(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記壁パネルの前記側端部に位置するたて枠材は、断面コ字形の溝形鋼によって形成された第1たて枠材と、当該第1たて枠材のウエブに当接され、かつ、互いに当接された断面ロ字形の角形鋼管によって形成された2つの第2たて枠材とを備え、
前記引張力受金物は前記第1たて枠材に配置され、
前記圧縮力受金物は2つの前記第2たて枠材に当接されていることを特徴とする請求項1に記載の壁パネルの連結構造。
前記圧縮力受金物は、筒状の金物本体と、この金物本体の上端部に固定されて、上階の前記壁パネルの下端面に当接する上当接板と、前記金物本体の下端部に固定されて、下階の前記壁パネルの上端面に当接する下当接板とを備えていることを特徴とする請求項1または2に記載の壁パネルの連結構造。
【背景技術】
【0002】
従来、スチ−ルハウスの建築に使用される壁パネルの一例として、薄鋼板を凹溝状に折り曲げ加工されて形成された横断面リップ付溝形の一対の溝形鋼のウェブを背中合わせに配置したたて枠材を間隔をおいて配置するとともに、それらの上下端部を、薄鋼板を凹溝状に折り曲げ加工されて形成された断面溝形の上横枠材と下横枠材により連結することで枠体を形成し、この枠体の側面の片面または両面に、ビスまたはドリルねじ等の固着具により薄鋼板等の構造用面材を固定してなる壁パネルが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
このような壁パネルは、床を構成する床パネルを上下に挟んで配置されたうえで、連結金具によって連結されている。
連結金具の一例として、特許文献1に記載のものが知られている。この連結金具は、バイパス金物と称されるものである。当該バイパス金物は、上階の壁パネルのたて枠材と下階の壁パネルのたて枠材とに渡ってたて向きに配置できる長さを有するボルトを備え、このボルトの軸方向に間隔をおいて上階側および下階側に配置されて各階の壁パネルのたて枠材に固定される側方開口溝形断面の接合金物がそれぞれ配置され、各接合金物における側方開口溝にボルトが着脱可能に嵌合されているとともに、接合金物はボルトの長手方向に位置固定可能に装着されている。
【0004】
また、連結金具の他の例として、特許文献2に記載のものが知られている。この連結金具は、ホールドダウン金物と箱形金物とを備えている。
ホールドダウン金物は、構造部材を引き寄せて接合するための、いわゆる引き寄せ金物であり、長板形状のたて枠取付部と、たて枠取付部の長手方向一端から突設された横枠取付部とを有するたて断面L字形状に形成されている。
そして、上下一対のホールドダウン金物のそれぞれのたて枠取付部を上下の壁パネルのたて枠にそれぞれ締結することにより、上下の壁パネルにそれぞれホールダウン金物が固定される。
【0005】
箱形金物は、球状黒鉛鋳鉄(FCD)材で一体に鋳造成形され、対向して配される上部壁および下部壁、ならびに上部壁および下部壁間に亘って延びる側壁を備えている。
そして、箱形金物の上部壁および下部壁に、上壁パネルのホールダウン金物と下壁パネルのホールダウン金物とがボルトで接続されることで、上壁パネルと下壁パネルとが床パネルの内方に配置された箱形金物に接合される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、特許文献1に記載の従来の連結金具は、2階建て程度の低層のスチ−ルハウスにおける上下の壁パネルの連結用に設計されている。
このため、3,4階建てあるいはそれ以上の高層のスチールハウスにおいて、上下の壁パネルを連結するには、壁パネルのたて枠の高耐力化に伴い、上下階のパネルを連結する連結金物も高耐力化が求められているが、低層向けで採用されている従来のバイパス金物では限界がある。
バイパス金物は、圧縮力に対して鋼棒の座屈で耐力が決定しているため、高耐力化には鋼棒径を大きくすることにより対処できる。しかし、鋼棒径を大きくすると、壁パネルのたて枠断面の制約から納まり上困難であるばかりか、バイパス金物を壁パネルのたて枠に固定するドリルねじ本数が増え、バイパス金物・鋼棒長が長くなるという問題がある。
【0008】
一方、特許文献2に記載の従来の連結金具では、圧縮力に対して箱形金物で応力伝達するため、高耐力化が可能となる。
しかし、箱形金物は鋳鉄製の鋳物であり、この箱形金物に連結するホールダウン金物は溶接組立が必要であるため、高価でコスト高になるという問題がある。また、ホールダウン金物は引張力も負担することから、溶接部への超音波探傷検査を実施しており、コスト高の要因になっている。
【0009】
本発明は、前記事情に鑑みてなされたもので、低コストで高い圧縮耐力を確保できる壁パネルの連結構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するために、本発明の壁パネルの連結構造は、上下階の壁パネルが連結金具によって連結された壁パネルの連結構造であって、
前記連結金具は、主に引張力を負担する引張力受金物と、圧縮力を負担する圧縮力受金物とを備え、
前記引張力受金物は、その連結軸の上下端部がそれぞれ上下階の前記壁パネルに固定され、
前記圧縮力受金物は、上階の前記壁パネルの下端面と下階の前記壁パネルの上端面との間に、前記下端面および前記上端面に直接または間接的に当接した状態で設けられていることを特徴とする。
【0011】
本発明においては、連結金具が主に引張力を負担する引張力受金物と、圧縮力を負担する圧縮力受金物とを備えており、圧縮力受金物は、上階の壁パネルの下端面と下階の壁パネルの上端面との間に、下端面および前記上端面に直接または間接的に当接した状態で設けられているので、引張力受金物の連結軸の軸径を大径にすることなく、圧縮力受金物によって圧縮力を負担できる。したがって、低コストで高い圧縮耐力を確保できる。
【0012】
本発明の前記構成において、前記圧縮力受金物は、筒状の金物本体と、この金物本体の上端部に固定されて、上階の前記壁パネルの下端面に当接する上当接板と、前記金物本体の下端部に固定されて、下階の前記壁パネルの上端面に当接する下当接板とを備えていることが好ましい。
【0013】
このような構成によれば、圧縮力受金物の金物本体が筒状に形成されているので、中実なものに比して軽量でかつ効率的に圧縮力を伝達でき、かつ、この金物本体の上端部に固定された上当接板が上階の壁パネルの下端面に当接し、金物本体の下端部に固定された下当接板が下階の壁パネルの上端面に当接するので、円滑な応力伝達が可能となる。
【0014】
また、本発明の前記構成において、前記上当接板および下当接板は前記金物本体に点溶接によって固定されていることが好ましい。
【0015】
圧縮力受金物は圧縮力を負担し、引張力は負担する必要がないので、上当接板および下当接板が金物本体に点溶接によって固定されていることにより、溶接作業が容易であるとともに、コスト高となる超音波探傷試験が不要となる。したがって、低コスト化をさらに図ることができる。
【0016】
また、本発明の前記構成において、平面視において、前記圧縮力受金物は前記引張力受金物と異なる位置に配置されていることが好ましい。
【0017】
このような構成によれば、圧縮力受金物を、引張力受金物に対して独立して設置できるので、様々な耐力に対して設計が可能となり、高耐力な連結構造を安価に実現することができる。
【0018】
また、本発明の前記構成において、上下階の前記壁パネルの間に上面に面材を備えた床パネルが設けられ、
前記引張力受金物は前記床パネルを上下に貫通するようにして設けられ、
前記圧縮力受金物は前記床パネルの内部に設けられ、
上階の前記壁パネルの下端面に、前記圧縮力受金物の上面が前記面材と同厚のプレートを介して当接され、下階の前記壁パネルの上端面に、前記圧縮力受金物の下面が当接されていることが好ましい。
【0019】
このような構成によれば、床パネルの面材によって上階の壁パネルの下端面と圧縮力受金物の上面との間に隙が生じていても、プレートによってこの隙間を埋めて、上階の壁パネルの下端面に、圧縮力受金物の上面をプレートを介して当接することができる。したがって、圧縮力受金物によって圧縮力を確実に負担できる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、圧縮力受金物は、上階の壁パネルの下端面と下階の壁パネルの上端面との間に、下端面および前記上端面に当接した状態で設けられているので、この圧縮力受金物によって圧縮力を負担できる。したがって、低コストで高い圧縮耐力を確保できる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照して本発明に係る壁パネルの連結構造の実施の形態について説明する。
図1は本実施の形態に係る壁パネルの連結構造を示すもので、(a)一部を破断した正面図、(b)は(a)におけるA−A線断面図である。この連結構造では、上下階の壁パネル1,1の間に床パネル2が設けられるとともに、上下階の壁パネル1,1が連結金具11によって連結されている。なお、連結金具11は引張力受金物20と圧縮力受金物30とによって構成されている。
【0023】
壁パネル1は、矩形枠状の枠体3とこの枠体3の両面にそれぞれ取り付けられた面材4とを備えている。
枠体3は左右一対のたて枠材5,5と、各たて枠材5のそれぞれの外側に当該たて枠材5の外側に沿って設けられたたて枠材6,6と、たて枠材5,6,6の上下端部を接続する上下一対の横枠材7とを備えている。なお、たて枠材6,6はたて枠材5に当接されたうえで結合されている。
このように、本実施の形態では、壁パネル1のたて枠が1本のたて枠材5と2本のたて枠材6,6とからなる大断面となるので、大きな軸力(圧縮力)に耐え得るものとなり、例えば、3〜4階建て、またはそれ以上の階からなる建物を構築する際の壁パネルとして好適なものとなる。
【0024】
図2に示すように、たて枠材5はリップ溝形鋼によって形成され、たて枠材6は角形鋼管によって形成されている。たて枠材5はそのウエブを外側に向けて配置され、このウエブに2本のたて枠材6,6が当接されたうえで、ビスによって固定されている。たて枠材6は壁パネル1の厚さ方向(
図2において上下方向)に2本互いに当接した状態で設けられ、当該たて枠材6の壁パネル1の厚さ方向と直交する側壁はたて枠材5のフランジと面一となっている。
【0025】
図1に示すように、横枠材7は溝形鋼によって形成され、そのウエブを水平に向けて設けられている。上側の横枠材7の一対のフランジはウエブから下方に向けて突出しており、下側の横枠材7の一対のフランジはウエブから上方に向けて突出している。
そして、上側の横枠材7の端部において、当該横枠材7の一対のフランジ間にたて枠材5,6の上端部が挿入されてうえで、当該フランジにたて枠材5,6の上端部がビスによって固定され、さらに、下側の横枠材7の端部において、当該横枠材7の一対のフランジ間にたて枠材5,6の下端部が挿入されてうえで、当該フランジにたて枠材5,6の下端部がビスによって固定されている。
【0026】
また、
図1および
図2に示すように、枠体3の内部には、補強たて材8がたて枠材5と平行に、かつ枠体3の幅方向中央部に設けられている。補強たて材8はリップ溝形鋼によって形成され、当該補強たて材8の上端部は上側の横枠材7の一対のフランジ間に挿入され、当該フランジにビス等によって固定されている。また、補強たて材8の下端部は下側の横枠材7の一対のフランジ間に挿入され、当該フランジにビス等によって固定されている。
【0027】
面材4は、鋼板や合板等の構造用面材によって矩形板状に形成されており、枠体3の表裏面とほぼ等しい形状および面積となっている。このような面材4は、枠体3の両面(表裏面)にそれぞれ当接されたうえでビス等によって固定されている。
【0028】
床パネル2は、
図3に示すように、壁パネルの面材の直角方向に形成される矩形枠状の枠体9とこの枠体9の上面に取り付けられた石膏ボード等の窯業系の面材10とを備えている。
枠体9は、
図3(a)に示すように、平行離間して配置された端根太材9a,9aと、当該端根太材9,9間に架設された複数の床根太材9bとによって、矩形枠状に形成されている。床根太材9bは端根太材9aと直角に配置され、かつ床根太材9bどうしは平行に配置されている。なお、
図3(a)には、一方の端根太材9aのみを図示しており、他方の端根太材9aは図示を省略している。
また、端根太材9aは溝形鋼によって形成され、床根太材9bはリップ溝形鋼によって形成されている。
そして、端根太材9aの一対のフランジ間に床根太材9bの端部が挿入されたうえで、当該フランジに床根太材9bの端部がビスによって固定されている。また、床根太材9bの端部側には溝形鋼によって形成された補強部材9cが、床根太材9bと背中合わせに配置されるとともに、当該床根太材9bに固定されている。また、この補強部材9cの一方のフランジは、端根太材9aの一対のフランジ間に配置されている。
また、面材10の長手方向(
図3(b)において左右方向)の長さは、枠体9の左右方向の長さより短くなっており、これによって、枠体9の両側部には面材10が設けられていない領域がある。
【0029】
前記連結金具11は、
図3(b)に示すように、主に引張力を負担する引張力受金物20と、圧縮力を負担する圧縮力受金物30とを備えている。
引張力受金物20は、
図1に示すように、上階の壁パネル1のたて枠材5と下階の壁パネル1のたて枠材5とに渡ってたて向きに配置できる長さを有し、上下両端部に雄ねじ部21,21を有するボルト(連結軸)22と、このボルト22の上下両端部に設けられた固定部材23とを備えている。
【0030】
固定部材23は、
図2に示すように、上下方向に連続する凹溝を有するU字状部と、このU字状部の両側部に一体的に設けられた、上下方向に延長する固定用フランジとを備えている。
そして、固定部材23のU字状部の凹溝にボルト22が嵌合され、
図1に示すように、固定部材23の上下においてナット24,24がボルト22に螺合して締め付けられることで、固定部材23の上下部に圧着されている。したがって、ナット24,24の締め付け位置を調整することによって、固定部材23の上下方向の位置を調整でき、この調整した位置で固定部材23をボルト22に固定できるようになっている。
また、固定部材23は上下の壁パネル1のたて枠材5の内側に挿入され、固定用フランジをたて枠材5のウエブに複数のドリルねじ24bによって固定することによって、たて枠材5に固定されている。
【0031】
このような、引張力受金物20は、床パネル2を上下に貫通するようにして設けられている。すなわち床パネル2の面材10には、
図3(b)に示すように、引張力受金物20のボルト22を挿入するための貫通孔10aが形成されるとともに、床パネル2の床根太(端根太材)の上下のフランジ2a,2bにも同様の貫通孔が形成されている。さらに、上側の壁パネル1の下側の横枠材7および下側の壁パネル1の上側の横枠材7にも前記貫通孔と同軸に同様の貫通孔が形成されている。
そして、引張力受金物20のボルト22(連結軸)が複数の前記貫通孔(貫通孔10aを含む)を挿通されたうえで、当該のボルト22の上下端部がそれぞれ上下階の壁パネル1,1のたて枠材5,5に固定部材23を介して固定されている。この状態において、上側の壁パネル1の下側の横枠材7と下側の壁パネル1の上側の横枠材7とは、床パネル2の上下面にそれぞれ当接している。
したがって、上下の壁パネル1,1に引張力が作用すると、この引張力を引張力受金物20のボルト(連結軸)22が負担するとともに、圧縮力の一部も当該ボルト(連結軸)22が負担可能となっている。
【0032】
なお、壁パネル1はその左右方向の長さの異なる複数種類のものがあり、長さが長い場合、補強たて材8が複数平行離間して設けられる。その場合でも、引張力受金物20は、基本的に壁パネル1の両側端部に配置する。
【0033】
圧縮力受金物30は、
図3(b)に示すように、上階の壁パネル1の下端面と下階の壁パネル1の上端面との間に、前記下端面および前記上端面に間接的に当接した状態で設けられており、
図3(b)および
図4に示すように、金物本体31と、この金物本体31の上端部に固定されて、上階の壁パネル1の下端面に間接的に当接する上当接板32と、金物本体31の下端部に固定されて、下階の壁パネル1の上端面に間接的に当接する下当接板33とを備えている。
【0034】
金物本体31は円筒状の鋼管で形成されており、その軸方向(上下方向)の長さは、床パネル2の枠体9の高さより、上下の当接板32,33の厚さと床パネル2の上下のフランジ2a,2bの厚さとの合計の厚さ分だけ低くなっている。
なお、金物本体31は筒状であれば、円筒状に限らず、角筒状であってもよいし、さらには筒状でなく中実なものであってもよい。但し、筒状の方が中実なものに比して、軽量であり、かつ効率的に圧縮力を伝達できるので、筒状の方が好ましい。
【0035】
上当接板32と下当接板33とは矩形板状の鋼板によって形成されており、その長辺の長さは壁パネル1の厚さとほぼ等しいか若干短めになっており、短辺の長さは金物本体31の外径より若干長めになっている。
そして、
図4に示すように、上当接板32および下当接板33は金物本体31に点溶接によって固定されている。すなわち、上当接板32の下面の中央部に、金物本体31の上端面が当接されたうえで、金物本体31の上端面が、その周方向に等間隔の4箇所の位置で上当接板32の下面に点溶接されている。また、下当接板33の上面の中央部に、金物本体31の下端面が当接されたうえで、金物本体31の下端面が、その周方向に等間隔の4箇所の位置で下当接板33の上面に点溶接されている。なお、符号wが点溶接部を示している。点溶接の数は、必要に応じて増減してよい。
【0036】
このような構成の圧縮力受金物30は、上階の壁パネル1の下端面と下階の壁パネル1の上端面との間に、当該下端面および上端面に間接的に当接した状態で設けられている。
すなわちまず、
図3(b)に示すように、圧縮力受金物30は、床パネル2の内部に設けられている。また、圧縮力受金物30は、平面視において、引張力受金物20と異なる位置に配置されている。具体的には、圧縮力受金物30は、引張力受金物20のボルト22より外側(
図3(b)において左側)に配置され、上当接板32は床パネル2の長辺側枠材の上フランジ2aの端部下面に当接されている。この上当接板32が当接している上フランジ2aの上には、面材10が設けられておらず、その代わりに2枚のプレート35,35が設けられている。プレート35は鋼板によって形成されており、上当接板32と平面上の大きさ、形状がほぼ等しくなっている。また、プレート35の厚さは面材10の半分の厚さに設定されており、プレート35を2枚上下に重ね合わせることによって、面材10と同じ厚さになる。
【0037】
なお、本実施の形態では、上下に重ね合わせた2枚のプレート35,35を使用したが、面材10と同厚の1枚のプレートを使用してもよいし、3枚以上の複数のプレートを重ね合わせて使用してもよい。3枚以上の複数のプレートを重ね合わせる場合、合計の厚さが面材10と同厚となるように各プレートの厚さを適宜設定すればよい。
【0038】
そして、上階の壁パネル1の下端面に、圧縮力受金物30の上面、すなわち上当接板32の上面が長辺側枠材の上フランジ2aおよび2枚のプレート35,35を介して間接的に当接されている。
プレート35,35には、上階の壁パネル1の枠体3を構成する角形鋼管からなるたて枠材6,6の下端面が当接されている。たて枠材6,6は対向する側壁6aどうしを互いに当接して配置されており(
図2参照)、当該側壁に上当接板32の中央部が位置するようにして、圧縮力受金物30の設置位置が調整されている。
また、下階の壁パネル1の上端面には、圧縮力受金物30の下面、すなわち下当接板33の下面が長辺側枠材の下フランジ2bを介して間接的に当接されている。下フランジ2bには下階の壁パネル1の枠体3を構成する角形鋼管からなるたて枠材6,6の上端面が当接されている。たて枠材6,6は対向する側壁6aどうしを互いに当接して配置されており、当該側壁に下当接板33の中央部が位置するようにして、圧縮力受金物30の設置位置が調整されている。
このように、圧縮力受金物30の設置位置を調整することによって、圧縮力(軸力)を確実に圧縮力受金物30に伝達できる。
【0039】
なお、本実施の形態では、上階の壁パネル1の下端面に、圧縮力受金物30の上当接板32の上面が上フランジ2aおよび2枚のプレート35,35を介して間接的に当接されているが、上階の壁パネル1の下端面に上当接板の上面が直接当接されるようにしてもよい。この場合、上当接板を上当接板32より厚くするとともに、上フランジ2aに上当接板が貫通可能な孔や切欠きを設けることで、上当接板の上面を上フランジ2aから突出させて、上階の壁パネル1の下端面に直接当接させればよい。
また、本実施の形態では、下階の壁パネル1の上端面に、圧縮力受金物30の下当接板33の下面が下フランジ2bを介して間接的に当接されているが、下階の壁パネル1の上端面に下当接板の下面が直接当接されるようにしてもよい。この場合、下当接板を下当接板33より厚くするとともに、下フランジ2bに下当接板が貫通可能な孔や切欠きを設けることで、下当接板の下面を下フランジ2bから突出させて、下階の壁パネル1の上端面に直接当接させればよい。
【0040】
また、圧縮力受金物30は、床パネル2の長辺側枠材の上フランジ2aに固定されている。すなわち、
図5および
図6に示すように、重なっている2枚のプレート35,35の両側部には、それぞれプレート35,35を貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔と同軸に上フランジ2aにも貫通孔が形成されている。さらに、この貫通孔と同軸に上当接板32にねじ孔が形成されている。上側のプレート35に形成された貫通孔は断面台形状に形成されている。
【0041】
そして、前記貫通孔にビス40を挿入してねじ孔にねじ込むことによって、2枚のプレート35,35と上当接板32とが上フランジ2aに一体的に固定されている。この状態において、ビス40の頭部は、上側のプレート35に形成された断面台形状の貫通孔に納まり、上側のプレート35の上面から突出することがない。
また、下当接板33は床パネル2の下フランジ2bに当接されているが、固定されておらず、水平方向にはフリーの状態である。
【0042】
圧縮力受金物30は床パネル2内に設けられるが、その設置位置は、
図1に示すように、壁パネル1の側端部に対応する位置となっている。つまり、上階の壁パネル1は床パネル2の上面に複数配置されるが、これら壁パネル1のうち、特に耐力壁を構成する壁パネル1の側端部に対応させて、圧縮力受金物30が床パネル2内に配置される。通常床パネル2はその上面に床材となる面材10を備えているので、圧縮力受金物30を床パネル2内に設置する場合は、その設置位置上の面材10を切り欠いたり、穴を明ける。そして、その面材10の厚さ分のプレート35,35および上フランジ2a(
図3(b)参照)を介して、圧縮力受金物30の上当接板32を壁パネル1の下端面に間接的に当接する。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、上下階の壁パネル1,1を連結する連結金具11が主に引張力を負担する引張力受金物20と、圧縮力を負担する圧縮力受金物30とを備えており、圧縮力受金物30は、上階の壁パネル1の下端面と下階の壁パネル1の上端面との間に、当該下端面および上端面に間接的に当接した状態で設けられているので、引張力受金物20のボルト(連結軸)22の軸径を大径にすることなく、圧縮力受金物30によって圧縮力を負担できる。したがって、低コストで高い圧縮耐力を確保できる。
【0044】
また、圧縮力受金物30が、筒状の金物本体31と、この金物本体31の上端部に固定されて、上階の壁パネル1の下端面に当接する上当接板32と、金物本体31の下端部に固定されて、下階の壁パネル1の上端面に当接する下当接板33とを備えているので、金物本体31が中実なものに比して軽量でかつ効率的に圧縮力を伝達できるととともに、円滑な応力伝達が可能となる。
また、圧縮力受金物30は圧縮力を負担し、引張力は負担する必要がないので、上当接板32および下当接板33が金物本体31に点溶接によって固定されていることにより、溶接作業が容易であるとともに、コスト高となる超音波探傷試験が不要となる。したがって、低コスト化をさらに図ることができる。
【0045】
さらに、平面視において、圧縮力受金物30は引張力受金物20と異なる位置に配置されているので、圧縮力受金物30を、引張力受金物20に対して独立して設置できる。したがって、様々な耐力に対して設計が可能となり、高耐力な連結構造を安価に実現することができる。
また、圧縮力受金物は床パネル2の内部に設けられ、上階の壁パネル1の下端面に、圧縮力受金物30の上当接板32の上面が面材10と同厚のプレート35,35を介して当接され、下階の壁パネル1の上端面に、圧縮力受金物30の下当接板33の下面が当接されているので、床パネル2の面材10によって上階の壁パネル1の下端面と圧縮力受金物30の上当接板32の上面との間に隙が生じていても、プレート35,35によってこの隙間を埋めて、上階の壁パネル1の下端面に、圧縮力受金物30の上当接板32の上面をプレート35,35を介して当接することができる。したがって、圧縮力受金物30によって圧縮力を確実に負担できる。
【0046】
なお、本実施の形態では、平面視において、圧縮力受金物30を引張力受金物20と異なる位置に配置したが、同じ位置に配置してもよい。すなわち、本実施の形態では、床パネル2内において、圧縮力受金物30を引張力受金物20より外側に配置したが、これに代えて、例えば、圧縮力受金物30の金物本体31の内径側に、引張力受金物20のボルト22を挿通することによって、平面視において、圧縮力受金物30を引張力受金物20と、同じ位置に配置してもよい。
また、本実施の形態では、本発明を、いわゆるスチールハウスを構成する壁パネル1や床パネル2に適用したが、これに限らず、木質の壁パネルや床パネルについても適用できる。
【0047】
(実験例)
以下、実験例について説明する。
本発明に係る実験例として、上述した実施の形態における引張力受金物20および圧縮力受金物30と同様の構成の引張力受金物および圧縮力受金物の双方を備えた壁パネルの連結構造の試験体について圧縮試験を行った。
また、比較例として、前記引張力受金物20と同様の構成の引張力受金物を備えているが圧縮力受金物を備えていない壁パネルの連結構造の試験体について圧縮試験を行った。
実験例では、ボルト径が30mmと27mmの2種類の引張力受金物を使用し、比較例ではボルト径が36mmの引張力受金物を使用した。圧縮力受金物の金物本体として、鋼管径60mm、長さ220mm、厚さ3.8mmを使用した。
【0048】
圧縮試験では、上下の壁パネルおよびこれらの間に設けられた床パネルを有する試験体を圧縮試験装置にセットして、上下から試験体に圧縮力を負荷した。
図7に圧縮試験の結果を示す。この図に示すグラフにおいて、たて軸は負荷した圧縮力(荷重)P(kN)を示し、横軸は圧縮力による変位量δ(mm)を示している。なお、
図7においてNo1は比較例のグラフを示し、No2、No3はそれぞれ本発明に係る実験例のグラフを示す。No2はボルト径が30mmの引張力受金物を使用した場合、No3はボルト径が27mmの引張力受金物を使用した場合である。
このグラフに示すように、本発明に係る実験例の試験体では、比較例の試験体に比して、引張力受金物のボルト径が小さいにも拘らず、圧縮耐力が高いことが分かる。