【実施例】
【0062】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0063】
(参考例1)リグニン含有率、グルカン含有率の測定
セルロース含有バイオマス前処理物のリグニン含有率をA.Sluiter、外7名「Determination of Structural Carbohydrates and Lignin in Biomass」、National Renewable Energy Laboratory(NREL)、2008年4月、Revision 2012年8月を参考として測定した。セルロース含有バイオマス前処理物0.3gをビーカーに量り取り、72%硫酸3mLを加え、30℃でときどき攪拌しながら1時間放置した。この反応液を精製水84mLで混釈しながら耐圧瓶に完全に移し、120℃で1時間オートクレーブ処理した。加熱分解後、残渣と分解液にろ別し、ろ液と残渣の水洗浄液を加えて100mLにしたものを加水分解液とした。残渣は105℃で乾燥して重量を測った。さらに残渣中の灰分を、600℃で強熱することで求めた。分解残渣量から残渣中の灰分量を引いた酸不溶性リグニン量をバイオマス前処理物のリグニン含有量とした。そこから、リグニン含有率を式1で求めた。
【0064】
加水分解液中のグルコースとキシロースは以下に示す条件でHPLCにより分析し、標品との比較により定量した。さらに、得られたグルコース量から、グルカン含有率(%)を前述した式2で求めた。
<HPLC条件>
カラム:Asahipak NH2P-50 4E(Shodex製)
移動相:0.5%りん酸超純水/0.5%りん酸アセトニトリル=12/88(vol.)(流速1.0ml/min)
反応液:りん酸/酢酸/フェニルヒドラジン=220/180/6(vol.)(流速0.4ml/min)
検出方法:蛍光検出法
カラムオーブン温度:40℃
反応槽温度:150℃。
【0065】
(参考例2)MLSS濃度の測定方法
糖化液中の固形分量の指標として、MLSS(Mixed Liquor Suspended Solids)を用いた。MLSSの測定は、日本工業規格に基づくJISK0102 14.1(2008年)に準拠して測定した。ガラス繊維ろ紙(ADVANTEC東洋濾紙株式会社製GS−25)をろ過用フィルターホルダー(ADVANTEC東洋濾紙株式会社製KP−47S)にセットしてRO水約200mLを吸引ろ過し、105℃で1時間過熱後、ガラス繊維ろ紙の重量(a mg)を測定した。次に乾燥させたガラス繊維ろ紙を用いてサンプル液VmLを吸引ろ過した。再度ガラス繊維ろ紙を105℃で2時間加熱した後に重量(b mg)を測定し、MLSS濃度を以下の(式6)で求めた。ただし、再現性を良くするために、bの値が20−40mgとなるようにVの値は調整して測定を行った。
【0066】
MLSS濃度(mg/L)=(b−a)(mg)/V(mL)×1000・・・(式6)。
【0067】
(参考例3)セルロース含有バイオマス前処理物の糖化液の調製
セルロース含有バイオマス前処理物の含水率を測定後、前記の絶乾処理バイオマス換算で固形分濃度が5重量%となるようにRO水を添加した。pHを5に調整し、アクセルレース・デュエット(ダニスコジャパン製)を添加し、50℃で24時間攪拌混合しながら加水分解反応を行い、セルロース含有バイオマス前処理物糖化液を得た。
【0068】
(参考例4)濁度の測定
濁度の測定は、HACH社製室内用高度濁度計(2100N)を用いて行った。
【0069】
(参考例5)糖濃度の測定
グルコースとキシロースの量は、以下に示す条件でHPLCにより分析し、標品との比較により定量した。
カラム:Luna NH2(Phenomenex社製)
移動相:超純水:アセトニトリル=25:75(流速0.6mL/min)
反応液:なし
検出方法:RI(示差屈折率)
温度:30℃。
【0070】
(参考例6)セロビオース分解活性の測定
50mM酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)に15mMとなるようにD(+)−セロビオース(和光純薬製)を溶解したものを基質溶液とした。500μL基質溶液に酵素5μLを添加し、50℃で回転混和しながら、0.5時間反応させた。反応後、チューブを遠心分離し、その上清成分のグルコース濃度を参考例5の方法で測定した。セロビオース分解活性は、生成したグルコース濃度(g/L)をそのまま活性値とした。
【0071】
(参考例7)水熱処理バガス糖化液のフィルタープレスによる固液分離
バガス(台糖農産販売株式会社)を水に浸漬し、攪拌しながら200℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は、7MPaであった。オートクレーブ処理後は、溶液成分と固形分成分に固液分離した。この固形分を水熱処理バガスとして、リグニン含有率を参考例1の方法で求めたところ、12%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを5に調整した。
【0072】
得られた糖化液2Lを用いてフィルタープレスによる固液分離を試みた。フィルタープレスは薮田産業株式会社製の小型濾過装置MO−4を使用した。0.05MPaで5分間処理をしたところ、1200mLのろ液を得ることができ、リグニン含有率12%のセルロース含有バイオマス前処理物の糖化液は従来法のフィルタープレスによる固液分離が有効であることを確認した。
【0073】
(比較例1)広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液のフィルタープレスによる固液分離
広葉樹未晒しクラフトパルプとして、シートウェットパルプ(兵庫パルプ株式会社製)を使用した。シートウェットパルプのリグニン含有率、グルカン含有率を参考例1の方法により測定した。
【0074】
シートウェットパルプのリグニン含有率は1%であった。またグルカン含有率は73%であった。
【0075】
このシートウェットパルプから参考例3の方法で糖化液を得た。酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を100mMになるように添加することによりpHを5に調整した。得られた糖化液2Lを用いてフィルタープレスによる固液分離を試みた。フィルタープレスは薮田産業株式会社製の小型濾過装置MO−4を使用した。0.05MPaで5分間処理をしたところ、80mLのろ液しか得ることができなかった。参考例7と比べてろ過速度が1/10程度に低下した。リグニン含有率が低いセルロース含有バイオマス前処理物の糖化液はフィルタープレスによる方法では固液分離が不十分であり、コストに見合った固液分離方法とはいえない。
【0076】
(比較例2)
比較例1と同様の広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液を遠心分離機に供し、1500Gで1分間遠心分離し、上清を回収した。遠心上清の濁度を参考例4の方法で測定し、結果を表1に示す。遠心上清は680NTUと高い濁度であり、リグニン含有率1%のセルロース含有バイオマス前処理物の糖化液は従来法の遠心分離によって十分に固液分離出来なかった。
【0077】
【表1】
【0078】
(実施例1)広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液の全循環ろ過運転
比較例1と同様の糖化液2Lを、温度30℃、膜面線速度30cm/secで、精密ろ過膜にチューブポンプを用いて供給し、ろ過速度0.5m/dでクロスフローろ過しながら、ろ液を供給槽に戻し、全循環運転を行った。精密ろ過膜としては、東レ株式会社製の精密ろ過膜モジュール“トレフィル(登録商標)”HFSに使用されている公称孔径0.05μmのポリフッ化ビニリデン製中空糸膜を切り出し、中空糸膜22本からなる内径10mm、長さ320mmのミニチュアモジュールを作成して使用した。28分間クロスフローろ過を行い、2分間1.5m/dayでRO水を用いて逆洗浄を行い、回収物をろ過系外に回収した。ろ過から逆洗浄までを1サイクルとし、10サイクル毎に空気洗浄を行い、逆洗浄で回収できなかった膜面のケークを回収した。空気洗浄はモジュールの非透過側に0.8L/minで空気を10秒間吹き込み膜面に形成されたケークを剥離し、その後モジュールの非透過側に30cm/secでRO水を30秒間送液して剥離したケークを回収する操作を8回繰り返し行なった。供給槽内のMLSS濃度を参考例2の方法で測定した。ろ過前のMLSS濃度に対する10サイクル毎のMLSS濃度の割合を固形分率(%)として、以下の(式7)で求めた。
【0079】
固形分率(%)=10サイクル毎のMLSS濃度/ろ過前のMLSS濃度×100・・・(式7)。
【0080】
10サイクル目と20サイクル目の固形分率の計算結果を表2に示した。これらの結果から、固形分率がサイクル数を重ねるにつれ、減少していくことが分かった。リグニン含有率が1%である広葉樹未晒しパルプ糖化液は精密ろ過膜での固液分離が有効であった。また、膜間差圧を求めることで、膜の目詰まりの度合いを評価した。膜間差圧はモジュール入り口圧力(P1)、モジュール出口圧力(P2)、透過側圧力(P3)を測定し、(式4)を用いて計算した。ろ過開始時の膜間差圧を測定時の膜間差圧から引いた値を上昇差圧として、20サイクル目のろ過終了時点での値を表2に示した。上昇差圧は2kPaであり、膜面の固形分を回収することで膜の目詰まりによる差圧の上昇を抑えることができた。
【0081】
さらに得られた糖液の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表1に示す。比較例2の場合と比べて、濁度が著しく低下し、この結果からも精密ろ過による固液分離が有効であることが明らかとなった。
【0082】
(実施例2)針葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液の全循環ろ過運転
針葉樹未晒しクラフトパルプとして、セロファイバー(兵庫パルプ株式会社製)を使用した。セロファイバーのリグニン含有率を参考例1の方法により測定したところ、4%であった。また、グルカン含有率は77%であった。このセロファイバーから参考例3方法で糖化液を得た。酢酸ナトリウム緩衝液(pH5.2)を100mMになるように添加することによりpHを5に調整した。
【0083】
糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。リグニン含有率4%の針葉樹未晒しパルプ糖化液も実施例1と同様に、固形分率(%)が減少傾向であり、精密ろ過膜での固液分離が有効であった。また、上昇差圧は2kPaであり、実施例1と同様に膜面に形成されたケークを回収することで膜の目詰まりによる差圧の上昇を抑えることができた。
【0084】
さらに得られた糖液の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表1に示す。比較例2の場合と比べて、濁度が著しく低下し、この結果からも精密ろ過による固液分離が有効であることが明らかとなった。
【0085】
(実施例3)酢酸処理コーンコブ糖化液の全循環ろ過
常圧酢酸パルプ化は、特許第3811833号を参考にして行った。コーンコブ(株式会社日本ウオルナット)に80%酢酸水と、72%硫酸を0.32%となるように加え、4時間沸騰させた後加熱を停止した。固形分を吸引ろ過で分離し、水で十分に洗浄して、酢酸処理コーンコブを得た。この酢酸処理コーンコブのリグニン含有率を参考例1の方法で測定したところ6%であった。また、グルカン含有率は71%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5に調整した。
【0086】
糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。リグニン含有率6%の酢酸処理コーンコブ糖化液も実施例1、2と同様に、固形分率(%)が減少傾向であり、精密ろ過膜で固形分のろ過が有効であった。また、上昇差圧は4kPaであり、実施例1、2と同様に膜面に形成されたケークを回収することで膜の目詰まりによる膜間差圧の上昇を抑えることができた。
【0087】
さらに得られた糖液の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表1に示す。比較例2の場合と比べて、濁度が著しく低下し精密ろ過膜による固液分離が有効であることが明らかとなった。
【0088】
(実施例4)酢酸処理おがくず糖化液の全循環ろ過
常圧酢酸パルプ化は特許第3811833号を参考にして行った。おがくずに80%酢酸水と、72%硫酸を0.32%となるように加え、4時間沸騰させた後加熱を停止した。固形分を吸引ろ過で分離し、水で十分に洗浄して、酢酸処理コーンコブを得た。この酢酸処理コーンコブのリグニン含有率を参考例1の方法で測定したところ8.5%であった。また、グルカン含有率は75%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpH5に調整した。
【0089】
糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。リグニン含有率8.5%の酢酸処理おがくず糖化液も実施例1、2と同様に、固形分率(%)が減少傾向であり、精密ろ過膜で固形分のろ過が有効であった。また、上昇差圧は6kPaであり、実施例1、2、3と同様に膜面に形成されたケークを回収することで膜の目詰まりによる膜間差圧の上昇を抑えることができた。
【0090】
さらに得られた糖液の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表1に示す。比較例2の場合と比べて、濁度が著しく低下し精密ろ過膜による固液分離が有効であることが明らかとなった。
【0091】
(比較例3)アンモニア処理バガスの糖化液の全循環ろ過
バガス(台糖農産販売株式会社)を小型反応器(耐圧硝子工業製、TVS−N230mL)に投入し、液体窒素で冷却した。この反応器にアンモニアガスを流入し、資料を完全に液体アンモニアに浸漬させた。リアクターの蓋を閉め、室温で15分ほど放置した。次いで、150℃のオイルバスにて1時間処理した。処理後、反応器をオイルバスから取り出し、ドラフト中で直ちにアンモニアガスをリーク後、さらに真空ポンプで反応器内を10Paまで真空引きし、乾燥させた。このアンモニア処理バガスのリグニン含有率を参考例1の方法で測定したところ、18%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、硫酸を用いてpH5に調整した。
【0092】
糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。これらの結果から、サイクル数を重ねても、固形分率(%)は横這いであり、リグニン含有率18%のアンモニア処理バガス糖化液では、厚いケーク層が形成されず、精密ろ過膜で固形分を十分にろ過することができなかった。また、上昇差圧は70kPaであり、実施例1から4と比較して膜間差圧が高く、ろ過性能が低下した。
【0093】
(比較例4)水熱処理バガスの糖化液の全循環ろ過
バガス(台糖農産販売株式会社)を水に浸漬し、攪拌しながら200℃の温度で20分間オートクレーブ処理(日東高圧株式会社製)した。その際の圧力は、7MPaであった。オートクレーブ処理後は、溶液成分と固形分成分に固液分離した。この固形分を水熱処理バガスとして、リグニン含有率を参考例1の方法で求めたところ、12%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを5に調整した。
【0094】
糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。これらの結果から、サイクル数を重ねても、固形分率(%)は横這いであり、リグニン含有率12%の水熱処理バガス糖化液では、膜面に厚いケーク層が形成されず、精密ろ過膜で固形分を十分にろ過することができなかった。また、上昇差圧は50kPaであり、実施例1から4と比較して膜間差圧が高く、ろ過性能が低下した。
【0095】
(比較例5)NaOH処理コーンコブ糖化液の全循環ろ過
コーンコブ(株式会社日本ウオルナット)に水酸化ナトリウムをコーンコブ1gに対して30mgになるように添加し、室温で24時間攪拌しながら反応後、固液分離した。リグニン含有率を参考例1の方法で求めたところ、10%であった。参考例3の方法で糖化液を得た。このとき、硫酸を用いてpHを5に調整した。糖化液2Lを実施例1と同様のろ過条件と精密ろ過膜で全循環ろ過を行い、10サイクル毎の固形分率と、20サイクル目の上昇差圧を表2に示した。これらの結果から、サイクル数を重ねても固形分率(%)は横這いであり、リグニン含有率10%のNaOH処理コーンコブ糖化液では、厚いケーク層が形成されず、精密ろ過膜で固形分を十分にろ過することができなかった。また、上昇差圧は50kPaであり、実施例1から4と比較して膜間差圧が高く、ろ過性能が低下した。
【0096】
【表2】
【0097】
(実施例5)広葉樹パルプ糖化液のろ過
実施例1と同様の広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液と精密ろ過膜を用いた。糖化液供給槽に糖化液700mLを入れ、30℃、膜面線速度30cm/sec、透過流速0.5m/dayでクロスフローろ過を行った。ろ過を行いながら、ろ過量と同じ量の糖化液を糖化液供給槽に連続的に供給し、糖化液供給槽の液量が一定に保たれるようにした。
【0098】
膜間差圧を求めることで膜の目詰まりの度合いを評価した。膜間差圧はモジュール入口圧力(P1)、モジュール出口圧力(P2)、透過側圧力(P3)を測定し、(式4)を用いて計算した。ろ過開始時の膜間差圧を測定時の膜間差圧から引いた値を上昇差圧として、上昇差圧を計算した。28分ごとに膜間差圧を測定し、上昇差圧を計算した。結果を
図1と表3に示す。その結果、112分ろ過を行った時点で上昇差圧が50kPaを超えたためろ過を停止し、膜面に形成されたケークを剥離して回収した。
【0099】
(実施例6)逆洗浄の効果
実施例1と同様の広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液と精密ろ過膜を用いた。糖化液供給槽に糖化液700mLを入れ、30℃、膜面線速度30cm/sec、透過流速0.5m/dayでクロスフローろ過を行った。ろ過を行いながら、ろ過量と同じ量の糖化液を糖化液供給槽に連続的に供給し、糖化液供給槽の液量が一定に保たれるようにした。
【0100】
28分間ろ過を行い、2分間1.5m/dayでRO水を透過側から非透過側に供給して逆洗浄を行い、膜面に形成されたケークをろ過系外に回収した。28分間のクロスフローろ過、2分間逆洗浄を交互に行った。ろ過、逆洗浄の順番で1サイクルとし、11サイクル繰り返し行い、実施例5と同様に上昇差圧を計算して結果を
図1に、4サイクル目と、11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧を表3に示した。11サイクル目での上昇差圧は23kPaであった。これらの結果から、定期的に逆洗浄を行って、ケークを膜面から剥離し回収することで、膜間差圧の上昇を抑制し、ろ過性能を低下させることなく長時間の運転することが可能であった。
【0101】
(実施例7)モジュール内液の抜き出しと逆洗浄の効果
糖化液として、実施例1と同様の広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液を用いた。実施例6と同様の条件で28分間のクロスフローろ過を行い、ろ過停止後にモジュール内の非透過側に残存した糖化液をモジュール下部より抜き出してモジュール内を空にした。その後、モジュール内を空にした状態で、実施例6と同様透過側から非透過側へRO水を2分間1.5m/dayで供給し逆洗浄を行い、膜面に形成されたケークをモジュール下部より抜出してろ過系外に回収した。
【0102】
クロスフローろ過、モジュール内の糖化液の抜き出し、逆洗浄の3つの工程を1サイクルとして、11サイクル繰り返し行い、実施例5と同様に上昇差圧を計算して結果を
図1に、4サイクル目と、11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧を表3に示した。11サイクル終了時の上昇差圧は4kPaであった。このときのろ過開始時の膜間差圧は3kPaであった。
【0103】
11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧から、モジュール内を空にした状態で逆洗浄を行うことで実施例6のRO水での逆洗浄のみよりも膜間差圧の上昇を抑制し、ろ過性能を低下させることなく長時間の運転が可能であった。
【0104】
【表3】
【0105】
(実施例8)モジュール内液の抜き出し、逆洗浄、空気洗浄の組み合わせの効果
実施例6の運転方法で11サイクル行った後の膜間差圧が上昇した精密ろ過膜に対して、空気洗浄運転を行った。空気洗浄はモジュールの非透過側に0.8L/minで10秒間空気を吹き込み、ケークを剥離し、モジュール内の非透過側に30cm/secでRO水を30秒間送液して剥離したケークを流し出して回収する操作を8回繰り返し行った。空気洗浄を行うことで、逆洗浄だけでは膜面から剥離されなかったケークが剥離し、回収された。この空気洗浄を行った後に実施例6と同様のろ過条件でろ過を行うと、ろ過開始時の上昇差圧が0kPaとなった。膜間差圧が上昇した時点で空気洗浄を行うことで、膜面に形成されたケークを剥離する効果が向上することが分かった。モジュール内排出と逆洗浄に空気洗浄を組み合わせることでより長時間、ろ過性能を低下させることなく運転が可能となる。
【0106】
(実施例9)針葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液のろ過
実施例2と同様の針葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液と精密ろ過膜を用いた。実施例6と同様の方法で、ろ過と逆洗浄をおこなった。ろ過、逆洗浄の順番で1サイクルとし、11サイクル繰り返し行い、実施例5と同様に上昇差圧を計算して結果を
図1に、4サイクル目と、11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧を表3に示した。11サイクル目での上昇差圧は25kPaであった。
【0107】
(実施例10)酢酸処理コーンコブ糖化液のろ過
実施例3と同様の酢酸処理コーンコブ糖化液と精密ろ過膜を用いた。実施例6と同様の方法で、ろ過と逆洗浄をおこなった。ろ過、逆洗浄の順番で1サイクルとし、11サイクル繰り返し行い、実施例5と同様に上昇差圧を計算して結果を
図1に、4サイクル目と、11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧を表3に示した。11サイクル目での上昇差圧は32kPaであった。
【0108】
(実施例11)酢酸処理おがくず糖化液のろ過
実施例4と同様の酢酸処理おがくず糖化液と精密ろ過膜を用いた。実施例6と同様の方法で、ろ過と逆洗浄をおこなった。ろ過、逆洗浄の順番で1サイクルとし、11サイクル繰り返し行い、実施例5と同様に上昇差圧を計算して結果を
図1に、4サイクル目と、11サイクル目のろ過終了時の上昇差圧を表3に示した。11サイクル目での上昇差圧は42kPaであった。
【0109】
(実施例12)回収物の遠心分離
実施例6の逆洗浄によって膜から剥離された回収物(pH5)を1500Gで1分間、遠心分離機で遠心分離し上清を回収した。遠心上清の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表4に示した。
【0110】
また、このときの回収した上清に含まれる糖濃度、実施例6に用いた糖化液の糖濃度、実施例6の透過液の糖濃度を測定し、実施例6の総投入糖量に対する総回収物の糖量(%)、総透過液中の糖量(%)をグルコースとキシロースのそれぞれについて(式8)を用いて計算した。
【0111】
糖量(%)=総回収物または総透過液中の糖量(g)/総投入糖量(g)×100・・・(式8)。
【0112】
その結果、総投入糖量の63%のグルコースおよびキシロースを含有する総透過液を得る工程で、総投入糖量の4%のグルコースおよびキシロースが、遠心分離によって回収できていることが判明した。この遠心上清を精密ろ過膜処理前の酵素糖化液に混合することで、回収物からも糖を回収することができた。
【0113】
さらに、上記上清15mLを分画分子量10,000の限外ろ過膜(Saritorius stedim biotech製 VIVASPIN 20 材質:PES)でろ過し、非透過側が1mL以下になるまで8000Gにて遠心した。非透過液をRO水で10倍希釈し、再度8000Gにて遠心分離し、非透過液を回収した。得られた非透過液のセロビオース分解活性を参考例6の方法で測定した。
【0114】
【表4】
【0115】
(実施例13)pH6,7,8,9に調整した回収物の遠心分離
実施例6の逆洗浄によってろ過系外に回収された回収物を水酸化ナトリウム水溶液でpH6,7,8,9に調整して実施例12と同様に遠心分離を行った。それぞれの遠心上清の濁度を参考例4の方法で測定した。結果を表4に示した。いずれの場合もpH5の場合よりも濁度が低い上清を得ることができた。回収物をpH6以上に調整することで、固液分離性が向上することがわかった。
【0116】
さらに、実施例12と同様にして、pH6,7,8,9に調整し遠心分離したそれぞれの上清を限外ろ過膜でろ過し、非透過液を得た。得られた非透過液のセロビオース分解活性を参考例6の方法で測定した。実施例12のpH5の条件での活性値を1として、pH5の条件での活性値に対するpH6,7,8,9の条件での活性値の比率を求めセロビオース分解相対活性を算出した。結果を表5に示した。pH6以上の条件ではpH5に比較してセロビオース分解活性が高くなることがわかった。
【0117】
【表5】
【0118】
(実施例14)pH5,6,9,11の逆洗浄水を用いた運転
実施例6と同様の運転条件で、広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液のろ過と逆洗浄を行った。逆洗浄水は、RO水を硫酸と水酸化ナトリウムを用いて、pH5,6,9,11に調整した。ろ過後に逆洗浄を行うサイクルを1サイクルとして5サイクル行い、各サイクルでのろ過終了時の上昇差圧を表6に示した。上昇差圧は、実施例4と同様にして求めた。それぞれの逆洗浄水を用いた運転におけるろ過開始時の膜間差圧はいずれも2kPaであった。pH5,6,9,11の逆洗浄液で逆洗浄を行った値を表6に示した。より高いpHに調整した逆洗浄水で逆洗浄を行うことにより膜間差圧の上昇が抑制されることが判明した。
【0119】
【表6】
【0120】
(実施例15)膜面線速度と固形分率の減少
実施例1と同じ広葉樹未晒しクラフトパルプ糖化液を用いて膜面線速度を10cm/secと50cm/secとして、実施例1と同様の全循環運転を行った。10サイクルの時点での非透過側の糖化液の固形分率(%)を求め、結果を表7に示した。膜面線速度10cm/secの条件では固形分率80%、膜面線速度30cm/secの条件では固形分率84%、膜面線速度50cm/secの条件では固形分率89%であった。
【0121】
【表7】