特許第6794834号(P6794834)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794834
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】画像処理装置及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   H04N 1/46 20060101AFI20201119BHJP
   G06T 1/00 20060101ALI20201119BHJP
   B41J 2/525 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H04N1/46
   G06T1/00 510
   B41J2/525
【請求項の数】6
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2017-179(P2017-179)
(22)【出願日】2017年1月4日
(65)【公開番号】特開2018-110327(P2018-110327A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年12月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005496
【氏名又は名称】富士ゼロックス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】早川 道生
【審査官】 野口 俊明
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−188212(JP,A)
【文献】 特開2008−067029(JP,A)
【文献】 特開2006−157444(JP,A)
【文献】 特開2009−267927(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 1/46−1/62
B41J 2/525
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
出力単位内の中間データ形式の画像要素データを特色要素データと非特色要素データとに分ける手段と、
入力される前記非特色要素データ群及び前記特色要素データ群をバッファに描画することで、前記バッファ内に描画データを生成する描画手段と、
前記バッファ内の前記描画データのうちの色補正対象の部分に色補正を行う色補正手段と、
前記描画手段が前記出力単位内のすべての前記非特色要素データについての描画を終えた後、前記出力単位内の特色要素データの描画を開始する前に、そのときの前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段に、前記バッファ内の色補正済みの描画データに対して前記特色要素データを描画させる制御を行う制御手段と、
を有する画像処理装置。
【請求項2】
前記描画手段は、前記出力単位内の領域毎にビットマップ形式と圧縮形式のうち当該領域のデータ量が少なくなる方のデータ形式の描画データを前記バッファ内に生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記圧縮形式はランレングス式である、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記分ける手段は、前記出力単位内の前記画像要素データ群に由来する前記非特色要素データ群を第1バッファに蓄積し、前記出力単位内の前記画像データ要素群に由来する前記特色要素データ群を第2バッファに蓄積し、
前記画像処理装置は、更に、
前記第1バッファに蓄積された前記出力単位内のすべての前記非特色要素データ群を前記描画手段に供給し、その次に前記第2バッファに蓄積された前記非特色要素データ群に適用する重ね合わせ情報を前記描画手段に供給し、その次に前記第2バッファに蓄積された前記非特色要素データ群を前記描画手段に供給する供給手段を有し、
前記制御手段は、前記描画手段に前記重ね合わせ情報が供給された時点で、前記描画手段の動作を一時停止させて前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段の動作を再開して前記供給手段から供給される前記特色要素データ群を処理させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記バッファ内の前記描画データのうちデバイスCMYK以外の色表現を用いる非特色要素データの領域を示す情報を生成する手段、を更に有し、
前記制御手段は、前記情報にデバイスCMYK以外の色表現を用いる非特色要素データの領域として示される領域については、前記色補正対象の部分に該当しないとして取り扱う、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
コンピュータを、
出力単位内の中間データ形式の特色要素データと非特色要素データが入力され、前記非特色要素データ群及び前記特色要素データ群をバッファに描画することで、前記バッファ内に描画データを生成する描画手段と、
前記バッファ内の前記描画データのうちの色補正対象の部分に色補正を行う色補正手段、
前記描画手段が前記出力単位内のすべての前記非特色要素データについての描画を終えた後、前記出力単位内の特色要素データの描画を開始する前に、そのときの前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段に、前記バッファ内の色補正済みの描画データに対して前記特色要素データを描画させる制御を行う制御手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されたシステムでは、オブジェクト色分解部は、描画順に入力される中間データのオブジェクトを、そのオブジェクトと同じ形状で基本色成分のみを持つ基本色オブジェクトと、同じ形状で個々の特色成分のみを持つ特色成分ごとの特色オブジェクトとに分解し、基本色オブジェクトは出力し、特色オブジェクトは特色版スプールに格納する。このとき、特色版スプール内の既存の特色オブジェクトの形状を、格納しようとする特色オブジェクトにより隠される部分を除く形状に変更する。オブジェクト色分解部が1ページ分のすべてのオブジェクトについて処理を終える毎に、各特色版スプール内にあるオブジェクトを、印刷における各特色版の重なり順に従って、特色成分を基本色でシミュレートしつつ出力する。
【0003】
特許文献2に開示されたシステムでは、中間データ生成部は、受付手段により受け付けられたカラー画像データに基づいて、各画像データの色情報を含む中間データを生成する。この中間データから、特色画像データ抽出部により特色画像データを抽出し、抽出された特色画像データの色情報を、色情報変換部によってプロセスカラーにより表現される色情報に変換する。透過率情報付加部は、変換された特色画像データの色情報に対して透過率情報を付加する。描画処理部は、重なり判定部により背面画像データが存在すると判定された特色画像データの透過率情報及び色情報と、背面画像データの色情報とに基づいて、双方の画像データの色を足し合わせるように描画処理を行う。
【0004】
特許文献3に開示された装置は、ページ毎に分版処理及びRIP処理を行い、CMYKの各色のラスタデータと、特色名の対応するラスタデータを生成した後、特色名によって指定されるCMYK値に基づいて、特色のラスタデータを、CMYKの各色のラスタデータに合成して出力する。これにより、特色指定されたオブジェクトのオーバープリントを正確に色再現する。
【0005】
特許文献4には、タグ版と呼ぶ制御用の版データに各画素が特色であるか否(すなわちプロセス色)かを示すフラグ値を記録し、特色でない画素の色値にはトーン調整等の色補正を施し、特色の画素の色値にはその色補正を施さない制御が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015−188212号公報
【特許文献2】特開2015−026933号公報
【特許文献3】特開2004−148535号公報
【特許文献4】特開2009−267927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
各画素がそれぞれ特色か否かを示す制御情報を作成し、この制御情報を参照して特色でない画素にのみ色補正を施す方式では、特色が下地の基本色にオーバープリントされる部分について色再現が正しくできない。特色がオーバープリントされる画素は制御情報中では特色の画素として記録されているため、下地の基本色に対して色補正が施されないためである。
【0008】
一方、各基本色の版と特色版のラスターデータをそれぞれ生成し、基本色版のラスターデータに特色版のラスターデータを合成する方式では、基本色版のラスターデータに色補正を施した後、特色版のラスターデータを合成することで、特色のオーバープリントの色再現を正確に行うことができる。しかしながら、この方式の処理を実行するコンピュータには、基本色版のラスターデータと特色版のラスターデータの両方を記憶するための記憶容量が必要である。
【0009】
本発明は、基本色及び特色の版毎のラスターデータを生成し、色補正を施した基本色のラスターデータに対して特色のラスターデータを合成する方式と比べて、必要とするメモリの量を少なくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る発明は、出力単位内の中間データ形式の画像要素データを特色要素データと非特色要素データとに分ける手段と、入力される前記非特色要素データ群及び前記特色要素データ群をバッファに描画することで、前記バッファ内に描画データを生成する描画手段と、前記バッファ内の前記描画データのうちの色補正対象の部分に色補正を行う色補正手段と、前記描画手段が前記出力単位内のすべての前記非特色要素データについての描画を終えた後、前記出力単位内の特色要素データの描画を開始する前に、そのときの前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段に、前記バッファ内の色補正済みの描画データに対して前記特色要素データを描画させる制御を行う制御手段と、を有する画像処理装置である。
【0011】
請求項2に係る発明は、前記描画手段は、前記出力単位内の領域毎にビットマップ形式と圧縮形式のうち当該領域のデータ量が少なくなる方のデータ形式の描画データを前記バッファ内に生成する、ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置である。
【0012】
請求項3に係る発明は、前記圧縮形式はランレングス式である、ことを特徴とする請求項2に記載の画像処理装置である。
【0013】
請求項4に係る発明は、前記分ける手段は、前記出力単位内の前記画像要素データ群に由来する前記非特色要素データ群を第1バッファに蓄積し、前記出力単位内の前記画像データ要素群に由来する前記特色要素データ群を第2バッファに蓄積し、前記画像処理装置は、更に、前記第1バッファに蓄積された前記出力単位内のすべての前記非特色要素データ群を前記描画手段に供給し、その次に前記第2バッファに蓄積された前記非特色要素データ群に適用する重ね合わせ情報を前記描画手段に供給し、その次に前記第2バッファに蓄積された前記非特色要素データ群を前記描画手段に供給する供給手段を有し、前記制御手段は、前記描画手段に前記重ね合わせ情報が供給された時点で、前記描画手段の動作を一時停止させて前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段の動作を再開して前記供給手段から供給される前記特色要素データ群を処理させる、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の画像処理装置である。
【0014】
請求項5に係る発明は、前記バッファ内の前記描画データのうちデバイスCMYK以外の色表現を用いる非特色要素データの領域を示す情報を生成する手段、を更に有し、前記制御手段は、前記情報にデバイスCMYK以外の色表現を用いる非特色要素データの領域として示される領域については、前記色補正対象の部分に該当しないとして取り扱う、ことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の画像処理装置である。
【0015】
請求項6に係る発明は、コンピュータを、出力単位内の中間データ形式の特色要素データと非特色要素データが入力され、前記非特色要素データ群及び前記特色要素データ群をバッファに描画することで、前記バッファ内に描画データを生成する描画手段と、前記バッファ内の前記描画データのうちの色補正対象の部分に色補正を行う色補正手段、前記描画手段が前記出力単位内のすべての前記非特色要素データについての描画を終えた後、前記出力単位内の特色要素データの描画を開始する前に、そのときの前記バッファ内の前記描画データに対して前記色補正手段に色補正を行わせ、前記色補正の完了後、前記描画手段に、前記バッファ内の色補正済みの描画データに対して前記特色要素データを描画させる制御を行う制御手段、として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0016】
請求項1又は6に係る発明によれば、基本色及び特色の版毎のラスターデータを生成し、色補正を施した基本色のラスターデータに対して特色のラスターデータを合成する方式と比べて、必要とするメモリの量を少なくすることができる。
【0017】
請求項2に係る発明によれば、全領域をビットマップ形式又は圧縮形式のいずれか一方とする方式よりも、描画データのデータ量を少なくすることができる。
【0018】
請求項3に係る発明によれば、全領域をビットマップ形式とする場合よりも色補正手段の色補正の負荷を低減できると共に、全領域をランレングス形式とする場合よりも描画データのデータ量を少なくすることができる。
【0019】
請求項4に係る発明によれば、非特色要素データ及び特色要素データのそれぞれが含む色の情報を調べる方式よりも、出力単位内の最後の非特色要素データの描画が終わったことを低い処理負荷で検知することができる。
【0020】
請求項5に係る発明によれば、特色以外にも色補正手段の色補正の適用外となる非特色要素データの色再現を正確に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】画像処理システムの構成の例を示すブロック図である。
図2】印刷制御システムが備えるフロントエンド装置およびバックエンド装置の機能構成の例を示す図である。
図3】特色スプールの記憶内容の変遷の具体例を示す図である。
図4】特色平滑化部の処理手順の一例を示す図である。
図5】特色平滑化部の処理の具体例を説明するための図である。
図6】描画部の内部構成の一例を示す図である。
図7】描画部の処理手順の一例を示す図である。
図8】描画部の処理の具体例を説明するための図である。
図9】描画部内のバッファ部の構成の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
<実施形態のシステム構成>
図1は、画像処理システムの構成の一例を示すブロック図である。図1の例のシステムは、端末装置10、印刷制御システム20、および印刷装置50を備える。印刷制御システム20は、フロントエンド装置30およびバックエンド装置40を有している。端末装置10は、通信手段60を介してフロントエンド装置30に接続されており、ユーザの指示に従い、文書の印刷命令を含む印刷ジョブをフロントエンド装置30に対して送信する。フロントエンド装置30は、通信手段62を介してバックエンド装置40に接続され、バックエンド装置40は、通信手段64を介して印刷装置50に接続される。
【0023】
通信手段60,62,64は、例えば、LAN(Local Area Network)等のデータ通信ネットワークであってよい。通信手段60,62,64は、互いに共通の通信手段であってもよいし、それぞれ異なる通信手段であってもよい。例えば、端末装置10とフロントエンド装置30との間の通信手段60としてLANを用い、フロントエンド装置30とバックエンド装置40との間の通信手段62およびバックエンド装置40と印刷装置50との間の通信手段64として、それぞれ、LANと異なる専用の通信手段を用いてもよい。
【0024】
図1の例のシステムでは、端末装置10から送信された印刷ジョブをフロントエンド装置30において処理する。この処理結果のデータがバックエンド装置40に渡され、バックエンド装置40において生成された画像データに従って印刷装置50による印刷が行われる。この実施形態における画像データは、印刷対象の画像を印刷装置50が取扱可能なデータ形式(例えばラスター形式やランレングス形式)で表すデータのことを指す。
【0025】
図1の例の端末装置10、フロントエンド装置30、およびバックエンド装置40は、例えば汎用のコンピュータによって実現され得る。コンピュータは、ハードウエアとして、CPU(中央演算装置)、メモリ(一次記憶)、各種I/O(入出力)インタフェース、通信インタフェースなどがバスを介して接続された回路構成を有する。コンピュータは、通信インタフェースを介して、他の装置との間でデータの授受を行う。また、バスに対し、例えばI/Oインタフェース経由で、キーボードやマウスなどの入力装置、液晶ディスプレイなどの表示装置が接続されてもよい。また、バスには、I/Oインタフェースを介して、HDD(ハードディスクドライブ)やSSD(ソリッドステートドライブ)等の二次記憶装置、が接続される。また、DVD、フラッシュメモリなどの各種規格の可搬型の不揮発性記録媒体を読み取るためのディスクドライブが接続されてもよい。このようなドライブは、メモリに対する外部記憶装置として機能する。後述の各実施形態の処理内容が記述されたプログラムがCDやDVDなどの記録媒体を経由して、またはネットワーク経由で、HDDなどの二次記憶装置に保存され、コンピュータにインストールされる。二次記憶装置に記憶されたプログラムがメモリに読み出されCPUにより実行されることにより、後述の実施形態の処理が実現される。
【0026】
なお、後述の各実施形態の例において、バックエンド装置40の機能の一部は、プログラムの実行によるソフトウエア処理ではなく、ハードウエア処理により実現してよい。ハードウエア処理には、例えばASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の集積回路を用いる。また、例えば、動的再構成可能プロセッサ(Dynamic Reconfigurable Processor,DRP)と呼ばれる、処理の実行の途中で動的に回路を再構成できるプロセッサを用いてもよい。例えば、バックエンド装置40の機能の一部を実行する、DRPやASIC等のハードウエア要素を予め構成しておき、このようなハードウエア要素を汎用コンピュータのバスに対して接続することで、バックエンド装置40を実現すればよい。
【0027】
フロントエンド装置30およびバックエンド装置40を実現するハードウエアの1つの具体例として、それぞれがサーバとして機能する複数の情報処理装置を1つの筐体内に搭載したブレードサーバを用いることが考えられる。ブレードサーバは、CPUやメモリを備える汎用のコンピュータを1枚の基板(ブレード)に実装し、複数のブレードを筐体内に搭載したサーバ装置である。例えば、ブレードサーバに搭載された1つのブレードをフロントエンド装置30として機能させ、他の1つのブレードをバックエンド装置40として機能させてもよい。あるいは、例えば、フロントエンド装置30およびバックエンド装置40のそれぞれを、ブレードサーバに搭載された複数のブレードにより実現してもよい。
【0028】
もちろんこれは一例に過ぎず、フロントエンド装置30とバックエンド装置40を、それぞれ個別の筐体に搭載された個別のコンピュータ装置上に構築してもよい。また、フロントエンド装置30とバックエンド装置40とを、同一のコンピュータ装置上に構築してもよい(すなわち、それら各装置の処理を行うプログラムを同一のコンピュータ上で実行)。
【0029】
印刷装置50は、紙等の媒体に印刷を行う装置であり、例えば、連続紙プリンタであってよいし、カット紙プリンタであってもよい。なお、印刷装置50の印刷方式は特に限定されない。電子写真方式でもよいし、インクジェット方式でもよい。またその他の方式でもよい。
【0030】
図2に、印刷制御システム20が備えるフロントエンド装置30およびバックエンド装置40の機能構成の例を示す。フロントエンド装置30は、印刷ジョブ受信部32、解釈部34及び特色平滑化部36を備える。バックエンド装置40は、第1バッファ42a、第2バッファ42b、結合部43、描画部44および出力バッファ46を備える。
【0031】
フロントエンド装置30の印刷ジョブ受信部32は、端末装置10から印刷ジョブを受信する。本実施形態の例において、印刷ジョブは、例えば、文書を印刷する旨の命令と、印刷対象の文書をページ記述言語で記述したデータと、を含む。ページ記述言語(PDLと略す:PDLはPage Description Language の略)は、ディスプレイ表示処理、印刷処理等を情報処理機器に実行させるためのコンピュータプログラミング言語である。ページ記述言語の例としては、PostScript(登録商標)やPDF(Portable Document Format)等がある。ページ記述言語で記述されたデータは、印刷対象の文書を構成する文字や図形、イメージ(ビットマップ画像)などのオブジェクトの位置情報、書式情報および色情報などを含む。以下の説明では、印刷対象の文書をページ記述言語で記述したデータを「PDLデータ」と呼ぶ。印刷ジョブ受信部32は、受信した印刷ジョブに含まれるPDLデータを解釈部34に渡す。
【0032】
解釈部34は、印刷ジョブ受信部32から取得したPDLデータを解釈し、その解釈結果に応じて、印刷対象の画像の生成の手順を表す命令を含む中間データを生成して出力する。PDLデータは、最終的に、印刷対象の画像を表す画像データに変換され、この画像データが印刷装置50での用紙への印刷に用いられる。画像データは、印刷対象の画像を印刷装置50が取り扱い可能な形式で表現したデータであり、例えばラスター形式(すなわちビットマップ形式)のデータがその一例である。中間データは、PDLデータと画像データの中間の粒度のデータである。中間データ形式は、例えば、PDLで記述された画像オブジェクトを更に単純な形状の微小要素に細分化して表現したものである。中間データ形式としては、例えばディスプレイリスト形式や特許文献1に示された形式など様々なものが知られている。
【0033】
解釈部34は、PDLデータを解釈することで、そのPDLデータが表す各オブジェクトを、中間データ形式において用いられる単位形状(例えば矩形形式、ラン形式、ラスター形式の形状)に分解し、単位形状ごとにその形状やカラーを表すデータ(これが中間データ形式でのオブジェクトを表す)を生成する。解釈部34は、生成した中間データ形式のオブジェクトを、基本色成分のみからなる基本色オブジェクトと、特色成分のみからなる特色オブジェクトとに分解する。ここで、基本色とは、印刷に用いられる原色(例えばC,M,Y,Kの4色)のことであり、プロセス色とも呼ばれる。分解により得られる基本色オブジェクトと特色オブジェクトは、当該オブジェクトの色を示すカラーデータの項目のみが異なっており、他のデータ項目は分解前のオブジェクトのデータを引き継ぐ。基本色オブジェクトは、カラーデータとして各基本色成分(例えばC,M,Y,K)の値のみを有し、特色オブジェクトは、カラーデータとして例えば当該特色の名前(特色名)とその濃度の組、あるいは特色名のみ、を有する。解釈部34は、オブジェクトの分解により得た基本色オブジェクトをバックエンド装置40の第1バッファ42aへ順に出力すると共に、特色オブジェクトを特色平滑化部36に順に出力する。
【0034】
特色平滑化部36は、解釈部34から順に出力される中間データ形式の特色オブジェクトを中間データ形式のまま平滑化(flattening)する。また、平滑化した特色オブジェクトの特色を印刷装置50の基本色での表現に変換する特色シミュレーションを行う。この平滑化の際、特色平滑化部36は、同じ特色成分を有するオブジェクト同士が重なる部分の色が、(その特色成分が重なった色ではなく)その特色成分自体の色となるようにするために、eclipse(エクリプス)処理を行う。eclipse処理は、特色スプール38を用いて行われる。特色スプール38は、中間データ形式の特色オブジェクト群を、入力された順に対応付けて記憶するスプールである。eclipse処理については、後で詳しく説明する。特色平滑化部36は、eclipse処理結果の各オブジェクトをバックエンド装置40の第2バッファ42bに順に出力する。
【0035】
バックエンド装置40において、第1バッファ42aは解釈部34から順番に出力される基本色オブジェクトをその順番に対応付けて記憶する。また第2バッファ42bは、特色平滑化部36から順番に出力される特色オブジェクト(ただしこの時点では基本色表現に変換済み)をその順番に対応付けて記憶する。第1バッファ42a及び第2バッファ42bに記憶されるオブジェクト群は中間データ形式のものである。結合部43は、第1バッファ42aと第2バッファ42bに記憶された中間データを結合して描画部44に供給する。すなわち結合部43は、結合処理として、出力単位毎に、まず第1バッファ42a内に蓄積されたその出力単位のオブジェクト群の中間データを描画部44に供給し、その後第2バッファ42b内のその出力単位のオブジェクト群の中間データを描画部44に供給する。この順序は、伝統的な印刷プロセスにおいて基本色の各版の画像が重ねられた上に特色版の画像が重ねられるという版順序に対応している。なお、出力単位は、バックエンド装置40が1回の出力処理毎に印刷装置50に出力する画像データの範囲を示す単位である。ページ、バンド(ページを副走査方向に複数に分割した場合の1つの分割領域)、タイル(ページを主走査方向及び副走査方向の両方について複数に分割した場合の1つの分割領域)等が出力単位の例である。描画部44は、内蔵するバッファ内に1つの出力単位の描画データを生成し、その描画データを画像データに変換して印刷装置50に出力する。
【0036】
描画部44は、結合部43から順に入力される各オブジェクトの中間データを描画することで、最終的にその出力単位の画像データを生成し、生成した画像データを出力バッファ46に書き込む。ここで描画部44は、中間データを直接画像データに変換してもよいが、別の例として中間データをいったん描画データに変換してバッファに蓄積し、最後に出力単位の描画データを画像データに変換して出力してもよい。描画データのデータ形式は、中間データよりは画像データに近いデータ形式ではあるが、画像データとは少なくとも部分的に異なる。例えば、画像データがラスター形式であるのに対し、描画データがランレングス形式である場合がこの例に該当する。
【0037】
描画部44には、結合部43から、ページ等の出力単位ごとに、まずその出力単位内の基本色オブジェクト群が順に入力され、その後に特色オブジェクト群が入力される。このオブジェクト入力の流れの中で、描画部44は、出力単位内のすべての基本色オブジェクトの描画が完了した後、その出力単位内の最初の特色オブジェクトの描画を開始する前に、その時点で生成済みの描画データ又は画像データに対して色補正を行う。この色補正は、PDLデータの色空間での色を、印刷装置50の色空間(デバイス依存色空間)で再現するための補正である。なお、特色オブジェクトについては、特色平滑化部36が特色を基本色表現に変換する際に、印刷装置50の色空間の特性を反映した変換が行われるので、色補正は不要である。そして、この色補正が完了した後、描画部44は、色補正済みの描画データ/画像データに対して、その出力単位内の特色オブジェクトを順に描画し、合成していく。
【0038】
描画部44が生成した各出力単位の画像データは出力バッファ46に格納され、印刷装置50から順次読み出される。印刷装置50は、出力バッファ46から読み出した各出力単位の画像データを、用紙に対して印刷する。
【0039】
次に、図3を参照して、特色平滑化部36が行う処理を、具体例を用いて説明する。図3の上段には、解釈部34から特色平滑化部36に順に入力される同じ出力単位(例えばページ100)内の特色(図示例ではグリーン)の3つの特色オブジェクト102b(中間データ)が、生成順を示す番号1〜3と共に示される。図3の下段は、上段の特色オブジェクト102bを格納した時点の、特色スプール38内のオブジェクト群の状況を示す。ページ100の枠は、特色オブジェクト102bのそのページ内での位置を表すための参考情報である。
【0040】
まず、1番目の特色オブジェクトは、G(グリーン)=0の値を持つ特色オブジェクトである。ノックアウト指定のオブジェクトからは、このような特色成分値が0の特色オブジェクトが生成される。この時点では、G版用の特色スプール38内には1つも特色オブジェクトがないのでeclipse処理は行われない。また、特色成分の値が「0」である特色オブジェクトは、当該オブジェクトより描画順が前の当該特色のオブジェクトをeclipseしてノックアウトの効果を出すためのものなので、その値「0」の特色オブジェクト自体は描画不要である。したがって、1番目の特色オブジェクトは特色スプール38には記憶しない。2番目に生成される特色オブジェクトは、G=0.01のカラーデータを有している。この時点でも、特色スプール38内には1つも特色オブジェクトがないのでeclipse処理は行われない。2番目の特色オブジェクトが特色スプール38に記憶され、特色スプール38内での1番目の特色オブジェクトとなる。3番目の特色オブジェクトは、特色スプール38内の1番目の特色オブジェクト(入力順では2番目)と部分的に重なる。したがって、特色スプール38内の1番目の特色オブジェクトの形状が入力順の3番目の特色オブジェクトと重なる部分を除いた形状に変更(eclipse)される。また、3番目の特色オブジェクトが特色スプール38に記憶され、特色スプール38内の2番目のオブジェクトとなる。この3番目の特色オブジェクトが、そのページ100上での描画順が最後のオブジェクトである場合、3番目の特色オブジェクトについての以上の処理が完了した時点で特色スプール38の内部にあるオブジェクト(この例では2つのオブジェクト)がバックエンド装置40へと出力されることになる。なお、eclipse処理の詳細については、例えば特許文献1を参照されたい。
【0041】
図4に特色平滑化部36の処理手順の一例を示す。この手順では、まず特色平滑化部36は、解釈部34から特色オブジェクトを受け取る(S30)と、特色スプール38内の各オブジェクトをその受け取った特色オブジェクトでeclipse処理する(S32)。特色スプール38内のすべてのオブジェクトについてeclipseが終わると、その受け取った特色オブジェクトを特色スプール38に格納する(S34)。以上のS30〜S34の処理を、ページ等の出力単位内のすべてのオブジェクトについて繰り返す(S36)。
【0042】
出力単位内のすべてのオブジェクトについての処理が終わると(S36の判定結果がYes)、その時点での特色スプール38内には、互いに重なる部分のない特色オブジェクト群が格納されている。すなわち、出力単位内の特色オブジェクト群についての平滑化が完了した状態となっている。この後、特色平滑化部36は、特色スプール38内の各特色オブジェクトのカラーデータを、特色表現から基本色表現に色変換する(S38)。そして、特色平滑化部36は、重ね合わせ情報をセットする旨の指示データを第2バッファ42bへと出力(S40)した後、特色スプール38内の各特色オブジェクトを第2バッファ42bへと出力する(S42)。そして、重ね合わせ情報をリセットする旨の指示データを第2バッファ42bへと出力する(S44)。
【0043】
重ね合わせ情報とは、特色の版を下地の画像(この例では基本色オブジェクト群からなる画像)に重ね合せた場合の、重ね合わせ結果の色値(画素値)の求め方を規定する情報である。例えば、上述の透過率やオーバープリント指定の有無の情報等が、重ね合わせ情報の一例である。また、重ね合わせ情報は、上の版と下地画像の同じ基本色の画素値同士を足し合わせた結果が、画素値の上限(例えば8ビットなら255)を超えた場合に、その画素の値をどのように決めるか(またそれに伴い他の画素の値をどのように調整するか)を規定する情報であってもよい。重ね合わせ情報は、元のPDLデータ内に文書単位、ページ単位又はオブジェクト単位で指定されているものが、中間データの文書全体、ページ、又はオブジェクトに引き継がれたものである(中間データのオブジェクトは、一般的には、PDLのオブジェクトを解釈して更に分割したもの)。重ね合わせ情報をセットする旨の指示データ及びリセットする旨の指示データは、中間データの一つとして、他の特色オブジェクトの中間データと同様、その出力順に対応付けて第2バッファ42bに蓄積される。重ね合わせ情報は、それをセットする旨の指示データとリセットする旨の指示データとの間の特色オブジェクト群に適用されることとなる(この適用はバックエンド装置40の描画部44で行われる)。
【0044】
図4の手順による処理の具体例を、図5を参照して説明する。
【0045】
図4の左側に示される4つのオブジェクト102A〜Dが、上から順に特色平滑化部36に入力されてくるとする。この例では、オブジェクト102A及び102Bにはノックアウト指定がなされ、オブジェクト102C及び102Dにはオーバープリント指定がなされているものとする。また、この例では、特色は1色(図中「Spot」と表記)のみであるとする。
【0046】
図4の例では、オブジェクト102Aの色(C,M,Y,K,Spot)は(1,0,1
,0,0)であり、オブジェクト102Bの色は(0,0,1,0,0.01)である。またオブジェクト102Cの色は(1,NA,NA,NA,NA)であり、オブジェクト102Dの色は(NA,NA,NA,NA,0.01)である。ここで、NAは、当該成分の値が存在しないことを示す。オーバープリントの場合、オブジェクトのある色成分の濃度が0であれば、その色成分については下地の色がそのまま透過するので、このオブジェクトにはその色成分が「存在しない」(NA)ものとして扱われる。
【0047】
この場合、図4の手順では、まず1番目に入力されたオブジェクト102Aは、(C,M,Y,K)=(1,0,1,0)の基本色オブジェクトと、Spot=0の特色オブジェクトとに分解される。そのうち基本色オブジェクトはバックエンド装置40の第1バッファ42aへと出力される。これが、図の右端の「出力される中間データ」の欄内の1番目の基本色オブジェクトである。一方、Spot=0の特色オブジェクトは特色スプール38内のオブジェクトのeclipse処理に用いられるが、ここでは特色成分の値が「0」なので、特色スプール38には格納されない。
【0048】
次に、2番目に入力されたオブジェクト102Bは、(C,M,Y,K)=(0,0,1,0)の基本色オブジェクトと、Spot=0.01の特色オブジェクトとに分解される。そのうち基本色オブジェクトはバックエンド装置40へと出力される(「出力される中間データ」の欄内の2番目)。またSpot=0.01の特色オブジェクトは特色スプール38に格納される。
【0049】
次に、3番目に入力されたオブジェクト102Cは、(C,M,Y,K)=(1,NA,NA,NA)の基本色オブジェクトと、Spot=NAの特色オブジェクトとに分解されるが、特色オブジェクトの値はNA(存在しない)なので、eclipse処理には供されず、特色スプール38への格納もされない。基本色オブジェクトは、第1バッファ42aへと出力される。
【0050】
最後に、4番目に入力されたオブジェクト102Dは、(C,M,Y,K)=(NA,NA,NA,NA)の基本色オブジェクトと、Spot=0.01の特色オブジェクトとに分解される。このうち基本色オブジェクトはすべての基本色成分がNAなので、結局そのオブジェクトがまったく存在しないのと同じである。このためその基本色オブジェクトは第1バッファ42aには送られない。一方、Spot=0.01の特色オブジェクトは、特色スプール38内の特色オブジェクトをeclipseすると共に、特色スプール38に格納される。
【0051】
以上の例における特色スプール38の記憶内容の変遷は、図4に例示したものと同様である(オブジェクト102Cからは特色オブジェクトは生成されないので、図4では省略している)。
【0052】
以上の処理が終わった時点では、特色スプール38には、特色オブジェクト102E及び102Fが格納されている。4番目に入力されたオブジェクト102Dについての基本色オブジェクトの出力及び特色スプール38に関する処理が終わると、特色スプール38内の特色オブジェクト102E及び102Fが基本色表現へと色変換される。そして、重ね合わせ情報(セット)、色変換済みの特色オブジェクト102E、色変換済みの特色オブジェクト102F、重ね合わせ情報(リセット)の順に第2バッファ42bに出力される。
【0053】
バックエンド装置40では、1つの出力単位に由来するすべての基本色オブジェクト及び特色オブジェクトの第1バッファ42a及び第2バッファ42bへの蓄積が完了すると、結合部43が、それら中間データを描画部44に出力する。この出力では、結合部43は、まず第1バッファ42a内のオブジェクト群を順に描画部44に供給し、それが終わると、第2バッファ42b内のオブジェクト群を順に描画部44に供給する。
【0054】
次に、図6を参照して、バックエンド装置40の描画部44の内部構成の一例を説明する。
【0055】
描画部44は、描画データ生成部70、バッファ部80、特色判定部90、色補正部92を含む。また描画部44は、データ変換部94を含んでいてもよい。
【0056】
描画データ生成部70は、順に入力される各オブジェクトの中間データから描画データを生成する。
【0057】
描画データは、1つの例では、画像データと同じデータ形式のデータ、すなわち印刷対象の画像を表す印刷装置50が取扱可能なデータ形式のデータ、である。この場合、描画部44はデータ変換部94を含んでいなくてよい。描画データと画像データの両方が同じラスター形式である場合や、それら両方が同じランレングス形式である場合がこの例に該当する。
【0058】
また別の例では、描画データは、中間データよりは画像データに近いデータ形式ではあるが、画像データとは少なくとも部分的に異なるデータ形式のデータであってもよい。例えば、印刷装置50が取扱可能な画像データの形式がラスター形式であるのに対し、描画データがランレングス形式である場合がこの例に該当する。この場合、データ変換部94が、描画データを、画像データのデータ形式に変換する処理を行う。例えば、ランレングス形式のデータをラスター形式に変換する処理は、ハードウエア回路で高速に実行可能である。また、画像データがラスター形式又はランレングス形式のどちらかであるのに対し、描画データがラスター形式とランレングス形式が混在したデータである場合(後で詳細な例を説明する)もこの例に該当する。データ変換部94は、このタイプの描画データのうち画像データと異なるデータ形式の部分を、画像データのデータ形式に変換する。
【0059】
バッファ部80は、描画データ生成部70が生成した描画データを蓄積する。この蓄積は、出力単位(例えばページ)毎に行われる。すなわち、1つの出力単位に含まれる全オブジェクトから生成された描画データ(これには基本色オブジェクトについてのものと、特色オブジェクトについてのものの両方が含まれる)の蓄積が完了するまで、バッファ部80は描画データ生成部70から入力される描画データを順に蓄積する。そして、1つの出力単位に由来するすべての描画データの蓄積が完了すると、バッファ部80はそれら描画データを出力する。
【0060】
特色判定部90は、結合部43から順に入力される中間データを監視している。この監視により特色オブジェクトの入力が開始されたことを検知すると、特色判定部90は、描画データ生成部70に対して中間データからの描画データの生成(あるいは生成した描画データの出力)を一時停止するよう指示すると共に、色補正部92に対して色補正の実行を指示する。特色判定部90は、例えば、結合部43から順位出力された中間データの中から、重ね合わせ情報をセットする旨の指示データを検知した場合に、特色オブジェクトの入力が開始されたと判定すればよい。ただしこれは一例に過ぎない。この代わりに特色判定部90は、例えば、結合部43から順に出力された各オブジェクトの中間データのカラーデータを調べ、カラーデータが特色を示す最初のオブジェクトを検知したときに、特色オブジェクトの入力が開始されたと判定してもよい。
【0061】
特色判定部90から一時停止の指示を受けた描画データ生成部70は、当該出力単位での出力順が最初の特色オブジェクトをバッファ部80に出力する前に、その動作を一時停止する。この一時停止の指示が到来する時点では、当該出力単位の基本オブジェクト群についての描画データの生成及びバッファ部80への出力は、既に完了している。したがってこの時点では、バッファ部80は、当該出力単位内のすべての基本色オブジェクト群から生成された描画データ群が蓄積された状態である。このときバッファ部80に蓄積されている描画データに対し、特色判定部90から色補正の指示を受けた色補正部92が色補正を行う。この色補正は、PDLデータの色空間での色と同じ色を、印刷装置50の色空間で再現するための補正である。色補正部92は、色補正済みの描画データをバッファ部80に書き戻す。これによりそれまでバッファ部80内にあった色補正前の描画データは、色補正済みの描画データに置き換えられる。
【0062】
この置換えの完了後、色補正部92は、描画データ生成部70に対して、描画データの出力再開を指示する。この指示の時点では、バッファ部80内には当該出力単位内のすべての基本色オブジェクトから生成され、かつ色補正が済んだ描画データが蓄積されている。描画データ生成部70がその指示に応じて動作を再開すると、その出力単位の特色オブジェクトの中間データが順に描画データに変換され、そのバッファ部80に対して書き込まれていく。
【0063】
このようにして出力単位内のすべてのオブジェクトについての描画データがバッファ部80に書き込まれると、バッファ部80は、最終的に保持している描画データを後段に出力する。描画データが印刷装置50が取扱可能な画像データと同じデータ形式の場合、バッファ部80の後段にはデータ変換部94はなく、バッファ部80内の描画データ、すなわち画像データは、印刷装置50に供給される。描画データが印刷装置50が取扱可能な画像データと異なるデータ形式である場合(あるいは異なるデータ形式の部分を含む場合)、バッファ部80内の描画データはデータ変換部94で画像データに変換され、印刷装置50に供給される。
【0064】
次に、図7を参照して、描画部44が実行する処理手順の例を説明する。図7の手順は、出力単位毎に実行される。
【0065】
この手順では、描画部44に対して結合部43から次の中間データが入力される(S50)と、そのデータが特色オブジェクトの開始を示すデータ(例えば上述した重ね合わせ情報のセットを指示するデータ)であるかどうかを特色判定部90が判定する(S52)。この判定の結果がNoの場合、そのデータは描画すべきオブジェクトの中間データである。この場合、描画データ生成部70は、そのオブジェクトの中間データを描画データに変換し、得られた描画データをバッファ部80に書き込む(S54)。そして、そのオブジェクトが当該出力単位の最後のオブジェクトであるかどうかを判定し(S56)、その判定結果がNoであれば、S50に戻って結合部43から次の中間データの入力を受ける。
【0066】
S52の判定結果がYesである(すなわち特色オブジェクト群の入力が開始された)場合、特色判定部90は、描画データ生成部70に対して一時停止を指示する(S58)。この指示に応じ、描画データ生成部70は、当該出力単位内の最初の特色オブジェクトの描画データをバッファ部80に出力する前に描画処理(又は少なくとも描画データのバッファ部80への出力)を一時停止する。以降、再開指示があるまで、描画データ生成部70は、オブジェクトの描画データをバッファ部80に出力することはしない。したがって、この一時停止の指示がなされた時点では、バッファ部80には、当該出力単位の基本色オブジェクト群に由来する描画データが保持されており、それら描画データには特色オブジェクトの情報は反映されていない。
【0067】
また特色判定部90は、色補正部92に対して、バッファ部80内の描画データに色補正を行うよう指示する(S60)。この指示に応じて色補正部92は、バッファ部80内の基本色オブジェクト群に由来する描画データに対して、印刷装置50の色空間に合わせるための色補正を実行する。色補正を施された描画データは、バッファ部80に書き戻される。
【0068】
色補正部92は、バッファ部80内の描画データの色補正が完了すると(S62の判定結果がYes)、描画データ生成部70に対して描画動作(又は描画データのバッファ部80への出力)の再開を指示する(S64)。この指示を受けた描画データ生成部70は、描画処理(又は描画データのバッファ部80への出力)を再開する。これにより、描画データ生成部70は、当該出力単位の特色オブジェクト群の先頭のオブジェクトから順に結合部43から取得し(S50)、その特色オブジェクトの描画データを生成し、生成した描画データをバッファ部80内の描画データと合成する(S54)。当該出力単位の最後の特色オブジェクトの描画処理が終わるまで、S50、S54、S56の処理が繰り返される。そして、最後の特色オブジェクトの描画が完了すると、描画データ生成部70は描画処理を終了する。この後、描画部44は、バッファ部80に保持されている当該出力単位の最終的な描画結果の描画データをデータ変換部94で画像データへと変換し、その画像データを印刷装置50に出力する。なお、描画データが画像データと同じデータ形式の場合、描画部44は、バッファ部80内に形成された最終的な描画データをそのまま印刷装置50に出力する。
【0069】
以上に説明した描画部44の処理の具体例を、図8を参照して説明する。図8は、図5の右端に表示した5つのオブジェクト1〜5の描画データが順に描画部44に入力される場合の例である。
【0070】
(1)図5に示した基本色オブジェクト1〜3の描画が終わった時点で、バッファ部80には描画データ200(分かりやすくするために図では描画データを画像として模式的に示している)が保持されている。この描画データ200は、基本色オブジェクト1に対応する色が(C,M,Y,K)=(1,0,1,0)である領域202の上に、基本色オブジェクト2、3が順に重なったものである。描画データ200のうち基本色オブジェクト2及び3に対応する領域204の色は、基本色オブジェクト1と同じ色(C,M,Y,K)=(1,0,1,0)になる。
【0071】
(2)図5の例では、基本色オブジェクトは1から3までなので、これらの描画が完了し、描画データ200がバッファ部80に形成されると、描画データ生成部70は一時停止し、その描画データ200の各基本色成分に対して色補正部92により色補正が施される。これにより、描画データ200の領域202及び204の色は共に(C,M,Y,K)=(0.9,0.1,0.9,0)となる。
【0072】
(3)色補正が終わると、バッファ部80内の色補正済みの描画データに対して、特色オブジェクト4、5の描画結果が順に合成される。特色オブジェクト4及び5(すなわち図5の特色オブジェクト102E及び102F)の色は、基本色表現で(C,M,Y,K)=(0,0,0,0.01)である。合成結果の描画データ210の矩形(正方形)の領域214の色は、領域204の色補正結果(0.9,0.1,0.9,0)に、基本色オブジェクト4及び5の色(0,0,0,0.01)を版合成した(0.9,0.1,0.9,0.01)となる。特色オブジェクトが重ならない領域212の色は(0.9,0.1,0.9,0)のままであり、特色オブジェクトのみの領域216の色は(0,0,0,0.01)となる。
【0073】
以上に説明したように、本実施形態では、フロントエンド装置30が出力単位の中間データを基本色オブジェクトと特色オブジェクトに分けて別々のバッファ(第1バッファ42aと第2バッファ42b)に出力する。そして、バックエンド装置40が、まず第1バッファ42a内のすべての基本色オブジェクトの中間データをバッファ部80に描画した時点で、第2バッファ42b内の特色オブジェクト群の描画を始める前に、バッファ部80内の描画データに色補正部92が色補正を行う。これにより、基本色オブジェクト群の色が印刷装置50で正しく再現されるようになる。そして、この色補正を済ませた描画データに対して、特色オブジェクト群の描画結果が合成される。したがって、本実施形態では、元のPDLデータにおいて基本色の上に特色が重なる部分の色再現が正しくなる。
【0074】
また、本実施形態のシステムは、中間データ段階では基本色オブジェクトと特色オブジェクトのデータを別々に保持しているが、描画データの段階では、基本色オブジェクト群をバッファ部80に描画して色補正した後、同じバッファ部80内の色補正済みの描画データに対して特色オブジェクト群を合成する。したがって、中間データよりもデータ量がはるかに多い描画データの段階で基本色とは別に特色用の記憶領域(ページバッファ等)を用意する必要がないので、バックエンド装置40のメモリ容量の要件が緩和される。
【0075】
次に図9を参照して、バックエンド装置40の描画部44のバッファ部80の内部構成の一例を説明する。
【0076】
図9の例では、バッファ部80は、バッファ形式判定部82、ビットマップ形式出力部84a、ランレングス形式出力部84b、ライン毎のラインバッファ86−0〜86−n(nは正の整数)を含む。
【0077】
ラインバッファ86−0〜86−nは、印刷する画像のライン(主走査線)毎に設けられており、当該ラインの描画データを保持する。この例では、1つの出力単位の画像は、ライン0からラインnまでの(n+1)ラインで構成されている。図示例では、各ラインバッファ86−0〜86−n(以下、区別の必要がない場合は「ラインバッファ86」と総称する)は、それぞれビットマップ形式及びランレングス形式のうちのいずれかの形式の描画データを記憶する。
【0078】
バッファ形式判定部82は、ラインバッファ86毎に、そのラインバッファ86に記憶する描画データの形式として、ビットマップ形式とランレングス形式のいずれを用いるかを判定する。この判定は、入力されたオブジェクトの描画を行う毎に、動的に実行する。
【0079】
ランレングス形式では、1つのラン(同一値の画素のつらなり)を例えばそのランの始点及び終点の座標とそのランの画素値(例えば濃度)の組で表現するため、1つのランのデータはランが含む画素の数に依らず固定長のデータとなる。このため、1ライン内に含まれるランの数が少ない場合は、ランレングス形式の方がビットマップ形式よりも1ライン分の描画データのデータ量が少ない。しかし、1ライン内のランの数がある閾値以上になるとランレングス形式でのデータ量がビットマップ形式でのそれを超えてしまう。
【0080】
そこで1つの例としてこの実施形態では、バッファ形式判定部82は、出力単位の描画を開始する時点では、すべてのラインのバッファ形式をランレングス形式に設定する。そして、その後順に入力されるオブジェクトを描画していく中で、ライン毎にそのライン内のランの数を監視し、ラン数が閾値以上となったラインについてはバッファ形式をビットマップ形式に変更する。
【0081】
バッファ形式判定部82は、各ラインバッファ86のバッファ形式の情報を保持している。そして、描画データ生成部70が生成した各ラインの描画データをそれぞれ対応するラインバッファ86に書き込む際に、当該ラインのバッファ形式がビットマップ形式であればその描画結果をビットマップ形式出力部84aに渡し、ランレングス形式であれその描画結果をランレングス形式出力部84bに渡す。ビットマップ形式出力部84aは、描画データ生成部70が生成したそのラインの描画データをビットマップ形式で、対応するラインバッファ86に書き込んでいく。また、ランレングス形式出力部84bは、描画データ生成部70が生成したそのラインの描画データをランレングス形式で、対応するラインバッファ86に書き込んでいく。
【0082】
ここで、描画データ生成部70が生成する描画データの形式は、ランレングス形式であってもビットマップ形式であってもよい。ランレングス形式とビットマップ形式の相互変換は、公知のデジタル回路で実現可能である。例えば描画データ生成部70がランレングス形式の描画データを生成するものである場合、ビットマップ形式出力部84aはその描画データをビットマップ形式に変換してラインバッファ86に書き込み、ランレングス形式出力部84bはその描画データをランレングス形式のままラインバッファ86に書き込む。
【0083】
ランレングス形式出力部84bがラインバッファ86に対して新たなラン(ランレングス形式の描画データ)を書き込む場合、ラインバッファ86に保持されている各ランのうち、その新たなランと重なる部分をランはその書き込みにより分割され、その結果ラインバッファ86内のランの数が増える場合がある。例えばラインバッファ86にx=2からx=10までの範囲の色値50のランが1つだけ存在する状況で、新たにx=5からx=7までの色値100のランが書き込まれたとする。この書き込みの結果、ラインバッファ86内の保持されるランは、x=2からx=5までの色値50のラン、x=5からx=7までの範囲の色値100のラン、x=7からx=10までの色値50のランの3つとなる。
【0084】
バッファ形式判定部82は、ラインバッファ86にランレングス形式の描画データを書き込んだ結果、そのラインバッファ86内のランの数が閾値以上になると、データ形式変換部88に、そのラインバッファ86のデータ形式の変換を指示する。指示を受けたデータ形式変換部88は、そのラインバッファ86から描画データ(この場合はラン)を読み出し、それら読み出した描画データのデータ形式をランレングス形式からビットマップ形式へと変換し、変換結果のビットマップデータをそのラインバッファ86に書き戻す。これにより、そのラインバッファ86内の描画データはビットマップ形式となる。そして、バッファ形式判定部82は、そのラインバッファ86のデータ形式がビットマップ形式であることを記憶し、以降そのラインバッファ86に書き込む描画データはビットマップ形式出力部84aに渡す。
【0085】
またビットマップ形式の描画データを保持するラインバッファ86に対して新たに単色の長い画像をノックアウト方式で書き込むと、ラインバッファ86内のその画像に属する画素群は1つのランで表現可能になる。その結果、そのラインバッファ86のそのラン以外の残りの画素をそれぞれ1つのランとみなしても、そのラインバッファ86内のラン数が十分少なく(すなわち上記の閾値以下の第2の閾値以下)となる場合がある。この場合、そのラインバッファ86内の描画データをランレングス形式に戻した方が、描画データのデータ量が少なくなる。そこで、バッファ形式判定部82は、ラインバッファ86に新たに書き込んだ描画データが単色であり、且つその描画データの書き込んだ後の当該ラインの画像をランレングス形式で表した場合のランの数が第2の閾値以下になると判定される場合に、データ形式変換部88に対して、そのラインバッファ86の描画データをランレングス形式に変換するように指示してもよい。
【0086】
以上の例では、ラインバッファ86に新たな描画データを書き込んだ結果に対して、ラインバッファ86内のランの数が閾値以上であるか否かの判定を行ったが、新たな描画データを書き込む直前にこの判定を行い、データ形式変換部88によるデータ形式の変換を行ってもよい。
【0087】
図9の例では、特色判定部90が特色オブジェクト群の入力開始を検知すると、描画データ生成部70が一時停止し、色補正部92が、各ラインバッファ86に保持されている描画データに対して色補正を行う。このとき色補正部92では、ラインバッファ86内の描画データがビットマップ形式であれば、画素毎に色補正を行う。一方、ラインバッファ86内の描画データがランレングス形式であれば、ラン毎にカラーデータに対して色補正を行う。1ラインを構成するランの数は、1ラインの画素数よりもはるかに少ないので、ランレングス形式のラインバッファ86内の描画データについての色補正の処理負荷は、ビットマップ形式のそれよりもはるかに少ない。
【0088】
そして、この色補正が完了した後、描画データ生成部70が動作を再開し、色補正後の描画データを保持する各ラインバッファ86に対して、特色オブジェクトの描画データが書き込まれていく。
【0089】
以上に説明したように、図9に例示したバッファ部80は、描画データの形式をライン単位に定めることが可能になっている。そして、各ラインの描画データの形式としては、ビットマップ形式とランレングス形式のうち、そのラインの描画データのデータ量が少なくなる形式が選択される。本実施形態では、このように出力単位内のライン毎にデータ形式が異なり得る描画データをデータ変換部94で単一形式(例えばビットマップ形式)の画像データに変換して印刷装置50に供給する。しかし、仮に印刷装置50がそのようにデータ形式が混在した描画データを受け入れて処理可能な構成(例えばデータ変換部94の機能を内蔵している)であれば、バックエンド装置40からそのようなデータ形式混在の描画データを通信手段64経由で印刷装置50に送信してもよい。この場合、ビットマップ形式等の単一形式の画像データよりもデータ形式混在の描画データの方がデータ量が少ないので、通信手段64の通信量が少なくて済む。
【0090】
また、図9の例では、色補正部92が行う色補正は、ランレングス形式のデータを有するラインバッファ86については、各ランのカラーデータに対して行えばよい。そのラインバッファ86に格納されるランの数はそのラインの画素数よりも少ないので、色補正の対象となるカラーデータの数は画素毎に色補正を行う場合よりも少ない。このため、ランレングス形式のラインの方がビットマップ形式のラインよりも色補正部92の補正処理に要する時間が少ない。したがって、上に例示したデータ形式混在の描画データは、全体がビットマップ形式の描画データよりも、色補正に要する時間が少なく済む。なお、全体がランレングス形式の描画データは、上述したデータ形式混在の描画データよりも色補正に要する時間が少なくなる場合もあるが、データ形式混在の場合よりもデータ量が大きくなる可能性も高い。このように、図9の例の方式によるデータ形式混在の描画データの方が、データ量の大きさ(必要なメモリ容量の少なさ)と色補正の処理負荷を総合した評価では、描画データ全体をビットマップ形式又はランレングス形式に統一する場合よりも良好である。
【0091】
また図9の例では出力単位の描画データにビットマップ形式とランレングス形式を混在可能としたが、ビットマップ形式と組み合わせる形式はランレングス形式以外の圧縮データ形式であってもよい。
【0092】
また、図9の例ではライン単位で描画データの形式を選択可能にしたが、ライン単位はあくまで一例に過ぎない。この代わりに、例えば隣接する複数のラインをまとめた1つのブロックや、縦m画素×横n画素(m,nは正の整数)のブロック等を描画データ形式の選択の単位としてもよい。ランレングス形式の場合データ圧縮はライン方向(主走査方向)についてのみであったのに対し、描画データ形式の選択の単位としてブロックを用いた場合、ラインに垂直な方向(副走査方向)についてもデータ圧縮が可能である。例えば、2ライン毎に1ラインを間引いたり平均したりする等のデータ圧縮である。
【0093】
さて、以上に説明した実施形態において、色補正対象の基本色(すなわち色補正部92が色補正を行う対象となる基本色)は一般にデバイスCMYK色空間でのものである。デバイスCMYK色空間は、個別のデバイス(例えば印刷装置)に依存するので、出力に用いる印刷装置50の特性に応じた補正が必要になるのである。
【0094】
ここで、PDLデータが含むオブジェクトには、デバイスCMYK表現でも特色でもない色値を持つものが存在する。例えば、RGB表現やデバイス非依存の色空間(例えばCIEが規定した各種色空間)での表現などがその例である。デバイスCMYK表現でも特色でもない色表現の色は、色補正部92の色補正処理の対象ではない。これらの色については、特色の場合と同様、その色を印刷装置50の色空間での表現に変換する際に、印刷装置50の特性を反映した色値に変換されるからである。
【0095】
したがって、PDLデータにそのような特色以外、かつ、色補正部92の色補正対象でない色表現の色(「非補正対象色」と呼ぶ。非補正対象色は、特色を含まないものとする)のオブジェクトが含まれる場合には、色補正部92がバッファ部80内の描画データのうち非補正対象色の部分について色補正を行わないよう制御すればよい。このためには、例えば、ページ内の各領域が非補正対象色か否(すなわちデバイスCMYK又は特色)かを示す判別情報を用いればよい。この例では、例えば、解釈部34がオブジェクトの中間データを生成する際、そのオブジェクトが非補正対象色であれば、それをデバイスCMYKの表現に変換すると共に、その中間データに非補正対象色を示すフラグをセットする。そして、描画データ生成部70は、受け取った中間データに非補正対象色のフラグがセットされている場合は、その中間データから生成した描画データの領域(その描画データが存在する画素群)が非補正対象色であることを判別情報に書き込む。そして、色補正部92は、特色判定部90の指示に応じてバッファ部80内の描画データ群に色補正を行う際、ページのうち判別情報に非補正対象色である旨が示される領域については、色補正を行わない。なお、以上の例では、解釈部34が非補正対象色をデバイスCMYKに変換したが、この代わりに例えば描画データ生成部70が描画データを生成する際にこの色空間変換を行ってもよい。この場合、描画データ生成部70は、入力された中間データが非補正対象色であれば、その中間データから生成した描画データの領域が非補正対象色である旨を判別情報に書き込めばよい。このような判別情報の一例として、ページの画素毎にその画素が非補正対象色か否かを示すビットを有するタグ版(例えば特許文献4に記載されたものと類似のもの)を用いてもよい。
【符号の説明】
【0096】
10 端末装置、20 印刷制御システム、30 フロントエンド装置、32 印刷ジョブ受信部、34 解釈部、36 特色平滑化部、38 特色スプール、40 バックエンド装置、42a 第1バッファ、42b 第2バッファ、43 結合部、44 描画部、46 出力バッファ、50 印刷装置、60,62,64 通信手段、70 描画データ生成部、80 バッファ部、82 バッファ形式判定部、84a ビットマップ形式出力部、84b ランレングス形式出力部、86 ラインバッファ、88 データ形式変換部、90 特色判定部、92 色補正部、94 データ変換部。
図1
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図9