(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794714
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】壁紙用原反、発泡壁紙及び発泡壁紙の製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 27/18 20060101AFI20201119BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20201119BHJP
B32B 5/18 20060101ALI20201119BHJP
B32B 27/16 20060101ALI20201119BHJP
B32B 27/12 20060101ALI20201119BHJP
B32B 3/30 20060101ALI20201119BHJP
E04F 13/07 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
B32B27/18 Z
B32B27/00 E
B32B5/18
B32B27/16 101
B32B27/12
B32B3/30
E04F13/07 B
【請求項の数】10
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2016-161232(P2016-161232)
(22)【出願日】2016年8月19日
(65)【公開番号】特開2018-27664(P2018-27664A)
(43)【公開日】2018年2月22日
【審査請求日】2019年7月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】塩田 歩
【審査官】
大村 博一
(56)【参考文献】
【文献】
特開平09−300515(JP,A)
【文献】
特開2013−078939(JP,A)
【文献】
特開2008−081884(JP,A)
【文献】
特開平11−106726(JP,A)
【文献】
特開2015−047808(JP,A)
【文献】
特開2000−192002(JP,A)
【文献】
合成ゼオライト総合カタログ [online],日本,東ソー株式会社,2015年 1月22日,第9頁,[2020年6月15日検索],インターネット,,URL,https://www.tosoh.co.jp/zeolite/tosoh/pdfs/catalog.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00−43/00
D06N 1/00− 7/06
E04F 13/00−13/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材上に、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層と、最表層に配置されカウンターカチオンとしてプロトンを使用した添加剤を含有する変色防止機能層とがこの順に積層され、
前記発泡剤含有樹脂層は、前記発泡剤の含有量が樹脂成分100質量部に対して1質量部〜20質量部であり、厚さが10μm〜20μmであり、
前記変色防止機能層は、前記添加剤の含有量がマトリックス樹脂100質量部に対して1質量部〜25質量部であり、厚さが10μm〜50μmであることを特徴とする壁紙用原反。
【請求項2】
前記変色防止機能層の厚さは、10μm〜20μmであることを特徴とする請求項1に記載の壁紙用原反。
【請求項3】
前記発泡剤含有樹脂層は、化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋されていることを特徴とする請求項1または2に記載の壁紙用原反。
【請求項4】
前記発泡剤含有樹脂層は、その片面または両面に非発泡層を有していることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の壁紙用原反。
【請求項5】
前記変色防止機能層のマトリックス樹脂は、アクリル樹脂であることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載の壁紙用原反。
【請求項6】
前記発泡剤は、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及び亜硝酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の壁紙用原反。
【請求項7】
前記基材は、繊維質シートであることを特徴とする請求項1から6のいずれか1項に記載の壁紙用原反。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の壁紙用原反の発泡剤含有樹脂層が発泡して形成されている発泡壁紙。
【請求項9】
少なくとも変色防止機能層にエンボスが形成されていることを特徴とする請求項8に記載の発泡壁紙。
【請求項10】
基材と、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層と、最表層に配置されカウンターカチオンとしてプロトンを使用した添加剤を含有する変色防止機能層とが積層された壁紙用原反を形成した後、前記壁紙用原反の前記発泡剤含有樹脂層を発泡させて発泡壁紙を製造し、
前記発泡剤含有樹脂層は、前記発泡剤の含有量が樹脂成分100質量部に対して1質量部〜20質量部であり、厚さが10μm〜20μmであり、
前記変色防止機能層は、前記添加剤の含有量がマトリックス樹脂100質量部に対して1質量部〜25質量部であり、厚さが10μm〜50μmであることを特徴とする発泡壁紙の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁紙用原反、発泡壁紙及び発泡壁紙の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の壁面装飾等に用いられる壁紙の接着剤としては、例えば、澱粉系の水系接着剤が広く利用されている。しかしながら、澱粉系の水系接着剤は、壁紙の表面に付着し、澱粉が経時によって変色すると、壁紙が変色したように見えるという問題がある。
これに対し、例えば、特許文献1、2に記載の技術では、化合合成物を添加した水系接着剤を用いるようになっている。また、例えば、実施例3に記載の技術では、壁紙への澱粉系の水系接着剤の付着を防止するための切断用下敷テープを用いるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平6−47875号公報
【特許文献2】特開2000−255011号公報
【特許文献3】特開2001−347611号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載の技術では、コストが高かったり煩雑であったりするため、壁紙の施工業者にあまり採用されていない。そのため、上記問題、つまり、澱粉系の変色により、壁紙が変色したかのように見えるという問題が未解決であった。
本発明は、上記のような点に着目したもので、澱粉に起因する変色を抑制可能な壁紙用原反、発泡壁紙及び発泡壁紙の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、基材上に、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層、及び最表層に配置されカウンターカチオンとしてプロトンを使用した添加剤を含有している変色防止機能層とがこの順に積層されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明の一態様によれば、添加剤に含まれているプロトンが乖離することにより、発泡壁紙の表面側に付着した水系接着剤のpHを酸性側に偏らせることができるため、水系接着剤に含まれる澱粉を分解でき、澱粉に起因する変色を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】実施形態に係る壁紙用原反の構成を表す端面図である。
【
図2】変形例に係る壁紙用原反の構成を表す端面図である。
【
図3】実施形態に係る発泡壁紙の構成を表す端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
ここで、図面は模式的なものであり、厚さと平面寸法との関係、各層の厚さの比率等は現実のものとは異なる。また、以下に示す実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、本発明の技術的思想は、構成部品の材質、形状、及び構造等が下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0009】
(壁紙用原反1)
図1に示すように、本実施形態の壁紙用原反1は、基材2に、第1の非発泡層3(非発泡剤含有樹脂層)、発泡剤含有樹脂層4、第2の非発泡層5(非発泡剤含有樹脂層)、絵柄模様層6、及び変色防止機能層7がこの順に形成されている。なお、絵柄模様層6と変色防止機能層7との間、基材2と第1の非発泡層3との間等には、必要に応じて、他の層を形成してもよい。例えば、
図2に示すように、絵柄模様層6と変色防止機能層7との間に、絵柄模様層6と変色防止機能層7との接着性を増すための中間層8を形成してもよい。また、第1の非発泡層3と第2の非発泡層5とのいずれかを省略してもよい。
【0010】
(基材2)
基材2としては、特に限定されず、公知の繊維質シートを使用できる。繊維質シートとしては、例えば、パルプ主体のシートを既知のサイズ剤でサイズ処理した壁紙用一般紙、パルプ主体のシートをスルファミン酸グアニジン、リン酸グアジニン等の難燃剤で処理した難燃紙、水酸化アルミニウムや水酸化マグネシウム等の無機添加剤を含む無機質紙、上質紙、薄用紙等を使用できる。基材2の坪量は、例えば、50〜300g/m
2程度が好ましく、50〜120g/m
2がより好ましい。
【0011】
(第1の非発泡層3)
第1の非発泡層3は、基材2と発泡剤含有樹脂層4との密着性を向上するための層である。第1の非発泡層3の樹脂成分としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体を使用できる。第1の非発泡層3には、樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。また、 第1の非発泡層3の厚さは、10〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0012】
(発泡剤含有樹脂層4)
発泡剤含有樹脂層4は、発泡剤を含有し、加熱で発泡される樹脂層である。発泡剤含有樹脂層4は、発泡剤を含有する樹脂組成物を溶融押出して得られる。樹脂成分としては、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂を使用できる。特に、耐久性の向上、エンボス賦型等を考慮すると、オレフィン系樹脂が好ましく、エチレン系樹脂がより好ましい。
エチレン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、エチレンとエチレン以外の成分とをモノマーとするエチレン共重合体の少なくとも1種を含有することが好ましい。ポリエチレンとしては、例えば、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、直鎖状低密度ポリエチレンを使用できる。特に、低密度ポリエチレンが好ましい。
【0013】
エチレン共重合体としては、例えば、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体を単独又は2種以上を混合して使用できる。特に、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種が好ましく、これらと他の樹脂とを併用する場合には、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−メチルメタクリレート共重合体及びエチレン−メタクリル酸共重合体の少なくとも1種は、70質量%以上が好ましく、80質量%以上がより好ましい。
【0014】
また、発泡剤としては、例えば、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、亜硝酸アンモニウムを使用できる。アゾ化合物としては、例えば、アゾジカルボンアミド(ADCA)、アゾビスホルムアミド等が好ましい。発泡剤の含有量は、発泡倍率を考慮すると、樹脂成分100質量部に対して、1〜20質量部が好ましい。また、発泡剤含有樹脂層4は、化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋されている。また、発泡剤含有樹脂層4の厚さは、10〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0015】
(第2の非発泡層5)
第2の非発泡層5は、発泡剤含有樹脂層4を保護するための層である。第2の非発泡層5の樹脂成分としては、例えば、アクリル酸(CH2=CHCOOH)及びメタクリル酸(CH2=C(CH3)COOH)の少なくとも1種をモノマーとして得られる重合体を樹脂成分として含む樹脂組成物を使用できる。特に、アクリル酸及びメタクリル酸の少なくとも1種のモノマーとエチレンとの組み合わせにより得られる共重合体が好ましい。
【0016】
より具体的には、EMAA、エチレン−アクリル酸共重合体及びアイオノマー樹脂の少なくとも1種を用いることが望ましい。アイオノマー樹脂としては、EMAA及び/又はエチレン−アクリル酸共重合体の分子間をナトリウム、亜鉛等の金属のイオンで分子間結合した構造を有する樹脂を使用できる。このような樹脂成分を用いる場合には、特に樹脂中の水素結合等に起因する強固な層を形成することができるので、優れた耐スクラッチ性、耐摩耗性等を得ることができる。これらは、公知又は市販のものを使用することができる。また、第2の非発泡層5には、樹脂成分以外に公知の添加剤を含んでもよいが、樹脂成分の含有量が70〜100重量%となるように配合することが好ましい。また、 第2の非発泡層5の厚さは、10〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0017】
(絵柄模様層6)
絵柄模様層6は、壁紙用原反1に絵柄模様を付加するための層である。絵柄模様としては、例えば、木目模様、石目模様、砂目模様、タイル貼模様、煉瓦積模様、布目模様、皮絞模様、幾何学図形がある。絵柄模様は、壁紙用原反1の種類に応じて適宜選択できる。
絵柄模様層6の形成方法としては、例えば、絵柄模様を印刷することで形成できる。なお、絵柄模様層6を形成する際には、必要に応じてあらかじめプライマー層を形成してもよい。印刷手法としては、例えば、グラビア印刷、フレキソ印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷が挙げられる。印刷インキとしては、例えば、着色剤、結着材樹脂、溶剤を含む印刷インキを使用できる。これらのインキは、公知のものを使用してもよい。
【0018】
結着材樹脂は、例えば、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、塩素化ポリオレフィン系樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体系樹脂、ポリビニルブチラール樹脂、アルキド系樹脂、石油系樹脂、ケトン樹脂、エポキシ系樹脂、メラミン系樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン系樹脂、繊維素誘導体、ゴム系樹脂等を使用できる。また、溶剤(または分散媒)としては、例えば、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の石油系有機溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸−2−メトキシエチル、酢酸−2−エトキシエチル等のエステル系有機溶剤;メチルアルコール、エチルアルコール、ノルマルプロピルアルコール、イソプロピルアルコール、イソブチルアルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等のアルコール系有機溶剤;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン系有機溶剤;ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル系有機溶剤、;ジクロロメタン、四塩化炭素、トリクロロエチレン、テトラクロロエチレン等の塩素系有機溶剤;水等を使用できる。
【0019】
(変色防止機能層7)
変色防止機能層7は、最表層に配置され、絵柄模様層6を保護するための層である。変色防止機能層7の樹脂成分(以下、「マトリックス樹脂」とも呼ぶ)としては、例えば、塩化ビニル樹脂、オレフィン系樹脂を使用できる。また、添加剤として、カウンターカチオンとしてプロトンを用いている添加剤を含有している。添加剤は、マトリックス樹脂100質量部に対して、1質量部以上25質量部以下とすることが好ましい。また、変色防止機能層7の厚さは、10〜50μmが好ましく、10〜20μmがより好ましい。
【0020】
(発泡壁紙9の製造方法)
次に、発泡壁紙9の製造方法について説明する。
本実施形態の発泡壁紙9の製造方法は、上記の壁紙用原反1を加熱することにより、発泡剤含有樹脂層4を発泡させて発泡壁紙9を製造するものである。加熱温度は、180〜240℃が好ましく、210〜230℃がより好ましい。加熱時間は、20〜60秒が好ましく、25〜40秒がより好ましい。発泡倍率は、3倍以上、好ましくは4〜5倍とする。発泡倍率が低すぎると、優れた外観意匠を付与し難く、また、発泡倍率が高過ぎると、発泡剤含有樹脂層4が機械的に弱くなり、耐スクラッチ性が低下しやすいためである。
【0021】
第2の非発泡層5の形成前には、発泡後の発泡剤含有樹脂層4に化学架橋法または放射線により樹脂架橋してもよい。これにより、発泡壁紙9の耐傷性を向上できる。
また、少なくとも変色防止機能層7(最表層)にエンボス加工を行うようにしてもよい。これにより、例えば、
図3に示すように、発泡壁紙9の表面にエンボス10を設け、絵柄模様層6による意匠性に加え、エンボス10による意匠性を感じさせることができる。
【0022】
(本実施形態の効果)
(1)このように、本実施形態の壁紙用原反1では、基材2上に、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層4と、最表層に配置されカウンターカチオンとしてプロトンを使用した添加剤を含有している変色防止機能層7とがこの順に積層されている構成とした。これにより、添加剤に含まれているプロトンが乖離することにより、発泡壁紙9の表面側に付着した水系接着剤のpHを酸性側に偏らせることができる。そのため、水系接着剤に含まれる澱粉を分解でき、水系接着剤に含まれる澱粉に起因する変色を抑制することができる。
【0023】
また、プロトンは、イオン半径(原子半径)が小さいため、添加剤(添加剤含有樹脂層4)から発泡壁紙9の表面側に移動しやすい。そのため、発泡壁紙9の表面側に水系接着剤が付着した場合に、水系接着剤に移動して、水系接着剤のpHを十分に酸性側に偏らせることができる。これにより、澱粉に起因する変色を適切に抑制することができる。
ちなみに、例えば、カリウムイオン、ナトリウムイオン、カルシウムイオン等は、プロトンに比べ、イオン半径(原子半径)が大きいため、添加剤(添加剤含有樹脂層4)から発泡壁紙9の表面側に移動し難い。そのため、発泡壁紙9の表面側に水系接着剤が付着した場合にも、水系接着剤に移動し難く、水系接着剤のpHを十分に酸性側に偏らせることができない。これにより、澱粉に起因する変色を適切に抑制することが困難となる。
【0024】
(2)また、変色防止機能層7が、マトリックス樹脂100質量部に対して、添加剤を1質量部以上25質量部以下含有している構成とした。そのため、塗布しやすく、かつ効果がより発現することができる。
(3)さらに、発泡剤含有樹脂層4が、化学架橋法または放射線照射により樹脂架橋がされている構成とした。そのため、発泡壁紙9の耐傷性を向上することができる。
(4)また、発泡剤含有樹脂層4が、その片面または両面に非発泡剤含有樹脂層を有している構成とした。そのため、表面を平滑にし、さらに、印刷適性を向上できる。
【0025】
(5)さらに、変色防止機能層7のマトリックス樹脂は、塩化ビニル樹脂及び/またはオレフィン系樹脂とする構成とした。そのため、発泡壁紙9に適したシート成形を行うことができる。
(6)また、発泡剤を、アゾ化合物、炭酸アンモニウム、重炭酸アンモニウム、及び亜硝酸アンモニウムからなる群から選択される少なくとも1種とする構成とした。そのため、安全性や発泡性の制御性を向上できる。
(7)さらに、基材2を、繊維質シートとした。そのため、汎用的な壁紙用原反1として扱うことができる。
【0026】
(8)また、本実施形態の発泡壁紙9は、壁紙用原反1の発泡剤含有樹脂層4が発泡して形成されている。そのため、添加剤に含まれているプロトンが乖離することにより、壁紙の表面側に付着した水系接着剤のpHを酸性側に偏らせることができるため、水系接着剤に含まれる澱粉を分解でき、水系接着剤に含まれる澱粉に起因する変色を抑制できる。
(9)さらに、少なくとも変色防止機能層7(最表層)にエンボス10が形成されている構成とした。そのため、エンボス10による高意匠性を有する発泡壁紙9を形成できる。
(10)また、本実施形態の発泡壁紙9の製造方法では、基材2と、発泡剤を含有する発泡剤含有樹脂層4と、最表層に配置されカウンターカチオンとしてプロトンを有する添加剤を含有する変色防止機能層7とが積層された壁紙用原反1を形成し、形成した壁紙用原反1の発泡剤含有樹脂層4を発泡させるようにした。これにより、発泡壁紙9の最表層に、カウンターカチオンとしてプロトンを有する添加剤を含有する変色防止機能層7を形成できる。
【実施例】
【0027】
本発明に係る実施例について説明する。
(実施例1)
実施例1では、公知のTダイ押出機を用いて、第1の非発泡層3、発泡剤含有樹脂層4、及び第2の非発泡層5をこの順に、各層の厚みが10μm、70μm、10μmになるように製膜して3層からなる積層体を得た。ここで、第1の非発泡層3、第2の非発泡層5の樹脂としては、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)、商品名:LJ802A)を100質量部としたものを用いた。また、発泡剤含有樹脂層4としては、低密度ポリエチレン(日本ポリエチレン(株)、商品名:LJ802A)100質量部に対して、発泡剤(永和化成工業(株)製、商品名ADCA#3)8質量部、炭酸カルシウム(備北粉化(株)製、商品名:ソフトン1000)30質量部、二酸化チタン(顔料)(石原産業(株)製、商品名:TIPAQUE CR−60−2)20質量部、発泡助剤((株)ADEKA製、商品名:アデカスタブOF−101)8質量部としたものを用いた。
【0028】
そして、上記した3層からなる積層体の第1の非発泡層3を裏打紙(米秤量65g/m
2、興人(株)製、WK−655T)に積層することで、積層シートを形成した。また、その積層シートの第2の非発泡層5に加速電圧200kV、照射線量55KGyの電子線を照射して、発泡剤含有樹脂層4に樹脂架橋を行った。次いで、グラビア印刷により、その積層シートの第2の非発泡層5に水性インキ(大日精化工業(株)製、商品名:ハイドリック)を用いて布目模様を印刷することで、絵柄模様層6を形成した。続いて、その絵柄模様層6の上に、マトリックス樹脂100質量部に対して、カチオンとしてプロトンを使用した添加剤(ユニオン昭和(株)製、商品名:モレキュラーシーブ USKY−790)10質量部を含むインキ(アクリル樹脂系水性インキ)をグラビアダイレクトコーター法で塗布した。インキの塗布量は、乾燥後の膜厚が約1[μm]となるように調整した。続いて、塗布したインキを、140[℃]の乾燥炉によって乾燥硬化させることで、変色防止機能層7を形成した。続いて、230[℃]の加熱発熱炉によって、発泡剤含有樹脂層4を発泡させて発泡剤含有樹脂層を形成した後、冷却ロールと加圧ロールとの間を通し、エンボス賦型をしながら熱圧着させることにより、表面にエンボス10(凹凸模様)を有する発泡壁紙9を形成した。
【0029】
(実施例2)
実施例2では、変色防止機能層7の添加剤の添加量を、マトリックス樹脂100質量部に対して、1質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(実施例3)
実施例3では、変色防止機能層7の添加剤の添加量を、マトリックス樹脂100質量部に対して、25質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0030】
(比較例1)
比較例1では、変色防止機能層7の添加剤が含有するカウンターカチオンとして、カリウムイオンを有する合成ゼオライト(ユニオン昭和(株)製、商品名:モレキュラーシーブ 3A)を用いるとともに、その添加剤の添加量を、マトリックス樹脂100質量部に対して10質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(比較例2)
比較例2では、変色防止機能層7の添加剤が含有するカウンターカチオンとして、ナトリウムイオンを有する合成ゼオライト(ユニオン昭和(株)製、商品名:モレキュラーシーブ 3A)を用いるとともに、その添加剤の添加量を、マトリックス樹脂100質量部に対して10質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
【0031】
(比較例3)
比較例3では、変色防止機能層7の添加剤が含有するカウンターカチオンとして、カルシウムイオンを有する合成ゼオライト(ユニオン昭和(株)製、商品名:モレキュラーシーブ 5A)を用いるとともに、その添加剤の添加量を、マトリックス樹脂100質量部に対して10質量部とした。それ以外は実施例1と同様の構成とした。
(評価)
実施例1〜3及び比較例1〜3について、発泡壁紙9の変色状態の評価を実施した。
具体的には、発泡壁紙9の変色防止機能層7上に澱粉系着剤を薄く塗布した後、紫外線を予め定めた所定時間照射して、塗布した澱粉系の水系接着剤の変色状態を目視で評価した。そして、変色がない場合を合格「○」、変色がある場合を不合格「×」と判定した。
評価結果を表1に示す。
【0032】
【表1】
【0033】
表1より、実施例1〜3では、変色防止機能層7上に塗布した澱粉系の水系接着剤に変色がなかった。これに対し、比較例1〜3では、変色があった。これにより、変色防止機能層7(最表層)に、カウンターカチオンとして、プロトンを有する添加剤を含有させることで、プロトン以外のカチオンを含有させた場合に比べ、澱粉系の水系接着剤の変色を抑制できることが確認できた。
【符号の説明】
【0034】
1…壁紙用原反、2…基材、3…第1の非発泡層、4…発泡剤含有樹脂層、5…第2の非発泡層、6…絵柄模様層、7…変色防止機能層、8…中間層、9…発泡壁紙、10…エンボス