特許第6794883号(P6794883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794883
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】電磁シールド部品及びワイヤハーネス
(51)【国際特許分類】
   H05K 9/00 20060101AFI20201119BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20201119BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20201119BHJP
   H01R 4/64 20060101ALI20201119BHJP
   H01R 4/62 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   H05K9/00 L
   H01B7/00 301
   H01R13/6592
   H01R4/64 F
   H01R4/62 A
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-50385(P2017-50385)
(22)【出願日】2017年3月15日
(65)【公開番号】特開2018-156991(P2018-156991A)
(43)【公開日】2018年10月4日
【審査請求日】2019年6月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】清水 武史
(72)【発明者】
【氏名】馬場 裕隆
【審査官】 五貫 昭一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2012−226832(JP,A)
【文献】 特開2007−80692(JP,A)
【文献】 特開平9−228079(JP,A)
【文献】 特開2016−8755(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 9/00
H01B 7/00
H01R 4/62
H01R 4/64
H01R 13/6592
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性を有する筒状部材と、
金属製の素線が筒状に編み込まれてなる編組部材と、
前記編組部材における前記筒状部材に外挿された部位の外周面に装着され、前記編組部材を内周側に締め付けて前記筒状部材に対して連結するものであり、前記編組部材に対して異種金属からなる環状の連結部材とを備えた電磁シールド部品であって、
前記連結部材の内周面に絶縁皮膜が設けられており、前記絶縁皮膜は、金属薄片を含んで構成されていることを特徴とする電磁シールド部品。
【請求項2】
請求項1に記載の電磁シールド部品において、
前記絶縁皮膜は、前記連結部材の表面全体に設けられていることを特徴とする電磁シールド部品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の電磁シールド部品と、前記電磁シールド部品内に挿通される電線とを備えたことを特徴とするワイヤハーネス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば車両用のワイヤハーネスに用いられる電磁シールド部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば特許文献1に示されるように、車両に搭載されるワイヤハーネスでは、電磁ノイズ対策として、電線の周囲が電磁シールド部品に覆われている。電磁シールド部品は、導電性を有する筒状部材と、導電性を有する素線が筒状に編み込まれてなる編組部材とを備えている。そして、それら筒状部材と編組部材の端部同士が連結部材にて連結されて一連の筒体を構成しており、該筒体の内部に挿通される電線を電磁シールドするようになっている。また、上記連結部材は、筒状部材の端部に外挿された編組部材を外周側から締め付けて、編組部材を筒状部材の外周面とで挟持するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−280814号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のような電磁シールド部品では、編組部材と連結部材とが互いに異種金属からなる場合、編組部材と連結部材との接触部分に水が触れることで電食(異種金属接触腐食)が発生する問題があった。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、その目的は、編組部材と連結部材との間における電食の発生を抑制できる電磁シールド部品及びワイヤハーネスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決する電磁シールド部品は、導電性を有する筒状部材と、金属製の素線が筒状に編み込まれてなる編組部材と、前記編組部材における前記筒状部材に外挿された部位の外周面に装着され、前記編組部材を内周側に締め付けて前記筒状部材に対して連結するものであり、前記編組部材に対して異種金属からなる環状の連結部材とを備えた電磁シールド部品であって、前記連結部材の内周面に絶縁皮膜が設けられている。
【0007】
この構成によれば、連結部材の主となる金属体と編組部材との間に絶縁皮膜が介されるため、編組部材と連結部材との間で異種金属同士が接触することを抑制でき、その結果、編組部材と連結部材との間における電食の発生を抑制できる。
【0008】
上記電磁シールド部品において、前記絶縁皮膜は、前記連結部材の表面全体に設けられている。
絶縁皮膜が連結部材の表面全体に設けられるため、編組部材と連結部材との間における電食の発生をより効果的に抑制できる。
【0009】
上記課題を解決するワイヤハーネスは、上記のいずれかに記載の電磁シールド部品と、前記電磁シールド部品内に挿通される電線とを備える。
この構成によれば、上記のいずれかに記載の効果と同様の効果を奏するワイヤハーネスを提供できる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の電磁シールド部品及びワイヤハーネスによれば、編組部材と連結部材との間における電食の発生を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態のワイヤハーネスの概略構成図。
図2】同形態のシールドパイプと編組部材との連結部位における軸方向に沿った断面を示す断面図。
図3】同形態のシールドパイプと編組部材との連結部位における軸直交断面を示す断面図。
図4】同形態のコネクタハウジングと編組部材との連結部位における軸直交断面を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、電磁シールド部品及びワイヤハーネスの一実施形態について説明する。なお、図面では、説明の便宜上、構成の一部を誇張又は簡略化して示す場合がある。また、各部分の寸法比率についても、実際と異なる場合がある。
【0013】
図1に示すように、本実施形態のワイヤハーネス10は、ハイブリッド車や電気自動車等において、例えば車両後部に設置された高圧バッテリ11と車両前部に設置されたインバータ12とを接続するために、車両の床下等を通るように配索される。インバータ12は、車両走行の動力源となる車輪駆動用モータ(図示略)と接続され、高圧バッテリ11の直流電力から交流電力を生成し、該交流電力をモータに供給する。高圧バッテリ11は、数百ボルトの電圧を供給可能なバッテリである。
【0014】
ワイヤハーネス10は、高圧電線を含む電線束13と、電線束13の外周を覆う電磁シールド部品14とを備えている。電線束13の一端部はコネクタC1を介して高圧バッテリ11と接続され、他端部はコネクタC2を介してインバータ12と接続されている。
【0015】
電磁シールド部品14は、円筒状のシールドパイプ15と、シールドパイプ15の両端部の各々に連結された筒状の編組部材16と、各編組部材16のシールドパイプ15とは反対側の端部に連結された各コネクタC1,C2のコネクタハウジング17(シェル)とを備えている。また、電磁シールド部品14は、シールドパイプ15と各編組部材16とを連結する第1連結部材18と、各編組部材16と各コネクタハウジング17とを連結する第2連結部材19とを備えている。シールドパイプ15、各編組部材16及び各コネクタハウジング17は、第1及び第2連結部材18,19にて連結されることで、互いに電気的に導通された一連の筒体を構成している。また、シールドパイプ15、各編組部材16及び各コネクタハウジング17は、互いに同種の金属材料(本実施形態ではアルミニウム系金属材料)からなる。
【0016】
シールドパイプ15は、車両の床下を通って配索されるものであり、該床下の構成に応じた所定形状に曲げて配索される。シールドパイプ15は、内部に挿通された電線束13を一括してシールドするとともに、電線束13を飛び石等から保護する。
【0017】
各編組部材16は、複数本の金属素線(本実施形態ではアルミニウム系金属素線)が編み込まれて構成された筒状の部材であり、可撓性を有する。各編組部材16は、電線束13におけるシールドパイプ15の端部から導出された部位の外周を一括してシールドしている。なお、各編組部材16の外周は、例えばコルゲートチューブ等の外装材Cによって包囲されている。また、シールドパイプ15と編組部材16との接続箇所には、該接続箇所の外周を覆って水の浸入を防止するゴム製のグロメットGが装着されている。
【0018】
図2及び図3に示すように、編組部材16の一端部は、シールドパイプ15の一端部に外挿されており、該編組部材16のシールドパイプ15に外挿された部位(外挿部16a)は、シールドパイプ15の外周面の円形に倣った円筒状をなしている。編組部材16の外挿部16aは、シールドパイプ15の外周面に直接的に接触しており、シールドパイプ15と編組部材16との間の電気的導通が図られている。
【0019】
編組部材16の外挿部16aの外周面には、円環状の第1連結部材18が装着されている。本実施形態の第1連結部材18は、ステンレス鋼からなるかしめリングであり、編組部材16の外挿部16aを内周側に締め付けてシールドパイプ15の外周面との間で挟持している。そして、第1連結部材18の表面全体には、絶縁皮膜21を形成する表面処理が施されている。つまり、第1連結部材18の内周面、外周面、及び電磁シールド部品14の長手方向(電線束13の長手方向)の両側面が絶縁皮膜21にて覆われている。また、本実施形態の絶縁皮膜21は、珪素系材料からなるとともに、その珪素系材料内に微細な金属薄片22を含んで構成されている(図2参照)。
【0020】
図4に示すように、各編組部材16の他端部(シールドパイプ15とは反対側の端部)は、コネクタハウジング17の楕円筒部17aに外挿されており、該編組部材16の楕円筒部17aに外挿された部位(外挿部16b)は、楕円筒部17aの外周面に倣った楕円筒状をなしている。編組部材16の外挿部16bは、楕円筒部17aの外周面に直接的に接触しており、楕円筒部17aと編組部材16との間の電気的導通が図られている。
【0021】
編組部材16の外挿部16bの外周面には、楕円環状の第2連結部材19が装着されている。本実施形態の第2連結部材19は、上記第1連結部材18と同様に、ステンレス鋼からなるかしめリングであり、編組部材16の外挿部16bを内周側に締め付けて楕円筒部17aの外周面との間で挟持している。また、第2連結部材19の表面全体には、上記第1連結部材18の絶縁皮膜21と同様の絶縁皮膜23が形成されている。
【0022】
次に、本実施形態の作用について説明する。
第1連結部材18(の主となるステンレス鋼)の内周面と編組部材16の外周面との間に絶縁皮膜21が介在される。これにより、第1連結部材18と編組部材16との電気的絶縁が図られ、その結果、第1連結部材18と編組部材16との間における電食の発生が抑制されている。また、本実施形態の第1連結部材18では、絶縁皮膜21が内周面だけでなく、外周面及び両側面(電磁シールド部品14の長手方向における両側面)にも形成されているため、第1連結部材18と編組部材16との間における電食の発生をより効果的に抑制できる。なお、上記の第1連結部材18における作用は、第2連結部材19においても同様に生じる。
【0023】
次に、本実施形態の効果を記載する。
(1)第1連結部材18は、編組部材16を内周側に締め付けてシールドパイプ15に対して連結するものであり、編組部材16に対して異種金属からなる。そして、第1連結部材18の内周面に絶縁皮膜21が設けられている。この構成によれば、編組部材16と第1連結部材18の主となる金属体(ステンレス鋼)との間に絶縁皮膜21が介されるため、編組部材16と第1連結部材18との間で異種金属同士が接触することを抑制でき、その結果、編組部材16と第1連結部材18との間における電食の発生を抑制できる。なお、編組部材16をコネクタハウジング17の楕円筒部17aに対して連結する第2連結部材19においても同様に絶縁皮膜23が形成され、上記と同様の効果を奏する。
【0024】
(2)絶縁皮膜21が第1連結部材18の表面全体に設けられるため、編組部材16と第1連結部材18との間における電食の発生をより効果的に抑制できる。具体的には、万が一、第1連結部材18の全体を覆うように被水した場合であっても、編組部材16と第1連結部材18との間における電食の発生を抑制できる。また、第2連結部材19においても同様にその表面全体に絶縁皮膜23が設けられるため、同様の効果を奏する。
【0025】
(3)絶縁皮膜21,23は、微細な金属薄片22を含んで構成されるため、金属薄片22の犠牲防食作用によって編組部材16の電食をより一層抑制できる。なお、アルミニウム系金属材料からなる編組部材16に対しては、金属薄片22を亜鉛系金属材料とすることが好ましい。
【0026】
なお、上記実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、第1及び第2連結部材18,19をかしめリングとしたが、これに限らず、例えば、ホースクランプなどに変更可能である。
【0027】
・上記実施形態では、第1及び第2連結部材18,19の表面全体に絶縁皮膜21,23が形成されたが、これに特に限定されるものではなく、例えば、第1連結部材18の内周面のみに絶縁皮膜21を形成し、第2連結部材19の内周面のみに絶縁皮膜23を形成してもよい。
【0028】
・絶縁皮膜21,23の構成材料は珪素系材料に限定されるものではなく、編組部材16と第1及び第2連結部材18,19との間の電気的絶縁を図ることができる材料であれば、珪素系材料以外に変更可能である。
【0029】
・金属薄片22は必ずしも絶縁皮膜21,23に含まれる必要はなく、絶縁皮膜21,23から金属薄片22を省いた構成としてもよい。
・上記実施形態の絶縁皮膜21,23の構成は一例であって、第1及び第2連結部材18,19や編組部材16の構成に応じて適宜変更可能である。例えば、カチオン電着塗装によって形成される樹脂からなる絶縁皮膜や、それ以外の方法によって形成される絶縁皮膜としてもよい。
【0030】
・シールドパイプ15、編組部材16、コネクタハウジング17、第1及び第2連結部材18,19の各々の材質は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、シールドパイプ15、編組部材16、及びコネクタハウジング17は、シールド機能を果たすことが可能な導電性材料であれば、アルミニウム系金属材料以外の材料に変更可能である。
【0031】
・上記実施形態のシールドパイプ15として、例えば、非金属材料(例えば樹脂材料)からなるパイプ本体の外周面に導電性を有するシールド層を積層した構造のシールドパイプや、そのシールド層の外周面に更に樹脂層を積層した構造のシールドパイプを用いてもよい。なお、後者のシールドパイプの場合には、外層の樹脂層の一部を剥いで露出させたシールド層に編組部材16が接続される。
【0032】
・上記実施形態の電磁シールド部品14からシールドパイプ15を省略し、該シールドパイプ15で覆われていた部位を編組部材16でカバーする構成としてもよい。
・上記実施形態の電線束13に含まれる電線の構成は、車両構成に応じて適宜変更される。例えば、低圧バッテリと各種低電圧機器(例えばランプ、カーオーディオ等)とを接続する低圧電線を電線束13に含んでもよい。また、電線束13に高圧電線を含まない構成(例えば低圧電線のみの構成)としてもよい。
【0033】
・車両における高圧バッテリ11とインバータ12の配置関係は、上記実施形態に限定されるものではなく、車両構成に応じて適宜変更してもよい。また、上記実施形態では、高圧バッテリ11は、ワイヤハーネス10を介してインバータ12と接続されるが、インバータ12以外の高電圧機器に接続される構成としてもよい。
【0034】
・上記実施形態では、高圧バッテリ11とインバータ12とを繋ぐワイヤハーネス10に適用したが、これ以外に例えば、インバータ12と車輪駆動用モータとを繋ぐワイヤハーネスに適用してもよい。
【0035】
・上記した実施形態並びに各変形例は適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0036】
10…ワイヤハーネス
13…電線束
14…電磁シールド部品
15…シールドパイプ(筒状部材)
16…編組部材
17a…楕円筒部(筒状部材)
18…第1連結部材
19…第2連結部材
21,23…絶縁皮膜
図1
図2
図3
図4