(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記弾性体は、前記カラムオーブンにおける前記開口部が形成された面と前記断熱材における前記開口部側の面とがなす角度が、8°以上の所定角度になるまで前記開閉扉が閉じられたときに、前記断熱材から受ける力により変形することを特徴とする請求項1に記載のガスクロマトグラフ。
前記少なくとも2つの折曲部には、鋭角で折り曲げられた第1折曲部と、前記第1折曲部とは逆方向に鈍角で折り曲げられた第2折曲部とが含まれることを特徴とする請求項3に記載のガスクロマトグラフ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のガスクロマトグラフでは、開閉扉が完全に閉じられていない状態で分析動作が開始されることがあり、不具合が生じていた。以下、この点について詳しく説明する。
図7は、従来のガスクロマトグラフの開閉扉100、及び、その周辺の部材を示した断面図である。
【0007】
このガスクロマトグラフにおいて、オーブン101は、中空状のボックス形状に形成された本体側断熱材102を備えている。本体側断熱材102の一端部は、開放されている。本体側断熱材102の一端部の内部空間が開口部101aとして形成されている。本体側断熱材102の内部空間には、カラムやヒータなど(図示せず)が配置されている。開閉扉100は、一端部を中心として回動可能に構成されている。
【0008】
開閉扉100には、扉側断熱材103と板ばね104とが設けられている。扉側断熱材103は、開閉扉100の内面側に設けられている。板ばね104は、開閉扉100の内面と扉側断熱材103との間に配置されており、扉側断熱材103と接触している。
【0009】
開閉扉100がオーブン101側に向かって回転すると、扉側断熱材103が本体側断熱材102に密着する。これにより、オーブン101の開口部101aが閉塞される。開口部101aが閉塞された状態では、板ばね104が開閉扉100側に弾性変形する。そして、板ばね104の弾性力によって、扉側断熱材103が本体側断熱材102に押し付けられる。
【0010】
図7では、開閉扉100がオーブン101側に向かって回転し、扉側断熱材103が本体側断熱材102に当接し始める状態が示されている。
図7の状態では、扉側断熱材103の一部(一端部)が本体側断熱材102の一部に当接しており、開口部101aがわずかに開放されている。
【0011】
この状態から開閉扉100がオーブン101側に向かってさらに回転されると、板ばね104が徐々に開閉扉100側に弾性変形し、扉側断熱材103に対して板ばね104からの弾性力が付与される。そして、開閉扉100に対してオーブン101から離間する方向に力が付与される。
【0012】
このように、
図7に示す状態、すなわち、開口部101aがわずかに開放されている状態から、開閉扉100がオーブン101側に向かってさらに回転されると、扉側断熱材103(開閉扉100)に対して板ばね104からの弾性力が付与される。
【0013】
そのため、ユーザが開閉扉100をオーブン101側に向かって回転させる動作を行ったが、開口部101aが完全に閉塞されていなかった場合など、開閉扉100が、
図7に示す位置、又は、
図7に示す位置よりもわずかにオーブン101から離間する位置に配置される場合には、開閉扉100に対して板ばね104の弾性力が付与されない状態となる。その結果、開閉扉100の位置が変わらず(開閉扉100が変位せず)、開口部101aがわずかに開放されている状態が維持されてしまう。
【0014】
このように、開口部101aがわずかに開放されている状態(開閉扉100が完全に閉じられていない状態)では、検知センサが熱漏れを検知しないことがある。そして、その場合には、開口部101aがわずかに開放されている状態で、分析動作が開始されてしまう。
【0015】
ガスクロマトグラフにおいて、開口部101aがわずかに開放されている状態で分析動作が開始されると、ユーザが熱風に触れる可能性や、ガスクロマトグラフを構成する樹脂部品が溶ける可能性があるという不具合が生じる。
【0016】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、開閉扉がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できるガスクロマトグラフを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
(1)本発明に係るガスクロマトグラフは、カラムオーブンと、開閉扉と、断熱材と、弾性体とを備える。前記カラムオーブンは、開口部を有し、内部にカラムが収容される。前記開閉扉は、回動軸を中心に回動することにより前記開口部を開閉する。前記断熱材は、前記開閉扉における前記開口部側に設けられ、前記開閉扉を閉じた状態で前記開口部を閉塞する。前記弾性体は、前記開閉扉に設けられ、前記開閉扉を閉じる際に前記断熱材から受ける力により変形し、変形した状態で前記開閉扉が閉じられることによって、前記断熱材を前記開口部側に押圧する。前記開閉扉は、前記回動軸側と反対側の端部と、前記カラムオーブンとの間で隙間が生じる場合に、前記弾性体からの力を受けて、前記開口部の開放を認識可能な位置まで前記開口部から離間するように変位する。
【0018】
このような構成によれば、開閉扉が完全に閉じられておらず、開閉扉における回動軸側と反対側の端部と、カラムオーブンとの間で隙間が生じる場合には、開閉扉に対して弾性体からの力(弾性力)を付与することにより、開口部の開放を認識可能な位置まで開閉扉を変位させることができる。
そのため、開閉扉における回動軸側と反対側の端部と、カラムオーブンとの間で隙間が生じる状態が維持されることを抑制できる。
その結果、開閉扉がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できる。
【0019】
(2)また、前記弾性体は、前記カラムオーブンにおける前記開口部が形成された面と前記断熱材における前記開口部側の面とがなす角度が、8°以上の所定角度になるまで前記開閉扉が閉じられたときに、前記断熱材から受ける力により変形してもよい。
【0020】
このような構成によれば、開閉扉を閉じるために、回動軸を中心として開閉扉をカラムオーブン側(開口部側)に回転させると、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が8°以上の所定角度になった時点で、弾性体が断熱材から受ける力により変形し始める。そして、断熱材に対して弾性体から力が加わり始める。
【0021】
そのため、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が所定角度(8°以上の所定角度)よりも小さい角度になった場合には、断熱材に対して弾性体からの力を付与させて、開閉扉を開ける方向に回転(変位)させることができる。
【0022】
その結果、開閉扉がわずかに開いた状態、すなわち、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が所定角よりも小さい角度になる状態が維持されることを抑制できる。
【0023】
このように、ガスクロマトグラフでは、断熱材に対して弾性体の力が加わり始める時点を、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が8°以上の所定角度になった時点にすることができる。よって、開閉扉がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できる。
【0024】
(3)また、前記弾性体は、板ばねからなってもよい。前記弾性体は、1対の固定部と、押圧部と、1対のばね部とを有してもよい。前記1対の固定部は、前記板ばねの両端部に形成され、前記開閉扉に固定される。前記押圧部は、前記板ばねの中央部に形成され、前記開閉扉が閉じられた状態で前記断熱材を押圧する。前記1対のばね部は、前記1対の固定部と前記押圧部との間に形成され、前記開閉扉が閉じられる際に変形する。
【0025】
このような構成によれば、断熱材は、1対のばね部の間に位置する押圧部によって開口部側に押圧される。
そのため、断熱材に対して、押圧部から安定した力を付与できる。
また、1対の固定部が開閉扉に固定されるため、板ばねを安定した状態で固定できる。
【0026】
(4)また、前記ガスクロマトグラフでは、前記角度が前記所定角度になるまで前記開閉扉が閉じられた状態で、前記1対のばね部と前記押圧部との境界を結ぶ直線が、前記開閉扉に対する前記1対の固定部の取付位置を結ぶ直線とほぼ同じ位置、又は、前記開口部側に位置してもよい。
【0027】
このような構成によれば、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が所定角度になるまで開閉扉が閉じられた状態で、押圧部が開口部に近い位置に配置されるように、板ばねを構成できる。
【0028】
そのため、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が所定角度になるまで開閉扉が閉じられた状態において、断熱材を開口部に近い位置に配置できる。その結果、前記所定角度を大きくすることができる。
【0029】
(5)また、前記各ばね部は、少なくとも2つの折曲部を有してもよい。
【0030】
このような構成によれば、各ばね部が1つの折曲部を有する場合に比べて、小さい力で各ばね部を変形させるできる。換言すれば、各ばね部が1つの折曲部を有する場合に比べて、ばね定数を小さくできる。
そのため、開閉扉を閉じるために必要な力を小さくでき、開閉扉を閉じる際の作業者の負担を小さくできる。
【0031】
(6)また、前記少なくとも2つの折曲部には、第1折曲部と、第2折曲部とが含まれてもよい。前記第1折曲部は、鋭角で折り曲げられる。前記第2折曲部は、前記第1折曲部とは逆方向に鈍角で折り曲げられる。
【0032】
このような構成によれば、板ばねをバランスよく構成できる。
(7)また、前記第2折曲部は、前記第1折曲部よりも前記押圧部側に位置してもよい。
【0033】
このような構成によれば、板ばねを一層バランスよく構成できる。
【発明の効果】
【0034】
本発明によれば、カラムオーブンにおける開口部が形成された面と断熱材における開口部側の面とがなす角度が所定角度よりも小さい角度になった場合には、断熱材に対して弾性体からの力を付与させて、開閉扉をさらに開ける方向に回転させることができる。そのため、開閉扉がわずかに開いた状態で維持されることを抑制できる。よって、開閉扉がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0036】
1.ガスクロマトグラフの全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係るガスクロマトグラフ1の構成例を示した概略図である。
図2は、
図1のA−A線に沿う断面図である。
【0037】
ガスクロマトグラフ1は、キャリアガスとともに試料ガスをカラム2内に供給することにより分析を行うためのものであり、上記カラム2以外に、カラムオーブン3、試料導入部4及び検出器5などを備えている。ガスクロマトグラフ1では、これらの部材は、筐体10内に配置されている。
カラム2は、例えば、キャピラリカラムからなる。カラム2は、ヒータ及びファンなど(いずれも図示せず)とともにカラムオーブン3内に収容されている。
【0038】
カラムオーブン3は、カラム2を加熱するためのものであり、分析時にはヒータ及びファンを適宜駆動させる。カラムオーブン3は、外装31と、内装32と、本体側断熱材33とを備えている。外装31は、中空状のボックス形状に形成されている。内装32は、外装31よりも小さい中空状のボックス形状に形成されており、外装31内に配置されている。内装32の前端部、及び、外装31の前端部は、それぞれ開放されている。内装32の前端部(一端部)の内部空間が開口部32Aである。本体側断熱材33は、外装31と内装32との間の領域に充填されている。カラムオーブン3における前方側の面が、密着面34である。
【0039】
筐体10には、開閉扉11が取り付けられている。開閉扉11は、筐体10に対して回動可能に構成されている。開閉扉11が閉じられた状態において、内装32の開口部32Aは、開閉扉11によって閉塞される。
【0040】
試料導入部4は、カラム2内にキャリアガス及び試料ガスを導入するためのものであり、その内部に試料気化室(図示せず)が形成されている。この試料気化室には、液体試料が注入され、試料気化室内で気化された試料が、キャリアガスとともにカラム2内に導入される。また、試料気化室には、ガス供給流路6及びスプリット流路7が連通している。
ガス供給流路6は、試料導入部4の試料気化室内にキャリアガスを供給するための流路である。
【0041】
スプリット流路7は、スプリット導入法によりカラム2内にキャリアガス及び試料ガスを導入する際に、試料気化室内のガス(キャリアガス及び試料ガスの混合ガス)の一部を所定のスプリット比で外部に排出するための流路である。
【0042】
検出器5は、例えば、水素炎イオン化検出器(FID)や、炎光光度検出器(FPD)により構成される。検出器5は、カラム2から導入されるキャリアガスに含まれる各試料成分を順次検出する。
【0043】
ガスクロマトグラフ1において試料の測定が行われる場合には、まず、開閉扉11が閉じられて、開口部32Aが開閉扉11によって閉塞される。そして、この状態において、分析対象となる試料が試料導入部4に注入される。試料は、試料気化室において気化される。また、試料導入部4の試料気化室には、ガス供給流路6を介してキャリアガスが供給される。
【0044】
試料気化室内で気化された試料は、キャリアガスとともにカラム2内に導入される。試料に含まれる各試料成分は、カラム2内を通過する過程で分離されて、検出器5に順次導入される。
【0045】
そして、検出器5において、カラム2から導入されるキャリアガスに含まれる各試料成分が順次検出される。ガスクロマトグラフ1では、検出器5の検出信号に基づいてクロマトグラムが生成される。ユーザは、得られたクロマトグラムを確認して、各種分析を行う。
【0046】
2.開閉扉及びその周辺の部材の詳細構成
図3は、ガスクロマトグラフ1の開閉扉11、及び、その周辺の部材を示した断面図であって、開閉扉が開いた状態を示している。
図3では、ガスクトマトグラフ1を上方側から見た状態の断面図を示している。
開閉扉11は、平板部111と、1対の取付部112とを備えている。
平板部111は、側面視矩形状の平板状に形成されており、所定の厚みを有している。
1対の取付部112は、平板部111の両端部の内面(開口部32A側の面)に設けられている。
【0047】
開閉扉11は、その一端部が筐体10に対して相対回転可能に取り付けられている。これにより、開閉扉11は、上下方向に延びる回転軸Bを中心にして回動可能である。開閉扉11には、弾性体の一例としての板ばね13と、押圧部材14とが設けられている。
【0048】
図4は、板ばね13を示した側面図である。
図5は、板ばね13を示した斜視図である。
板ばね13は、長尺な板状の部材であって、例えば、金属からなる。板ばね13は、板状の部材が複数箇所で折り曲げられた形状を有している。板ばね13は、1対の固定部131と、1対のばね部132と、押圧部133とを備えている。
【0049】
1対の固定部131は、板ばね13の両端部に形成されている(両端部を構成している)。1対の固定部131は、矩形状に形成されており、板ばね13が延びる方向(
図4の左右方向)に沿っている。1対の固定部131のそれぞれには、複数(2つ)の貫通孔131Aが形成されている。
【0050】
1対のばね部132のそれぞれは、1対の固定部131のそれぞれの内側端部から連続して中央に向かって延びている。1対のばね部132のそれぞれは、1対の固定部131から、厚み方向の一方側(
図4における下方側)に向かって膨らんでいる(突出している)。1対のばね部132のそれぞれは、2つの折曲部を有している。具体的には、1対のばね部132のそれぞれは、第1折曲部134と、第2折曲部135とを有している。
【0051】
第1折曲部134は、固定部131側に位置しており、第2折曲部135は、第1折曲部134よりも中央側(押圧部133側)に位置している。第1折曲部134では、板ばね13を構成する板が鋭角に折り曲げられている。第1折曲部134における板の折曲角度α1は、板と板とがなす角度であって、厚み方向他方側(
図4における上方側)の角度である。第1折曲部134では、この角度α1が鋭角になっている。なお、角度α1は、例えば、30〜70°であって、好ましくは、50°である。
【0052】
第2折曲部135では、板ばね13を構成する板が、鈍角に折り曲げられている。第2折曲部135における板の折曲角度α2は、板と板とがなす角度であって、厚み方向一方側(
図4における下方側)の角度である。第2折曲部135では、この角度α2が鈍角になっている。このように、第2折曲部135では、板ばね13を構成する板が、第1折曲部134とは逆方向に折り曲げられている。なお、角度α2は、例えば、115〜155°であって、好ましくは、135°である。
【0053】
押圧部133は、長尺な平板状に形成されており、板ばね13の中央部に形成(配置)されている。具体的には、押圧部133は、1対のばね部132のそれぞれの内側端部に連続している。押圧部133には、複数(2つ)の貫通孔133Aが形成されている。
厚み方向(
図4の上下方向)において、押圧部133は、1対の固定部131とほぼ同じ位置、又は、1対の固定部131よりも他方側(
図4における上方側)に位置している。
【0054】
図3に示すように、板ばね13の1対の固定部131のそれぞれは、開閉扉11の1対の取付部112のそれぞれに固定されている。具体的には、固定部131の貫通孔131Aにねじなどの固定具が挿通され、この固定具が取付部112に取り付けられることで、板ばね13が開閉扉11に固定されている。この状態において、板ばね13の押圧部133は、開閉扉11の平板部111の内面に対して、平行であって、かつ、間隔を隔てて配置されている。
押圧部材14は、開閉扉11に固定された板ばね13に取り付けられてる。押圧部材14は、保持部材141と、扉側断熱材142とを備えている。
【0055】
保持部材141は、断面形状がU字状の部材であって、板ばね13の押圧部133に取り付けられている。具体的には、押圧部133の貫通孔133Aにねじなどの固定具が挿通され、この固定具が保持部材141に取り付けられることで、板ばね13と保持部材141とが固定されている。
【0056】
扉側断熱材142は、側面視矩形状の平板状に形成されており、所定の厚みを有している。扉側断熱材142は、保持部材141に保持されている。扉側断熱材142における保持部材142に接触する面と反対側の面が、閉塞面142Aである。
【0057】
3.開閉動作
図6は、ガスクロマトグラフ1の開閉扉11、及び、その周辺の部材を示した断面図であって、開閉扉11が回転して、扉側断熱材142が本体側断熱材33に当接する当初の状態を示している。
【0058】
図3に示す状態から、開閉扉11がカラムオーブン3側に回転されると(開閉扉11が閉じられると)、
図6に示すように、まず、開閉扉11に設けられた扉側断熱材142の端部が、カラムオーブン3の本体側断熱材33の端部に当接する。
【0059】
この状態において、1対のばね部132と押圧部133との境界136を結ぶ直線は、開閉扉11に対する1対の固定部131の取付位置137を結ぶ直線とほぼ同じ位置、又は、開口部32A側に位置している。なお、1対の固定部131の取付位置137は、1対の固定部131における貫通孔131A(
図5参照)の位置である。
【0060】
また、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βは、8°以上の所定角度となっている。すなわち、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが、8°以上の所定角度になるまで開閉扉11が閉じられたときに、扉側断熱材142が本体側断熱材33に当接し始める。そして、板ばね13が扉側断熱材142から受ける力によって変形し始め、扉側断熱材142に板ばね13からの力(弾性力)が加えられる。
【0061】
このような構成により、例えば、ユーザが、開閉扉11をカラムオーブン3側に向かって回転させる動作を行ったが、開口部32Aが完全に閉塞されていなかった場合などでも、板ばね13の弾性力により、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが所定角度以上になる状態が維持される。
【0062】
換言すれば、開閉扉11における回転軸B側と反対側の端部と、カラムオーブン3との間で隙間(わずかな間隔)が生じている場合には、開閉扉11に対して板ばね13からの弾性力が付与される。そして、開閉扉11は、開口部32Aの開放を認識可能な位置まで(角度βが8°以上の所定角度になるまで)、開口部32Aから離間するように変位(回転)する。
なお、角度βは、例えば、8〜15°であり、好ましくは、10°である。
【0063】
図6に示す状態から、開閉扉11がさらにカラムオーブン3側に向かって回転されると、扉側断熱材142が本体側断熱材33に徐々に押し付けられることにより、扉側断熱材142が本体側断熱材33から力を受ける。そして、板ばね13(板ばね13の押圧部133)は、扉側断熱材142からカラムオーブン3と反対側に向かう力(押圧力)を受ける。
【0064】
これにより、板ばね13の1対のばね部132が、開閉扉11側に近づくように変形し始める(撓み始める)。このとき、板ばね13の1対のばね部132は、2つの折曲部(第1折曲部134及び第2折曲部135)を有しているため、1つの折曲部を有する場合(例えば、第2折曲部135がない場合)に比べて、小さい力で変形し始める(撓み始める)。
【0065】
そして、板ばね13の変形にともなって、押圧部材14(扉側断熱材142)が、開閉扉11側に変位する。また、扉側断熱材142に対しては、板ばね13の弾性力が付与される。開閉扉11が完全に閉じられた状態では、扉側断熱材142によって開口部32Aが閉塞されるとともに、変形した板ばね13の弾性力が扉側断熱材142に付与されることにより、扉側断熱材142が本体側断熱材33に押し付けられる。
【0066】
4.作用効果
(1)本実施形態によれば、ガスクロマトグラフ1では、開閉扉11における回転軸B側と反対側の端部と、カラムオーブン3との間で隙間が生じている場合には、開閉扉11に対して板ばね13からの弾性力が付与される。そして、開閉扉11は、開口部32Aの開放を認識可能な位置まで(角度βが8°以上の所定角度になるまで)、開口部32Aから離間するように変位(回転)する。
【0067】
そのため、開閉扉11における回動軸B側と反対側の端部と、カラムオーブン3との間で隙間が生じる状態が維持されることを抑制できる。
その結果、開閉扉11がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できる。
【0068】
(2)また、本実施形態によれば、ガスクロマトグラフ1では、
図6に示すように、開閉扉11を閉じるために、回動軸Bを中心として開閉扉11をカラムオーブン3側(開口部32A側)に回転させると、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが、8°以上の所定角度になった時点で、板ばね13が扉側断熱材142から受ける力により変形し始める。そして、扉側断熱材142に対して板ばね13から力が加わり始める。
【0069】
そのため、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが、所定角度(8°以上の所定角度)よりも小さい角度になった場合には、扉側断熱材142に対して板ばね13からの力を付与させて、開閉扉11を回転軸Bを中心として開ける方向に回転させることができる。
【0070】
その結果、例えば、ユーザが、開閉扉11をカラムオーブン3側に向かって回転させる動作を行ったが、開口部32Aが完全に閉塞されていなかった場合などでも、板ばね13の弾性力により、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが所定角度以上になる状態を維持できる。
よって、開閉扉11がわずかに開いた状態、すなわち、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが所定角よりも小さい角度になる状態が維持されることを抑制できる。
【0071】
このように、ガスクロマトグラフ1では、扉側断熱材142に対して板ばね13の力が加わり始める時点を、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが8°以上の所定角度になった時点にすることができる。よって、開閉扉11がわずかに開いた状態で分析動作が開始されることを抑制できる。
【0072】
(3)また、本実施形態によれば、
図5に示すように、板ばね13は、1対の固定部131と、1対のばね部132と、押圧部133とを有する。1対の固定部131は、板ばね13の両端部に形成され、押圧部133は、板ばね13の中央部に形成され、1対のばね部132は、1対の固定部131と押圧部133との間に形成される。
【0073】
そして、扉側断熱材142は、1対のばね部132の間に位置する押圧部133によって開口部32A側(カラムオーブン3側)に押圧される。
そのため、扉側断熱材142に対して、板ばね13の押圧部133から安定した力を付与できる。
また、板ばね13は、1対の固定部131が取付部112に取り付けられることで、開閉扉11に対して固定される。
そのため、板ばね13を安定した状態で固定できる。
【0074】
(4)また、本実施形態によれば、
図6に示すように、開閉扉11がカラムオーブン3側に回転されて、扉側断熱材142の端部が本体側断熱材33の端部に当接する状態において、1対のばね部132と押圧部133との境界136を結ぶ直線は、開閉扉11に対する1対の固定部131の取付位置137を結ぶ直線とほぼ同じ位置、又は、開口部32A側に位置している。
【0075】
そのため、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが、8°以上の所定角度になるまで開閉扉11が閉じられた状態で、押圧部133が開口部32Aに近い位置に配置されるように、板ばね13を構成できる。
【0076】
その結果、カラムオーブン3の密着面34と、扉側断熱材142の閉塞面142Aとがなす角度βが、8°以上の所定角度になるまで開閉扉11が閉じられた状態において、扉側断熱材142を開口部32Aに近い位置に配置できる。よって、角度βを大きくすることができる。
【0077】
(5)また、本実施形態によれば、
図4に示すように、板ばね13において、各ばね部132は、各ばね部132が1つの折曲部を有する場合(例えば、第2折曲部135がない場合)に比べて、小さい力で各ばね部132を変形させるできる。換言すれば、各ばね部132が1つの折曲部を有する場合に比べて、ばね定数を小さくできる。
【0078】
そのため、開閉扉11を閉じるために必要な力を小さくでき、開閉扉11を閉じる際の作業者の負担を小さくできる。
【0079】
(6)また、本実施形態によれば、
図4に示すように、板ばね13において、第1折曲部134は、鋭角で折り曲げられ、第2折曲部135は、第2折曲部135とは逆方向に鈍角で折り曲げられる。
【0080】
そのため、板ばね13をバランスよく構成できる。
【0081】
(7)また、本実施形態によれば、
図4に示すように、板ばね13において、第2折曲部135は、第1折曲部134よりも押圧部133側に位置している。
【0082】
そのため、板ばね13を一層バランスよく構成できる。
5.変形例
【0083】
上記した実施形態では、開閉扉11には、板ばね13が設けられ、この板ばね13によって、扉側断熱材142が押圧されるとして説明した。しかし、板ばね13以外の弾性体を開閉扉11に設け、この弾性体によって、扉側断熱材142が押圧される構成であってもよい。
【0084】
また、上記した実施形態では、板ばね13において、各ばね部132は、2つの折曲部(第1折曲部134及び第2折曲部135)を有するとして説明した。しかし、板ばね13において、ばね部132は、3つ以上の折曲部を有してもよい。