【実施例】
【0011】
(室外機の構成)
図1は、軸流ファンを有する実施例の室外機を示す模式図である。
図1に示すように、実施例の室外機1は、空気調和機で用いられる室外機である。室外機1は、冷媒を圧縮する圧縮機3と、圧縮機3に連結されて冷媒が流れる熱交換器4と、熱交換器4に送風する軸流ファン5と、これらの圧縮機3、熱交換器4及び軸流ファン5が内部に収容された筐体6と、を備える。
【0012】
筐体6は、外気を取り込むための吸込み口7と、筐体6内の空気を排出するための吹出し口8と、を有する。吸込み口7は、筐体6の側面6a及び背面6cに設けられている。吹出し口8は、筐体6の前面6bに設けられている。熱交換器4は、筐体6の前面6bに対向する背面6cと側面6aとに亘って配置されている。軸流ファン5は、吹出し口8に対向して配置されており、ファンモータ(図示せず)によって回転駆動される。
【0013】
(軸流ファンの構成)
図2は、実施例の軸流ファン5を示す平面図である。
図3は、実施例の軸流ファン5を示す斜視図である。
図2及び
図3に示すように、軸流ファン5は、略円筒状のハブ11と、ハブ11の周方向に設けられた複数の翼12と、を有する。ハブ11は、内筒部11aと、内筒部11aの外周側に配置された外筒部11bと、を有する二重円筒状に形成されている。内筒部11aには、ファンモータの回転軸(図示せず)が嵌め込まれる軸穴11cが設けられている。内筒部11aの外周側は、放射状に配置された複数のリブ11dを介して、外筒部11bの内周側と一体に形成されている。外筒部11bの外周面には、外筒部11bの周方向に沿って所定の間隔をあけて3つの翼12が一体に形成されている。
【0014】
(軸流ファンの翼の形状)
図4は、実施例の軸流ファン5の翼12を示す平面図である。
図5は、実施例の軸流ファン5の翼12が有する第1溝部及び第2溝部を拡大して示す平面図である。
【0015】
翼12は、
図3に示すように、板状に形成されており、
図2及び
図4に示すように、ハブ11の外筒部11bに連結された内周縁部13の大きさに比べて、ハブ11の径方向へ延ばされた外周縁部14が広く形成されている。翼12には、翼12の回転方向における前方である前縁部16が、前縁部16の反対側に位置する後縁部17側へ向かって湾曲して形成されている。前縁部16は、回転軸方向Xから見て、湾曲している。そして、翼12の表面(翼面)は、ハブ11の周方向において、前縁部16から後縁部17に向かって、軸流ファン5の負圧側から正圧側に緩やかに湾曲して形成されている。このように翼12が形成された軸流ファン5がR方向(
図3)に回転することで、空気は負圧側から正圧側へ流れる。以下、翼12において、負圧側に向く翼面を負圧面12a、正圧側に向く翼面を正圧面12bと称する。
【0016】
図2、
図3及び
図4に示すように、翼12の後縁部17には、後縁部17を外周側後縁部17Aと内周側後縁部17Bとに分ける切り欠き部18が設けられている。切り欠き部18は、翼12の後縁部17から前縁部16側へ向かって延びて形成されており、回転軸方向Xから見て、前縁部16に向かって先細りとなる略V字状に形成されている。また、内周側後縁部17Bは、
図4及び
図5に斜線領域で示すように、切り欠き部18側へ突出する略三角形状の突出部19を有しており、突出部19が、翼12の正圧面12bに沿って延びる連続した表面を有する。
【0017】
図5に示すように、翼12の正圧面12bでは、空気が前縁部16から後縁部17へ向かってハブ11の周方向Cに流れる。軸流ファン5の回転数が大きくなるに従って、ハブ11の径方向、すなわち直線Lに沿う方向である遠心方向へ向かう空気の流れが大きくなる。直線Lは、ハブ11の回転中心Oを通ってハブ11の径方向に延びる直線である。
【0018】
翼12の正圧面12bを遠心方向へ流れる空気の一部は、後縁部17の切り欠き部18を通って負圧面12a側へ流れる。本実施例では、内周側後縁部17Bが有する突出部19の表面が、正圧面12bに沿って連続して延びているので、切り欠き部18を通って負圧面12a側へ流れる空気の流量が抑制されている。このように、切り欠き部18から負圧面12a側へ流れ込む空気の遠心成分を抑制し、空気の遠心成分を有効利用することで、軸流ファン5が発生する風量が高められている。
【0019】
また、軸流ファン5では、内周側後縁部17Bにおける風速が、外周側後縁部17Aにおける風速よりも遅くなる傾向があり、風速が遅くなるにつれて、空気の流れ方向は、翼12の回転に伴う遠心力の影響を受けやすくなる。このため、遠心力の影響により、外周側後縁部17Aにおける空気の流れ方向F1と、内周側後縁部17Bにおける空気の流れ方向F2とが異なっている。具体的には、外周側後縁部17Aにおける空気の流れ方向F1に比べて、内周側後縁部17Bにおける空気の流れ方向F2がハブ11の外周に向かって傾斜している。
【0020】
図4及び
図5に示すように、外周側後縁部17Aの、切り欠き部18に隣接する位置には、翼12の厚み方向に貫通して前縁部16側へ向かって延びる複数の溝で形成される第1溝部21が、外周側後縁部17Aに沿って設けられている。内周側後縁部17Bの、切り欠き部18に隣接する位置には、翼12の厚み方向に貫通して前縁部16側へ向かって延びる複数の溝で形成される第2溝部22が、内周側後縁部17Bに沿って設けられている。第2溝部22は、内周側後縁部17Bが有する突出部19に設けられている。第2溝部22は、切り欠き部18が略V字状に広がる側に位置する、突出部19の外縁に沿って配置されている。そして、ハブ11の回転軸方向Xから見て、第1溝部21の溝と第2溝部22の溝とは形状が互いに異なる。なお、第1溝部21と第2溝部22は、回転軸方向Xから見た形状に限定されるものではなく、例えば、外周側後縁部17A及び内周側後縁部17Bの正圧面12bにおける形状も互いに異なっている。
【0021】
より具体的には、
図5に示すように、第1溝部21の溝は、後縁部17から前縁部16へ向かって延びる深さD1が、第2溝部22の深さD2よりも大きい溝を含んでいる。また、第1溝部21の溝は、後縁部17(外周側後縁部17A)に沿う方向に対するピッチP1が、第2溝部22の溝のピッチP2よりも大きい溝を含んでいる。第1溝部21の溝は、後縁部17(外周側後縁部17A)に沿う方向に対する幅が、第2溝部22の溝の幅よりも大きい溝を含んでいてもよい。また、第1溝部21の溝の形状は、深さD1及びピッチP1が、第2溝部22の溝の深さD2及びピッチP2よりも大きい形状に限定されるものではなく、深さD1、ピッチP1の一方のみが大きい形状であってもよい。言い換えると、第1溝部21の溝と第2溝部22の溝は、外周側後縁部17A及び内周側後縁部17Bの正圧面12bにおける開口面積、すなわち大きさが互いに異なっている。なお、第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝の深さD1、D2は、例えば翼12の正圧面12b側における寸法である。第1溝部21の溝の深さD1は、後述する補強部23を含めない寸法である。
【0022】
ここで、例えば、第1溝部21の溝の深さD1は、第1溝部21の両側に隣接する各外周側後縁部17Aの頂点間を結ぶ仮想線K1とその平行線K2を基準とした距離を指し、第1溝部21の溝のピッチP1は、第1溝部21の両側に隣接する各外周側後縁部17Aの頂点間の距離を指す。第2溝部22の溝の深さD2及びピッチP2についても、第1溝部21の溝の深さD1及びピッチP1と同様に、第2溝部22の両側に隣接する各内周側後縁部17Bの頂点間を結ぶ仮想線K1とその平行線K2を基準とした距離、各内周側後縁部17Bの頂点間の距離を指す。
【0023】
図5に示すように、第2溝部22の溝の、後縁部17から前縁部16へ向かって延びる深さD2の方向が、ハブ11の径方向、つまり直線Lに対してなす角度θ2は、第1溝部21の溝の深さD1の方向が直線L(径方向)に対してなす角度θ1よりも小さい。角度θ1、θ2は、外周側後縁部17Aにおける空気の流れ方向F1と、内周側後縁部17Bにおける空気の流れ方向F2に基づいて設定されている。すなわち、第1溝部21の溝は、外周側後縁部17Aにおける空気の流れ方向F1に沿う方向に沿って延びている。同様に、第2溝部22の溝は、内周側後縁部17Bにおいて空気の流れ方向F2に沿う方向に延びている。
【0024】
また、本実施例における第1溝部21の溝内には、
図5に示すように、後縁部17を補強する補強部23が一体に形成されている。補強部23は、第1溝部21の溝内における前縁部16側の端面から後縁部17側に突出すると共に、第1溝部21の溝内の対向する各内面に連結されており、いわゆる水かき状に形成されている。
【0025】
(第1溝部及び第2溝部の作用)
翼12において、外周側後縁部17Aにおける風速が、内周側後縁部17Bにおける風速に比べて大きいので、外周側後縁部17Aの第1溝部21の溝の深さD1、ピッチP1、幅等が、内周側後縁部17Bの第2溝部22の溝の深さD2、ピッチP2、幅等よりも大きくされることで、第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝は、外周側後縁部17Aと内周側後縁部17Bでの空気の流れに応じた所望の深さ、ピッチ、幅となるように形成されている。これによって、空気の流れによる騒音の発生を低減するという溝による本来の作用を十分に得ることが可能になる。
【0026】
また、第1溝部21の溝が、外周側後縁部17Aにおける空気の流れ方向F1に沿う方向に沿って延びており、第2溝部22の溝が、内周側後縁部17Bにおいて空気の流れ方向F2に沿う方向に延びている。このように第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝は、後縁部17における空気の流れ方向F1、F2にそれぞれ応じた適正な形状に形成されている。したがって、軸流ファン5では、第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝が、翼12の後縁部17に生じる渦の大きさを効果的に細分化することにより、空気の流れによる騒音の発生を低減する効果が高められている。
【0027】
上述のように、実施例の軸流ファン5は、ハブ11の回転軸方向Xから見て、外周側後縁部17Aの第1溝部21の溝と、内周側後縁部17Bの第2溝部22の溝は形状が互いに異なる。例えば、第1溝部21の溝の深さD1は、第2溝部22の溝の深さD2よりも大きい。あるいは、後縁部17に沿う方向に対する第1溝部21の溝のピッチP1は、第2溝部22の溝のピッチP2よりも大きい。このように第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝は、空気の流れに応じた所望の深さ、ピッチ、幅となるように形成されることで、外周側後縁部17A及び内周側後縁部17Bの各風速の違いにそれぞれ適正に対応することが可能になるので、後縁部17における空気の流れによる騒音の発生を効果的に抑えることができる。
【0028】
また、上述のように、実施例の軸流ファン5における内周側後縁部17Bには、翼12の正圧面12bに沿って切り欠き部18側へ突出する突出部19が設けられ、第2溝部22の溝が、突出部19の外縁に沿って設けられる。このように突出部19の表面が、正圧面12bに沿って突出されることで、切り欠き部18を通って負圧面12a側へ流れる空気の流量が抑制される。これにより、切り欠き部18から負圧面12a側へ流れ込むのを抑制し、軸流ファン5が発生する風量を高めることができる。
【0029】
また、上述のように、実施例の軸流ファン5において、第2溝部22の溝の、後縁部17から前縁部16へ向かって延びる深さD2方向が、ハブ11の径方向(直線L)に対してなす角度θ2は、第1溝部21の溝の深さD1方向が径方向に対してなす角度θ1よりも小さい。これにより、第1溝部21の溝及び第2溝部22の溝は、遠心力の影響に伴う外周側後縁部17Aと内周側後縁部17Bの各空気の流れ方向F1、F2にそれぞれ沿って形成される。このため、後縁部17における空気の流れによる騒音の発生を低減するという溝による本来の作用を十分に得ることが可能になる。
【0030】
(変形例)
図6は、変形例の軸流ファンの翼が有する第1溝部及び第2溝部を拡大して示す平面図である。なお、変形例において、実施例と同一の構成部分については、説明の便宜上、実施例と同一符号を付けて説明を省略する。
【0031】
図6に示すように、変形例における翼30が有する第1溝部31の複数の溝は、深さD1及びピッチP1が、翼30の内周縁部13側から外周縁部14に向かって段階的に大きくなるように変化する第1溝部31の溝を含んでいる。同様に、変形例における翼30が有する第2溝部32の複数の溝は、深さD2及びピッチP2が、第1溝部31の溝と同様に、翼30の内周縁部13側から外周縁部14に向かって段階的に大きくなるように変化する第2溝部32の溝を含んでいる。なお、図示しないが、第1溝部31の溝及び第2溝部32の溝においても、後縁部17から前縁部16側へ延びる深さD1、D2方向が、実施例と同様に、ハブ11の径方向に対して角度θ1、θ2をなしている。
【0032】
変形例によれば、第1溝部31の複数の溝及び第2溝部32の複数の溝が、ハブ11の径方向に対する翼12の後縁部17の各位置における空気の流れに応じた所望の深さ、ピッチ、幅となるように形成される。このため、後縁部17における空気の流れによる騒音の発生を更に効果的に抑えることができる。変形例は、特に大型の軸流ファンの場合に有効である。
【0033】
以上、実施例を説明したが、上述した内容により実施例が限定されるものではない。また、上述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、上述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、実施例の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換及び変更のうち少なくとも1つを行うことができる。