(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
以下、本開示に係る実施形態について説明する。本実施形態の前眼部撮影装置(例えば、前眼部撮影装置200)は、少なくとも被検眼の前眼部を撮影する。前眼部撮影装置は、例えば、断層撮影部(例えば、OCTデバイス5)と、演算制御部(例えば、制御部80)を備える。断層撮影部は、被検眼の前眼部断層画像を撮影する。前眼部断層画像は、例えば、少なくとも水晶体の断面が含まれる画像である。
【0012】
演算制御部は、前眼部断層画像に基づいて、被検眼の水晶体を楕円としたときの長径または短径の位置を算出する。長径および短径の位置とは、例えば、被検眼の左右方向(水平方向)を0°としたときの回転角度、または被検眼の一部を原点とする座標などである。例えば、演算制御部は、前眼部断層画像を解析することによって水晶体の前面または後面の曲率半径を求め、その曲率半径から水晶体の長径または短径を計算してもよい。
【0013】
このように、本装置は、被検眼の断層画像から水晶体の長径または短径の位置を算出でき、水晶体の形状情報を容易に取得できる。例えば、本装置は、白内障治療における眼内レンズの挿入位置の決定に利用できる。
【0014】
また、本装置は、表示制御部(例えば、制御部80)を備えてもよい。表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置を表示部(例えば、モニタ70)に表示してもよい。例えば、表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置を線、点等のグラフィックで表示してもよいし、その角度を数値で表示してもよい。本装置は、水晶体の長径または短径の位置を表示させることによって、白内障治療における眼内レンズの挿入位置についての有益な情報を検者に提供できる。
【0015】
なお、表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置とともに、トーリック眼内レンズの乱視軸(トーリック軸ともいう)の位置を表示部に表示させてもよい。例えば、表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置と、トーリック眼内レンズの乱視軸の位置を、線などで前眼部の正面画像上に表示してもよい。このように、本装置は、水晶体の長径および短径と、トーリック眼内レンズの乱視軸との位置関係についての情報を提供できる。なお、トーリック軸は、例えば、線または点などのグラフィックで表示されてもよいし、数値で表示されてもよい。数値の表示に基づいて、検者が手動で線または点などのグラフィックの位置を決めてもよい。
【0016】
また、表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置とともに、トーリック眼内レンズのループの位置を表示部に表示させてもよい。ループは、例えば、眼内レンズを水晶体の嚢内に支持するための支持部である。例えば、表示制御部は、眼内レンズの図形を表示させてもよいし、ループの位置を線または点などで表示させてもよい。また、表示制御部は、ループの位置を角度または座標等の数値によって表示させてもよい。このように、本装置は、水晶体の長径および短径と、トーリック眼内レンズのループとの位置関係についての情報を提供できる。
【0017】
なお、演算制御部は、水晶体の長径または短径と、ループとのずれ量を算出してもよい。これによって、本装置は、眼内レンズの回旋の可能性に関する情報を取得できる。例えば、演算制御部は、眼の乱視軸に対してトーリック眼内レンズの軸を理想的な軸角度(例えば、角膜形状に基づく乱視軸角度)で配置した場合において、ループの位置と水晶体の長径(または短径)の位置との角度の差を計算してもよい。なお、トーリック眼内レンズの軸角度とループの先端の位置との関係は眼内レンズごとに決まっているため、演算制御部は、トーリック眼内レンズの軸角度に基づいて、水晶体の長径または短径の位置とループの位置とのずれ量を算出してもよい。なお、トーリック眼内レンズの理想的な軸角度としては、誘発乱視を考慮した軸角度であってもよい。誘発乱視とは、例えば、白内障手術時の角膜切開によって角膜形状が変化することで生じる乱視である。例えば、誘発乱視を考慮したときの軸角度は、術前に測定された角膜形状と、角膜の切開位置に基づいて推定される。
【0018】
なお、本装置は、報知部を備えてもよい。例えば、報知部は、表示部、スピーカー、ランプ等であってもよい。報知部を備える場合、演算制御部は、水晶体の長径または短径の位置と、ループの位置とのずれ量に応じて、報知部を制御してもよい。例えば、演算制御部は、水晶体の長径とループとの位置ずれ量が所定量を超えたときに、トーリック眼内レンズが回旋する可能性があることを報知部によって報知させてもよい。また、例えば、演算制御部は、ループの先端の位置が水晶体の短径の位置にあるときに、トーリック眼内レンズが回旋する可能性があることを報知部によって報知させてもよい。これによって、本装置は、トーリック眼内レンズの軸角度を調整することを検者に促すことができる。また、例えば、演算制御部は、トーリ区眼内レンズが回旋する方向を報知してもよい。例えば、演算制御部は、ループが水晶体の短径から長径に向かう方向を報知してもよい。これによって、トーリック眼内レンズの回旋方向を予測することができる。
【0019】
なお、本装置は、被検眼の正面画像を撮影する正面撮影部をさらに備えてもよい。この場合、表示制御部は、水晶体の長径または短径の位置を正面画像に重ねて表示させてもよい。これによって、本装置は、被検眼の特徴部(強膜の血管など)と水晶体の長径または短径の位置関係についての情報を提供できる。なお、正面画像とは、被検眼を正面から撮影したときの画像である。正面撮影部は、OCT光学系等の断層撮影部によって兼用されてもよい。この場合、正面画像は、断層撮影部によって撮影された断層画像データの集合から生成された正面画像であってもよい。
【0020】
<実施例>
以下、本開示に係る前眼部撮影装置200を図面に基づいて説明する。
図1は本実施例に係る前眼部撮影装置200の光学系について示す概略構成図である。なお、以下の光学系は、図示無き筐体に内蔵されている。また、その筐体は、周知のアライメント移動機構の駆動により、操作部材(例えば、ジョイスティック)を介して被検眼Eに対して3次元的に移動される。なお、以下の説明においては、被検者眼(眼E)の軸方向をZ方向、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向として説明する。眼底の表面方向をXY方向として考えても良い。
【0021】
以下の説明においては、光コヒーレンストモグラフィーデバイス(OCTデバイス)5と、角膜形状測定デバイス300と、を備えた前眼部撮影装置200を例に挙げて説明する。
【0022】
OCTデバイス5は、被検眼Eの断面像を撮影するための前眼部撮像デバイスとして用いられる。また、OCTデバイス5は、眼Eの眼軸長を測定するために用いられてもよい。角膜形状測定デバイス300は、角膜形状を測定するために用いられる。なお、OCTデバイス5は、前眼部断層像(断面像)撮影用の光コヒーレンストモグラフィーデバイスを例にとって説明する。
【0023】
OCTデバイス5は、干渉光学系(OCT光学系)100を備えている。OCT光学系100は、眼Eに測定光を照射する。OCT光学系100は、前眼部上(例えば、水晶体)から反射された測定光と,参照光との干渉状態を受光素子(検出器120)によって検出する。OCT光学系100は、前眼部上の撮像位置を変更するため、前眼部上における測定光の照射位置を変更する照射位置変更ユニット(例えば、光スキャナ108)を備える。制御部80は、設定された撮像位置情報に基づいて照射位置変更ユニットの動作を制御し、検出器120からの受光信号に基づいて断層画像を取得する。
【0024】
OCT光学系100は、いわゆる眼科用光断層干渉計(OCT:Optical coherence tomography)の装置構成を持つ。OCT光学系100は、測定光源102から出射された光をカップラー(光分割器)104によって測定光(試料光)と参照光に分割する。そして、OCT光学系100は、測定光学系106によって測定光を前眼部に導き,また、参照光を参照光学系110に導く。その後、前眼部によって反射された測定光と,参照光との合成による干渉光を検出器(受光素子)120に受光させる。
【0025】
光源102から出射された光は、カップラー104によって測定光束と参照光束に分割される。そして、測定光束は、光ファイバーを通過した後、空気中へ出射される。その光束は、光スキャナ108、及び測定光学系106の他の光学部材を介して前眼部に集光される。そして、前眼部で反射された光は、同様の光路を経て光ファイバーに戻される。
【0026】
光スキャナ108は、眼E上でXY方向(横断方向)に測定光を走査させる。光スキャナ108は、例えば、2つのガルバノミラーであり、その反射角度が駆動機構109によって任意に調整される。
【0027】
これにより、光源102から出射された光束はその反射(進行)方向が変化され、眼E上で任意の方向に走査される。これにより、前眼部上における撮像位置が変更される。光スキャナ108としては、光を偏向させる構成であればよい。例えば、反射ミラー(ガルバノミラー、ポリゴンミラー、レゾナントスキャナ)の他、光の進行(偏向)方向を変化させる音響光学素子(AOM)等が用いられる。
【0028】
参照光学系110は、眼Eでの測定光の反射によって取得される反射光と合成される参照光を生成する。参照光学系110は、マイケルソンタイプであってもよいし、マッハツェンダタイプであっても良い。参照光学系110は、例えば、反射光学系(例えば、参照ミラー)によって形成され、カップラー104からの光を反射光学系により反射することにより再度カップラー104に戻し、検出器120に導く。他の例としては、参照光学系110は、透過光学系(例えば、光ファイバー)によって形成され、カップラー104からの光を戻さず透過させることにより検出器120へと導く。
【0029】
参照光学系110は、参照光路中の光学部材を移動させることにより、測定光と参照光との光路長差を変更する構成を有する。例えば、参照ミラーが光軸方向に移動される。光路長差を変更するための構成は、測定光学系106の測定光路中に配置されてもよい。
【0030】
検出器120は、測定光と参照光との干渉状態を検出する。フーリエドメインOCTの場合では、干渉光のスペクトル強度が検出器120によって検出され、スペクトル強度データに対するフーリエ変換によって所定範囲における深さプロファイル(Aスキャン信号)が取得される。ここで、制御部80は、光スキャナ108により測定光を前眼部上で所定の横断方向に走査することにより断層像を取得できる。すなわち、被検眼の前眼部断層像を撮像する。例えば、X方向もしくはY方向に走査することにより、被検眼前眼部のXZ面もしくはYZ面における断層像(前眼部断層像)を取得できる(なお、本実施形態においては、このように測定光を前眼部に対して一次元走査し、断層像を得る方式をBスキャンとする)。なお、取得された前眼部断層像は、制御部80に接続されたメモリ85に記憶される。さらに、測定光をXY方向に二次元的に走査することにより、被検眼前眼部の三次元画像を取得することも可能である。
【0031】
例えば、フーリエドメインOCTとしては、Spectral-domain OCT(SD−OCT)、Swept-source OCT(SS−OCT)が挙げられる。また、Time-domain OCT(TD−OCT)であってもよい。
【0032】
SD−OCTの場合、光源102として低コヒーレント光源(広帯域光源)が用いられ、検出器120には、干渉光を各周波数成分(各波長成分)に分光する分光光学系(スペクトルメータ)が設けられる。スペクトルメータは、例えば、回折格子とラインセンサからなる。
【0033】
SS−OCTの場合、光源102として出射波長を時間的に高速で変化させる波長走査型光源(波長可変光源)が用いられ、検出器120として、例えば、単一の受光素子が設けられる。光源102は、例えば、光源、ファイバーリング共振器、及び波長選択フィルタによって構成される。そして、波長選択フィルタとして、例えば、回折格子とポリゴンミラーの組み合わせ、ファブリー・ペローエタロンを用いたものが挙げられる。
【0034】
角膜形状測定デバイス300は、ケラト投影光学系50、アライメント投影光学系40、前眼部正面撮像光学系30、に大別される。
【0035】
ケラト投影光学系50は、測定光軸L1を中心に配置されたリング状の光源51を有し、被検眼角膜にリング指標を投影して角膜形状(曲率、乱視軸角度、等)を測定するために用いられる。なお、光源51には、例えば、赤外光または可視光を発するLEDが使用される。なお、投影光学系50について、光軸L1を中心とする同一円周上に少なくとも3つ以上の点光源が配置されていればよく、間欠的なリング光源であってもよい。さらに、複数のリング指標を投影するプラチド指標投影光学系であってもよい。
【0036】
アライメント投影光学系40は、光源51の内側に配置され、赤外光を発する投影光源41(例えば、λ=970nm)を有し、被検眼角膜Ecにアライメント指標を投影するために用いられる。そして、角膜Ecに投影されたアライメント指標は、被検眼に対する位置合わせ(例えば、自動アライメント、アライメント検出、手動アライメント、等)に用いられる。本実施形態において、投影光学系50は、被検者眼角膜Ecに対してリング指標を投影する光学系であって、リング指標は、マイヤーリングも兼用する。また、投影光学系40の光源41は、前眼部を斜め方向から赤外光にて照明する前眼部照明を兼用する。なお、投影光学系40において、さらに、角膜Ecに平行光を投影する光学系を設け、投影光学系40による有限光との組合せにより前後のアライメントを行うようにしてもよい。
【0037】
前眼部正面撮像光学系30は、前眼部正面像を撮像(取得)するために用いられる。前眼部正面撮像光学系30は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、ダイクロイックミラー62、フィルタ34、撮像レンズ37、二次元撮像素子35、を含み、被検眼の前眼部正面像を撮像するために用いられる。二次元撮像素子35は、被検眼前眼部と略共役な位置に配置されている。
【0038】
前述の投影光学系40、投影光学系50による前眼部反射光は、ダイクロイックミラー33、対物レンズ47、ダイクロイックミラー62、フィルタ34、及び撮像レンズ37を介して二次元撮像素子35に結像される。
【0039】
光源1は、固視灯である。また、例えば、光源1から発せられた光の前眼部での反射により取得される前眼部反射光の一部は、ダイクロイックミラー33で反射され、前眼部正面撮像光学系30で結像される。
【0040】
次に、制御系について説明する。制御部80は、装置全体の制御及び測定結果の算出を行う。制御部80は、OCTデバイス5の各部材、眼軸長測定デバイス10の各部材、角膜形状測定デバイス300の各部材、モニタ70、操作部84、メモリ85、等と接続されている。
【0041】
また、操作部84には、操作入力部として、マウス等の汎用インターフェースが用いられてもよいし、その他、タッチパネルが用いられてもよい。
【0042】
なお、メモリ85には、各種制御プログラムの他、制御部80が前眼部画像解析を行う解析プログラム等が記憶されている。
【0043】
<制御動作>
以上のような構成を備える装置において、水晶体の形状を推定するときの動作について説明する。検者は、モニタ70に表示される被検眼のアライメント状態を見ながら、図示なきジョイスティック等の操作手段を用いて、装置を上下左右及び前後方向に移動させ、装置を被検眼Eに対して所定の位置関係に置く。この場合、検者は、固視標を被検眼に固視させる。
【0044】
アライメントの際には、光源41及び光源51が点灯される。ここで、検者は、
図2に示すように、モニタ70に電子的に表示されたレチクルLTと、光源41によるリング指標と、が同心円状になるように上下左右のアライメントを行う。これによって、被検眼の角膜頂点に本装置の光軸L1が通るようにXY方向にアライメントされる。また、検者は、リング指標R1のピントが合うように、前後のアライメントを行う。なお、リング指標R1の外側には、光源51によるリング指標R2が表示されている。
【0045】
前眼部に対するアライメントが完了されると、制御部80は、前眼部正面撮像光学系30によって被検眼の前眼部を撮影する。撮影された前眼部画像はメモリ85等に記憶させる。
【0046】
続いて、制御部80は、予め設定された走査パターンに基づき、OCT光学系100によって被検眼の複数断面の断層画像を撮影する。例えば、
図3に示すように、制御部80は、アライメント中心を回転軸として、任意の角度で放射状にスキャンし、少なくとも3断面以上の撮影を行う。本実施例では、被検眼の水平方向を0°として、0°,60°,120°の角度で放射状にスキャンする。放射状にスキャンすることで、水晶体形状の推定に用いるデータを少ないスキャン回数で取得できる。取得された断層画像は、メモリ85等に記憶される。
【0047】
なお、一般的に眼球光軸(水晶体光軸)は視軸に対して傾いているため、水晶体の中心を通るようにスキャンするために、アライメント基準を調整してもよい。例えば、固視灯1の位置を変化させて被検眼を傾けることで、水晶体の光軸を装置の光軸L1に合わせるようにしてもよい。例えば、固視灯を鼻側に4°、上側に1°傾けることで、水晶体の光軸と装置の光軸L1がほぼ一致する。この場合、制御部80は、図示無き駆動を制御して、固視灯1を移動させてもよい。
【0048】
制御部80は、撮影された複数断面の断層画像から水晶体の前面または後面の曲率半径を求める。例えば、制御部80は、断層画像の画像処理によって水晶体の前面または後面の形状を求め、その曲率半径を計算する。例えば、
図4に示すように、断層画像のエッジ検出によって検出された水晶体の前面または後面の輪郭のカーブから曲率半径を算出してもよい。
【0049】
制御部80は、各スキャン角度における曲率半径を求めると、例えば、スキャン角度と曲率半径との関係から水晶体の長径と短径の位置を推定する。
【0050】
例えば、水晶体が真円形でない場合、曲率半径が大きい部分が水晶体の長径に位置し、曲率半径が小さい部分が水晶体の短径に位置すると考えられる。したがって、制御部80は、3断面の各スキャン角度に対する水晶体前面または後面の曲率半径をプロットし、他の角度に対応する曲率半径を補間する。例えば、ラグランジュ補間、スプライン補間などが用いられる。もちろん、最小二乗法などによって関数近似が行われてもよい。制御部80は、補間された値、または関数近似によって得られた近似曲線Fに基づいて曲率半径rの最大値および最小値を求め、最大値をとる位置(角度θ)を水晶体の長径、最小値をとる位置を水晶体の短径の位置とする。なお、制御部80は、長径および短径の一方の角度を算出し、それに90°加えることで他方の角度としてもよい。また、各スキャン角度の曲率半径が同じだった場合、制御部80は、水晶体が円形であると判定してもよい。
【0051】
<眼球モデル表示>
制御部80は、例えば、長径と短径の位置(回転軸に対する角度)をモニタ70に図示する。制御部80は、
図6に示すように、眼球モデル610に長径と短径を表示させる。
図6の例では、眼球モデル610の上に、長い点線620で長径の位置が表示され、長径を示す点線630よりも短い点線で短径の位置が表示される。これによって、検者は、水晶体の傾きを確認することができる。なお、点線620および点線630は、それらの長さの比が水晶体の楕円率と同じになるように表示されてもよい。これによって、検者は、モニタ70の表示から水晶体の楕円形状をイメージすることができる。
【0052】
また、制御部80は、長径と短径の位置における眼球モデルの断面図を表示させてもよい。
図6の例では、正面から見た眼球モデル61の側方に長径の位置における断面
図640が表示され、下方に短径の位置における断面
図650が表示される。例えば、各断面図には、水晶体前面および水晶体後面の曲率半径を表示させてもよい。
図6には、長径の位置における水晶体前面の曲率半径r1および水晶体後面の曲率半径r2、ならびに短径の位置における水晶体前面の曲率半径r3および水晶体後面の曲率半径r4が表示される。このように、曲率半径を数値で示すことによって、水晶体の形状をイメージさせ易くしてもよい。なお、上記のような眼球モデルではなく、実際の被検眼の画像を表示させてもよい。
【0053】
<トーリック軸表示>
なお、制御部80は、眼内レンズのトーリック軸の位置をモニタ70に表示させてもよい。
図7の例では、制御部80は被検眼の前眼部正面画像に、トーリック軸710の位置、眼内レンズ750のループ先端755の位置、ならびに水晶体長径720および短径730の位置を表示させている。なお、トーリック軸710の位置は、他の装置から取得してもよいし、OCTデバイス5および角膜形状測定デバイス300等の測定結果に基づいて算出してもよい。本実施例においては、角膜形状測定デバイス300によって取得された角膜の乱視軸角度がトーリック軸とされる。ループ先端755の位置は、眼内レンズの種類によって決まっており、トーリック軸の位置から求められる。したがって、制御部80は、被検眼に挿入される眼内レンズの種類とその形状を予めメモリ85に記憶させるとよい。
【0054】
なお、眼内レンズのループが元の形状に戻ろうとして外側に広がるときの弾性力によって水晶体の嚢に眼内レンズを支持するが、水晶体嚢からの抵抗が小さい方向、つまり、水晶体の短径から長径に向かって眼内レンズが回転する。したがって、制御部80は、ループ先端755が水晶体短径730に位置する場合、眼内レンズが回旋する可能性がある旨の警告770をモニタ70に表示させてもよい。例えば、制御部80は、ループ先端755が水晶体短径730から±5°の範囲内であった場合に警告770を表示してもよい。この警告表示によって、検者は、眼内レンズを挿入する際に眼内レンズの軸角度を調整してもよい。
【0055】
また、制御部80は、眼の乱視軸に対して眼内レンズのトーリック軸を理想的な軸角度で配置した場合において、ループの位置と水晶体の長径の位置との角度の差を計算してもよい。この角度が所定以上(例えば、10°以上)の場合、制御部80は、モニタ70に警告770を表示させてもよい。
【0056】
なお、制御部80は、眼内レンズが回旋する可能性があると判定した場合、眼内レンズを予め回旋方向とは逆方向にずらして挿入することを警告770として表示してもよい。例えば、制御部80は、ループ先端755の位置が水晶体長径720よりも水晶体短径730に近い場合、ループ先端755が長径から遠ざかる方向に、トーリック軸を5°程度ずらして眼内に挿入するように促す指示をモニタ70に表示させてもよい。また、制御部80は、眼内レンズが回旋する可能性があると判定した場合、乱視矯正効果がより強いトーリック眼内レンズを挿入することを警告770として表示してもよい。例えば、前述例において、5°の軸ずれを生じると判定した場合、トーリック眼内レンズの度数を再選定するように促す指示をモニタ70に表示させてもよい。これによって、眼内レンズの回旋によるトーリック軸のずれの影響を考慮した度数の眼内レンズを選択できる。
【0057】
以上のように、本装置は、水晶体の長径および短径の有無、長径および短径の位置とその比率等の形状に関する情報を容易に取得できる。これによって、検者は、水晶体の形状による眼内レンズの回旋の影響を考慮して眼内レンズの軸角度を決定できる。
【0058】
なお、制御部80は、水晶体長径または短径の位置とトーリック軸またはループの位置とのずれ量を術前に算出した結果と、術後の眼内レンズの回旋量とをメモリ85に記憶させてもよい。この場合、制御部80は、メモリ85に記憶された術前のずれ量と、術後の実際の回旋量の関係に基づいて、別の被検眼(右眼または左眼、もしくは別の患者の眼)の眼内レンズの回旋量を推定してもよい。
【0059】
例えば、制御部80は、術前に予定されたループの位置と水晶体長径の位置とのずれ量をメモリ85に記憶させる。また、制御部80は、術後に測定した実際の回旋量をメモリ85に記憶させる。実際の回旋量は、例えば、術前に予定されたループの位置と、術後に測定したループの位置とのずれ量(回旋量)を算出することで求める。なお、術後の実際のループの位置は、例えば、前眼部正面画像の画像解析等によって眼内レンズの形状を特定することで得られる。例えば、制御部80は、メモリ85に蓄積された術前のループと水晶体長径のずれ量に対する術後の眼内レンズの回旋量の傾向に基づいて、次の患者の眼内レンズの回旋量を予測してもよい。例えば、制御部80は、ずれ量が増加すると回旋量も増加する傾向にある場合、ずれ量が大きいほど回旋量を大きく予測してもよい。また、制御部80は、ずれ量が増加すると回旋量が減少する傾向にある場合、ずれ量が大きくなるほど回旋量を小さく予測してもよい。このように、制御部80は、過去の手術データを用いることで、より適正な回旋量を推定してもよい。
【0060】
なお、制御部80は、眼内レンズモデル毎に回旋量の予測を行ってもよい。眼内レンズのモデルによって回旋の傾向が異なるため、制御部80は、過去の回旋量のデータに基づいて、モデル毎の傾向に応じた回旋量を算出してもよい。また、術者の手術のやり方または癖等によって眼内レンズの回旋の傾向が異なるため、術者毎の傾向に応じた回旋量を算出してもよい。
【0061】
なお、上記の説明において、OCT光学系5のスキャン方向は放射状であったが、同心円状のサークルスキャンでもよいし、ラジアルスキャンであってもよい(
図8参照)。この場合、制御部80は、サークルスキャンまたはラジアルスキャンによって得られた水晶体の3次元形状データに基づいて、水晶体の長径および短径の算出を行ってもよい。
【0062】
なお、水晶体の長径および短径の位置を計算する方法としては、上記の実施例の方法に限らず、水晶体の赤道位置を推定する方法などがある。水晶体の赤道とは、例えば、水晶体の最大径部である。本実施例のようにOCT光学系100を用いて取得された前眼部断層画像500は、虹彩によって測定光が遮られるため、水晶体の赤道は撮影されない。したがって、制御部は、水晶体が撮影される中央部の形状に基づいて、赤道部の形状を推定する。例えば、制御部80は、水晶体前面に沿う曲線(例えば、近似円)と、水晶体後面に沿う曲線(例えば、近似円)とが交わる点を赤道位置として推定する。この赤道位置を各スキャン角度で算出し、これらの赤道位置を通る楕円を求める。そして、制御部80は、求めた楕円の長径と短径を水晶体の長径と短径とする。この場合、制御部80は、求めた楕円の長径と短径の大きさの数値を表示部に表示させてもよいし、長径または短径を表す線等のグラフィックの長さをその大きさに合わせて表示させてもよい。
【0063】
なお、制御部80は、長径および短径を計算する際、水晶体前面の曲率または水晶体後面の曲率の一方のみを用いてもよいし、両方を用いてもよい。水晶体前面と後面のどちらの曲率を用いても長径および短径の位置はほぼ同じになるため、制御部80にそれぞれの計算結果を比較させ、計算結果の妥当性を確認させてもよい。例えば、制御部80は、それぞれの計算結果の差が所定量以上(例えば、5°以上)である場合は、計算結果が妥当ではないと判定し、再度被検眼の断面を撮影してもよい。
【0064】
なお、
図6または
図7において、水晶体の長径と短径が線で表示されているが、推定された楕円の図形を表示してもよい。この場合でも、検者は水晶体の楕円形状と長径および短径の傾き具合を確認することができる。
【0065】
<眼内レンズ度数算出>
なお、本装置は、眼内レンズの度数算出に用いられてもよい。例えば、制御部80は、角膜形状測定デバイス300とOCTデバイス5によって測定された測定データに基づいて、眼内レンズ度数を算出する。
【0066】
例えば、制御部80は、メモリ85に記憶された前眼部画像400におけるリング指標像R1及びR2に基づいて被検眼の角膜形状をそれぞれ算出する。角膜形状とは、例えば、強主経線方向及び弱主経線方向における角膜前面の角膜曲率半径、角膜の乱視軸角度等である。また、制御部80は、OCTデバイス5を用いて撮影された断層画像を解析する。例えば、制御部80は、角膜後面の角膜曲率半径、前房深度、角膜厚、水晶体前面曲率、水晶体後面曲率、水晶体厚等を測定する。さらにOCT光学系によって網膜まで撮影することができる場合は、眼軸長を測定することができる。
【0067】
制御部80は、既知であるSRK/T式、Binkhors式等に上記の測定データを代入して眼内レンズ度数を算出する。例えば、SRK/T式を用いる場合、角膜曲率半径、眼軸長、レンズ定数(SRK/T式を用いる場合はA定数と呼ばれる)等のパラメータを用いて眼内レンズ度数が計算される。
【0068】
なお、本実施例においては、前眼部断面像を撮像する前眼部撮像デバイスとして、前眼部断層像(断面像)撮影用の光コヒーレンストモグラフィーデバイスを例に挙げたがこれに限定されない。光源からの出射光を被検眼前眼部に向けて投光し、前眼部上に光切断面を形成させる投光光学系と、光切断面の前眼部での散乱により取得される前眼部散乱光を含む光を受光する検出器を有する受光光学系と、を有し、検出器からの検出信号に基づいて前眼部断面画像を形成する構成であればよい。すなわち、検眼の前眼部にスリット光を投影し、シャインプルークカメラにより前眼部断面画像を得る装置等にも適用可能である。
【0069】
さらに、シャインプルークカメラを回転させたり、水平または垂直方向に移動させたりすることにより前眼部の3次元形状画像を取得する装置にも適用可能である。この場合、所定の回転角度毎にずれ補正を行うことによって、精度よく前眼部の3次元形状画像を取得することが可能となり、3次元形状画像より取得される測定値の精度が良くなる。この場合、撮像面(スリット断面)に対して垂直な方向の位置ずれが検出され、その検出結果に基づいてずれ補正処理が行われる。
【0070】
なお、上記実施例の機能を行う水晶体形状推定ソフトウェア(プログラム)をネットワークや各種記憶媒体を介して、システムあるいは装置に供給してもよい。この場合、システムあるいは装置のコンピュータ(例えば、CPU等)にプログラムを読み出させ、実行させてもよい。