(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記判定部は、前記取得部により取得した前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標が所定値を超えた場合、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する、
ことを特徴とする請求項1に記載の音環境調整装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1における騒音レベル検出手段は、車両の走行速度やエンジンの回転数から騒音レベルを推定しているのであって、実際にマイクを用いて測定した音に基づいて騒音レベルを検出しているのではない。したがって、特許文献1においては、路面の状態によって異なるロードノイズや、車室内でのオーディオ装置または会話の音の大きさが考慮されていないため、車室内の音環境の状態を正確に判定しているとは言えない。その結果、特許文献1においては、例えば実際には車室内の騒音レベルが低くなっているにも拘わらず、コンプレッサーの回転に伴って発生する音の増大を防止できないことが考えられる。
【0005】
また、車両において音を発生する雑音発生源としては、オーディオ装置やカーナビゲーション装置等も存在しており、音に基づく利用者の不快感を防止するためには、これらの装置についても制御することが望ましい。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、その目的は、車室内の音環境の状態を正確に判定することができ、雑音発生源の音の大きさを適切に制御することができる音環境調整装置および音環境調整方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記目的を達成するために本発明の一態様に係る音環境調整装置は、車室内の音を集音し、音信号を出力する集音装置と、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得する取得部と、少なくとも前記音信号に基づいて前記車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する判定部と、前記判定部により前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合、前記雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御する制御部と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様において、雑音発生源とは、車載され、車両内に音を発生する装置であり、例えば、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等が含まれる。本発明の一態様において、雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量とは、雑音発生源の動作に関わる動作量であり、例えば、エアコンの回転数、カーオーディオ装置の音量、およびカーナビゲーション装置の音量等が含まれる。本発明の一態様において、車室内の音環境とは、車室内に存在する音の全体集合を言う。車室内に存在する音には、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等の音、並びにロードノイズ等が含まれる。本発明の一態様において、車室内の音環境の状態を示す指標とは、車室内に存在する音の状態を示す指標であり、例えば、車室内の全体の音の大きさ、および車室内のある音の大きさに対する他の音の大きさの割合等が含まれる。
本発明の一態様によれば、集音装置は、車室内の音を集音し、音信号を出力する。取得部は、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得する。判定部は、少なくとも集音部により出力された音信号に基づいて、車室内における音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する。制御部は、判定部により車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御する。したがって、前記一態様によれば、集音装置により車室内の実際の音を集音し、少なくとも集音した音に基づく音信号に基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かが判定される。その結果、動作量のみに基づいて車室内の音環境の状態を判定する場合に比べて、車室内の音環境の状態が正確に判定されることになり、雑音発生源の音の大きさを適切に制御することができる。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御するので、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0009】
前記本発明の一態様において、判定部は、前記音信号を解析して、前記車室内の音の大きさに関する指標を生成する解析部を備え、前記車室内の音の大きさに関する指標が所定値を超えた場合、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定してもよい。この態様によれば、解析部は、集音装置により出力される音信号を解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。判定部は、当該指標が所定値を超えた場合、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定するので、制御部は、車室内の音の大きさが所定の大きさを超えた場合に、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御することができる。
【0010】
前記本発明の一態様において、前記判定部は、前記音信号を解析して、前記車室内の音の大きさに関する指標を生成する解析部を備え、前記車室内の音の大きさに関する指標に対する、前記取得部により取得した前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標の割合が所定値を超えた場合に、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定してもよい。この態様によれば、解析部は、集音装置により出力される音信号を解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。また、前記動作量には雑音発生源の音の大きさに関する指標が関連付けられており、取得部により前記動作量を取得することにより、当該動作量に関連付けられた雑音発生源の音の大きさに関する指標が得られる。判定部は、車室内の音の大きさに関する指標に対する、雑音発生源の音の大きさに関する指標の割合が所定値を超えた場合に、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する。したがって、車室内の音の大きさに対して、雑音発生源の音の大きさが、所定の割合を超えた場合には、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量が制御される。その結果、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0011】
前記本発明の一態様において、前記判定部は、前記取得部により取得した前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標が所定値を超えた場合、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定してもよい。この態様によれば、前記動作量には雑音発生源の音の大きさに関する指標が関連付けられており、取得部により前記動作量を取得することにより、当該動作量に関連付けられた雑音発生源の音の大きさに関する指標が得られる。判定部は、当該指標が所定値を超えた場合に、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定するので、制御部は、雑音発生源の音の大きさが所定の大きさを超えた場合に、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御することができる。
【0012】
前記本発明の一態様において、前記判定部は、前記音信号を解析して、前記車室内の音の大きさに関する指標を生成する解析部を備え、前記所定値は、前記車室内の音の大きさに関する指標から、前記取得部により取得した前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標を差し引いた値であってもよい。この態様によれば、車室内の音の大きさに関する指標から、雑音発生源の音の大きさに関する指標を差し引いた値は、雑音発生源以外による音の大きさに関する指標となる。この態様では、判定部は、前記動作量に関連付けられた雑音発生源の音の大きさに関する指標が、雑音発生源以外による音の大きさに関する指標を超えた場合に、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する。したがって、雑音発生源以外による音の大きさに応じて、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御するので、雑音発生源の周囲の音に合わせて雑音発生源の音の大きさを低減させることができる。
【0013】
前記本発明の一態様において、前記指標は、ラウドネス曲線に基づいて定めてもい。この態様によれば、前記指標がラウドネス曲線に基づいて定められるので、利用者の感覚に適合した雑音発生源の音の大きさの制御が行われることになる。
【0014】
前記本発明の一態様において、前記雑音発生源は車載エアコンあり、前記動作量は車載エアコンの回転数であってもよい。この態様によれば、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、雑音発生源としての車載エアコンの音の大きさを低減させるように、車載エアコンの回転数を制御する。したがって、車載エアコンの音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0015】
前記本発明の一態様において、前記利用者による操作が可能な入力装置を備え、前記判定部は、前記入力装置における前記操作に基づいて、前記所定値を変更してもよい。この態様によれば、利用者が入力装置を操作することにより、上述した所定値が変更される。したがって、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かの判定において基準となる値を、利用者の操作に応じて変更することができるので、それぞれの利用者が感じる音環境の状態に応じて、雑音発生源を適切に制御することができる。
【0016】
前記目的を達成するために本発明の一態様に係る雑音発生源の制御方法は、車室内の音を集音し、音信号を出力し、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得し、少なくとも前記音信号に基づいて前記車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定し、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合、前記雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御する、ことを特徴とする。
【0017】
本発明の一態様によれば、車室内の音は集音され、音信号として出力される。また、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量が取得される。そして、出力された音信号と、取得された動作量とに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かが判定される。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量が制御される。したがって、前記一態様によれば、車室内の実際の音を集音し、少なくとも集音した音に基づく音信号に基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かが判定される。その結果、動作量のみに基づいて車室内の音環境の状態を判定する場合に比べて、車室内の音環境の状態が正確に判定されることになり、雑音発生源の音の大きさを適切に制御することができる。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、雑音発生源の音の大きさを低減させるように前記動作量を制御するので、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
<第1実施形態>
【0020】
図1は、本発明の第1実施形態における音環境調整システム1の構成図である。第1実施形態の音環境調整システム1は、
図1に例示される通り、雑音発生源としてのエアコン100と、オーディオ装置等のその他の機器200と、エアコン100の回転数制御を行う音環境調整装置300とを備える。エアコン100と、その他の機器200と、音環境調整装置300とは、いずれも乗用車等の車両に設置される。なお、本発明において雑音発生源とは、車載され、車両内に音を発生する装置であり、例えば、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等が含まれる。本実施形態では、エアコンを雑音発生源の一例として説明する。
【0021】
図1に例示される通り、第1実施形態のエアコン100は、温度設定部110と、温度監視部111と、ファン制御部112と、ファン113と、記憶装置114とを備える。温度設定部110は、車両の利用者によるエアコンに対する温度設定の指示を受付ける操作機器である。例えば温度設定部110を適宜に操作することで、利用者は、エアコン100により調整される車室内の温度を随時に指示することが可能である。利用者の操作による温度設定の指示は、温度設定信号TSとして温度設定部110からファン制御部112に出力される。温度監視部111は、車室内の温度を監視する機器であり、例えば、温度センサーを含む。温度監視部111により監視される車室内の温度は、車室内温度信号TDとして温度監視部111からファン制御部112に出力される。
【0022】
ファン制御部112は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む処理回路であり、エアコン100のファン113の回転数を制御する。記憶装置114は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体、あるいは複数種の記録媒体の組合せで構成され、ファン制御部112が実行するプログラムとファン制御部112が使用する各種のデータとを記憶する。ファン制御部112は、温度設定部110から出力される温度設定信号TSに対応する温度と、温度監視部111から出力される車室内温度信号TDに対応する温度とを比較し、ファン113の回転数を制御するための制御信号RSをファン113に出力する。
本実施形態において、エアコン100に対する温度設定の指示の操作は、雑音発生源としてのエアコン100に対する利用者の操作の一例である。また、本実施形態において、エアコン100の回転数は、雑音発生源としてのエアコン100に対する利用者の操作に応じた動作量の一例である。
【0023】
例えば、ファン制御部112は、車室内温度信号TDが示す車室内温度が、温度設定信号TSが示す設定温度より高い場合には、車室内温度を、設定温度まで低下させるように、ファン113の回転数を増加させる制御信号RSをファン113に出力する。また、ファン制御部112は、車室内温度信号TDが示す車室内温度が、温度設定信号TSが示す設定温度より低い場合には、車室内温度を、設定温度まで上昇させるように、ファン113の回転数を減少させる制御信号RSをファン113に出力する。
また、ファン制御部112は、音環境調整装置300から制御信号RCを入力すると、ファン113の回転数が、制御信号RCに含まれる回転数の上限値を超えないように、制御信号RSをファン113に出力する。さらに、ファン制御部112は、音環境調整装置300からの要求に応じて、ファン113の現在の回転数を示す回転数信号RDを音環境調整装置300に出力する。
【0024】
ファン113は、図示しないエアコンユニットに設けられている。ファン113は、モータにより回転駆動され、エアコンユニットにより冷却された空気を車室内へ送り込む。ファン113の回転数は、ファン制御部112から出力される制御信号RSとによっても制御される。例えば、ファン113の回転数を増加させることにより、車室内へ送り込まれる冷却された空気の量が増加し、車室内の温度が低下する。また、ファン113の回転数を減少させることにより、車室内へ送り込まれる冷却された空気の量が減少し、車室内の温度が上昇する。
【0025】
図1に例示される通り、第1実施形態の音環境調整装置300は、入力装置310と、制御装置320と、集音装置330と、記憶装置340とを備える。
入力装置310は、音環境調整装置300に対する各種の指示のために利用者が操作する操作機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子や利用者による接触を検知するタッチパネルが入力装置310として好適に利用される。入力装置310は、利用者による操作または接触を検知するごとに入力信号Xを制御装置320に出力する。本実施形態では、一例として、利用者が車室内の音が大きいと感じた場合には、利用者が入力装置310を操作することにより、車室内の音を低下させる指示を音環境調整装置300に行うことが可能になっている。制御装置320は、利用者の操作に応じて入力装置310から入力信号Xが出力されると、ファン113の回転数を下げるように制御を行う。例えば、本実施形態では、入力信号Xが出力される毎に、ファン113の毎分の回転数を10ずつ低下させる。そして、入力装置310の操作が行われなくなった時点の車室内における音の音圧レベルが、後述する判定部323による判定の基準となる。制御装置320は、入力装置310の操作が行われなくなった時点以降は、前記基準を超えないようにファン113の回転数を制御する。制御装置320は、入力装置310の利用者による操作とは独立してファン113の回転数の制御を行うが、入力装置310の利用者による操作が行われた時には、操作に応じてファン113の回転数を制御する。
【0026】
集音装置330(マイクロホン)は、車室内の音を集音して音信号Yを生成する音響機器である。具体的には、集音装置330は、エアコン100のファン113の音、その他の機器200の音、およびロードノイズ等の車室内で聞くことのできる音を集音して、車室内の音の大きさを表す音信号Yを生成する。なお、集音装置330が生成した音信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
【0027】
制御装置320は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む処理回路であり、本実施形態では一例として車室内の音に応じて、および入力装置310の利用者による操作に応じて、エアコン100のファン113の回転数を制御する。記憶装置340は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体、あるいは複数種の記録媒体の組合せで構成され、制御装置320が実行するプログラムと制御装置320が使用する各種のデータとを記憶する。第1実施形態の記憶装置340は変換テーブルT1と制御テーブルT2とを記憶する。
【0028】
図2は本実施形態における変換テーブルT1の一例を示す図である。
図2に例示される通り、変換テーブルT1は、ファン113の回転数とファン113の騒音レベルとの関係を示すテーブルである。変換テーブルT1におけるレコードR1,R2,R3,R4,R5の「ファン回転数」のフィールドには、それぞれ「off」,「60」,「70」,「80」,「100」が格納されている。「60」,「70」,「80」,「100」は、ファン113の毎分の回転数を示すデータである。「off」は、ファン113が停止している場合を示すデータである。また、変換テーブルT1におけるレコードR1,R2,R3,R4,R5の「ファン騒音レベル」のフィールドには、ファン113が、「ファン回転数」のフィールドに格納された回転数で駆動された際の車室内における騒音レベル(dB)の値が格納されている。ファン113が停止している場合には、騒音レベルは0(dB)であり、ファン113の回転数が「60」,「70」,「80」,「100」の場合には、騒音レベル(dB)は、それぞれ「35」,「55」,「60」,「65」となっている。変換テーブルT1に格納されるそれぞれの値は、エアコン100を車両に設置した状態で、事前に測定される。
【0029】
図3は本実施形態における制御テーブルT2の一例を示す図である。
図3に例示される通り、制御テーブルT2は、エアコン100以外の騒音レベルと制御するファン113の回転数との関係を示すテーブルである。制御テーブルT2におけるレコードR10,R11,R12,R13,R14の「エアコン以外の騒音レベル」のフィールドには、車室内の全体の騒音レベルから、ファン113の騒音レベルを除いた騒音レベルの上限値が格納される。
図3において「〜50」はエアコン以外の騒音レベルの上限値が50(dB)であることを示している。また、
図3において「〜55」はエアコン以外の騒音レベルが50(dB)を越え55(dB)以下であること、「〜60」はエアコン以外の騒音レベルが55(dB)を越え60(dB)以下であることを示している。さらに、「〜65」はエアコン以外の騒音レベルが60(dB)を越え65(dB)以下であることを示している。
【0030】
制御テーブルT2におけるレコードR10,R11,R12,R13,R14の「制御するファン回転数」のフィールドには、ファン113の制御を行う際の回転数の上限値が格納される。
図3において、「制御なし」とは、制御装置320によるエアコン100の制御を行わないことを示している。この場合には、騒音レベルに関係なく、エアコン100における温度設定に基づいてファン113の制御がエアコン100内において行われる。
図3において、「<100」は、ファン113の毎分の回転数の上限値が100であることを示している。エアコン100は、制御装置320からファン113の上限値として100を指示されると、温度設定に基づいてファン113の回転数を制御しつつ、ファン113の回転数の上限値が100を超えないように制御を行う。同様に、
図3において、「<80」、「<70」、および「<60」は、ファン113の毎分の回転数の上限値がそれぞれ80、70、および60であることを示している。
【0031】
図1に例示される通り、記憶装置340に記憶されたプログラムを制御装置320が実行することで、制御装置320は、制御部321、取得部322、判定部323、および解析部324として機能する。なお、以上に例示した制御装置320の機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置320の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。
【0032】
取得部322は、利用者による温度設定の操作に応じたエアコン100のファン113の回転数の上限を示す回転数信号RDをエアコン100のファン制御部112から取得する。すなわち、取得部322は、雑音発生源としてのエアコン100に対する利用者の操作に応じた動作量として、回転数信号RDが示すファン113の回転数を取得する。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。
【0033】
判定部323は解析部324としての機能も有している。解析部324は、集音装置330から出力される音信号Yを解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。本実施形態では、解析部324は、音信号Yの周波数帯域と音圧レベルを解析し、利用者の声をキャンセルした上で、車室内の音の大きさに関する指標の一例として、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を生成する。
【0034】
判定部323は、前記音信号Yから生成した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が基準を超えたか否かを判定する。本実施形態において、前記音信号Yから生成した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)は、車室内の音環境の状態を示す指標の一例である。すなわち、判定部323は、少なくとも前記音信号Yに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する。本発明において、車室内の音環境とは、車室内に存在する音の全体集合を言う。車室内に存在する音には、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等の音、並びにロードノイズ等が含まれる。
前記基準については、予め定めた音圧レベル(dB)を基準として用いてもよい。また、車両の電源がオンになった直後に判定部323が処理を開始した際における前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)の初期値を基準として用いてもよい。本実施形態では、一例として、効果弱、効果中、および効果強等のように予め複数の基準を設けておき、どの基準を用いるのかをユーザーインターフェース(図示省略)にて利用者が選択できるようにした場合について説明する。但し、利用者による入力装置310の操作に基づいてファン113の回転数を低下させ、その結果として前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準よりも低下した場合には、当該低下した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を前記基準として用いる。
【0035】
制御部321は、判定部323により車室内の音の音圧レベルが基準を超えたと判定された場合、エアコン100の音の大きさを低減させるように、ファン113の回転数の上限を示す制御信号RCをファン113に出力する。上述したように、本実施形態において、車室内の音の音圧レベルは、車室内の音環境の状態を示す指標の一例である。また、本実施形態において、ファン113の回転数は、エアコン100に対する利用者の操作に応じた動作量の一例である。つまり、本実施形態においては、制御部321は、判定部323により車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合に、エアコン100の音の大きさを低減させるように、前記動作量としてのファン113の回転数を制御する。また、制御部321は、入力装置310から入力信号Xが出力される毎に、ファン113の毎分の回転数を10ずつ低下させるための制御信号RCをエアコン100のファン制御部112に出力する。
【0036】
図4は、前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)と、エアコン以外の騒音レベル(dB)と、ファン113の騒音レベルとの関係を示す図である。
図4に示すように、前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)は、エアコン以外の騒音レベル(dB)と、ファン113の騒音レベル(dB)とを加算した値である。本実施形態においては、判定部323は、予め設けられた複数の基準(例えば、効果弱、効果中、および効果高等)から利用者がユーザーインターフェース(図示せず)により選択した基準、または利用者による入力装置310の操作に基づいて前記選択した基準よりも低下した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を前記基準として設定する。そして、制御部321は、随時生成される前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないように、雑音発生源としてのエアコン100に対する利用者の操作に応じた動作量としてのファン113の回転数を制御する。本実施形態では、エアコン以外の騒音レベル(dB)が上昇した場合には、ファン113の騒音レベル(dB)を低下させることによって、前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないようにしている。ファン113の騒音レベル(dB)を低下させるには、ファン113の回転数を低下させる必要があるが、本実施形態では、エアコン以外の騒音レベル(dB)に応じたファン113の回転数の上限値が制御テーブルT2に格納されている。そのため、本実施形態においては、判定部323によってエアコン以外の騒音レベル(dB)を随時算出し、制御部321によって制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)に応じてファン113の回転数を上限値以下に制御している。但し、エアコン以外の騒音レベル(dB)が所定値以下になると、ファン113の回転数が最大の場合でも、全体としての前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えない場合がある。したがって、この場合には、ファン113の回転数の制御は行わない。
【0037】
エアコン以外の騒音レベルの算出は以下のようにして行う。まず、判定部323は、変換テーブルT1を参照して、回転数信号RDが示す回転数に対応するファン113の騒音レベル(dB)を読み出す。次に、判定部323は、前記音信号Yに基づいて生成した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)から、ファン113の騒音レベル(dB)を差し引くことにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)を算出する。そして、判定部323は、前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えているか否かの判定結果と、算出したエアコン以外の騒音レベル(dB)とを制御部321に出力する。制御部321は、判定部323により前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えていると判定された場合には、制御テーブルT2を参照して、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対応するファン113の回転数の上限値を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値を含む制御信号RCをエアコン100に出力する。
【0038】
その他の機器200は、例えば、オーディオ装置、あるいは音声出力を行うカーナビゲーションシ装置等、音を発生させる各種の車載装置を含む。
【0039】
次に、本実施形態における音環境調整システム1の動作について
図5を参照しつつ説明する。
図5は、音環境調整システム1の動作を示すフローチャートである。
図5に示す音環境調整システム1の動作は、車両においてエンジンが始動され、エアコン100の動作が開始された際に、所定の時間間隔で実行されるものとする。
図5に示すように、利用者が、エアコン100の温度設定部110を操作して所望の温度を設定すると、温度設定部110は、設定温度を示す温度設定信号TSをファン制御部112に出力する(S10)。
【0040】
ファン制御部112は、室温を測定する温度監視部111から出力される車室内温度信号TDと、温度設定部110から出力される温度設定信号TSとに基づいて、車室内温度が設定温度となるように所定の回転数でファン113を回転させ、温度調整を行う(S20)。音環境調整装置300は、集音装置330で車室内の音を集音して音信号Yを生成し(S30)、当該音信号Yを解析部324において解析する(S40)。本実施形態では、一例として、前記音信号Yから利用者の声をキャンセルし、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を生成する。
【0041】
また、音環境調整装置300は、取得部322により、ファン113の現在の回転数をを示す回転数信号RDを取得する(S50)。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。判定部323は、予め設けられた複数の基準から利用者がユーザーインターフェース(図示省略)により選択した基準を前記基準として設定する。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えたかどうかを判定する(S60)。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えていないと判定した場合には(S60:NO)、処理をステップS20に戻す。
【0042】
しかし、温度調整の結果としてファン113の回転数が上昇すると、ファン113の騒音レベルが上昇し、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が上昇する。また、例えばロードノイズが増加すると、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が上昇する。判定部323により、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えたと判定されると(S60:YES)、制御部321は、判定部323と協働して、前記基準を満たすファン113の回転数の上限値を決定する(S70)。具体的には、判定部323は、変換テーブルT1を参照して、回転数信号RDが示す回転数に対応するファン113の騒音レベル(dB)を読み出す。次に、判定部323は、解析部324により生成された車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)から、ファン113の騒音レベル(dB)を差し引くことにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)を算出する。そして、判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えた旨の判定結果と共に、エアコン以外の騒音レベル(dB)を制御部321に出力する。制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対応するファン113の回転数の上限値を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値を含む制御信号RCをエアコン100に出力する(S80)。以上のように、本実施形態では、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないように、ファン113の回転数を低下させてファン113の騒音レベル(dB)を低下させる。
【0043】
図6は、利用者による入力装置310の操作に対応するための制御部321と判定部323の処理を示すフローチャートである。
図6に示す処理は、車両においてエンジンが始動され、エアコン100の動作が開始された際に、所定の時間間隔で実行されるものとする。また、
図6に示す処理は、
図5に示す処理とは独立に実行されるものとする。
図6に示すように、制御部321は、入力装置310から入力信号Xが出力されたか否かを判断する(S100)。制御部321は、入力装置310から入力信号Xが出力されていないと判断した場合には(S100:NO)、処理を終了する。しかし、制御部321は、入力装置310から入力信号Xが出力されたと判断した場合には(S100:YES)、ファン113の毎分の回転数を10だけ低下させる制御信号RCをエアコン100に出力する(S110)。解析部324は、前記制御信号RCがエアコン100に出力されてから、ファン113が実際に前記制御信号RCに基づく回転数で回転するまでの期間の経過後に、集音装置330により集音された車室内の音を音信号Yとして入力する(S120)。解析部324は、入力した音信号Yを解析する(S130)。本実施形態では、一例として、利用者の声をキャンセルし、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を生成する。判定部323は、生成した車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を前記基準として設定する(S140)。入力信号Xが出力される毎にファン113の毎分の回転数を10ずつ低下させるので、回転数の低下に応じて、ファン113の騒音レベルも低下する。したがって、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も低下することになるので、利用者が入力装置310を操作する毎に、前記基準として設定される音圧レベル(dB)は低くなる。
【0044】
次に、具体的な数値を用いて、本実施形態における処理の結果について説明する。例えば、解析部324において生成した車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が、120(dB)であったとする。また、取得部322により取得したその時のファン113の毎分の回転数が、80であったとする。この場合、判定部323は、変換テーブルT1を参照して回転数80に対応するファン113の騒音レベルとして60(dB)を読み取る。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である120(dB)から、ファン113の騒音レベルである60(dB)を差し引き、エアコン以外の騒音レベル(dB)を、60(dB)と算出する。ここでは、エアコン以外の騒音レベルの大小を示す尺度を、車室内の音の大きさを示す音圧レベルとファン113の騒音レベルとに基づいて算出するということである。「エアコン以外の騒音レベル60(dB)」は、説明をしやすくするために上記方法で算出したものであって、実際の音圧を示すものではない。以下の記載で示す音圧レベルの加減算も同様な考え方をしている。この状態で、利用者により入力装置310が操作されない場合には、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である120(dB)が前記基準として設定される。
【0045】
ここで、温度調整の結果として、ファン113の毎分の回転数が80から100に上昇したとする。この場合には、ファン113の騒音レベル(dB)は60(dB)から65(dB)に5(dB)上昇する。その結果、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も5(dB)上昇し、125(dB)となる。したがって、判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準である120(dB)を超えたと判定する。この時、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)とファン113の騒音レベル(dB)との差分であるエアコン以外の騒音レベル(dB)は、60(dB)であり、変化がないものとする。制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)である60(dB)に対応するファン113の回転数の上限値として、80を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値である80を含む制御信号RCをエアコン100に出力する。その結果、ファン113の毎分の回転数は、100から80に低下し、ファン113の騒音レベル(dB)は、65(dB)から60(dB)に低下する。したがって、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も、125(dB)から前記基準である120(dB)に低下する。以上のように、本実施形態によれば、温度調整の結果として、ファン113の毎分の回転数が上昇した場合でも、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないように、ファン113の毎分の回転数を低下させる制御が行われる。その結果、車室内の音の大きさが一定に保たれ、例えば利用者の話し声等がファン113の騒音レベルにより聞き取り難くなることを防止することができる。
【0046】
次に、ファン113の騒音レベルは変わらないが、何かの原因、例えばロードノイズが増加して、エアコン以外の騒音レベル(dB)が上昇したとする。例えば、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が120(dB)から130(dB)に上昇したとする。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である130(dB)からファン113の騒音レベルである60(dB)を差し引いて、エアコン以外の騒音レベル(dB)として70(dB)を算出する。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である130(dB)が前記基準である120(dB)を超えたと判定する。制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)である70(dB)に対応するファン113の回転数の上限値として、60を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値である60を含む制御信号RCをエアコン100に出力する。その結果、ファン113の毎分の回転数は、80から60に低下し、ファン113の騒音レベル(dB)は、60(dB)から35(dB)に25(dB)低下する。したがって、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も、130(dB)から115(dB)に低下する。以上のように、本実施形態によれば、エアコン以外の騒音レベル(dB)が上昇した場合には、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないように、ファン113の毎分の回転数を低下させる制御が行われる。その結果、車室内の音の大きさが前記基準以下に保たれ、例えば利用者の話し声等がファン113の騒音レベルにより聞き取り難くなることを防止することができる。
【0047】
次に、
図6のフローに対応し、利用者が入力装置310を操作した場合について説明する。例えば、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が、120(dB)であり、ファン113の毎分の回転数が、80であったとする。この場合、ファン113の騒音レベルは60(dB)となる。この状態で、利用者が入力装置310を操作し、入力信号Xが制御装置320に出力されると、制御部321は、ファン113の毎分の回転数を80から70に低下させるように制御信号RCをエアコン100に出力する。その結果、ファン113の騒音レベルは60(dB)から55(dB)に低下する。また、この低下に伴って、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)は120(dB)から115(dB)に低下する。判定部323は、115(dB)を前記基準として設定する。以上のように、本実施形態によれば、利用者が入力装置310を操作することにより、前記基準を低下させることができる。車室内の音環境の状態が適正かどうかは、利用者の感覚によって異なるが、本実施形態によれば、それぞれの利用者に応じて前記基準を定めることができるので、それぞれの利用者に適した音環境の調整が行われる。
【0048】
以上のように、本実施形態によれば、少なくとも集音装置330により集音した車室内の音の大きさに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が前記基準を超えたか否かを判定するので、車室内の音環境の状態を正確に判定することができる。また、車室内の音の大きさが前記基準を超えないようにファン113の回転数を制御するので、雑音発生源の音の大きさを、車室内の音環境の状態に応じて適切に制御することができる。
【0049】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態について
図7を参照しつつ説明する。
図7は、第2実施形態における制御テーブルT2を示す図である。
図7に例示される通り、制御テーブルT2は、エアコン100以外の騒音レベルと制御するファン113の回転数との関係を示すテーブルである。制御テーブルT2におけるレコードR20,R21,R22,R23,R24の「エアコン以外の騒音レベル」のフィールドには、車室内の全体の騒音レベルから、ファン113の騒音レベルを除いた騒音レベルの上限値が格納される。「エアコン以外の騒音レベル」のフィールドに格納される内容は、
図3に示す第1実施形態の制御テーブルT2と同様である。
【0050】
制御テーブルT2におけるレコードR20,R21,R22,R23,R24の「制御するファン回転数」のフィールドには、ファン113の制御を行う際の回転数の上限値が格納される。
図7に示すように、レコードR20,R21,R22,R23,R24の「制御するファン回転数」のフィールドには、「<60」,「<70」,「<80」,「<100」,「制御なし」のデータが格納される。このように、レコードR20,R21,R22,R23,R24の「制御するファン回転数」のフィールドに格納される内容は、
図3に示す第1実施形態の制御テーブルT2と異なっている。
【0051】
第1実施形態においては、エアコン100以外の騒音レベルが上昇した場合に、エアコン100におけるファン113の騒音レベルを低下させることにより、車室内の音の大きさが上昇しないように制御を行った。しかし、本実施形態では、ファン113の騒音レベルが、エアコン100以外の騒音レベルを超えないように制御を行う。
【0052】
また、本実施形態においては、前記音環境の状態を示す指標として、エアコン以外の騒音レベルに対するファンの騒音レベルの比率を用いる。また、本実施形態では、前記比率が1であることを前記基準として用いる。判定部323は、エアコン以外の騒音レベルに対するファンの騒音レベルの比率が1以下である場合には、前記音環境の状態を示す指標が前記基準を超えているとは判定しない。しかし、判定部323は、エアコン以外の騒音レベルに対するファンの騒音レベルの比率が1を超えると、前記音環境の状態を示す指標が前記基準を超えた判定する。言い換えれば、本実施形態では、判定部323は、ファンの騒音レベルがエアコン以外の騒音レベルを超えると、前記音環境の状態を示す指標が前記基準を超えていると判定する。つまり、本実施形態では、判定部323は、前記動作量としてのファン113の回転数に関連付けられたファン113の騒音レベルが、所定値としてのエアコン以外の騒音レベルを超えた場合、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する。
【0053】
図5に示すフローチャートは、本実施形態においても同様に適用可能であるが、前記基準が第1実施形態とは異なっているので、処理の内容については第1実施形態とは異なっている。また、
図6に示すフローチャートは、本実施形態においても同様に適用可能であるが、
図6に示すステップS120からステップS140の処理は本実施形態では省略される。
【0054】
図5に示すフローチャートを参照しつつ、本実施形態における音環境調整システム1の動作について説明する。
図5に示すステップS20からステップS50までの処理は第1実施形態と同様である。本実施形態においては、判定部323は、ファンの騒音レベル(dB)がエアコン以外の騒音レベル(dB)を超えているかどうかにより、音環境の状態を示す指標が前記基準を超えたか否かを判定する(S60)。例えば、温度調整の結果としてファン113の回転数が上昇すると、ファン113の騒音レベル(dB)が上昇し、エアコン以外の騒音レベル(dB)を超えることが考えられる。また、ロードノイズが減少することにより、ファン113の騒音レベル(dB)がエアコン以外の騒音レベル(dB)を超えることが考えられる。このような場合には、判定部323は、音環境の状態を示す指標である、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対するファンの騒音レベル(dB)の比率が、前記基準を超えたと判定する(S60:YES)。制御部321は、判定部323と協働して、前記基準を満たすファン113の回転数の上限値を決定する(S70)。具体的には、判定部323は、変換テーブルT1を参照して、回転数信号RDが示す回転数に対応するファン113の騒音レベル(dB)を読み出す。次に、判定部323は、解析部324により生成された車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)から、ファン113の騒音レベル(dB)を差し引くことにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)を算出する。そして、判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えた旨の判定結果と共に、エアコン以外の騒音レベル(dB)を制御部321に出力する。制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対応するファン113の回転数の上限値を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値を含む制御信号RCをエアコン100に出力する(S80)。以上のように、本実施形態では、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が前記基準を超えないように、ファン113の回転数を低下させてファン113の騒音レベル(dB)を低下させる。
【0055】
次に、具体的な数値を用いて、本実施形態における処理の結果について説明する。例えば、解析部324において生成した現在の車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が、120(dB)であったとする。また、取得部322により取得したその時のファン113の毎分の回転数が、80であったとする。この場合、判定部323は、変換テーブルT1を参照して回転数80に対応するファン113の騒音レベルとして60(dB)を読み取る。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である120(dB)から、ファン113の騒音レベルである60(dB)を差し引き、エアコン以外の騒音レベル(dB)を、60(dB)と算出する。
【0056】
ここで、温度調整の結果として、ファン113の毎分の回転数が80から100に上昇したとする。この場合には、ファン113の騒音レベル(dB)は60(dB)から65(dB)に5(dB)上昇する。その結果、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も5(dB)上昇し、125(dB)となる。この時、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)とファン113の騒音レベル(dB)との差分であるエアコン以外の騒音レベル(dB)は、60(dB)であり、変化がないものとする。したがって、判定部323は、ファン113の騒音レベル(dB)である65(dB)が、エアコン以外の騒音レベル(dB)である60(dB)を超えたと判定する。つまり、判定部323は、音環境の状態を示す指標である、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対するファンの騒音レベル(dB)の比率が、前記基準を超えたと判定する。
【0057】
制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)である60(dB)に対応するファン113の回転数の上限値として、80を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値である80を含む制御信号RCをエアコン100に出力する。その結果、ファン113の毎分の回転数は、100から80に低下し、ファン113の騒音レベル(dB)は、65(dB)から60(dB)に低下する。したがって、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も、125(dB)から前記基準である120(dB)に低下する。以上のように、本実施形態によれば、温度調整の結果として、ファン113の毎分の回転数が上昇した場合でも、車室内の音の大きさを示す音圧レベルが一定に保たれる。その結果、例えば利用者の話し声等がファン113の騒音レベルにより聞き取り難くなることを防止することができる。
【0058】
次に、ファン113の騒音レベルは変わらないが、何かの原因、例えばロードノイズが減少した場合について説明する。例えば、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が120(dB)から115(dB)に低下したとする。判定部323は、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)である115(dB)からファン113の騒音レベルである60(dB)を差し引いて、エアコン以外の騒音レベル(dB)として55(dB)を算出する。したがって、判定部323は、ファン113の騒音レベル(dB)である60(dB)が、エアコン以外の騒音レベル(dB)である55(dB)を超えたと判定する。つまり、判定部323は、音環境の状態を示す指標である、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対するファンの騒音レベル(dB)の比率が、前記基準を超えたと判定する。
【0059】
制御部321は、制御テーブルT2を参照することにより、エアコン以外の騒音レベル(dB)である55(dB)に対応するファン113の回転数の上限値として、70を読み取る。そして、制御部321は、回転数の上限値である70を含む制御信号RCをエアコン100に出力する。その結果、ファン113の毎分の回転数は、80から70に低下し、ファン113の騒音レベル(dB)は、60(dB)から55(dB)に5(dB)低下する。したがって、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)も、115(dB)から110(dB)に低下する。以上のように、本実施形態によれば、温度調整の結果として、エアコン以外の騒音レベル(dB)が低下した場合には、エアコン以外の騒音レベル(dB)が低下に合わせてファン113の毎分の回転数を低下させる制御が行われる。その結果、エアコン以外の騒音レベル(dB)に対するファン113の騒音レベル(dB)の比率で表される音環境の状態を示す指標が前記基準以下に保たれ、例えば利用者の話し声等がファン113の騒音レベルにより聞き取り難くなることを防止することができる。
【0060】
なお、利用者が入力装置310を操作した場合の処理は、上述した音環境の適正度の基準が更新されないことを除いて、第1実施形態と同様である。つまり、利用者の入力装置310の操作に応じてファン113の毎分の回転数を低下させ、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を低下させる。車室内の音の大きさに対する感覚は、利用者によって異なるが、本実施形態によれば、それぞれの利用者に応じて、車室内の音の大きさを調整することができる。
【0061】
以上のように、本実施形態によれば、少なくとも集音装置330により集音した車室内の音の大きさに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が前記基準を超えたか否かを判定するので、車室内の音環境の状態を正確に判定することができる。また、車室内の音の大きさが前記基準を超えないようにファン113の回転数を制御するので、雑音発生源の音の大きさを、車室内の音環境の状態に応じて適切に制御することができる。
【0062】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。
【0063】
(変形例1)
上述した実施形態においては、解析部324は、音信号Yの周波数帯域と音圧レベルを解析し、利用者の声をキャンセルした上で、車室内の音の大きさに関する指標の一例として、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を生成した。しかし、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、解析部324は、前記音環境の状態を示す指標、あるいは車室内の音の大きさに関する指標を、ラウドネス曲線に基づいて定めてもよい。
図8は、ラウドネス曲線の一例を示す図である。
図8のラウドネス曲線に示すように、周波数帯域毎に、音信号が表す音圧レベル(dB)と、その音圧レベルの音が聴こえる聴覚上の大きさ(Phon)との標準的な関係は既知である。そこで、解析部324は、対応する周波数帯域の音信号を、対応する周波数帯域のラウドネスを表すラウドネス信号に変換してもよい。例えば、1kHzの音信号は、音圧レベルが20dBであれば、
図8に示すように、20Phonのラウドネス曲線上にあるので、解析部324は、20Phonを表すラウドネス信号を車室内の音の大きさに関する指標として生成する。この場合には、変換テーブルT1および制御テーブルT2に格納する騒音レベルについても、ラウドネス信号で表すようにすればよい。このように、前記指標をラウドネス曲線に基づいて定めることにより、利用者の聴覚に適合した音環境の調整を行うことができる。
【0064】
また、解析部324は、集音装置330により集音した音の所定期間における平均値を求めることにより、車室内の音の大きさに関する指標を生成するようにしてもよい。このようにすれば、一時的に車室内の音が変化する場合があっても、その度にファン113の回転数を制御する必要がないので、ファン113の音の変化を少なく抑えることができる。
【0065】
(変形例2)
入力装置310は、車室内の任意の場所に設置可能である。例えば、運転席または助手席に近い場所に設置してもよいし、後部座席に設置してもよい。あるいは、車室内の複数箇所に入力装置310を設置してもよい。運転席または助手席と、後部座席とでは、音環境の状態が異なるので、後部座席に入力装置310を設置することにより、後部座席の利用者に適した音環境の調整を行うことができる。
【0066】
(変形例3)
第1実施形態では、ファン113の騒音レベルの上昇に伴って車室内の音の大きさが前記基準を超えた場合には、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定している。つまり、第1実施形態は、車室内の音の大きさに関する指標に対する、前記動作量に関連付けられたファン113の音の大きさに関する指標の割合が所定値を超えた場合に、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定していると言うこともできる。したがって、実際に、車室内の音の大きさに関する指標に対するファン113の音の大きさに関する指標の割合を算出し、当該割合が所定値を超えた場合に、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定するようにしてもよい。
【0067】
(変形例4)
上述した実施形態においては、雑音発生源としてエアコンを例に挙げて説明したが、エアコン以外にも、オーディオ装置やカーナビゲーション装置を雑音発生源として制御対象にしてもよい。また、オーディオ装置やカーナビゲーション装置以外の装置であっても、車室内の音環境に影響を与える音を発生する装置であれば、本発明の制御対象にすることができる。
【0068】
(変形例5)
上述した実施形態においては、効果弱、効果中、および効果強等のように予め複数の基準を設けておき、どの基準を用いるのかをユーザーインターフェース(図示省略)にて利用者が選択できるようにした態様について説明した。しかし、本発明はこのような態様に限定される訳ではなく、例えば、車両の電源がオンになった直後に判定部323が処理を開始した際における前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)の初期値を基準として用いてもよい。この場合においても、利用者による入力装置310の操作に基づいてファン113の回転数を低下させ、その結果として前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)が、利用者により選択された基準よりも低下することが考えられる。この場合には、当該低下した前記車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)を前記基準として用いる。