(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記第1の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数は、前記第2の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数及び前記第3の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数よりも多いことを特徴とする請求項1に記載のコモンモードフィルタ。
前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1エッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることを特徴とする請求項6に記載のコモンモードフィルタ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されたコモンモードフィルタは、実装基板への搭載方向を180°回転させても高周波特性があまり変化しないという優れた特徴を有している。しかしながら、この特徴は、実装基板への搭載方向にかかわらず単一の特性しか得られないことを意味する。
【0006】
したがって、本発明は、実装基板への搭載方向によって高周波特性が変化するコモンモードフィルタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明によるコモンモードフィルタは、巻芯部と、前記巻芯部に同方向に巻回された第1及び第2のワイヤと、を備え、前記巻芯部は、軸方向における一端側に位置する第1の巻回領域と、前記軸方向における他端側に位置する第2の巻回領域と、前記第1及び第2の巻芯領域の間に位置する第3の巻回領域とを含み、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において互いに交差しており、前記第1のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において整列して巻回され、前記第2のワイヤは前記第1及び第2の巻回領域において前記第1のワイヤ上に整列して巻回され、これにより、整列して巻回された前記第1のワイヤ上に前記第2のワイヤが整列して巻回されてなる複数の巻回ブロックが構成され、前記複数の巻回ブロックは、前記第1の巻回領域に位置する第1の巻回ブロックと、前記第2の巻回領域に位置する第2及び第3の巻回ブロックを含み、前記第2の巻回ブロックを構成する第2のワイヤと前記第3の巻回ブロックを構成する第2のワイヤは、互いに離間していることを特徴とする。
【0008】
本発明によれば、第1の巻回領域における巻回レイアウトと第2の巻回領域における巻回レイアウトが相違していることから、実装基板への搭載方向によって高周波特性が変化する。これにより、2種類の特性を持ったコモンモードフィルタを提供することが可能となる。しかも、第1のワイヤと第2のワイヤが第3の巻回領域において交差していることから、差動信号の対称性が高められる。
【0009】
本発明において、前記第1の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数は、前記第2の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数及び前記第3の巻回ブロックを構成する前記第2のワイヤのターン数よりも多いことが好ましい。これによれば、第1の巻回領域におけるターン数と第2の巻回領域におけるターン数の差が小さくなることから、差動信号の対称性をより高めることができる。
【0010】
本発明において、前記第1の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されていることが好ましい。これによれば、第1の巻回ブロックにおいて第1のワイヤと第2のワイヤの対称性が高められることから、優れた高周波特性を得ることが可能となる。
【0011】
この場合、前記第2及び第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されていても構わない。或いは、前記第2の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターンが隣接するよう巻回されており、前記第3の巻回ブロックは、前記第1及び第2のワイヤの同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されていても構わない。前者によれば、第2及び第3の巻回ブロックにおいても第1のワイヤと第2のワイヤの対称性が高められることから、優れた高周波特性を得ることが可能となる。また、後者によれば、実装基板への搭載方向による高周波特性の変化を拡大することができる。ここで、前記第3の巻回ブロックは、前記第1の巻回ブロックと前記第2の巻回ブロックの間に位置するものであっても構わない。
【0012】
本発明において、前記第1のワイヤと前記第2のワイヤは、前記第3の巻回領域において少なくとも一部が互いに離間していることが好ましい。これによれば、第3の巻回領域における第1のワイヤと第2のワイヤの交差角を拡大することができる。これにより、交差部分における2本のワイヤの接触距離が短縮されることから、上方側に位置する第2のワイヤの巻回位置をより安定化させることが可能となる。
【0013】
本発明において、前記第3の巻回領域は、前記軸方向に延在する第1及び第2のエッジと、前記第1のエッジと前記第2のエッジに挟まれた表面領域とを有し、前記第1のワイヤは、前記表面領域上に位置する第1の区間を含み、前記第2のワイヤは、前記表面領域上に位置する第2の区間を含み、前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記表面領域上で互いに交差しており、且つ、前記第1のエッジ上及び前記第2のエッジ上の少なくとも一方において互いに離間していることが好ましい。これによれば、第1及び第2のワイヤの離間した部分が第1又は第2のエッジによって保持されることから、ワイヤの巻回位置をより安定化させることが可能となる。
【0014】
この場合、前記第1のワイヤの前記第1の区間と前記第2のワイヤの前記第2の区間は、前記第1のエッジ上において互いに離間し、前記第2のエッジ上において互いに接触していることが好ましい。かかる構成は、前記第2のワイヤを前記第1のエッジ側から前記第2のエッジ側に巻回する場合において特に効果的である。
【発明の効果】
【0015】
このように、本発明によるコモンモードフィルタは、実装基板への搭載方向によって異なる高周波特性を得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0018】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の第1の実施形態によるコモンモードフィルタ10Aの外観を示す略斜視図である。
【0019】
図1に示すように、本実施形態によるコモンモードフィルタ10Aは、ドラム型コア20と、板状コア30と、第1〜第4の端子電極41〜44と、第1及び第2のワイヤW1,W2とを備えている。ドラム型コア20及び板状コア30は、Ni−Zn系フェライトなど比較的透磁率の高い磁性材料によって構成される。また、第1〜第4の端子電極41〜44は、銅などの良導体からなる金具である。
【0020】
ドラム型コア20は、第1の鍔部21と、第2の鍔部22と、これらの間に設けられた巻芯部23と有している。巻芯部23はx方向を軸方向とし、その両端にそれぞれ第1及び第2の鍔部21,22が設けられ、これらが一体化された構造を有している。板状コア30は、鍔部21,22の上面21t,22tに接着されている。鍔部21,22の上面21t,22tはxy平面を構成し、その反対側の面は実装面21b,22bとして用いられる。そして、第1及び第2の端子電極41,42は、第1の鍔部21の実装面21b及び外側面21sに設けられ、第3及び第4の端子電極43,44は、第2の鍔部22の実装面22b及び外側面22sに設けられている。外側面21s,22sは、yz面を構成する。第1〜第4の端子電極41〜44の固定は、接着剤などによって行われる。
【0021】
第1及び第2のワイヤW1,W2は、巻芯部23に同方向に巻回されている。そして、第1のワイヤW1の一端及び他端はそれぞれ第1及び第3の端子電極41,43に接続され、第2のワイヤW2の一端及び他端はそれぞれ第2及び第4の端子電極42,44に接続される。第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は、互いに同じである。
【0022】
図2は、第1のワイヤW1の巻回レイアウトを説明するための図である。
【0023】
図2に示すように、ドラム型コア20の巻芯部23は、第1の鍔部21側に位置する第1の巻回領域A1と、第2の鍔部22側に位置する第2の巻回領域A2と、第1及び第2の巻回領域A1,A2の間に位置する第3の巻回領域A3を含む。そして、第1のワイヤW1は、第1及び第2の巻回領域A1,A2において整列して巻回されている。したがって、第1及び第2の巻回領域A1,A2における第1のワイヤW1の巻回ピッチは、第1のワイヤW1の径とほぼ等しく、理想的には隣接するターン同士が接触している。特に限定されるものではないが、第1の巻回領域A1における第1のワイヤW1のターン数と、第2の巻回領域A2における第1のワイヤW1のターン数は、一致していることが好ましい。
【0024】
一方、第3の巻回領域A3においては、第1のワイヤW1の軸方向(x方向)における遷移量が大きく、したがって、第1のワイヤW1の延在方向とy方向が成す角度は、第1及び第2の巻回領域A1,A2における角度よりも拡大されている。本実施形態においては、第3の巻回領域の表面領域Rにおいて第1のワイヤW1が大きく遷移している。ここで、表面領域Rとは、巻芯部23の第1のエッジE1と第2のエッジE2に挟まれた表面のうち、第3の巻回領域A3に属する表面を指し、本実施形態においてはxy平面を構成する。第1及び第2のエッジE1,E2はいずれもx方向に延在する角部である。
図2に示すように、第1のワイヤW1のうち上述した表面領域R上に位置する部分は、第1の区間S1を構成する。特に限定されるものではないが、表面領域Rは実装面21b,22bと同方向を向く面であることが好ましい。
【0025】
図3は、第2のワイヤW2の巻回レイアウトを説明するための図である。
【0026】
図3に示すように、第2のワイヤW2は、第1及び第2の巻回領域A1,A2において第1のワイヤW1上に巻回されている。好ましくは、第1のワイヤW1の隣接ターンによって形成される谷線に沿って、第2のワイヤW2が巻回されている。したがって、第1及び第2の巻回領域A1,A2における第2のワイヤW2の巻回ピッチは、第2のワイヤW2の径とほぼ等しく、理想的には隣接するターン同士が接触している。特に限定されるものではないが、第1の巻回領域A1における第2のワイヤW2のターン数と、第2の巻回領域A2における第2のワイヤW2のターン数は、一致していることが好ましい。
【0027】
一方、第3の巻回領域A3においては、第2のワイヤW2が第1のワイヤW1を跨ぐようにして両者が交差している。より具体的には、第2のワイヤW2のうち上述した表面領域R上に位置する部分を第2の区間S2とすると、表面領域R上において第1の区間S1と第2の区間S2が交差する。但し、第2の区間S2の延在方向とy方向が成す角度は、第1の区間S1の延在方向とy方向が成す角度よりも小さい。
【0028】
図4は、第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトをより詳細に説明するための模式図である。また、
図5(a)は
図4に示すA−A線(第2のエッジE2)に沿った略断面図、
図5(b)は
図4に示すB−B線に沿った略断面図、
図5(c)は
図4に示すC−C線(第1のエッジE1)に沿った略断面図、
図5(d)は
図4に示すD−D線に沿った略断面図である。
【0029】
図5に示すように、本実施形態においては、第1の巻回領域A1に巻回された第1及び第2のワイヤW1,W2は第1の巻回ブロックB1を形成する一方、第2の巻回領域A2に巻回された第1及び第2のワイヤW1,W2は第2及び第3の巻回ブロックB2,B3を形成する。本実施形態では、第2の巻回ブロックB2が第1の巻回ブロックB1と第3の巻回ブロックB3の間に配置されている。
【0030】
これらブロックB1〜B3は、いずれも整列して巻回された第1のワイヤW1上に第2のワイヤW2が整列して巻回された構造を有している。尚、
図5には、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン番号も表記されている。
図5においては、第1及び第2のワイヤW1,W2が交差する部分のターン番号を0と定義している。但し、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数はあくまで一例であり、より多くのターン数を有していても構わない。
【0031】
第1の巻回ブロックB1は、交差部分から数えたターン数の等しいワイヤ同士が隣接するよう巻回されたブロックである。第1の巻回ブロックB1においては、同一ターンを構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のうち第2のワイヤW2が交差側(第3の巻回領域A3側)に位置している。
図5に示す例では、第1の巻回ブロックB1を構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は8ターンである。
【0032】
第2の巻回ブロックB2も、交差部分から数えたターン数の等しいワイヤ同士が隣接するよう巻回されたブロックである。第2の巻回ブロックB2においては、同一ターンを構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のうち第2のワイヤW2が交差側(第3の巻回領域A3側)に位置している。
図5に示す例では、第2の巻回ブロックB2を構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は4ターンである。
【0033】
第3の巻回ブロックB3も、交差部分から数えたターン数の等しいワイヤ同士が隣接するよう巻回されたブロックである。第3の巻回ブロックB3においては、同一ターンを構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のうち第1のワイヤW1が交差側(第3の巻回領域A3側)に位置している。
図5に示す例では、第3の巻回ブロックB3を構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のターン数は4ターンである。
【0034】
このような巻回レイアウトは、巻回作業時において第2の巻回ブロックB2から第3の巻回ブロックB3に遷移する際、第2のワイヤW2を1ピッチ分飛ばして巻回することによって実現できる。これにより、第2の巻回ブロックB2を構成する第2のワイヤW2(ターン4)と、第3の巻回ブロックB3を構成する第2のワイヤW2(ターン5)との間に1ピッチ分のスペースが形成され、これを境として第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の位置を入れ替えることができる。このように、第2の巻回ブロックB2と第3の巻回ブロックB3は、いずれも同一ターン同士が隣接する巻回レイアウトであるものの、上述した1ピッチ分のスペースを設けることによってワイヤの位置が入れ替わることから、第2の巻回ブロックB2と第3の巻回ブロックB3は異なる特性を持つことになる。
【0035】
第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の位置の入れ替えは、第3の巻回領域A3においても発生する。これは、第3の巻回領域A3において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が交差するからである。したがって、本実施形態によるコモンモードフィルタ10Aにおいては、ワイヤの位置の入れ替えが2箇所で発生することになる。
【0036】
ここで、交差部分から数えたターン数の等しいワイヤ同士を隣接させると、交差部分からみた第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の対称性が高められる。そして、本実施形態においては、第1〜第3の巻回ブロックB1〜B3のいずれにおいても同一ターン同士が隣接していることから、優れた高周波特性を得ることが可能となる。
【0037】
しかも、第1の巻回領域A1におけるターン数(8ターン)と第2の巻回領域A2におけるターン数(4ターン+4ターン)が互いに等しいものの、両者の巻回レイアウトが互いに異なっていることから、本実施形態によるコモンモードフィルタ10Aを実装基板に搭載した場合、搭載方向によって異なる高周波特性を得ることができる。つまり、差動信号の入力側を第1の巻回領域A1側とするか第2の巻回領域A2側とするかによって、異なる高周波特性が得られる。これにより、1つのコモンモードフィルタに2種類の特性を持たせることが可能となる。
【0038】
図4に戻って説明すると、第2の区間S2の延在方向とy方向が成す角度は、第1の区間S1の延在方向とy方向が成す角度よりも十分に小さく、これにより、交差部分の近傍において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が互いに離間している。本実施形態においては、符号51で示すように、第1のエッジE1上において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間するとともに、符号52で示すように、第2のエッジE2上において第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間している。
【0039】
その結果、交差部分における第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の接触距離が短縮されることから、上方側に位置する第2のワイヤW2の巻回位置が安定する。これは、交差部分の中心点においては、第1のワイヤW1の直上に第2のワイヤW2が位置することから(
図5(b)参照)、第2のワイヤW2がx方向にずれようとする力は働かないが、交差の中心点からy方向にやや離れた部分では、第1のワイヤW1の傾斜面上に第2のワイヤW2が位置することから(
図5(d)参照)、第2のワイヤW2がx方向にずれようとする力Pが働く。このような力Pは、交差部分における第1の区間S1と第2の区間S2の接触距離が長いほど(つまり、第1の区間S1と第2の区間S2の成す角度が小さいほど)強くなる。しかしながら、本実施形態においては、第1の区間S1と第2の区間S2を第1及び第2のエッジE1,E2において互いに離間させていることから両者の接触距離が短く、力Pが弱められる。その結果、交差部分の近傍における第2のワイヤW2のずれが抑制される。
【0040】
また、第2のワイヤW2は第1のワイヤW1に比べて巻回作業時における位置制御が困難であり、特に、単位ワイヤ長当たりのx方向への遷移量が大きくなるほど、巻回作業時に生じるずれが大きくなりやすい。しかしながら、本実施形態においては、第3の巻回領域A3において第2のワイヤW2の単位ワイヤ長当たりのx方向への遷移量が低減されていることから、この点からも巻回位置のずれを低減することができる。これにより、本実施形態によれば、特性のばらつきが少ないコモンモードフィルタを提供することが可能となる。
【0041】
<第2の実施形態>
図6は、本発明の第2の実施形態によるコモンモードフィルタ10Bの外観を示す略斜視図である。
【0042】
図6に示すように、本実施形態によるコモンモードフィルタ10Bは、第2のワイヤW2の巻回レイアウトが相違する点において、第1の実施形態によるコモンモードフィルタ10Aと相違している。その他の構成は第1の実施形態によるコモンモードフィルタ10Aと同一であることから、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0043】
図7は、第1及び第2のワイヤW1,W2の巻回レイアウトをより詳細に説明するための模式図である。また、
図8(a)は
図7に示すA−A線(第2のエッジE2)に沿った略断面図、
図8(b)は
図7に示すB−B線に沿った略断面図、
図8(c)は
図7に示すC−C線(第1のエッジE1)に沿った略断面図である。
図8には、第1及び第2のワイヤW1,W2のターン番号も表記されている。以降の各図においても同様である。
【0044】
本実施形態においては、符号51で示すように、第1のエッジE1上においては第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が離間するとともに、符号50で示すように、第2のエッジE2上においては第1のワイヤW1と第2のワイヤW2が接触している。これに伴い、第1のエッジE1上における第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の離間距離は、第1の実施形態よりも拡大されており、第3の巻回領域A3のx方向における略中央部に位置している。
【0045】
本実施形態による巻回レイアウトは、第2のワイヤW2を第1のエッジE1側から第2のエッジE2側に巻回する場合において、特に効果的である。その理由は次の通りである。
【0046】
まず、第2のワイヤW2を第1のエッジE1側から第2のエッジE2側に巻回すると、第2のワイヤW2には巻回作業時に符号Qで示す力(遷移方向への力)が常に印加される。一方、交差部分の近傍において第2のワイヤW2がずれようとする力Pは、第1のエッジE1側では力Qと同方向、第2のエッジE2側では力Qと逆方向となる。つまり、第2のエッジE2側では力Pと力Qが相殺されるのに対し、第1のエッジE1側では力Pと力Qが加算されることから、第2のワイヤW2のずれは第1のエッジE1側にて生じやすくなる。
【0047】
しかしながら、本実施形態においては、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の交差位置が第2のエッジE2側にオフセットしているため、第1のエッジE1側における力Pが大幅に弱められ、第1のエッジE1側における第2のワイヤW2のずれが生じにくくなる。一方、第2のエッジE2側においては、上述の通り、力Pと力Qが相殺されるとともに、交差部分と第2のエッジE2との距離が短いことから、第2のエッジE2によって第2のワイヤW2の位置が保持される。このようなメカニズムにより、第2のワイヤW2のずれがより効果的に抑制されることになる。
【0048】
このように、本実施形態においては、第2のワイヤW2の巻回方向を考慮した巻回レイアウトを採用していることから、第2のワイヤW2の巻回位置をよりいっそう安定化させることが可能となる。
【0049】
<変形例>
図9(a)〜(c)は第1の変形例を説明するための図であり、それぞれ
図8(a)〜(c)に示す断面に対応する。
【0050】
図9に示す例では、第1の巻回領域A1上においては第1の巻回ブロックB1が形成される一方、第2の巻回領域A2上においては第2及び第4の巻回ブロックB2,B4が形成される。本例では、第4の巻回ブロックB4が第1の巻回ブロックB1と第2の巻回ブロックB2の間に配置されている。第4の巻回ブロックB4は、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されたブロックである。例えば、第1のワイヤW1のターン3と第2のワイヤW2のターン3との間には、第1のワイヤW1のターン2及び第2のワイヤW2のターン4が介在する。このようなレイアウトは、
図9(a)に示すように、第1のワイヤW1のターン0と第2のワイヤW2のターン0によって形成される谷線に第2のワイヤW2のターン1を配置することによって得られる。
【0051】
本例においては、差動信号の対称性が低下するものの、第2の実施形態によるコモンモードフィルタ10Bと比べて、実装基板への搭載方向による高周波特性の差を拡大することが可能となる。
【0052】
図10(a)〜(c)は第2の変形例を説明するための図であり、それぞれ
図8(a)〜(c)に示す断面に対応する。
【0053】
図10に示す例では、第1の巻回領域A1上においては第1の巻回ブロックB1が形成される一方、第2の巻回領域A2上においては第3及び第4の巻回ブロックB3,B4が形成される。本例では、第4の巻回ブロックB4が第1の巻回ブロックB1と第3の巻回ブロックB3の間に配置されている。上述の通り、第3の巻回ブロックB3は、第2の巻回ブロックB2と同様、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の同一ターンが隣接するよう巻回されたブロックであり、同一ターンを構成する第1及び第2のワイヤW1,W2のうち第1のワイヤW1が交差側に位置している。また、第4の巻回ブロックB4は、第1のワイヤW1と第2のワイヤW2の同一ターン間に他のターンが介在するよう巻回されたブロックである。
【0054】
図10に示すように、第3の巻回ブロックB3を構成する第2のワイヤW2と、第4の巻回ブロックB4を構成する第2のワイヤW2との間には、2ピッチ分のスペースが設けられている。このような巻回レイアウトは、巻回作業時において第4の巻回ブロックB4から第3の巻回ブロックB3に遷移する際、第2のワイヤW2を2ピッチ分飛ばして巻回することによって実現できる。
【0055】
本例においても、2種類の高周波特性を有するコモンモードフィルタを提供することが可能となる。しかも、第2の巻回領域A2において、第2のワイヤW2が2ピッチ分飛ばして巻回されていることから、実装基板2への搭載方向による高周波特性の差を拡大することが可能となる。
【0056】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に限定されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能であり、それらも本発明の範囲内に包含されるものであることはいうまでもない。