特許第6794848号(P6794848)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794848
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】車両の重量測定装置
(51)【国際特許分類】
   G01G 19/10 20060101AFI20201119BHJP
   B60P 5/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   G01G19/10 B
   B60P5/00
【請求項の数】7
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-12940(P2017-12940)
(22)【出願日】2017年1月27日
(65)【公開番号】特開2018-17718(P2018-17718A)
(43)【公開日】2018年2月1日
【審査請求日】2020年1月24日
(31)【優先権主張番号】特願2016-141097(P2016-141097)
(32)【優先日】2016年7月19日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004204
【氏名又は名称】日本精工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100183357
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 義美
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 栄作
(72)【発明者】
【氏名】疋田 真史
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 駿介
(72)【発明者】
【氏名】松田 靖之
【審査官】 森 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 欧州特許出願公開第0392071(EP,A1)
【文献】 特許第4197830(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01G 19/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリングの弾発力により移動する移動体と、
前記移動体の移動により、押圧変形可能なダイアフラムと、
所定の測定流体を充填し、前記ダイアフラムの押圧により内部圧力が変化可能な油室と、
前記油室内の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
前記ダイアフラムの外径寄りの面部を密閉固定する環状のカラーと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置。
【請求項2】
前記移動体は、前記カラーと摺接する円筒部を有し、前記カラーの内径側で移動することを特徴とする請求項1に記載の車両の重量測定装置。
【請求項3】
前記圧力センサが取り付けられる取付部を備え、
前記ダイアフラムは、前記取付部に形成された溝部の開口領域を覆い、前記溝部と前記ダイアフラムとで前記油室を形成し、
前記カラーは、前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定することを特徴とする請求項1又は2に記載の車両の重量測定装置。
【請求項4】
懸架装置に備えられ、上面側に開口する溝部を有するボトムプレートと、
前記溝部の開口領域を覆い、前記溝部とともに所定の測定流体を充填してなる所定空間の油室を形成するダイアフラムと、
前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のカラーと、
前記カラーの内径側で懸架装置の長さ方向に移動可能に備えられるとともに、前記カラーの上側で前記カラーと隙間を介して配され、懸架装置のスプリングの弾発力により前記ダイアフラムを押圧可能なピストンと、
前記スプリングの一端を受け、前記ピストンとの間に介在するスプリングシートと、
前記ボトムプレートの下面側に備えられ、前記ピストンの移動により変化可能な油室内の測定流体の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置。
【請求項5】
懸架装置に備えられ、環状に開口する溝部を下面側に設けてなる取付部と、
前記溝部の開口領域を覆い、前記溝部とともに所定空間の油室を形成する環状のダイアフラムと、
前記ダイアフラムの内径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より内側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のインナーカラーと、
前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のアウターカラーと、
前記インナーカラーの外径と前記アウターカラーの内径との間で懸架装置の長さ方向に移動可能に備えられ、懸架装置のスプリングの弾発力により前記ダイアフラムを押圧可能なピストンと、
前記スプリングの一端を受けるブッシュと、
前記ピストンと前記ブッシュとの間に介在され、相対回転可能に構成されている軸受装置と、
前記取付部に備えられ、前記ピストンの移動により変化可能な油室内の測定流体の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置。
【請求項6】
重量測定装置の外気側から前記油室近傍に向けて連続した非貫通の挿入孔を設け、前記挿入孔に、前記油室内の温度変化を検出可能な温度センサを配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の重量測定装置。
【請求項7】
前記温度センサは、伝熱性の高い接着剤で前記挿入孔に固定されていることを特徴とする請求項6に記載の重量測定装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両の重量を測定する装置、特に自動車の懸架装置に組込み過積載を検出する車両の重量測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車、特に、種々の荷物などを運搬するトラックやバンなどの商用車において、法定積載量を超えて道路を通行する不法な過積載が社会問題となっている。これは、一度にたくさんの荷物を運搬したほうが運送費を少なくできるからである。
【0003】
しかし、このような過積載は次のような種々の問題を招く虞を有しており、避けなければならないものである。
(1)過積載により自動車の運動性能が低下したり、構成部品が破損したりする虞があるため、事故の原因となることがある。例えば、車軸(ハブ)の破損、タイヤの破損(バースト)、制動距離が長くなりブレーキが過熱して効きにくくなる、車両が横転し易くなるなど、事故等を招く要因を多数有している。
(2)過積載により道路の損傷が激しくなるため、道路のメンテナンス費用が掛かる。
【0004】
このような過積載の防止が困難となっている原因は多々あるが、その内の一つには、積載重量が運転手あるいは同乗者などから容易に認識できないということにある。
すなわち、従来、車両の荷重測定(積載重量測定)は、台秤に測定対象の車両を載せて行っていた。
しかし、台秤の設置は、施設が大がかりで広い設置スペースを必要とするため、及び設置コストが嵩むため、設置できる台秤の台数が制限され多くの車両を測定することなど物理的にも無理があった。
【0005】
そこで、昨今では、特許文献1などに開示されているように、車両自体に搭載して荷重(重量)を測定することを可能とした簡易的な荷重測定装置が多々提案されている。
【0006】
例えば、特許文献1に開示の先行技術は、車両の荷重が掛かることで伸縮する被荷重部材の異なる取付箇所に2つの溶着部分が溶着されるベースアッシーと、該ベースアッシーにより支持され、前記車両に掛かる荷重の変化により前記2つの溶着部分が接近離間する方向に前記ベースアッシーが伸縮することで出力が変化する圧縮歪検出用センサ素子と、該圧縮歪検出用センサ素子の出力を増幅するアンプが実装された回路基板とで構成し、圧縮歪を検出することにより荷重測定する簡易的な荷重測定装置である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−330503
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このような荷重測定装置は、通常、大きく分けて2つの機能ブロックから構成されている。
1つ目の機能ブロックは、測定流体(作動油)を充填した油圧室(油室)と、油室の一部を押圧変形可能に構成するダイアフラムと、油室と連通して備えられ、ダイアフラムの押圧による油室の圧力変化を検出する圧力センサからなる車両に固定される荷重検出部である。
2つ目の機能ブロックは、スプリングの弾発力などにより、荷重に従って移動して前記ダイアフラムを押圧するピストン部である。
【0009】
また、この荷重検出部のダイアフラムや圧力センサは、車両後輪用の懸架装置に組み込まれる場合にはボトムプレートに取り付けられ、車両前輪用の懸架装置に組み込まれる場合には、取付部(トッププレート)に取り付けられる。
この場合、圧力センサのボトムプレート(または取付部)への取り付け構造としては、測定流体の漏れを封止でき、また圧力センサそのものを固定できるようにするため、テーパネジなどのネジを用いた密封構造が用いられる。このようなネジを用いた密封構造は製作が容易なので液体を封止する目的で広く一般的に用いられているものである。
【0010】
ところが、上述のようなネジを用いた密封構造では、圧力センサを固定締結する際に、ネジの作用によって圧力センサが軸方向に進むため、圧力センサは測定流体を押し退けるようにして固定締結される。測定流体は、圧力センサ固定前の油室では大気圧と平衡の状態にあるが、圧力センサの固定により、測定流体が油室の容積に対して過剰となり、油室内の圧力を上昇させる結果となる。
一般に測定流体は圧縮性がないか、非常に小さいため、ネジ込みによる圧力センサの進み量が非常に小さくても、油室内の圧力に大きな影響を与える。
また、圧力センサを同一の締結トルクで固定締結した場合であっても、ネジの加工精度によっては、ネジ込みによる圧力センサの進み量には個体差があるため、油室内の圧力上昇の程度にも個体差が生じる。
このように、ネジ締め付けに伴う油室内の圧力の上昇を一定に管理するのは非常に困難である。
【0011】
荷重測定装置が受けた荷重は、例えば、ピストンからパッドを介してダイアフラムに伝えられる。ダイアフラムに伝えられた荷重はダイアフラムを変形させ、ダイアフラムとトッププレート(後輪の場合はボトムプレート)で囲まれた油室内の圧力を上昇させる。ピストンがパッドを介してダイアフラムに伝えた荷重は、主として測定流体圧力で支持されている。ダイアフラム自身の剛性も荷重の一部を支えるが、ダイアフラムは薄く柔軟であるから、その割合は小さい。
【0012】
このような場合において、油室内の測定流体(作動油)の温度が変わってしまうと、油室内の測定流体(作動油)の体積が変化してしまうことがある。すると、センサの荷重=出力電圧特性が、常温(23℃)の検定状態と比較して、同じ荷重を与えた場合でも、高温では荷重が大きい側、低温では荷重が小さい側に出力信号が偏移してしまうことがある。
図17は、温度変化による荷重(kN)と過積載検出センサ出力電圧(V)との関係の比較を示し、図中、〇印は常温、△印は高温、−印は低温を示す。
温度による影響を無視すると、外気環境によって荷重が変わってしまい、重量測定装置本来の目的を達成できなくなる虞もある。
【0013】
本発明は従来技術の有するこのような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、圧力センサをネジによって固定する場合であっても、油室内の圧力を一定に管理可能な重量測定装置を提供することにある。また、油室内の作動油の温度変化によるセンサ出力電圧の偏移を防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
このような目的を達成するために、第一の本発明は、スプリングの弾発力により移動する移動体と、
前記移動体の移動により、押圧変形可能なダイアフラムと、
所定の測定流体を充填し、前記ダイアフラムの押圧により内部圧力が変化可能な油室と、
前記油室内の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
前記ダイアフラムの外径寄りの面部を密閉固定する環状のカラーと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置としたことである。
第二の本発明は、第一の本発明において、前記移動体は、前記カラーと摺接する円筒部を有し、前記カラーの内径側で移動することを特徴とする車両の重量測定装置としたことである。
第三の本発明は、第一の本発明又は第二の本発明において、前記圧力センサが取り付けられる取付部を備え、
前記ダイアフラムは、前記取付部に形成された溝部の開口領域を覆い、前記溝部と前記ダイアフラムとで前記油室を形成し、
前記カラーは、前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定することを特徴とする車両の重量測定装置としたことである。
【0015】
第四の本発明は、懸架装置に備えられ、上面側に開口する溝部を有するボトムプレートと、
前記溝部の開口領域を覆い、前記溝部とともに所定の測定流体を充填してなる所定空間の油室を形成するダイアフラムと、
前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のカラーと、
前記カラーの内径側で懸架装置の長さ方向に移動可能に備えられるとともに、前記カラーの上側で前記カラーと隙間を介して配され、懸架装置のスプリングの弾発力により前記ダイアフラムを押圧可能なピストンと、
前記スプリングの一端を受け、前記ピストンとの間に介在するスプリングシートと、
前記ボトムプレートの下面側に備えられ、前記ピストンの移動により変化可能な油室内の測定流体の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置としたことである。
【0016】
第五の本発明は、懸架装置に備えられ、環状に開口する溝部を下面側に設けてなる取付部と、
前記溝部の開口領域を覆い、前記溝部とともに所定空間の油室を形成する環状のダイアフラムと、
前記ダイアフラムの内径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より内側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のインナーカラーと、
前記溝部の開口領域の外径よりも大径に形成され、前記ダイアフラムの外径寄りの面部を、前記溝部の開口領域より外側の面部との間で挟み込んで密閉固定する環状のアウターカラーと、
前記インナーカラーの外径と前記アウターカラーの内径との間で懸架装置の長さ方向に移動可能に備えられ、懸架装置のスプリングの弾発力により前記ダイアフラムを押圧可能なピストンと、
前記スプリングの一端を受けるブッシュと、
前記ピストンと前記ブッシュとの間に介在され、相対回転可能に構成されている軸受装置と、
前記取付部に備えられ、前記ピストンの移動により変化可能な油室内の測定流体の圧力変化を検出し得る圧力センサと、
を備えたことを特徴とする車両の重量測定装置としたことである。
【0017】
第六の本発明は、第一の本発明乃至第五の本発明のいずれかにおいて、重量測定装置の外気側から前記油室近傍に向けて連続した非貫通の挿入孔を設け、前記挿入孔に、前記油室内の温度変化を検出可能な温度センサを配置したことを特徴とする重量測定装置としたことである。
【0018】
第七の本発明は、第六の本発明において、前記温度センサは、伝熱性の高い接着剤で前記挿入孔に固定されていることを特徴とする重量測定装置としたことである。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、圧力センサをネジによって固定する場合であっても、油室内の圧力を一定に管理可能な重量測定装置を提供することができる。また、本発明によれば、油室内の作動油の温度変化が検出可能な重量測定装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明の車両の重量測定装置の第一実施形態として、後輪用の重量測定装置の正面図を示す。
図2】本実施形態における車両の重量測定装置の一実施形態を示し、図1のA−A線による縦断側面図である。
図3図2の符号Bで示す領域の拡大図である。
図4図2の符号Bで示す領域の拡大図であって、油排出孔部を封鎖する封鎖部の他の実施形態を示す。
図5】本実施形態における車両の重量測定装置をトレーリングアーム式の懸架装置に適用した場合を示す概略斜視図である。
図6】本発明の車両の重量測定装置の第二実施形態として、前輪用の重量測定装置の正面図を示す。
図7】本実施形態における車両の重量測定装置の一実施形態を示し、図6のA−A線による縦断側面図である。
図8図7の符号Bで示す領域の拡大図である。
図9】本発明の車両の重量測定装置の第三実施形態として、後輪用の重量測定装置の正面図を示す。
図10図9のA−A線による縦断側面図である。
図11図10の符号Bで示す領域の拡大図である。
図12】本発明の車両の重量測定装置の第四実施形態として、後輪用の重量測定装置の正面図を示す。
図13図12のA−A線による縦断側面図である。
図14】第四実施形態の重量測定装置の斜視図である。
図15】本発明の車両の重量測定装置の第五実施形態として、前輪用の重量測定装置の正面図を示す。
図16図15のA−A線による縦断側面図である。
図17】油室中の測定流体(作動油)の温度が変化した場合のセンサ出力電圧の偏移を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施形態では、本発明の車両の重量測定装置100を自動車の懸架装置(サスペンション)1に用いた実施の一形態を示す。
以下、本発明の車両の重量測定装置の一実施形態について、添付図面を参照して説明する。図1乃至図5は本発明の第一実施形態を示し、図6乃至図8は本発明の第二実施形態を示し、図9乃至図11は本発明の第三実施形態を示し、図12乃至図14は本発明の第四実施形態を示し、図15及び図16は本発明の第五実施形態を示す。
なお、本実施形態は、本発明の一実施形態であって、何等これに限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
「第一実施形態」
【0022】
図5は、本実施形態の車両の重量測定装置100を、トレーリングアーム式の自動車の後輪用の懸架装置(サスペンション)1に適用した一例を示す。
【0023】
トレーリングアーム式において、アーム(サスペンションアーム)2は、車両下側の左右にわたって掛け渡されたサスペンションメンバ3(懸架装置1の構成要素)から車体中心線(図中一点鎖線参照)と直角に軸支され、サスペンションメンバ3の後ろ側(図中矢印の側)で上下方向に揺動可能となっている。
アーム2の上面2aには、本実施形態の車両の重量測定装置100を介してコイルスプリング5が設置される。なお、コイルスプリング5は、アーム2と車体下面との間に挟み込まれている。
なお、図5に示す懸架装置1は、本実施形態の車両の重量測定装置100を組み込んだ以外は周知のトレーリングアーム式懸架装置1の構成であって、特に本実施形態に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
【0024】
以下、本発明の特徴的部分である車両の重量測定装置100について説明し、それ以外の懸架装置の構成についての説明は省略する。
【0025】
車両の重量測定装置100は、下面側が懸架装置(サスペンション)1のアーム2に当接して設置されるボトムプレート200と、ボトムプレート200の上面に備えられるカラー220と、ボトムプレート200とカラー220とによって挟まれて固定されるダイアフラム230と、ダイアフラム230を鉛直方向(図中矢印Vで示す方向)に押圧可能なピストン300(移動体)と、ピストン300とダイアフラム230との間に配されたパッド310(移動体)と、懸架装置1のコイルスプリング5の一端(下端)を受けるスプリングシート340(移動体)と、ボトムプレート200とダイアフラム230との間で形成され、所定の測定流体(作動油)Rを充填してなる油室201と、ボトムプレート200の下面203に備えられ、油室201内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得る圧力センサ400と、ピストン300の外周下端に固定され、ボトムプレート200の外周下端を覆設する薄肉円環状のストッパーリング320とで構成されている(図1乃至図6参照)。
【0026】
ボトムプレート200は、円板状の下面203と、該下面203の外周端から鉛直方向で上方に向けて所定の肉厚をもって円筒状に突設された環状壁部205と、で上面開放状の短尺円筒状に形成され、下面203を懸架装置のアーム2に当接して設置される。
また、ボトムプレート200は、環状壁部205の内周端部から凹設され、後述されるカラー220を収容可能な円環状の上面部204と、上面部204の内径から所定深さをもって凹設され、後述するダイアフラム230を収容可能な円環状のダイアフラム収容凹部231と、ダイアフラム収容凹部231の内径から所定深さをもって凹設され、ダイアフラム230とともに後述する油室201を構成可能な円筒状の溝部202とが、それぞれ上面204側に設けて設けられている。
また、本実施形態では、環状壁部205における下面203との境界領域外面205aには、突出部205bを一部に残して周方向に段部207が連続して形成されている。
すなわち、環状壁部205の下面203との境界領域外面205aには、突出部205bを除いて平面視で略Cリング状に段部207が形成されている。
【0027】
円筒状に開口する溝部202は、ボトムプレート200の上面204にて円筒状に凹設されているダイアフラム収容凹部231内にてボトムプレート200の上面204方向に向けて形成されている。
ダイアフラム収容凹部231は、溝部202の外径側に所定幅で環状に構成された内面部232を備えている。
また、ボトムプレート200には、後述するカラー220を固定するための連結ボルト(皿ボルト)210を通す複数個のボルト通し孔210aが周方向に所定の間隔で備えられている。
【0028】
ボトムプレート200におけるアーム2側に面した下面203には、所定長さで垂下して一体に、圧力センサ400を連結可能なセンサ連結部206が形成されている。
センサ連結部206は、その下面206aから溝部202まで鉛直方向にボトムプレート200を貫通して、圧力センサ400を連結する円筒部200bと、円筒部200bの一部を外方に向けて突き出して成る非円筒部200aとで構成されている。本実施形態では、非円筒部200aは、円筒部200bの下面(センサ連結部206の下面)206aと同様の突出高さを有するとともに、円筒部200bの外周面(センサ連結部206の外周面)206bと連続して一体に、外方向に向けて突出した直方体状に形成されている。
【0029】
圧力センサ400は、油室201内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得るものであって、例えば、圧力を測定し、これを電圧信号に変換して伝送されるもので、円柱状に形成されたセンサ本体部404と、該センサ本体部404の端面に一体に備えた突き当てフランジ面部403と、該突き当てフランジ面403の端面に一体に備えた検出部401と、該検出部401の先端側に備えた先端検出面402とで構成されている。
なお、本発明にて想定される圧力センサは周知構造のものが適宜本発明の範囲内において選択使用されるものであり、特に限定解釈はされず、本発明の範囲内で最適なものが適宜選択可能である。
【0030】
本実施形態では、圧力センサ400は、検出部401をセンサ連結部206の円筒部200bのネジ穴200dに挿入するとともに、先端検出面402が油室201内に臨むとともに、突き当てフランジ面部403をセンサ連結部206の開口縁206cに密着するまで、鉛直方向にネジ込んで立設されている。
また、圧力センサ400は、検出部401と一体に連続してセンサ本体部404が、鉛直方向下向きに延出しており、その下端404aには、圧力センサ400が変換した電気信号を車体側の表示装置へと伝送する配線405が接続されている。
【0031】
なお、センサ連結部206と圧力センサ400との接続は、測定流体Rが漏れないよう接続することが必要である。
本実施形態では、突き当てフランジ面部403とセンサ連結部206の開口縁206cとの間にゴムワッシャ410を介して固定している。
なお、圧力センサ400は、必ずしもボトムプレート200の下面203の中心に配設することはなく、先端検出面402が油室201内に臨む限りにおいて、センサ連結部206をボトムプレート200の下面203の任意位置に設けて配設することが可能で、車体(アーム2)側の取り付けにおいて支障のない位置を採択して配設することが可能である。
【0032】
なお、ボトムプレート200の下面203側は、懸架装置1のアーム2の上面2aと当接するため、ゴムシート250が介在し、当接面の当たりを良く馴染み易くしている。
【0033】
さらに、ボトムプレート200は、懸架装置1のアーム2に対する回り止め機構を有している。
【0034】
回り止め機構は、本実施形態では、センサ連結部206の非円筒部200aと、懸架装置1のアーム2の上面2aの重量測定装置100を組み付ける位置2e(組み付け位置)に形成された、アーム2の上面2aから下面にわたって貫通する穴部2bの角穴部2dとで構成されている。
懸架装置1のアーム2の穴部2bは、ボトムプレート200のセンサ連結部206の円筒部200bより僅かに大きな形状の丸穴部2cと、丸穴部2cと一体に連続し、非円筒部200aよりも僅かに大きな形状の角穴部2dとで構成されることにより鍵穴状に形成されている。
また、重量測定装置100を懸架装置1のアーム2に組み付ける場合には、ボトムプレート200のセンサ連結部206の円筒部200bをアーム2の穴部2bの丸穴部2cに挿し込むとともに、センサ連結部206の非円筒部200a(直方体状)をアーム2の穴部2bの角穴部2dに挿し込むことにより、ボトムプレート200の下面203がゴムシート250を介して、懸架装置1のアーム2の上面2aの組み付け位置2eに当接して、組み付けが完了する。
【0035】
このとき、センサ連結部206の非円筒部200aがアーム2の穴部2bの角穴部2dに嵌っているため、アーム2とボトムプレート200が周方向に相対回転することが防止される。
また、圧力センサ400は、アーム2の穴部2bを挿通してアーム2の下側に臨んでいるため、圧力センサ400に接続されている配線405もまたアーム2の下側を通って車体側の表示装置へと伸延される。この場合、圧力センサ400は、非円筒部200aとアーム2の穴部2bの角穴部2dとの嵌合によって回転することがないので、配線が捩れて断線することもない。
また、懸架装置1のアーム2の穴部2bに、ボトムプレート200のセンサ連結部206の非円筒部200aと円筒部200bを挿し込むだけなので、懸架装置1のアーム2にネジなどの締結固定手段により組み付ける場合に比べて簡単に車両に組み付けることが可能になった。
【0036】
なお、本実施形態では、回り止め機構の一例として、センサ連結部206の非円筒部200aと懸架装置1のアーム2の角穴部2dとによる構成を説明したが、非円筒部200aと角穴部2dの具体的形状は、これに限定解釈されるものではなく、非円筒部200aが角穴部2dに挿し込まれることで、相対回転しない形状であればよい。例えば、非円筒部200aは、センサ連結部206の円筒部200bの一部が径方向に凹設し、これに対して角穴部2dは、前記凹設された非円筒部200aに嵌り合う凸形状に形成された角凸部としても本発明の範囲内である。また、非円筒部200aは必ずしも角形状とする必要はなく他の形状であってもよい。さらに、本実施形態ではセンサ連結部206を円筒部200bと非円筒部200aとで構成されているが、センサ連結部206そのもの自体を、所定の角形状や楕円形状に形成するもの、すなわち、非円筒形状に形成してなるものであってもよく本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
またさらに、複数の非円筒部200aを有した場合であっても本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。その場合には、懸架装置1のアーム2の穴部2bの角穴部2dも非円筒部200aの数に応じて複数形成されていれば良い。
【0037】
ダイアフラム230は、溝部202の開口領域202aを覆い、溝部202とともに所定空間の油室201を形成する短尺円柱状(円板状)に形成されており、ボトムプレート200の上面204にて円環状に形成されているダイアフラム収容凹部231に嵌着されている。
【0038】
ダイアフラム230は、例えば、本実施形態では、外径側にボトムプレート200とカラー220に挟まれる密封領域233を形成するとともに、密封領域233の内径側で一体に変形可能に構成された押圧領域234を備えて構成されている。
押圧領域234は、溝部202の開口領域202aを覆う程度の幅をもって構成され、油室201は、この押圧領域234とボトムプレート200の溝部202とによる所定領域で形成されている。
【0039】
ダイアフラム230の材質は、柔軟で耐久性(耐寒性・耐摩耗性・耐油性)がある素材であれば良く、特に限定解釈されるものではないが、例えば、ニトリルゴム・テフロン(登録商標)・クロロプレンゴム・ふっ素ゴム・エチレンプロピレンゴムなど、流体の特質に合った材料を選択する。また、薄肉のステンレス製などからなる金属製のダイアフラムであってもよく本発明の範囲内である。
【0040】
油室201には、所定の測定流体Rが気泡を発生させることなく一杯に密封充填されている。測定流体Rは、ピストン300の移動によって、ダイアフラム230が溝部202に向けて押圧されることにより、油室201内に臨む圧力センサ400の先端検出面402にかかる圧力を変化可能である。
【0041】
カラー220は、本実施形態では、ボトムプレート200の環状壁部205に囲まれた領域(円環状の上面204)内に収まる程度の鉛直方向の厚みをもって形成された所定の短尺円柱状に形成されるとともに、ボトムプレート200の環状壁部205の内周面に嵌合可能な外径と、ダイアフラム収容凹部231の内面部232よりも内側に位置する環状内面221による内径を有する大きさに形成されている。
【0042】
カラー220の下面222の外周側には、ボトムプレート200のボルト通し孔210aと鉛直方向で同軸に配されるように、複数のボルト固定孔224がボトムプレート200のボルト通し孔210aと同一の間隔で周方向に備えられている。
カラー220は、ボトムプレート200のボルト通し孔210aとカラー220のボルト固定孔224を連通させ、ボトムプレート200の下面203側から連結ボルト(皿ボルト)210を挿通して締めこむことで、カラー220がボトムプレート200に一体に固定される。
【0043】
また、本実施形態では、カラー220の下面222と、ダイアフラム収容凹部231との間で、ダイアフラム230の密封領域233を挟み込んで密封固定している。
【0044】
本実施形態では、例えば、次に示すように所定のシール部材を備えて密封効果を向上させている。
まず、ダイアフラム収容凹部231の内面部232に環状の第1のシール溝251aを設けるとともに、第1のOリング250aを挿入して密封領域233の下面部233aとの間で第1のOリング250aが圧縮されて密封している。
次に、カラー220の下面222に環状の第2のシール溝251bを設けて第2のOリング250bを挿入して密封領域233の上面部233bとの間で第2のOリング250bが圧縮されて密封している。
さらに、第2のシール溝251bよりも大径で、カラー220の下面222に環状の第3のシール溝251cを設けて第3のOリング250cを挿入して、密封領域233の上面部233bとの間で、第3のOリング250cが圧縮されて密封している。
【0045】
密封領域233の下面部233aとの間で第1のOリング250aが圧縮されて密封しているため、油室201からの測定流体Rの漏洩防止が十分に図り得るが、本実施形態によれば、上述のとおり、幾重もの密封構造を採用している。
すなわち、密封領域233の上面部233bとの間で第2のOリング250bが圧縮されて密封し、第2のOリング250bよりも外径側では、カラー220の下面222とボトムプレート200の上面204の間で第3のOリング250cが圧縮されて密封している。
【0046】
このため、油室201にもっとも近く配される第1のOリング250aに加えて、その外側にも第2のOリング250bと第3のOリング250cが配されているため、密封信頼性が極めて高いものとなる。また、本実施形態では、上述のとおり相対移動がない領域に密封構造を設けたためシール耐久性も高い。
また、さらに、ダイアフラム230の密封領域233をダイアフラム収容凹部231よりも肉厚に形成し、肉厚の密封領域233がボトムプレート200とカラー220に挟まれるときに圧縮されて密封可能な厚さとなる密封構造を設ければ、密封信頼性をさらに高いものとすることができる。
【0047】
各シール部材は、密封固着領域及び当接領域を構成する一方の部材にシール溝(251a,251b,251c)を設けるとともに、シール溝(251a,251b,251c)にOリング(250a,250b,250c)を挿入して他方の部材との間でOリング(250a,250b,250c)が圧縮されて密封しているものであればよく、シール溝とOリングをいずれに設けるかは限定されずいずれであっても本発明の範囲内である。
【0048】
ピストン300(移動体)は、本実施形態では、カラー220の環状内面部221(カラー220の内径)に摺接する外径を有する円筒部301と、円筒部301の外径から水平方向に連続して一体に、カラー220の外径よりも大径に設けたフランジ部302と、フランジ部302の内径から垂直方向下向きに一体に延出した円環部303と、フランジ部302の外周部から一体に、ボトムプレート200の段部207を下向きに僅かに超えて垂下された垂下周縁部304とで構成されている。
円筒部301の下面301a側には、円筒状に開口する下溝部301cが形成され、円筒部301の上面301b側には、上側に突出する上面開放状の円筒状のスプリングシート嵌合筒部301dが形成されている。
【0049】
垂下周縁部304の下面304aには、後述するストッパーリング320を固定するための連結ネジ330を締め付けて固定するネジ固定孔305が周方向に所定の間隔で備えられている。
また、垂下周縁部304の下面304aには、その周方向の一部に鉛直方向で下向きに、一体に突出した矩形状の突出部300aが形成されている。なお、突出部300aの周方向幅は、ボトムプレート200の突出部205bと同じ周方向幅に設定されている。
【0050】
ピストン300の下溝部301cには、下溝部301cの開口領域を覆い、下溝部301cの鉛直方向深さよりも肉厚の円筒状に形成されたパッド310(移動体)が嵌着されている。
また、特に限定解釈されるものではないが、パッド310は、ダイアフラム230とピストン300との間で摺動するため、自己潤滑性に優れた硬質の合成樹脂材、例えばデルリン(登録商標)等のポリアセタール樹脂からなるものなどが好ましい。また、パッド310の上面に設けた溝に潤滑剤を充填してパッド310とダイアフラム230との摺動面を潤滑してもよい。なお、パッド310を介さずに直接ピストン300が当接する形態であっても本発明の範囲内である。
【0051】
また、ピストン300の円筒部301の下面301aとダイアフラム230との間、および、ピストン300のフランジ部302の下面とカラー220の上面223との間には所定の隙間Pを有してセットされる。
所定の隙間Pは、重量測定装置100が想定する定格荷重を受けた場合に、ダイアフラム230の変形等に起因してピストン300が懸架装置の長さ方向(図中符号Vで示す鉛直方向)に進退すると想定される距離よりも大きな隙間に設定される必要がある。ピストン300が進退すると想定される距離よりも小さな隙間では、車両の重量を計測中に隙間Pがなくなり、ピストン300の進退が規制されて正確な重量測定に支障があるからである。
従って、パッド310は、下溝部301cの鉛直方向深さよりも肉厚に設定されることで、下溝部301cから突出して、ダイアフラム230と当接した状態となるように嵌着されている。これにより、パッド310は、ピストン300の進退に応じてダイアフラム230を押圧する。
【0052】
ストッパーリング320は、ピストン300の垂下周縁部304と同様の外径と、ボトムプレート200の段部207を覆う内径とを有した薄肉円環状に形成されるとともに、その周方向の一部に、切り欠き部322を有している。すなわち、ストッパーリング320は、平面視で略Cリング状に形成されている(図1参照)。
なお、切り欠き部322の水平方向幅は、ボトムプレート200の突出部205b(段部207が形成されない部分)と、ピストン300の垂下周縁部304の突出部300aの双方が水平方向に並設状に嵌合可能な幅に設定されている。
また、切り欠き部322の径方向幅は、ボトムプレート200の突出部205bと僅かな隙間を有し、突出部205bが進退可能な程度に設定されていれば良い。
また、ストッパーリング320には、そのピストン300の垂下周縁部304のネジ固定孔305と鉛直方向で同軸に配されるように、複数のネジ通し孔321が、ネジ固定孔305と同一の間隔で周方向に備えられている。
【0053】
ストッパーリング320を取り付ける場合には、まず、ボトムプレート200の突出部205b(段部207が形成されない部分)と、ピストン300の垂下周縁部304の下面304aに形成された矩形状の突出部300aとが径方向に連続して並ぶように、ボトムプレート200とピストン300を配置し、さらに、この突出部205bと突出部300aが切り欠き部322に嵌め合わされるようにストッパーリング320をセットする。
このとき、ボトムプレート200の環状壁部205の外径205cとピストン300の垂下周縁部304の内径304bが僅かな隙間を介して対峙している(図1参照)。
そして、ストッパーリング320は、ネジ通し孔321とピストン300の垂下周縁部304のネジ固定孔305を連通させ、ストッパーリング320の下側320aから締結ネジ330を挿通して締めこむことで、ストッパーリング320がピストン300の垂下周縁部304の下面304aに締結される。
【0054】
このとき、ストッパーリング320は、ピストン300の垂下周縁部304と同様の外径と、ボトムプレート200の段部207を覆う内径とを有しているので、ストッパーリング320をピストン300の垂下周縁部304に締結固定すると、ボトムプレート200の段部207の垂直方向下向きの移動(ピストン300とボトムプレート200を分解する向きの移動)がストッパーリング320によって規制される。これにより、重量測定装置100が車両に設置される前(コイルスプリングの伸長力が軸方向に負荷されていない場合)であってもボトムプレート200と一体化した部材とピストン300と一体化した部材に分解してしまう虞がなくなり、重量測定装置100の輸送などにおいても取り扱いやすくなった。
【0055】
また、ピストン300とストッパーリング320は、締結ネジ330によって締結固定され、さらに、ボトムプレート200は、ストッパーリング320の切り欠き部322に突出部205bが、周方向の回転を規制されつつ、ピストン300の進退方向には進退可能に嵌め合わされているため、ピストン300とボトムプレート200が相対回転することを防止される。
これにより、ダイアフラム230とピストン300(パッド310)との摩耗を抑えることができ、さらに、コイルスプリングの相対的な回転も防ぐことができるので、重量測定装置100の荷重検出の正確性を維持することができる。
【0056】
本実施形態では、前述のようにして組み立てられた重量測定装置100の油室201内の圧力が一定となるように管理されている。
具体的には、圧力センサ400をボトムプレート200に取り付ける作業において、まず、重量測定装置100に荷重が掛かっていない状態にて、圧力センサ400の検出部401がセンサ連結部206の円筒部200bのネジ穴200dに挿入されて、突き当てフランジ面部403をセンサ連結部206の開口縁206cに密着するまで、鉛直方向にネジ込まれる。
このとき、圧力センサ400の先端検出面402が油室201内に臨むまで進入するため、圧力センサ400に押しやられた測定流体(作動油)Rが油室201の容積に対して過剰となり、油排出孔部240から排出される。
測定流体(作動油)Rの排出が終了すると、荷重を掛けずに、前記油排出孔部240の開口240aを溶接して形成された封鎖部242により完全に封鎖する。これにより、油室201内(内部)の圧力は、大気圧と平衡した状態に管理される。
【0057】
油排出孔部240は、油室201から垂直方向下向きに垂設されることにより、油室201とボトムプレート200の非円筒部200aの下面200cとを直線状に連通し、下面200cに開口する開口240aを形成している。
また、油排出孔部240は、測定流体(作動油)Rが通過可能な程度の細孔、すなわち、径が非常に小さな所謂断面視円形状のピンホールとして形成される。
なお、本実施形態では、油排出孔部240を断面視円形状に形成しているが、これに限定解釈されるものではなく、油排出孔部240の断面視形状は任意である。例えば、断面視四角状の孔部や開口240aに形成されていても良い。
【0058】
本実施形態では、非円筒部200aの下面200cに短尺円筒状の溝部241が凹設されており、この溝部241の底面部に、ボトムプレート200を貫通した油排出孔部240の開口240aが形成されている。
【0059】
封鎖部242は、開口240aを金属材料にて溶接することで形成されている。
具体的には、開口240aの周囲の金属(溝部241の底面部)が、溶接によって溶融凝固することで、開口240aとその周囲が塊となって融合して、開口240aとともに塞ぐ封鎖部242を形成する。その際に、溝部241の底面から溝部241内に向けて瘤状に突出した突出部242aが形成される(図3参照)。ただし、この突出部242aは、溝部241から外方に突出しないように設計されている。
【0060】
溝部241の溝径は、油排出孔部240の開口240aが溶接されることよって形成される封鎖部242の突出部242aを収容可能に設定されていれば良い。例えば、本実施形態では、溝径は、突出部242aの径の約2倍に設定されている。
突出部242aが開口240aの周囲に設けられた溝部241に収容されることにより、突出部242aが保護され、密封性能を長期間に亘って確保することができる。
【0061】
また、密封性能をさらに強固なものとするために、溝部241にキャップ243を被せても良い(図4参照)。
この場合、キャップ243は、溝部241の溝径に内嵌可能な外径を有する円筒形状で、底面側を開放して突出部242aを収容可能に形成されている。
キャップ243を突出部242aに向けて溝部241に嵌め込むことによって、突出部242aがキャップ243に被われて保護される。これにより、封鎖部242が外部と隔別されるので、封鎖部242の密封性能が長期間に亘って強固に維持される。
また、キャップ243と溝部241の嵌め合いはネジ込み式になっていても良い。
【0062】
本実施形態では、上述のように、圧力センサ400の取り付けによって過剰となる測定流体(作動油)Rを排出する油排出孔部240を備え、荷重を掛けずに、前記油排出孔部240を封鎖部242により完全に封鎖したので、荷重が掛かっていない状態の油室201(内部)の圧力が大気圧と平衡するように管理される。
また、封鎖部242を保護する溝部241を備えたので、封鎖部242の密封性能が長期間に亘って確保される。さらに、溝部241に内嵌可能なキャップ243を備えたので、封鎖部242がより強固に保護され、車両の走行により雨水や泥などに晒される環境に長期間置かれたとしても、封鎖部242の密封性が損なわれないようになった。
また、溝部241の開口領域に立上り壁部を設け、この立上り壁部の外周に円筒状のキャップを螺着せしめる構成を採用することも可能であり、本発明の範囲内で適宜最適な密封手段が採用可能である。
【0063】
また、本実施形態による油排出孔部240は直径が小さなピンホール状に形成されているが、過剰な測定流体(作動油)Rが滲出して油室201(内部)の圧力を大気圧(外部)と平衡させるには十分な径を有している。また、油排出孔部240の孔径が小さいため、溶接による封止が容易である。
また、測定流体(作動油)Rの粘性係数が充分に大きい場合には、測定流体(作動油)Rは、孔径の小さな油排出孔部240内をゆっくりと移動するため、溶接作業中(油排出孔部240の封鎖作業中)に測定流体(作動油)Rが油排出孔部240の開口230a(大気側)から外部への漏洩防止や、油排出孔部240を通して油室201内(内部)への気泡(大気)の混入防止が容易である。
【0064】
なお、本実施形態では、油排出孔部240の開口240aを非円筒部200aの下面200cに設けたが、油室201が大気側と連通すれば、油排出孔部240は他の位置に設けられていても良い。
すなわち、油排出孔部240が、油室201(内側)とセンサ連結部206の円筒部200bとを連通するように設けられていても良いし、非円筒部200aの側面とを連通するように設けられていても良い。あるいは、油室201(内側)とボトムプレート200のセンサ連結部206以外の領域とを連通するように設けられていても良い。
【0065】
また、油排出孔部240は直線形状に形成されることが望ましいが、必ずしも直線形状でなくても良い。例えば屈曲した形状や湾曲した形状などであっても良い。その場合であっても、測定流体(作動油)Rが通過可能な程度の細孔(径が非常に小さな所謂ピンホール)として形成されることが好ましい。
【0066】
また、本実施形態では、封鎖部242を油排出孔部240の開口240aに設けたが、油排出孔部240が密封されていれば、封鎖部242は油排出孔部240のどこに設けられていても良い。例えば、油排出孔部240の細孔の中間に設けられていても良いし、油室201側に設けられていても良い。
また、本実施形態では、封鎖部242を油排出孔部240の溶接によって形成したが、これに限定解釈されるものではなく、油排出孔部240が長期間に亘って確実に封止されれば、他の方法が用いられても良い。
【0067】
スプリングシート340(移動体)は、ピストン300の円筒部301のスプリングシート嵌合筒部301dを内装可能な円筒状の貫通孔341を備えた大径状円筒部342と、大径状円筒部342の下端から水平方向で外側に向けて連続して一体に設けたフランジ部343と、を備えて構成されている。大径状円筒部342は上下面を開口して形成されている。
フランジ部343の上面には、懸架装置1を構成するコイルスプリング5の一端(下端)5aが鉛直方向で突き当たる(図1および図5参照)。
【0068】
なお、本実施形態では、車両の重量測定装置100をトレーリングアーム式の懸架装置に適用する一例を説明したが、懸架装置1のアームと車体下面との間にコイルスプリング5が単独で挟み込まれている構造の懸架装置であれば、他の方式の懸架装置でも本発明を適用可能である。例えば、セミトレーリングアーム式、あるいはトーションビーム式などの懸架装置に本発明を適用してもよい。
「第二実施形態」
【0069】
図6乃至図8は本発明の第二実施形態を示し、本実施形態は、自動車の前輪用の懸架装置に適用した実施の一例を示す。
【0070】
本実施形態の車両の重量測定装置100は、車両側に固定される取付部(トッププレート)500と、取付部500の下面500bに備えられるインナーカラー700とアウターカラー720と、前記取付部500とよって挟まれて固定されるダイアフラム520と、ダイアフラム520と当接し、ダイアフラム520を鉛直方向(図中矢印Vで示す方向)に押圧可能なピストン760(移動体)と、懸架装置のコイルスプリング(図示せず)の一端(上端)を受けるブッシュ780(移動体)と、ピストン760とブッシュ780との間に介在される軸受装置900(移動体)と、取付部500とダイアフラム520との間で形成され、所定の測定流体(作動油)Rを充填してなる油室510と、取付部500の上面500aに備えられ、油室510内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得る圧力センサ600とで構成されている(図6乃至図8参照。)
【0071】
取付部(トッププレート)500は、所定の肉厚を有する短尺円筒状に形成され、上面500a側を車両側に固定するとともに、環状に開口する溝部512を下面500b側に設けてなり、外周端から鉛直方向で下方に向けて薄肉の円筒状に環状壁部501を突出している。
【0072】
溝部512は、取付部500の下面500bにて環状に凹設されているダイアフラム収容凹部530内にて取付部500の上面500a方向に向けて断面視ドーム状に形成されている。
ダイアフラム収容凹部530は、溝部512の内径側に所定幅で環状に構成された内側の面部531と、溝部512の外径側に所定幅環状に構成された外側の面部532とを備えている。
【0073】
前記取付部500における車体側に面した上面500aには、圧力センサ600を連結可能なセンサ連結部502が形成されている。
また、取付部500には、溝部512と一箇所又は複数個所で連通する連通路510aがセンサ連結部502に向けて内設されている。
【0074】
前記センサ連結部502は、圧力センサ600の先端に設けた円筒状の検出部601を受ける円筒状の挿入部504が、上面から内部に向けてネジ部として凹設され、挿入口503が鉛直方向で上方に向けて円筒状に突出するとともに開口している。また、挿入部504の底面領域には、前記連通路510aと連通する流体溜まり511が形成されている。
なお、センサ連結部502と圧力センサ600との接続は、測定流体Rが漏れないよう接続することが必要である。
【0075】
取付部500には、自動車の本体フレーム(例えばクロスメンバ)に締結固定するため、ボルト540を挿通する複数個のボルト挿通孔505を設けるとともに、後述するストッパ部790を固定するための連結ボルト550を締結する複数個のボルト固定孔506を備えている。
また、取付部500の下面500bの中心領域には、インナーカラー700の円筒状突部712を嵌合する嵌合孔部507を凹設している。
【0076】
圧力センサ600は、油室510内に充填されている測定流体Rの圧力変化を検出し得るものであって、例えば、圧力を測定し、これを電圧信号に変換して伝送される周知構造のものが適宜本発明の範囲内において選択使用されるものであり、特に限定解釈はされず、本発明の範囲内で最適なものが適宜選択可能である。
本実施形態では、センサ連結部502に検出部601を挿入するとともに、先端検出面602を油室510内に臨ませ、突き当てフランジ面部603をセンサ連結部502の開口縁に密着させて鉛直方向に立設されている。
【0077】
本実施形態では、突き当てフランジ面部603と開口縁部との間にワッシャ604を介して固定している。また、側定流体の漏洩防止を図るため、所定の密封装置、本実施形態ではOリング606を配設している。
なお、圧力センサ600は、必ずしも取付部500の上面500aの中心に配設することはなく、センサ連結部502を取付部500の上面500aの任意位置に設けて配設することが可能で、車体側の取り付けにおいて支障のない位置を採択して配設することが可能である。
【0078】
ダイアフラム520は、前記溝部512の開口領域513を覆い、前記溝部512とともに所定空間の油室510を形成する環状に形成されており、取付部500の下面500bにて環状に形成されているダイアフラム収容凹部530に嵌着されている。
【0079】
ダイアフラム520は、例えば、本実施形態では、内径側と外径側にそれぞれ肉厚の第一密封領域560と第二密封領域570をそれぞれ環状に形成するとともに、第一密封領域560と第二密封領域570の間で薄肉状に連結されて変形可能に構成された環状の押圧領域580を備えて構成されている。
押圧領域580は、前記溝部512の開口領域513を覆う程度の幅をもって構成され、この押圧領域580と取付部500の溝部512(連通路510a及び流体溜まり511を含む)とによって所定領域の油室510が形成される。
第一密封領域560と第二密封領域570は、ダイアフラム収容凹部530の鉛直方向深さよりも肉厚に形成されており、インナーカラー700及びアウターカラー720によって挟み込まれたときに圧縮されて密封可能な厚さとする。
【0080】
ダイアフラム520の材質は、柔軟で耐久性(耐寒性・耐摩耗性・耐油性)がある素材であれば良く、特に限定解釈されるものではないが、例えば、ニトリルゴム・テフロン(登録商標)・クロロプレンゴム・ふっ素ゴム・エチレンプロピレンゴムなど、流体の特質に合った材料を選択する。
また、薄肉のステンレス製などからなる金属製のダイアフラムであってもよく本発明の範囲内である。
【0081】
油室510には、所定の測定流体Rが気泡を発生させることなく一杯に密封充填されている。測定流体Rは、ピストン760の移動によってかかる圧力が変化可能である。
【0082】
インナーカラー700は、本実施形態では、取付部500の環状壁部501に囲まれた領域内に収まる程度の鉛直方向の厚みをもって形成された所定の短尺円筒状に形成された本体部710と、本体部710の上面の中心に小径円筒状に立ち上げられた円筒状突部712とを有して構成されている。
【0083】
円筒状突部712は、取付部500の下面500bの中心に凹設されている嵌合孔部507に嵌合可能な外径を有しているとともに、懸架装置を構成するショックアブソーバ(図示せず)のロッド(図示せず)先端と、ロッド先端に固定されるナット(図示せず)を収容可能な収容孔部713を貫通して形成している。
【0084】
本体部710は、取付部500の嵌合孔部507に円筒状突部712を嵌合して配設した際に、ダイアフラム収容凹部530の内側の面部531と対向する大きさに形成されている。
本体部710の上面711と、前記取付部500の下面500bにおける前記開口領域513より内側の面部(ダイアフラム収容凹部530の内側の面部531)と、の間で、前記ダイアフラム520の第一の密封領域560を挟み込んで密封固定している。
【0085】
アウターカラー720は、本実施形態では、取付部500の環状壁部501に囲まれた領域内に収まる程度の鉛直方向の厚みをもって形成された所定の短尺円筒状に形成された本体部721と、本体部721の中心に設けた挿通孔723と、挿通孔723よりも僅かに外径方向にずれた位置で、本体部721の下面から円筒状に垂設された円筒状垂設部724とを有して構成されている。
【0086】
本体部721は、取付部500の環状壁部501の内周面に嵌合可能な外径を有するとともに、ダイアフラム収容凹部530の外側の面部532と対向する内径を有する大きさに形成されている。
本体部721の上面722と、前記取付部500の下面500bにおける前記開口領域513より外側の面部(ダイアフラム収容凹部530の外側の面部532)と、の間で、前記ダイアフラム520の第二密封領域570を挟み込んで密封固定している。
また、本実施形態では、前記取付部500に設けたボルト挿通孔505と鉛直方向で同軸上に同径のボルト挿通孔(大径)725を同一数設けるとともに、ストッパ部790を締結固定するためのボルト固定孔506と同径のボルト挿通孔(小径)726を同一数設けている。
【0087】
円筒状垂設部724は、後述するブッシュ780とストッパ部790との間に配設可能な鉛直方向長さと外径及び内径を有して形成されている。
【0088】
従って、本実施形態では、インナーカラー700の本体部710の外径とアウターカラー720の本体部721の内径との間には、略ドーム状に形成される溝部512と対向する環状の隙間730が形成され、この隙間730に、後述するピストン760が対向して配設される。
【0089】
本実施形態では、ダイアフラム520の第一密封領域560の上面部560a及び第二密封領域570の上面部570aと取付部500の下面(ダイアフラム収容凹部530の内側の面部531と外側の面部532)との間の密封固定領域A1,A2と、ダイアフラム520の第一密封領域560の下面部560bとインナーカラー700の上面711との間の密封固定領域A3と、第二密封領域570の下面部29とアウターカラー720の上面722との間の密封固定領域A4は、それぞれ面シールによる密封構造を採用している。
【0090】
また、これら面シールによる密封構造とともに、別途シール部材による密封構造をも併せて採用している。
【0091】
本実施形態では、ダイアフラム収容凹部530の内側の面部531と外側の面部532に大小径の異なる二つの環状のシール溝740を設けるとともに、それぞれのシール溝740にOリング750を挿入して第一密封領域560の上面部560a及び第二密封領域570の上面部570aとの間で前記Oリング750が圧縮されて密封している。
【0092】
本実施形態では、さらに、インナーカラー700の上面711とアウターカラー720の上面722にそれぞれ大小径の異なる二つの環状のシール溝740設けるとともに、それぞれのシール溝740にOリング750を挿入して第一密封領域560の下面部560b及び第二密封領域570の下面部570bとの間、取付部500の下面500bとの間で、前記それぞれのOリング750が圧縮されて密封している。
【0093】
第一密封領域560の上面部560a及び第二密封領域570の上面部570aとの間で前記Oリング750が圧縮されて密封しているため、油室510からの測定流体Rの漏洩防止が十分に図り得るが、本実施形態によれば、上述のとおり幾重もの密封構造を採用しているため、もしも第一密封領域560と第二密封領域570の密封構造から測定流体Rの漏れが発生したとしても、その他の密封構造領域にて測定流体Rの漏洩が防げるため、油室510からの測定流体Rの漏洩防止が確実に図り得る。よって、密封信頼性が極めて高いものとなる。
また、本実施形態では、上述のとおり相対移動がない領域に密封構造を設けたためシール耐久性も高い。
【0094】
前記各シール部材は、密封固着領域及び当接領域を構成する一方の部材にシール溝740を設けるとともに、前記シール溝740にOリング750を挿入して他方の部材との間で前記Oリング750が圧縮されて密封しているものであればよく、シール溝740とOリング750をいずれに設けるかは限定されずいずれであっても本発明の範囲内である。
【0095】
ピストン760(移動体)は、本実施形態では、インナーカラー700の本体部710の外径よりも小径に形成された円筒部761と、同じくインナーカラー700の本体部710の外径よりも小径で、円筒部761の上端縁から水平方向に連続して一体に設けたフランジ部762と、フランジ部762の外周端から拡開状に鉛直方向で上方に向けて連続して一体に設けたテーパ円筒部763と、テーパ円筒部763の上端から連続して一体に立ち上げ形成された大径の短尺円筒部764と、短尺円筒部764から水平方向に連続して一体に設けられるフランジ状の押圧面部765とで構成されている。
【0096】
前記円筒部761は、中心に上下方向で貫通するロッド挿通孔を設けており、ロッド挿通孔は、ロッド(図示せず)先端の段差部が当接可能な受け部769を設けて大径孔部767と小径孔部768が連続して形成されている。
【0097】
ピストン760は、ロッド挿通孔に挿通して円筒部761の上面に突出した懸架装置を構成するショックアブソーバ(図示せず)のロッド(図示せず)先端を、ナット(図示せず)を介して取り付け固定して懸架装置の長さ方向に移動可能に備えられている。
そして、前記インナーカラー700の外径と前記アウターカラー720の内径との間の環状の隙間730に、ピストン760の押圧面部765を位置せしめ、懸架装置のスプリング(図示せず)の弾発力により前記ダイアフラム520を押圧可能に備えられている。
また、本実施形態のピストン760は、短尺円筒部764の内面がインナーカラー700の本体部710の外径に沿って鉛直方向に進退可能にガイドされている(図面による横方向からの荷重(水平方向荷重)はインナーカラー700が受けることとなる)。
また、ピストン760とインナーカラー700の外径との摺接領域は、径方向に位置決めされる必要があるため、印籠構造を採用している。
【0098】
本実施形態においてピストン760は、パッド770を介してダイアフラム520に当接する構造を採用している。
パッド770は、ダイアフラム520の押圧領域580の下面に当接
可能な径の環状に形成されており、特に限定解釈されるものではないが、ダイアフラム520とピストン760との間で摺動するため、自己潤滑性に優れた硬質の合成樹脂材、例えばデルリン(登録商標)等のポリアセタール樹脂からなるものなどが好ましい。
なお、パッド770を介さずに直接ピストン760が当接する形態であっても本発明の範囲内である。
また、本実施形態では、ピストン760の押圧面部765の上面の内径寄りには、周方向に連続して鉛直方向で上方に向けて突設された環状の突条771が一体に設けられている。この突条771は、ピストン760の押圧面部765の上面に当接するパッド770の内径が嵌合する外径を有しており、パッド770の水平方向のずれを抑止している。
【0099】
ブッシュ780(移動体)は、ピストン760の円筒部761を内装可能な円筒状の貫通孔782を備えた大径状円筒部781と、大径状円筒部781の上端から水平方向で外側に向けて連続して一体に設けたフランジ部783と、フランジ部783の外周縁から水平方向で外側に向けて突設した環状の係止片784と、フランジ部783の上面から鉛直方向で上方に向けて突設した環状壁部785とを備えて構成されている。大径状円筒部781は上下面を開口して形成されている。フランジ部783の下面には、懸架装置を構成するコイルスプリング(図示せず)の一端(上端)が鉛直方向で突き当たる(図1参照。)。
【0100】
本実施形態においてブッシュ780は、ストッパ部790を介して取付部500に一体に備えられている。
【0101】
ストッパ部790は、懸架装置への取り付け作業性を向上させるために採用されているものであって、本実施形態では、アウターカラー720と同一外径で、かつ内径はアウターカラー720の下面に突設されている円筒状垂設部724よりも僅かに大径で遊嵌可能あるいは同径で嵌合可能な円環状に形成された環状取付部791と、環状取付部791の内径から鉛直方向で下方に向けて垂設された円筒部792と、円筒部792の下端から水平方向で内側に向けて突設された係止鍔部793とで構成されている。
環状取付部791には、アウターカラー720のボルト挿通孔726と取付部500のボルト固定孔506とに鉛直方向で同軸に配されるようにボルト挿通孔794が形成されている。
【0102】
従って、ストッパ部790のボルト挿通孔794を、アウターカラー720のボルト挿通孔726と取付部500のボルト固定孔506を介して同軸上に連通させ、連結ボルト550を介して締結すると、係止鍔部793が、ブッシュ780の係止片784を鉛直方向で下方から受けるようにして係止してブッシュ780を取付部500と一体化させることができる。
このとき、アウターカラー720の円筒状垂設部724は、ブッシュ780の環状壁部785の外面とストッパ部790の内面との間に形成される環状隙間800に収容される。
また、ストッパ部790を取り付けた際に、ブッシュ780の環状壁部785の上端面とアウターカラー720の本体部721の下面との間、及びブッシュ780の係止片784の上面とアウターカラー720の円筒状垂設部724の下端面との間には、それぞれ所定の隙間810,820が形成されている。この隙間810,820の範囲内でブッシュ780が鉛直方向に移動可能である。
【0103】
軸受装置900(移動体)は、前記ピストン760の押圧面部765の下面と、前記ブッシュ780のフランジ部783の上面との間に介在されて相対回転可能に構成されており、本実施形態では、外輪901と、内輪902と、外輪901と内輪902との間に組み込まれる複数個の転動体(玉)903と、転動体903を保持案内する保持器904とで構成されているスラストアンギュラ玉軸受が採用されている。なお、軸受装置900の内輪902は、ブッシュ780の環状壁部785の内面に嵌合して備えられている。
懸架装置のショックアブソーバ(図示せず)の軸とスプリング(図示せず)の軸はオフセットしているため、スプリング入力はモーメントになる。よって、モーメント荷重を受けるためスラストアンギュラ玉軸受を適用している。また、本実施形態では、前記ピストン760(パッド)とダイアフラム520との接触面を、前記スラストアンギュラ玉軸受(軸受装置)57の接触角方向の延長戦が通過するように配置している。すなわち、スプリング(図示せず)の入力とダイアフラム520の荷重作用線上に軸受の荷重作用線が乗るようにスラストアンギュラ玉軸受(軸受装置)900の接触角を選択したため剛性を高く保つことができる。
【0104】
本実施形態においても、前記第一実施形態と同様に、組み立てられた重量測定装置100の油室510内の圧力が一定となるように管理されている。
具体的には、圧力センサ600を取付部(トッププレート)500に取り付ける作業において、まず、重量測定装置100に荷重が掛かっていない状態にて、圧力センサ600の検出部601がセンサ連結部502の挿入部504に挿入されて、突き当てフランジ面部603をセンサ連結部502の開口縁に密着するまで、鉛直方向にネジ込まれる。
このとき、圧力センサ600の先端検出面602が油室510(流体溜まり511)内に臨むまで進入するため、圧力センサ600に押しやられた測定流体(作動油)Rが油室510の容積に対して過剰となり、油排出孔部240から排出される。
測定流体(作動油)Rの排出が終了すると、荷重を掛けずに、前記油排出孔部240の開口240aを溶接して形成された封鎖部242により完全に封鎖する。これにより、油室510内(内部)の圧力は、大気圧と平衡した状態に管理される。
【0105】
油排出孔部240は、油室510(内側)から垂直方向上向きに垂設されることにより、油室510と取付部(トッププレート)500の上面500a(大気側)とを直線状に連通し、上面500aに開口する開口240aを形成する。また、取付部500の上面500aには、短尺円筒状の溝部241が凹設されており、この溝部241の底面部に、取付部500を貫通した油排出孔部240の開口240aが形成され、溝部241の底面部にピンホールとして開口している。
また、油排出孔部240と封鎖部242のその他の構成や作用効果については、前述した第1実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
また、本実施形態においても密封性能をさらに強固なものとするために、前記溝部241にキャップを被せても良い。なお、キャップの構成および効果については、前述の第一実施形態におけるキャップと同様であるので、ここではその説明を省略する。
「第三実施形態」
【0106】
図9乃至図11は本発明の第三実施形態を示し、本実施形態は、自動車の後輪用の懸架装置に適用した実施の一例を示す。
本実施形態では、後輪用の重量測定装置における油室内の作動油の温度変化によるセンサ出力電圧の偏移を防止するために、油室内の作動油の温度を測定(検出)する構造を採用している点に特徴を有するもので、以下、本実施形態の特徴的部分である温度測定構造について述べ、その他の構成部分及び作用効果については第一実施形態と同一であるためその説明は第一実施形態を援用することで省略する。
【0107】
本実施形態では、温度測定構造の一形態として、外気側から前記油室201の近傍に向けて連続し、かつ油室201には貫通していない(非貫通)挿入孔10をボトムプレート200に設け、前記挿入孔10に、前記油室201内の温度変化を検出可能な温度センサ20を配置した構造が採用されている。
【0108】
挿入孔10は、ボトムプレート200に設けられ、圧力センサ400を連結するセンサ連結部206を構成している非円筒部200aの下面200cからボトムプレート200の内方に向けて穿設されている。具体的には、非円筒部200aの下面200cに設けられている短尺円筒状の溝部241と並んで開口11が設けられ、この開口11から油室201に向けて直交する軸方向(鉛直方向)で、先端12が円すい形状の円筒状に穿設されている。
【0109】
温度センサ20は、例えば接触型のシース熱電対などの周知の接触温度センサが本発明の範囲内で適宜選択される。
【0110】
挿入孔10の孔径は、温度センサ20の外径よりも僅かに大径に形成されている。そして、温度センサ20の外径と挿入孔10との間に生じる隙間Cは、例えば、電熱性の高い接着剤(銀ペースト等)などで埋められて挿入孔10と温度センサ20が固定されている。
接着剤は特に限定解釈されるものではなく本発明の範囲内で最適のものが選択される。
【0111】
本実施形態では、挿入孔10の先端12と油室201との間の距離Dを1〜3mm程度とするが、温度センサ20の精度によって、挿入孔10の先端12と油室201との間の距離Dは、本発明の範囲内で適宜設計変更可能である。
【0112】
また、温度測定構造の配置箇所も本実施形態のようにセンサ連結部206に限らず、ボトムプレート200のその他の箇所など、外気側から油室201の近傍に向けて連続し、かつ油室201に貫通していない非貫通の挿入孔10と、該挿入孔10に挿入固定可能な温度センサ20からなる温度測定構造が配置可能な場所であれば特に限定解釈されるものではなく、本発明の範囲内で任意に最適な配置箇所が選択可能である。
【0113】
なお、複数個所で油室201内の温度変化を測定可能なように、ボトムプレート200の任意箇所に複数の温度測定構造を配置することも可能で本発明の範囲内である。
【0114】
本実施形態によれば、油201室内の測定流体(作動油)の温度を温度センサ20によって測定可能であるため、使用時において測定流体(作動油)の温度が変化した場合でも、その温度変化を逐次、検出することが可能であるため、温度変化が生じても出力信号の補正が可能となる。
また、挿入孔10を油室201に貫通させない構造を採用しているため、新たに油室を密封させる必要もないため、製造コストも安価である。
「第四実施形態」
【0115】
図12乃至図14は本発明の第四実施形態を示し、本実施形態では、温度センサの固定構造において第三実施形態と相違する。以下、本実施形態の特徴的部分である温度センサ20の固定構造について述べ、その他の構成部分及び作用効果については第一実施形態及び第三実施形態と同一であるため、その説明は第一実施形態及び第三実施形態を援用することで省略する。
【0116】
本実施形態では、挿入孔10と温度センサ20との間の隙間Cに接着剤を埋め込んで接着固定する固定構造とともに、別途所定の保持機構30を介して取付保持される二重の固定構造を採用している。
【0117】
保持機構30は、本実施形態では、センサ連結部206に連結されている圧力センサ400の外周面に結束バンド31で締結固定している機構が採用されている。結束バンド31は周知構成のものが本発明の範囲内で適宜採用可能である。
保持機構30は、本実施形態に特に限定されず本発明の範囲内で任意に周知の保持機構が変更選択可能であり、その保持する箇所も任意であって適宜設計変更可能である。
「第五実施形態」
【0118】
図15及び図16は本発明の第五実施形態を示し、本実施形態は、自動車の前輪用の懸架装置に適用した実施の一例を示す。
本実施形態では、前輪用の重量測定装置における油室510内の作動油の温度変化によるセンサ出力電圧の偏移を防止するために、油室510内の作動油の温度を測定する構造を採用している点で第二実施形態と異なり、この点に特徴を有するもので、以下、本実施形態の特徴的部分である温度測定構造について述べ、その他の構成部分及び作用効果については第二実施形態と同一であるためその説明は第二実施形態を援用することで省略する。
【0119】
本実施形態では、トッププレート500のセンサ連結部502の上面から油室510の近傍に向けて連続し、かつ油室510には貫通していない(非貫通)挿入孔10を設け、挿入孔10に、油室510の温度変化を検出可能な温度センサ20を配置した構造が採用されている。
【0120】
挿入孔10は、圧力センサ600を連結するトッププレート500のセンサ連結部502の上面に開口11が設けられ、この開口11から油室510に向けて傾斜状に穿設されている。
【0121】
本実施形態では、挿入孔10の先端が対向する油室510として連通路510aが選択されている。連通路510aは、溝部512と流体溜まり511とを連通する通路であって、常時、測定流体(作動油)が充填されているため、この領域の温度を本実施形態では測定するものとしている。
なお、挿入孔10は、第三実施形態の挿入孔10と同様に先端12が円すい形状の円筒状で、油室510(連通路510a)に直交する方向に穿設されている。
温度センサ20は、第三実施形態と構成及び作用効果を同一とするものであり、その説明を援用し、ここでの詳細な説明は省略する。
また、温度測定構造としてのその他の構成及び作用効果は第三実施形態と同じであるため、その説明を援用してここでの説明は省略する。
【0122】
なお、本実施形態では、トッププレート500のセンサ連結部502の上面から油室510(連通路510a)に向けて、油室510(連通路510a)とは非連通の挿入孔10を設けた実施の一形態を説明したが、本実施形態における温度測定構造はこれに限定されるものではなく本発明の範囲内で設計変更可能である。
例えば、センサ連結部502の側面から流体溜まり511に向けて、該流体溜まり511とは非連通の挿入孔10を配置する形態であってもよく、また、溝部512に向けて、該溝部512の鉛直方向で上方のトッププレート500の上面500aから、該溝部512に向けて、該溝部512とは非連通の挿入孔10を配置する形態を採用することも可能である。
【0123】
また、本実施形態において、第四実施形態で採用している温度センサ20の保持機構30(結束バンド31)を採用することも可能で本発明の範囲内である。
【産業上の利用可能性】
【0124】
本発明は、本実施形態に示す構成からなる懸架装置に係らず、他の構成からなる懸架装置にも利用可能である。
【符号の説明】
【0125】
1 懸架装置
2 アーム
5 コイルスプリング(スプリング)
100 車両の重量測定装置
200 ボトムプレート
203 ボトムプレートの下面
201 油室
202 溝部
202a 開口領域
220 カラー
300 ピストン
340 スプリングシート
400 圧力センサ
240 油排出孔部
242 封鎖部
R 測定流体(作動油)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17