(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1においては、マイクにより収集した音は、フィルタを介して特定の周波数帯の信号(ノイズ音)として通過させた後に逆位相音生成手段により逆位相音に変換する必要がある。ノイズ音として利用者に認識される音の周波数帯は、音声帯域以外(例えば、500〜2000Hz以外)の幅広い周波数帯であり、特にエンジン音については回転数に応じて周波数帯が変動する。フィルタによりこれらの全ての周波数帯あるいは変動する周波数帯をカバーするのは非常に困難である。
【0005】
そこで、ノイズ音を消すのではなく、車室内の音環境の状態を正確に判定し、前記音環境の状態が基準を超えたことを車両の利用者に通知することができれば、利用者が通知に応じて例えばアクセルの開き方を変えることでノイズ音の発生を抑えることができる。しかしながら、車室内の音環境の状態を正確に判定し、前記音環境の状態が基準を超えたことを車両の利用者に通知できる装置および方法は従来存在していなかった。また以上のような問題は、エンジン音だけでなく、オーディオ装置やカーナビゲーション装置等に対しても同様に存在していた。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたもので、車室内の音環境の状態を正確に判定することができ、前記音環境の状態が基準を超えたことを通知することのできる車室内音環境通知装置および車室内音環境通知方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を達成するために本発明の一態様に係る車室内音環境通知装置は、車室内の音を集音し、音信号を出力する集音装置と、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得する取得部と、前記音信号と前記動作量とに基づいて前記車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する判定部と、前記判定部の判定結果に基づいて利用者に前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを通知する通知装置と、を備える、ことを特徴とする。
【0008】
本発明の一態様において、雑音発生源とは、車載され、車両内の雑音の発生源であり、例えば、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等が含まれる。本発明の一態様において、雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量とは、雑音発生源の動作に関わる動作量であり、例えば、エンジンの回転数、エアコンの回転数、カーオーディオ装置の音量、およびカーナビゲーション装置の音量等が含まれる。本発明の一態様において、車室内の音環境とは、車室内に存在する音の全体集合を言う。車室内に存在する音には、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等の音、並びにロードノイズ等が含まれる。本発明の一態様において、車室内の音環境の状態を示す指標とは、車室内に存在する音の状態を示す指標を含み、例えば、車室内の全体の音の大きさ、および車室内のある音の大きさに対する他の音の大きさの割合等が含まれる。
本発明の一態様によれば、集音装置は、車室内の音を集音し、音信号を出力する。取得部は、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得する。判定部は、集音部により出力された音信号と動作量とに基づいて、車室内における音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する。通知装置は、判定部により車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを通知する。したがって、前記一態様によれば、集音装置により車室内の実際の音を集音すると共に、取得部により雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得する。そして、判定部により、集音した音に基づく音信号と取得した動作量とに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かが判定される。その結果、動作量のみに基づいて車室内の音環境の状態を判定する場合に比べて、車室内の音環境の状態が正確に判定されることになる。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、通知装置により、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたことが通知されるので、利用者は、雑音発生源に対する操作を改善することができる。したがって、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0009】
前記本発明の一態様において、判定部は、前記音信号を解析して、前記車室内の音の大きさに関する指標を生成する解析部を備え、前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標が所定のしきい値を超え、かつ、前記車室内の音の大きさに関する指標が所定値を超えた場合、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定してもよい。この態様によれば、解析部は、集音装置により出力される音信号を解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。判定部は、前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標が所定のしきい値を超えたか否かを判定する。判定の結果、前記雑音発生源の音の大きさに関する指標が所定のしきい値を超えた場合には、前記車室内の音の大きさに関する指標が所定値を超えたか否かを判定する。判定の結果、前記車室内の音の大きさに関する指標が所定値を超えた場合、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する。通知装置は、車室内の音の大きさに関する指標が所定値を超えたことを通知する。その結果、利用者は、雑音発生源による音の大きさを低減させるように雑音発生源に対する操作を改善することができる。したがって、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0010】
前記本発明の一態様において、前記判定部は前記音信号を解析して、前記車室内の音の大きさに関する指標を生成する解析部を備え、前記車室内の音の大きさに関する指標の所定期間における変化量に対する、前記取得部により取得した前記動作量に関連付けられた前記雑音発生源の音の大きさに関する指標の前記所定期間における変化量の割合が所定値を超えた場合に、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定してもよい。この態様によれば、この態様によれば、解析部は、集音装置により出力される音信号を解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。また、前記動作量には雑音発生源の音の大きさに関する指標が関連付けられており、取得部により前記動作量を取得することにより、当該動作量に関連付けられた雑音発生源の音の大きさに関する指標が得られる。判定部は、車室内の音の大きさに関する指標の所定期間における変化量に対する、動作量に関連付けられた雑音発生源の音の大きさに関する指標の所定期間における変化量の割合が所定値を超えた場合に、音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定する。したがって、車室内の音の大きさに対して、雑音発生源の音の大きさが、所定の割合を超えた場合には、その旨が通知装置により通知されるので、利用者は、雑音発生源による音を低減させるように雑音発生源に対する操作を改善することができる。その結果、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0011】
前記本発明の一態様において、前記音環境の状態を示す指標は、ラウドネス曲線に基づいて定められていてもよい。この態様によれば、この態様によれば、前記音環境の状態を示す指標および前記音環境の状態を示す指標がラウドネス曲線に基づいて定められるので、利用者の感覚に適合した車室内における音環境の状態の判定と通知が行われることになる。
【0012】
前記本発明の一態様において、前記雑音発生源はエンジンであり、前記動作量はエンジンの回転数であってもよい。この態様によれば、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、その旨が通知され、利用者は雑音発生源としてのエンジンの回転数を低減させるように操作を調整することができる。したがって、エンジンの音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0013】
前記本発明の一態様において、前記通知装置は、前記利用者による運転の改善を促す通知を行うことにより、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを通知してもよい。この態様によれば、通知装置は、前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを通知する場合に、利用者による運転の改善を促す通知を行う。その結果、利用者は運転の改善を行い、雑音発生源に対する操作を調整することができる。したがって、雑音発生源に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【0014】
前記本発明の一態様において、前記利用者による操作が可能な入力装置を備え、前記判定部は、前記入力装置における前記操作に基づいて、前記所定値を変更してもよい。この態様によれば、利用者が入力装置を操作することにより、上述した所定値が変更される。したがって、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かの判定において基準となる値を、利用者の操作に応じて変更することができる。その結果、それぞれの利用者が感じる音環境の状態に応じて、音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを適切に通知することができる。
【0015】
前記目的を達成するために本発明の一態様に係る雑音発生源の制御方法は、車室内の音を集音し、音信号を出力し、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量を取得し、前記音信号と前記動作量とに基づいて前記車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定し、前記判定部の判定結果に基づいて利用者に前記音環境の状態を示す指標が基準を超えたことを通知する、ことを特徴とする。
【0016】
本発明の一態様によれば、車室内の音を集音され、音信号として出力される。また、車載された雑音発生源に対する利用者の操作に応じた動作量が取得される。そして、出力された音信号と、取得された動作量とに基づいて、車室内における音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かが判定される。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたことが通知される。したがって、前記一態様によれば、その結果、動作量のみに基づいて車室内の音環境の状態を判定する場合に比べて、車室内の音環境の状態が正確に判定されることになり、雑音発生源の音の大きさを適切に判定することができる。車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたと判定された場合には、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたことが通知されるので、利用者は、雑音発生源による音を低減させるように雑音発生源に対する操作を改善することができる。したがって、音に基づく利用者の不快感を低減することができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態における車室内音環境通知システム1の構成図である。本実施形態の車室内音環境通知システム1は、
図1に例示される通り、雑音発生源としてのエンジン100と、オーディオ装置等のその他の機器200と、車室内の音環境についての通知を行う音環境通知装置300とを備える。エンジン100と、その他の機器200と、音環境通知装置300とは、いずれも乗用車等の車両に設置される。なお、本発明において雑音発生源とは、車載され、車両内の雑音の発生源であり、例えば、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等が含まれる。本実施形態では、エンジンを雑音発生源の一例として説明する。
【0020】
図1に例示される通り、本実施形態の音環境通知装置300は、入力装置310と、制御装置320と、集音装置330と、記憶装置340と、通知装置350とを備える。
入力装置310は、音環境通知装置300に対する各種の指示のために利用者が操作する操作機器である。例えば利用者が操作する複数の操作子や利用者による接触を検知するタッチパネルが入力装置310として好適に利用される。入力装置310は、利用者による操作または接触を検知するごとに入力信号Xを制御装置320に出力する。本実施形態では、一例として、利用者が車室内の音が大きいと感じた場合には、利用者が入力装置310を操作することにより、後述する基準を変更させる指示を音環境通知装置300に行うことが可能になっている。制御装置320は、利用者の操作に応じて入力装置310から入力信号Xが出力されると、後述する基準を変更する。当該基準および当該基準を変更する処理の詳細については後述する。
【0021】
集音装置330(マイクロホン)は、車室内の音を集音して音信号Yを生成する音響機器である。具体的には、集音装置330は、エンジン100の音、その他の機器200の音、およびロードノイズ等の車室内で聞くことのできる音を集音して、車室内の音の大きさを表す音信号Yを生成する。集音装置330は、複数であってもよく、車室内全体の音を拾えるように、例えば運転席、助手席、左右後部座席それぞれの座席近辺に設置してもよい。複数の集音装置330を設置する場合は、各集音装置330の音信号を加算して音信号Yとすればよい。なお、集音装置330が生成した音信号Yをアナログからデジタルに変換するA/D変換器の図示は便宜的に省略した。
【0022】
制御装置320は、例えばCPU(Central Processing Unit)を含む処理回路であり、本実施形態では一例として車室内の音に応じて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かに応じて、通知装置350を制御する。
記憶装置340は、例えば磁気記録媒体または半導体記録媒体等の公知の記録媒体、あるいは複数種の記録媒体の組合せで構成され、制御装置320が実行するプログラムと制御装置320が使用する各種のデータとを記憶する。本実施形態の記憶装置340は変換テーブルT1を記憶する。
【0023】
通知装置350は、車室内の音環境を示す指標が基準を超えたことを通知する表示機器である。具体的には、LEDや液晶ディスプレイ等を通知装置350として用いることが可能である。制御装置320は、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定し、超えた場合には、通知信号Zを通知装置350に出力する。通知装置350は、通知信号Zを入力した場合には、車室内の音環境状態を示す指標が基準を超えたことを示す通知を行う。通知の例としては、単に赤色等のLEDを点灯させるようにしてもよいし、液晶パネル等により、例えば、車室内の音が大きくなっていることを示すメッセージを表示させるようにしてもよい。あるいは、音を用いた通知として、警告音やメッセージを読み上げる音をスピーカから放音してもよい。また、音環境の状態を示す指標が基準をどの程度超えているかを通知するようにしてもよい。例えば、基準を超える程度によりLEDの色を変えたり、メッセージや警告音の種類を変えてもよい。また、音環境の状態を示す指標が継続して基準を超えている場合の継続時間により通知方法を変えるようにしてもよいし、基準を超えているトータル時間や基準を超えた回数などにより通知方法を変えるようにしてもよい。
【0024】
図2は本実施形態における変換テーブルT1の一例を示す図である。
図2に例示される通り、変換テーブルT1は、エンジン100の回転数とエンジン100の騒音レベルとの関係を示すテーブルである。変換テーブルT1におけるレコードR1,R2,R3,R4,R5の「エンジン回転数」のフィールドには、それぞれ「N1」,「N2」,「N3」,「N4」,「N5」が格納されている。「N1」,「N2」,「N3」,「N4」,「N5」は、エンジン100の毎分の回転数を示すデータである。また、変換テーブルT1におけるレコードR1,R2,R3,R4,R5の「騒音レベル」のフィールドには、エンジン100が、「エンジン回転数」のフィールドに格納された回転数で駆動された際の車室内における騒音レベルの値が格納されている。エンジン100の回転数が「N1」,「N2」,「N3」,「N4」,「N5」の場合には、騒音レベルは、それぞれ「A1」,「A2」,「A3」,「A4」,「A5」となっている。変換テーブルT1に格納されるそれぞれの値は、実験またはシミュレーション等により求められる。
【0025】
変換テーブルT1の「騒音レベル」のフィールドに格納された騒音レベルの値は、ラウドネス曲線に基づいて定められている。
図9は、ラウドネス曲線の一例を示す図である。
図9のラウドネス曲線に示すように、所定の周波数の音信号が表す音圧レベル(dB)と、その音圧レベルの音が聴こえる聴覚上の大きさ(Phon)との標準的な関係は既知である。そこで、本実施形態では、エンジン100の回転数に応じたエンジン100の音の音圧レベル(dB)を、当該音の周波数と当該音の音圧レベル(dB)とに対応するラウドネスを表す値に変換する。そして、この変換した値を、変換テーブルT1の「騒音レベル」のフィールドに格納している。例えば、1000Hzの音信号の音圧レベルが60dBであれば、
図9にaで示す丸印のように、60Phonのラウドネス曲線上にあるので、60Phonを騒音レベルとしている。また、250Hzの音信号の音圧レベルが70dBであっても、
図9にbで示す丸印のように、60Phonのラウドネス曲線上にあるので、60Phonを騒音レベルとしている。さらに、4000Hzの音信号の音圧レベルが58dBであっても、
図9にcで示す丸印のように、60Phonのラウドネス曲線上にあるので、60Phonを騒音レベルとしている。以上のように、本実施形態においては、エンジン100の回転数に応じたエンジン100の音の音圧レベル(dB)を、当該音の周波数と当該音の音圧レベル(dB)とに対応するラウドネス曲線に基づく値に変換して、エンジン100の騒音レベルとしている。
【0026】
図1に例示される通り、記憶装置340に記憶されたプログラムを制御装置320が実行することで、制御装置320は、取得部322、判定部323、および解析部324として機能する。なお、以上に例示した制御装置320の機能を複数の装置に分散した構成、または、制御装置320の機能の一部を専用の電子回路が実現する構成も採用され得る。
【0027】
取得部322は、利用者によるアクセルの操作に応じたエンジン100の回転数を示す回転数信号RDをエンジン100から取得する。すなわち、取得部322は、雑音発生源としてのエンジン100に対する利用者の操作に応じた動作量として、回転数信号RDが示すエンジン100の回転数を取得する。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。
上述したように、変換テーブルT1には、動作量としてのエンジン100の回転数に関連付けられて、雑音発生源としてのエンジン100の音の大きさに関する指標であるエンジン100の騒音レベルが格納されている。
【0028】
判定部323は解析部324としての機能も有している。解析部324は、集音装置330から出力される音信号Yを解析して、車室内の音の大きさに関する指標を生成する。本実施形態では、解析部324は、音信号Yの周波数帯域と音圧レベルを解析し、車室内の音の大きさに関する指標の一例として、車室内の音の大きさを示す騒音レベルを生成する。本実施形態においては、音信号Yが示す音圧レベル(dB)と周波数とに対応するラウドネス曲線に基づく値を、車室内の騒音レベルとしている。
【0029】
判定部323は、取得部322により取得したエンジン回転数に対応するエンジン100の騒音レベルを変換テーブルT1から読み取り、エンジン100の騒音レベルの所定期間における変化量が所定のしきい値を超えたか否かを判定する。車両の利用者がアクセルを急激に開けると、エンジン100の回転数も急激に上昇し、エンジン100の騒音レベルの変化も大きくなる。そこで、本実施形態では、車両の利用者がアクセルを急激に開けたタイミングを検出するために、エンジン100の騒音レベルの所定期間における変化が所定のしきい値を超えたか否かを判定している。例えば、時刻t1におけるエンジン100の騒音レベルがA1で、時刻t2におけるエンジン100の騒音レベルがA2であったとする。この場合、判定部323は、A2からA1を差し引いて、所定期間Δt(=t2−t1)におけるエンジン100の騒音レベルの変化量ΔA(=A2−A1)を求める。判定部323は、変化量ΔAとしきい値Thとを比較し、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたか否かを判定する。しきい値Thは、実験またはシミュレーション等に基づいて予め定めておく。
【0030】
また、判定部323は、集音装置330により集音した車室内の音の騒音レベルの所定期間における変化量についても算出する。例えば、時刻t1における車室内の音の騒音レベルがB1で、時刻t2における車室内の音の騒音レベルがB2であったとする。この場合、判定部323は、B2からB1を差し引いて、所定期間Δt(=t2−t1)における車室内の音の騒音レベルの変化量ΔB(=B2−B1)を求める。さらに、判定部323は、車室内の音環境の状態を示す指標として、車室内の音の騒音レベルの変化量ΔBに対するエンジン100の騒音レベルの変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBを算出する。そして、判定部323は、車室内の音の騒音レベルの変化量ΔBに対するエンジン100の騒音レベルの変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBと、基準とを比較し、ΔA/ΔBが基準を超えたか否かを判定する。
本実施形態においては、車室内の音の騒音レベルの変化量ΔBに対するエンジン100の騒音レベルの変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBは、車室内の音環境の状態を示す指標の一例である。すなわち、判定部323は、前記音信号Yと、前記動作量としてのエンジン100の回転数とに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が基準を超えたか否かを判定する。本発明において、車室内の音環境とは、車室内に存在する音の全体集合を言う。車室内に存在する音には、エンジン、エアコン、カーオーディオ装置、およびカーナビゲーション装置等の音、並びにロードノイズ等が含まれる。
【0031】
図3は、車室内の音の大きさを示す騒音レベルと、エンジン100以外の騒音レベルと、エンジン100の騒音レベルとの関係を示す図である。
図3に示すように、車室内の音の大きさを示す騒音レベルは、エンジン100以外の騒音レベルと、エンジン100の騒音レベルと加算した値である。
図4は、車両の利用者がアクセルを急激に開いた結果として、エンジン100の騒音レベルが急激に増大した場合における車室内の音の大きさを示す騒音レベルと、エンジン100以外の騒音レベルと、エンジン100の騒音レベルとの関係を示す図である。車両の利用者がアクセルを急激に開くと、
図4に示すようにエンジン100の騒音レベルが
図3に示すエンジン100の騒音レベルよりも急激に増大する。その結果、
図4に示すように車室内の音の大きさを示す騒音レベルについても、
図3に示す車室内の音の大きさを示す騒音レベルより増大する。
【0032】
図5は、エンジン100以外の騒音レベルが増大した場合における、車室内の音の大きさを示す騒音レベルと、エンジン100以外の騒音レベルと、エンジン100の騒音レベルとの関係を示す図である。例えば、ロードノイズの増大により、エンジン100以外の騒音レベルが増大したとする。この場合には、
図5に示すようにエンジン100以外の騒音レベルが
図3に示すエンジン100以外の騒音レベルよりも増大する。その結果、
図5に示すように車室内の音の大きさを示す騒音レベルについても、
図3に示す車室内の音の大きさを示す騒音レベルより増大する。このように、車室内の音の大きさを示す騒音レベルの変化量だけでは、車室内の騒音レベルの増大がエンジン100の騒音レベルの増大によるものかどうかを正確に判定することが困難となる。そこで、本実施形態においては、車室内の音の騒音レベルの変化量ΔBに対するエンジン100の騒音レベルの変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBを算出し、ΔA/ΔBと基準とを比較している。このような処理を行うことにより、車室内の騒音レベルの増大がエンジン100の騒音レベルの増大によるものかどうかを正確に判定することができる。
【0033】
前記基準については、実験またはシミュレーション等により予め定めておく。前記基準は、効果弱、効果中、および効果強等のように予め複数の基準を設けておき、どの基準を用いるのかをユーザーインターフェースにて利用者が選択できるようにしてもよい。但し、判定部323は、車両の利用者の操作により入力装置310から入力信号Xが出力された場合には、予め定めた基準を所定値ずつ減少させる。
【0034】
その他の機器200は、例えば、オーディオ装置、あるいは音声出力を行うカーナビゲーションシ装置等、音を発生させる各種の車載装置を含む。
【0035】
次に、本実施形態における音環境通知システム1の動作について
図6を参照しつつ説明する。
図6は、車室内音環境通知システム1の動作を示すフローチャートである。
図6に示す車室内音環境通知システム1の動作は、車両においてエンジンが始動された際に、所定の時間間隔で実行されるものとする。
【0036】
音環境通知装置300は、集音装置330で車室内の音を集音して音信号Yを生成し(S10)、当該音信号Yを解析部324において解析する(S20)。本実施形態では、一例として、前記音信号Yを解析して、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)をラウドネス曲線に基づく値に変換し、車室内の騒音レベルを生成する。判定部323は、今回生成した車室内の騒音レベルの、前回生成した車室内の騒音レベルに対する変化量ΔBを算出する(S30)。例えば、今回の車室内の騒音レベルがB2であり、前回した車室内の騒音レベルがB1であったとすると、B2からB1を差し引くことにより変化量ΔBを算出する。なお、車両においてエンジンが始動された後、
図6に示す処理が初めて実行される際には、前回生成した車室内の騒音レベルは存在しないので、変化量ΔBを算出する処理は省略するようにしてもよい。
【0037】
次に、音環境通知装置300は、取得部322により、エンジン100の現在の回転数を示す回転数信号RDを取得する(S40)。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。判定部323は、変換テーブルT1を参照することにより、取得した回転数信号RDが示す回転数に対応するエンジン100の騒音レベルを読み取る。判定部323は、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルの、今回読み取ったエンジン100の騒音レベルに対する変化量ΔAを算出する(S50)。例えば、今回読み取ったエンジン100の騒音レベルがA2であり、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルがA1であったとすると、A2からA1を差し引くことにより変化量ΔAを算出する。なお、車両においてエンジンが始動された後、
図6に示す処理が初めて実行される際には、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルは存在しないので、変化量ΔAを算出する処理は省略するようにしてもよい。
【0038】
判定部323は、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたか否かを判定する(S60)。変化量ΔAがしきい値Thを超えていない場合には(S60:NO)、ステップS10の処理に戻る。しかし、判定部323は、変化量ΔAがしきい値Thを超えたと判定した場合には(S60:YES)、変化量ΔBに対する変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBを算出する(S70)。判定部323は、ΔA/ΔBが基準を超えたか否かを判定する(S80)。判定部323は、ΔA/ΔBが基準を超えていないと判定した場合に(S80:NO)、ステップS10の処理に戻る。しかし、判定部323は、ΔA/ΔBが基準を超えたと判定した場合には(S80:YES)、通知装置350に対して通知信号Zを出力する。通知装置350は、通知信号Zを入力すると、車室内の音環境の状態が基準を超えていること、つまり、エンジン100の騒音レベルの増大により車室内の音が大きくなっていることを通知する(S90)。
【0039】
図7は、利用者による入力装置310の操作に対応するための判定部323の処理を示すフローチャートである。
図7に示す処理は、車両においてエンジンが始動された際に、所定の時間間隔で実行されるものとする。また、
図7に示す処理は、
図6に示す処理とは独立に実行されるものとする。
図7に示すように、判定部323は、入力装置310から入力信号Xが出力されたか否かを判定する(S100)。判定部323は、入力装置310から入力信号Xが出力されていないと判断した場合には(S100:NO)、処理を終了する。しかし、判定部323は、入力装置310から入力信号Xが出力されたと判断した場合には(S100:YES)、現在の基準を所定値だけ減少させる(S110)。所定値については予め設定しておく。したがって、入力信号Xが出力される毎に基準は低くなる。
【0040】
次に、本実施形態の音環境通知システム1における動作の具体例について説明する。例えば、ロードノイズに変動がない状態で、車両が一定の速度で走行していたとする。この場合、エンジン100の騒音レベルはA1で、車室内の騒音レベルはB1であったとする。この状態で、車両の利用者がアクセルを急激に開けたことにより、エンジン100の騒音レベルがA2となり、車室内の騒音レベルはB2に変化したとする。判定部323は、車室内の騒音レベルであるB2から、それまでの車室内の騒音レベルであるB1を差し引くことにより、車室内の騒音レベルの変化量ΔBを算出する(
図6:S10〜S30)。また、判定部323は、エンジン100の騒音レベルであるA2から、それまでのエンジン100の騒音レベルであるA1を差し引くことにより、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAを算出する(
図6:S40〜S50)。次に、判定部323は、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたか否かを判定する(
図6:S60)。この例の場合には、利用者がアクセルを開けた程度が大きく、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたとする。判定部323は、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたと判定すると、(
図6:S60;YES)、車室内の騒音レベルの変化量ΔBに対するエンジン100の騒音レベルの変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBを算出する(
図6:S70)。判定部323は、ΔA/ΔBが基準を超えたか否かを判定する(
図6:S80)。この例の場合には、ΔA/ΔBが基準を超える値であったとする。判定部323は、ΔA/ΔBが基準を超えと判定し(
図6:S80;YES)、通知装置350に通知信号Zを出力する。その結果、通知装置350は、車室内の音が大きくなっていることを通知する(
図6:S90)。車両の利用者は、通知装置350は、車室内の音が大きくなっていることが通知されたことを確認し、直近において急激にアクセルを開けたことが原因で、車室内の音が大きくなったことを認識することができる。したがって、これ以降においては、車両の利用者がアクセルを開ける程度を先ほどのように大きくしないように注意したり、あるいは急激にアクセルを開けないように注意して運転することが期待される。したがって、車室内の音に基づく同乗者等の利用者の不快感を低減することができる。
【0041】
以上のように、本実施形態によれば、集音装置330により集音した車室内の音の大きさと、車両の利用者の操作に応じたエンジン100の回転数とに基づいて、車室内の音環境の状態を示す指標が前記基準を超えたか否かを判定する。したがって、車室内の音環境の状態を正確に判定することができる。また、車室内の音環境の状態が前記基準を超えた場合には、その旨を通知装置350により通知するので、車両の利用者が操作を改善することにより、車室内の音環境の状態が適切な状態に保たれることが期待される。
【0042】
<変形例>
本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば次に述べるような各種の変形が可能である。また、次に述べる変形の態様は、任意に選択された一または複数を、適宜に組み合わせることもできる。
【0043】
(変形例1)
上述した実施形態においては、車室内の騒音レベルの所定期間における変化量ΔBに対する、エンジン100の騒音レベルの前記所定期間における変化量ΔAの割合であるΔA/ΔBが基準を超えたか否かを判定した。しかし、本発明はこのような態様に限定される訳でない。例えば、車室内の音の大きさに関する指標としてラウドネス曲線に基づく騒音レベルを生成し、車室内の騒音レベルが所定値としての基準を超えたか否かを判定するようにしてもよい。この場合には、基準は、ラウドネス曲線に基づく所定の騒音レベルとすればよい。
【0044】
図8は本変形例における車室内音環境通知システム1の動作を示すフローチャートである。
図8に示すフローチャートにおいて
図6のフローチャートと共通箇所については、同一のステップ番号を付してある。
図8に示す車室内音環境通知システム1の動作は、車両においてエンジンが始動された際に、所定の時間間隔で実行されるものとする。
【0045】
音環境通知装置300は、集音装置330で車室内の音を集音して音信号Yを生成し(S10)、当該音信号Yを解析部324において解析する(S200)。本変形例では、前記音信号Yを解析して、車室内の音の大きさを示す音圧レベル(dB)をラウドネス曲線に基づく値に変換し、車室内の騒音レベルを生成する(S200)。
【0046】
次に、音環境通知装置300は、取得部322により、エンジン100の現在の回転数を示す回転数信号RDを取得する(S40)。取得部322は、取得した回転数信号RDを判定部323に出力する。判定部323は、変換テーブルT1を参照することにより、取得した回転数信号RDが示す回転数に対応するエンジン100の騒音レベルを読み取る。判定部323は、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルの、今回読み取ったエンジン100の騒音レベルに対する変化量ΔAを算出する(S50)。例えば、今回読み取ったエンジン100の騒音レベルがA2であり、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルがA1であったとすると、A2からA1を差し引くことにより変化量ΔAを算出する。なお、車両においてエンジンが始動された後、
図8に示す処理が初めて実行される際には、前回読み取ったエンジン100の騒音レベルは存在しないので、変化量ΔAを算出する処理は省略するようにしてもよい。
【0047】
判定部323は、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたか否かを判定する(S60)。変化量ΔAがしきい値Thを超えていない場合には(S60:NO)、ステップS10の処理に戻る。しかし、判定部323は、変化量ΔAがしきい値Thを超えたと判定した場合には(S60:YES)、車室内の騒音レベルが基準を超えたか否かを判定する(S210)。判定部323は、車室内の騒音レベルが基準を超えていないと判定した場合に(S210:NO)、ステップS10の処理に戻る。しかし、判定部323は、車室内の騒音レベルが基準を超えたと判定した場合には(S210:YES)、通知装置350に対して通知信号Zを出力する。通知装置350は、通知信号Zを入力すると、車室内の音環境の状態が基準を超えていること、つまり、エンジン100の騒音レベルの増大により車室内の音が大きくなっていることを通知する(S90)。
【0048】
以上のように、本変形例においては、集音装置330により集音した車室内の音の大きさに基づいて騒音レベルが生成され、車室内の騒音レベルが基準を超えたか否かを判定する。このように構成した場合でも、エンジン100の騒音レベルの変化量ΔAがしきい値Thを超えたか否かを判定しているので、エンジン100の回転数に基づく車室内の音環境の状態を従来に比べて正確に判定することができる。また、車室内の音環境の状態が前記基準を超えた場合には、その旨を通知装置350により通知するので、車両の利用者が操作を改善することにより、車室内の音環境の状態が適切な状態に保たれることが期待される。
【0049】
(変形例2)
入力装置310は、車室内の任意の場所に設置可能である。例えば、運転席または助手席に近い場所に設置してもよいし、後部座席に設置してもよい。あるいは、車室内の複数箇所に入力装置310を設置してもよい。運転席または助手席と、後部座席とでは、音環境の状態が異なるので、後部座席に入力装置310を設置することにより、後部座席の利用者に適した音環境の状態に応じて通知装置350による通知を行うことができる。
【0050】
(変形例3)
上述した実施形態においては、通知装置350により、車室内の音が大きいことを通知する例について説明したが、本発明はこのような態様に限定される訳ではない。例えば、通知装置350により、利用者に対して運転の改善を促す通知を行うようにしてもよい。具体的には、「アクセルを吹かさないでください」のようなメッセージを通知装置350により表示するようにしてもよい。このようにすれば、メッセージの内容が上述した実施形態に比べて直接的な表現なので、利用者によるアクセル操作の確実な改善を期待することができる。
【0051】
(変形例4)
上述した実施形態においては、雑音発生源としてエンジンを例に挙げて説明したが、エアコン以外にも、オーディオ装置やカーナビゲーション装置を雑音発生源として音環境の状態の判定対象にしてもよい。また、オーディオ装置やカーナビゲーション装置にも、車室内の音環境に影響を与える音を発生する装置であれば、本発明の音環境の状態の判定対象にすることができる。
【0052】
(変形例5)
集音装置330(マイクロホン)が集音する音が車室内のどこの音を重点に集音するかを切り替えられるようにしてもよい。つまり、車室内に集音装置330を複数設置し(運転席付近、助手席付近、後部座席付近など)、制御装置320がどの集音装置の音信号を使用するかを切り替えられるようにしてもよいし、各集音装置の音信号に重みを付けられるようにしてもよい。また、集音装置330を、指向方向切り替え可能なマイクとし、集音する方向を切り替えられるようにしてもよい。それらの切り替えまたは重み付けは利用者が入力装置310により操作できるようにしてもよい。