【実施例1】
【0015】
図1は本発明による空気調和機の実施例を示すブロック図である。なお、本発明に関係のない冷媒回路やファンモータ等の図示と説明を省略する。
図1において空気調和機1は互いに通信接続された室内機2と室外機10を備えている。室外機10は室外機10全体を制御する室外機制御部11と外気温を検出して室外機制御部11へ出力する外気温検出部12を備えている。
【0016】
一方、室内機2はサーモパイルなどを利用して人を検知することで人の在室を出力する人検知部4と、空気調和機1の運転開始/停止や運転モードを操作信号として出力する赤外線リモコン9と、赤外線リモコン9が出力する赤外線の操作信号を受信するリモコン受信部3と、時刻を出力する時計部5と、運転モードや設定温度などを記憶する記憶部7と、室外機制御部11と相互に通信を行なうと共に室内機2全体を制御する室内機制御部8と、室内機制御部8の指示によりユーザーに対して音声合成や図示しないLEDランプで空気調和機1の状態を知らせる報知部6を備えている。そして、室内機制御部8の内部には本発明に関わる自動試運転部(自動試運転手段)30が備えられている。
【0017】
以上の構成により自動試運転部30は、人検知部4を介して人の在室や、時計部5から現在の時刻を参照し、さらに室外機10を介して入力した外気温のデータを記憶部7に記憶し、これを記憶部7から参照することができる。さらに自動試運転部30は、リモコン受信部3を介して空気調和機1の停止タイミングと時計部5から入力した時刻から空気調和機1の運転停止時点からの赤外線リモコン9の未操作時間を算出することもできる。
【0018】
図2は本発明を実現するための自動試運転部30の機能ブロック図である。なお、本実施例における試運転とは、暖房/冷房の運転モードを切り替えて実際に空気調和機1を運転し、その過程において図示しない四方弁や電子膨張弁、ファンモータなどをセルフチェックするものである。また、本実施例では季節の移り変わりによりユーザーが冷房運転を行なう期間と暖房運転を行う期間の間の期間を運転停止期間と定義している。
【0019】
自動試運転部30は、1日の中で試運転を開始する時刻を決定する開始時間決定部(開始時間決定手段)31と、季節の変わり目で空調運転を実施しない運転停止期間内であることを検出する運転停止期間検出部(運転停止期間検出手段)33と、試運転の開始を管理する試運転開始管理部(試運転開始管理手段)34と、一定期間だけ空気調和機1の運転が停止されている、つまり、一定期間未操作であることを検出する未操作検出部(未操作検出手段)32と、アンド回路(論理積手段)35と、実際に試運転を実行してその結果を出力する試運転部(試運転手段)36と、試運転の開始や試運転の結果をユーザーに報知する結果報知部(結果報知手段)37を備えている。
【0020】
そして、運転停止期間検出部33は室外機10を介して1時間毎の外気温データを入力して1日分の気温として記憶部7へ記憶している。そして運転停止期間検出部33は、予め定められた温度である平均気温閾値(22.5℃)に対して、記憶した1日の気温の中の最高気温が平均気温閾値以上になった時、もしくは、この1日の最高気温が平均気温閾値未満となった時が、運転停止期間内であるとして運転停止期間検出信号のレベルを反転させて試運転開始管理部34へ出力する。
【0021】
運転停止期間検出部33は1日の最高気温が平均気温閾値以上になった時、季節が冬期から夏期へ変化する場合の運転停止期間であると判断して運転停止期間検出信号をローレベルからハイレベルに、また、1日の最高気温が平均気温閾値未満となった時、季節が夏期から冬期へ変化する場合の運転停止期間であると判断して運転停止期間検出信号をハイレベルからローレベルにする。
【0022】
この運転停止期間検出信号が入力された試運転開始管理部34は、運転停止期間検出信号のレベルが反転された時、検出許可信号をローレベルからハイレベルにして未操作検出部32へ出力する。未操作検出部32はハイレベルの検出許可信号が入力されると、時計部5を用いて空気調和機1を運転させる操作が連続して行なわれない時間を計測する。そして未操作検出部32は、この計測した未操作時間が240時間(10日間)になった時点で試運転許可信号をローレベルからハイレベルにしてアンド回路35へ出力する。試運転許可信号は試運転開始管理部34へも出力されており、ハイレベルの試験運転許可信号が入力された試運転開始管理部34は、検出許可信号をローレベルにして次の動作に備える。なお、時計部5が備えられていない場合は図示しないタイマーを用いてもよい。
【0023】
アンド回路35へは後述する開始時間決定部31から試運転の開始を許可する開始タイミング信号が入力されており、開始タイミング信号と試運転許可信号とが共にハイレベルとなった時、アンド回路35は試運転部36へ試運転開始信号をローレベルからハイレベルにして出力する。この試運転開始信号が入力された試運転部36は試運転を開始する。試運転部36は試運転を開始する時に状態信号として試運転開始報知のデータを、また試運転が終了した時に状態信号として試運転結果報知データを、それぞれ結果報知部37へ出力する。なお、試運転部36は試運転を開始すると、試運転動作信号をローレベルからハイレベルにして出力し、室内機制御部8へ試運転中であることを通知する。
【0024】
結果報知部37は試運転開始報知のデータが入力された時、『メンテナンスのため試運転を開始します。終了後に試運転の結果をお知らせします。』と報知部6を介して音声出力する。また、結果報知部37は試運転結果報知のデータが入力された時、その内容に従って『試運転が終了しました。結果は○○です。この音声出力を停止するにはリモコンの停止キーを押して下さい。』の音声出力を連続して繰り返す。なお、○○には『正常』とか、『故障です。暖房運転ができません。エラー番号は105番』などの結果が挿入される。
【0025】
また、結果報知部37は赤外線リモコン9の停止キーが押されるまでこの音声出力を連続して繰り返しているため、ユーザーは試運転を行なっている間に不在であっても、その結果を帰宅後に確実に知ることができる。なお、音声出力の代わりにLEDランプなどで代用してもよい。また、スマートフォンなどの外部機器が空気調和機1に通信接続されている場合、音声出力やLEDランプでの報知に代えて外部機器へ報知するようにしてもよい。
また、結果報知部37はリモコン9が送信した停止キーの押下と対応する操作信号(報知解除信号)が入力されており、この信号が入力されると音声出力を中止する。
【0026】
一方、開始時間決定部31は、試運転を開始する場合、試運転によりユーザーが不快な思いをしないように試運転の時間帯を指定する。この理由は、例えば夜中の試運転による安眠妨害の抑止がある。さらに、試運転によって空気調和機自体で発見できない故障をユーザーに確認してもらうため、試運転はできるだけユーザーが在宅する昼間に実施する。例えば臭いや異音などはユーザーでしか判別できないためである。なお、開始時間決定部31は必ずしも必要でない。開始時間決定部31を省略する場合、結果報知部37の音声出力を中止し、代わりにLEDランプのみで結果を報知するとよい。
なお、ユーザーのライフスタイルによって夜間に試運転した方が都合が良い場合、後述するように試運転開始の時刻を予め設定できるようにしておけばよい。
【0027】
このため開始時間決定部31は、昼間や在宅の時間を認識して開始タイミング信号を出力する。この実施例では空気調和機1が備えているハードウェアに対応して、日中最高気温検出部(日中最高気温検出手段)31a、人検出部(人検出手段)31b、日中検出部(日中検出手段)31cの3つの検出部の動作を説明するが、開始時間決定部31は少なくともこの中の1つの検出部を備えていればよい。
【0028】
日中最高気温検出部31aは、室外機10を介して外気温データを1時間毎に入手して記憶部7に記憶し、気温が上昇傾向から下降傾向に転じた時、下降傾向に転じる前の気温よりも現在入手した気温が、予め定められた温度差閾値(3℃)以上低くなったら、下降傾向に転じる前の気温をその日の最高気温と判定し、パルス信号である日中最高気温信号を出力する。一般的に1日の最高気温は12時〜14時頃に発生するため、この時間から1時間後は13時〜15時(昼間の午後)と推測される。
【0029】
なお、日中最高気温信号は開始時間決定部31から開始タイミング信号として出力される。また、天候によっては1日の最高気温と最低気温の差が小さい場合があり、温度差閾値では昼間の午後をうまく検出できない場合がある。このような場合は翌日以降、この温度差閾値以上を検出するまで再判定を繰り返してもよい。
【0030】
次に人検出部31bを説明する。本実施例のように人検知部4を備えている場合、ユーザーの在室を検出できるため、人検出部31bは人検知部4を介してユーザーの在室を検出した場合、ハイレベルの人検出信号を出力する。なお、人検出信号は開始時間決定部31から開始タイミング信号として出力される。
【0031】
次に日中検出部31cについて説明する。日中検出部31cは時計部5から常時、現在の時刻データを読み出し、予め定めた時刻(12時)になったらパルス信号である時刻信号を出力する。なお、時刻信号は開始時間決定部31から開始タイミング信号として出力される。
【0032】
なお、開始時間決定部31は、前述した3つの検出部のうちいずれか1つの検出部を用いてもよいし、例えば人検出部31bと日中検出部31cを組み合わせて使用し、9時から15時までの間に在室を検出したら開始タイミング信号を出力するようにしてもよい。
【0033】
次に
図1〜
図4を用いて自動試運転部30の動作を説明する。
図3は2014年の東京における1年の月平均温度の変化を示すグラフと、空気調和機1を運転した年の実際の外気温(1日の最高気温)を示すグラフと、自動試運転部30内の信号を示す説明図である。
図3の横軸は時間である。
図3の縦軸に関して
図3(1)は年間の月平均の外気温変化を示すグラフを、
図3(2)はユーザーが使用する運転モードの期間を、
図3(3)は1日の最高気温変化を示す年間のグラフを、
図3(4)は運転停止期間検出信号を、
図3(5)は検出許可信号を、
図3(6)は試運転許可信号をそれぞれ示している。なお、t0〜t16は日付・時刻である。
【0034】
図3(1)において、最も左側が5月を示し、右側に行くに従って6月、7月・・・3月、最も右側が4月になっている。そして縦軸は温度であり、2本の実線は上側が最高気温、下側が最低気温をそれぞれ示している。北半球ではこのグラフのように8月が最気温のピークに、また、1月が最低気温のピークになっている。
【0035】
従って、
図3(2)に示すように平均最高気温が25℃を超える6月中旬〜9月末までの夏期期間において冷房運転を、平均最高気温が20℃以下となる10月下旬〜4月下旬までの冬期期間において暖房運転をそれぞれユーザーが選択して使用すると思われる。そして、それ以外の期間は冷房も暖房も必要ない運転停止期間となる。なお、上記の期間は地域や気候変動により変化すると思われるため、この実施例における季節の変化による空気調和機の使用形態の一例として説明する。
【0036】
一方、ユーザーが冷房または暖房を必要とする気温、つまり、暑いか寒いかの感覚は人によって大きな差異はないと考えられる。このため冷房または暖房が不要と考えられる20℃〜25℃の範囲の中間の気温(22.5℃)を運転停止期間の代表(期間の中央)と考え、この中間の気温を平均気温閾値と定義する。そして、この運転停止期間中に運転停止期間の次の夏期/冬期期間に運転される運転モードで試運転することで、次のシーズン前に空気調和機1が問題ないか確認をすることができる。
【0037】
なおユーザーが暑がりである場合は、平均気温閾値を例えば20℃としたり、寒がりである場合は平均気温閾値を例えば25℃としたりするように、可変できる設定値として記憶部7に記憶しておいてもよい。また、設定温度から暑がり/寒がりを推測して平均気温閾値を決定するようにしてもよい。例えば冷房運転において過去に設定されていた設定温度が26℃以下なら暑がり、過去の暖房運転において22℃以上なら寒がりとして、前述の平均気温閾値を決定してもよい。
【0038】
運転停止期間検出部33は
図3(3)に示すように、t11の5月16日に1日の最高気温が平均気温閾値以上になると運転停止期間検出信号をローレベルからハイレベルにし、t15の10月14日に1日の最高気温が平均気温閾値未満になると運転停止期間検出信号をハイレベルからローレベルにする。運転停止期間検出信号が入力された試運転開始管理部34はt11とt15で検出許可信号をローレベルからハイレベルにして出力し、これが入力された未操作検出部32は、検出許可信号がハイレベルとなった時点から未操作期間(240時間)の間に赤外線リモコン9が操作されていない、つまり、空気調和機1が運転されていなければ、t12(5月26日)とt16(10月24日)で試運転許可信号をローレベルからハイレベル(試運転許可)にして出力する。
【0039】
もし、未操作期間中に空気調和機1が運転されたら、未操作検出部32は、最後に空気調和機1の運転が停止されてから未操作期間が経過するのを待って試運転許可信号をローレベルからハイレベルにして出力する。つまり未操作期間の間、空気調和機1が操作されないことはユーザーにとって快適な気温であることを示しており、冷房運転でもなく、暖房運転でもない運転停止期間であることが予想される。なお、試運転許可信号は一度ハイレベルになると、試運転を開始するまでハイレベルのままである。
【0040】
次に
図4を用いて試運転許可信号がハイレベルとなり、試運転が許可された以降の自動試運転部30の動作について説明する。
図4は
図3で未操作検出部32がt12で試運転許可信号をハイレベルにした5月26日の翌日における1日の外気温変化と本発明による自動試運転部の各信号を示す説明図である。
図4の横軸は時間である。
図4の縦軸に関して
図4(1)は1日の外気温変化を示すグラフを、
図4(2)は日中最高気温信号を、
図4(3)は人検出信号を、
図4(4)は時刻信号を、
図4(5)は試運転許可信号を、
図4(6)は試運転開始信号を、
図4(7)は試運転動作信号を、
図4(8)は状態信号を、
図4(9)は報知解除信号をそれぞれ示している。なお、t20〜t34は時刻である。
【0041】
図4(1)に示すように、日中温度はt21の午前6時に最低気温の15℃から徐々に上昇してt27の13時頃に最高温度になり、その後t28の14時頃に22℃まで低下し、当日中はそのまま徐々に低下している。日中最高気温検出部31aは、t27時点から温度差閾値(3℃)以上低下したt28でパルス信号である日中最高気温信号を出力する。
【0042】
一方、未操作検出部32は前述したように5月26日に試運転許可信号をハイレベルにしており、
図4(1)で示す5月27日には
図4(5)に示すように試運転許可信号はハイレベルになったままになっている。この結果、アンド回路35の2つの入力端子がt28で共にハイレベルとなるため、アンド回路35はパルス信号である試運転開始信号をt28で出力する。
【0043】
この試運転開始信号が入力された試運転部36は、t28で試運転を開始する。同時に試運転部36は試運転動作信号をローレベルからハイレベルにして室内機制御部へ出力して試運転中であることを通知する。さらに、試運転部36は、結果報知部37に状態信号として試運転開始報知の指示を出す。この指示が入力された結果報知部37は前述した試運転を開始する旨の音声を出力する。
【0044】
一方、記憶部7には室内機制御部8が前回運転した運手モードが記憶されているため、試運転部36は試運転開始に先立って前回と異なる運転モード、つまり、冷房運転/暖房運転を切り替え、その後に試運転を開始する。同時に試運転部36は各部のチェックを開始して動作に問題がないか確認する。
【0045】
チェックの内容についてはここでは詳しく説明しないが、例えば室内機2の図示しない熱交換器の温度を確認することで図示しない四方弁をチェックする方法がある。具体的には前回の運転が暖房運転であり、今回の試運転では冷房にして運転している場合、運転時間の経過と共に室内機2の熱交換器温度は、運転開始時の室温よりも低下するはずである。もし、四方弁が運転モードに対応して切り替わらない場合、前回運転時の暖房運転で試運転を行なうことになり、室内機2の熱交換器は時間の経過と共に運転開始時の室温よりも上昇することになるため四方弁の異常と判定する。
【0046】
また、図示しないファンモータに流れる電流の値が所定の範囲内に入っているか否か、また、指示した回転数を維持しているか否かをチェックしてファンモータの正常/異常を判定する。このように各部をチェックした後、試運転部36は試運転を停止し、結果報知部37に状態信号として試運転結果報知のデータを出力する。
【0047】
結果報知部37は前述したように、試運転結果報知のデータの内容に従って音声を出力する。この試運転結果報知の音声出力は繰り返して出力されており、これを確認したユーザーが赤外線リモコン9の停止キーを押下するまで継続される。停止キーが押下されるとリモコン9は停止キー操作信号(報知解除信号)を出力し、この信号はリモコン受信部3と制御部8を経由して結果報知部37へ出力される。
このため、例えユーザーが試運転の実行中に不在であっても確実に試運転の結果を確認することができる。
【0048】
以上は開始時間決定部31として日中最高気温検出部31aを用いた場合の説明である。
一方、人検出部31bは、人検知部4から得たデータにより、在室を監視しており、
図4(3)に示すようにt22〜t23、t25〜t30、t32〜t34の期間に在室を示す人検出信号をハイレベルで出力する。この場合、t25で人検出信号と試運転許可信号が共にハイレベルとなるため、t25でアンド回路35は試運転開始信号を出力する。その後の動作はt28以降の動作と同じため説明を省略する。
【0049】
次に日中検出部31cを用いた場合を説明する。日中検出部31cは、正午(12時)を試運転開始の時間であると予め定められているため、時計部5から常に時刻を読み出して12時になったらパルス信号である時刻信号をアンド回路35へ出力する。この場合、t26で人検出信号と試運転許可信号が共にハイレベルとなるため、t26でアンド回路35は試運転開始信号を出力する。その後の動作はt28以降の動作と同じため説明を省略する。
【0050】
以上説明したように、季節の変わり目における空気調和機1の運転停止期間において、自動試運転部30は前回の運転で使用した運転モードを、次のシーズンで使用する運転モードに切り替えて試運転を自動的に実施し、その結果をユーザーに確実に報知することにより、空気調和機1の運転が必要となるシーズン前に空気調和機の故障を発見できるため、故障が有ったとしてもシーズン前に故障を修理しておくことができる。
【0051】
なお、本実施例では人検知部4と時計部5と外気温検出部12をすべて備えた空気調和機1として説明しているが、これに限るものでなく、これらの内いずれか1つを備えていれば開始時間決定部31を構成できるため同じ効果を得ることができる。
また、本実施例では自動試運転部30をハードウェアとして説明しているが、これに限るものでなく、ソフトウェアで実現してもよい。