(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明は以下の順序で行う。
1.実施の形態(上面部の端部から延びる傾斜面を有するアームを備えた取っ手部の例)
2.変形例
変形例1(アームの上面部から離間した位置に把持部を配置した取っ手部の例)
変形例2(傾斜面を有しない取っ手部の例)
変形例3(回動軸における取っ手部と収納部との嵌合構造に関する他の構成例)
3.その他の変形例
【0010】
<1.実施の形態>
[紙幣入出金機1全体の構成]
図1は、本開示の一実施の形態に係る媒体処理装置としての紙幣入出金機1の外観構成例を、模式的に斜視図にて表したものである。この紙幣入出金機1は、例えば金融機関等に設置されるものであり、利用者との間で、媒体としての紙幣9に関する各種処理(入金処理や出金処理等)を行う機器である。なお、紙幣入出金機1は、本開示における「媒体処理装置」の一具体例に対応していると共に、紙幣9は、本開示における「媒体」の一具体例に対応している。
【0011】
この紙幣入出金機1は、
図1に示したように、本体部10と、この本体部10の内部に着脱可能(装填可能)に構成された、1または複数(この例では3つ)の紙幣収納庫(紙幣収納カセット)2とを備えている。また、本体部10は、操作カバー部11、下部ユニット12および搬送ユニット13を有している。なお、紙幣収納庫2は、本開示における「媒体収納庫」(媒体収納カセット)の一具体例に対応している。
【0012】
紙幣収納庫2は、紙幣9の補充や回収などを行うためのものであり、
図1に示したように、紙幣9を内部に収納可能に構成されている。この紙幣収納庫2は、上記したように本体部10に対して着脱可能に構成されており、この例では
図1に示したように、本体部10(下部ユニット12)内において、複数の紙幣収納庫2がX軸方向に沿って並んで配置されるようになっている。
【0013】
操作カバー部11は、
図1に示したように、本体部10における上面部に配置されている。この操作カバー部11には、例えば、図示しない操作モニタや入出金口、操作部等が設けられている。
【0014】
下部ユニット12は、紙幣収納庫2を内部に収容するユニットであり、本体部10内の図示しない金庫に覆われるように配置されている。この下部ユニット12は、以下詳述するように、例えば
図1に示した方向d1(X軸方向,前面側)に沿って、紙幣入出金機1の外部へと引き出すことができるようになっている。これにより、紙幣収納庫2を本体部10から着脱することができ、紙幣9の補充や回収などが行われるようになっている。
【0015】
ここで、
図2および
図3を参照して、このような紙幣入出金機1の詳細構成例について説明する。
図2は、紙幣入出金機1の詳細構成例を模式的に表したものであり、
図2(A)はZ−X側面構成例を、
図2(B)はY−Z側面構成例を、それぞれ示している。また、
図3は、紙幣入出金機1内から外部へ紙幣収納庫2を取り出す状況の一例を模式的に表したものであり、
図3(A)はZ−X側面構成例を、
図3(B)はY−Z側面構成例を、それぞれ示している。
【0016】
図2および
図3に示したように、上記した下部ユニット12は、カセット収納庫121およびスライドレール122を有している。
【0017】
カセット収納庫121は、紙幣収納庫2を個別に収納するための収納庫であり、後述するスライドレール122を利用して、紙幣入出金機1の外部へ引き出すことが可能となっている。
【0018】
スライドレール122は、下部ユニット12を紙幣入出金機1内から外部へと引き出すためのレールである。具体的には、例えば
図2(A),
図3(A)に示したように、このスライドレール122を利用することで、方向d1に沿って下部ユニット12が外部へ引き出されるようになっている。このようなスライドレール122は、この例では、カセット収納庫121におけるY軸方向に沿った両側面に配置されており、X軸方向(方向d1)に沿って延在している。
【0019】
前述した搬送ユニット13は、紙幣9を紙幣収納庫2内に搬送する(搬入または搬出を行う)ためのユニットであり、本体部10側に配置されている。つまり、この例では搬送ユニット13は、下部ユニット12が紙幣入出金機1の外部へ引き出される際には、本体部10側に留まるようになっている。
【0020】
[紙幣収納庫2の構成]
次に、
図4,
図5,
図6A,
図6B,
図7A,
図7Bを参照して、紙幣収納庫2の詳細構成について説明する。
図4は、この紙幣収納庫2の詳細構成例を、模式的にZ−X側面図にて表したものである。また、
図5は、
図4に示した取っ手部(後述する取っ手部21)の全体構成例を、模式的にY−Z側面図にて表したものである。
【0021】
紙幣収納庫2は、
図4および
図5に示したように、収納部20、取っ手部21およびストッパ22を備えている。
【0022】
収納部20は、紙幣9を内部に収納する部分である。この収納部20の上部には、
図4および
図5に示したように、後述する取っ手部21が取り付けられる部分である、取っ手取付部20aが設けられている。
【0023】
取っ手部21は、紙幣収納庫2の着脱や運搬の際に利用される部分であり、上記したように、収納部20における取っ手取付部20aに取り付けられている。この取っ手部21における収納部20(取っ手取付部20a)への取り付け部分には、
図4および
図5に示したように、取っ手部21が回動する際の回動軸Arが、Y軸方向に沿って延在している。すなわち、例えば
図4中の方向d41に示したように、取っ手部21は、この回動軸Arを中心として、収納部20に対してZ−X平面内を回動可能に構成されている。
【0024】
具体的には、例えば
図6A,
図6Bに示したように、この取っ手部21は、収納部20に対して立位した状態(立位状態:
図6A)と、収納部20に対して臥位した状態(臥位状態:
図6B)との間で、双方向の回動が可能となっている。ここで、
図6Aに示した立位状態とは、換言すると、取っ手部21が収納部20の上面部分から突出した状態であり、前述したように、紙幣収納庫2を着脱または運搬する際に設定されるようになっている(
図3(A)参照)。一方、
図6Bに示した臥位状態とは、換言すると、取っ手部21が収納部20の上面部から突出していない状態(倒れた状態:
図6Bに示した方向d41参照)であり、紙幣収納庫2を本体部10内に収容する際に設定されるようになっている(
図2(A)参照)。なお、
図6Aに示した立位状態は、本開示における「第1の状態」の一具体例に対応すると共に、
図6Bに示した臥位状態は、本開示における「第2の状態」の一具体例に対応している。
【0025】
このような取っ手部21は、
図5に示したように、把持部211と、一対のアーム212とを有している。
【0026】
把持部211は、紙幣収納庫2を着脱または運搬する作業の際に、作業者によって把持される部分である。この把持部211は、
図5に示したように、上記した取っ手部21における回動軸Arの平行方向(Y軸方向)に沿って延伸している。
【0027】
一対のアーム212はそれぞれ、
図4に示したように、回動軸Ar(取っ手取付部20aへの取り付け部分)から把持部211側に位置する上面部Suへ向かう延伸方向(Z軸方向)に沿って延在する、略棒状の形状を有している。これらのアーム212はそれぞれ、
図5に示したように、回動軸Ar(取っ手取付部20a)から把持部211へと延在する部分である。また、これらのアーム212にはそれぞれ、詳細は後述するが、互いに対向して上記延伸方向に沿って延伸する一対の側面Ss1,Ss2と、この側面Ss1と上面部Suとを繋ぐ傾斜面Si1と、が設けられている。なお、側面Ss1は、本開示における「第1の側面」の一具体例に対応すると共に、側面Ss2は、本開示における「第2の側面」の一具体例に対応している。
【0028】
ここで、例えば
図5に示したように、これらの一対のアーム212はそれぞれ、取っ手部21における回動軸Ar付近において、以下のようにして、収納部20における取っ手取付部20aに取り付けられている。すなわち、取っ手取付部20aに形成された一対の嵌合穴(嵌合溝)H1に対して、一対のアーム212に設けられた取っ手支点部(突出部)212sがそれぞれ嵌合することで、一対のアーム212がそれぞれ、取っ手取付部20aに取り付けられるようになっている。
【0029】
ストッパ22は、例えば
図4に示したように、収納部20の上部における回動軸Arの近傍領域に設けられており、取っ手部21の回動方向を一方向(片方向)に制限する機能を有している。具体的には、ストッパ22は、取っ手部21における立位状態(
図6A参照)から臥位状態(
図6B参照)への回動の際に、方向d41に沿った回動については許容する一方、この方向d41とは反対方向である方向d42に沿った回動については制限している(
図4中の「×(バツ)」印参照)。つまり、ストッパ22は、方向d42に沿って取っ手部21が回動しないように、その方向d42に沿った回動動作を制限するようになっている。なお、このストッパ22は、本開示における「回動制限部」の一具体例に対応している。また、方向d41は、本開示における「第1の方向」の一具体例に対応すると共に、方向d42は、本開示における「第2の方向」の一具体例に対応している。
【0030】
このようなストッパ22が収納部20に設けられていると共に、後述するように、一対のアーム212が取っ手部21の回動方向(方向d41)に沿って倒れ易い形状(アーム212の重心が方向d41側にずれた形状)となっていることから、以下のようになっている。すなわち、例えば、取っ手部21が立位状態のままで、下部ユニット12が紙幣入出金機1内へ戻す操作が行われたりすることで不具合が生じるおそれが、回避される。具体的には、例えば、取っ手部21が紙幣入出金機1の本体部10の筺体に衝突したりして、これらの部材が破損するおそれが回避されるようになっている。
【0031】
ここで
図4に示したように、本実施の形態の取っ手部21では、上記した一対のアーム212がそれぞれ、前述した形状(アーム212の重心が方向d41側にずれた形状)の具体例として、以下のような形状を有している。
【0032】
すなわち、まず、これらのアーム212ではそれぞれ、回動軸Arからアーム212の延伸方向(Z軸方向)へ伸びるアーム中心線Lcに対して、アーム212の上面部Suにおけるアーム中心線Lc側の端部(近位端)Enが、方向d41側に離間している。具体的には、
図4に示したように、この上面部Suの端部Enが、アーム中心線Lcから所定の距離(離間距離D1)の分だけ離間している。なお、上記した上面部Suの端部Enは、本開示における「アーム中心線側の端部」の一具体例に対応している。
【0033】
また、これらのアーム212にはそれぞれ、
図4に示したように、上面部Suの端部Enから方向d42(取っ手部21の回動方向とは反対方向)側に傾斜する、傾斜面Si1が設けられている。具体的には、
図4に示した例では、この傾斜面Si1は、アーム212の側面Ss1に向かって、上面部Suの端部Enからアーム中心線Lcを越える位置まで延在している。つまり、上面部Suの端部Enから側面Ss1まで、傾斜面Si1が連続的に形成されている。
【0034】
更に、これらのアーム212ではそれぞれ、
図4に示したように、上面部Suの端部Enが、以下のように位置している。すなわち、上面部Suの端部Enが、側面Ss2からのアーム212の延伸方向(Z軸方向)に沿った延長面Se2の面上、または、この延長面Se2よりも方向d41(取っ手部21の回動方向)側に離間して位置している。具体的には、この
図4に示した例では、上面部Suの端部Enが、側面Ss2の延長面Se2における面上に位置している。
【0035】
また、例えば
図7A,
図7Bに示したように、本実施の形態の収納部20(取っ手取付部20a)における上面部には、以下のような凹凸構造C1が設けられている。
図7Aは、紙幣収納庫2におけるこの凹凸構造C1の一例を、模式的に斜視図にて表したものである。また、
図7Bは、
図7Aに示した紙幣収納庫2における凹凸構造C1を含む断面構成例を模式的に表したものであり、前述した
図2(B)中に示した符号P1部分(紙幣収納庫2における収納部20と搬送ユニット13との連結部分)の拡大断面構成例に対応している。
【0036】
これらの
図7A,
図7Bに示したように、収納部20(取っ手取付部20a)の上面部(搬送ユニット13との連結面)には、Y軸方向に沿った櫛歯状の凹凸構造C1が設けられている。一方、
図7Bに示したように、搬送ユニット13の下面部(収納部20との連結面)にも、紙幣9の受け渡しガイドとして、Y軸方向に沿った櫛歯状の凹凸構造C2が設けられている。また、
図7Bに示したように、これらの凹凸構造C1と凹凸構造C2とでは、それらの凸部と凹部とが互い違いに配置されることで、入れ子形態が形成されている。このような凹凸構造C1,C2が形成されていることで、紙幣入出金機1では、紙幣収納庫2における収納部20と搬送ユニット13における受け渡しガイドとの連結部分において、紙幣9が滑らかに受け渡されるようになっている。また、前述したように、下部ユニット12(紙幣収納庫2)が紙幣入出金機1内から引き出されたり、紙幣入出金機1内へと戻されたりする際に、このような入れ子形態を形成する凹凸構造C1,C2同士が、互いにすれ違うようになっている。
【0037】
[動作および作用・効果]
(A.紙幣入出金機1の基本動作)
紙幣入出金機1では、
図1に示したように、操作カバー部11における操作モニタや操作部等を用いて利用者が操作することで、紙幣9の入金処理や出金処理等の各種処理がなされる。具体的には、例えば、操作カバー部11における入出金口へ投入された紙幣9が、本体部10における搬送ユニット13等を介して、下部ユニット12に内蔵された紙幣収納庫2内に収納されることで、紙幣9の紙幣入出金機1への入金処理がなされる。一方、例えば、この紙幣収納庫2内に収納されている紙幣9が、搬送ユニット13等を介して入出金口へと搬出されることで、紙幣9の紙幣入出金機1からの出金処理がなされる。
【0038】
ここで、紙幣入出金機1の本体部10(下部ユニット12)に内蔵された紙幣収納庫2について、紙幣9の補充や回収などを行う際には、例えば以下のようにして、紙幣収納庫2の外部への取り出し作業が行われる。
【0039】
具体的には、まず、スライドレール122を利用することで、例えば
図1,
図2(A),
図3(A)に示した方向d1(X軸方向)に沿って、下部ユニット12が紙幣入出金機1内から外部へと引き出される。そして、紙幣収納庫2における取っ手部21(把持部211)が作業者に把持され、
図3(A),
図3(B)に示した方向d2(Z軸方向)に沿って、紙幣収納庫2が下部ユニット12から取り出される。
【0040】
この際に、紙幣収納庫2における取っ手部21は、
図6Bに示した臥位状態から
図6Aに示した立位状態となるため、このような立位状態の取っ手部21を利用して、作業者は紙幣収納庫2を(方向d2に沿って)持ち上げることができる。このようにして外部へ取り出された紙幣収納庫2について、上記した紙幣9の補充や回収などが行われる。
【0041】
(B.紙幣収納庫2における作用・効果)
ここで、このようにして紙幣収納庫2を本体部10(下部ユニット12)内から外部へと取り出す際に、紙幣収納庫2を誤って落下させてしまうような場合について、比較例と比較しつつ説明する。
【0042】
(B−1.比較例)
図8は、比較例に係る紙幣収納庫(紙幣収納庫100)の床面(地面)Sfへの落下状況(垂直方向である方向d5への落下状況)の一例を、模式的に表したものである。この比較例の紙幣収納庫100は、
図4に示した本実施の形態の紙幣収納庫2において、取っ手部21(一対のアーム212)の代わりに取っ手部101(一対のアーム102)を設けたものに対応しており、他の構成は同様となっている。
【0043】
この比較例の取っ手部101における一対のアーム102ではそれぞれ、
図4に示した本実施の形態の取っ手部21における一対のアーム212とは異なり、
図8に示したように、以下の構成となっている。すなわち、これらのアーム102ではそれぞれ、上面部Suにおける端部Enが、アーム中心線Lcに対して、取っ手部101の回動方向である方向d41ではなく、この回動方向の反対方向(前述した方向d42に相当)側に離間している。つまり、本実施の形態のアーム212ではそれぞれ、上面部Suの端部Enが、アーム中心線Lcから取っ手部21の回動方向(方向d41)側に離間しているのに対し、比較例のアーム102ではそれぞれ、取っ手部101の回動制限方向(方向d42)側に、上面部Suの端部Enが離間している。
【0044】
このような構成により比較例の紙幣収納庫100では、例えば
図8の方向d5で示したように、取っ手部101が立位状態にて下方に位置した姿勢(取っ手部101が重力により下方に垂れ下がった姿勢)で、床面Sfへ落下した場合に、以下のような問題が生じるおそれがある。すなわち、まず、取っ手部101(アーム102)と床面Sfとが接触した際に、この接触位置から取っ手支点部212sおよび嵌合穴H1へ向けて、例えば
図8に示したように、大きな外力F102が加わることになる。このような大きな外力F102が加わると、紙幣収納庫100における部分的な変形や破損(例えば取っ手支点部212sの変形や一部破損など)が生じたり、取っ手部101が倒れなくなってしまう(立位状態から臥位状態に戻らなくなってしまう)おそれがある。また、例えば、アーム102がストッパ22側の回動制限方向へ傾いて垂れ下がっているようなケースでは、アーム102の回動軸Ar側の部分とストッパ22とが当接したりすることで、そのような部分的な変形や破損等が生じるおそれもある。これらのことから、この比較例の紙幣収納庫100では、信頼性が損なわれるおそれがある。
【0045】
(B−2.本実施の形態)
これに対して、本実施の形態の取っ手部21における一対のアーム212ではそれぞれ、上記した比較例の取っ手部101における一対のアーム102とは異なり、
図4に示したように、以下の構成となっている。すなわち、これらのアーム212ではそれぞれ、上面部Suにおける端部Enが、アーム中心線Lcに対して、取っ手部21の回動方向である方向d41側に離間している(離間距離D1参照)。
【0046】
これにより本実施の形態の紙幣収納庫2では、例えば
図9の方向d5で示したように、取っ手部21が立位状態にて下方に位置した姿勢(取っ手部21が重力により下方に垂れ下がった姿勢)で、誤って床面Sfへ落下したような場合であっても、上記比較例とは異なり、以下のようになる。すなわち、まず、取っ手部21(アーム212)と床面Sfとが接触した際に、接触位置の方向d41側へのずれ(離間距離D1参照)に起因して、例えば
図9に示したように、垂直方向の上側への力F2が、アーム212へ作用するようになる。したがって、床面Sfと接触した際に、取っ手部21(アーム212)が方向d41(取っ手部21の回動方向,回動制限方向である方向d42とは反対方向)側に倒れ易くなり、例えば
図10に示したように、立位状態から臥位状態へとスムーズに戻ったうえで落下状態となる。
【0047】
つまり、本実施の形態では上記比較例とは異なり、以下のようになる。すなわち、本実施の形態では、床面Sfとの接触位置から取っ手支点部212sおよび嵌合穴H1へ向けて加わる外力F102の発生が、低減もしくは回避される(
図9中に破線で示した外力F102参照)と共に、アーム212の方向d41側への回転モーメント成分が生じることになる。したがって、本実施の形態では、例えば上記したような、紙幣収納庫2における部分的な変形や破損(例えば取っ手支点部212sの変形や一部破損など)が生じたり、取っ手部21が倒れなくなってしまうおそれが、回避される。その結果、本実施の形態の紙幣収納庫2では、上記比較例の紙幣収納庫100と比べ、信頼性が向上することになる。
【0048】
なお、アーム212における上面部Suの端部Enは、アーム中心線Lcからなるべく離れている(離間距離D1ができるだけ大きい)ほうが、取っ手部21を方向d41に倒れ易くするという観点からは、望ましいと言える。これは、離間距離D1が大きくなるのに応じて、上記したアーム212の回転モーメント成分が増加していき、取っ手部21が倒れ易くなるためである。
【0049】
また、本実施の形態では、
図4に示したように、取っ手部21における一対のアーム212にそれぞれ、上面部Suの端部Enから方向d42(回動制限方向)側に傾斜する、傾斜面Si1が設けられている。これにより、取っ手部21(アーム212)が方向d41側に更に倒れ易くなるため、紙幣収納庫2における信頼性が更に向上することになる。
【0050】
更に、本実施の形態では、
図4に示したように、この傾斜面Si1が、アーム212の側面Ss1に向かって上面部Suの端部Enからアーム中心線Lcを越える位置まで延在している。つまり、上面部Suの端部Enから側面Ss1まで、傾斜面Si1が連続的に形成されている。これにより、例えば、傾斜面Si1が側面Ss1への途中までだけ形成されているような場合と比べ、取っ手部21(アーム212)が方向d41側に倒れ易くなるため、紙幣収納庫2における信頼性の更なる向上が図られることになる。
【0051】
加えて、本実施の形態では、
図4に示したように、上面部Suの端部Enが、側面Ss2からのアーム212の延伸方向に沿った延長面Se2の面上、または、この延長面Se2よりも方向d41側に離間して位置している。このようにして、上面部Suの端部Enが、アーム中心線Lcからより大きく離れている(離間距離D1が相対的に大きくなっている)ことから、前述したように、アーム212の回転モーメント成分が更に増加し、取っ手部21が更に倒れ易くなる。その結果、紙幣収納庫2における信頼性の更なる向上が図られる。
【0052】
また、特に本実施の形態では、
図4に示したように、この上面部Suの端部Enが、側面Ss2の延長面Se2における面上に位置している。これにより、上記したように、取っ手部21を更に倒れ易くしつつ、取っ手部21(アーム212)の強度も確保されるようになる。その結果、紙幣収納庫2の部分的な変形や破損などのおそれを回避するという観点に加え、取っ手部21の強度を確保するという観点からも、紙幣収納庫2における信頼性の更なる向上が図られることになる。
【0053】
ここで、例えば
図11に示した本実施の形態の応用例(変形例)のように、取っ手部21の臥位状態において、把持部211の上面S1(X−Y平面)におけるZ軸方向の高さ(位置)Z1は、以下のようになっているのが望ましい。すなわち、まず、この把持部211の上面S1における高さZ1が、アーム212における端部EnのZ軸方向の高さと揃っているのが望ましい。そして、この把持部211の上面S1における高さZ1が、紙幣収納庫2における収納部20の上面S2(前述した凹凸構造C1が形成されているX−Y平面)におけるZ軸方向の高さZ2と等しい(Z1=Z2)、または、高さZ1が高さZ2よりも若干低くなっているのが望ましい。このような構成にした場合、例えば前述した
図7Aの構成の場合と比べ、把持部211をより太く形成することができるため、取っ手部21の強度を向上させることが可能になる。また、前述した凹凸構造C1,C2による入れ子形態が形成されている場合において、把持部211の上面に搬送ユニット13の凹凸構造C2が干渉しないようになるため、取っ手部21の小型化を図ることも可能となる。
【0054】
以上のように本実施の形態では、紙幣収納庫2の取っ手部21における一対のアーム212においてそれぞれ、上面部Suの端部Enが、アーム中心線Lcから方向d41(取っ手部21の回動方向)側に離間しているようにしたので、以下のようになる。すなわち、例えば、取っ手部21が立位状態にて下方に位置した姿勢で、紙幣収納庫2が誤って床面Sfへ落下したような場合であっても、取っ手部21(アーム212)と床面Sfとが接触した際に、取っ手部21(アーム212)が方向d41側に倒れ易くなる。よって、取っ手部21と床面Sfとの接触の際に、紙幣収納庫2の部分的な変形や破損などのおそれを回避することができ、紙幣収納庫2の信頼性を向上させることが可能となる。
【0055】
<2.変形例>
続いて、上記実施の形態の変形例(変形例1〜3)について説明する。なお、実施の形態における構成要素と同一のものには同一の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0056】
[変形例1]
図12は、変形例1(変形例1−1,1−2)に係る取っ手部の構成例を、模式的にZ−X側面図にて表したものである。具体的には、
図12(A),
図12(B)はそれぞれ、変形例1−1,1−2に係る取っ手部(取っ手部21A,21B)の構成例を示している。
【0057】
(変形例1−1)
まず、
図12(A)に示した変形例1−1の取っ手部21Aでは、一対のアーム212については実施の形態と同じ形状である一方、実施の形態で説明した把持部211の代わりに、以下の形状の把持部211Aが設けられている。この把持部211Aの上面部は、一対のアーム212の上面部Suと同一面上ではなく(Z軸方向に沿って上面部Suと揃えられた位置ではなく)、これらアーム212の上面部Suから回動軸Arの方向へ向けて、離間距離D2の分だけ離間している。
【0058】
このような把持部211Aの構成により、本変形例の取っ手部21Aでは、以下のようになる。すなわち、把持部211Aがアーム212よりも先に床面Sfに接触しない(アーム212のほうが把持部211Aよりも先に床面Sfに接触する)ようになるため、実施の形態で説明した、アーム212の形状(傾斜面Si1等)を利用して取っ手部21Aを倒れ易くする作用が、より生じ易くなる。その結果、本変形例では、信頼性を更に向上させることが可能となる。また、把持部211Aがアーム212よりも先に床面Sfに接触しないようになることから、把持部211Aを傷つきにくくすることも可能となる。
【0059】
(変形例1−2)
一方、
図12(B)に示した変形例1−2の取っ手部21Bは、上記した変形例1−1の取っ手部21Aにおいて、把持部211Aの代わりに、以下の形状の把持部211Bを設けたものに対応している。この把持部211Bでは、把持部211Aと同様に、その上面部が、一対のアーム212の上面部Suから離間距離D2の分だけ離間していると共に、以下のような傾斜面Si2が更に設けられている。具体的には、この把持部211Bにおける傾斜面Si2は、実施の形態で説明した、一対のアーム212における傾斜面Si1に対して略平行(平行)となるように傾斜している。
【0060】
このような把持部211Bの構成により、本変形例の取っ手部21Bでは、以下のようになる。すなわち、例えば、床面Sfが平坦面ではないような場合において、把持部211Bがアーム212よりも先に床面Sfに接触するようなケースについても、アーム212の傾斜面Si1の代わりにこの把持部211Bの傾斜面Si2を利用して、取っ手部21Bを倒れ易くすることができる。したがって、本変形例では、例えば床面Sfが平坦面ではないような場合であっても、実施の形態と同様の対応を取ることができ、信頼性を更に向上させることが可能となる。また、本変形例においても、上記した変形例1−1の場合と同様に、把持部211Bがアーム212よりも先に床面Sfに接触しないようになることから、把持部211Bを傷つきにくくすることも可能となる。
【0061】
[変形例2]
図13は、変形例2(変形例2−1〜2−4)に係る取っ手部の構成例を、模式的にZ−X側面図にて表したものである。具体的には、
図13(A),
図13(B),
図13(C),
図13(D)はそれぞれ、変形例2−1,2−2,2−3,2−4に係る取っ手部(取っ手部21C,21D,21E,21F)の構成例を示している。
【0062】
まず、
図13(A)〜
図13(D)に示したように、これら変形例2−1〜2−4の取っ手部21C,21D,21E,21Fではそれぞれ、実施の形態および変形例1−1,1−2で説明した取っ手部21,21A,21Bとは異なり、以下のようになっている。すなわち、これらの取っ手部21C,21D,21E,21Fにおける一対のアーム212C,212D,212E,212Fではそれぞれ、取っ手部21,21A,21Bにおけるアーム212とは異なり、傾斜面Si1が設けられていない。
【0063】
ただし、
図13(A)に示した変形例2−1の取っ手部21Cでは、一対のアーム212Cにおいてそれぞれ、取っ手部21,21A,21Bにおけるアーム212と同様に、上面部Suが設けられている。もっとも、これらのアーム212Cではそれぞれ、アーム212とは異なり、上面部Suの端部Enが、アーム212Cにおける側面Ss2からの延長面Se2の面上ではなく、この延長面Se2よりも方向d41側に離間して位置している(離間距離D1参照)。なお、実施の形態および変形例1−1,1−2で説明したように、傾斜面Si1が設けられているアーム212についても、本変形例のように、上面部Suの端部Enが、延長面Se2よりも方向d41側に離間しているようにしてもよい。
【0064】
一方、
図13(B),
図13(C),
図13(D)に示した変形例2−2,2−3,2−4の取っ手部21D,21E,21Fではそれぞれ、一対のアーム212D,212E,212Fにおいてそれぞれ、アーム212,212Cとは異なり、上面部Suの代わりに頂部Tが設けられている。すなわち、これらのアーム212D,212E,212Fにおける上部側ではそれぞれ、平坦面である上面部Suではなく、頂部Tを有する非平坦面となっている。
【0065】
そして、これらのアーム212D,212E,212Fではそれぞれ、
図13(B),
図13(C),
図13(D)に示したように、アーム中心線Lcに対して、この頂部Tが方向d41側に離間している(離間距離D1参照)。つまり、上面部Suにおける端部Enの代わりに、頂部Tが、アーム中心線Lcから離間距離D1の分だけ離間している。
【0066】
このような構成の本変形例(変形例2−1〜2−4)においても、基本的には実施の形態および変形例1−1,1−2と同様の作用により、同様の効果が得られる。すなわち、変形例2−1〜2−4のアーム212C,212D,212E,212Fにおいても、アーム212の場合と同様に、取っ手部21C,21D,21E,21Fをそれぞれ、方向d41側に倒れ易くすることができる。よって、本変形例においても、信頼性を向上させることが可能となる。
【0067】
[変形例3]
図14は、変形例3に係る取っ手部(取っ手部21G)の全体構成例を、模式的にY−Z側面図にて表したものである。本変形例では、回動軸Arにおける取っ手部21Gと収納部20との嵌合構造に関して、これまでに説明した嵌合構造とは異なる構成について説明する。
【0068】
具体的には、本変形例の取っ手部21Gでは、一対のアーム212Gにおいてそれぞれ、回動軸Ar付近に嵌合穴(嵌合孔)H2が形成されている。また、収納部20における取っ手取付部20bには、これらの嵌合穴H2を貫通する、一対の取っ手支点部(突出部)20sが設けられている。そして、これらの嵌合穴H2に対して取っ手支点部20sがそれぞれ嵌合することで、一対のアーム212Gがそれぞれ、取っ手取付部20bに取り付けられるようになっている。
【0069】
つまり、これまでに説明した嵌合構造では、収納部20における取っ手取付部20aに、一対の嵌合穴H1が形成されていると共に、一対のアーム212等にそれぞれ、取っ手支点部212sが設けられていた。これに対し、本変形例の嵌合構造では逆に、収納部20における取っ手取付部20bに、一対の取っ手支点部20sが設けられていると共に、一対のアーム212Gにそれぞれ、嵌合穴H2が形成されている。
【0070】
なお、
図14に示したように、このような本変形例の取っ手部21Gにおいて、把持部211の代わりに、把持部211A,211Bのいずれかを設けるようにしてもよい。また、一対のアーム212Gの形状はそれぞれ、上記した嵌合穴H2が設けられていること以外については、これまでに説明した、アーム212,212C,212D,212E,212Fのいずれかの形状となっている。
【0071】
このような構成の本変形例においても、基本的には、実施の形態および変形例1,2と同様の作用により、同様の効果を得ることが可能である。
【0072】
<3.その他の変形例>
以上、実施の形態および変形例を挙げて本開示を説明したが、本開示はこれらの実施の形態等に限定されず、種々の変形が可能である。
【0073】
例えば、上記実施の形態等では、媒体処理装置(紙幣入出金機1)および媒体収納庫(紙幣収納庫2)における各部材の構成(形状、配置、個数等)を具体的に挙げて説明したが、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0074】
具体的には、例えば、収納部20や回動制限部(ストッパ22)の形状、配置、個数等については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。
【0075】
また、取っ手部(把持部およびアーム)の形状、配置、個数等については、上記実施の形態等で説明したものには限られず、他の形状や配置、個数等であってもよい。より具体的には、例えば、上記実施の形態等では、一対(2つ)のアームが把持部の両端に配置されている取っ手部を例に挙げて説明したが、この例には限られず、例えばアームの個数が1つや3つ以上であってもよい。また、例えば、アームにおける傾斜面Si1の両端部(傾斜面Si1と上面部Suとを繋ぐ部分、および、傾斜面Si1と側面Ss1とを繋ぐ部分)のうちの少なくとも一方が、角部(角ばっている部分)ではなく、丸みを帯びた部分(非角部)であってもよい。このような丸みを帯びた部分とした場合、例えば
図9に示した落下状況の際に、取っ手部が更に倒れ易くなるため、信頼性の更なる向上が図られることになる。
【0076】
更に、上記実施の形態等で説明した一連の処理は、ハードウェア(回路)で行われるようにしてもよいし、ソフトウェア(プログラム)で行われるようにしてもよい。ソフトウェアで行われるようにした場合、そのソフトウェアは、各機能をコンピュータにより実行させるためのプログラム群で構成される。各プログラムは、例えば、上記コンピュータに予め組み込まれて用いられてもよいし、ネットワークや記録媒体から上記コンピュータにインストールして用いられてもよい。
【0077】
加えて、上記実施の形態等では、本開示における「媒体処理装置」の一具体例として、紙幣9に関する各種処理(入金処理や出金処理等)を行う紙幣入出金機1を例に挙げて説明したが、この例には限られず、紙幣9以外の他の媒体についても、本開示を適用することが可能である。すなわち、例えば、硬貨に関する各種処理を行う硬貨処理装置、あるいは、小切手や商品券等の有価証券に関する各種処理を行う媒体処理装置など、他の媒体を取り扱う各種の媒体処理装置についても、本開示を適用することが可能である。
【0078】
また、これまでに説明した各種の例を、任意の組み合わせで適用させるようにしてもよい。
【0079】
なお、本明細書中に記載された効果はあくまで例示であって限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0080】
また、本開示は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
媒体を収納する収納部と、
前記収納部に対して立位した状態である第1の状態と、前記収納部に対して臥位した状態である第2の状態との間で、回動軸を中心として前記収納部に対して回動可能に構成されている取っ手部と、
前記第1の状態から前記第2の状態へ向かう第1の方向に沿った前記取っ手部の回動とは反対方向である第2の方向に沿った前記取っ手部の回動を制限する回動制限部と
を備え、
前記取っ手部は、
前記回動軸の平行方向に沿って延伸する把持部と、
前記把持部側に上面部または頂部を含んでいると共に、前記回動軸から前記上面部または前記頂部へ向かう延伸方向に沿って延在するアームと
を有し、
前記アームでは、前記回動軸から前記延伸方向へ伸びるアーム中心線に対して、前記上面部における前記アーム中心線側の端部、または、前記頂部が、前記第1の方向側に離間している
媒体収納庫。
(2)
前記アームは、
前記上面部を含んでおり、前記回動軸から前記上面部へ向けて前記延伸方向に沿って延伸していると共に、
前記上面部の前記端部から前記第2の方向側に傾斜する傾斜面を更に有する
上記(1)に記載の媒体収納庫。
(3)
前記アームは、互いに対向して前記延伸方向に沿って延伸する第1および第2の側面を更に有しており、
前記傾斜面は、前記第1の側面に向かって前記上面部の前記端部から前記アーム中心線を越える位置まで延在している
上記(2)に記載の媒体収納庫。
(4)
前記上面部の前記端部が、前記第2の側面からの前記延伸方向に沿った延長面の面上、または、前記延長面よりも前記第1の方向側に離間して位置している
上記(3)に記載の媒体収納庫。
(5)
前記上面部の前記端部が、前記延長面の面上に位置している
上記(4)に記載の媒体収納庫。
(6)
本体部と、
前記本体部に対して着脱可能に構成された媒体収納庫と
を備え、
前記媒体収納庫は、
媒体を収納する収納部と、
前記収納部に対して立位した状態である第1の状態と、前記収納部に対して臥位した状態である第2の状態との間で、回動軸を中心として前記収納部に対して回動可能に構成されている取っ手部と、
前記第1の状態から前記第2の状態へ向かう第1の方向に沿った前記取っ手部の回動とは反対方向である第2の方向に沿った前記取っ手部の回動を制限する回動制限部と
を備え、
前記取っ手部は、
前記回動軸の平行方向に沿って延伸する把持部と、
前記把持部側に上面部または頂部を含んでいると共に、前記回動軸から前記上面部または前記頂部へ向かう延伸方向に沿って延在するアームと
を有し、
前記アームでは、前記回動軸から前記延伸方向へ伸びるアーム中心線に対して、前記上面部における前記アーム中心線側の端部、または、前記頂部が、前記第1の方向側に離間している
媒体処理装置。