側がそれぞれ固定子鉄心10の径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部を有している。
【0047】
図8には、第3コイルセグメント23、第4コイルセグメント24および第7コイルセグメント27の第1線状部および第2線状部を含む第1延伸部および第2延伸部を示している。
図9には、固定子鉄心10の周方向に等間隔(7.5°)に48個設けられたスロット12のうち、任意の位置から定義した、1番目のスロット12(1)、2番目のスロット12(2)、3番目のスロット12(3)、4番目のスロット12(4)、5番目のスロット12(5)、6番目のスロット12(6)および48番目のスロット12(48)を示している。例えば、1番目のスロット12(1)のように、1番目と(1)とを対応させた表記を行っている。同様に、
図9には、固定子鉄心10の周方向に等間隔(30°)に12個設けられた第3コイルセグメント23のうち、1番目のスロット12(1)の位置を基準に定義した、1番目の第1線状部23Pa(1)および2番目の第1線状部23Pa(2)を示している。同様に、11番目の第2線状部23Qa(11)および12番目の第2線状部23Qa(12)を示している。同様に、
図9には、固定子鉄心10の周方向に等間隔(30°)に12個設けられた第4コイルセグメント24のうち、1番目のスロット12(1)の位置を基準に定義した、1番目の第1線状部24Pa(1)および2番目の第1線状部24Pa(2)を示している。同様に、12番目の第2線状部24Qa(12)を示している。同様に、
図9には、固定子鉄心10の周方向に等間隔(7.5°)に48個設けられた第7コイルセグメント27のうち、1番目のスロット12(1)の位置を基準に定義した、1番目の第1線状部27Pa(1)、2番目の第1線状部27Pa(2)、3番目の第1線状部27Pa(3)、4番目の第1線状部27Pa(4)、5番目の第1線状部27Pa(5)、6番目の第1線状部27Pa(6)および48番目の第1線状部27Pa(48)を示している。同様に、
図9には、42番目の第2線状部27Qa(42)、43番目の第2線状部27Qa(43)、44番目の第2線状部27Qa(44)、45番目の第2線状部27Qa(45)、46番目の第2線状部27Qa(46)、47番目の第2線状部27Qa(47)および48番目の第2線状部27Qa(48)を示している。
【0048】
図9に示すように、スロット12には、固定子鉄心10の内周面10c側にテーパ12aが形成されている。このため、スロット12は、固定子鉄心10における周方向の幅が、固定子鉄心10の径方向の最も内方に位置する部分において最も短くなるように形成されている。
【0049】
図8および
図9に示すように、第3コイルセグメント23の第1線状部23Paおよび第2線状部23Qaは、長側面23Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面23Nが固定子鉄心10の径方向に向いている。
第4コイルセグメント24の第1線状部24Paおよび第2線状部24Qaは、第3コイルセグメント23と同様に、長側面24Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面24Nが固定子鉄心10の径方向に向いている。
第7コイルセグメント27の第1線状部27Paは、第3コイルセグメント23および第4コイルセグメント24と同様に、長側面27Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面27Nが固定子鉄心10の径方向に向いている。一方、第7コイルセグメント27の第2線状部27Qaは、第1線状部27Paと異なり、長側面27Mが固定子鉄心10の径方向に向き、短側面27Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。
【0050】
これにより、48個のスロット12の各々の領域8Tをつなぐ仮想的な同一円である8レーン(最外周レーン)では、全ての第3コイルセグメント23および第4コイルセグメント24の長側面が固定子鉄心10の周方向に向き、短側面27Nが径方向に向いている。同様に、48個のスロット12の各々の領域7Tをつなぐ7レーンでは、全ての第7コイルセグメント27の第1線状部27Paの長側面27Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面27Nが径方向に向いている。一方、48個のスロット12の各々の領域6Tをつなぐ6レーンでは、全ての第7コイルセグメント27の第2線状部27Qaの長側面27Mが固定子鉄心10の径方向に向き、短側面27Nが周方向に向いている。
【0051】
以上のように構成された第1実施形態(回転電機100の固定子110、および回転電機100)によれば、第4コイルセグメント24(第1のコイルセグメントに相当)は、第1線状部および第2線状部の短辺側がそれぞれ径方向に向き、挿通された異なるスロットの間の区間において、2つの折曲部を有している。第3コイルセグメント23(第2のコイルセグメントに相当)は、第1線状部および第2線状部の短辺側がそれぞれ径方向に向き、挿通された異なるスロットの間の区間において、2つの折曲部を有している。スロット12の径方向の最も内方(領域8T)には、第1線状部24Paおよび第2線状部24Qaの長側面24Mがそれぞれ固定子鉄心10の周方向に向きた第4コイルセグメント24(第1のコイルセグメント)と、第1線状部23Paおよび第2線状部23Qaの長側面23Mがそれぞれ周方向に向きた第3コイルセグメント23(第2のコイルセグメント)とが、配置されている。
スロット12の周方向の幅は、テーパ12aにより、固定子鉄心10の径方向の最も内方に位置する部分が最も短い。
このような構成によれば、スロット12の固定子鉄心10における径方向の最も内方(領域8T)に配置される例えば第3コイルセグメント23は、第1線状部23Paから架橋部23Rを介した第2線状部23Qaに至るまで、長側面23Mと短側面23Nの向きを変えるように捩ることなく、固定子鉄心10の軸方向に折り曲げるだけで形成できることから、容易に製造することができる。なお、例えば第3コイルセグメント23の架橋部23Rは、相対的に固定子鉄心10の径方向外方に位置する例えば第7コイルセグメント27の架橋部27Rよりも、固定子鉄心10の周方向に沿って相対的に短い距離で第1線状部23Paおよび第2線状部23Qaと連結しなければならないことから、相対的に加工が難しい。
さらに、スロット12の固定子鉄心10における径方向の最も内方に位置する部分は、第3コイルセグメント23の長側面23Mが固定子鉄心10の周方向に対向するように位置することから、短側面23Nが周方向に対向するように位置する場合と比較して、スロット12の周方向の幅を相対的に短くすることができる。すなわち、隣合うスロット12の間に設けられているティース14の周方向の幅を相対的に長くして、ティース14の体積を増加させることができる。このため、ティース14の先端部(固定子鉄心10の内周面10c側)の磁束密度を向上させて、磁気飽和を抑制することができる。
さらに、例えば第3コイルセグメント23は、架橋部23Rにおける長側面23Mが固定子鉄心10の一端面10aに対してほぼ平行の部分を含んでいることから、長側面23Mが一端面10aに対してほぼ平行の部分を含んでない場合と比較して、一端面10aから軸方向に突出する長さを短縮することができる。
一方、スロット12の径方向の最も内方以外に配置される例えば第7コイルセグメント27は、架橋部27Rにおける長側面27Mが固定子鉄心10の一端面10aに対してほぼ平行の部分を含んでいることから、長側面27Mが一端面10aに対してほぼ平行の部分を含んでいない場合と比較して、一端面10aから軸方向に突出する長さを短縮することができる。さらに、第7コイルセグメント27は、架橋部27Rが第7コイルセグメント27の軸方向の回りに捩れた第1捩部27Rfおよび第2捩部27Rgを有していることから、第1捩部27Rfおよび第2捩部27Rgを有していない場合と比較して、軸方向の回りに長側面27Mと短側面27Nの向きを変え易くなり、一端面10aから軸方向に突出する長さを短縮することができる。
したがって、固定子110は、電気性能を維持しつつ、軸方向に対して小型化を図ることができる。さらに、固定子110の製造性を向上させることができる。
特に、スロット12の固定子鉄心10における径方向の最も内方(領域8T)において、全てのスロット12の固定子鉄心10における周方向の幅を相対的に短くして、全てのティース14の周方向の幅を相対的に長くして、ティース14の体積を増加させることにより、ティース14における磁束密度を十分に向上させて、磁気飽和を十分に抑制することができる。
【0052】
(第2実施形態)
図10および
図11を参照して、スロット12における第3コイルセグメント23、第4コイルセグメント74、第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78の配置(長側面と短側面の向き)について説明する。
図10は、第2実施形態に係る前記固定子の要部を示す斜視図、
図11は、
図10の前記要部を示す横断面図である。
【0053】
図10および
図11に示す第2実施形態において、第3コイルセグメント23は、例えば、第1平角導体に含まれている。第1平角導体は、スロット12から導出された部分において、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部を有している。第1平角導体は、スロット12から導出された部分において、固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部を有していない。
また、第4コイルセグメント74、第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78は、例えば、第2平角導体に含まれている。第2平角導体は、スロット12から導出された部分において、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部と、折曲部から延び固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部とを有している。
【0054】
第2実施形態において、第4コイルセグメント74(第1のコイルセグメントに相当)は、第1線状部および第2線状部の長辺側がそれぞれ径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部と2つの捩部とを有している。第3コイルセグメント23(第2のコイルセグメントに相当)は、第1線状部および第2線状部の短辺側がそれぞれ径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部を有している。
【0055】
図10および
図11に示すように、第3コイルセグメント23の第1線状部23Paおよび第2線状部23Qaは、長側面23Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面23Nが固定子鉄心10の径方向に向いている。
第4コイルセグメント74の第1線状部74Paおよび第2線状部74Qaは、長側面74Mが固定子鉄心10の径方向に向き、短側面74Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。
第7コイルセグメント77は、第1線状部77Paの長側面77Mおよび第2線状部77Qaの短側面77Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。第8コイルセグメント78は、第1線状部78Paおよび第2線状部78Qaの短側面78Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78は、第1実施形態の第7コイルセグメント27と置き換えて、固定子鉄心10に2つずつ交互に配置されている。すなわち、固定子鉄心10の周方向において、隣合う2つの第7コイルセグメント77と、隣合う2つの第8コイルセグメント78が、交互に配置されている。
【0056】
これにより、特に、48個のスロット12の各々の領域8Tをつなぐ8レーン(最外周レーン)では、長側面23Mが固定子鉄心10の周方向に向き短側面23Nが径方向に向いた2つの第3コイルセグメント23と、長側面74Mが固定子鉄心10の径方向に向き短側面74Nが周方向に向いた2つの第4コイルセグメント74が、交互に配置される。48個のスロット12の各々の領域7Tをつなぐ7レーンにおけるコイルセグメントの長側面と短側面の配置は、上記の8レーンにおける配置と同様である。
【0057】
以上のように構成された第2実施形態(回転電機100の固定子110、および回転電機100)によれば、スロット12の固定子鉄心10における径方向の最も内方(領域8T)には、第1線状部74Paおよび第2線状部74Qaの長側面74Mが固定子鉄心10における径方向に向き捩部を有する第4コイルセグメント74(第1のコイルセグメント)と、第1線状部23Paおよび第2線状部23Qaの短側面23Nが固定子鉄心10の径方向にそれぞれ向いた第3コイルセグメント23(第2のコイルセグメント)とが、配置されている。
このような構成によれば、第4コイルセグメント74の架橋部74Rは、第3コイルセグメント23の架橋部23Rと比較して、固定子鉄心10の径方向に隣接する第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78との干渉を避け易く、曲げ加工や捩り加工等が容易である。したがって、第4コイルセグメント74は、第2線状部74Qaおよび第2線状部74Qaの長側面を固定子鉄心10の径方向に対向させて配置している。さらに、第4コイルセグメント74は、架橋部73Rの捩部によって第4コイルセグメント74の軸方向の回りに長側面74Mと短側面74Nの向きを変え易くしている。すなわち、相対的に干渉を避けて加工し易い第4コイルセグメント74については、長側面74Mと短側面74Nの向きを、第1実施形態と異ならせている。
一方、第3コイルセグメント23は、第4コイルセグメント74と比較して、第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント28と干渉し易く曲げ加工や捩り加工等が難いことから、第1実施形態と同様に、長側面23Mを固定子鉄心10の周方向に対向させている。
したがって、各コイルセグメントの加工のし易さに応じて、固定子110の製造性を向上させることができる。
【0058】
(第3実施形態)
図12および
図13を参照して、スロット12における第3コイルセグメント83、第4コイルセグメント74、第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78の配置(長側面と短側面の向き)について説明する。
第3実施形態は、第2実施形態の変形例である。
図12は、第3実施形態に係る前記固定子の要部を示す斜視図、
図13は、
図12の前記要部を示す横断面図である。
【0059】
図12および
図13に示す第3実施形態において、第3コイルセグメント83は、例えば、第1平角導体に含まれている。第1平角導体は、スロット12から導出された部分において、少なくとも、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部を有している。
また、第4コイルセグメント74、第7コイルセグメント77および第8コイルセグメント78は、例えば、第2平角導体に含まれている。第2平角導体は、スロット12から導出された部分において、線状部から延び固定子鉄心10の周方向に向かって折り曲げられた折曲部と、折曲部から延び固定子鉄心10の周方向の回りで捩られた捩部とを有している。
【0060】
第3実施形態において、第4コイルセグメント74(第1のコイルセグメントに相当)は、第1線状部および第2線状部の長辺側がそれぞれ固定子鉄心10の径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部と2つの捩部とを有している。また、第3コイルセグメント83(第2のコイルセグメントに相当)は、第1線状部の短辺側が固定子鉄心10の径方向に向き、第2線状部の長辺側が固定子鉄心10の径方向に向き、挿通された異なるスロット12の間の区間において、2つの折曲部と1つの捩部を有している。
【0061】
図12および
図13に示すように、第3コイルセグメント83の第1線状部83Paは、第1実施形態の第3コイルセグメント23と同様に、長側面83Mが固定子鉄心10の周方向に向き、短側面74Nが固定子鉄心10の径方向に向いている。一方、第3コイルセグメント83の第2線状部83Qaは、第1実施形態の第3コイルセグメント23と異なり、長側面83Mが固定子鉄心10の径方向に向き、短側面74Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。
第4コイルセグメント74の第1線状部74Paおよび第2線状部74Qaは、長側面74Mが固定子鉄心10の径方向に向き短側面74Nが固定子鉄心10の周方向に向いている。
第7コイルセグメント77は、固定子鉄心10の周方向において、4つ飛ばし(1、5、9・・・)で配置されている。第8コイルセグメント78は、固定子鉄心10の周方向において、第7コイルセグメント77が配置されていない位置(2、3、4、6、7、8、10、11、12・・・)で配置されている。すなわち、固定子鉄心10の周方向において、1つの第7コイルセグメント77と、連続した3つの第8コイルセグメント78が、交互に配置されている。
【0062】
これにより、特に、48個のスロット12の各々の領域8Tをつなぐ8レーン(最外周レーン)では、長側面83Mが固定子鉄心10の周方向に向き短側面83Nが径方向に向いた1つの第3コイルセグメント83と、短側面74Nが固定子鉄心10の周方向に向き長側面74Mが径方向に向いた3つの第4コイルセグメント74が、交互に配置される。48個のスロット12の各々の領域7Tをつなぐ7レーンにおけるコイルセグメントの長側面と短側面の配置は、上記の8レーンにおける配置と同様である。
【0063】
以上のように構成された第3実施形態(回転電機100の固定子110、および回転電機100)によれば、スロット12の固定子鉄心10における径方向の最も内方(領域8T)には、第1線状部74Paおよび第2線状部74Qaの長側面74Mがそれぞれ固定子鉄心10の径方向に向いた第4コイルセグメント74(第1のコイルセグメント)と、第1線状部83Paの短側面83Nが径方向に向き、第2線状部83Qaの長側面83Mが径方向に向き、架橋部83Rに捩部を有する第3コイルセグメント83(第2のコイルセグメント)とが、配置されている。
このような構成によれば、第2実施形態の構成に加えて、第3コイルセグメント83の第1線状部83Paおよび第2線状部83Qaのうち、架橋部が相対的に加工し易い第2線状部83Qa側については、長側面83Mを固定子鉄心10の径方向に対向させて配置している。さらに、第3コイルセグメント83は、架橋部83Rの捩部によって軸方向の回りに長側面83Mと短側面83Nの向きを変え易くしている。
したがって、各コイルセグメントの加工のし易さに応じて、固定子110の製造性を向上させることができる。
【0064】
(第4実施形態)
図14を参照して、スロット12における複数のコイルセグメントの配置について説明する。
第4実施形態は、第1から第3実施形態の変形例である。
図14は、第4実施形態に係る固定子のスロット12の部分を示す横断面図である。
【0065】
第4実施形態では、
図14に示すように、固定子鉄心10の少なくとも1つのスロット12において、固定子鉄心10の径方向の外側から内側に向かって、第2コイルセグメント72の第1線状部72Pa(1)、第5コイルセグメント25の第2線状部25Qa(43)、第5コイルセグメント25の第1線状部25Pa(1)、第6コイルセグメント26の第2線状部26Qa(43)、第6コイルセグメント26の第1線状部26Pa(1)、第7コイルセグメント27の第2線状部27Qa(43)、第7コイルセグメント27の第1線状部27Pa(1)および第3コイルセグメント23の第1線状部27Pa(1)が配置されている。
特に、固定子鉄心10の径方向の最も外側に位置する領域に、第2コイルセグメント72の第1線状部72Pa(1)は、断面における一対の短辺側が径方向に向いた状態で、配置されている。第2コイルセグメント72は、第1線状部72Paの長側面72Mが、固定子鉄心10の周方向に向いて配置されている。第2コイルセグメント72は、第2コイルセグメント22と相似形状に構成されている。上記の構成は、第2コイルセグメント72と固定子鉄心10の周方向に隣合う第1コイルセグメント(不図示)についても、同様である。
このような構成によれば、第2コイルセグメント72の第1線状部72Pa(1)の短側面側を、スロット12における固定子鉄心10の径方向に配置することにより、横幅(固定子鉄心10の周方向)におけるスロット12と第2コイルセグメント72の第1線状部72Pa(1)との隙間を広くすることができる。これにより、スロット12の内面に沿わせるように
図1に示す絶縁紙29を配置した後、絶縁紙29の内方に複数のコイルセグメントを挿入して配置する際に、絶縁紙29の内方の空間に余裕を持たせて、第2コイルセグメント72との干渉を防止することができる。上記の構成は、第1コイルセグメントについても、同様である。
したがって、特に第2コイルセグメント72の第1線状部72Pa(1)をスロット12に挿通させ易くして、固定子110の製造性を向上させることができる。
【0066】
(第5実施形態)
図15を参照して、スロット12の形状について説明する。
第5実施形態は、第1から第4実施形態の変形例である。
図15は、第5実施形態に係る固定子のスロット12の部分を示す横断面図である。
【0067】
第5実施形態では、
図15に示すように、少なくとも1つのスロット12は、固定子鉄心10の径方向の相対的に内側において互いに平行となる側面(段差部12b)を有している。換言すれば、複数のティース14のうち、固定子鉄心10の周方向に隣合う第1ティース14と第2ティース14は、固定子鉄心10の径方向の内側において互いに平行となる側面(段差部12b)をそれぞれ有している。固定子鉄心10の少なくとも1つのスロット12において、固定子鉄心10の径方向の外側から内側に向かって、第2コイルセグメント22の第1線状部22Pa(1)、第5コイルセグメント25の第2線状部25Qa(43)、第5コイルセグメント25の第1線状部25Pa(1)、第6コイルセグメント26の第2線状部26Qa(43)、第6コイルセグメント26の第1線状部26Pa(1)、第7コイルセグメント27の第2線状部27Qa(43)、第7コイルセグメント27の第1線状部27Pa(1)および第3コイルセグメント23の第1線状部23Pa(1)が配置されている。
特に、スロット12の固定子鉄心10の径方向の最も内方に配置される例えば第3コイルセグメント23の第1線状部23Pa(1)の長側面23Mが、スロット12の段差部12bと、若干の隙間を置いてほぼ平行に配置されている。このように構成するために、スロット12の内面に、固定子鉄心10の周方向の幅を相対的に狭くした段差部12bを設けている。段差部12bは、スロット12の径方向における他の部分よりも狭い。上記の構成は、第7コイルセグメント27の第1線状部27Paについても、同様である。
このような構成によれば、スロット12の段差部12bにおいて、第3コイルセグメント23および第7コイルセグメント27の移動(首振り)を抑制することができる。スロット12に互いに平行となる側面(段差部12b)を設けることによって、コイルセグメントとスロット12との隙間を、固定子鉄心10の径方向の外側から内側に対して、等しくすることができる。すなわち、コイルセグメントが、相対的にスロット12との隙間が小さい径方向内側の部分を軸にして、相対的にスロット12との隙間が大きい径方向外側の部分が、固定子鉄心10の周方向に首振りするようなことを防止できる。これにより、スロット12の段差部12bにおいて、第3コイルセグメント23および第7コイルセグメント27等と
図1に示す絶縁紙29との摩擦による、絶縁紙29の損傷を防止することができ、コイルセグメントの絶縁性を維持することができる。
したがって、第3コイルセグメント23の第1線状部23Pa(1)および第7コイルセグメント27の第1線状部27Pa(1)は、入力される電流に起因する振動、回転子120の回転による振動や、外部から入力される振動に対して、固定子110の信頼性を高めることができる。
【0068】
なお、本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態や変形例は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、コイルの巻数、コイルセグメントの設置数は、前述した実施形態に限定されることなく、適宜、増減可能である。実施形態に係る回転子および回転電機は、永久磁石界磁電動機に限らず、巻線界磁型回転電機、および誘導型回転電機にも適用可能である。回転子の寸法、材質、形状等は、前述した実施形態に限定されることなく、設計に応じて種々変更可能である。
具体的には、例えば、実施形態のように固定子鉄心10の各スロット12に8本のコイルセグメントを設ける構成に限定されることなく、各スロットに6本以下または10本以上のコイルセグメントを設ける構成としてもよい。
また、実施形態では、スロット12の1レーン(最外周レーン)に位置する第1コイルセグメント21と第2コイルセグメント22、およびスロット12の8レーン(最内周レーン)に位置する第3コイルセグメント23と第4コイルセグメント24は、固定子鉄心10の径方向において互いにまたぐように交差していない。すなわち、スロット12の1レーンと8レーンにおいて、固定子鉄心10の周方向に隣合う上記のコイルセグメント(第1コイルセグメント21、第2コイルセグメント22、第3コイルセグメント23および第4コイルセグメント24)は、互いにクロスしていない。一方、固定子鉄心10の周方向に隣合う第5コイルセグメント25同士、第6コイルセグメント26同士、および第7コイルセグメント27同士は、固定子鉄心10の径方向において互いにまたぐように交差している。すなわち、固定子鉄心10の周方向に隣合う上記のコイルセグメント(第5コイルセグメント25、第6コイルセグメント26および第7コイルセグメント27)は、互いにクロスしている。このような実施形態に限定されることなく、例えば、スロット12の1レーンと2レーンに位置し固定子鉄心10の周方向に隣合うコイルセグメント同士、3レーンと4レーンに位置し隣合うコイルセグメント同士、5レーンと6レーンに位置し隣合うコイルセグメント同士、および7レーンと8レーンに位置し隣合うコイルセグメント同士を、固定子鉄心10の径方向においてまたぐように交差させて構成してもよい。すなわち、固定子鉄心10の周方向に隣合う全てのコイルセグメンをクロスさせて配置する構成としてもよい。
実施形態において、固定子110は、ヨーク16と複数のティース14を有する固定子鉄心10と、断面が長方形状に構成された複数本のコイル20を備えている。隣合うティース14の間の距離は、固定子鉄心10の径方向の最も内側に位置する部分が最も短い。1以上のスロット12には、複数本のコイル20のうち、径方向の最も内側に位置し断面における一対の短辺側が径方向に向いた第1平角導体と、第1平角導体よりも径方向の外側に位置し断面における一対の長辺側が径方向に向いた第2平角導体とが配置されている。第1平角導体は、スロット12からの導出部分に固定子鉄心10の周方向に折り曲げられた折曲部を有する。第2平角導体は、スロット12からの導出部分に周方向に折り曲げられた折曲部と周方向の回りで捩られた捩部を有する。