(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このような静電噴霧技術を利用して被塗物に塗料等の液体を塗着させる場合、例えば、ほぼ100%に近い高い塗着効率が得られる。
しかしながら、塗料等の液体を被塗物に塗布する作業は、被塗物の形状に応じてさまざまな方向から行われるため、例えば、水平方向に液体を噴霧したりする場合がある。
【0005】
この場合、例えば、下側に位置するノズルには、上側に位置するノズルよりも液体の自重の分だけ多くの液体が供給されることになり、下側に位置するノズルの噴霧する液体の噴霧量が上側に位置するノズルの液体の噴霧量よりも多くなる。
そして、このような液体の噴霧量のばらつきがあると、塗布ムラ等の原因となる。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、複数のノズルを有する静電噴霧装置であって、液体の噴霧方向によらず、各ノズルからの液体の噴霧量のばらつきを低減することができる静電噴霧装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記目的を達成するために、以下の構成によって把握される。
(1)本発明の静電噴霧装置は、電圧の印加によって発生する静電気力で液体噴霧部のノズルから液体を帯電状態で離脱させて前記液体を被塗物に噴霧する静電噴霧装置であって、前記液体噴霧部は、前記液体を流出する流出部を有する第1ヘッド部と、前記流出部を覆うように前記第1ヘッド部に取り付けられ、複数の前記ノズルが設けられた第2ヘッド部と、前記流出部から複数の前記ノズルに至る前記液体の流れる流路上に設けられ、流路抵抗を有する抵抗部と、を備えている。
【0008】
(2)上記(1)の構成において、前記液体噴霧部は、前記第1ヘッド部と前記第2ヘッド部との合わせ部に形成され、前記第2ヘッド部が前記第1ヘッド部に取り付けられたときに、前記流出部側から前記ノズル側に前記液体を供給する複数の前記ノズルに対応した流路を形成する複数の溝部を備え、前記抵抗部が、前記溝部の形状を前記流路抵抗を有する形状とすることで形成されている。
【0009】
(3)上記(2)の構成において、前記第1ヘッド部は、少なくとも前記合わせ部の一部となる第1面を備え、前記第2ヘッド部は、少なくとも前記合わせ部の一部となる前記第1面に対応した第2面を備え、前記第1面は、前記第2ヘッド部の前記第2面に対向し、前記流出部が設けられた前記第1ヘッド部の面であり、前記第2面は、前記第1ヘッド部の前記流出部に対向し、前記ノズルに前記液体を供給する複数の前記ノズルに対応した複数の第1開口部を有する前記第2ヘッド部の面であり、複数の前記溝部は、それぞれ前記流出部と前記溝部に対応する前記第1開口部との間を繋ぐ前記流路を形成するように、少なくとも前記第1面又は前記第2面のうちの一方の面に形成されている。
【0010】
(4)上記(2)から(3)のいずれか1つの構成において、前記溝部は、全てほぼ等しい長さである。
【0011】
(5)上記(1)の構成において、前記第1ヘッド部は、前記流出部が設けられた第1面を備え、前記第2ヘッド部は、前記第1ヘッド部の前記流出部に対向し、前記ノズルに液体を供給する複数の前記ノズルに対応した複数の第1開口部を有する第2面を備え、前記第1面と前記第2面は、前記第2ヘッド部が前記第1ヘッド部に取り付けられたときに、前記流出部から複数の前記ノズルに至る前記液体の流れる前記流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっており、前記抵抗部が、前記空間内に前記流路抵抗を発生させる抵抗部材を設けることで形成されている。
【0012】
(6)上記(1)の構成において、前記第1ヘッド部は、前記流出部が設けられた第1面を備え、前記第2ヘッド部は、前記第1ヘッド部の前記流出部に対向し、前記ノズルに液体を供給する複数の前記ノズルに対応した複数の第1開口部を有する第2面を備え、前記第1面と前記第2面は、前記第2ヘッド部が前記第1ヘッド部に取り付けられたときに、前記流出部から複数の前記ノズルに至る前記液体の流れる前記流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっており、前記抵抗部は、前記空間内に一端が導出され、他端が前記第1開口部から前記ノズル側に挿入された前記第1開口部のそれぞれに対応した複数の抵抗部材を設けることで形成されている。
【0013】
(7)上記(5)又は(6)の構成において、前記流出部からそれぞれの前記ノズルに至るまでに前記抵抗部材が介在する距離がほぼ等しい。
【0014】
(8)上記(1)の構成において、前記第1ヘッド部は、前記流出部が設けられた第1面を備え、前記第2ヘッド部は、前記第1ヘッド部の前記流出部に対向し、前記ノズルに液体を供給する複数の前記ノズルに対応した複数の第1開口部を有する第2面を備え、前記第1面と前記第2面は、前記第2ヘッド部が前記第1ヘッド部に取り付けられたときに、前記流出部から複数の前記ノズルに至る前記液体の流れる前記流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっており、前記液体噴霧部は、少なくとも前記第1面又は前記第2面に設けられ、前記第2ヘッド部が前記第1ヘッド部に取り付けられたときに、前記流出部側から前記ノズル側に前記液体が優位に流れる経路を形成する複数の前記ノズルに対応した複数の溝部と、前記第1面と前記第2面との間に設けられ、一部が前記溝内に落ち込むように前記第1面と前記第2面とで狭持される抵抗部材と、を備え、前記抵抗部が、前記溝部と前記抵抗部材とで形成されている。
【0015】
(9)上記(5)から(8)のいずれか1つの構成において、前記抵抗部材が、繊維又は多孔質体を含む部材である。
【0016】
(10)上記(1)から(9)のいずれか1つの構成において、前記第2ヘッド部は、前記第1ヘッド部の前記流出部から流出した前記液体が前記ノズルに供給されるように、前記ノズルが挿入される複数の前記ノズルに対応した複数の第2開口部を備え、複数の前記第2開口部は、前記第1ヘッド部と反対側に位置する前記第2ヘッド部の外面部に設けられており、複数の前記第2開口部は、同心円上に位置するように配置されている。
【0017】
(11)上記(10)の構成において、複数の前記ノズルは、前記第2開口部の配置される同心円より大きな直径の同心円上に前記ノズルの先端部が位置するように傾斜して配置されている。
【0018】
(12)上記(1)から(11)のいずれか1つの構成において、最も離れている前記ノズルの先端部の間の距離がHmmであり、前記抵抗部は、
複数の前記ノズル
のうちのいずれか1つの前記ノズルの流路抵抗と合わせたときに
9.8H
Pa以上となる前記流路抵抗を有する。
【0019】
(13)上記(1)から(12)のいずれか1つの構成において、前記液体噴霧部に前記液体を供給するポンプを備え、前記抵抗部は、前記ポンプの前記液体を供給する供給圧に対して90%以下の前記流路抵抗を有している。
【0020】
(14)上記(1)から(13)のいずれか1つの構成において、電圧印加手段と、前記第2ヘッド部の前記第1ヘッド部と反対側に位置する外面部上に設けられ、導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成された接続電極と、を備え、前記第1ヘッド部及び第2ヘッド部が絶縁材料で形成され、複数の前記ノズルが導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成されており、複数の前記ノズルが前記接続電極で接続されており、複数の前記ノズルのうちの1つの前記ノズル又は前記接続電極が前記電圧印加手段に電気的に接続されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、複数のノズルを有する静電噴霧装置であって、液体の噴霧方向によらず、各ノズルからの液体の噴霧量のばらつきを低減することができる静電噴霧装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態(以下、実施形態)について詳細に説明する。
なお、実施形態の説明の全体を通して同じ要素には同じ番号を付している。
また、特に断りがない場合、「先(端)」や「前(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向側を表し、「後(端)」や「後(方)」等の表現は、各部材等において液体の噴霧方向と反対側を表すものとする。
【0024】
(第1実施形態)
図1は本発明に係る第1実施形態の静電噴霧装置10の側面図である。
なお、
図1では、液体がノズル31から噴霧されているところも模式的に示すようにしている。
【0025】
図1に示すように、静電噴霧装置10は、複数のノズル31を備える液体噴霧部20と、液体噴霧部20と被塗物50の間に電圧を印加する電圧印加手段60と、液体噴霧部20に液体貯蔵タンク70内の塗料等の液体を液体供給配管71を介して供給するポンプ72と、電圧印加手段60から被塗物50に接続される第1電気配線61に接続されたアース手段80と、を有している。
【0026】
なお、本実施形態では、アース手段80によって被塗物50がアースされるようになっているが、アース手段80は、必須の要件ではない。
しかしながら、被塗物50は作業者が触れる可能性があるので、安全面の観点からアース手段80を設けて被塗物50をアースするようにすることが好ましい。
【0027】
(ポンプ)
ポンプ72は、液体貯蔵タンク70内の液体を所定の供給圧で液体供給配管71を介して液体噴霧部20に供給する供給装置である。
【0028】
そして、ポンプ72によって供給された液体が液体噴霧部20内の流路を通って、各ノズル31に供給される。
【0029】
(電圧印加手段)
電圧印加手段60は、被塗物50と液体噴霧部20との間に電圧を印加するための電圧電源である。
そして、電圧印加手段60によって被塗物50と液体噴霧部20との間に電圧が印加されると、被塗物50と液体噴霧部20の間に静電気力が発生する。
この静電気力で各ノズル31に供給された液体が帯電するとともに、その静電気力によって液体がノズル31から離脱させられ、噴霧されることになる。
【0030】
具体的には、ノズル31の先端外周縁への表面張力や粘度による付着力に対して、液体を前方に引っ張る静電気力が釣り合うことで、ノズル31の先端側に供給された液体が、その先端で円錐形の形状となるテーラコーン90が形成される。
【0031】
このテーラコーン90は、電場の作用によって、液体中で正/負電荷の分離が起こり、過剰電荷で帯電したノズル31の先端のメニスカスが変形して円錐状となって形成されているものである。
そして、テーラコーン90の先端から静電気力によって液体が更に引っ張られ、その後、静電爆発によって液体が噴霧される。
【0032】
この噴霧された液体、つまり、ノズル31から離脱して液体粒子となった液体は、離脱前の状態に比べ、空気に触れる面積が飛躍的に大きくなるため溶媒の気化が促進され、その溶媒の気化に伴って帯電している電子間の距離が近づき、静電反発(静電爆発)が発生して、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
【0033】
この分裂が起こると、さらに、分裂前に比べ空気に触れる表面積が増えることになるため、溶媒の気化が促進され、上述したのと同様に静電爆発が発生し、さらに、小さい粒径の液体粒子に分裂する。
このような静電爆発が繰り返されることで液体が霧化される。
【0034】
そして、そのように噴霧された液体は、帯電しているため、静電気力によって被塗物50に引き寄せられて高い効率で被塗物50に塗着することになる。
【0035】
(液体噴霧部)
図2は液体噴霧部20を液体が噴霧される側から見た正面図であり、
図3は
図2のA−A線断面図である。
図3に示すように、液体噴霧部20は、ポンプ72(
図1参照)によって供給部41に供給された液体が流出する流出部42を有する第1ヘッド部40と、流出部42を覆うように第1ヘッド部40に取り付けられ、複数のノズル31が設けられた第2ヘッド部30と、を備えている。
【0036】
また、第2ヘッド部30は、ノズル31への液体の供給口となる第1開口部35と、第1開口部35に連通し、第1ヘッド部40の流出部42から流出した液体がノズル31に供給されるように、ノズル31が挿入される複数のノズル31に対応した複数の第2開口部38と、を備えている。
【0037】
この複数の第2開口部38は、第1ヘッド部40と反対側に位置する第2ヘッド部30の前方側の外面部39に設けられており、
図2のノズル31の配置状態を見ればわかるように、複数の第2開口部38は、同心円上に位置するように配置されている。
【0038】
さらに、本実施形態では、第1ヘッド部40及び第2ヘッド部30を絶縁材料で形成するようにし、複数のノズル31を導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成するようにしている。
【0039】
そして、液体噴霧部20は、
図2及び
図3に示すように、第2ヘッド部30の第1ヘッド部40と反対側に位置する前方側の外面部39上に設けられ、ノズル31が挿入される貫通孔を有し、複数のノズル31を電気的に接続するための導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成されたリング状の接続電極23を備えている。
【0040】
この接続電極23には、
図1に示すように、電圧印加手段60から被塗物50に接続される第1電気配線61と異なる電気配線であるもう一方の第2電気配線62が接続され、接続電極23が電圧印加手段60に電気的に接続されている。
【0041】
なお、第2ヘッド部30を導電材料又は10
10Ω以下の表面抵抗の材料で形成し、第2ヘッド部30に第2電気配線62を接続するようにして接続電極23を省略するようにしてもよいが、電圧が印加される部分の面積が多くなるとスパーク等が発生しやすくなるため、本実施形態のように、接続電極23を設けるようにするのが好ましい。
【0042】
また、複数のノズル31は、電気的に接続された状態にあるため、接続電極23に第2電気配線62を接続するのではなく、いずれか1つのノズル31に第2電気配線62を接続することで、1つのノズル31が電圧印加手段60に電気的に接続されるようにしてもよい。
【0043】
ところで、液体を良好にノズル31から離脱させ、噴霧するには、ノズル31の近くでは液体にかかる静電気力が弱く、液体が静電爆発を起こさないように前方側に引き出され、液体が先細りするように前方側に延びて、帯電状態が安定した先細りした部分に強く静電気力が作用し、静電爆発を起こすようにすることが好ましい。
つまり、ノズル31から離れるにしたがって液体にかかる静電気力が強くなるようにすることが好ましい。
【0044】
そこで、本実施形態では、複数のノズル31は、上述した第2開口部38の配置される同心円より大きな直径の同心円上にノズル31の先端部が位置するように傾斜して配置されている。
つまり、ノズル31は、ノズル31の先端側ほど液体噴霧部20の中心軸から離れるように、外側に傾斜して配置されている。
【0045】
そして、ノズル31から延びる液体(以降、ノズル31の先端から静電爆発に至るまでの液体の部分を液線と呼ぶ)間の距離が近いと、個別の液線にかかる静電気力が弱くなるが、上述のように、ノズル31を傾斜させていると、それぞれのノズル31から延びる液線が前方側に行くほど離間し、各液線に強く静電気力が作用できるようになり、上述したノズル31から離れるにしたがって液体にかかる静電気力が強くなる好ましい状態を実現することができる。
【0046】
次に、第1ヘッド部40及び第2ヘッド部30のより詳細な構成について説明する。
図3に示すように、第1ヘッド部40は、後方側の位置に設けられたフランジ部43と、そのフランジ部43の中央側に位置し、フランジ部43から前方側に向かって突出する第2ヘッド部30内に収容される外形が円柱状の第1突出部44と、を有している。
【0047】
また、第1ヘッド部40は、フランジ部43の中央側の位置に設けられ、フランジ部43から後方側に向かって突出し、液体を供給する液体供給配管71が接続される供給部41が形成された第2突出部45を有している。
そして、第1ヘッド部40には、供給部41と流出部42を連通させるように、第1ヘッド部40の中央を貫通する貫通孔46が形成されている。
【0048】
一方、第2ヘッド部30は、後方側の位置に設けられ、中央に第1ヘッド部40の第1突出部44の外径とほぼ等しい内径の開口が形成された第1ヘッド部40のフランジ部43に対応したフランジ部32と、フランジ部32から前方側に向かって突出し、フランジ部32の開口側に開放された第1ヘッド部40の第1突出部44の外形とほぼ等しい凹部を有する覆い部33と、を有している。
【0049】
そして、第1ヘッド部40と第2ヘッド部30は、
図1に示すように、第2ヘッド部30のフランジ部32と第1ヘッド部40のフランジ部43がネジ25で共締めされて、第2ヘッド部30が第1ヘッド部40に取り付けられたときに合わせ部で合わさるようになっている。
【0050】
具体的には、
図3に示すように、第1ヘッド部40の第1突出部44の外周面44aと第1突出部44の流出部42が設けられている前方側の端面である第1面44bが合わせ部の一方側となり、第2ヘッド部30のフランジ部32及び覆い部33の第1突出部44の外周面44aに対応する内周面34aと第1ヘッド部40の流出部42に対向する第2面34b(第1面44bに対応する面)が合わせ部の他方側となり、合わせ部が形成されている。
【0051】
図4は第2ヘッド部30の第2面34bを正面に見た平面図である。
図4に示すように、第2面34bは、第1ヘッド部40(
図3参照)の流出部42(
図3参照)に対向し、ノズル31に液体を供給する複数のノズル31に対応した複数の第1開口部35を有する第2ヘッド部30の面である。
【0052】
そして、
図3及び
図4に示すように、第2面34bには、第1ヘッド部40の第1面44b(
図3参照)に設けられた流出部42に対応する中央の位置に、液体が噴出する噴出空間を形成するように円形の凹部36が形成されている。
【0053】
また、
図3に示すように、液体噴霧部20は、第1ヘッド部40と第2ヘッド部30の合わせ部の一部である、第1ヘッド部40の第1面44bと第2ヘッド部30の第2面34bとが合わさる部分に、流出部42側からノズル31側に液体を供給する複数のノズル31に対応した流路を形成する複数の溝部37を備えている。
【0054】
具体的には、
図4に示すように、複数の溝部37は、それぞれ流出部42(より正確には、流出部42に対応した凹部36)と溝部37に対応する第1開口部35との間を繋ぐ流路を形成するように、第2ヘッド部30の第2面34bに形成されている。
【0055】
なお、この溝部37に対向する第1ヘッド部40の第1面44bの部分にも同様の溝部を設け、溝部同士が合わさることで流路を形成するようになっていてもよく、また、溝部37に対向する第1ヘッド部40の第1面44bの部分に溝部を設けるようにして、凹部36と第2面34bの溝部37を省略するようにしてもよい。
【0056】
そして、この溝部37の形状を所定の流路抵抗を有する形状とすることで、液体噴霧部20が、流出部42から複数のノズル31に至る液体の流れる流路上に抵抗部を備えたものになっている。
【0057】
例えば、この溝部37は、第1ヘッド部40に第2ヘッド部30を取り付けたときに、この溝部37が形成する流路が適切な流路抵抗を有する抵抗部となるような断面積を有する形状に形成されている。
ただし、この溝部37の長さが稼げる場合には、この溝部37が形成する流路が適切な流路抵抗を有する抵抗部となるような長さになる形状に形成されていてもよい。
つまり、この溝部37は、長さ、幅及び深さ等の形状によって、溝部37が形成する流路が適切な流路抵抗を有する抵抗部となるように形成されていればよい。
【0058】
より具体的には、
図2に示すように、最も離れているノズル31の先端部の間の距離LがHmmである場合、この溝部37で形成される抵抗部の流路抵抗をノズル31の流路抵抗と合わせたときに
9.8H
Pa以上となるように溝部37は形成される。
なお、溝部37は、全てほぼ等しい長さとされ、各溝部37で形成される抵抗部の流路抵抗がほぼ等しくなるようにされている。
ただし、この溝部37を設計する上では、この溝部37で形成される抵抗部の流路抵抗が、
9.8H
Pa以上となるように溝部37の形状を決めるほうが行いやすいため、第1ヘッド部40に第2ヘッド部30を取り付けたときに、この溝部37が形成する流路の流路抵抗が
9.8H
Pa以上となるように溝部37を形成するようにしてもよい。
【0059】
このような抵抗部を設けるようにすると、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20の中心軸が水平に配置されたときでも、上側に位置するノズル31と下側に位置するノズル31との間には、上側に位置するノズル31と下側に位置するノズル31との間の位置の違いによる
9.8H
Pa以上の流路抵抗があるため、液体が自重によって下側に位置するノズル31側に流れることが回避され、どのノズル31に対してもほぼ等しい量の液体を供給することができる。
【0060】
一方、抵抗部の流路抵抗が大きすぎると、各ノズル31に液体を良好に供給することができなくなるため、抵抗部は液体を供給するポンプ72の供給圧に対して90%以下の流路抵抗を有するようにしておくことが好ましい。
【0061】
ところで、静電気力によって液体をノズル31から噴霧する装置では、安定した噴霧を行うためにノズル31の内径は、例えば、0.2mmφ以上0.5mmφ以下程度とするのが好ましく、それに対して、流路抵抗を発生させる抵抗部は、流路としての断面積が更にノズル31の貫通孔の断面積よりも小さくされることが多いため、抵抗部は、異物や液体自身によって目詰まりを起こしやすい。
【0062】
そして、抵抗部を貫通孔として形成するようにすると、その貫通孔は、微細な貫通孔となるので、異物や液体自身によって目詰まりが発生したときに、その目詰まりを解消することが難しい。
【0063】
しかしながら、上述したように、本実施形態では、第1ヘッド部40に第2ヘッド部30を取り付けたときに流路となる溝部37として抵抗部が形成されているため、第1ヘッド部40と第2ヘッド部30を分離すれば、簡単に溝部37の清掃が行える。
しかも、第2ヘッド部30の第2面34bにのみ溝部37を形成し、第1ヘッド部40の第1面44bに溝部を設けていないため、主に第2ヘッド部30の第2面34bを清掃すればよく、第1ヘッド部40の第1面44bの清掃は簡単に済むためより清掃の手間のないものとできる。
なお、このことは、第1ヘッド部40の第1面44bにのみ溝部を形成し、第2ヘッド部30の第2面34bに溝部を形成しないようにしても同様である。
したがって、抵抗部で目詰まり等が起きたとしても簡単にその目詰まりの解消が行えるようになっている。
【0064】
なお、本実施形態では、第1ヘッド部40の前方側の端面である第1面44bに液体が流出する流出部42を設けるようにしていたが、例えば、第1ヘッド部40の第1突出部44の外周面44aに周方向に繋がる外周溝を形成し、その外周溝内に流出部42を設けるようにして、その外周溝から第2ヘッド部30の複数の第1開口部35に繋がる流路となる溝部を設けるようにして抵抗部を形成するようにしてもよい。
【0065】
(第2実施形態)
次に、
図5及び
図6を参照しながら、第2実施形態について説明する。
図5は第2実施形態の液体噴霧部20の分解斜視図であり、
図6は第2実施形態の液体噴霧部20の
図3と同様の断面図である。
【0066】
第2実施形態でも、静電噴霧装置10としての全体構成は第1実施形態と基本的に同じであり、液体噴霧部20が備える抵抗部の構成が異なるだけである。
したがって、以下では、この抵抗部の構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成に関しては説明を省略する場合がある。
【0067】
図5及び
図6に示すように、第2実施形態でも、第1ヘッド部40は、流出部42が設けられた第1面44bを備えている。
また、第2ヘッド部30も第1ヘッド部40の流出部42に対向し、ノズル31に液体を供給する複数のノズル31に対応した複数の第1開口部35を有する第2面34bを備えている。
【0068】
一方、第2実施形態では、
図6に示すように、第1面44bと第2面34bは、第2ヘッド部30が第1ヘッド部40に取り付けられたときに、流出部42から複数のノズル31に至る液体の流れる流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっており、その空間内に流路抵抗を発生させる抵抗部材27を設けることで抵抗部が形成されている。
【0069】
例えば、抵抗部材27としては、この空間と同じ外形に形成された不織布等の繊維からなる部材やガラスやセラミックを多孔質体状に成形した部材を用いることができる。
なお、流出部42からそれぞれのノズル31に至るまでに抵抗部材27が介在する距離をほぼ等しくしておくことで、流路抵抗がほぼ等しくなるようにするのが好ましい。
【0070】
このように抵抗部を構成するようにしても、第1実施形態と同様にノズル31同士の間に水頭圧に対応した流路抵抗を設けることができるため、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20が水平に配置されたときでも、液体が自重によって下側に位置するノズル31側に流れることが回避され、どのノズル31に対してもほぼ等しい量の液体を供給することができる。
なお、この場合も、抵抗部自体が水頭圧に対応した流路抵抗を有するものになっていてもよい。
【0071】
ところで、第2実施形態の場合、抵抗部材27を異物を除去するためのフィルタとしても機能させることが可能であり、異物によって発生するノズル31の目詰まりを防止することも可能である。
【0072】
また、不織布等を用いて安価に抵抗部材27を作製するようにすれば、抵抗部材27を使い捨てにして、抵抗部材27を洗浄する手間を削減することも可能である。
なお、抵抗部材27を洗浄して繰り返し使用するようにしてもよいことは言うまでもない。
【0073】
(第3実施形態)
次に、
図7を参照しながら、第3実施形態について説明する。
図7は第3実施形態の液体噴霧部20の
図3と同様の断面図である。
【0074】
第3実施形態でも、静電噴霧装置10としての全体構成は第1実施形態と基本的に同じであり、液体噴霧部20が備える抵抗部の構成が異なるだけである。
したがって、以下では、この抵抗部の構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成に関しては説明を省略する場合がある。
【0075】
図7に示すように、第3実施形態でも、第1ヘッド部40は、流出部42が設けられた第1面44bを備えている。
また、第2ヘッド部30も第1ヘッド部40の流出部42に対向し、ノズル31に液体を供給する複数のノズル31に対応した複数の第1開口部35を有する第2面34bを備えている。
【0076】
一方、第3実施形態では、
図7に示すように、第1面44bと第2面34bは、第2ヘッド部30が第1ヘッド部40に取り付けられたときに、流出部42から複数のノズル31に至る液体の流れる流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっている。
なお、このような空間を有する点は第2実施形態と同様である。
【0077】
その上で、
図7に示すように、空間内に一端が導出され、他端が第1開口部35からノズル31側に挿入された第1開口部35のそれぞれに対応した複数の抵抗部材27を設けることで抵抗部が形成されている。
【0078】
このため、第2ヘッド部30は、ノズル31が挿入固定される部分が厚肉にされるとともに、第1開口部35からノズル31までの間の距離をとるように貫通孔が形成されている。
なお、抵抗部材27としては、不織布等を第1開口部35の直径に合わせた直径の棒状体としたものやガラスやセラミックを多孔質体状に成形した第1開口部35の直径に合わせた直径の棒状体を用いることができる。
【0079】
このように抵抗部を構成するようにしても、第1実施形態及び第2実施形態と同様に、ノズル31同士の間に水頭圧に対応した流路抵抗を設けることができるため、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20が水平に配置されたときでも、液体が自重によって下側に位置するノズル31側に流れることが回避され、どのノズル31に対してもほぼ等しい量の液体を供給することができる。
なお、この第3実施形態においても、抵抗部自体が水頭圧に対応した流路抵抗を有するものになっていてもよい。
【0080】
また、抵抗部材27を異物を除去するためのフィルタとしても機能させることが可能であり、第2実施形態と同様に、異物によって発生するノズル31の目詰まりを防止することも可能である。
【0081】
(第4実施形態)
次に、
図8を参照しながら、第4実施形態について説明する。
図8は第4実施形態の液体噴霧部20の
図3と同様の断面図である。
【0082】
第4実施形態でも、静電噴霧装置10としての全体構成は第1実施形態と基本的に同じであり、液体噴霧部20が備える抵抗部の構成が異なるだけである。
したがって、以下では、この抵抗部の構成について主に説明し、第1実施形態と同様の構成に関しては説明を省略する場合がある。
【0083】
図8に示すように、第4実施形態でも、第1ヘッド部40は、流出部42が設けられた第1面44bを備えている。
また、第2ヘッド部30も第1ヘッド部40の流出部42に対向し、ノズル31に液体を供給する複数のノズル31に対応した複数の第1開口部35を有する第2面34bを備えている。
【0084】
一方、液体噴霧部20の備える溝部37が、第1実施形態では、第2ヘッド部30の第2面34bに設けられていたが、第4実施形態では、第1ヘッド部40の第1面44bに設けられている点が第1実施形態と異なっている。
ただし、この溝部37に関しては、第1実施形態と同様に、第2ヘッド部30の第2面34bに設けられていてもよく、第2ヘッド部30の第2面34b及び第1ヘッド部40の第1面44bの双方に設けられていてもよい。
【0085】
また、第4実施形態では、
図8に示すように、第1面44bと第2面34bは、第2ヘッド部30が第1ヘッド部40に取り付けられたときに、流出部42から複数のノズル31に至る液体の流れる流路の少なくとも1部となる空間を形成するように、離間して配置されるようになっており、液体噴霧部20が、第1面44bと第2面34bとの間に設けられる抵抗部材27を備えている点が第1実施形態と異なっている。
なお、この抵抗部材27は、第2実施形態や第3実施形態と同様であるが、変形可能な材料、例えば、不織布等の繊維からなる部材が好適に用いられる。
【0086】
この抵抗部材27は、第2ヘッド部30が第1ヘッド部40に取り付けられたときに、一部が溝内37に落ち込むように第1面44bと第2面34bとで狭持され、溝部37と抵抗部材27とで抵抗部を形成したものとなる。
そして、この溝内37に落ち込んだ抵抗部材27は強くは圧縮されていないため、液体が優位に流れやすくなる。
【0087】
つまり、複数の溝部37が、流出部42側からノズル31側に液体が優位に流れる経路を形成する役目を果たすとともに、抵抗部材27が設けられている分、流路抵抗を増すことができるので、各ノズル31への液体の供給量をより均一にしやすくなる。
【0088】
このように抵抗部を構成するようにしても、第1実施形態、第2実施形態及び第3実施形態と同様に、ノズル31同士の間に水頭圧に対応した流路抵抗を設けることができるため、水平方向に液体を噴霧するように液体噴霧部20が水平に配置されたときでも、液体が自重によって下側に位置するノズル31側に流れることが回避され、どのノズル31に対してもほぼ等しい量の液体を供給することができる。
なお、この第4実施形態においても、抵抗部自体が水頭圧に対応した流路抵抗を有するものになっていてもよい。
【0089】
また、抵抗部材27を異物を除去するためのフィルタとしても機能させることが可能であり、第2実施形態、第3実施形態と同様に、異物によって発生するノズル31の目詰まりを防止することも可能である。
【0090】
以上、具体的な実施形態に基づいて本発明の静電噴霧装置10について説明してきたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されるものではない。
例えば、抵抗部材27は、不織布だけで構成されたり、ガラスやセラミックからなる多孔質体だけで構成される必要はなく、これらを含む複合材料のような部材であってもよい。
【0091】
このような複合材料の場合、ガラスやセラミックの多孔質体を含んでいても柔軟性のあるものとできるため、第4実施形態に好適に適用できる抵抗部材27を構成することができる。
【0092】
また、被塗物50の電位を基準として、被塗物50と液体噴霧部20との間の電位差の中間程度の電位差を有するような電極を液体噴霧部20の近傍に配置して液体噴霧部20のノズル31から液体を離脱させるのに寄与させてもよい。
【0093】
このように、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形や改良を施したものも本発明の技術的範囲に含まれるものであり、そのことは、当業者にとって特許請求の範囲の記載から明らかである。