(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記脂環式構造が、シクロヘキシル基、t−ブチルシクロヘキシル基、3,3,5−トリメチルシクロヘキシル基、イソボルニル基、ジシクロペンタニル基、及びジシクロペンテニル基からなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1〜4のいずれか一項に記載のインキ組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための好適な形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の代表的な実施形態の一例を示したものであり、これにより本発明の範囲が狭く解釈されることはない。
本発明において、(メタ)アクリル酸エステルは、アクリル酸エステルまたはメタクリル酸エステルを意味する。
本発明において、(メタ)アクリル系共重合体は、アクリル酸エステル系共重合体またはメタクリル酸エステル系共重合体を意味する。
【0011】
[(メタ)アクリル系共重合体(A)]
本発明のインキ組成物に含まれる(メタ)アクリル系共重合体(A)は、マクロモノマー(a)由来の構成単位を有する単量体混合物(M)の重合物である。
【0012】
本発明において、マクロモノマー(a)とは、ラジカル重合性基、またはヒドロキシル基、イソシアネート基、エポキシ基、カルボキシル基、アミノ基、アミド基、チオール基等の官能基を有するものが挙げられる。
上述の中で、特にビニル単量体(b)と共重合可能なラジカル重合性基を有するものが好ましい。
ラジカル重合性基は二つ以上含有していてもよいが、一つであるものが特に好ましい。
マクロモノマー(a)が官能基を有する場合も官能基は二つ以上含有していてもよいが、一つであるものが特に好ましい。
また、ラジカル重合性基と官能基はどちらか一方でも、両方含有していてもよい。ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合、ビニル単量体(b)からなる重合物ユニットが付加する官能基、または、ビニル単量体(b)と共重合するラジカル重合性基、の何れか以外の官能基は、二つ以上であってもよい。また、ラジカル重合性基と官能基を両方含有する場合、ラジカル重合性基は、二つ以上であってもよい。
【0013】
マクロモノマー(a)がラジカル重合性基を有する場合、マクロモノマー(a)は下記式(a’)で示される構成単位(以下、構成単位(a’)ともいう)を2以上有する化合物とできる。2以上の構成単位(a’)が有するPはそれぞれ同じでも異なってもよい。2以上の構成単位(a’)が有するQはそれぞれ同じでもよく異なってもよい。マクロモノマー(a)は、構成単位(a’)以外の他の構成単位をさらに有していてもよい。
【0015】
式(a’)中、Pは、水素原子、またはメチル基を示す。
Qは、OR、O
2CR、ハロゲン、CO
2H、COR、CO
2R、CN、CONH
2、CONHR、CONR
2、およびR’からなる群から選ばれる。
Rは、水素原子、置換および非置換アルキル、置換および非置換アリール、置換および非置換へテロアリール、置換および非置換アラルキル、置換および非置換アルカリール、および置換および非置換オルガノシリルからなる群から選ばれる。置換基は、同じであるかまたは異なり、かつカルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、1級アミノ、2級アミノ、3級アミノ、イソシアナト、スルホン酸およびハロゲンからなる群から選ばれる。
R’は、置換および非置換アリール、置換および非置換ヘテロアリールからなる芳香族群から選ばれる。置換基は、同じであるかまたは異なり、かつカルボン酸、カルボン酸エステル、エポキシ、ヒドロキシル、アルコキシ、1級アミノ、2級アミノ、3級アミノ、イソシアナト、スルホン酸、置換および非置換アルキル、置換および非置換アリール、置換および非置換オレフィン、およびハロゲンからなる群から選ばれる。
【0016】
マクロモノマー(a)の構成単位(a’)または他の構成単位を形成する単量体には種々のものが用いられ得る。例えば、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸イソアミル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロデカニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸o−ビフェニル、(メタ)アクリル酸p−ビフェニル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化β−ナフトール、(メタ)アクリル酸エトキシ化o−フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸3−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸ポリエチレングリコール、(メタ)アクリル酸ポリプロピレングリコール、(メタ)アクリル酸メトキシエチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸n−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸イソブトキシエチル、(メタ)アクリル酸t−ブトキシエチル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシエチル、(メタ)アクリル酸3−メトキシブチル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレン等のラジカル重合性単量体が挙げられる。
これらの中で、単量体の入手し易さと、インキバインダー樹脂との相溶性の観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸が好ましい。なかでも、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチルがより好ましい。
これらラジカル重合性単量体は、1種類のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0017】
また、マクロモノマー(a)は、共重合性と耐熱分解性の観点から、構成成分としてメタクリル酸エステルを70質量%以上100質量%以下含むことが好ましい。メタクリル酸エステルの含有量の下限値は、80質量%以上がより好ましく、90質量%以上が更に好ましい。メタクリル酸エステルの含有量の上限値は、99質量%以下がより好ましく、98質量%以下が更に好ましい。
【0018】
マクロモノマー(a)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)としたときのインキ組成物のポリオレフィン系樹脂からなる基材に対する密着性の観点から、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した数平均分子量(Mn)が300〜6000であることが好ましく、1000〜5000であることがより好ましい。
前記数平均分子量(Mn)が300以上であれば、(メタ)アクリル系共重合体(A)と、(メタ)アクリル系共重合体(A)と同じ単量体組成比を有するが構造が異なるランダム共重合体と、の間で密着性の差が発現しやすく、6000以下であれば密着性が良好となる。
【0019】
マクロモノマー(a)としては、2以上の構成単位(a’)を含む主鎖の末端にラジカル重合性基が導入されたものが好ましく、下記式(2)の末端構造を有するものが好ましい。なお、式(2)中の「・・・」は、2以上の構成単位(a’)を含む主鎖部分を示す。
【0021】
式(2)において、Rは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基を示す。アルキル基、シクロアルキル基、およびアリール基は、置換基を有していてよい。
Rは、例えば、炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基が挙げられる。炭素数1〜20の分岐又は直鎖アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、i−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基及びイコシル基が挙げられる。これらの中で、入手のし易さから、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基及びオクチル基が好ましく、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基及びt−ブチル基がより好ましい。
また、Rは、例えば、炭素数3〜20のシクロアルキル基が挙げられる。炭素数3〜20のシクロアルキル基の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基及びアダマンチル基が挙げられる。入手のし易さから、シクロプロピル基、シクロブチル基及びアダマンチル基が好ましい。
さらに、Rは、例えば、炭素数6〜18のアリール基が挙げられる。炭素数6〜18のアリール基の具体例としては、フェニル基及びナフチル基、ベンゾフェノン構造等が挙げられる。
Rが有してもよい置換基としては、アルキル基、アリール基、カルボキシル基、アルコキシカルボニル基(−COOR’’)、シアノ基、ヒドロキシル基、アミノ基(−NR’’R’’’)、アミド基(−CONR’’R’’’)、ハロゲン、アリル基、エポキシ基、アルコキシ基(−OR’’)、シロキシ基、又は親水性若しくはイオン性を示す基からなる群から選択される基又は原子が挙げられる。尚、R’’又はR’’’は、それぞれ独立して、Rと同様のものが挙げられる。
【0022】
上記置換基のアルコキシカルボニル基としては、例えば、メトキシカルボニル基が挙げられる。
上記置換基のアミノ基としては、アミノ基、モノメチルアミノ基、ジメチルアミノ基が挙げられる。
上記置換基のアミド基としては、例えば、カルバモイル基(−CONH
2),N−メチルカルバモイル基(−CONHMe)、N,N−ジメチルカルバモイル基(ジメチルアミド基:−CONMe
2)が挙げられる。
上記置換基のハロゲンとしては、例えばふっ素、塩素、臭素及びよう素が挙げられる。
上記置換基のアルコキシ基としては、例えば、炭素数1〜12のアルコキシ基が挙げられ、具体例としては、メトキシ基が挙げられる。
上記置換基の親水性又はイオン性を示す基としては、例えば、カルボキシル基のアルカリ塩又はスルホキシル基のアルカリ塩、ポリエチレンオキシド基、ポリプロピレンオキシド基等のポリ(アルキレンオキシド)基及び四級アンモニウム塩基等のカチオン性置換基が挙げられる。
【0023】
Zは、マクロモノマー(a)の末端基である。マクロモノマー(a)の末端基としては、例えば、公知のラジカル重合で得られるポリマーの末端基と同様に、水素原子及びラジカル重合開始剤に由来する基が挙げられる。
【0024】
マクロモノマー(a)としては、(メタ)アクリロイル基を有するモノマー構成単位を80質量%以上含むものが好ましく、下記式(3)の構造が特に好ましい。
【0026】
式(3)中、nは2〜10万の自然数である。
R及びRnは、それぞれ独立に、式(2)のRと同様のものを用いることができる。n個のRnは、それぞれ同じでも異なっていても良い。Xnは、式(a’)のPと同様のものを用いることができる。n個のXnは、それぞれ同じでも異なっていても良い。
Zは、末端基である。
【0027】
Zとしては、式(2)のZと同様の末端基が挙げられる。
【0028】
マクロモノマー(a)は、公知の方法で製造したものを用いてもよく、市販のものを用いてもよい。ラジカル重合可能な重合性基を持つマクロモノマー(a)の製造方法としては、例えば、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法、α−メチルスチレンダイマー等のα置換不飽和化合物を連鎖移動剤として用いる方法、重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法、及び熱分解による方法が挙げられる。
これらの中で、マクロモノマー(a)の製造方法としては、製造工程数が少なく、連鎖移動定数の高い触媒を使用する点で、コバルト連鎖移動剤を用いて製造する方法が好ましい。なお、コバルト連鎖移動剤を用いて製造した場合のマクロモノマー(a)の構造は前記式(2)に該当するものである。
【0029】
ビニル単量体からなる重合体に付加できる官能基を持つマクロモノマー(a)の製造方法としては、該当の官能基を有するビニル単量体を共重合する方法、チオグリコール、チオグリコール酸等の連鎖移動剤を用いて官能基を導入する方法、開始剤を用いて官能基を導入する方法などが挙げられる。
【0030】
マクロモノマー(a)を製造する方法としては、例えば、塊状重合法、溶液重合法及び懸濁重合法、乳化重合法等の水系分散重合法が挙げられる。特にコバルト連鎖移動剤を用いて製造する場合は、回収工程が簡便である点から水系分散重合法が好ましい。
【0031】
重合体にラジカル重合性基を化学的に結合させる方法としては、たとえば、ハロゲン基を有する重合体のハロゲン基を、ラジカル重合性の炭素−炭素二重結合を有する化合物で置換することにより製造する方法、酸基を有するビニル系単量体とエポキシ基を有するビニル系重合体とを反応させる方法、エポキシ基を有するビニル系重合体と酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法、水酸基を有するビニル系重合体とジイソシアネート化合物とを反応させ、イソシアネート基を有するビニル系重合体を得て、このビニル系重合体と水酸基を有するビニル系単量体とを反応させる方法等が挙げられ、いずれの方法によって製造されても構わない。
【0032】
なお、マクロモノマー(a)は、2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
前記(メタ)アクリル系共重合体(A)の重合に用いる、前記単量体混合物(M)に含まれるマクロモノマー(a)以外の単量体としては、マクロモノマー(a)との共重合性の観点から、(メタ)アクリル酸エステル、(メタ)アクリルアミドおよびスチレン等のラジカル重合性単量体が好ましい。これらの中でも、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸i−プロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸i−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ドデシル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸グリシジル、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸4−ヒドロキシブチル、(メタ)アクリル酸メトキシメチル、(メタ)アクリル酸エトキシエチル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロデカニル、(メタ)アクリル酸ノルボルニル、(メタ)アクリル酸イソボルニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンタニル、(メタ)アクリル酸ジシクロペンテニル、(メタ)アクリル酸アダマンチル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル、(メタ)アクリル酸フェニルエチル、(メタ)アクリル酸フェニルプロピル、(メタ)アクリル酸フェノキシエチル、(メタ)アクリル酸フェノキシジエチレングリコール、(メタ)アクリル酸o−ビフェニル、(メタ)アクリル酸p−ビフェニル、(メタ)アクリル酸エチレンオキサイド変性ノニルフェノール、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル化β−ナフトール、(メタ)アクリル酸エトキシ化o−フェニルフェノール、(メタ)アクリル酸2−ヒドロキシ3−フェノキシプロピル、アクリロニトリル、スチレン、ビニルトルエン、α−メチルスチレンがより好ましい。また、ポリオレフィン系樹脂からなる基材への密着性の観点から、アクリロイルオキシ基(CH
2=CHCOO−)またはメタクリロイルオキシ基(CH
2=C(CH
3)COO−)が、2級炭素原子または3級炭素原子に結合したものが好ましい。ここで、2級炭素原子または3級炭素原子とは、アクリロイルオキシ基またはメタクリロイルオキシ基を除く、水素原子以外の任意の基を2つまたは3つ有する炭素原子であり、これら任意の基は互いに結合して環を形成していてもよいものである。具体的には、アクリル酸シクロヘキシル、アクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、アクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、アクリル酸イソボルニル、アクリル酸ジシクロペンタニル、アクリル酸ジシクロペンテニル、メタクリル酸シクロヘキシル、メタクリル酸t−ブチルシクロヘキシル、メタクリル酸3,3,5−トリメチルシクロヘキシル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ジシクロペンタニル、メタクリル酸ジシクロペンテニルが好ましい。
これらラジカル重合性単量体は、1種類のみを用いてもよいし2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0034】
マクロモノマー(a)の含有量は、前記単量体混合物(M)中に5〜95質量%であることが好ましく、10〜90質量%であることがより好ましい。
マクロモノマー(a)の含有量が5質量%以上であれば、インキバインダー樹脂との相溶性が向上し、95質量%以下であれば単量体混合物(M)の重合が容易となる。
【0035】
前記単量体混合物(M)の重合は、前記マクロモノマー(a)と同様に公知の方法、条件でおこなうことができる。
【0036】
インキ皮膜硬度およびインキバインダー樹脂との相溶性の観点から、前記単量体混合物(M)を重合して得られた(メタ)アクリル系共重合体(A)のゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)で測定した重量平均分子量(Mw)は、1000〜300000であることが好ましく、5000〜200000であることがより好ましい。
前記重量平均分子量(Mw)が1000以上ではインキ皮膜に十分な硬度が得られ、1000000を超えるとインキバインダー樹脂との相溶が容易となる。
【0037】
(メタ)アクリル系共重合体(A)はグラフト共重合体、ブロック共重合体等のいかなる構造を有するものであっても良い。
【0038】
(メタ)アクリル系共重合体(A)を得るための重合方法としては、バルク重合、溶液重合、懸濁重合、乳化重合等のラジカル重合、アニオン重合、グループトランスファー重合(GTP)、配位アニオン重合等の公知の重合方法を採用できる。
重合温度については特に制限はなく、例えば、−100〜250℃ 、好ましくは0〜200℃ の温度で重合できる。
【0039】
(メタ)アクリル系共重合体(A)を重合するに際しては、連鎖移動剤やラジカル重合開始剤を用いても良い。連鎖移動剤としては、水素、メルカプタン類、αメチルスチレンダイマー、テルペノイド類等が挙げられる。連鎖移動剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。連鎖移動剤として用いられる好適なメルカプタンの具体例としてはn−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等が挙げられる。
【0040】
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ化合物等が挙げられる。ラジカル重合開始剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0041】
ラジカル重合開始剤として用いられる好適な有機過酸化物の具体例としては、t−ブチルパーオキシピバレート、o−メチルベンゾイルパーオキサイド、ビス−3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート等が挙げられる。
また、アゾ化合物の具体例としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)等が挙げられる。
これらの中でも、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等が好ましい。
【0042】
ラジカル重合開始剤の添加量は、用いる単量体の合計100質量部に対して0.0001〜10質量部にすることが好ましい。
【0043】
[他の重合体]
本発明のインキ組成物は、基材に対する密着性を損なわない範囲で、前記(メタ)アクリル系共重合体(A)とは異なる、他の重合体を含んでいても良い。
他の重合体としては、マクロモノマー(a)を含まない単量体から構成された重合体であれば特に限定されないが、例えば、ポリスチレン等のポリ芳香族ビニル化合物、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、アルキッド樹脂、エポキシ樹脂等が挙げられる。
上記の中でも、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、インキ皮膜を形成するための基本的性能、すなわち乾燥性、光沢、硬度、耐溶剤性、耐候性、耐水性等の向上に有効な成分であるため好ましい。
【0044】
さらに、(メタ)アクリル酸エステル単量体としては、特に耐候性やインキ皮膜硬度が優れることから、炭化水素基の炭素数が4個以下で構成される直鎖または分岐状炭化水素基をもつものが好ましい。それらの中でも特に入手の容易さの観点から、メタクリル酸メチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸メチル、アクリル酸n−ブチル等が好ましく、特にメタクリル酸メチルが好ましい。(メタ)アクリル酸エステル単量体は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0045】
本発明のインキ組成物において、(メタ)アクリル系共重合体(A)の含有量は、所望とする性能によって適宜決定されるが、基材に対する密着性の観点から、全樹脂成分中の1〜70質量%(他の重合体の含有量が全樹脂成分中の99〜30質量%)である。
ここで、全樹脂成分とは、(メタ)アクリル系共重合体(A)と他の重合体の合計量のことである。
【0046】
[着色剤]
本発明のインキ組成物の色相としては、プロセス基本色として白の他に、黄、紅、藍、墨の合計5色があり、プロセスガマット外色として赤(橙)、草(緑)、紫の3色がある。更に透明黄、牡丹、朱、茶、金、銀、パール、色濃度調整用のほぼ透明なメジウム(必要に応じて体質顔料を含む)などがベース色として準備される。白インキに、他のインキを混合することができ、さらに必要に応じて有機顔料、無機顔料、染料を混合することができる。
【0047】
本発明のインキ組成物に用いることができる白色系無機顔料としては、酸化チタン、酸化亜鉛、硫化亜鉛、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、酸化クロム、シリカなどが挙げられる。白インキの顔料には酸化チタンを用いることが着色力、隠ぺい力、耐薬品性、耐候性の点から好ましい。
【0048】
白色系以外の無機顔料としては、カーボンブラック、アルミニウム、マイカ(雲母)などの顔料が挙げられる。
【0049】
本発明のインキ組成物に有色系着色剤としては、一般のインキ、塗料、および記録剤などに使用されている有機、無機顔料や染料を挙げることができる。併用できる有機顔料としては、アゾ系、フタロシアニン系、アントラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、キナクリドン系、チオインジゴ系、ジオキサジン系、イソインドリノン系、キノフタロン系、アゾメチンアゾ系、ジクトピロロピロール系、イソインドリン系などの顔料が挙げられる。藍インキには銅フタロシアニン、透明黄インキにはコスト・耐光性の点からC.I. Pigment No Yellow83を用いることが好ましい。
【0050】
着色剤は、インキの濃度・着色力を確保するのに充分な量、すなわちインキの総重量に対して1〜50重量%の割合で含まれることが好ましい。また、これらの着色剤は単独で、または2種以上を併用して用いることができる。
【0051】
顔料を有機溶剤に安定に分散させるには、樹脂単独でも分散可能であるが、さらに顔料を安定に分散するため分散剤を併用することもできる。分散剤としては、アニオン性、ノニオン性、カチオン性、両イオン性などの界面活性剤を使用することができる。分散剤は、インキの保存安定性の観点からインキの総重量に対して0.05重量%以上、かつ、印刷性の観点から5重量%以下でインキ中に含まれることが好ましい。さらに、0.1〜2重量%の範囲で含まれることがより好ましい。
【0052】
[有機溶剤]
本発明のインキ組成物には、インキ製造時の取り扱い性や印刷性を良好にするため、(メタ)アクリル系共重合体(A)が可溶であり、その他の成分が可溶もしくは分散可能な有機溶剤を配合することが好ましい。その場合、取り扱い性の観点から、有機溶剤を含むインキ組成物中における(メタ)アクリル系共重合体(A)の濃度は10〜70質量%であることが好ましい。
【0053】
なお、本発明のインキ組成物は固形成分のみから構成されるものでもよい。その場合、使用前に有機溶剤と混合してインキ組成物を調製する。
【0054】
本発明のインキ組成物は(メタ)アクリル系共重合体(A)を含有することから以下の溶剤に対する溶剤溶解性に優れる。
好適な有機溶剤としては、例えば、トルエン、キシレン、スワゾール#1000(丸善石油化学(株)製)、ソルベッツ#150(エクソン化学(株)製)、スーパーゾール1500(新日本石油化学(株)製)等の芳香族系炭化水素類;シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等の脂環式炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;酢酸エチル、酢酸n−プロピル、酢酸n−ブチル、酢酸i−ブチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート等のエステル類;エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール,n−ブタノール、シクロヘキサノール等のアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコール系溶剤;ミネラルターペン、アイソパーE(エクソン化学(株)製)等の脂肪族炭化水素類等が挙げられる。中でも、揮発分排出による環境影響の観点から、エステル類やアルコール類が特に好ましい。
これら有機溶剤は、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0055】
[その他の成分]
本発明のインキ組成物には、必要に応じて、カーボンブラック、フェライト等の導電性付与剤; 無機充填剤、滑剤、可塑剤、有機過酸化物、アルミペースト、マイカ等の光輝剤;酸化防止剤、紫外線吸収剤、耐候安定剤、耐放射線剤、熱安定剤等の各種安定剤; 表面調整剤、架橋剤、硬化触媒、顔料沈降防止剤等の補助的添加剤等を一般的な配合法で添加することができる。
【0056】
[印刷インキ]
本発明のインキ組成物は、樹脂、着色剤などを有機溶剤中に溶解および/または分散することにより製造することができる。具体的には、顔料を樹脂、および分散剤により有機溶剤に分散させた顔料分散体を製造し、得られた顔料分散体に、必要に応じて他の化合物などを配合することによりインキ(例えば、印刷インキ)を製造することができる。
【0057】
顔料分散体における顔料の粒度分布は、分散機の粉砕メディアのサイズ、粉砕メディアの充填率、分散処理時間、顔料分散体の吐出速度、顔料分散体の粘度などを適宜調節することにより、調整することができる。分散機としては一般に使用される、例えばローラーミル、ボールミル、ペブルミル、アトライター、サンドミル、自転公転ミキサーなどを用いることができる。
【0058】
インキ中に気泡や予期せずに粗大粒子などが含まれる場合は、印刷物品質を低下させるため、濾過などにより取り除くことが好ましい。濾過器は従来公知のものを使用することができる。
【0059】
インキの粘度は、顔料の沈降を防ぎ、適度に分散させる観点から10mPa・s以上、インキ製造時や印刷時の作業性効率の観点から1000mPa・s以下の範囲であることが好ましい。なお、上記粘度はB型粘度計で25℃において測定された粘度である。
【0060】
インキの粘度は、使用される原材料の種類や量、例えば樹脂、着色剤、有機溶剤などを適宜選択することにより調整することができる。また、インキ中の顔料の粒度および粒度分布を調節することによりインキの粘度を調整することもできる。
【0061】
本発明の印刷インキは、グラビア印刷、フレキソ印刷などの既知の印刷方式で用いることができる。例えば、グラビア印刷に適した粘度及び濃度にまで希釈溶剤で希釈され、単独でまたは混合して使用される。
【0062】
[基材]
本発明のインキ組成物は、特に、従来の技術では密着が容易でなかったポリオレフィン系樹脂からなる基材表面に対して用いるのに好適である。
【0063】
ポリオレフィン系樹脂からなる基材としては、例えば、ポリエチレンフィルム(PE)、無延伸ポリプロピレンフィルム(CPP)、延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、エチレン・酢酸ビニル共重合体フィルム(EVA)、エチレン・ビニルアルコール共重合体フィルム(EVOH)等のフィルム;高圧法ポリエチレン、中低圧法ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ4−メチル−1−ペンテン等のポリオレフィン、あるいはエチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等のポリオレフィン系樹脂からなる自動車部品用成形品、家電製品用成形品等が挙げられる。
【0064】
さらに、このインキ組成物は、ポリオレフィン系樹脂からなる基材だけでなく、ポリエステルフィルム、無延伸ナイロンフィルム、二軸延伸ナイロンフィルム、ポリ塩化ビニリデンフィルム、ポリビニルアルコールフィルム等のプラスチックフィルム;ポリメチルメタクリレートや、メタクリル酸メチル単位を含む共重合体等のアクリル系樹脂、ポリプロピレンと合成ゴムからなる樹脂アロイ、ポリアミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスチレン樹脂等からなる基材;表面処理されていない鋼板、亜鉛やアルミの酸化皮膜でめっき処理された鋼板などの金属基材;銅板、アルミ板、アルミ合金板、チタニウム板などの非鉄金属基材に対しても好適に用いることができる。
【0065】
なお、本発明のインキ組成物を用いて印刷する基材は、射出成形、圧縮成形、中空成形、押出成形、回転成形など、公知のいずれの成形法によって成形されたものであっても良い。
【0066】
[塗膜]
本発明の塗膜は、本発明のインキ組成物を基材に積層して形成されるものであり、密着性評価において塗膜残存面積率が75%以上である。特に、従来の技術では密着が容易でなかったポリオレフィン系樹脂からなる基材表面に対しても高い塗膜残存面積率を示す。
【実施例】
【0067】
実施例及び比較例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例によって制限されるものではない。
【0068】
<数平均分子量測定>
数平均分子量測定には、東ソー製高速GPC装置HLC−8320GPC型およびRI検出器を用いた。使用したカラムは、(1)東ソー社製 TSKgel superHZM-M(4.6mmID×15cmL)を2本と(2)東ソー社製 TSKgel HZ2000(4.6mmID×15cmL)1本とを連結して測定を行なった。溶離液はテトラヒドロフラン(安定剤のジブチルヒドロキシトルエンを含む)を用い、流速は0.35ml/分、注入口温度40℃、オーブン温度40℃、RI温度40℃で測定した。サンプルは、樹脂分0.2wt%になるようテトラヒドロフランで調整したものを10μl注入した。
【0069】
<分散剤(1)の合成>
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水900質量部、メタクリル酸2−スルホエチルナトリウム60質量部、メタクリル酸カリウム10質量部、メタクリル酸メチル(MMA)12質量部を加えて撹拌し、重合装置内を窒素置換しながら、重合温度50℃に昇温し、重合開始剤として2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)二塩酸塩0.08質量部を添加し、更に重合温度60℃に昇温した。該重合開始剤の添加と同時に、滴下ポンプを使用して、MMAを0.24質量部/分の速度で75分間連続的に滴下することで合計18質量部を加えた。重合温度60℃で6時間保持した後、室温に冷却して分散剤(1)を得た。この分散剤(1)の固形分は10%あった。
【0070】
<連鎖移動剤(1)の合成>
撹拌機を備えた反応容器に、窒素雰囲気下で、酢酸コバルト(II)四水和物(和光純薬(株)製、和光特級)2.00g(8.03mmol)及びジフェニルグリオキシム(東京化成(株)製、EPグレード)3.86g(16.1mmol)及び予め窒素バブリングにより脱酸素したジエチルエーテル100mlを入れ、室温で2時間攪拌した。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体(東京化成(株)製、EPグレード)20mlを加え、更に6時間攪拌した。反応物をろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し、100Mpa以下で、20℃において12時間乾燥し、連鎖移動剤(1)5.02g(7.93mmol、収率99質量%)を得た。
【0071】
<マクロモノマーの合成>
(合成例1:マクロモノマーM−1)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、脱イオン水145質量部、硫酸ナトリウム(Na
2SO
4)0.10質量部及び分散剤(1)0.25質量部を入れて撹拌して、均一な水溶液とした。次に、メタクリル酸メチル100質量部、連鎖移動剤(1)0.008質量部及び重合開始剤として1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーオクタO)0.80質量部を加え、分散液とした。この後、重合装置内を十分に窒素置換し、分散液を80℃に昇温してから2時間保持し、更に91℃に昇温して2時間保持した。その後、反応液を40℃に冷却して、ポリマーを含む懸濁液を得た。この懸濁液を濾過布で濾過し、濾過物を脱イオン水で洗浄、脱水し、40℃で16時間乾燥して、マクロモノマーM−1を得た。マクロモノマーM−1の数平均分子量(Mn)は1400であった。
【0072】
(合成例2:マクロモノマーM−2)
連鎖移動剤(1)0.008質量部の代わりに、連鎖移動剤(1)0.0022質量部を用い、重合開始剤0.80質量部の代わりに0.40質量部を用いた以外はマクロモノマーM−1と同様にしてマクロモノマーM−2を得た。マクロモノマーM−2の数平均分子量(Mn)は3900であった。
【0073】
(合成例3:マクロモノマーM−3)
連鎖移動剤(1)0.008質量部の代わりに、連鎖移動剤(1)0.0010質量部を用い、重合開始剤0.80質量部の代わりに0.24質量部を用いた以外はマクロモノマーM−1と同様にしてマクロモノマーM−3を得た。マクロモノマーM−3の数平均分子量(Mn)は7400であった。
【0074】
<(メタ)アクリル系共重合体の合成>
(合成例4:アクリル系重合体A−1)
撹拌機、冷却管及び温度計を備えた重合装置中に、イソボルニルアクリレート45部と、ノルマルブチルアクリレート5部と、酢酸エチル86.2部を仕込み、窒素バブリングにより雰囲気を窒素置換した。次いで、内温が77℃になるまで昇温させた後、M−1(ポリメタクリル酸メチル、数平均分子量1400)を50 部と、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(日油(株)製、商品名:パーブチルO)と酢酸エチル61.8部の混合溶液を4時間かけて滴下した。続いて、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.15部と酢酸エチル20部の混合溶液を追加し、同温度で3時間保持し重合を完結させた。得られた重合溶液にトルエン10部を添加して粘度調整した後、(メタ)アクリル系共重合体(A−1)の固形分36.5%溶液を得た。この重合体の数平均分子量は4700であった。
【0075】
(合成例5:(メタ)アクリル系重合体A−2)
M−1(ポリメタクリル酸メチル、数平均分子量1400)の代わりにM−2(ポリメタクリル酸メチル、数平均分子量3900)を用いた以外は、合成例4と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A−2)を得た。この重合体の数平均分子量は8200であった。
【0076】
(合成例6:(メタ)アクリル系重合体A−3)
イソボルニルアクリレート45部と、ノルマルブチルアクリレート5部の代わりに4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレートを50部用いた以外は、合成例5と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A−3)を得た。この重合体の数平均分子量は13800であった。
【0077】
(合成例7:(メタ)アクリル系重合体A−4)
M−1(ポリメタクリル酸メチル、数平均分子量1400)の代わりにM−3(ポリメタクリル酸メチル、数平均分子量7400)を用いた以外は、合成例4と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A−4)を得た。この重合体の数平均分子量は15100であった。
【0078】
(合成例8:(メタ)アクリル系重合体A−5)
イソボルニルアクリレート45部と、ノルマルブチルアクリレート5部の代わりに4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレートを50部用いた以外は、合成例7と同様にして、(メタ)アクリル系共重合体(A−5)を得た。この重合体の数平均分子量は24300であった。
【0079】
(メタ)アクリル系共重合体の組成を「表1」に示す。
【0080】
【表1】
IBXA:イソボルニルアクリレート
nBA:ノルマルブチルアクリレート
TBCHA:4−t−ブチルシクロヘキシルアクリレート
【0081】
<実施例1〜4および比較例1>
合成例4〜8で得られた(メタ)アクリル系重合体(インキ用樹脂組成物)16.4部に、バインダー樹脂(三菱レイヨン(株)製「BR−106」)11.3部と、二酸化チタン(石原産業(株)製、白色顔料、タイペークCR−95)24部と酢酸エチル30.7部、イソプロピルアルコール17.6部を加え、プラネタリーミキサー((株)シンキー製「自転公転真空ミキサーARV−310」)を用い、2000rpm、室温、処理時間5分の条件にて混合し、酸化チタン分散溶液を得た。この溶液を、OPPフィルム(東洋紡(株)製「パイレンフィルム OT P2108」、厚さ40μm)のコロナ処理面に対して乾燥後厚さ5μmとなるようにバーコーター(No.6)で塗布し、室温にて24時間乾燥し、塗膜を形成した。
【0082】
<密着性評価>
得られた塗膜について「塗膜残存面積率」を評価した。なお、塗膜残存面積率は5回実施した時の平均値を用いた。
【0083】
評価結果を「表2」に示す。
【0084】
【表2】
【0085】
表に示すように、数平均分子量が低いマクロモノマー(M−1)および(M−2)を用いて合成した(メタ)アクリル系共重合体A−1、A−2、およびA−3を含むインキ組成物(実施例1〜3)は、付着強度が良好である。