(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記シリコーン系滑剤が、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン及びフェニル変性ポリジメチルシロキサンよりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の蓄電デバイス用外装材。
前記基材層がポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂及びアルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含む、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス用外装材。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の技術では、外装材を薄膜化するために、基材層としてエポキシ系の塗工層をバリア層上に形成する一方で、成型加工性を向上させるため、内層側の熱接着性樹脂層(電池内容物と接する層)表面に滑剤を塗布している。しかしながら、内層への滑り性付与のみでは必要とされる成型加工量を得られないことが分かった。
【0005】
そこで、外層側の基材層にも滑り性を付与させるため、基材層表面に滑剤を塗工したところ、滑り性は十分に改善されなかった。
【0006】
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、外層側に優れた滑り性有する蓄電デバイス用外装材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、少なくとも基材層、金属箔層、シーラント接着層及びシーラント層をこの順に備え、基材層が反応性基を有しないシリコーン系滑剤を含有する、蓄電デバイス用外装材を提供する。
【0008】
本発明の外装材であれば、外層となる基材層へ滑り性を付与できる。なお、このような外装材をロール状に巻き取った場合、外層側の基材層と内層側のシーラント層とが接するため、基材層に含まれるシリコーン系滑剤がシーラント層に転写し、シーラント層の滑り性も向上することができる。特に、反応性基を有しない滑剤を用いることにより、滑剤成分が基材層表面へブリードアウトし易い。
【0009】
本発明において、シリコーン系滑剤がポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン及びフェニル変性ポリジメチルシロキサンよりなる群から選択される少なくとも1種であることが好ましい。このような滑剤は水分散性や相溶性に優れるため、塗工液としたときの液安定性が向上する。
【0010】
本発明において、基材層がポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂及びアルキド樹脂よりなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。これにより、耐電解液性をより向上し易くなる。
【0011】
本発明において、基材層中のシリコーン系滑剤の含有量が0.5〜5.0質量%であることが好ましい。これにより、滑り性を付与し易くかつ延伸性を維持し易くなる。
【0012】
本発明において、金属箔層がアルミニウム箔、銅箔又はステンレス箔からなることが好ましい。これにより、外装材の延伸性を維持し易くなる。
【0013】
本発明において、金属箔層が両面に腐食防止層を有することが好ましい。これにより、金属箔層の腐食を抑制し易くなる。
【0014】
本発明において、シーラント接着層が酸変性ポリオレフィン樹脂からなることが好ましい。これにより、内層側の滑り性も得易くなる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、外層側に優れた滑り性を有する蓄電デバイス用外装材を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<蓄電デバイス用外装材>
本発明の一実施形態について、
図1を参照して説明する。
図1は、本実施形態の蓄電デバイス用外装材(以下、単に「外装材」と称する。)1を示す断面図である。
【0018】
本実施形態の外装材は、金属箔層の第一の面上に第一の腐食防止層及び基材層をこの順に備え、金属箔層の第二の面上に第二の腐食防止層、シーラント接着層及びシーラント層をこの順に備えている。すなわち、
図1に示すように、同外装材1は、バリア機能を発揮する金属箔層11と、金属箔層11の第一の面に順次形成された第一の腐食防止層12及び基材層13と、金属箔層11の第二の面に形成された第二の腐食防止層14と、第二の腐食防止層14上に順次形成されたシーラント接着層15及びシーラント層16とを備えている。外装材1を用いて蓄電デバイスを形成する際は、基材層13が最外層となり、シーラント層16が最内層となる。
【0019】
[金属箔層]
金属箔層11としては、アルミニウム、銅、銅合金、ステンレス、ニッケル、鉄、マグネシウム、チタン等からなる各種金属箔を使用することができ、これらのうち、防湿性、延展性等の加工性の面から、アルミニウム箔、銅箔、ステンレス箔が好ましい。さらに、コストの面からアルミニウム箔がより好ましい。アルミニウム箔としては、一般の軟質アルミニウム箔を用いることができる。なかでも、耐ピンホール性及び成型時の延展性に優れる点から、鉄を含むアルミニウム箔が好ましい。
【0020】
鉄を含むアルミニウム箔(100質量%)中の鉄の含有量は、0.1〜9.0質量%が好ましく、0.5〜2.0質量%がより好ましい。鉄の含有量が0.1質量%以上であれば、外装材1は耐ピンホール性及び延展性により優れる。鉄の含有量が9.0質量%以下であれば外装材1は柔軟性により優れる。
【0021】
金属箔層11の厚さは、バリア性、耐ピンホール性、加工性等の点から、9〜200μmが好ましく、15〜100μmがより好ましい。
【0022】
[基材層]
基材層13は、蓄電デバイスを製造する際のシール工程における耐熱性や、電解液が付着しても変質しない耐電解液性を外装材1に付与するとともに、加工や流通の際に起こり得るピンホールの発生を抑制する役割を果たす。
【0023】
基材層13は樹脂で形成され、金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、好ましくは接着層を介さずに直接形成されている。なお、塗工により形成された基材層13を特に塗工層ということもできる。
【0024】
基材層13は、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ポリビニルアルコール等の各種樹脂を使用して形成することができる。延伸性の点から、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂及びアクリル樹脂が好ましく、さらに、金属箔層11への延伸時追従性の点からポリエステル樹脂及びウレタン樹脂がより好ましい。
【0025】
ポリエステル樹脂としては、溶剤可溶型と水分散型があり、溶剤可溶型は、例えば原料のポリアルコールであるエチレングリコール等の一部をシクロヘキサンジメタノールやネオペンチルグリコールと置き換えることで得られるものが挙げられる。なお、溶剤可溶性という観点から、ポリエステル樹脂としては、テレフタル酸とエチレングリコールの脱水縮合により得られるポリエチレンテレフタレートにおいて、エチレングリコールの一部をシクロヘキサンジメタノールに置き換えた非晶性ポリエステル樹脂がより好ましい。非晶性ポリエステル樹脂は単独で又は組み合わせて使用することができる。水分散型は、例えば2価以上の多価カルボン酸化合物からなるカルボン酸成分と、2価以上の多価アルコール化合物からなるアルコール成分とを重縮合して得られるポリエステルに、スルフォン酸金属塩基、カルボキシル基、リン酸基等の親水性のある極性基を導入し、水に分散させたものがあげられる。
【0026】
ウレタン樹脂としては、例えば2液硬化型、水分散型等があり、2液硬化型は、例えば分子内に水酸基を有するアクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール等を主剤とし、分子内にNCOの部分構造を有するTDI系、MDI系、XDI系、IPDI系、HDI系等のイソシアネートを硬化剤として添加し、塗液とする。塗工後、溶媒を乾燥し、水酸基とイソシアネートの反応を促進するため、例えば60℃5日間のエージング処理を行い、塗工膜とする。水分散型は、例えば分子内に水酸基を有するポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカーボネートジオール等のポリオール成分と分子内にNCOの部分構造を有するTDI系、MDI系、XDI系、IPDI系、HDI系等のイソシアネートとの反応生成物に親水基を導入(自己乳化型)し、水に分散させたものがあげられる。
【0027】
基材層13は、上記樹脂に加え、反応性基を有しないシリコーン系滑剤(非反応性滑剤)含有する。反応性基を有しないシリコーン系滑剤を含有することにより、基材層表面へ滑剤がブリードアウトし易く、基材層の滑り性を向上することができる。また、このような外装材をロール状に巻き取った場合、ブリードアウトした滑剤がシーラント層へも転写するため、シーラント層の滑り性も向上することができる。
【0028】
反応性基を有しないシリコーン系滑剤としては、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサン、アラルキル変性ポリジメチルシロキサン、フロロアルキル変性ポリジメチルシロキサン、長鎖アルキル変性ポリジメチルシロキサン、高級脂肪酸エステル変性ポリジメチルシロキサン、フェニル変性ポリジメチルシロキサン等の、反応性の官能基を有しない有機変性ポリジメチルシロキサンが挙げられる。このうち、塗液主剤成分となる上記の樹脂と相溶性に優れる観点からは、ポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンが好ましい。また、導入する官能基の位置により分類されるポリシロキサン化合物の型としては、ポリシロキサンの側鎖の一部に官能基を導入した側鎖型、ポリシロキサンの両方の末端に官能基を導入した両末端型、ポリシロキサンのどちらか片方の末端に官能基を導入した片末端型、ポリシロキサンの側鎖の一部と両方の末端に官能基を導入した側鎖両末端型が挙げられる。このうち、塗液主剤成分との相溶性に優れ、滑り性を発現し易い点から、官能基がポリシロキサンの側鎖の一部に導入されている側鎖型が好ましい。
【0029】
シリコーン系滑剤の添加量は、滑り性を付与するという点から、基材層の全質量を基準として0.5〜5.0質量%が好ましく、1.0〜3.0質量%がより好ましい。
【0030】
基材層13の厚さは、絶縁性と延伸性を維持するという点から、3〜30μmが好ましく、5〜20μmがより好ましい。基材層13は、金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に直接形成され得るため、基材層13の厚さを20μm以下とすることで、従来の外装材よりも薄い構成とすることも容易である。
【0031】
[腐食防止層]
第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層14(以下、「腐食防止層」という)は、電解液や、電解液と水分の反応により発生するフッ酸による金属箔層11の腐食を抑制する役割を果たす。また、基材層13と金属箔層11、および金属箔層11とシーラント接着層15との密着力を高める役割を果たす。
【0032】
腐食防止層としては、塗布型又は浸漬型の耐酸性の腐食防止処理剤によって形成された塗膜や、金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層が挙げられる。このような塗膜あるいは層は、酸に対する腐食防止効果に優れる。塗膜としては、例えば、酸化セリウム、リン酸塩及び各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるセリアゾール処理塗膜、クロム酸塩、リン酸塩、フッ化物及び各種熱硬化性樹脂からなる腐食防止処理剤によるクロメート処理塗膜等が挙げられる。なお、金属箔層11の耐食性が充分に得られる塗膜であれば、上述したものには限定されない。例えば、リン酸塩処理、ベーマイト処理等によって形成した塗膜であってもよい。一方、金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層としては、使用される金属箔層11に応じた層が挙げられる。例えば金属箔層11としてアルミニウム箔が用いられた場合は、酸化アルミニウム層が腐食防止層として機能する。これらの腐食防止層は、単層で又は複数層組み合わせて使用することができる。また、第一の腐食防止層12と第二の腐食防止層14は同一の構成であってもよく、異なる構成であってもよい。さらに、腐食防止層には、シラン系カップリング剤等の添加剤が添加されてもよい。
【0033】
腐食防止層の厚さは、腐食防止機能、及びアンカーとしての機能の点から、10nm〜5μmが好ましく、20〜500nmがより好ましい。
【0034】
[接着層]
シーラント接着層15は、第二の腐食防止層14が形成された金属箔層11とシーラント層16とを接着する層である。外装材1は、シーラント接着層15を形成する接着成分によって、熱ラミネート構成とドライラミネート構成との大きく二つに分けられる。
【0035】
熱ラミネート構成の場合、シーラント接着層15を形成する接着成分としては、ポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸でグラフト変性した酸変性ポリオレフィン系樹脂が好ましい。酸変性ポリオレフィン系樹脂は、無極性であるポリオレフィン系樹脂の一部に極性基が導入されたものであることから、例えばシーラント層16としてポリオレフィン系樹脂フィルム等で形成した無極性の層を用い、また第二の腐食防止層14として極性を有する層を用いた場合、これらの両方の層に強固に密着することができる。また、酸変性ポリオレフィン系樹脂を使用することで、電解液等の内容物に対する耐性が向上し、電池内部でフッ酸が発生してもシーラント接着層15の劣化による密着力の低下を防止し易い。なお、シーラント接着層15に使用する酸変性ポリオレフィン系樹脂は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0036】
酸変性ポリオレフィン系樹脂に用いるポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。また、前記のものにアクリル酸やメタクリル酸等の極性分子を共重合させた共重合体、架橋ポリオレフィン等の重合体等も使用できる。なお、前記ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、カルボン酸、酸無水物等が挙げられ、無水マレイン酸が好ましい。
【0037】
熱ラミネート構成の場合、シーラント接着層15は、前記接着成分を押出し装置で押し出すことで形成することができる。
【0038】
ドライラミネート構成の場合、シーラント接着層15の接着成分としては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール等の主剤に、硬化剤として2官能以上の芳香族系又は脂肪族系イソシアネート化合物を作用させる2液硬化型のポリウレタン系接着剤が挙げられる。ただし、当該ポリウレタン系接着剤はエステル基やウレタン基等の加水分解性の高い結合部を有しているため、より高い信頼性が求められる用途には熱ラミネート構成が好ましい。
【0039】
ドライラミネート構成のシーラント接着層15は、接着成分を第二の腐食防止層14上に塗工後、乾燥することで形成することができる。なお、ポリウレタン系接着剤を用いるのであれば、塗工後、例えば40℃で4日以上のエージングを行うことで、主剤の水酸基と硬化剤のイソシアネート基の反応が進行して強固な接着が可能となる。
【0040】
シーラント接着層15の厚さは、接着性、追随性、加工性等の観点から、2〜50μmであることが好ましく、3〜20μmであることがより好ましい。
【0041】
なお、シーラント接着層15がドライラミネート構成の場合、シーラント層16に含有された滑剤やシーラント層16の上に塗布された滑剤がシーラント接着層15にトラップされ、シーラント層16の滑り性が低下する傾向がある。そのため、シーラント層16の滑り性維持の点からシーラント接着層15は酸変性ポリオレフィン樹脂を押出し装置にて形成し、熱ラミネートで積層することが好ましい。
【0042】
[シーラント層]
シーラント層16は、外装材1においてヒートシールによる封止性を付与する層である。シーラント層16としては、ポリオレフィン系樹脂、又はポリオレフィン系樹脂を無水マレイン酸等の酸を用いてグラフト変性させた酸変性ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂フィルムが挙げられる。
【0043】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、低密度、中密度又は高密度のポリエチレン;エチレン−αオレフィン共重合体;ホモ、ブロック又はランダムポリプロピレン;プロピレン−αオレフィン共重合体等が挙げられる。これらポリオレフィン系樹脂は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂を変性する酸としては、例えば、シーラント接着層15の説明で挙げたものと同じものが挙げられる。
【0045】
シーラント層16は、単層フィルムでも多層フィルムでもよく、必要とされる機能に応じて選択すればよい。例えば、防湿性を付与する点では、エチレン−環状オレフィン共重合体やポリメチルペンテン等の樹脂を介在させた多層フィルムが使用できる。
【0046】
また、シーラント層16には、難燃剤、滑剤、アンチブロッキング剤、酸化防止剤、光安定剤、粘着付与剤等の各種添加材が配合されてもよい。
【0047】
シーラント層16の厚さは、絶縁性の確保という観点から、5〜50μmが好ましく、10〜30μmがより好ましい。
【0048】
外装材1としては、ドライラミネーションによってシーラント層16が積層されたものでもよいが、シーラント層16の滑り性の点から、シーラント接着層15を酸変性ポリオレフィン系樹脂とし、サンドイッチラミネーション、又は共押出し法によって、シーラント層16が積層されたものであることが好ましい。
【0049】
<蓄電デバイス用外装材の製造方法>
以下、本実施形態の外装材1の製造方法について説明する。具体的には、同製造方法として下記工程(1)〜(3)を有する方法が挙げられるが、下記内容は一例であり、外装材1の製造方法は下記の内容に限定されない。
【0050】
工程1:金属箔層11の両面(第一の面及び第二の面)に、第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層14を形成する工程。
工程2:金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、基材層用原料(樹脂材料)を用いて基材層13を形成する工程。
工程3:金属箔層11の第二の面に形成された第二の腐食防止層14上に、シーラント接着層15を介してシーラント層16を貼り合わせる工程。
【0051】
(工程1)
金属箔層11の両面に、例えば腐食防止処理剤を塗布し、これを乾燥して第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層14を形成する。腐食防止処理剤としては、前記したセリアゾール処理用の腐食防止処理剤、クロメート処理用の腐食防止処理剤等が挙げられる。腐食防止処理剤の塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。あるいは、金属箔層11の表面を酸化処理することにより、金属箔層11の両面に金属箔層11を構成する金属元素に由来する金属酸化物の層(第一の腐食防止層12及び第二の腐食防止層14)を形成する。なお、金属箔層11の一方の面を腐食防止処理剤により処理し、他方の面を酸化処理してもよい。
【0052】
(工程2)
金属箔層11の第一の面に形成された第一の腐食防止層12上に、基材層となる基材層用原料(樹脂材料)を塗布し、これを乾燥して基材層13を形成する。塗布方法は特に限定されず、グラビアコート、リバースコート、ロールコート、バーコート等、各種方法を採用できる。塗工後は、例えば60℃にて7日間のエージング処理で硬化促進を得ることができる。
【0053】
(工程3)
基材層13、第一の腐食防止層12、金属箔層11及び第二の腐食防止層14がこの順に積層された積層体の、第二の腐食防止層14上にシーラント接着層15を形成し、積層体とシーラント層16を形成する樹脂フィルムを貼り合わせる。この際、シーラント接着層15及びシーラント層16を共押出ししすることで積層体に積層することもできる。
【0054】
以上説明した工程(1)〜(3)により、外装材1が得られる。なお、外装材1の製造方法の工程順序は、工程(1)〜(3)を順次実施する方法に限定されない。例えば、工程(3)を行ってから工程(2)を行ってもよい。
【0055】
このようにして得られた外装材1を2枚用意してシーラント層16同士を対向させ、あるいは1枚の外装材1を折り返してシーラント層16同士を対向させ、内部に発電要素や端子となるタブ部材等を配置し、周縁をヒートシールにより接合することで、外装材1を用いた蓄電デバイスのセルが完成する。
【実施例】
【0056】
以下、実施例によって本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の記載によって限定されない。
【0057】
[使用材料]
実施例及び比較例の外装材の作製に使用した材料を以下に示す。
【0058】
(基材層)
【表1】
【0059】
(基材層側腐食防止層:第一の腐食防止層)
腐食防止層B−1:酸化セリウム層(層厚100nm)
腐食防止層B−2:酸化クロム層(層厚100nm)
腐食防止層B−3:酸化アルミ層(層厚100nm)
【0060】
(金属箔層)
金属箔C−1:軟質アルミニウム箔8021材(東洋アルミニウム社製、厚さ30μm)
金属箔C−2:銅箔(JX金属社製、厚さ30μm)
金属箔C−3:ステンレス箔(日本金属社製、厚さ30μm)
【0061】
(シーラント層側腐食防止層:第二の腐食防止層)
腐食防止層D−1:酸化セリウム層(層厚100nm)
【0062】
(シーラント接着層)
接着樹脂E−1:無水マレイン酸でグラフト変性したポリプロピレン系樹脂(商品名「アドマー」、三井化学社製、層厚10μm)
【0063】
(シーラント層)
熱融着樹脂F−1:ポリプロピレン系樹脂(商品名「プライムポリプロ」、プライムポリマー社製、層厚20μm:滑剤である不飽和脂肪酸アマイド含有)
【0064】
(外装材の作製)
金属箔C−1、C−2又はC−3の一方の面に腐食防止層D−1をダイレクトグラビア塗工にて形成した。次に腐食防止層D−1が形成されていない金属箔C−1、C−2又はC−3の他方の面に、腐食防止層B−1、B−2又はB−3をダイレクトグラビア塗工にて形成した。実施例においては、金属箔C−1、C−2又はC−3において腐食防止層B−1、B−2又はB−3を形成した面に、それぞれ基材層用原料A−1(実施例1)〜A−11(実施例15)のいずれかを塗工し、基材層(塗工層)を形成した。
【0065】
一方、比較例においては、金属箔C−1において腐食防止層B−1を形成した面に、それぞれ基材層用原料A−12(比較例1)〜A−14(比較例3)を塗工し、基材層を形成した。比較例2においては、基材層を形成後、形成した基材層上に、ダイレクトグラビア塗工により、反応性基を有しないポリエーテル変性ポリジメチルシロキサンを塗布した。
【0066】
次に、得られた各実施例及び比較例の積層体の腐食防止層D−1側に、押出し装置にて接着樹脂E−1と熱融着樹脂F−1を共押出してシーラント接着層とシーラント層を形成した。以上の工程を経て、各実施例及び比較例の外装材を作製した。
【0067】
[各種評価]
以下の方法に従って各種評価を行った。評価結果を表2に示す。
【0068】
[滑り性の評価]
各例で得られた外装材を幅60mm、長さ120mmにカットし、測定用おもり(幅60mm、長さ100mm)に基材層面が外側になるよう取り付けた。また、測定機本体側の試料として、外装材を幅85mm、長さ250mmにカットし、測定機本体へ基材層面が外側になるよう取り付けた。測定機は摩擦測定機AN−S2(東洋精機製作所社製)を用いた。測定機本体へ取り付けた外装材の基材層とおもりに取り付けた外装材の基材層が接するようにおもりを設置し、測定機の測定台を傾斜させ、おもりが滑り出す角度(弧度法)の正接を静摩擦係数とした(JIS P8147 傾斜法)。得られた静摩擦係数について、以下の基準に従って評価した。
「A」:静摩擦係数が0.20未満。
「B」:静摩擦係数が0.20以上、0.25未満。
「C」:静摩擦係数が0.25以上。
【0069】
【表2】
【0070】
本発明の構成を有する実施例では、外装材の外層側(基材層側)の滑り性に優れる、蓄電デバイス用外装材を提供することができた。