(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助シートの曲げ弾性率及び前記保護シートの曲げ弾性率は、それぞれ、0.40〜0.65GPaである請求項1乃至6のいずれかに記載のタイヤの接地状態測定装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上のような実状に鑑み案出されたもので、圧力センサーシートと保護シートとの間に摩擦低減用の補助シートを設けることを基本として、測定作業を効率化し得るタイヤの接地状態測定装置を提供することを主たる目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、タイヤの接地状態を測定するための装置であって、タイヤを接地させるための表面を有する基体と、前記基体の前記表面上に配されかつ複数の圧力測定点を有する圧力センサーシートと、前記圧力センサーシートの表面を覆う保護シートとを含み、前記圧力センサーシートと前記保護シートとの間に、摩擦低減用の補助シートが配されていることを特徴とするタイヤの接地状態測定装置である。
【0007】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートは、一定厚さを有するのが望ましい。
【0008】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートは、フッ素樹脂を含むのが望ましい。
【0009】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートと前記圧力センサーシートとの間の摩擦係数が0.1以下であるのが望ましい。
【0010】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートの厚さは0.05〜0.40mmであり、前記補助シートと前記保護シートとの合計厚さは、0.10〜0.80mmであるのが望ましい。
【0011】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートの曲げ弾性率は、前記保護シートの曲げ弾性率よりも小さいのが望ましい。
【0012】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記補助シートの曲げ弾性率及び前記保護シートの曲げ弾性率は、それぞれ、0.40〜0.65GPaであるのが望ましい。
【0013】
本発明のタイヤの接地状態測定装置において、前記保護シートは、前記補助シートと接触する第1面と、前記第1面の反対側で前記タイヤと接触する第2面とを有し、前記第2面の表面粗さは、前記第1面の表面粗さよりも大きいのが望ましい。
【0014】
本発明のタイヤの接地状態測定装置は、前記タイヤを前記基体に対して第1方向に相対移動させるためのタイヤ保持具と、前記保護シートに前記第1方向の直角方向の張力を付与するための張力付加装置とをさらに含むのが望ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明のタイヤの接地状態測定装置は、タイヤを接地させるための表面を有する基体と、基体の表面上に配されかつ複数の圧力測定点を有する圧力センサーシートと、圧力センサーシートの表面を覆う保護シートとを含み、圧力センサーシートと保護シートとの間に、摩擦低減用の補助シートが配されている。
【0016】
このような補助シートは、液状の潤滑剤のように頻繁に注入する必要がなく、圧力センサーシートと保護シートとの間の低摩擦状態を長時間に亘って維持することができる。従って、本発明のタイヤの接地状態測定装置によれば、タイヤの接地状態の測定作業を効率化することができる。また、補助シートは、圧力センサーシートと保護シートとの滑り易さを一定に維持し、ひいては測定結果のばらつきを小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の一形態が、図面に基づき説明される。
図1には、本実施形態のタイヤの接地状態測定装置(以下、単に「測定装置」という場合がある。)1の側面図が示されている。
図1に示されるように、測定装置1は、タイヤTを基体3上で走行させることにより、タイヤTの接地面形状や接地圧の大きさ等を測定することができる。本実施形態の測定装置1は、例えば、架台2と、架台2上に設けられた基体3と、タイヤTを基体3に対して第1方向X(タイヤの進行方向である。)に相対移動させるためのタイヤ保持具4とを具えている。
【0019】
図2には、
図1の測定装置1のA−A線断面図が示されている。
図2に示されるように、架台2は、例えば、基体3を移動させる移動装置5と、タイヤ保持具4を支持する支持フレーム7とを有している。
【0020】
移動装置5は、例えば、床面に固定された架台2の本体フレーム6の上部に設けられている。移動装置5は、例えば、案内レール10及び基体移動手段11を含んでいる。
【0021】
案内レール10は、例えば、架台2の両側に一対設けられている。各案内レール10は、例えば、上向きに凸となる凸部18を有し、第1方向に沿って直線状のびている。一対の案内レール10、10上には、基体3が載せられている。
【0022】
基体移動手段11は、例えば、案内レール10上の基体3を第1方向に移動させることができる。本実施形態では、基体移動手段11として、ネジ棒12a、及び、ネジ棒12aに螺合したボールナット12bを含む送りネジ機構が採用されている。但し、基体移動手段11は、このような態様に限定されるものではなく、巻掛伝導機構等、種々の構成が採用され得る。
【0023】
支持フレーム7は、例えば、本体フレーム6の側方に設けられ、タイヤ保持具4を支持している。支持フレーム7は、例えば、端部から上方にのびる壁部14を有している。
【0024】
本実施形態のタイヤ保持具4は、例えば、タイヤTの回転軸が第1方向の直角方向である第2方向となるようにタイヤTを保持することができる。タイヤ保持具4は、例えば、支持フレーム7の壁部14に支持される本体部16と、本体部16からのびる揺動アーム17とを有している。揺動アーム17の先端部には、タイヤTを装着するためのリムが回転自在に枢支されている。
【0025】
本実施形態では、本体部16は、例えば、第1駆動機21により、壁部14に沿って上下に移動することができる。基体3上にタイヤTが載せられた状態で、第1駆動機21によって本体部16が下方に移動することにより、タイヤTが下向きに付勢される。即ち、本実施形態では、タイヤTを基体3の表面に押圧することができる。
【0026】
さらに望ましい態様として、揺動アーム17と本体部16との間には、例えば、第2駆動機22及び第3駆動機23が掛け渡されている。第2駆動機22は、例えば、本体部16と揺動アーム17との間の角度を調整することができ、タイヤTにキャンバー角を付与することができる。第3駆動機23は、例えば、第1方向に対するタイヤ回転軸の角度を調整することができ、タイヤTにスリップ角を付与することができる。第2駆動機22及び第3駆動機23として、それぞれ駆動シリンダが用いられているが、このような態様に限定されるものではない。このような第2駆動機22及び第3駆動機23が設けられることにより、様々な条件で、タイヤの接地状態を測定することができる。
【0027】
基体3の下部には、例えば、一対の係合フレーム20が設けられている。係合フレーム20は、基体3の第2方向の両側に設けられている。係合フレーム20は、例えば、溝状の凹部19を有し、案内レール10の凸部18にスライド可能に嵌まっている。これにより、基体3は、第1方向に移動可能に支持されている。本実施形態では、基体3が第1方向に移動することにより、タイヤTが基体3に対して相対移動する。但し、このような態様に限定されるものではなく、基体3が固定されかつタイヤTが基体3上で転動する態様でも良い。
【0028】
図3(a)には、基体3の平面図が示されている。
図3(a)において、タイヤ保持具4は省略されている。
図3(b)には、
図3(a)のB−B線断面図が示されている。
図3(a)及び(b)に示されるように、基体3は、タイヤTを接地させるための表面を有している。基体3の表面は、例えば、第1方向に縦長の矩形状である。基体3の表面には、圧力センサーシート24と、圧力センサーシート24の表面を覆う保護シート25とが配されている。
【0029】
圧力センサーシート24には、複数の圧力測定点が縦横に配置されている。圧力センサーシート24にタイヤTのトレッド面が押圧されることにより、接地面内の圧力測定点において、それぞれ押圧荷重が測定される。この測定データが例えばコンピュータによって処理されることにより、タイヤTの接地面形状や接地面内の接地圧の分布等が得られる。これらの結果は、例えば、表示装置(図示省略)等により画像として表示され得る。
【0030】
図4(a)には、本実施形態の圧力センサーシート24の一部分の拡大斜視図が示されている。
図4(b)には、
図4(a)のC−C線断面図が示されている。
図4(a)及び(b)に示されるように、圧力センサーシート24は、2枚のフィルム状シート26、26間に複数の第1線状電極27a、及び、複数の第2線状電極27bが短ピッチで縦横に配設されたものである。各第1線状電極27aと各第2線状電極27bとは、平面視において互いに交差している。
【0031】
図4(b)に示されるように、第1線状電極27aと第2線状電極27bとの間には、圧縮されたときの変形量に応じて電気抵抗が小さくなる樹脂28が充填されている(
図3(a)では樹脂28が省略されている。)。樹脂28の電気抵抗は、シート24の外面を押圧する力が大きくなると、減少する。このため、第1線状電極27aと第2線状電極27bとの平面視での交点31において、シート24が押圧されることにより、線状電極27a、27b間の電気抵抗が小さくなる。従って、前記電気抵抗が測定されることにより、交点31での樹脂に作用する力を測定することができる。このため、前記交点31が圧力測定点29となっており、複数の第1線状電極27aと複数の第2線状電極27bで形成される各交点31での電気抵抗が測定されることにより、タイヤTの接地面形状及び接地圧分布が得られる。
【0032】
図3(a)及び(b)に示されるように、保護シート25は、圧力センサーシート24の表面を覆い、圧力センサーシート24をタイヤの摩擦力から保護している。保護シート25のさらに詳細な構成は、後述される。
【0033】
本発明において、圧力センサーシート24と保護シート25との間には、摩擦低減用の補助シート30が配されている。補助シート30は、液状の潤滑剤のように頻繁に注入する必要がなく、圧力センサーシート24と保護シート25との間の低摩擦状態を長時間に亘って維持することができる。従って、本発明の測定装置1によれば、タイヤTの接地状態の測定作業を効率化することができる。また、補助シート30は、圧力センサーシート24と保護シート25との滑り易さを一定に維持し、ひいては測定結果のばらつきを小さくすることができる。
【0034】
上述の効果をさらに発揮させるために、保護シート25及び補助シート30の好ましい構成が説明される。
【0035】
保護シート25は、例えば、圧力センサーシート24の全面を覆っているのが望ましい。さらに望ましい態様として、保護シート25の第1方向(
図3(a)では上下方向)の長さL1は、圧力センサーシート24の第1方向の長さL2の2.0〜3.0倍である。保護シート25の第2方向(
図3(a)及び(b)では左右方向)の幅W1は、圧力センサーシート24の第2方向の幅W2の1.5〜2.0倍である。このような十分な面積を有する保護シート25は、圧力センサーシート24を確実に保護することができる。
【0036】
保護シート25は、強靭かつ柔軟なものが望ましい。このような観点から、保護シート25の材料は、例えば、ポリカーボネート等の合成樹脂が望ましい。また、圧力センサーシート24の感度の低下を抑制するため、保護シート25は、一定厚さを有しているのが望ましい。保護シート25の厚さt1(図示省略)は、例えば、0.05〜0.50mmであるのが望ましい。
【0037】
保護シート25の曲げ弾性率は、好ましくは0.40GPa以上、より好ましくは0.50GPa以上であり、好ましくは0.65GPa以下、より好ましくは0.55GPa以下であるのが望ましい。このような保護シート25は、圧力センサーシート24の感度を維持しつつ、優れた耐久性を発揮することができる。なお、本明細書において、「曲げ弾性率」とは、JIS K 6911に準拠して測定した3点曲げ弾性率を意味する。
【0038】
保護シート25は、補助シート30と接触する第1面33と、第1面33の反対側でタイヤTと接触する第2面34とを有している。第2面34の表面粗さRa2は、第1面33の表面粗さRa1よりも大きいのが望ましい。このような保護シート25は、第2面34上でのタイヤTの滑りを抑制しつつ、補助シート30との摩擦を低減することができ、保護シート25の耐久性と圧力センサーシート24の感度とを両立させることができる。なお、本明細書において、「表面粗さ」とは、JISB0601−2001に定義される算術平均粗さを意味する。
【0039】
補助シート30は、圧力センサーシート24と保護シート25との間の摩擦を十分に抑制するために、より小さい摩擦係数を有しているのが望ましい。一方、補助シート30は、その交換の頻度を少なくするために、高い耐久性を有しているのが望ましい。このような観点から、補助シート30の材料は、例えば、フッ素樹脂を含んで構成されているのが望ましく、より具体的には、PTFEを含んで構成されているのが望ましい。
【0040】
補助シート30の曲げ弾性率は、例えば、0.40〜0.65GPaが望ましい。本実施形態の補助シート30の曲げ弾性率は、例えば、保護シート25の曲げ弾性率よりも小さい。具体的には、補助シート30の曲げ弾性率は、例えば、保護シート25の曲げ弾性率の0.85〜0.95倍であるのが望ましい。このような補助シート30は、圧力センサーシート24の感度の低下を抑制するのに役立つ。
【0041】
補助シート30は、一定厚さを有しているのが望ましい。補助シート30の厚さt2(図示省略)は、好ましくは0.05mm以上、より好ましくは0.15mm以上であり、好ましくは0.40mm以下、より好ましくは0.30mm以下である。また、補助シート30と保護シート25との合計厚さは、0.10〜0.80mmである。これにより、圧力センサーシート24の感度を維持しつつ、圧力センサーシート24を効果的に保護することができる。
【0042】
望ましい態様として、本実施形態の測定装置1は、保護シート25に張力を付与するための張力付加装置35をさらに含んでいる。本実施形態の張力付加装置35は、例えば、一対の巻取りロール36、36を含んでいる。巻取りロール36は、第1方向に沿って直線状にのびる回転軸を有し、基体3の両側にそれぞれ配されている。各巻取りロール36は、保護シート25を適宜巻取ることができ、保護シート25に第2方向(第1方向の直角方向)の張力を付与することができる。このような張力付加装置35は、一対の巻取りロール36、36によって、第2方向の両側から保護シート25の全体に十分な張力を作用させることができ、ひいては保護シート25の皺の発生を効果的に抑制することができる。
【実施例】
【0043】
本実施形態のタイヤの接地状態測定装置を用いた場合のタイヤの接地圧の測定結果と、従来の装置を用いた場合のタイヤの接地圧の測定結果との相関を調べる実験が行われた。
【0044】
従来例として、圧力センサーシートの上に、厚さが0.09mmかつ曲げ剛性が0.50GPaの保護シートが設けられ、かつ、圧力センサーシートと保護シートとの間には潤滑剤や補助シートが設けられていない測定装置が用いられ、複数(N=121)のプレーンタイヤの積算接地圧が下記の条件で測定された。積算接地圧は、タイヤの接地中心線からタイヤ軸方向に片側75mmずつの範囲であり、かつ、接地圧が20kPa以上となる部分の接地圧を積算したものである。なお、各プレーンタイヤにおいて、積算接地圧が20回測定され、1回目及び20回目の積算接地圧が記録された。
タイヤサイズ:195/65R15
内圧:230kPa
荷重:4.00kN
室温:25±2℃
【0045】
比較例として、圧力センサーシートの上に従来例と同じ保護シートを有し、かつ、圧力センサーシートと保護シートとの間にシリコン系潤滑剤が注入された測定装置が用いられ、上記従来例と同様に、前記複数のプレーンタイヤの積算接地圧が測定された。
【0046】
実施例として、圧力センサーシートの上に従来例と同じ保護シートが設けられ、かつ、圧力センサーシートと保護シートとの間に摩擦低減用の補助シートが設けられた測定装置が用いられ、上記従来例と同様に、前記複数のプレーンタイヤの接地圧が測定された。補助シートの詳細な構成は、下記の通りである。
補助シートの厚さ:0.14mm
補助シートの曲げ剛性:0.45GPa
補助シートの材料:PTFE
【0047】
なお、従来例、比較例、及び、実施例の各測定装置は、上述した構成以外は、実質的に同一の構成を有している。
【0048】
図5(a)には、従来例における測定1回目の前記積算接地圧と、比較例における測定1回目の前記積算接地圧との相関を示すグラフが示されている。これらの相関線の傾きは、0.987となっている。
図5(b)には、比較例における測定1回目の前記積算接地圧と、比較例における測定20回目の前記積算接地圧との相関を示すグラフが示されている。これらの相関線の傾きは、0.849となっている。
【0049】
図6(a)には、従来例における測定1回目の前記積算接地圧と、実施例における測定1回目の前記積算接地圧との相関を示すグラフが示されている。これらの相関線の傾きは、1.317である。
図6(b)には、実施例における測定1回目の前記積算接地圧と、実施例における測定20回目の前記積算接地圧との相関を示すグラフが示されている。これらの相関線の傾きは、1.042となっている。
図5及び
図6で示された相関係数をまとめた結果が表1に示される。
【0050】
【表1】
【0051】
表1に示されるように、比較例では、測定20回目において、測定1回目との相関線の傾きが0.849と低下している。これに対し、実施例では、測定20回目において、相関線の傾きが1.042であり、測定1回目と20回目のデータにほぼ違いがない。即ち、本実施形態の測定装置は、圧力センサーシートと保護シートとの間の低摩擦状態を長時間に亘って維持することができ、かつ、測定結果のばらつきが小さくなっていることが確認できた。
【0052】
以上、本発明のタイヤの接地状態測定装置の一実施形態が詳細に説明されたが、本発明は、上記の具体的な実施形態に限定されることなく、種々の態様に変更して実施され得る。