(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記複数本の棒状コアの配列方向において、前記第一の棒状コアの前記第二の棒状コアが配置された側の端面と、前記第二の棒状コアの前記第一の棒状コアが配置された側の端面との距離の平均値が、1.5mm以下であることを特徴とする請求項1に記載のアンテナ装置。
前記第一の棒状コアの前記第二の棒状コアが配置された側の端面と、前記第二の棒状コアの前記第一の棒状コアが配置された側の端面との間には空気のみが存在することを特徴とする請求項1または2に記載のアンテナ装置。
前記第一のコイルと前記第二のコイルとの間に配置されると共に、(i)前記第一の棒状コアの前記第二の棒状コアが配置された側の端部近傍の外周側、(ii)前記第一の棒状コアの前記第二の棒状コアが配置された側の端面と前記第二の棒状コアの前記第一の棒状コアが配置された側の端面とで囲まれた領域の外周側、および、(iii)前記第二の棒状コアの前記第一の棒状コアが配置された側の端部近傍の外周側、からなる群より選択される少なくともいずれかの外周側を囲うように導線を巻回して形成された第三のコイルが配置されていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載のアンテナ装置。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、本実施形態のアンテナ装置の一例を示す模式断面図である。ここで、
図1および後述する
図2以降において、図中に示すX方向およびY方向は互いに直交する方向である。また、X方向は、
図1中に示す2本の棒状コア20の配列方向と平行であると共に、各々の棒状コア20A(20)、20B(20)の中心軸A1、A2とも平行である。この点は、
図2以降に示される棒状コアについても実質同様である。
【0014】
図1に示す本実施形態のアンテナ装置10A(10)は、その主要部として、直列に配置された複数本(
図1に示す例では2本)の棒状コア20と、第一のコイル30A(30)および第二のコイル30B(30)とを有している。これら2本の棒状コア20から選択される一方の棒状コア(第一の棒状コア20A)の外周側には、導線を巻回して形成された第一のコイル30Aが設けられており、2本の棒状コア20から選択され、かつ、第一の棒状コア20Aの一方の端部側に配置された他方の棒状コア(第二の棒状コア20B)の外周側には、導線を巻回して形成された第二のコイル30Bが設けられている。また、第一の棒状コア20Aおよび第二の棒状コア20Bは、有底筒状のボビン40内に収納されている。それゆえ、2本のコイル30は、ボビン40の外周面と接して設けられている。また、第一のコイル30Aと第二のコイル30Bとは導線(不図示)により電気的に接続されている。
【0015】
なお、第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面22Aと、第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面22Bとは離間して配置されている。また、第一の棒状コア20Aと第二の棒状コア20Bとは、第一の棒状コア20Aの中心軸A1と、第二の棒状コアの中心軸A2とが一致するように配置されている。
【0016】
さらに、ボビン40の第一の棒状コア20Aが収納された側の端部近傍には、筒状のボビン本体部42の外周面よりも外側に突出する鍔部44が設けられており、ボビン40の第二の棒状コア20Bが収納された側の端部には、底蓋部46が設けられる。なお、底蓋部46は、ボビン本体部42の外周面よりも外側にも突出して設けられている。さらに、底蓋部46のボビン本体部42が設けられた側と反対側の面には、筒状の外部端子カバー48が設けられている。
【0017】
また、ボビン本体部42の底蓋部46側の外周壁面の一部には開口部42Aが設けられ、この開口部42Aに露出している第二の棒状コア20Bに対向する位置には、金属端子50が配置されている。この金属端子50は、導線(不図示)により第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bに接続されると共に、一端が、底蓋部46を貫通して底蓋部46のボビン本体部42が設けられた側と反対側の面に露出している。そして、金属端子50の一端は、外部接続端子60に接続されている。また、金属端子50には、チップコンデンサなどの電子素子(不図示)が適宜接続される。
【0018】
さらに、ボビン40は、有底筒状のケース70内に、ボビン40の底蓋部46が設けられた側が、ケース70の開口部72側に位置するように収納されている。また、外部端子カバー48の外周面と、ケース70の開口部72近傍の内周面との間には、リング状のキャップ部材80が設けられている。
【0019】
なお、棒状コア20は、磁性材料から構成され、たとえば、Mn−Zn系フェライトやそれ以外のアモルファス系磁性体の微粉末を圧縮成形することにより作製された部材などを適宜用いることができる。また、コイル30等を構成する導線は、銅等の導電性材料からなる芯線と、この芯線の表面を覆う絶縁材料とを有する部材であり、金属端子50および外部接続端子60としては銅などの導電性部材からなる部材が適宜利用できる。さらに、ボビン40、ケース70およびキャップ部材80としては樹脂材料からなる部材が用いられる。たとえば、ボビン40としては、PBT(ポリブチレンテレフタレート)を用いて射出成形した部材を用いることができ、ケース70およびキャップ部材80としては、PP(ポリプロピレン)を用いて射出成形した部材を用いることができる。
【0020】
図2は、
図1に例示した本実施形態のアンテナ装置10Aのうち、2本の棒状コア20および2つのコイル30の配置関係について示す拡大図である。
図2に示すように本実施形態のアンテナ装置10では、2本の棒状コア20の配列方向において互いに隣り合う位置にある第一の棒状コア20Aの端面22Aと、第二の棒状コア20Bの端面22Bとで囲まれた領域Sのギャップ長さG(棒状コア20A,20Bの配列方向と平行な方向における端面22Aと端面22Bとの距離)がばらつくことでインダクタンス値が大きく変動するおそれがある。
【0021】
しかしながら、本実施形態のアンテナ装置10では、下式(1)を満たすように第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bが配置されるため、ギャップ長さGがばらついても、インダクタンス値の変動が抑制できる。
・式(1) Dc≧0.3×(CL1+CL2)
【0022】
ここで、式(1)中、Dcは、コイル間距離、すなわち、2本の棒状コア20A、20Bの配列方向において、第一のコイル30Aの第二のコイル30Bが配置された側の端部から、第二のコイル30Bの第一のコイル30Aが配置された側の端部までの距離(mm)を表し、CL1は、コア長さ、すなわち、第一の棒状コア20Aの中心軸A1方向長さ(mm)を表し、CL2は、コア長さ、すなわち、第二の棒状コア20Bの中心軸A2方向長さ(mm)を表す。
【0023】
表1に、コイル間距離Dcを変えた場合における、ギャップ長さGに対するインダクタンス値の変化率の測定結果について示す。表1中に示すインダクタンス値Lとしては、ギャップ長さGが0mmにおけるインダクタンス値Lを基準値(100%)とした際の相対値を示した。なお、表1に示すインダクタンス値Lの測定では、
図2に示すように、2本の棒状コア20A、20Bと、2つのコイル30A、30Bとを用いて、コイル間距離Dcを様々に変えた場合において、ギャップ長さGに対するインダクタンス値Lの変化率を測定した。この場合の測定条件の詳細は以下の通りである。コイル間距離Dcおよびギャップ長さGを様々に変えた際に、
図2中に示す距離X1、X2については、表1中の測定条件1〜3、5〜6においては、X1=X2に設定し、表1中に示す測定条件4においては、X1<X2に設定した。
−測定条件−
・測定温度:20℃
・棒状コア20A、20Bの寸法:中心軸A1、A2方向の長さ(コア長さCL1、CL2):32.8mm、厚み(Y方向長さ):3.4mm、幅:6.8mm
・棒状コア20A、20Bの材質:NL40S(Ni−Zn系フェライト材料、日立金属株式会社製)
・コイル30A、30Bの寸法・巻数等:中心軸A1、A2方向の長さ(コイル長さ):10.0mm、コイル厚み:1.5mm、丸線コイル、40Turn
【0025】
表1に示す結果から明らかなように、ギャップ長さGが、0mm〜1.5mmの間でばらついた場合でも、式(1)に示したようにコイル間距離Dcが、0.3×(CL1+CL2)以上であれば、インダクタンス値Lの変動は大幅に抑制できることがわかった。このような効果が得られる理由は、次の通りであると考えられる。すなわち、(1)まず、コイル間距離Dcが大きくなる程、同軸上に直列に配置された2つのコイル30A,30Bの磁気的結合係数kが小さく、この磁気的結合によって生じる相互インダクタンスMも小さくなる。
【0026】
(2)次に、後述の
図4、
図5及びその説明から明らかであるように、一定の長さを有する棒状コアに対して、棒状コアの長さ方向の中心位置付近でコイル110を動かす場合、インダクタンス値Lの変化率が低く、インダクタンス値Lの絶対値が高い(ギャップ長さG=0mm(すなわち、棒状コア100A、100Bが一体化した一本の細長い棒状コアを成す場合)における
図4(B)、
図5)。一方、棒状コア100Aおよび棒状コア100Bの端部(間隙部X側の端部)近傍にコイル110を配置した場合、コイル110の位置を動かすと、インダクタンス値Lの変化率が激しく、インダクタンス値Lも相対的に低い(ギャップ長さG>0mmにおける
図4(B)、
図5)。
【0027】
よって、本来であれば、一本の細長いコアに対して巻線することで形成した二つのコイルを互いに接近させて配置させる程、結合係数kが高い。これに対して、一本の細長いコアを二つに分割したコアの各々に対して巻線して二つのコイルを形成した際に、二つのコイルを互いに接近させて配置したと仮定する。この場合、上記理由(2)から、それぞれのコイルの自己インダクタンス値が変動しやすいことに加え、二つのコア間のギャップ長Gのバラツキによる相互インダクタンス値Mの変化率も一気に高くなってしまうので、一定値で安定したインダクタンス値Lを得難い虞がある。
【0028】
従って、アンテナ装置10全体のインダクタンス値Lに対して、ギャップ長さGがばらついた際の相互インダクタンスMの変化が与える影響が小さくなるため、二つのコイル30A、30Bのうち、少なくとも一方のコイル30がコア20の領域S側の端部から一定距離以上離れた位置に存在することが望ましい。そして、この点につき、本発明者らが実験による試行錯誤も踏まえて検討したところ、式(1)を満たせば、ギャップ長さGのばらつきに起因するインダクタンス値Lの変動を抑制できることを見出した。
【0029】
なお、ギャップ長さGのばらつきに起因するインダクタンス値Lの変動をより一層抑制する観点からはコイル間距離Dcは0.46×(CL1+CL2)以上であることが好ましく、0.61×(CL1+CL2)以上であることがより好ましい。表1から明らかなように、ギャップ長さGが0mm〜1.5mmの範囲内でばらついた場合におけるインダクタンス値Lの最大変動幅(%)は、測定条件3,5,6に示すようにX1=X2としたときにおいて、コイル間距離Dcが0.30×(CL1+CL2)では、約30%であるが、コイル間距離Dcを0.46×(CL1+CL2)以上とすれば、約20%以下にまで抑制でき、さらに、コイル間距離Dcを0.61×(CL1+CL2)以上とすれば、約10%以下にまで抑制できる。
【0030】
また、コイル間距離Dcの上限は、1.0×(CL1+CL2)以下であればよいが、実用上は、0.69×(CL1+CL2)以下であることが好ましい。これは上記の理由(1)により、コイル間距離Dcが大き過ぎる場合は、二つのコイル30A、30Bの磁気的結合係数kが十分小さくなり、ギャップの長さGのバラツキによるインダクタンス値の変動Lへの影響は十分小さくなるものの、アンテナ装置10全体のインダクタンス値Lが小さくなり過ぎるおそれがあるためである。
【0031】
なお、式(1)を満たす場合であっても、コイル30A、30Bのうち、いずれか一方のコイル30が、領域Sに対して相対的により接近して配置されている場合、ギャップ長さGがばらつくことでインダクタンス値Lの変動を抑制しずらくなる場合がある。それゆえ、式(1)を満たした上でさらに、第一のコイル30Aが式(2)を満たすように配置され、かつ、第二のコイル30Bが式(3)を満たすように配置されていることがより好ましい。
・式(2) X1≧0.2×CL1
・式(3) X2≧0.2×CL2
【0032】
ここで、式(2)中、X1は、
図2にも示したように、2本の棒状コア20A、20Bの配列方向において、第一の棒状コア20Aの端面22Aから、第一のコイル30Aの第二のコイル30Bが配置された側の端部までの距離であり、式(3)中、X2は、
図2にも示したように、2本の棒状コア20A、20Bの配列方向において、第二の棒状コア20Bの端面22Bから、第二のコイル30Bの第一のコイル30Aが配置された側の端部までの距離である。
【0033】
コイル間距離Dcが同一である測定条件3と測定条件4とにおいて、2つのコイル30が領域Sから等距離に配置された測定条件3と比較して、測定条件4では、2つのコイル30のうち、第一のコイル30Aを領域Sに対して相対的により接近させて配置している。そして測定条件4において、距離X1は0.2×CL1である。しかしながら、ギャップ長さGがばらついた際のインダクタンス値Lの変動は、測定条件3に対して測定条件4が僅かに大きくなっている程度であり、実質的な差異は認められない。すなわち、式(2)および式(3)に示すように、各々のコア20A、20Bの長さに比例するように、領域Sから一定の距離を保って第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bを配置することで、ギャップ長さGがばらついてもより確実にインダクタンス値Lの変動を抑制することが可能となる。なお、距離X1は、0.25×CL1以上であることがより好ましく、0.3×CL1以上であることがさらに好ましく、距離X2は、0.25×CL2以上であることがより好ましく、0.3×CL2以上であることがさらに好ましい。
【0034】
また、本実施形態のアンテナ装置10のギャップ長さGの平均値は特に限定されるものではないが、実用上は1.5mm以下であればよく、0.5mm以下が好ましい。また、ギャップ長さGの公差を±Xmmとした際に、ギャップ長さGの平均値>Xを満たす範囲内において、ギャップ長さGの平均値は0.25mm以下がさらに好ましい。ギャップ長さGの平均値を1.5mm以下とすることにより、アンテナ装置10のインダクタンス値Lが大きく低下するのをより確実に抑制できる。また、ギャップ長さGの平均値が0.5mm以下であれば、式(1)を満たす範囲内においてコイル間距離Dcが如何様であっても、インダクタンス値Lの変動幅を約20%前後以下とすることができ、ギャップ長さGの平均値が0.25mm以下であれば、式(1)を満たす範囲内においてコイル間距離Dcが如何様であっても、インダクタンス値Lの変動幅を約12%前後以下とすることができる。
【0035】
一方、2つの棒状コア20A、20Bが接触している接触状態(ギャップ長さGが0mm丁度)と、2つの棒状コア20A、20Bが離間している離間状態(ギャップ長さGが0mmを超える)との間では、インダクタンス値Lが大きく変化する。このため、本実施形態のアンテナ装置10では、第一の棒状コア20Aの端面22Aと、第二の棒状コア20Bの端面22Bとは、
図1および
図2に例示したように離間した状態(ギャップ長さGが0mmを超える)であることが必要である。また、ギャップ長さGの平均値が0mmに近い領域では、ギャップ長さGのわずかなばらつきが生じても、インダクタンス値Lが大きく変動しやすい傾向にある。それゆえ、ギャップ長さGの平均値の下限は、理論上は、ギャップ長さGの許容されるばらつき範囲(mm)の1/2倍の値を超えていることが必要であり、実用上は、ギャップ長さGの一般的な公差(±0.2mm〜±0.3mm程度)を考慮して、たとえば、0.2mmを超えることが好ましく、0.3mmを超えることがより好ましい。
【0036】
なお、本願明細書において、「ギャップ長さGの平均値」とは、温度20℃において、同一種類のアンテナ装置10について20個をサンプリングして、各々のアンテナ装置10のギャップ長さGを測定した場合の平均値を言う。
【0037】
なお、本実施形態のアンテナ装置10では、式(1)を満たすようにコイル間距離Dcが設定されるため、インダクタンス値Lを調整するインダクタンス値調整機構を設ける必要が無く、アンテナ装置10の構造簡略化・低コスト化も図れる。ここで、インダクタンス値調整機構としては、たとえば、特許文献1に例示されるような直列に配列された2つの棒状コア間に配置される小型コア、などが挙げられる。
【0038】
さらに、本実施形態のアンテナ装置10では、式(1)を満たすように2つのコイル30A、30Bを配置することでインダクタンス値Lの変動を大幅に抑制できるため、ギャップ長さGのばらつき範囲の許容値をより大きくすることも容易である。このため、ギャップ長さGのばらつきをより小さくするための部材を省いて、アンテナ装置10の構造をより簡略化することも容易である。それゆえ、本実施形態のアンテナ装置10では、たとえば、第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面22Aと、第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面22Bとの間には空気のみが存在する構造など、極めてシンプルな構造を採用することが容易である。なお、ギャップ長さGのばらつきをより小さくするための部材としては、ギャップ長さGを一定に保ちやすいように、第一の棒状コア20Aの端面22Aと、第二の棒状コア20Bの端面22Bとの間に配置されるスペーサー(ボビン40と一体的に形成される仕切り板なども含む)、第一の棒状コア20Aの端面22Aと、第二の棒状コア20Bの端面22Bとを少なくとも接着するための接着剤、スペーサーと端面22Aおよび/または端面22Bとを少なくとも接着するための接着剤、などが挙げられる。
【0039】
このように、本実施形態のアンテナ装置10では、複数本の棒状コアを備えた従来のアンテナ装置と比べて、部品点数の削減や構造の簡略化が容易となるため、これに伴い、コストダウンや信頼性の向上を図りやすい。但し、本実施形態のアンテナ装置10では、上述したインダクタンス値調整機構、スペーサー、接着剤などの使用を完全に排除するものでは無く、必要であれば適宜利用することも可能である。
【0040】
本実施形態のアンテナ装置10では、
図2に例示したように、コア長さCL1とコア長さCL2とが略同一であり、かつ、2本の棒状コア20A、20Bの配列方向において、第一の棒状コア20Aの端面22Aから、第一のコイル30Aの第二のコイル30Bが配置された側の端部までの距離X1と、第二の棒状コア20Bの端面22Bから、第二のコイル30Bの第一のコイル30Aが配置された側の端部までの距離X2と、が略同一であることが好ましい。このように、中心軸A1,A2方向に対して領域Sを2等分する平面に対して、2本の棒状コア20A,20Bと2つのコイル30A、30Bとを略面対称に設けた構造を採用することで、アンテナ装置10に用いる部品の共通化による部品点数の削減が図れる。しかしながら、必要であれば、コア長さCL1と、コア長さCL2とを異なるものとしたり、あるいは、距離X1と、距離X2とを異なるものとしてもよい。また、第一のコイル30Aは、式(1)を満たす限り、棒状コア20A、20Bの配列方向に対して、その両端が、第一の棒状コア20Aの両端を超えてはみでない範囲内で任意の位置に配置でき、第二のコイル30Bは、式(1)を満たす限り、棒状コア20A、20Bの配列方向に対して、その両端が、第二の棒状コア20Bの両端を超えてはみでない範囲内で任意の位置に配置できる。
【0041】
なお、
図1に示すアンテナ装置10Aは、直列に配置された2本の棒状コア20A、20Bを有しているが、本実施形態のアンテナ装置10では、直列に配置された3本以上の棒状コア20を有していてもよい。ここで、アンテナ装置10が、直列に配置されたn本以上(但し、nは3以上の整数)の棒状コア20を有する場合、これら棒状コア20の配列方向において隣り合う位置にある少なくとも1組の棒状コア20について式(1)を満たしていればよく、また、各々の棒状コア20に対応して設けられるコイル30の数は、2〜nの範囲で適宜選択できる。
【0042】
また、本実施形態のアンテナ装置10では、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bに加えて、さらに第三のコイルを設けてもよい。
図3は、本実施形態のアンテナ装置の他の例を示す模式断面図であり、具体的には、
図1に示すアンテナ装置10Aに対して、さらに第三のコイル90を設けたアンテナ装置10B(10)について示す図である。
図3に示すアンテナ装置10Bでは、第一のコイル30Aと第二のコイル30Bとの間に配置されると共に、(i)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端部近傍の外周側と、(ii)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面22Aと第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面22Bとで囲まれた領域Sの外周側と、(iii)第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端部近傍の外周側と、を囲うように導線を巻回して形成された第三のコイル90が配置されている。また、第一のコイル30Aと第三のコイル90とは導線(不図示)により電気的に接続され、第二のコイル30Bと第三のコイル90とは導線(不図示)により電気的に接続されている。なお、この第三のコイル90が設けられた点を除けば、
図3に示すアンテナ装置10Bは、
図1に示すアンテナ装置10Aと実質同様の構造を有する。
【0043】
図3に示す第三のコイル90を有するアンテナ装置10Bは、
図1に示す第三のコイル90を有さないアンテナ装置10Aと比べて、インダクタンス値Lを、所望の値に設定することがより容易となる。この理由は、1Turn(コイルを構成する導線の1巻分)当たりのインダクタンス値Lが、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bと比べて、第三のコイル90の方が低いため、第三のコイル90を設けることでアンテナ装置10全体のインダクタンス値Lの微調整がより容易となるためである。
【0044】
図4は、直列に配置された2本の棒状コアの配列方向に沿って、配列方向の一端側から他端側へとコイルを移動させた場合について示す模式図であり、
図5は、
図4に示すケースにおいて、コイルの位置に対するインダクタンス値Lを測定した結果について示すグラフである。
【0045】
図4に示すように、2本の棒状コア100A、100Bは、各々の中心軸B1と中心軸B2とが一致するように直列に2本配置されている。そして、これら2本の棒状コア100A、100Bの配列方向(X方向)に沿って、
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)に示すように、棒状コア100B側から棒状コア100A側へと、コイル110を移動させた。ここで、棒状コア100A、100Bの中心軸B1、B2方向の長さは7cmとし、棒状コア100A、100Bの配列方向と平行な方向におけるコイル110の長さは4cmである。また、コイル110の位置は、棒状コア100Bの棒状コア100Aが配置された側と反対側の端面を基準位置(0cm)とした場合において、基準位置からコイル110の基準位置側の端部までの距離で示した。
【0046】
ここで、
図4(A)は、コイル110が基準位置から1cm離れた位置に配置された場合について示す図であり、
図4(B)は、コイル110が基準位置から5cm離れた位置に配置された場合について示す図であり、
図4(C)は、コイル110が基準位置から12cm離れた位置に配置された場合について示す図である。また、基準位置から7cmの位置には、第一の棒状コア100Aと第二の棒状コア100Bとの接触部X(ギャップ長さG=0mm)、あるいは、間隙部X(ギャップ長さG>0mm)が形成される。ここで、インダクタンス値Lの測定に際しては、棒状コア100Aと棒状コア100Bとのギャップ長さGを、0mm、0.2mmおよび1.0mmの3水準とし、ギャップ長さGおよび基準位置からのコイル110の位置以外のその他条件については、全て一定条件とした。
【0047】
また、
図5中、横軸はコイル110の位置(cm)であり、縦軸は、インダクタンス値L(μH)である。また、
図5中に示す符号(A)、(B)および(C)で示されるインダクタンス値Lは、ぞれぞれ、
図4(A)、
図4(B)および
図4(C)に示す位置にコイル110が配置された状態に対応している。
【0048】
図5に示す結果から明らかなように、ギャップ長さGが0mmを超える場合、インダクタンス値Lは、コイル110が第二の棒状コア100Bの中心軸B2方向の中央部に近づくに従い極大値を示した後、間隙部Xに近づくに従い低下して、さらにコイル110の長さ方向の中央部近傍に間隙部Xが位置する際に極小値となる。さらに、インダクタンス値Lは、コイル110が間隙部Xから離れて、第一の棒状コア100Aの中心軸B1方向の中央部に近づくに従い再び極大値を示し、その後、第一の棒状コア100Aの端部側(第二の棒状コア100Bが配置された側と反対側の端部)へと近づくに従い、再び低下する。すなわち、インダクタンス値Lは、コイル110の位置に対してM字状の曲線を描くように変化する。また、インダクタンス値Lの極大値と極小値との差は、ギャップ長さGが大きくなる程、顕著になる。
【0049】
したがって、ギャップ長さGが0mmを超える場合、第一の棒状コア100A,あるいは、第二の棒状コア100Bの中央部近傍にコイル110を配置した際には、より大きなインダクタンス値Lを得ることできる一方、間隙部Xと重複あるいは間隙部Xの近傍にコイル110を配置した際には、より小さなインダクタンス値Lを得ることができる。
【0050】
それゆえ、
図3に示すアンテナ装置10Bでは、第一のコイル30Aおよび第二のコイル30Bを設けることで、アンテナ装置10B全体のインダクタンス値Lを大きくすることが容易となる一方で、第三のコイル90をさらに設けることで、アンテナ装置10B全体のインダクタンス値Lを所望の値に近づけるように微調整することが容易となる。
【0051】
なお、
図3に示す例では、(i)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端部近傍の外周側と、(ii)第一の棒状コア20Aの第二の棒状コア20Bが配置された側の端面22Aと第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端面22Bとで囲まれた領域Sの外周側と、(iii)第二の棒状コア20Bの第一の棒状コア20Aが配置された側の端部近傍の外周側と、を囲うように第三のコイル90が配置されている。しかしながら、アンテナ装置10Bのインダクタンス値Lの微調整を容易とする観点では、(i)〜(iii)からなる群より選択される少なくともいずれかの外周側を囲うように第三のコイル90が配置されていればよい。
【0052】
本実施形態のアンテナ装置10は、たとえば、LF帯(30kHz〜300kHz)の近距離通信システムの送信用のアンテナ装置として用いることができ、主に車両ドアの施解錠を遠隔操作するキーレスエントリーシステムに用いることが好適である。一方、インダクタンス値Lは下式(4)で定義され、下式(4)中、Lはインダクタンス値、Aはコイルの巻数等に依存する定数値、Nは反磁界係数、μは透磁率である。
・式(4) L=A×μ/{1+N×(μ−1)}
【0053】
ここで、磁性体材料の透磁率μは、温度により変化するパラメーターである。そして、車両は、寒冷地域から熱帯地域までの様々な地域で利用される上に、同じ地域であっても夏場と冬場のように季節の変動もあるため、車両の使用温度は数十度以上の幅がある。それゆえ、磁性体材料からなる棒状コアを備えたアンテナ装置を、温度変化の大きい環境下で使用すると、インダクタンス値Lも大きく変動することになる。一方、反磁界係数Nは、磁性体の形状に依存する係数であり、具体的には、磁性体の外部に形成される磁束を打ち消す反対方向の磁束が磁性体内部にどの程度作用しているかを定量的に表す係数である。この反磁界係数Nは、磁性体の長さ(磁極間の距離)が、磁性体の長さ方向と直交する平面における磁性体断面の断面積よりも大きい形状である程(棒状コアの形状としては太く短い程)、1に近づき、その逆の形状である程(棒状コアの形状としては細く長い程)、0に近づく。そして、式(4)から、反磁界係数Nが大きければ大きい程(棒状コアの形状としては太く短い程)、透磁率μの変化に対するインダクタンス値Lの変動幅は小さくなる。
【0054】
したがって、温度変化の大きい環境下でアンテナ装置を使用する場合であっても、太く短い形状の棒状コアを使用すれば、インダクタンス値Lの変動を大幅に抑制できると考えられる。しかしながら、キーレスエントリーシステムに用いるアンテナ装置は寸法上の制約が大きいため、棒状コアの形状を短くすることは容易であっても、太くすることは難しい場合が多い。これに加えて、棒状コアの太さを維持したまま、単に短くしただけではインダクタンス値Lが大幅に低下してしまう。このため、インダクタンス値Lを維持しつつもインダクタンス値Lの温度依存性を小さくするためには、1本の細く長い棒状コアを2つ以上に分割して複数本の太く短い棒状コアに置き換えることが有効であると考えられる。
【0055】
表2は、20℃におけるインダクタンス値Lを基準値(0%)とした場合において、温度−40℃、−20℃、0℃および20℃におけるインダクタンス値Lの相対値の測定結果を示したものである。なお、表2中の実験例1は、
図6(A)に示すように1本の細長い棒状コア200の中心軸C1方向の中央部近傍にコイル210を設けた場合のインダクタンス値Lの測定結果であり、実験例2は、
図6(B)に示すように、
図6(A)に示す棒状コア200を2等分して得た第一の棒状コア202Aおよび棒状コア202Bのうち、第二の棒状コア202Bの中心軸D2方向の中央部近傍にコイル210を設けた場合とにおけるインダクタンス値Lの測定結果である。なお、
図6(B)において、2本の棒状コア202A、202Bは、各々の中心軸D1,D2が一致すると共に、ギャップ長さG>0mmとなるように、棒状コア202Aと棒状コア202Bとの間に若干の隙間を設けて直列に配置されている。表2に示す結果から明らかなように、1本の細く長い棒状コア200を2分割して、棒状コア全体としての長さを保ちつつ2本の太く短い棒状コア202A、202Bに置き換えることで、インダクタンス値Lの温度依存性を小さくできることが判る。