特許第6794772号(P6794772)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794772
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20201119BHJP
【FI】
   H02M7/48 F
   H02M7/48 R
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-207970(P2016-207970)
(22)【出願日】2016年10月24日
(65)【公開番号】特開2018-74630(P2018-74630A)
(43)【公開日】2018年5月10日
【審査請求日】2019年9月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005234
【氏名又は名称】富士電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104433
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 博一
(72)【発明者】
【氏名】坂本 巧
(72)【発明者】
【氏名】居林 尚志
【審査官】 栗栖 正和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−272140(JP,A)
【文献】 特開平08−032630(JP,A)
【文献】 特開2006−014447(JP,A)
【文献】 特開平07−337037(JP,A)
【文献】 特開2015−033163(JP,A)
【文献】 特開平08−322266(JP,A)
【文献】 特開2011−142705(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直流を交流に変換する電力変換部と、
前記電力変換部から出力される交流電圧に基づいて、前記電力変換部に対してフィードバック制御を行う制御部と、を備え、
前記制御部は、前記電力変換部を駆動するためのPWM信号を出力するPWM変換部を含み、
前記制御部は、前記PWM信号がオンの期間の長さに対応させてカウント値を増加させ、前記PWM信号がオフの期間の長さに対応させて前記カウント値を減少させるとともに、前記カウント値の合計値を直流成分に相当する値に換算することによって、交流電圧に前記直流成分が重畳されるのを抑制するように、前記PWM変換部から出力される前記PWM信号を補正するように構成されている、電力変換装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記PWM信号がオンの期間の長さに対応させて前記カウント値を増加させ、前記PWM信号がオフの期間の長さに対応させて前記カウント値を減少させるカウント部をさらに含み、前記カウント部によりカウントされた前記カウント値に基づいて、前記直流成分が重畳されるのを抑制するように、前記PWM変換部から出力される前記PWM信号を補正するように構成されている、請求項1に記載の電力変換装置。
【請求項3】
前記カウント部は、前記PWM信号を生成するための変調波の1周期の間において、前記カウント値の合計値を算出し、
前記制御部は、前記カウント部によりカウントされた、前記カウント値の合計値に基づいて、前記直流成分が重畳されるのを抑制するように、前記PWM変換部から出力される前記PWM信号を補正するように構成されている、請求項2に記載の電力変換装置。
【請求項4】
前記カウント部は、前記変調波の1周期毎に、前記カウント値の合計値を更新するように構成されている、請求項3に記載の電力変換装置。
【請求項5】
前記制御部は、前記変調波、および、前記PWM信号を生成するための搬送波のうちの少なくともいずれか一方を、前記カウント値の合計値から換算された前記直流成分に相当するだけシフトさせることにより、前記直流成分が重畳されるのを抑制するように、前記PWM変換部から出力される前記PWM信号を補正するように構成されている、請求項3または4に記載の電力変換装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記カウント値の合計値と前記直流成分に相当する値との対応関係を示す予め作成されたマップに基づいて、交流電圧に前記直流成分が重畳されるのを抑制するように、前記PWM変換部から出力される前記PWM信号を補正するように構成されている、請求項1〜5のいずれか1項に記載の電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、電力変換装置に関し、特に、PWM変換部を備える電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、PWM変換部を備える電力変換装置が知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
上記特許文献1に記載の電力変換装置は、電力変換部(インバータ主回路)と、電力変換部から出力される電流を検出する電流検出器と、電力変換部から出力される交流電圧を所望の値にするためのPWM演算を行うPWM変換部(PWM制御回路)とを備える。また、上記電力変換装置には、電力変換部からの出力に重畳された直流成分を検出(抽出)するために、ローパスフィルタが設けられている。そして、電力変換部からの出力に直流成分が重畳していると、ローパスフィルタの出力にこの直流成分が現れる。このローパスフィルタの出力に現れた直流成分と、指令生成手段から指令される補正分指令値とに基づいて算出された値と、指令生成手段から指令される電圧指令値とを加算した値を、PWM変換部への入力値とすることにより、電力変換部からの出力に重畳された直流成分を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−130639号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の電力変換装置では、電力変換部(インバータ主回路)からの出力に重畳された直流成分を抑制するために、ローパスフィルタ等の直流成分を検出(抽出)するための回路等が別途必要となるため、部品点数が増加するという問題点がある。
【0006】
この発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、この発明の1つの目的は、電力変換部からの出力に直流成分が重畳されるのを抑制しながら、部品点数の増加を抑制することが可能な電力変換装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明の一の局面による電力変換装置は、直流を交流に変換する電力変換部と、電力変換部から出力される交流電圧に基づいて、電力変換部に対してフィードバック制御を行う制御部と、を備え、制御部は、電力変換部を駆動するためのPWM信号を出力するPWM変換部を含み、制御部は、PWM信号がオンの期間の長さに対応させてカウント値を増加させ、PWM信号がオフの期間の長さに対応させてカウント値を減少させるとともに、カウント値の合計値を直流成分に相当する値に換算することによって、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部から出力されるPWM信号を補正するように構成されている。
【0008】
ここで、交流電圧に直流成分が重畳された場合には、PWM信号を生成するための変調波が重畳された直流成分の分だけ正側(または、負側)にシフトする。このため、PWM信号のオン期間の長さおよびオフ期間の長さは、重畳された直流成分の大きさを反映している。そこで、この発明の一の局面による電力変換装置では、上記のように、PWM変換部から出力されるPWM信号のオンの期間の長さとオフの期間の長さとに基づいて、PWM変換部から出力されるPWM信号を補正することによって、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制することができる。すなわち、ローパスフィルタ等の直流成分を検出(抽出)するための回路等を別途設けることなく、交流電圧に重畳された直流成分を抑制することができる。その結果、電力変換部からの出力に直流成分が重畳されるのを抑制しながら、回路構成部品の部品点数の増加を抑制することができる。
また、カウント値の合計値が直流成分の大きさに反映されるので、PWM信号の補正を適切に行うことができる。
【0009】
上記一の局面による電力変換装置において、好ましくは、制御部は、PWM信号がオンの期間の長さに対応させてカウント値を増加させ、PWM信号がオフの期間の長さに対応させてカウント値を減少させるカウント部をさらに含み、カウント部によりカウントされたカウント値に基づいて、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部から出力されるPWM信号を補正するように構成されている。このように構成すれば、カウント値に基づいて、PWM信号のオン期間およびオフ期間の長さを容易に検出することができる。これにより、PWM信号のオン期間およびオフ期間の長さに基づいたPWM信号の補正を容易に行うことができる。
【0010】
この場合、好ましくは、カウント部は、PWM信号を生成するための変調波の1周期の間において、カウント値の合計値を算出し、制御部は、カウント部によりカウントされた、カウント値の合計値に基づいて、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部から出力されるPWM信号を補正するように構成されている。ここで、直流成分が重畳されていない場合、変調波の1周期の間のカウント値の合計値はゼロになる。したがって、変調波の1周期の間のカウント値の合計値を算出することによって、重畳された直流成分の大きさを検出することができる。
【0011】
上記1周期のカウント値の合計値を算出する電力変換装置において、好ましくは、カウント部は、変調波の1周期毎に、カウント値の合計値を更新するように構成されている。このように構成すれば、カウント値の合計値は、1周期毎のカウント開始時にはゼロに戻されるので、前回の周期におけるカウント値が今回の周期におけるカウント値に反映されることはない。これにより、1周期毎にPWM信号の補正を正確に行うことができる。
【0012】
制御部は、カウント値の合計値と直流成分に相当する値との対応関係を示す予め作成されたマップに基づいて、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部から出力されるPWM信号を補正するように構成されている。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、上記のように、電力変換部からの出力に直流成分が重畳されるのを抑制しながら、部品点数の増加を抑制することが可能な電力変換装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態による電力変換装置の構成を示した図である。
図2】本発明の一実施形態による電力変換装置の制御回路の構成を示した図である。
図3】本発明の一実施形態による電力変換装置のPWM変換部の制御を説明するための図である。
図4】本発明の一実施形態による電力変換装置のパルス補正器の構成を示した図である。
図5】本発明の一実施形態による電力変換装置のパルス補正器の制御を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。
【0017】
[実施形態]
図1図5を参照して、本実施形態による電力変換装置100の構成について説明する。
【0018】
(電力変換装置の構成)
図1に示すように、電力変換装置100は、直流を交流に変換するブリッジ回路1を備える。また、電力変換装置100には、ブリッジ回路1に接続されている直流電圧源2が設けられている。ブリッジ回路1は、直流電圧源2の直流電圧を交流電圧に変換して出力する。ブリッジ回路1は、IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor)またはMOSFET(Metal−Oxide−Semiconductor Field−Effect Transistor)などで構成されている。なお、ブリッジ回路1は、特許請求の範囲の「電力変換部」の一例である。
【0019】
電力変換装置100には、出力変圧器3が設けられている。出力変圧器3は、ブリッジ回路1からの交流電圧の高調波を減衰させることによって、50Hzまたは60Hzの商用周波数帯の交流成分を抽出する。また、出力変圧器3の2次側(出力側)には、キャパシタ101が設けられている。
【0020】
出力変圧器3から出力された交流電圧は、制御回路4に入力される。制御回路4は、ブリッジ回路1(出力変圧器3)から出力される交流電圧に基づいて、ブリッジ回路1に対してフィードバック制御を行う。なお、出力変圧器3と制御回路4との間には、回路間の絶縁および降圧のためのトランス102が設けられている。なお、制御回路4は、特許請求の範囲の「制御部」の一例である。
【0021】
図2に示すように、制御回路4には、検出回路40と、補償器41と、PWM変換部42と、パルス補正器43とが設けられている。
【0022】
そして、出力変圧器3(図1参照)から制御回路4に入力された交流電圧は、検出回路40に入力される。検出回路40は、出力変圧器3からの交流電圧の電圧レベルを低いレベルにシフトさせる。なお、検出回路40において降圧が行われること等に起因して、出力変圧器3からの交流電圧に直流成分(図3のA参照)が重畳される。なお、検出回路40により降圧された交流電圧は、図示しないA/Dコンバータによりデジタル値に変換される。
【0023】
また、検出回路40および図示しないA/Dコンバータにより変換された電圧信号は、補償器41に入力される。また、補償器41には、電圧信号の目標値が入力されている。補償器41では、電圧信号の実測値(検出回路40および図示しないA/Dコンバータからの信号)と目標値との比較が行われ、この比較結果に基づき実測値が目標値に近づくように制御(補償制御)される。なお、補償器41による補償制御は、制御回路4内でソフト的に実行されている。
【0024】
補償器41により補償制御された電圧信号である変調波V(図3参照)は、PWM変換部42に入力される。
【0025】
図3に示すように、PWM変換部42(図2参照)では、補償器41(図2参照)からの変調波Vと、PWM変換部42において生成された搬送波C(図3では、三角波)とに基づいて、ブリッジ回路1(図1参照)を駆動するための矩形波状のPWM信号Pが生成される。具体的には、変調波Vが搬送波Cよりも大きい場合はPWM信号Pがオン状態になり、変調波Vが搬送波Cよりも小さい場合はPWM信号Pがオフ状態になる。
【0026】
ここで、本実施形態では、制御回路4は、PWM変換部42(図2参照)から出力されるPWM信号Pのオンの期間の長さとオフの期間の長さとに基づいて、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように構成されている。具体的には、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pは、制御回路4内に設けられているパルス補正器43(図2参照)に入力される。パルス補正器43は、PWM信号Pのオン期間の長さおよびオフ期間の長さに基づいて、交流電圧に重畳された直流成分を検出する。制御回路4は、パルス補正器43により検出された直流成分に基づいてPWM信号Pを補正する。パルス補正器43の構成については、後に詳細に記載する。
【0027】
そして、補正されたPWM信号Pがブリッジ回路1(図1参照)に入力されることによって、ブリッジ回路1から出力される交流電圧に直流成分が重畳されるのが抑制される。これにより、出力変圧器3等の過剰な発熱を抑制することが可能である。
【0028】
(パルス補正器の構成)
図4に示すように、パルス補正器43は、PWM変換部42(図2参照)からのPWM信号Pを受信するパルスカウンタ43aを含む。また、パルス補正器43は、パルスカウンタ43aからの検出値に基づいて、交流電圧に重畳された直流成分を換算する換算部43bを含む。なお、パルスカウンタ43aは、特許請求の範囲の「カウント部」の一例である。
【0029】
ここで、本実施形態では、図5に示すように、パルスカウンタ43a(図4参照)は、PWM信号Pがオンの期間の長さに対応させてカウント値を増加させ、PWM信号Pがオフの期間の長さに対応させてカウント値を減少させるように構成されている。具体的には、パルスカウンタ43aは、所定の単位時間(たとえば、1クロック)毎に、PWM信号Pがオンかオフかを判定する。パルスカウンタ43aは、PWM信号Pがオンであると判定した場合には、カウント値を1だけ増加させる。すなわち、パルスカウンタ43aは、PWM信号Pがオンの期間の長さを所定の単位時間で割った値だけ、カウント値を増加させる。
【0030】
また、パルスカウンタ43a(図4参照)は、PWM信号Pがオフであると判定した場合には、カウント値を1だけ減少させる。すなわち、パルスカウンタ43aは、PWM信号Pがオフの期間の長さを所定の単位時間で割った値だけ、カウント値を減少させる。
【0031】
また、本実施形態では、パルスカウンタ43a(図4参照)は、PWM信号Pを生成するための変調波Vの1周期(図3参照)の間において、カウント値の合計値を算出する。ここで、直流成分が略ゼロの場合は、カウント値の合計値はゼロになる。また、直流成分が正の値である場合には、変調波Vが直流成分の分だけ正の方向にシフトする(図3のA参照)ので、変調波Vが搬送波Cよりも大きくなる期間の長さ(PWM信号Pがオンする期間の長さ)が大きくなる。すなわち、重畳された直流成分が大きいほど、1周期の間におけるカウント値の合計値は大きくなる。
【0032】
また、パルスカウンタ43aにより算出された1周期分のカウント値の合計値は、換算部43bに保持(記憶)される。そして、次の1周期において、換算部43bに保持されているカウント値の合計値に基づいた補正が行われる。すなわち、換算部43bに保持されているカウント値の合計値は、常に、現在の周期の1周期前の変調波Vに基づいて得られたカウント値の合計値である。
【0033】
また、本実施形態では、パルスカウンタ43aは、変調波Vの1周期毎に、カウント値の合計値を更新するように構成されている。具体的には、1周期毎のカウント開始時には、カウント値の合計値はゼロに戻されている。
【0034】
また、本実施形態では、制御回路4は、カウント値の合計値を直流成分に換算するように構成されている。具体的には、換算部43bにおいて、変調波Vに対する直流成分が、カウント値の合計値に基づいて換算される。たとえば、予め作成された、カウント値の合計値に対応する直流成分のマップを用いることによって換算してもよい。具体的には、カウント値の合計値が大きいほど、対応する直流成分の値が大きくなるようなマップを用いる。
【0035】
また、本実施形態では、制御回路4は、搬送波Cを、カウント値の合計値から換算された直流成分に相当する量だけシフトさせることにより、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように構成されている。具体的には、PWM変換部42は、搬送波Cが直流成分に相当する値(図3のA)だけ正の方向にシフトされた状態でPWM信号Pを生成する。これにより、直流成分が重畳されていない状態の変調波Vに基づいて、PWM信号Pを生成することが可能である。
【0036】
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
【0037】
本実施形態では、上記のように、電力変換装置100は、直流を交流に変換するブリッジ回路1と、ブリッジ回路1から出力される交流電圧に基づいて、ブリッジ回路1に対してフィードバック制御を行う制御回路4と、を備える。そして、制御回路4が、ブリッジ回路1を駆動するためのPWM信号Pを出力するPWM変換部42を含み、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pのオンの期間の長さとオフの期間の長さとに基づいて、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように、電力変換装置100を構成する。ここで、交流電圧に直流成分が重畳された場合には、PWM信号Pを生成するための変調波Vが重畳された直流成分の分だけ正側(または、負側)にシフトする。このため、PWM信号Pのオン期間の長さおよびオフ期間の長さは、重畳された直流成分の大きさを反映している。そこで、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pのオンの期間の長さとオフの期間の長さとに基づいて、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正することによって、交流電圧に直流成分が重畳されるのを抑制することができる。すなわち、ローパスフィルタ等の直流成分を検出(抽出)するための回路等を別途設けることなく、交流電圧に重畳された直流成分を抑制することができる。その結果、ブリッジ回路1からの出力に直流成分が重畳されるのを抑制しながら、回路構成部品の部品点数の増加を抑制することができる。
【0038】
また、本実施形態では、上記のように、制御回路4が、PWM信号Pがオンの期間の長さに対応させてカウント値を増加させ、PWM信号Pがオフの期間の長さに対応させてカウント値を減少させるパルスカウンタ43aをさらに含む。そして、パルスカウンタ43aによりカウントされたカウント値に基づいて、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように、電力変換装置100を構成する。これにより、カウント値に基づいて、PWM信号Pのオン期間およびオフ期間の長さを容易に検出することができる。これにより、PWM信号Pのオン期間およびオフ期間の長さに基づいたPWM信号Pの補正を容易に行うことができる。
【0039】
また、本実施形態では、上記のように、パルスカウンタ43aが、PWM信号Pを生成するための変調波Vの1周期の間において、カウント値の合計値を算出し、制御回路4が、パルスカウンタ43aによりカウントされた、カウント値の合計値に基づいて、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように、電力変換装置100を構成する。ここで、直流成分が重畳されていない場合、変調波Vの1周期の間のカウント値の合計値はゼロになる。したがって、変調波Vの1周期の間のカウント値の合計値を算出することによって、重畳された直流成分の大きさを検出することができる。
【0040】
また、本実施形態では、上記のように、パルスカウンタ43aが、変調波Vの1周期毎に、カウント値の合計値を更新するように、電力変換装置100を構成する。これにより、カウント値の合計値は、1周期毎のカウント開始時にはゼロに戻されるので、前回の周期におけるカウント値が今回の周期におけるカウント値に反映されることはない。これにより、1周期毎にPWM信号Pの補正を正確に行うことができる。
【0041】
また、本実施形態では、上記のように、制御回路4が、カウント値の合計値を直流成分に換算することによって、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように、電力変換装置100を構成する。これにより、カウント値の合計値が直流成分の大きさに反映されるので、PWM信号Pの補正を適切に行うことができる。
【0042】
また、本実施形態では、上記のように、制御回路4が、PWM信号Pを生成するための搬送波Cを、カウント値の合計値から換算された直流成分に相当する量だけシフトさせることにより、直流成分が重畳されるのを抑制するように、PWM変換部42から出力されるPWM信号Pを補正するように構成されている。これにより、搬送波Cをシフトさせるだけで、直流成分の重畳の影響を容易にキャンセルすることができる。
【0043】
[変形例]
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
【0044】
たとえば、上記実施形態では、補償器41による補償制御が、制御回路4内でソフト的に実行されている例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、補償器41が回路として制御回路4内に存在している構成であってもよい。
【0045】
また、上記実施形態では、パルスカウンタ43aが、変調波Vの1周期の間のカウント値の合計値を算出する構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、パルスカウンタ43aが、変調波Vの複数周期の間のカウント値の平均値を算出する構成であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、交流電圧に重畳された直流成分が正の値である例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、直流成分が負の値であってもよい。
【0047】
また、上記実施形態では、搬送波Cを正の方向にシフトさせることによって、PWM信号Pを補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、変調波Vを直流成分に相当する値だけ負の方向にシフトすることによって、PWM信号Pを補正してもよい。また、搬送波Cを正の方向にシフトさせるとともに変調波Vを負の方向にシフトさせてもよい。この場合のシフト量は、搬送波Cまたは変調波Vのいずれか一方をシフトさせる場合のシフト量の半分である。
【0048】
また、上記実施形態では、カウント値に基づいてPWM信号Pを補正する例を示したが、本発明はこれに限られない。たとえば、PWM信号Pのオンの期間の長さおよびオフの期間の長さを直接的に計測し、この計測値に基づいてPWM信号Pを補正してもよい。
【符号の説明】
【0049】
1 ブリッジ回路(電力変換部)
4 制御回路(制御部)
42 PWM変換部
43a パルスカウンタ(カウント部)
100 電力変換装置
C 搬送波
P PWM信号
V 変調波
図1
図2
図3
図4
図5