(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記他の特徴点との間の距離が長いことを示す第一度合に、前記指紋画像において特定された画像の鮮明さが不明な画素領域までの距離が長いことを示す第二度合を乗じた値に基づいて代表度を算出し、当該代表度に基づいて前記代表特徴点を判定する
請求項1に記載の指紋処理装置。
前記代表度の高い特徴を示す複数の前記代表特徴点を特定し、前記照合元の指紋画像におけるそれら複数の代表特徴点と、照合先の指紋画像における複数の代表特徴点とを用いて照合処理を行う
請求項2または請求項3に記載の指紋処理装置。
複数の前記代表特徴点から抽出した一つの抽出代表特徴点について、当該抽出代表特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を特定し、前記抽出代表特徴点に基づいて決定した近傍特徴点までの距離と、当該近傍特徴点から延びる指紋の隆線の前記代表延伸方向を基準とした延伸方向と、当該近傍特徴点の前記代表度とに基づいて決定される特徴量を付与し、前記代表特徴点それぞれに同様に付与した特徴量を用いて、前記照合元の指紋画像におけるそれら複数の代表特徴点と、照合先の指紋画像における複数の代表特徴点とによる指紋の照合処理を行う
請求項4に記載の指紋処理装置。
前記近傍特徴点は前記抽出代表特徴点についての前記代表延伸方向を基準として前記抽出代表特徴点を原点とした8象限の領域それぞれにおける当該抽出代表特徴点に近傍の特徴点である
請求項5に記載の指紋処理装置。
複数の前記代表特徴点から抽出した一つの抽出代表特徴点について、当該抽出代表特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を特定し、前記抽出代表特徴点に基づいて決定した近傍特徴点から延びる指紋の隆線の前記代表延伸方向を基準とした延伸方向と、前記代表延伸方向との一致度が高いことを示す当該近傍特徴点の画素値と、前記代表延伸方向との一致度が低いことを示す当該近傍特徴点の画素値とを示す隆線延伸方向判定画像を生成し、前記隆線延伸方向判定画像において対応する前記抽出代表特徴点の位置を基準とした所定位置の複数の画素値を示す特徴量を付与し、前記代表特徴点それぞれに同様に付与した特徴量を用いて、前記照合元の指紋画像におけるそれら複数の代表特徴点と、照合先の指紋画像における複数の代表特徴点とによる指紋の照合処理を行う
請求項4に記載の指紋処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の一実施形態による指紋処理装置を図面を参照して説明する。
図1は同実施形態による指紋処理装置を含む指紋照合システムを示す図である。
指紋照合システムは、
図1に示すように指紋処理装置1、指紋読取機2、データベース3を含んで構成されている。指紋処理装置1は指紋読取機2と通信ケーブルを介して接続されている。また指紋処理装置1はデータベース3と通信ケーブルを介して接続されている。指紋処理装置1は指紋読取機2から取得した指紋画像から得た指紋情報と、データベース3に格納されている指紋情報とを比較することにより指紋照合の処理を行う。データベース3には、予め多くの人の指紋画像から得られた指紋情報が記録される。
【0013】
図2は指紋処理装置のハードウェア構成図である。
指紋処理装置1は、CPU(Central Processing Unit)11,RAM(Random Access Memory)12、ROM(Read Only Memory)13、SSD(Solid State Drive)14、通信モジュール15、表示画面16、IF(Interface)17などを備えてよい。指紋処理装置1はこのような各機能を備えたコンピュータである。
【0014】
図3は指紋処理装置の機能ブロック図である。
指紋処理装置1はCPU11において指紋処理プログラムを実行する。これにより指紋処理装置1には、画像取得部21、鮮明度判定部22、隆線品質判定部23、特徴点検出部24、照合処理部25の機能を備える。また指紋処理装置1は記憶部15を備える。
【0015】
画像取得部21は指紋読取機2より指紋画像を取得する。
鮮明度判定部22は指紋画像中の各画素の指紋の鮮明度を判定して分類する。
隆線品質判定部23は指紋画像中の各画素に写る指紋の隆線の品質を判定する。
特徴点検出部24は指紋画像に映る指紋の特徴点を検出する。
照合処理部25は画像取得部21の取得した指紋画像から得た指紋情報と、データベース3に記録されている複数の人の指紋情報との比較による照合処理を行う。
【0016】
本実施形態において照合処理部25は、照合元の指紋画像において特定した指紋の特徴点のうち、他の特徴点との間の距離が長いことを示す第一度合に基づいて当該第一度合の値が大きい複数の特徴点を、指紋照合に用いる代表特徴点と判定する。
または照合処理部25は、照合元の指紋画像において特定した指紋の特徴点のうち、指紋画像において特定された画像の鮮明さが不明な画素領域までの距離が長いことを示す第二度合に基づいて当該第二度合の値が大きい複数の特徴点を、代表特徴点と判定する。
または照合処理部25は、他の特徴点との間の距離が長いことを示す第一度合と、指紋画像において特定された画像の鮮明さが不明な画素領域までの距離が長いことを示す第二度合とを用いて複数の代表特徴点を判定する。例えば、第一度合に第二度合を乗じ、この値に基づいて代表度を算出し、当該代表度に基づいて複数の代表特徴点を判定してよい。
【0017】
照合処理部25は指紋画像において特定した指紋の特徴点に対応する画素における隆線の安定度合をさらに用いて代表度を算出し、当該代表度に基づいて代表特徴点を判定してよい。
【0018】
そして照合処理部25は、代表度の高い特徴を示す複数の代表特徴点を特定し、照合元の指紋画像におけるそれら複数の代表特徴点と、データベース3に記録されている照合先の指紋画像における複数の代表特徴点とを用いて照合処理を行う。
【0019】
図4は指紋処理装置の処理フローを示す図である。
次に指紋処理装置の処理の詳細について順を追って説明する。
まず指紋処理装置1において画像取得部21が指紋読取機2から指紋画像を取得する(ステップS101)。画像取得部21は指紋画像を一時的にRAM12などに記録する。すると鮮明度判定部22は指紋画像をRAM12から読み取り、指紋画像中全体に渡って設定した各矩形領域の鮮明度を判定する(ステップS102)。各矩形領域は画素に対応する領域であってもよいし、画素とは別に設定した矩形の領域であってもよい。鮮明度判定部22は各矩形領域の鮮明度を判定すると、指紋画像中の矩形領域を特定するIDと鮮明度とをRAM12に記録する。鮮明度は例えば鮮明か不鮮明かを示す2値であってよい。鮮明度の判定方法はどのような方法であってもよい。例えば鮮明度判定部22は特開平10−177650号公報に記述されている品質指標抽出手段の行う処理と同様の処理により鮮明度を算出してよい。
【0020】
また隆線品質判定部23は指紋画像をRAM12から読み取り、指紋画像中の上記矩形領域のうち隆線が映る画素を特定し、その画素における隆線の安定度を判定する(ステップS103)。隆線の安定度とは隆線の幅の安定度合を意味する。隆線品質判定部23による隆線の安定度は、一例として設定した矩形領域における指紋隆線を示す黒色画像と指紋隆線間を示す白色画像の両方の分散値により示される。隆線品質判定部23は指紋隆線を示す黒色画像と指紋隆線間を示す白色画像の両方の分散値が閾値より高い矩形領域を、隆線の安定度が高い矩形領域と判定する。他方、隆線品質判定部23は指紋隆線を示す黒色画像または指紋隆線間を示す白色画像のいずれかの分散値が閾値以下の矩形領域を、隆線の安定度が低い矩形領域と判定する。隆線品質判定部23は、矩形領域のIDと、隆線の安定度が高いか低いかを示すフラグとを対応付けた情報をRAM12等に記録する。隆線の安定度のより詳細な算出は、例えば、特許第5822303号公報のステップS301〜ステップS305として記述されている技術等を利用してよい。
【0021】
特徴点検出部24は指紋画像をRAM12から読み取り、当該指紋画像に映る指紋の特徴点を検出する(ステップS104)。特徴点の検出は従来の検出手法を用いてよい。より具体的には特徴点検出部24は、2種類の特徴点を指紋画像から抽出する。
【0022】
図5は特徴点検出部が検出する特徴点を説明するための図である。
特徴点検出部24が対象とする第1の特徴点は、隆線の終点(端点)である。
図5(a)には、2本の隆線501、502に挟まれた第1特徴点P1が図示されている。特徴点検出部24は、
図5(a)に示す第1特徴点P1のような隆線の端点を、入力された指紋画像の第1特徴点P1として検出する。具体的には、特徴点検出部24は、指紋画像の全体を走査しながら第1特徴点P1を検出していく。
【0023】
特徴点検出部24が対象とする第2の特徴点は、隆線の分岐点である。
図5(b)には、隆線511が2本の隆線512、513に分岐する第2特徴点P2が図示されている。特徴点検出部24は、
図5(b)に示す第2特徴点P2のような隆線の分岐点を、入力された指紋画像の第2特徴点P2として検出する。
【0024】
次に、特徴点検出部24は、検出した各特徴点から延びる指紋の隆線の延伸方向を算出する。第1特徴点P1に関しては、
図5(a)に示すように、第1特徴点P1から隆線503が発生する方向(矢印504の方向)が、第1特徴点P1からの隆線の延伸方向と定義される。
【0025】
第2特徴点P2に関しては、
図5(b)に示すように、隆線511が第2特徴点P2にて2本の隆線512、513に分岐している場合、第2特徴点P2から2本の隆線の間(ベクトルの中間)を進行する方向(矢印514の方向)が、第2特徴点P2からの隆線の延伸方向と定義される。
【0026】
特徴点検出部24は、指紋画像において検出した特徴点の位置情報や当該特徴点から延びる隆線の延伸方向の情報(延伸方向情報)をRAM12に記録する。なお、検出された第1特徴点P1、第2特徴点P2に関する位置情報(座標)は、指紋画像内でのピクセル位置や矩形領域のIDの形式で記録されてよい。また、各特徴点を原点に設定したXY座標系におけるX軸と特徴点からの隆線の延伸方向との間の角度が、各特徴点からの隆線の延伸方向として記録されてよい。
【0027】
図6は指紋画像において判定された鮮明領域および不鮮明領域と特徴点とを示す図である。
この図が示す指紋画像における網掛け表示されている領域は、鮮明度が閾値未満の不鮮明領域E1を示している。また網掛け表示されていない領域は、鮮明度が閾値以上の鮮明領域E2を示している。このような指紋画像において、当該画像中の丸印や四角印で囲まれている局所点が特徴点を示している。特徴点のうち丸印で示す特徴点は第1特徴点P1を示す。特徴点のうち四角印で示す特徴点は第2特徴点P2を示す。丸印や四角印から出ている直線が各特徴点から延伸する隆線の延伸方向を示している。
【0028】
図7は指紋画像において判定された隆線の安定度を示す図である。
図7で示す指紋画像は、鮮明領域E2において隆線の安定度(品質)の高い白部分の領域と、隆線の安定度が閾値より低い黒部分の領域を示している。ステップS103の処理の結果、指紋処理装置1は、このような
図7で示す隆線の安定度の分布を示す画像を出力するようにしてもよい。
【0029】
照合処理部25は、特徴点検出部24の検出した各特徴点についての位置情報と延伸方向情報を用いて、各特徴点の代表度eval_pを算出する(ステップS105)。この代表度は、指紋画像において特定された特徴点のうち、他の特徴点から離れているほど値が大きい度数である。代表度eval_pは、指紋画像において特定された特徴点のうち、他の特徴点からの距離が長く、鮮明度が高いことを示す度数であってよい。
【0030】
図8は代表度算出フローを示す図である。
照合処理部25は、代表度eval_pの算出においては、まず、特徴点検出部24の検出した各特徴点についての位置情報と延伸方向情報をRAM12から取得する。照合処理部25は各特徴点の中から一つの選択特徴点を選択し、その選択特徴点と他の全ての特徴点の距離を算出する(ステップS1051)。照合処理部25は算出した複数の距離のうち最も値の小さい距離の情報を、選択特徴点の最近傍特徴点までの距離Lmp(第一度合)と決定する(ステップS1052)。
【0031】
照合処理部25は次に、選択特徴点の位置情報と不鮮明領域E1を示す全ての矩形領域の位置情報とを用いて、それらの距離を算出する(ステップS1053)。照合処理部25は算出したその距離のうち最も値の小さい距離の情報を、選択特徴点の最近傍の不鮮明領域E1を示す矩形領域までの距離ucz(第一度合)と決定する(ステップS1054)。また照合処理部25は選択特徴点に対応する画素の隆線の安定度mRqlの情報をRAM12から取得する。そして選択特徴点の代表度eval_pを式(1)により算出する(ステップS1055)。
【0033】
式(1)においてA,Bは定数を示している。また式(1)中の「/」は除算(÷)を意味する。定数Aは、選択特徴点の最近傍特徴点までの距離Lmpと、選択特徴点の最近傍の不鮮明領域E1を示す矩形領域までの距離uczとを乗じた値が大きくなりすぎないよう調整するための定数である。定数Bは選択特徴点に対応する画素の隆線の安定度mRqlの値を調整するための定数である。式(1)により、選択特徴点が、他の特徴点からの距離と鮮明度とが高いか否かの度数を示す代表度eval_pを算出することができる。なお、式(1)のように選択特徴点の最近傍の不鮮明領域E1を示す矩形領域までの距離uczを用いて代表度eval_pを算出することにより、不鮮明領域E1に他の特徴点が存在する場合を想定した代表度eval_pの算出を行うことができる。式(1)においては選択特徴点に対応する画素の隆線の安定度mRqlに関する情報を加えているが、この情報を加えない態様で、代表度eval_pが算出されてもよい。また式(1)においては選択特徴点の最近傍の不鮮明領域E1を示す矩形領域までの距離uczの情報を加えているが、この情報を加えない態様で、代表度eval_pが算出されてもよい。
【0034】
照合処理部25は指紋画像に現れる全ての特徴点について選択特徴点として代表度eval_pの算出処理を行ったかを判定する(ステップS106)。照合処理部25は指紋画像に現れる全ての特徴点について選択特徴点として代表度eval_pの算出処理が終わるまで代表度eval_pの算出を繰り返す。照合処理部25は、全ての特徴点について算出した代表度eval_pを大きい順に探索し、代表度eval_pの大きい複数の所定数の特徴点を、代表特徴点と特定する(ステップS107)。所定数は例えば20や30などの数であってよい。
【0035】
図9は特徴点と代表特徴点を視覚的に示す図である。
図9で示すように指紋画像には多くの特徴点が検出される。照合処理部25は各特徴点の代表度eval_pを算出し、大きい順に選択した所定の数の特徴点を、代表特徴点と判定する。
図9において特徴点を示す印を黒く表示している特徴点は代表度eval_pが高く、色の薄い印を示す特徴点は代表度eval_pが低いことを表している。
【0036】
図10は代表特徴点の特徴量の特定概要を示す第一の図である。
図11は代表特徴点の特徴量を付与する処理フローを示す第一の図である。
照合処理部25は次に複数の代表特徴点にそれぞれ特徴量を付与する(ステップS108)。具体的には照合処理部25は、複数の代表特徴点のうち1つの代表特徴点を選択する(ステップS108−1)。この選択した代表特徴点を選択代表特徴点と呼ぶ。照合処理部25は選択代表特徴点についての位置情報と延伸方向情報(代表延伸方向)とをRAM12から読み取る。また照合処理部25は指紋画像中の他の特徴点の位置情報と延伸方向情報とをRAM12から読み取る。照合処理部25は選択代表特徴点についての延伸方向情報(代表延伸方向)が示す延伸方向を垂直軸のプラス方向と仮定して、選択代表特徴点を中心とし延伸方向情報に基づく垂直軸を基準として指紋画像平面上の360度方向を45度角毎に分割した第一象限〜第八象限までの分割領域を特定する(ステップS1082)。
【0037】
今、照合処理部25は
図10において1番の符号が振られている代表特徴点を選択代表特徴点と設定しているものとする。この場合、
図10において1番の選択代表特徴点を原点として延伸方向情報が示す延伸方向に延びる軸を軸aと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸aから45度左に回転した軸を軸bと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸bから45度左に回転した軸を軸cと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸cから45度左に回転した軸を軸dと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸dから45度左に回転した軸を軸eと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸eから45度左に回転した軸を軸fと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸fから45度左に回転した軸を軸gと呼ぶ。1番の選択代表特徴点を中心に軸gから45度左に回転した軸を軸hと呼ぶ。
【0038】
照合処理部25は軸aと軸bとの間の第一象限において1番の選択代表特徴点から最も距離の近い9番の特徴点を特定する(ステップS1083)。また照合処理部25は軸bと軸cとの間の第二象限において1番の選択代表特徴点から最も距離の近い17番の特徴点を特定する。同様に照合処理部25は各軸で分割された第三象限〜第八象限において1番の選択代表特徴点から最も距離の近い特徴点を特定する。照合処理部25は、第一象限から第八象限において特定した各特徴点までの1番の選択代表特徴点からの距離と、第一象限から第八象限において特定した各特徴点についての延伸方向情報と、1番の選択代表特徴点について算出した代表度との全てを、1番の選択代表特徴点の特徴量を決定する(ステップS1084)。照合処理部25は全ての代表特徴点について特徴量を特定したかを判定する(ステップS1085)。照合処理部25は全ての代表特徴点について特徴量を特定していない場合には特徴量の特定の処理を繰り返す。
【0039】
照合処理部25は、全ての代表特徴点についての特徴量を特定すると、それら全ての代表特徴点についての特徴量から成る情報を、指紋読取機2から取得した指紋画像についての指紋特徴量と決定する(ステップS109)。指紋読取機2から取得した指紋画像を以下、認証指紋画像と呼ぶ。照合処理部25はデータベース3に記録されている1つ目の指紋画像の指紋特徴量を読み取る。データベース3に記録されている指紋画像を、以下探索先指紋画像と呼ぶ。探索先指紋画像の指紋特徴量は、認証指紋画像の指紋特徴量の算出と同様に算出された特徴量である。照合処理部25は、認証指紋画像の指紋特徴量と探索先指紋画像の指紋特徴量とを用いて類似度を計算する(ステップS110)。類似度の計算は照合処理の一態様である。
【0040】
図12は指紋特徴量に基づく類似度の計算概要を示す第一の図である。
図12に示すように、照合処理部25は認証指紋画像において特定した複数の代表特徴点それぞれについて、代表度と、第一象限〜第八象限において特定した最近傍特徴点までの距離と、当該最近傍特徴点から延びる隆線の延伸方向を示す延伸方向情報と、から成る指紋特徴量の情報をRAM12に記録している。データベース3に記録される複数の探索先指紋画像も同様の指紋特徴量の情報から構成される。
【0041】
照合処理部25は、認証指紋画像側の各代表特徴点と、探索先指紋画像の各代表特徴点との差分を総当たりで算出する。認証指紋画像側の1つの代表特徴点と探索先指紋画像の1つの代表特徴点との差分を計算する場合には、対応する同一象限について、最近傍特徴点までの距離の差と、延伸方向情報が示す方向の差のそれぞれに認証指紋画像側の代表度を乗じた上で加算した値を算出し、その値の八象限分の累積値を求める。この値が認証指紋画像側の1つの代表特徴点と探索先指紋画像の1つの代表特徴点との差分である。
【0042】
認証指紋画像において特定した代表特徴点を1〜n、探索先指紋画像において特定されている代表特徴点を1〜Nとすると、照合処理部25は認証指紋画像における1つの代表特徴点と探索先指紋画像における各代表特徴点との差分をそれぞれ算出する。
照合処理部25は認証指紋画像における1つの代表特徴点を代表特徴点1とすると、その認証指紋画像における代表特徴点1と、探索先指紋画像の代表特徴点1〜Nそれぞれとの差分S(11,12,…1N)を算出する。
照合処理部25は算出したそれらの差分Sのうち、最も差分Sの小さい探索先指紋画像の代表特徴点を特定する。この処理により照合処理部25は認証指紋画像において特定した1つの代表特徴点1に近い、探索指紋画像に含まれる代表特徴点を特定できる。
照合処理部25は、認証指紋画像における全ての代表特徴点(1〜n)について、探索先指紋画像中の差分Sの小さい代表特徴点を特定する。
照合処理部25は認証指紋画像における代表特徴点(1〜n)それぞれについて特定した探索先指紋画像中の代表特徴点との間の差分Sを小さい順にソートして、小さい順に一定数(2〜4)の値の平均を算出する。照合処理部25は、その平均値を定数から減算することで、認証指紋画像と探索先指紋画像との間の類似度を算出する。類似度の高い探索指紋画像の値は、定数からの減算の値が小さいため、その値は高くなる。
【0043】
照合処理部25は、データベース3に含まれる全ての探索先指紋画像を用いて、認証指紋画像との類似度を算出する。照合処理部25は類似度が基準閾値より高い探索先指紋画像を、認証指紋画像との間でより詳細に照合判定を行う照合候補と決定する(ステップS111)。照合処理部25は、認証指紋画像と照合候補と決定した探索先指紋画像との間の照合を、各指紋画像に含まれる特徴点を用いて行う(ステップS112)。当該照合の処理は特徴点を用いて照合判定を行う公知の技術を用いてよい。照合処理部25は、照合判定の結果、基準値よりも類似度の高い探索先指紋画像のうち、最も類似度の高い探索先指紋画像を認証指紋画像に一致する指紋画像と判定して出力する(ステップS113)。照合処理部25は、照合判定の結果、類似度の高い探索先指紋画像を検索できない場合には、一致無を示す情報を出力する(ステップS114)。
【0044】
上述の処理を簡略して説明すると、まず、照合処理部25は、複数の代表特徴点から抽出した一つの抽出代表特徴点について、当該抽出代表特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を特定する。また照合処理部25は、抽出代表特徴点に基づいて決定した近傍特徴点までの距離と、当該近傍特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を基準とした延伸方向と、当該近傍特徴点の代表度とに基づいて決定される特徴量を抽出代表特徴点に付与する。そして照合処理部25は、抽出代表特徴点それぞれに同様に付与した特徴量を用いて、照合元の指紋画像(認証指紋画像)におけるそれら複数の代表特徴点と、照合先の指紋画像(探索先指紋画像)における複数の代表特徴点とによる指紋の照合処理を行う。
【0045】
図13は代表特徴点の特徴量の特定概要を示す第二の図である。
図14は代表特徴点の特徴量の特定概要を示す第三の図である。
図15は代表特徴点の特徴量を付与する処理フローを示す第二の図である。
照合処理部25は、
図10〜
図12を用いて説明した処理以外の方法で、照合候補の探索先指紋画像を特定するようにしてもよい。
照合処理部25は複数の代表特徴点にそれぞれ特徴量を付与する(ステップS108)。具体的には照合処理部25は、複数の代表特徴点のうち1つの代表特徴点を選択する(ステップS108−11)。
図13においては符号1で示す代表特徴点を選択代表特徴点としている。この選択した代表特徴点を選択代表特徴点と呼ぶ。照合処理部25は選択代表特徴点についての位置情報と延伸方向情報とをRAM12から読み取る。照合処理部25は指紋画像中の他の特徴点(代表特徴点以外の特徴点も含む)の位置情報と延伸方向情報とをRAM12から読み取る。照合処理部25は選択代表特徴点についての延伸方向情報が示す延伸方向を垂直軸のプラス方向と仮定して、他の特徴点の延伸方向が垂直軸の延伸方向に逆向きとなる特徴点の近傍の画素を白色、他の特徴点の延伸方向が垂直軸の延伸方向に同一方向となる特徴点の近傍の画素を黒色とした隆線延伸方向判定画像(
図13)を生成する(ステップS108−12)。隆線延伸方向判定画像において黒色や白色と特定されていない画像については、近傍の他の画素の色(画素値)に基づいて、補間された色の値が算出されて、黒色から白色までの階調の値のうちの何れかの階調の画素値を有するようにしてもよい。
図13において選択代表特徴点1の隆線の延伸方向と同一方向の延伸方向となっている特徴点50についてはその周囲が黒色の画素となっていることが分かる。また
図13において選択代表特徴点1の隆線の延伸方向と逆方向の延伸方向となっている特徴点9や特徴点6についてはその周囲が白色の画素となっていることが分かる。
【0046】
照合処理部25は、選択代表特徴点1について生成した隆線延伸方向判定画像(
図13)において、選択代表特徴点1の位置を中心とした24点の特徴抽出点の画素値を抽出する(ステップS108−13)。
図14には選択代表特徴点1の位置を中心とした24点の特徴抽出点(1)〜(24)の位置を図示している。照合処理部25は、特徴抽出点(1)〜(24)の画素値を並べた値と、代表特徴点について算出した隆線の安定度とを示す情報を、選択代表特徴点1の指紋特徴量と決定する(ステップS108−14)。照合処理部25は全ての代表特徴点について指紋特徴量を算出したかを判定する(ステップS108−15)。照合処理部25は全ての代表特徴点について指紋特徴量を算出していない場合には他の代表特徴点について同様の手法により指紋特徴量を生成する。
【0047】
照合処理部25は、認証指紋画像において特定した全ての代表特徴点についての指紋特徴量を算出すると、それら全ての代表特徴点についての指紋特徴量から成る情報を、認証指紋画像についての指紋特徴量と決定する(ステップS109)。探索先指紋画像の指紋特徴量は、認証指紋画像の指紋特徴量の算出と同様に算出された特徴量である。認証指紋画像における代表特徴点の位置と特徴抽出点(1)〜(24)の位置との関係と、探索先指紋画像における代表特徴点の位置と特徴抽出点(1)〜(24)の位置との関係とは同じである。照合処理部25は、認証指紋画像の指紋特徴量と探索先指紋画像の指紋特徴量とを用いて類似度を計算する(ステップS110)。
【0048】
図16は指紋特徴量に基づく類似度の計算概要を示す第二の図である。
この図が示すように認証指紋画像の指紋特徴量には、多くの特徴点の中から特定した複数の代表特徴点に対応する画素(又は矩形領域)における隆線の安定度(隆線品質)と、その代表特徴点を基準とした周囲の特徴抽出点(1)〜(24)の画素値が含まれる。データベース3に記録される複数の探索先指紋画像も同様の指紋特徴量の情報から構成される。
【0049】
照合処理部25は、認証指紋画像側の各代表特徴点と、探索先指紋画像の各代表特徴点との差分を総当たりで算出する。認証指紋画像側の1つの代表特徴点と探索先指紋画像の1つの代表特徴点との差分Sを計算する場合には、対応する特徴抽出点の画素値の差に、認証指紋画像の隆線の安定度を乗じた値を、24の特徴抽出点それぞれについて算出し累積する。この値が認証指紋画像側の1つの代表特徴点と探索先指紋画像の1つの代表特徴点との差分Sである。
【0050】
認証指紋画像において特定した代表特徴点を1〜n、探索先指紋画像において特定されている代表特徴点を1〜Nとすると、照合処理部25は認証指紋画像における1つの代表特徴点と探索先指紋画像における各代表特徴点との差分Sをそれぞれ算出する。
照合処理部25は認証指紋画像における1つの代表特徴点を代表特徴点1とすると、その認証指紋画像における代表特徴点1と、探索先指紋画像の代表特徴点1〜Nそれぞれとの差分S(11,12,…1N)を算出する。
照合処理部25は算出したそれらの差分Sのうち、最も差分Sの小さい探索先指紋画像の代表特徴点を特定する。この処理により照合処理部25は認証指紋画像において特定した1つの代表特徴点1に近い、探索指紋画像に含まれる代表特徴点を特定できる。
照合処理部25は、認証指紋画像における全ての代表特徴点(1〜n)について、探索先指紋画像中の差分Sの小さい代表特徴点を特定する。
照合処理部25は認証指紋画像における代表特徴点(1〜n)それぞれについて特定した探索先指紋画像中の代表特徴点との間の差分Sを小さい順にソートして、小さい順に一定数(2〜4)の値の平均を算出する。照合処理部25は、その平均値を定数から減算することで、認証指紋画像と探索先指紋画像との間の類似度を算出する。類似度の高い探索指紋画像の値は、定数からの減算の値が小さいため、その値は高くなる。
【0051】
照合処理部25は、データベース3に含まれる全ての探索先指紋画像を用いて、認証指紋画像との類似度を算出する。照合処理部25は類似度が基準閾値より高い探索先指紋画像を、認証指紋画像との間でより詳細に照合判定を行う照合候補と決定する(ステップS111)。照合処理部25は、認証指紋画像と照合候補と決定した探索先指紋画像との間の照合を、各指紋画像に含まれる特徴点を用いて行う。当該照合の処理は特徴点を用いて照合判定を行う公知の技術を用いてよい。照合処理部25は、照合判定の結果、最も類似度の高い探索先指紋画像を認証指紋画像に一致する指紋画像と判定する(ステップS112)。照合処理部25は、照合判定の結果、類似度の高い探索先指紋画像を検索できない場合には、一致無を示す情報を出力する(ステップS113)。
【0052】
上述の処理を簡略して説明すると、まず、照合処理部25は、複数の前記代表特徴点から抽出した一つの抽出代表特徴点について、当該抽出代表特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を特定する。次に照合処理部25は、抽出代表特徴点に基づいて決定した近傍特徴点から延びる指紋の隆線の代表延伸方向を基準とした延伸方向と、代表延伸方向との一致度が高いことを示す当該近傍特徴点の画素値と、代表延伸方向との一致度が低いことを示す当該近傍特徴点の画素値とを示す隆線延伸方向判定画像を生成する。そして照合処理部25は、隆線延伸方向判定画像において対応する抽出代表特徴点の位置を基準とした所定位置の複数の画素値を示す特徴量を代表特徴点に付与する。照合処理部25は、代表特徴点それぞれに同様に付与した特徴量を用いて、照合元の指紋画像におけるそれら複数の代表特徴点と、照合先の指紋画像における複数の代表特徴点とによる指紋の照合処理を行う。
【0053】
以上本発明の実施形態について説明したが、上述の処理によれば、指紋の中心を特定することなく照合処理を行っているため、指紋の中心の特定精度を必要とせずに、照合処理を行うことができる。
また上述の照合候補の探索先指紋画像を決定する処理において簡易な四則演算とソート処理を利用し、また算出に用いる特徴点を代表特徴点や特徴抽出点などの少ない特徴点に限定している。これにより照合候補を決定する処理を軽減することができる。
また照合処理においても照合候補として特定した探索先指紋画像のみを用いて認証指紋画像との照合処理を行うため、処理を軽減することができる。
【0054】
上述の説明において指紋処理装置1は、
図10〜
図12を用いて説明した類似度の計算と、
図13〜
図16を用いて説明した類似度の計算との何れかを行うものとして説明したが、両方の類似度の計算を行って、それぞれ類似度の高い照合候補を特定してもよい。
【0055】
図17は指紋処理装置の最少構成を示す図である。
この図で示すように指紋処理装置1は少なくとも、照合元の指紋画像において特定した指紋の特徴点のうち、他の特徴点との間の距離が長いことを示す第一度合に基づいて当該第一度合の値が大きい複数の特徴点を、指紋照合に用いる代表特徴点と判定する照合処理部25を有している。
なお本実施形態による指紋処理装置1は、少なくとも上記の照合処理部25の機能を備えた照合処理回路であると定義されてもよい。
【0056】
上述の指紋処理装置1は内部に、コンピュータシステムを有している。そして、指紋処理装置1に上述した各処理を行わせるためのプログラムは、当該〜装置のコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記憶されており、このプログラムを〜装置のコンピュータが読み出して実行することによって、上記処理が行われる。ここでコンピュータ読み取り可能な記録媒体とは、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、DVD−ROM、半導体メモリ等をいう。また、このコンピュータプログラムを通信回線によってコンピュータに配信し、この配信を受けたコンピュータが当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0057】
また、上記プログラムは、前述した各処理部の機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。