特許第6794878号(P6794878)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794878
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20201119BHJP
   H02J 3/00 20060101ALI20201119BHJP
   G01W 1/12 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H02J3/38 130
   H02J3/00 170
   G01W1/12 B
【請求項の数】7
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-43723(P2017-43723)
(22)【出願日】2017年3月8日
(65)【公開番号】特開2018-148743(P2018-148743A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年2月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000211307
【氏名又は名称】中国電力株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】一色国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】河内 清次
(72)【発明者】
【氏名】三川 玄洋
【審査官】 辻丸 詔
(56)【参考文献】
【文献】 特開2020−127337(JP,A)
【文献】 特表2019−502340(JP,A)
【文献】 特開2016−152644(JP,A)
【文献】 特開平11−215733(JP,A)
【文献】 特開平7−113877(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/00−5/00
G01W 1/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
非積雪時における第1日射量に対応する太陽光発電設備の第1発電出力と、積雪時における前記第1日射量に対応する前記太陽光発電設備の第2発電出力と、に基づいて、前記第1発電出力と前記第2発電出力の比を示す積雪係数を算出する積雪係数算出部と、
降雪が終了した第1時点から時間経過にともなって前記太陽光発電設備のパネル上の残雪が減少していくことを考慮するように、前記第1時点における前記積雪係数と、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出する残雪係数算出部と、
前記残雪係数と、現在又は将来の第2時点における第2日射量と、に基づいて、前記太陽光発電設備の発電出力を算出する発電出力算出部と、
を備えることを特徴とする残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項2】
前記太陽光発電設備の設置地点において、過去における、前記積雪係数と、積雪深と、気象情報と、に基づいて、重回帰分析することにより、前記第1時点における、非積雪時の第3日射量に対応する前記太陽光発電設備の発電出力と、積雪時の前記第3日射量に対応する前記太陽光発電設備の発電出力と、の比を示す予測積雪係数を算出するための重回帰モデルを作成する重回帰モデル作成部
をさらに備え、
前記残雪係数算出部は、前記重回帰モデルと、前記第1時点における前記積雪深、前記気象情報と、に基づいて、前記予測積雪係数を算出するとともに、前記第1時点における前記予測積雪係数と、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項3】
前記重回帰モデル作成部は、前記太陽光発電設備の設置地点において、過去における、前記積雪係数と、前記積雪深と、前記気象情報と、前記太陽光発電設備の設備情報と、に基づいて、重回帰分析することにより、前記予測積雪係数を算出するための重回帰モデルを作成し、
残雪係数算出部は、前記重回帰モデルと、前記第1時点における前記積雪深、前記気象情報および前記設備情報と、に基づいて、前記予測積雪係数を算出するとともに、前記第1時点における前記予測積雪係数と、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項4】
前記残雪係数算出部は、前記補正関数が前記第1時点から経過する時間の一次関数として前記残雪係数を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項5】
前記残雪係数算出部は、前記補正関数が前記第1時点から経過する時間の二次関数として前記残雪係数を算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れか一項に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項6】
降雪が終了した前記第1時点から所定の時間を経過したとき、前記太陽光発電設備のパネル上に残雪がないことを判定するとともに、前記残雪係数を所定の値に設定する残雪判定部
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れか一項に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【請求項7】
前記積雪係数算出部は、非積雪時における前記第1日射量と前記第1発電出力との関係および積雪時における前記第1日射量と前記第2発電出力との関係を近似式で算出する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れか一項に記載の残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、過去の日射量データに基づいて太陽光発電電力量を予測する太陽光発電量予測装置が知られている。(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平11−65686号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1には、特定した地域における日射量データに基づいて、太陽光発電設備で発電される電力量を予測する予測装置が開示されている。また、特許文献1に係る予測装置では、当該地域が多雪地域である場合、降雪が太陽光発電に影響を及ぼす旨の注意記号を表示する。しかし、当該予測装置では、日射量データに基づいて太陽光発電設備の出力を予測できるものの、降雪終了後における太陽光発電設備のパネル上の残雪により太陽光発電設備の出力が低下することを考慮しておらず、発電量の予測精度が低下する虞があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前述した課題を解決する主たる本発明は、非積雪時における第1日射量に対応する太陽光発電設備の第1発電出力と、積雪時における前記第1日射量に対応する前記太陽光発電設備の第2発電出力と、に基づいて、前記第1発電出力と前記第2発電出力の比を示す積雪係数を算出する積雪係数算出部と、降雪が終了した第1時点から時間経過にともなって前記太陽光発電設備のパネル上の残雪が減少していくことを考慮するように、前記第1時点における前記積雪係数と、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、前記第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出する残雪係数算出部と、前記残雪係数と、現在又は将来の第2時点における第2日射量と、に基づいて、前記太陽光発電設備の発電出力を算出する発電出力算出部と、を備えることを特徴とする。
【0006】
本発明の他の特徴については、添付図面および本明細書の記載により明らかとなる。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、降雪終了後において、太陽光発電設備のパネル上の残雪を考慮することで太陽光発電設備の発電量を正確に予測することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置のシステム系統の一例を示す系統図である。
図2】本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3】本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置の発電出力直線作成部で作成される日射量と発電出力の対応関係を示す図である。
図4】本実施形態に係る過去情報テーブルの構成例を示す図である。
図5】本実施形態に係る積雪係数テーブルの構成例を示す図である。
図6】本実施形態に係る設備情報テーブルの構成例を示す図である。
図7】本実施形態に係るモデル情報テーブルの構成例を示す図である。
図8】本実施形態に係る残雪係数テーブルの構成例を示す図である。
図9】本実施形態に係る予測情報テーブルの構成例を示す図である。
図10】本実施形態に係る処理手順の一例を示す図である。
図11】太陽光発電設備の残雪状況の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本明細書および添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。以下の説明において、同一符号を付した部分は同一の要素を表し、その基本的な構成および動作は同様であるものとする。
【0010】
===残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置10===
図1図2図11を参照しつつ、残雪を考慮した太陽光発電出力予測装置10(以下、「太陽光発電出力予測装置10」と称する。)について、以下のように説明する。図1は、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10のシステム系統の一例を示す系統図である。図2は、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の構成の一例を示す図である。図11は、太陽光発電設備100の残雪状況の一例を示す図である。
【0011】
太陽光発電出力予測装置10は、太陽光発電設備100のパネル上における残雪の影響を考慮して、太陽光発電設備100の発電出力を予測する装置である。図11に示すように、太陽光発電設備100のパネル上に残雪がある場合、パネル表面に到達する日射量が減少する。このような状況において、太陽光発電出力予測装置10は、残雪により、パネル表面に到達する太陽光の減少を考慮して発電出力を予測する。なお、残雪とは、降雪が終了した時点以降に、太陽光発電装置のパネル上に堆積している雪をいう。
【0012】
図1に示すように、太陽光発電出力予測装置10は、例えば通信ネットワーク120を介して、気象庁サーバ110および太陽光発電設備100と通信可能に接続されている。これにより、太陽光発電出力予測装置10は、気象庁サーバ110から気象に関する各種情報を取得し、太陽光発電設備100から発電に関する各種情報を取得できる。
【0013】
太陽光発電出力予測装置10は、例えば気象庁サーバ110から取得する過去の日射量を示す情報(以下、「日射量情報」と称する。)と、それに対応し、太陽光発電設備100から取得する発電出力を示す情報(以下、「発電出力情報」と称する。)と、に基づいて積雪係数を算出する。積雪係数とは、特定の太陽光発電設備100または太陽光発電設備100が設置される特定の地域における過去の所定の時点の積雪深および日射量で生じる発電出力と、積雪がない状況(以下、「非積雪時」と称する。)において、先の同時点の日射量で生じる発電出力と、の比率である。積雪係数の算出方法については、後述する演算処理部11の積雪係数算出部11bにおいて詳細に述べる。
【0014】
そして、太陽光発電出力予測装置10は、積雪係数を目的変数に設定し、積雪係数に対応する、積雪時における積雪深を示す情報(以下、「積雪深情報」と称する。)、気象を示す情報(以下、「気象情報」と称する。)および太陽光発電設備100の設備仕様を示す情報(以下、「設備情報」と称する。)を説明変数に設定して、重回帰モデルを作成する。重回帰モデルの作成方法については、後述する演算処理部11の重回帰モデル作成部11cにおいて詳細に述べる。
【0015】
さらに、太陽光発電出力予測装置10は、重回帰モデルに降雪が終了した時点における積雪係数を算出するとともに、当該積雪係数と、降雪が終了した時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、現在又は将来の時点における残雪係数を算出する。そして、残雪係数に基づいて、現在又は将来の時点における発電出力を算出する。残雪係数および発電出力の算出方法については、後述する演算処理部11の残雪係数算出部11eにおいて詳細に述べる。
【0016】
このような太陽光発電出力予測装置10は、図2に示すように、演算処理部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、メモリ15と、を含んで構成されている。なお、演算処理部11と、記憶部12と、入力部13と、出力部14と、メモリ15と、はそれぞれが通信可能に接続されている。
【0017】
演算処理部11は、例えばCPUあるいはMPUなどで構成されている。演算処理部11は、メモリ15に格納されているプログラムを読み出すことにより、各種機能を実現する。演算処理部11は、発電出力直線作成部11aと、積雪係数算出部11bと、重回帰モデル作成部11cと、残雪判定部11dと、残雪係数算出部11eと、発電出力算出部11fと、を含んで構成されている。演算処理部11の各構成要素については、詳細に後述する。
【0018】
記憶部12は、プログラムや各種情報を記憶する装置である。記憶部12は、例えば、ROM、RAMあるいはフラッシュメモリなどで構成されている。記憶部12に格納される各種テーブルについては、詳細に後述する。
【0019】
入力部13は、通信ネットワーク120を介して日射量情報、積雪深情報および気象情報などの各種情報が入力されるネットワークインターフェイスである。出力部14は、通信ネットワーク120に各種情報が出力されるネットワークインターフェイスである。メモリ15は、演算処理部11が処理するためのプログラムを格納する装置である。メモリ15は、例えば、ハードディスクドライブ、SSDあるいは光学式記憶装置などで構成されている。
【0020】
==演算処理部11==
演算処理部11は、記憶部12の各種テーブルを参照しつつ、以下で述べる各種機能を実現する。演算処理部11は、上述したように、発電出力直線作成部11aと、積雪係数算出部11bと、重回帰モデル作成部11cと、残雪判定部11dと、残雪係数算出部11eと、発電出力算出部11fと、を含んで構成されている。
【0021】
<<発電出力直線作成部11a>>
図3を参照しつつ、発電出力直線作成部11aについて、以下のとおり説明する。図3は、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の発電出力直線作成部11aで作成される日射量と発電出力の対応関係を示す図である。
【0022】
発電出力直線作成部11aは、所定の太陽光発電設備100または所定の地域に設置される複数の太陽光発電設備100(以下、「太陽光発電設備100」と称する。)において、所定の積雪深における日射量と発電出力との関係を近似式で作成する機能を有する。
【0023】
図3(ア)に示すように、非積雪時における太陽光発電設備100は、日射量Xで発電出力Aを生じる。図3(イ)に示すように、例えば過去の所定の時点が日射量Xで10cmの積雪の場合の太陽光発電設備100は、発電出力Bを生じる。図3(ウ)、図3(エ)も同様である。つまり、積雪時における日射量Xで生じる発電出力は、非積雪時における日射量Xで生じる発電出力よりも小さくなる。この理由は、太陽光がパネルに到達する前に、積雪により反射されるためである。なお、図3(イ)〜図3(エ)は、10cm、15cm、20cmの積雪時を示しているが、例えば1cm間隔で作成されていてもよい。
【0024】
発電出力直線作成部11aは、図3(ア)〜図3(エ)を作成するために、後述する過去情報テーブル12aから、過去の所定の時点における日射量情報と、同時点における発電出力情報と、同時点における積雪深情報と、を取得する。発電出力直線作成部11aは、積雪深ごとに、日射量情報と発電出力情報を対応づける。これにより、複数の日射量情報の夫々と複数の発電出力情報の夫々が対応づけられて、グラフ上にプロットされる。発電出力直線作成部11aは、複数のプロットから近似式を算出することにより、図3(ア)〜図3(エ)に示すような近似直線を作成する。なお、発電出力直線作成部11aでは、少なくとも近似式を作成できればよい。この近似式に基づいて、後述する積雪係数算出部11bは、積雪係数を算出できる。
【0025】
<<積雪係数算出部11b>>
図3を参照しつつ、積雪係数算出部11bについて、以下のとおり説明する。
【0026】
積雪係数算出部11bは、発電出力直線作成部11aで算出された近似式に基づいて、積雪係数を算出する機能を有する。積雪係数の算出では、所定の太陽光発電設備100において、過去の所定の時点の積雪深および日射量で生じる発電出力と、その日射量での非積雪時の発電出力と、の比率を算出する。具体的には、図3(ア)において、非積雪時の日射量が“X” (第1日射量,第3日射量)のとき、発電出力が“A” (第1発電出力)であり、過去の所定の時点が日射量X、積雪深10cmの場合(図3(イ)参照)、発電出力が“B” (第2発電出力)である。このとき、過去の所定の時点の積雪係数は、“B”を“A”で除して算出される。同様に、過去の所定の時点が日射量Xで積雪深15cmの場合の積雪係数は“C”を“A”で除して算出され、過去の所定の時点が日射量Xで積雪深20cmの場合の積雪係数は“D”を“A”で除して算出される。これを過去の所定の期間の各時点について行うことにより、積雪係数算出部11bでは、過去の所定の期間の各時点の積雪深および日射量に応じた積雪係数を算出する。積雪係数算出部11bは、積雪係数を記憶部12の積雪係数テーブル12bに格納する。なお、言うまでもないが、積雪係数算出部11bは、過去の所定の時点における積雪係数を算出することができる。この積雪係数に基づいて、後述する重回帰モデル作成部11cは、重回帰モデルを作成できる。
【0027】
<<重回帰モデル作成部11c>>
重回帰モデル作成部11cは、積雪係数算出部11bで算出された積雪係数を目的変数とし、積雪深情報、気象情報および設備情報を説明変数として、重回帰分析を実行する機能を有する。
【0028】
具体的には、重回帰モデル作成部11cは、式(1)に、過去の所定の期間の各時点における目的変数および説明変数を入力する。目的変数には、積雪係数が数値で入力される。説明変数には、例えば、積雪深情報、気象情報および設備情報が入力される。
【0029】
積雪深情報は、積雪深が数値で示される。
【0030】
気象情報には、例えば、気温情報、天候情報が含まれる。気温情報は、気温が数値で示される。天候情報には、“晴れ”を示す晴れ情報、“曇り”を示す曇り情報が含まれる。晴れ情報は、該当するときに“1”を示し、非該当のときに“0”を示す。同様に、曇り情報は、該当するときに“1”を示し、非該当のときに“0”を示す。
【0031】
設備情報には、例えば、パネルの傾斜角度情報、パネルの設置方位角度情報、パネルの種別情報が含まれる。パネルの傾斜角度情報は、傾斜角度が数値で示される。パネルの設置方位角度情報は、南方向を0度として方位角が数値で示される。パネルの種別情報には、例えば、“化合物”のパネルを示す情報、“単結晶シリコン”のパネルを示す情報、“多結晶シリコン”のパネルを示す情報が含まれる。それぞれに該当するときは“1”を示し、非該当のときは“0”を示す。
【0032】
【数1】
(但し、Pは目的変数(積雪係数)、Aは回帰定数、B1、C1〜Ck、D1〜Dmは偏回帰係数、X1(積雪深情報)、Y1〜Yk(気象情報)、Z1〜Zm(設備情報)は説明変数を表す。)
なお、上記の重回帰分析に替えて最小二乗法またはベイズ推定法等を用いてもよい。
【0033】
重回帰モデル作成部11cは、重回帰分析を実行するために必要な過去の所定の期間の各時点における目的変数および説明変数を、過去情報テーブル12a、積雪係数テーブル12bおよび設備情報テーブル12cから取得して、それらを式(1)に代入する。重回帰モデル作成部11cは、重回帰分析を実行することにより、式(1)における回帰定数および偏回帰係数を算出し、重回帰モデルを作成する。後述する残雪係数算出部11eは、この重回帰モデルに、降雪が終了した時点(第1時点)における目的変数および説明変数を代入して、降雪が終了した時点の積雪係数(予測積雪係数)を算出する。そして、残雪係数算出部11eは、降雪が終了した時点の積雪係数に基づいて、残雪係数を算出する。
【0034】
<<残雪判定部11d>>
残雪判定部11dは、降雪が終了してから所定の経過時間の範囲内か否かを判定する機能を有する。残雪判定部11dは、太陽光発電設備100のパネル上に残雪があるか否かを判定する。残雪とは、降雪が終了した時点以降に、太陽光発電装置のパネル上に堆積している雪をいう。パネル上に残雪がある状況とは、降雪が終了した時点から所定の時間を経過するまでの状況である。所定の時間とは、過去情報テーブル12aに基づいて計算して予め定められる時間であり、パネル上に残雪がなくなるまでの時間である。
【0035】
具体的には、残雪判定部11dでは、降雪が開始した時点から降雪が終了した時点までの範囲か否かを判定し、さらに、降雪が終了した時点から所定の時間を経過したか否かを判定する。残雪判定部11dは、降雪が開始した時点から降雪が終了した時点までの範囲であると判定した場合、積雪係数を算出するように、積雪係数算出部11bに処理を移行する。つまり、当該範囲では、積雪が継続しているため、積雪係数算出部11bで積雪係数を算出することにより、発電出力算出部11fで発電出力を算出する。一方、残雪判定部11dは、降雪が終了した時点から所定の時間が経過していると判定した場合、残雪係数を“1”とし、発電出力算出部11fに処理を移行する。つまり、当該所定の時間を経過した時点では、パネル上に残雪がないため、発電出力の計算において残雪を考慮しない。
【0036】
残雪判定部11dは、降雪が終了した時点から所定の時間を経過しない場合、パネル上に残雪があると判定し、積雪係数算出部11bおよび残雪係数算出部11eに処理を移行する。
【0037】
<<残雪係数算出部11e>>
残雪係数算出部11eは、残雪を考慮した発電出力を算出するように、補正関数を用いて残雪係数を算出する機能を有する。
【0038】
残雪係数算出部11eは、式(2)に示すように、積雪係数算出部11bにより重回帰モデルを用いて算出された降雪が終了した時点(第1時点)の積雪係数と、補正関数と、に基づいて残雪係数を算出する。また、式(3)に示すように、補正関数は、補正係数の逆数に、降雪が終了した時点からの経過時間を乗じて算出される関数である。補正関数は、補正係数が0よりも大きいため、時間が経過するにつれて値が大きくなる。補正係数は、予め定められる任意の値である。つまり、残雪係数は、降雪が終了した時点から時間の経過とともに値が大きくなる係数である。残雪係数を用いることにより、降雪が終了した時点から時間の経過とともにパネル表面における残雪が少なくなることを、発電出力の算出過程に反映できる。
【0039】
【数2】
(但し、Qは残雪係数、Pfは降雪が終了した時点の積雪係数(予測積雪係数)、f(x)は補正関数を表す。)
【0040】
【数3】
(但し、Rは補正係数(R>0)、xは降雪が終了してからの経過時間を表す。f(x)の上限は「1」)
<<発電出力算出部11f>>
発電出力算出部11fは、残雪係数算出部11eで算出された残雪係数に基づいて、現在又は将来の発電出力を算出する機能を有する。
【0041】
具体的には、発電出力算出部11fは、式(4)に、現在又は将来の時点(第2時点)における日射量(第2日射量)および残雪係数を入力する。なお、設備係数および発電容量は、設備情報テーブル12cから取得される。これにより、現在又は将来の時点における発電出力を予測できる。なお、発電出力算出部11fは、式(4)において、残雪係数に替えて積雪係数を用いて発電出力を算出してもよい。
【0042】
【数4】
(但し、Wは発電出力、Rは設備係数、Vは発電容量、Sは日射量、Qは残雪係数を表す。)
==記憶部12==
記憶部12は、演算処理部11が処理を実行するための各種データを格納する機能を有する。記憶部12は、過去情報テーブル12aと、積雪係数テーブル12bと、設備情報テーブル12cと、モデル情報テーブル12dと、残雪係数テーブル12eと、予測情報テーブル12fと、を格納している。
【0043】
<<過去情報テーブル12a>>
図4を参照しつつ、過去情報テーブル12aについて、以下のとおり詳細に説明する。図4は、本実施形態に係る過去情報テーブル12aの構成例を示す図である。
【0044】
過去情報テーブル12aは、気象庁サーバ110および太陽光発電設備100から送信される情報を格納するテーブルである。過去情報テーブル12aは、例えば、過去の所定の日時を示す “日時”項目と、その日時における、大気の温度が入力される“気温”項目、晴れや曇りなどの天候が入力される“天候”項目、地面またはパネル上に積雪する厚みが入力される“積雪深”項目、全天日射量が入力される“日射量”項目、太陽光発電設備100の発電出力が入力される“発電出力”項目と、を対応付けて格納している。また、それらの情報の観測元である場所を示す“地点”項目が対応付けられている。“気温”項目、“天候”項目、“積雪深”項目、“日射量”項目に入力される情報は、例えば気象庁サーバから取得され、太陽光発電設備100が設置されている地点における“発電出力”項目に入力される情報は、太陽光発電設備100から取得される。なお、過去情報テーブル12aの形式は、一例を示すものであり演算処理部11が参照可能なデータベース形式であればよい。
【0045】
<<積雪係数テーブル12b>>
図5を参照しつつ、積雪係数テーブル12bについて、以下のとおり詳細に説明する。図5は、本実施形態に係る積雪係数テーブル12bの構成例を示す図である。
【0046】
積雪係数テーブル12bは、積雪係数算出部11bで算出された積雪係数を格納するテーブルである。積雪係数テーブル12bは、例えば、“積雪係数”と、積雪係数を算出するための条件である“日時”項目、“地点”項目、“積雪深”項目、“日射量”項目、“発電出力”項目と、を対応付けて格納している。つまり、積雪係数テーブル12bでは、積雪がない状態における発電出力に対して、積雪により、どのくらい発電出力が減少するかが示される。なお、積雪係数テーブル12bの形式は、一例を示すものであり演算処理部11が参照可能なデータベース形式であればよい。
【0047】
<<設備情報テーブル12c>>
図6を参照しつつ、設備情報テーブル12cについて、以下のとおり詳細に説明する。図6は、本実施形態に係る設備情報テーブル12cの構成例を示す図である。
【0048】
設備情報テーブル12cは、各地点に配置される太陽光発電設備100に関する設備情報を格納するテーブルである。設備情報テーブル12cは、 “地点”項目、太陽光発電設備100のパネルの地面に対する傾斜角度が入力される“傾斜角度”項目、太陽光発電設備100のパネル面が向けられる方向と南方向とが成す角度が入力される“設置方位角度”項目、太陽光発電設備100のパネルの材質が入力される“種別”項目、太陽光発電設備100が日射量を発電出力へ変換するときの損失係数が入力される“設備係数”項目、太陽光発電設備100の発電容量が入力される“発電容量”項目を対応付けて予め格納している。なお、設備情報テーブル12cの形式は、一例を示すものであり演算処理部11が参照可能なデータベース形式であればよい。
【0049】
<<モデル情報テーブル12d>>
図7を参照しつつ、モデル情報テーブル12dについて、以下のとおり詳細に説明する。図7は、本実施形態に係るモデル情報テーブル12dの構成例を示す図である。
【0050】
モデル情報テーブル12dは、重回帰モデル作成部11cで作成された重回帰モデルを格納するテーブルである。モデル情報テーブル12dは、太陽光発電設備100が設置されている“地点”項目と、当該地点における重回帰モデルの回帰定数および偏回帰係数が格納される。ただし、図7は一例を示すものであり、重回帰モデルが認識できるように各種情報が格納されていればよい。
【0051】
<<残雪係数テーブル12e>>
図8を参照しつつ、残雪係数テーブル12eについて、以下のとおり詳細に説明する。図8は、本実施形態に係る残雪係数テーブル12eの構成例を示す図である。
【0052】
残雪係数テーブル12eは、残雪係数を算出するために、各種情報を格納するテーブルである。残雪係数テーブル12eは、“日時”項目、“地点”項目、降雪が終了した時点の積雪係数が入力される“積雪係数”項目、降雪が終了した時点を“0”時間として、降雪が終了した時点からの経過時間が入力される“経過時間”項目、経過時間の増加にともなって値が大きくなる補正関数が入力される“補正関数”項目を対応付けて格納している。そして、これらの情報に基づいて算出された残雪係数が入力される“残雪係数”項目を対応付けて格納される。これにより、発電出力算出部11fは、より正確に発電出力を算出できる。
【0053】
<<予測情報テーブル12f>>
図9を参照しつつ、予測情報テーブル12fについて、以下のとおり詳細に説明する。図9は、本実施形態に係る予測情報テーブル12fの構成例を示す図である。
【0054】
予測情報テーブル12fは、予測される発電出力に要する各種情報を格納するテーブルである。予測情報テーブル12fは、予測すべき日時が入力される“日時”項目、“地点”項目、“設備係数”項目、“発電容量”項目、残雪係数算出部11eで算出された残雪係数が入力される“残雪係数”項目、気象庁サーバ110などから取得され、予測すべき日時に対応する日射量情報が入力される“予測日射量”項目、上記の各種情報に基づいて発電出力算出部11fで算出される発電出力が入力される“予測発電出力”項目を対応付けて格納している。
【0055】
===処理フロー===
図10を参照しつつ、太陽光発電出力予測装置10の処理手順について、以下のとおり説明する。図10は、本実施形態に係る処理手順の一例を示す図である。図10では、右側に記憶部12の各種テーブルを示し、左側に演算処理部11の処理内容を示す。演算処理部11と記憶部12との間の矢印は、情報の流れを示している。
【0056】
太陽光発電出力予測装置10の発電出力直線作成部11aは、過去情報テーブル12aから、積雪深情報、日射量情報、発電出力情報を取得して、日射量と発電出力との関係を示す近似式または近似直線を作成する(S100)。太陽光発電出力予測装置10は、処理を積雪係数算出部11bに移行させる。
【0057】
次に、積雪係数算出部11bは、過去の所定の期間について、各時点の積雪深および日射量で生じる発電出力と、発電出力直線作成部11aで作成された近似式または近似直線から求めた当該時点の日射量での非積雪時の発電出力と、の比を積雪係数として算出する(S101)。積雪係数算出部11bは、所定の日時、所定の地点、所定の積雪深、所定の日射量、発電出力および積雪係数を積雪係数テーブル12bに格納する(S101)。太陽光発電出力予測装置10は、処理を重回帰モデル作成部11cに移行させる。
【0058】
次に、重回帰モデル作成部11cは、重回帰モデルを作成するために、設備情報テーブル12cから設備情報(パネルの傾斜角度情報、パネルの設置方位角度情報、パネルの種別情報)を取得し、過去情報テーブル12aから気象情報(気温情報、天候情報)を取得し、積雪係数テーブル12bから積雪係数を取得する(S102,S103,S104)。重回帰モデル作成部11cは、これらの情報に基づいて、重回帰分析を実行することにより、回帰定数および偏回帰係数を算出して重回帰モデルを作成する(式(1)参照)(S105)。重回帰モデル作成部11cは、重回帰モデルをモデル情報テーブル12dに格納する(S105)。太陽光発電出力予測装置10は、処理を残雪判定部11dに移行させる。
【0059】
次に、残雪判定部11dは、パネル上に残雪があるか否かを判定する。残雪判定部11dは、過去情報テーブル12aを参照して、予測をしたい時点が、降雪が開始した時点から降雪が終了した時点の範囲であるか否かを判定する(S106)。降雪が開始した時点から降雪が終了した時点の範囲である場合(S106:YES)、積雪係数算出部11bに処理を移行し、積雪係数算出部11bは、重回帰モデルを用いて積雪係数を算出する(S111)。積雪が続行しているため、積雪係数を用いて、発電出力を予測する。降雪が開始した時点から降雪が終了した時点の範囲でない場合(S106:NO)、さらに、残雪判定部11dは、過去情報テーブル12aを参照して、降雪が終了した時点から所定の時間が経過しているか否かを判定する(S107)。所定の時間が経過している場合(S107:YES)、残雪係数算出部11eは、パネル上に残雪がないと判定して、残雪係数に“1”を設定する(S110)。太陽光発電設備100が残雪の影響を受けないためである。所定の時間が経過していない場合(S107:NO)、残雪判定部11dは、パネル上に残雪があると判定して、処理を残雪係数算出部11eに移行する。
【0060】
次に、残雪係数算出部11eは、残雪係数を算出する前段階として、モデル情報テーブル12dから重回帰モデルを取得して、降雪が終了した時点の積雪係数を算出する(S108)。残雪係数算出部11eは、算出された積雪係数を残雪係数テーブル12eに格納する(S108)。
【0061】
次に、残雪係数算出部11eは、残雪係数テーブル12eから、積雪係数、経過時間、補正関数を取得して、補正関数(式(3)を参照)を用いて残雪係数を算出する(式(2)を参照)(S109)。残雪係数算出部11eは、算出された残雪係数を予測情報テーブル12fおよび残雪係数テーブル12eに格納する(S109)。残雪係数算出部11eは、処理を発電出力算出部11fに移行させる。
【0062】
次に、発電出力算出部11fは、予測情報テーブル12fから、設備係数、発電容量、残雪係数および日射量情報を取得する(S112)。発電出力算出部11fは、これらの情報を式(4)に入力して予測すべき時点の発電出力を算出する(S112)。発電出力算出部11fは、算出された発電出力を予測情報テーブル12fに格納する(S112)。なお、発電出力算出部11fは、残雪判定部11dから残雪係数“1”が入力されても、上記と同様の処理を実行する(S110)。また、発電出力算出部11fは、積雪係数算出部11bから積雪係数が入力された場合、上記の処理における残雪係数を積雪係数に置き換えて、同様の処理を実行する(S111)。太陽光発電出力予測装置10は、処理を終了する。
【0063】
尚、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得るとともに、本発明にはその等価物も含まれる。例えば、以下のような実施形態も含まれるものとする。
【0064】
===その他の実施形態===
<<発電出力直線作成部11a>>
上記において、演算処理部11には発電出力直線作成部11aが含まれるとして記載したが、これに限定されない。発電出力直線作成部11aはなくてもよく、この場合、積雪係数算出部11bが過去情報テーブル12aに基づいて近似式を作成して積雪係数を算出するか、もしくは、近似式を作成せずに、過去情報テーブル12aの所定の日射量に対する、非積雪時の発電出力と、積雪時の発電出力と、の比を算出して積雪係数を算出するか、により処理を実行する。
【0065】
<<積雪係数算出部11b>>
上記において、演算処理部11には積雪係数算出部11bが含まれるとして記載したが、これに限定されない。積雪係数算出部11bはなくてもよく、太陽光発電出力予測装置10とは別に設けられる、予め積雪係数を格納しているデータベースから積雪係数を取得してもよい。
【0066】
<<重回帰モデル作成部11c>>
上記において、演算処理部11には重回帰モデル作成部11cが含まれるとして記載したが、これに限定されない。重回帰モデル作成部11cはなくてもよく、太陽光発電出力予測装置10とは別に設けられ、降雪が終了した時点の積雪係数を予め格納しているデータベースから当該積雪係数を取得してもよい。
【0067】
上記において、重回帰モデル作成部11cが重回帰モデルを作成するための各種情報は、一例を示すものであり、重回帰モデルを作成するための説明変数となる情報を増減させてもよい。例えば、天候情報に“快晴”を示す情報や、設備情報に“有機薄膜”や“色素増感”を示す情報を追加してもよい。
【0068】
<<残雪判定部11d>>
上記において、演算処理部11には残雪判定部11dが含まれるとして記載したが、残雪判定部11dはなくてもよい。残雪判定部11dが無くてもよい理由は、残雪が無い状態を判定することによる発電出力を計算するときの計算の簡略化は図れないが、発電出力の計算結果に影響を及ぼすものではないためである。
【0069】
<<残雪係数算出部11e>>
上記において、残雪係数算出部11eは一次関数の補正関数を用いて残雪係数を算出しているように説明したが、これに限定されない。残雪係数算出部11eは二次関数の補正関数を用いて残雪係数を算出してもよい。これにより、一時関数を用いる場合と比較して、経過時間に対する残雪係数の上昇が大きくなる。
【0070】
<<記憶部12>>
上記において、記憶部12における各種テーブルを示したが、各種テーブルに格納されている項目は限定されるものではない。記憶部12の各種テーブルには、演算処理部11において計算できる項目が記憶されていればよい。
【0071】
===まとめ===
以上説明したように、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10は、非積雪時における第1日射量に対応する太陽光発電設備100の第1発電出力と、積雪時における第1日射量に対応する太陽光発電設備100の第2発電出力と、に基づいて、第1発電出力と第2発電出力の比を示す積雪係数を算出する積雪係数算出部11bと、降雪が終了した第1時点から時間経過にともなって太陽光発電設備100のパネル上の残雪が減少していくことを考慮するように、第1時点における積雪係数と、第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出する残雪係数算出部11eと、残雪係数と、現在又は将来の第2時点における第2日射量と、に基づいて、太陽光発電設備100の発電出力を算出する発電出力算出部11fと、を備える。本実施形態によれば、降雪が終了した後において、時間経過とともに太陽光発電設備100のパネル上の残雪が少なくなることによる発電出力の変化を考慮するため、発電出力の予測を正確に行うことができる。
【0072】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10は、太陽光発電設備100の設置地点において、過去における、積雪係数と、積雪深と、気象情報と、に基づいて、重回帰分析することにより、第1時点における、非積雪時の第3日射量に対応する太陽光発電設備100の発電出力と、積雪時の第3日射量に対応する太陽光発電設備100の発電出力と、の比を示す予測積雪係数を算出するための重回帰モデルを作成する重回帰モデル作成部11cをさらに備え、残雪係数算出部11eは、重回帰モデルと、第1時点における積雪深、気象情報と、に基づいて、予測積雪係数を算出するとともに、第1時点における予測積雪係数と、第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出することを特徴とする。本実施形態によれば、残雪係数を算出する過程において過去の各種情報に基づいて重回帰分析するため、発電出力の予測精度を向上できる。
【0073】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の重回帰モデル作成部11cは、太陽光発電設備100の設置地点において、過去における、積雪係数と、積雪深と、気象情報と、太陽光発電設備100の設備情報と、に基づいて、重回帰分析することにより、予測積雪係数を算出するための重回帰モデルを作成し、残雪係数算出部11eは、重回帰モデルと、第1時点における積雪深、気象情報および設備情報と、に基づいて、予測積雪係数を算出するとともに、第1時点における予測積雪係数と、第1時点から時間の経過とともに値が増大する補正関数と、に基づいて、第1時点から時間の経過とともに値が増大する残雪係数を算出することを特徴とする。本実施形態によれば、太陽光発電設備100におけるパネル角度やパネル材質などの設備情報を考慮して発電出力を予測するため、より正確に発電出力を予測できる。
【0074】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の残雪係数算出部11eは、補正関数が第1時点から経過する時間の一次関数として残雪係数を算出することを特徴とする。本実施形態によれば、降雪終了から時間経過とともに徐々に残雪係数を変化させることができる。
【0075】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の残雪係数算出部11eは、補正関数が第1時点から経過する時間の二次関数として残雪係数を算出することを特徴とする。本実施形態によれば、一時関数と比較して、降雪終了から時間経過とともに増加する残雪係数の変化を大きくできるため、気温の上昇が大きい地域の予測において、効果を高められる。
【0076】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10は、降雪が終了した第1時点から所定の時間を経過したとき、太陽光発電設備100のパネル上に残雪がないことを判定するとともに、残雪係数を所定の値に設定する残雪判定部11dをさらに備える。本実施形態によれば、所定時間を経過すると太陽光発電設備100のパネル上に残雪がないと判定できるため、計算の省力化が図れる。
【0077】
又、本実施形態に係る太陽光発電出力予測装置10の積雪係数算出部11bは、非積雪時における第1日射量と第1発電出力との関係および積雪時における第1日射量と第2発電出力との関係を近似式で算出することを特徴とする。本実施形態によれば、近似式を利用して積雪係数を算出するため、発電出力を予測するための計算を簡単にすることができる。
【符号の説明】
【0078】
10 太陽光発電出力予測装置
11b 積雪係数算出部
11c 重回帰モデル作成部
11d 残雪判定部
11e 残雪係数算出部
11f 発電出力算出部
100 太陽光発電設備
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11