(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前記インクジェットプリンターを含む液体噴射装置において、装置本体の上部に、前記装置本体に対して開閉する開閉体が設けられる場合がある。
例えば、特許文献1の複合機10には、装置本体としてのプリンタ部11の上部に、プリンタ部11に対して開閉する開閉体であるフラットベッドスキャナ(符号なし)が設けられている。
【0006】
ここで、例えば前記開閉体が開けられた状態で、前記液体収容部への液体の補充が開始されると、前記液体の補充中に前記開閉体が不用意に閉じて、前記液体収容部に装着された補充容器に前記開閉体が接触する虞がある。
【0007】
複合機10において、インクタンク100の注入口50の位置は、前記フラットベッドスキャナによる開閉領域から外れているので、インクタンク100へのインク補充時に、注入口50に装着される補充容器に前記フラットベッドスキャナが当たる虞は少ないが、装置は大型化する。
【0008】
そこで、本発明の目的は、装置の大型化を抑制しつつ、前記液体収容部の注入口に補充容器を装着して前記液体収容部への液体の補充を行う際に、前記補充容器への前記開閉体の接触の虞を低減することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係る液体噴射装置は、液体を噴射する液体噴射手段を備える装置本体と、前記装置本体の上部の少なくとも一部を開閉する第1の開閉体と、前記装置本体に設けられ、前記液体噴射手段に供給する前記液体を収容するとともに、前記液体を補充容器から注入可能な注入口を備える複数の液体収容部と、を備え、複数の前記注入口のうち、少なくとも一つは、前記第1の開閉体によって開閉される開閉領域の内側にあり、他の前記注入口が、前記開閉領域の外側にある、ことを特徴とする。
【0010】
本態様によれば、複数の前記注入口のうち、少なくとも一つの前記注入口は、前記第1の開閉体によって開閉される開閉領域にあるので、前記液体収容部を省スペースに配設することができる。また、他の注入口は前記開閉領域の外側にあるので、前記補充容器を前記注入口に装着して行う前記液体収容部への液体の補充中に、前記第1の開閉体が前記補充容器に直接接触して前記補充容器が前記注入口から外れ、前記液体が漏れ出る虞を低減できる。以って、前記液体収容部への液体の補充を安定して行うことができる。
【0011】
本発明の第2の態様に係る液体噴射装置は、第1の態様において、前記注入口の上部を開閉する第2の開閉体を備える、ことを特徴とする。
【0012】
本態様によれば、前記注入口の上部を開閉する第2の開閉体を備える前記液体噴射装置において、前記第1の態様と同様の作用効果が得られる。
【0013】
本発明の第3の態様に係る液体噴射装置は、第2の態様において、前記第2の開閉体は、前記第1の開閉体に接触可能な接触部を備え、前記第2の開閉体が開状態のときに前記接触部において前記第1の開閉体と当接し、前記第1の開閉体を、前記注入口に装着された前記補充容器から離間する開き角度に保持する、ことを特徴とする。
【0014】
本態様によれば、前記第2の開閉体が、前記第1の開閉体に接触可能な接触部を備え、前記第2の開閉体が開状態のときに前記接触部において前記第1の開閉体と当接し、前記第1の開閉体を、前記注入口に装着された前記補充容器から離間する開き角度に保持するので、前記液体収容部への液体の補充中に、前記第1の開閉体が前記補充容器に接触して前記補充容器が前記注入口から外れ、前記液体が漏れ出る虞を低減できる。
【0015】
本発明の第4の態様に係る液体噴射装置は、第3の態様において、複数の前記注入口のそれぞれに対して設けられ、前記注入口を開閉する第3の開閉体を備え、前記第3の開閉体は、前記注入口を閉じた状態において、閉じた状態の前記第2の開閉体によって覆われる、ことを特徴とする。
【0016】
本態様によれば、前記注入口を開閉する第3の開閉体を備え、当該第3の開閉体は、前記注入口を閉じた状態において、閉じた状態の前記第2の開閉体によって覆われるので、前記液体収容部からの前記液体の蒸発や、前記液体噴射装置の移動時における前記注入口からの液漏れを低減できる。
【0017】
本発明の第5の態様に係る液体噴射装置は、第4の態様において、前記第2の開閉体及び前記第3の開閉体は、自立可能な開き角度まで回動可能に構成されており、前記第3の開閉体は、前記第2の開閉体に当接可能な当接部を備え、自立して開いた状態の前記第2の開閉体に前記当接部が当接することにより自立して開くとともに、前記注入口に接続された前記補充容器から離間する、ことを特徴とする。
【0018】
本態様によれば、前記第2の開閉体及び前記第3の開閉体は、自立可能な開き角度まで回動可能に構成されており、前記第3の開閉体は、前記第2の開閉体に当接可能な当接部を備え、自立して開いた状態の前記第2の開閉体に前記当接部が当接することにより自立して開くとともに、前記注入口に接続された前記補充容器から離間するので、例えば、前記補充容器を前記注入口に装着しているときに、前記第3の開閉体が閉じる方向に回動して前記補充容器に接触する虞を低減することができる。
【0019】
本発明の第6の態様に係る液体噴射装置は、第4の態様または第5の態様において、前記第2の開閉体の回動領域、及び前記第3の開閉体の回動領域は、前記第1の開閉体の回動軸の軸線方向に沿って見た場合に、それぞれの少なくとも一部が、前記第1の開閉体の回動領域の少なくとも一部に重なる、ことを特徴とする。
【0020】
本態様によれば、前記第2開閉体及び前記第3の開閉体を省スペースに配置して、第5の態様と同様の作用効果が得られる。
【0021】
本発明の第7の態様に係る液体噴射装置は、第2の態様から第6の態様のいずれか一つにおいて、複数の前記液体収容部は装置前面側における装置側部に配置されるとともに、前記装置本体の外部を構成する筐体のうち複数の液体収容部の側面を覆う第1部位は、前記第1部位より装置後方側の第2部位よりも側方に突出しており、前記第2の開閉体の開閉を検知する開閉センサーが、装置幅方向において、前記第1部位と前記第2部位との間に配置されている、ことを特徴とする。
【0022】
本態様によれば、前記第2の開閉体の開閉を検知する開閉センサーが、装置幅方向において前記第1部位と前記第2部位との間に配置されているので、前記開閉センサーの配置によって装置の横幅が増大することを防止できる。
【0023】
本発明の第8の態様に係る液体噴射装置は、第7の態様において、前記液体噴射手段を備えるとともに装置幅方向に移動するキャリッジユニットを備え、前記開閉センサーの少なくとも一部が、装置幅方向からの平面視において前記キャリッジユニットの少なくとも一部と重なる、ことを特徴とする。
【0024】
本態様によれば、前記開閉センサーの設置に伴う装置奥行方向の寸法の増大を抑制できる。
【0025】
本発明の第9の態様に係る液体噴射装置は、第7の態様または第8の態様において、前記開閉センサーは、前記第2の開閉体の開閉に伴い変位する被検知部と、前記被検知部の変位を検知する検知部と、を備え、前記液体噴射手段により液体が噴射される空間と、前記検知部と、の間に壁部を有する、ことを特徴とする。
【0026】
本態様によれば、前記液体噴射手段により液体が噴射される空間と、前記検知部と、の間に壁部を有するので、前記検知部に液体噴射手段から液体が噴射された際に生じるミストが付着する虞を低減できる。以って、前記ミストの付着による前記検知部の検出精度の低下を抑制することができる。
【0027】
本発明の第10の態様に係る液体噴射装置は、第1の態様から第9の態様のいずれか一つにおいて、前記第1の開閉体は、原稿を読み取るスキャナーユニットである、ことを特徴とする。
【0028】
スキャナーユニットは、単なるカバーよりも重量があるため、前記注入口に装着された前記補充容器に接触すると、前記補充容器が外れたりずれたりする虞が高くなる。本態様によれば、重量物であるスキャナーユニットが前記補充容器に接触して、前記補充容器が外れる等の虞を低減できる。
【発明を実施するための形態】
【0030】
[実施例1]
まず、本発明に係る「液体噴射装置」の一例としてのインクジェットプリンター1(以下、単にプリンター1と称する)の概略について説明する。
図1は、本発明に係るプリンターの外観斜視図である。
図2は、操作パネルを装置前面側に回動させた状態におけるプリンターの外観斜視図である。
図3は、スキャナー及びインクタンクカバーを装置本体に対して開状態とした際のプリンターの外観斜視図である。
図4は、装置本体の構成を説明する斜視図である。
図5は、装置本体からインクタンク部の第1の筐体及びインクタンクカバーを取り外した状態を示す図である。
図6は、装置本体の内部の要部拡大図である。
図7は、本発明に係るプリンターにおいてインク注入口に補充容器を取り付けた状態を示す図である。
図8は、
図7の側面図である。
図9は、
図7の上面図である。
【0031】
図10は、
図9の要部拡大図である。
図11は、
図1におけるA−A矢視断面の要部拡大図である。
図12は、スキャナーユニット、インクタンクカバー、及び注入口カバーの回動領域を示す図である。
図13は、インクタンクカバーの要部拡大図である。
図14は、インクタンクカバーを開いた状態のインクタンク部の斜視図である。
図15は、インクタンクカバーの開閉センサーの周辺を背面側から見た斜視図である。
図16は、
図14のD−D矢視断面図である。
【0032】
尚、各図において示すX−Y−Z座標系は、X軸方向が記録装置の幅方向であって記録ヘッドの移動方向、Y軸方向が記録装置の奥行方向及び媒体搬送方向、Z軸方向が装置高さ方向を示している。尚、各図において+X軸方向側を装置左側とし、−X軸方向側を装置右側とし、+Y軸方向を装置前面側とし、−Y軸方向側を装置背面側とし、+Z軸方向側を装置上方側とし、−Z軸方向側を装置下方側とする。
【0033】
<プリンターの全体構成>
以下、プリンター1の全体構成について概説する。プリンター1(
図1)は、液体を噴射する「液体噴射手段」としての記録ヘッド20(
図4)を備える装置本体2と、装置本体2の上部の少なくとも一部を開閉する「第1の開閉体」として、原稿を読み取るスキャナーユニット3を備えている。
【0034】
図1のプリンター1の装置前面側において符号4は、電源ボタンや各種印刷設定・記録実行を行う操作ボタン、印刷設定内容や印刷画像のプレビュー表示などを行う表示部等を備えて構成される操作パネル4である。そして、操作パネル4は、
図2に示すように装置本体2に対して装置前面側に回動可能に取り付けられている。
【0035】
また、
図2に示すように操作パネル4が回動した状態となると、装置本体2に格納されている媒体排出トレイ9が進出可能となる。媒体排出トレイ9は、装置本体2内に格納された位置(
図2実線部参照)と、装置本体2から装置前面側に引き出された位置(
図2二点鎖線部参照)との間を進退可能に構成されている。
また、装置本体2において媒体排出トレイ9の装置下方側には、媒体を収容可能な媒体収容部5が装置本体2に対して装置前面側から挿抜可能に装着されている。
【0036】
また、装置本体2の上部に設けられるスキャナーユニット3は、
図3に示すように装置背面側に回動軸31(
図8、
図12を参照)を有し、装置本体2に対して回動可能に構成されており、装置本体2に対して閉じた姿勢(
図1及び
図2参照)と開いた姿勢(
図3参照)とを切換可能である。
【0037】
また、
図1乃至
図4において装置本体2の装置前面側であって装置右側端部には、インクタンク部6が設けられている。インクタンク部6は、後述する記録ヘッド20に供給する「液体」としての各色のインクを収容する「液体収容部」としての複数のインクタンク10(
図5)と、複数のインクタンク10を囲う第1の筐体7と、第1の筐体7に対して回動可能に取り付けられた「第2の開閉体」としてのインクタンクカバー8とを備えている。装置本体2は、インクタンク部6を構成する第1の筐体7と、記録ヘッド20を備えたキャリッジユニット12を含む記録機構部を主として収容する第2の筐体22を備えて構成されており、インクタンク部6は、キャリッジユニット12から独立して設けられている。インクタンク部6については、後で更に説明する。
【0038】
次に、
図4において、インクタンク部6の背面側(−Y軸方向)には、「液体噴射ヘッド」としての記録ヘッド20を備えるキャリッジユニット12が配置されている。記録ヘッド20は、キャリッジユニット12の下部に設けられている。一例として、キャリッジユニット12は、装置本体2内において走査方向として装置幅方向(X軸方向)に往復動可能に構成されている。キャリッジユニット12の駆動機構をより具体的に説明すると、装置奥行方向においてキャリッジユニット12の背面側(−Y軸方向)には、駆動モーター13が設けられている。
【0039】
駆動モーター13の駆動軸には駆動プーリー(
図4では見えていないが、駆動モーター13の装置前面側にある)が設けられている。また、
図4に示す装置本体2内において、不図示の前記駆動プーリーに対して装置幅方向に間隔をあけた位置に従動プーリー15が設けられている。従動プーリー15は、前記駆動プーリーに対して従動回転可能に設けられている。前記駆動プーリーと従動プーリー15には無端ベルト16が掛けまわされている。そして、無端ベルト16の少なくとも一部は、キャリッジユニット12の背面側においてキャリッジユニット12に取り付けられている。
【0040】
駆動モーター13が回転駆動すると無端ベルト16が回転駆動させられて、無端ベルト16に取り付けられたキャリッジユニット12がX軸方向に移動する。尚、一例として、装置本体2内において
図4に示すキャリッジユニット12の位置がキャリッジユニット12のホームポジションとして設定されている。
尚、
図4において、キャリッジユニット12の前面側及び背面側には、X軸方向に延設される第1フレーム27及び第2フレーム28が設けられており、キャリッジユニット12は、第1フレーム27及び第2フレーム28にガイドされて移動するようになっている。
【0041】
また、
図6に示すキャリッジユニット12の内部には、インクタンク10から記録ヘッド20に向けて送られるインクの供給を中継する中継アダプター17が複数装着されている。中継アダプター17は記録ヘッド20に設けられるノズル(不図示)にインクを供給可能に構成されている。
そして、各中継アダプター17は、インクタンク10から送られるインクを中継アダプター17に供給するインク供給チューブ18を介してインクタンク10に接続されている。
図6において符号19は、中継アダプター17におけるインク供給チューブ18の接続部19である。尚、
図6では接続部19を分かり易く示すために、
図6において点線で囲った符号18aで示す部分から接続部19までのインク供給チューブ18の記載を省略しているが、実際は接続部19にインク供給チューブ18の一端が接続されている。
【0042】
続いて、
図4において、記録ヘッド20の下方には装置幅方向に延びる媒体支持部材23が設けられている。また、媒体支持部材23の背面側には搬送ローラー対24が設けられている。
【0043】
ここで、主として
図4を参照してプリンター1の媒体の記録動作について説明すると、媒体収容部5に収容された媒体は、不図示の給送手段により、搬送ローラー対24まで給送される。そして、搬送ローラー対24は媒体をニップして、記録ヘッド20の下方側において記録ヘッド20と対向する領域に媒体を送り込む。そして、媒体支持部材23に支持された媒体は、記録ヘッド20と対向する面に記録ヘッド20のノズル(不図示)から噴射されたインクを受ける。これにより、媒体において記録ヘッド20と対向する面に記録が実施される。そして、記録が行われた媒体は、装置本体2の装置前面側に突出した媒体排出トレイ9(
図2)に向けて排出される。
【0044】
■■■インクタンク部について■■■
次に、インクタンク部6の詳細な構成について説明する。
インクタンク10は、補充容器25(
図7)からインクを注入可能に構成されており、
図3の様にインクタンクカバー8(第2の開閉体)を開くと、「第3の開閉体」としての注入口カバー11(
図14も参照)が露呈する。それぞれの注入口カバー11a、11b、11c、11d、11e(
図14)は、各色のインクタンク10a、10b、10c、10d、10e(
図5)に設けられたインク注入口26a、26b、26c、26d、26e(
図10)を封止するカバーであり、インク注入口26a、26b、26c、26d、26eのそれぞれに対して設けられ、インクタンク10の背面側(−Y軸方向)に回動軸33(
図8、
図12)を有してインクタンク10に対して回動可能に取り付けられている。
言い換えると、インク注入口26を開閉する注入口カバー11は、インク注入口26を閉じた状態において、閉じた状態のインクタンクカバー8によって覆われる様になっている。そして、注入口カバー11を開くことにより、
図7乃至
図9のように補充容器25をインク注入口26(インク注入口26a)に装着して、インクの補充を行うことができる。
【0045】
また、インク注入口26を注入口カバー11により開閉することができるとともに、インク注入口26を閉じた状態の注入口カバー11が、閉じた状態のインクタンクカバー8によって覆われることにより、インクタンク10からのインクの蒸発や、プリンター1の移動時におけるインク注入口26からの液漏れの虞を低減することができる。
【0046】
本実施例において、インクタンク10は
図5に示すように5つ設けられており、各インクタンク10には、一例としてブラック、マゼンタ、イエロー、シアン、フォトブラックのインクがそれぞれ収容されている。また、インクタンク部6の装置前面側には、各インクタンク10におけるインクの残量を確認可能な表示部6a(
図1)が設けられている。
【0047】
また、各インクタンク10は、装置背面側に設けられるバッファータンク38(
図6)と、接続チューブ39によって接続されている。
例えば、プリンター1の周囲の気温が上昇した際、注入口カバー11が前記インク注入口(不図示)を閉鎖した状態であるとインクタンク10内の気圧が高まり、インクタンク10に収容されたインクがバッファータンク38内に押し出されることがある。
【0048】
一例として、各バッファータンク38におけるインク収容量は、接続チューブ39により接続されているインクタンク10のインク収容量と略同じ量、あるいはそれ以上に設定されている。したがって、インクタンク10に収容されたインクがバッファータンク38内に流れ込んでも、バッファータンク38からインクが漏れ出ることを防止、あるいは抑制できる。
【0049】
<<インクタンクの配置について>>
インクタンク部6は、
図1に示すように、装置幅方向(X軸方向)において少なくとも一部が閉じた姿勢のスキャナーユニット3の下方に位置するように配置されている。
そして、スキャナーユニット3が装置本体2に対して開いた姿勢を取ると、インクタンクカバー8が完全に露呈して、
図3に示すようにインクタンクカバー8を開くことができる様になっている。インクタンクカバー8は、第1の筐体7の背面側(−Y軸方向)に回動軸32(
図8)を有して第1の筐体7に対して回動可能に取り付けられて、後述するインク注入口26(
図5、
図8)の上部を開閉する様になっている。
【0050】
ここで、インクタンク10の複数のインク注入口26a、26b、26c、26d、26eのうち、少なくとも一つ(本実施例では
図10に示すインク注入口26c、26d、26e)は、
図10に示すようにスキャナーユニット3(第1の開閉体)によって開閉される開閉領域、すなわち、装置本体2の上部においてスキャナーユニット3によって覆われる領域の内側にあり、他のインク注入口26a、26bが、前記開閉領域の外側にある。尚、
図10においてインク注入口26cのように、注入口の一部が前記開閉領域にかかっている場合は、前記開閉領域の内側にあるものとする。
【0051】
このように複数のインク注入口26a、26b、26c、26d、26eを配置することにより、以下の作用効果が得られる。すなわち、一部のインク注入口26c、26d、26eが、スキャナーユニット3によって開閉される開閉領域にあることにより、インクタンク10を省スペースに配設することができる。また、
図10において、他のインク注入口26a、26bは前記開閉領域の外側にあるので、これらの前記開閉領域の外側にあるインク注入口26a、或いはインク注入口26bに補充容器25を装着してインクタンク10へインクを補充している最中に、スキャナーユニット3が不意に閉じたとしても、スキャナーユニット3が補充容器25に直接接触して補充容器25がインク注入口26から外れ、インクが漏れ出る虞を低く抑えることができる。従って、インクタンク10へインクの補充を安定して行うことができる。
尚、前記開閉領域の外側には、補充頻度の高い色のインク、例えばブラック等のインクタンク10のインク注入口26を配置すると良い。これにより、インクタンク10へのインク補充時に、スキャナーユニット3が閉じられて補充容器25に当たる虞を効果的に低減することができる。
【0052】
特に、本実施例における「第1の開閉体」としてのスキャナーユニット3(
図7乃至
図9を参照)は比較的重量があるため、インク注入口26に装着された補充容器25に接触すると、補充容器25が外れたりずれたりする虞が高くなるが、インク注入口26の配置をこのようにすることにより、重量物であるスキャナーユニット3が補充容器25に接触して、補充容器25が外れる等の虞を低減できる。
尚、「第1の開閉体」はスキャナーユニット3に限られず、例えば、装置本体2の上部を覆う単なるカバーであってもよい。
【0053】
<<インクタンクカバーとスキャナーユニットの関係について>>
また、本実施例のインクタンクカバー8(第2の開閉体)は、スキャナーユニット3(第1の開閉体)の開き角度を所定の角度に規制するストッパーの役割を担う。
具体的には、インクタンクカバー8は、スキャナーユニット3に接触可能な接触部8a(
図7及び
図8)を備え、
図7及び
図8のようにインクタンクカバー8が開状態のときに接触部8aがスキャナーユニット3と当接し、インクタンクカバー8がスキャナーユニット3を、インク注入口26に装着された補充容器25から離間する開き角度に保持する様になっている。言い換えると、インクタンクカバー8がスキャナーユニット3を、インク注入口26に装着された補充容器25に接触しない開き角度に保持する様になっている。
【0054】
このように、開状態のインクタンクカバー8が、スキャナーユニット3のストッパーとなることにより、インクタンク10へのインクの補充中に、スキャナーユニット3が補充容器25に接触する虞を一層確実に回避することができる。以って、インクタンク10へのインク補充時に、スキャナーユニット3が当たって補充容器25がインク注入口26から外れ、インクが漏れ出る虞を更に低減できる。
【0055】
<<インクタンクカバーと注入口カバーの関係について>>
インクタンクカバー8及び注入口カバー11は、
図8に示すように、自立可能な開き角度まで回動可能に構成されている。インクタンクカバー8(
図8)は、背面側において第2の筐体22に当接して自立して開く様に構成されている。
【0056】
また、
図10に示すように、注入口カバー11a〜注入口カバー11eのそれぞれに対して、インクタンクカバー8の被当接部29(
図12)に対して当接可能な当接部30a〜当接部30e(個々を区別する必要がない場合は総称して当接部30と言う)が設けられている。注入口カバー11(
図12においては注入口カバー11a)は、
図12に示す様に自立して開いた状態のインクタンクカバー8の被当接部29に当接部30が当接することにより自立して開くとともに、インク注入口26に接続された補充容器25から離間する様になっている。
これにより、例えば、補充容器25をインク注入口26に装着しているときに、注入口カバー11が閉じる方向に回動して補充容器25に接触する虞を低減することができる。
尚、インクタンクカバー8及び注入口カバー11において、自立可能な開き角度は、それぞれのカバーの重心位置にもよるが、概ね90°よりも大きい開き角度である。また、注入口カバー11は、インクタンクカバー8に当接することなく自立する様に構成されていてもよい。
【0057】
また、スキャナーユニット3の回動軸の軸線方向に沿って見た
図12において、インクタンクカバー8の回動領域である第2の回動領域35及び注入口カバー11の回動領域である第3の回動領域36は、それぞれの少なくとも一部が、スキャナーユニット3の回動領域である第1の回動領域34の少なくとも一部に重なっている。
この構成により、インクタンクカバー8及び注入口カバー11を省スペースに配置することができる。
尚、
図11においてインクタンクカバー8の回動軸32は、キャリッジユニット12の装置前面側に設けられる第1フレーム27(
図4も参照)よりも、装置奥行方向の後方、すなわち、−Y軸方向に設けられている。また、同じく
図11においてインクタンクカバー8の回動軸32は、インク注入口26よりも高さ方向において上側、すなわち、+Z軸方向に設けられている。
【0058】
<<インクタンクカバーの開閉センサーについて>>
インクタンク部6は、インクタンクカバー8の開閉状態を検知する開閉センサー40(
図15)を備えている。
ここで、複数のインクタンク10を収容するインクタンク部6は、
図6(
図1も参照)に示すように、装置本体2において装置前面側における−X軸方向の装置側部に配置されている。
そして、
図6を参照するに、装置本体2の外部を構成する筐体のうち複数のインクタンク10を覆う第1の筐体7において「第1部位」としての−X軸方向の側面7aは、側面7aより装置後方側に位置する「第2部位」としてのキャリッジユニット12の−X軸方向のユニット側面12aよりも−X軸方向側方に突出しており、インクタンクカバー8の開閉を検知する開閉センサー40は、装置幅方向(X軸方向)において、側面7aとユニット側面12aとの間に配置されている。尚、
図6において、符号Bと符号Cは、X軸方向における「第1部位」としての側面7aの位置と、「第2部位」としてのユニット側面12aの位置を示しており、開閉センサー40は装置幅方向であるX軸方向において、位置Bと位置Cの間に配置されている。また、
図6においては、開閉センサー40を構成する検知部42が表されている。開閉センサー40の具体的な構成は後で説明する。
【0059】
インクタンクカバー8の開閉を検知する開閉センサー40が、装置幅方向において側面7aとユニット側面12aとの間に配置されていることにより、開閉センサー40の配置によって装置の横幅が増大することを防止できる。
【0060】
また本実施例において、開閉センサー40は、少なくとも一部が、
図11に示す装置幅方向(X軸)からの平面視においてキャリッジユニット12の少なくとも一部と重なる。言い換えると、開閉センサー40は、
図17に示す様に、装置幅方向(X軸)においてキャリッジユニット12の少なくとも一部の側方に位置する。開閉センサー40をこのように配置することにより、開閉センサー40の設置に伴う装置奥行方向の寸法の増大を抑制できる。
【0061】
更に、開閉センサー40の具体的な構成について説明する。開閉センサー40は、インクタンクカバー8の開閉に伴い変位する被検知部41(
図13)と、被検知部41の変位を検知する検知部42と、を備えて構成されている。被検知部41は、
図13に示すように、インクタンクカバー8の回動軸32に対してインクタンクカバー8の反対側に突出する凸部として設けられ、インクタンクカバー8の開閉に応じてインクタンクカバー8の回動軸32を軸として回動する(
図16も参照)。
【0062】
本実施例において、検知部42は光センサーであり、受光部42aに向けて光を照射する発光部42bと、発光部42bから照射された光を受ける受光部42aを備えている(
図15、
図17)。尚、本実施例では、受光部42aが発光部42bよりも−X軸方向に位置しているが、受光部42aと発光部42bの位置は逆であってもよい。
被検知部41は、インクタンクカバー8が閉状態のときに、
図15のように受光部42aと発光部42bの間に位置して発光部42bから受光部42aに向けて照射される光を遮断し、インクタンクカバー8が開状態のときに、
図16のように受光部42aと発光部42bの間の位置から外れて、受光部42aが発光部42bから照射される光を受ける様になっている。そして、受光部42aが光を受けない状態のときに、不図示の制御部がインクタンクカバー8が閉状態であると判断し、受光部42aが受光している状態のときに、インクタンクカバー8が開状態であると判断する。
【0063】
また検知部42(受光部42a及び発光部42b)は、
図15に示すように、検知部42を囲う壁部43によって、記録ヘッド20によりインクが噴射される空間44(
図6も参照)と分けられている。記録ヘッド20によりインクが噴射される空間44(
図6)は、キャリッジユニット12の移動領域を含む、装置本体2の内部の大部分を占める領域である。記録ヘッド20によりインクが噴射される空間44と、検知部42と、の間に壁部43を設けることにより、記録ヘッド20からインクが噴射された際に生じるインクミストが検知部42に付着する虞を低減できる。以って、前記ミストの付着による検知部42の検出精度の低下を抑制することができる。
【0064】
■■■インクタンク部における他の構成■■■
以下において、
図17〜
図19を参照してインクタンク部6における他の構成について説明する。
図17は、
図14のE−E矢視断面図である。
図18は、
図17のF部を別角度から見た拡大図である。
図19は、インクタンクカバーの構成について説明する図である。
【0065】
<<インクタンクカバーの取付構成について>>
インクタンクカバー8(
図16を参照)は、回動軸32のX軸方向の端部に設けられた軸部47と軸部48が、第1の筐体7に設けられる軸受部45と軸受部46にそれぞれ取り付けられて、第1の筐体7に対して回動する様に構成されている。
そして、インクタンクカバー8の回動軸32を構成する軸部47と軸部48のうち、少なくとも一方の軸部(本実施例においては軸部48)は、第1の筐体7に設けられる軸受部46と、第2の筐体22に設けられる軸受部49(
図17及び
図18)の両方に対して取り付けられている。
【0066】
このように、インクタンクカバー8の回動軸32の軸部47と軸部48のうち、少なくとも一方の軸部48が、第1の筐体7と第2の筐体22の両方に対して取り付けられていることにより、第1の筐体7に対して取り付けられたインクタンクカバー8のがたつきを少なくすることができる。
【0067】
<<インクタンクカバーの他の構成について>>
以下、
図19を参照してインクタンクカバー8の構成について説明する。
インクタンク10のインク注入口26を封止する注入口カバー11は、インク注入口26をしっかりと封じるため、注入口カバー11の開閉には力が必要な場合がある。このため、注入口カバー11を押さえる力が弱いと、注入口カバー11がインク注入口26に対して完全に閉じられない場合がある。注入口カバー11が完全に閉じられていない状態で、インクタンクカバー8を閉じ、例えば、注入口カバー11によるインク注入口26の封止が不完全な状態に気づかないままプリンター1を移動すると、インク注入口26からインクタンク10内のインクが漏れる虞がある。
【0068】
このように、注入口カバー11が完全に閉じられず、注入口カバー11によるインク注入口26の封止が不完全な状態となることを回避するため、インクタンクカバー8の内側に、
図19に示すような押圧部60を設けることができる。
インクタンクカバー8の押圧部60は、注入口カバー11が完全に閉じられていない状態(
図19の上図)から、インクタンクカバー8が第1の筐体7に対して閉じられたとき(
図19の下図)に、インクタンクカバー8が閉じられる力によって注入口カバー11を押して、注入口カバー11を閉状態にする。インクタンクカバー8において押圧部60は、注入口カバー11におけるインク注入口26に対応する位置の近傍に設けられていることが望ましい。
【0069】
インクタンクカバー8が押圧部60を備えることにより、インクタンクカバー8を閉じる動作に連動して注入口カバー11を確実に閉じることができる。以って、注入口カバー11によるインク注入口26の封止が不完全な状態のままになる虞を低減することができる。
【0070】
また、インクタンクカバー8は、回動軸32から離れた自由端側に、第1の筐体7に対して閉じたインクタンクカバー8が小さい外力では開かないように固定する固定部材61が設けられている。
固定部材61は板バネ部61aと、板バネ部61aの先端に設けられた係合部61bとを備え、第1の筐体7には、インクタンクカバー8が際に係合部61bが係合する被係合部62が設けられている。板バネ部61aは支点部61cを支点として、先端側(係合部61b)が−Y軸方向に動くように弾性変形可能になっている。
【0071】
図19の上図のように、係合部61bが第1の筐体7よりも上側に位置してインクタンクカバー8が開いている状態から、
図19の下図のように、インクタンクカバー8が第1の筐体7に対して閉じた状態となる際には、板バネ部61aが−Y軸方向に弾性変形して係合部61bが第1の筐体7の内側に入り込み、インクタンクカバー8が完全に閉じたときに係合部61bが被係合部62に係合して、インクタンクカバー8が第1の筐体7に固定される。
このように、インクタンクカバー8に固定部材61が設けられることにより、第1の筐体7に対して閉じたインクタンクカバー8が容易に開かない構成とすることができる。
【0072】
また、インクタンクカバー8を閉じるにあたり、板バネ部61aが弾性変形して係合部61bが第1の筐体7の内側に入り込んだ後、係合部61bが被係合部62に係合する際には、板バネ部61aの弾性変形が元に戻るため、その戻り力をユーザーが手ごたえとして感じたり、音がしたりすることにより、所謂クリック感が得られる。これにより、インクタンクカバー8が閉じたことをユーザーが認識し易くなる。
【0073】
尚、固定部材61は、
図19のようにインクタンクカバー8に対して別部材として取り付けることもできるが、樹脂材料等により形成されるインクタンクカバー8に、一体成型することもできる。固定部材61を形成する材料としては、樹脂材料の他、金属材料を用いることもできる。
また、インクタンクカバー8は、押圧部60及び固定部材61いずれか一方を備える構成とすることもできる。
【0074】
尚、本発明は上記実施形態に限定されることなく、特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲内に含まれるものであることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0075】
1…プリンター(液体噴射装置)、2…装置本体、3…スキャナーユニット、
4…操作パネル、5…媒体収容部、6…インクタンク部、7…第1の筐体、
7a…側面(第1の部位)、8…インクタンクカバー、9…媒体排出トレイ、
10…インクタンク(液体収容部)、11…注入口カバー、
12…キャリッジユニット、12a…ユニット側面(第2の部位)、
13…駆動モーター、15…従動プーリー、16…無端ベルト、17…中継アダプター、
18…インク供給チューブ、19…接続部、20…記録ヘッド(液体噴射ヘッド)、
22…第2の筐体、23…媒体支持部材、24…搬送ローラー対、25…補充容器、
26…インク注入口、27…第1フレーム、28…第2フレーム、29…被当接部、
30…当接部、31…回動軸、32…回動軸、33…回動軸、34…第1の回動領域、
35…第2の回動領域、36…第3の回動領域、38…バッファータンク、
39…接続チューブ、40…開閉センサー、41…被検知部、42…検知部、
42a…受光部、42b…発光部、43…壁部、44…空間、45、46…軸受部、
47、48…軸部、49…軸受部、60…押圧部、61…固定部材、62…被係合部