特許第6794927号(P6794927)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6794927
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】パンツ型の使い捨ておむつ
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/56 20060101AFI20201119BHJP
   A61F 13/496 20060101ALI20201119BHJP
   A61F 13/64 20060101ALI20201119BHJP
   A61F 13/493 20060101ALI20201119BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   A61F13/56 221
   A61F13/496
   A61F13/64
   A61F13/493
   A61F13/49 311Z
   A61F13/49 312Z
   A61F13/49 413
【請求項の数】4
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2017-106133(P2017-106133)
(22)【出願日】2017年5月30日
(65)【公開番号】特開2018-198901(P2018-198901A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2019年6月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【弁理士】
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】中村 七重
【審査官】 西本 浩司
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−336302(JP,A)
【文献】 特開2005−160686(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3157674(JP,U)
【文献】 特開2011−110119(JP,A)
【文献】 特開2008−104874(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/15 − 13/84
A61L 15/16 − 15/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
着用者の腹部に接する前身頃(1)を構成する前身頃外装体(10),着用者の背部に接する後身頃(2)を構成する後身頃外装体(20),及び長さ方向の一端部側が前記前身頃外装体(10)に固定され,他端部側が前記後身頃外装体(20)に固定された吸収性本体(30)を備え,前記前身頃外装体(10)と前記後身頃外装体(20)は互いに分離しており,前記前身頃外装体(1)と前記後身頃外装体(2)の幅方向の左右両側が接合されたパンツ型の使い捨ておむつであって,
前記使い捨ておむつの側縁を超えて幅方向の外側に延出する固定用ベルト(40)を備え
前記固定用ベルト(40)は,前記使い捨ておむつの左右の側縁のいずれか一方にのみ取り付けられており,
前記固定用ベルト(40)の横幅(W)は,それが取り付けられた前記前身頃外装体(10)及び前記後身頃外装体(20)のいずれかの外装体の長手方向の長さ(S)に対して50〜100%である
使い捨ておむつ。
【請求項2】
前記固定用ベルト(40)は,前記使い捨ておむつの側縁の一方から延出し,前記後身頃(2)を被覆して,前記側縁の他方を回り,その先端部(41)が前記前身頃(1)にまで届く以上の長さを有する
請求項1に記載の使い捨ておむつ。
【請求項3】
前記固定用ベルト(40)は,前記先端部(41)に,前記使い捨ておむつの外表面に係止することのできる係止部(42)を有する
請求項2に記載の使い捨ておむつ。
【請求項4】
前記前身頃(1)と前記後身頃(2)を幅方向に伸縮させる弾性伸縮部材(11,21)の数がそれぞれ5本以下であるか,当該弾性伸縮部材(11,21)が設けられていない
請求項1から請求項のいずれかに記載の使い捨ておむつ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,パンツ型の使い捨ておむつに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から,乳幼児用や高齢者用の使い捨てのおむつとして,パンツ型のものが知られている。パンツ型の使い捨ておむつは,前身頃と後身頃の両側部が予め接合されたタイプの使い捨ておむつである。パンツ型の使い捨ておむつとしては,吸収性本体が載置される外装体が前身頃から後身頃に掛けて一体となった一体型(特許文献1)や,外装体が前身頃及び後身頃で分離され,前身頃外装体と後身頃外装体の間に吸収性本体が架け渡すように連結された分離型(特許文献2)が知られている。
【0003】
パンツ型の使い捨ておむつは,一般的に,前身頃と後身頃を接着して形成されたウエスト開口部の周縁に,複数の弾性伸縮部材が伸長状態で固定されている。これら弾性伸縮部材が,着用者のウエスト周りを締めこむことによってウエストギャザーやタミーギャザーを形成し,着用者の動きや排泄物の重さに伴っておむつが下方にずり落ちずないようにしている。このように,ウエスト開口部の周縁にウエストギャザーやタミーギャザーを形成しておむつのずり落ちを防止するために,ウエスト周りの弾性伸縮部材は重要な部材であるとされていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−254662号公報
【特許文献2】特開2010−233733号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで,従来のパンツ型使い捨ておむつは,乳幼児等の成長に合わせて適切なサイズを選択できるように,S,M,Lなどの規格化されたサイズに分けて製造されるのが一般的であるが,ウエスト周りのサイズを細かく選択することはできない。このため,乳幼児の体型によっては,ウエスト周りのサイズが大きくて着用時に隙間ができてしまったり,あるいはウエスト周りのサイズが小さくて弾性伸縮部材による締め付けがきついと感じる場合がある。また,ゴム製の弾性伸縮部材の肌触りや締め付けに不快感を覚える者もいる。また,大人用の使い捨ておむつを考えると,着用者の体型,特にウエスト周りのサイズはさらに多様である。一定の締付け力を持つパンツ型の使い捨ておむつでは,ウエスト周りが緩いと感じる者もいるし,きついと感じる者もいる。このため,ウエスト周りの締め付け力を体型に合わせて調整したいという要望があるが,従来のパンツ型の使い捨ておむつではこのような要望には対応できなかった。そこで,このような場合には,パンツ型使い捨ておむつの代わりに,いわゆるテープ型の使い捨ておむつを着用することもできる。テープ型の使い捨ておむつは,パンツ型のものと比べて,個人の体型に合わせてウエスト周りのサイズを調整しやすくなっており,またウエスト周りにゴム製の弾性伸縮部材が配置されていないか,その本数が少なくなっている。しかしながら,テープ型の使い捨ておむつは,他人に履かせるときには容易ではあるが,自分自身で装着する際には却って難しいという問題がある。
【0006】
そこで,本発明は,ウエスト周りの弾性伸縮部材の数が少ないか又はウエスト周りに弾性伸縮部材を設けない場合であっても,ウエスト周りのサイズを着用者の体型に適合させやすいパンツ型の使い捨ておむつを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の発明者は,上記課題の解決手段について鋭意検討した結果,パンツ型の使い捨ておむつにウエスト周りのサイズを調整するための固定用ベルトを備え付けることで,ウエスト周りの弾性伸縮部材の数を減らす或いは無しにした場合でも,おむつをしっかりと固定することができるという知見を得た。そして,本発明者は,上記知見に基づけば,従来技術の課題を解決できることに想到し,本発明を完成させた。具体的に説明すると,本発明は以下の構成を有する。
【0008】
本発明は,パンツ型の使い捨ておむつに関する。パンツ型の使い捨ておむつは,着用者の腹部に接する前身頃1,着用者の背部に接する後身頃2,及びこれらの間に位置する股下域3を有し,前身頃1と後身頃2の幅方向の左右両側が接合されている。本発明に係る使い捨ておむつは,おむつの側縁を超えて幅方向の外側に延出する一又は複数の固定用ベルト40を備えることを特徴とする。固定用ベルト40の基端部は,使い捨ておむつの側縁に固定されていることが好ましいが,例えば前身頃1や後身頃2の中腹部分に固定されていてもよい。また,固定用ベルト40は,左右どちらかに1本のみ設けられていてもよいし,左右に一対(合計2本)設けられていてもよいし,3本以上設けることもできる。
【0009】
上記構成のように,パンツ型の使い捨ておむつに固定用ベルト40を取り付けることで,この使い捨ておむつを履いた後に,固定用ベルト40を利用してウエスト周りのサイズを調整することができる。具体的には,固定用ベルト40をウエストに巻き付けるようにすれば,着用者の体型に合わせて固定用ベルト40がフィットするため,ウエスト開口部からの尿漏れなどを効果的に防止できる。
【0010】
本発明において,固定用ベルト40は,使い捨ておむつの左右の側縁の一方から延出し,後身頃2を被覆して,側縁の他方を回り,その先端部41が前身頃1にまで届く以上の長さを有することが好ましい。このような長さとすることで,固定用ベルト40をウエスト周りに沿って半周以上又は1周以上させることができるため,使い捨ておむつがずれ落ちるのを効果的に防止できる。
【0011】
本発明において,固定用ベルト40は,その先端部41に,使い捨ておむつの外表面に係止することのできる係止部42を有することが好ましい。係止部42としては,メカニカルファスナーの雄部材などを利用できる。固定用ベルト40の先端部41に係止部42を設けることで,ウエスト周りのサイズの調整が容易になる。
【0012】
固定用ベルト40は,使い捨ておむつの左右の側縁のいずれか一方にのみ取り付けられていてもよい。このように,固定用ベルト40を左右の片側一方にのみ設けることで,片手でウエスト周りのサイズの調整ができるため,着脱が容易になるというメリットがある。
【0013】
固定用ベルト40は,使い捨ておむつの左右の側縁の両方に取り付けられていてもよい。このように,固定用ベルト40を左右両側に少なくとも一対ずつ設けることで,バランス良くウエスト周りを締め付けることができる。また左右の固定用ベルト40を結んで固定することもできるようになる。
【0014】
固定用ベルト40を左右の側縁の両方に取り付ける場合において,左右の固定用ベルト40は,それぞれ使い捨ておむつの長手方向にずれた位置に設けられていてもよい。左右の固定用ベルト40が,幅方向の延長線上に設けられていると,一方をウエスト周りに巻きつけたときに他方が障害になる場合があるが,両者をおむつの長手方向においてずれた位置に設ける(すなわち幅方向の延長線には設けないようにする)ことで,両方の固定用ベルト40をウエスト周りに巻きつけ易くなる。
【0015】
本発明において,前身頃1と後身頃2を幅方向に伸縮させる弾性伸縮部材11,21の数はそれぞれ5本以下であるか,又は当該弾性伸縮部材11,21は設けられていないことが好ましい。本発明では,固定用ベルト40を利用してウエスト周りのサイズを調整することができるため,従来のパンツ型使い捨ておむつに設けられていた弾性伸縮部材の数を減らす或いは無くすことができる。弾性伸縮部材を無くすことができれば,弾性伸縮部材による締めつけ感や肌触りに不快感を覚えていた者でも,パンツ型の使い捨ておむつを快適に履くことができる。なお,使い捨ておむつのウエスト周りに設けられる弾性伸縮部材には,幅方向の中央部において切断もしくは非伸縮状態とされているものが存在するが,不連続な弾性伸縮部材であっても幅方向に沿って延長線上にあるものは1本として計算する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば,ウエスト周りのサイズを着用者の体型に適合させやすいパンツ型の使い捨ておむつを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1は,本発明の第1の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつを示した外観斜視図である。
図2図2は,本発明の第1の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつを示した平面展開図である。
図3図3は,本発明の第2の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつを示した外観斜視図である。
図4図4は,本発明の第2の実施形態に係るパンツ型使い捨ておむつを示した平面展開図である。
図5図5は,図4に示した実施形態の変形例を示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下,図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は,以下に説明する形態に限定されるものではなく,以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0019】
また,本願明細書において,使い捨ておむつの「長さ方向」というときは,基本的に,前身頃側と後身頃側を結ぶ方向(図2における上下方向)を意味し,「幅方向」というときは,基本的に,長さ方向に直交する方向(図2における左右方向)を意味する。また,本願明細書において,「A〜B」とは,「A以上B以下」であることを意味する。
【0020】
本願明細書では,吸収性本体を保持するための外装体が,前身頃と後身頃で分離したタイプのパンツ型使い捨ておむつを例に挙げて,本発明の内容を詳しく説明する。ただし,本発明の使い捨ておむつは,前身頃の外装体と後身頃の外装体が分離したタイプに限定されず,外装体が前身頃から後身頃にかけて一連に繋がったタイプにも適用することができる。
【0021】
図1は,本発明の第1の実施形態に係る使い捨ておむつ100の例を外観斜視図であり,使い捨ておむつ100を前身頃1側からみた状態を示している。図2は,図1に示された使い捨ておむつ100の平面展開図であり,使い捨ておむつ100を,着用者の肌に接する面(肌対向面)からみた状態を示している。なお,図2においては,使い捨ておむつ100が備える固定用ベルト40を折り曲げた状態を示している。
【0022】
図1及び図2に示されるように,本実施形態に係る使い捨ておむつ100は,前身頃外装体10と,後身頃外装体20と,吸収性本体30を有している。前身頃外装体10は,装着時において着用者の腹部に接触する前身頃1を構成し,後身頃外装体20は,装着時において着用者の背部に接触する後身頃2を構成する。前身頃外装体10と後身頃外装体20は,互いに分離している。前身頃外装体10と後身頃外装体20は,それぞれ個別に形成されたものであってもよいし,一体的に形成されたものが後に分離したものであってもよい。吸収性本体30は,その長さ方向の一端部側が前身頃外装体10に固定され,他端部側が後身頃外装体20に固定される。このため,本発明では,吸収性本体30によって,前身頃1と後身頃2の間の股下域3が構成されている。このように,吸収性本体30は,前身頃外装体10と後身頃外装体20の間に架け渡された状態となっている。吸収性本体30を,前身頃外装体10と後身頃外装体20に固定する手段は,公知の方法を用いることができ,例えば,ホットメルト接着剤やその他流動性のある接着剤を用いた固定方法に固定することとしてもよいし,ヒートシールのような熱溶着や超音波溶着により固定することとしてもよい。
【0023】
また,図1に示されるように,前身頃外装体10と後身頃外装体20は,互いに幅方向両側縁に位置するサイドシール部4において接合されることにより,前身頃外装体10及び後身頃外装体20が環状に繋がる。このため,図1に示されるように,装着時に着用者の腰周りに位置する腰周り開口部5と,装着時に着用者の脚部周りに位置する脚部周り開口部6が形成される。このようにして,パンツ型の使い捨ておむつ100が形成される。着用者は,その腹部が前身頃外装体10に接触し,背部が後身頃外装体20に接触するようにして,腰周り開口部5からに両脚を入れ,それぞれの脚部を脚部周り開口部6から出すことで,パンツ型の使い捨ておむつ100を装着することができる。
【0024】
前身頃外装体10及び後身頃外装体20は,着用者の腹部及び背部に接触するとともに,使い捨ておむつ100の着用時において,前身頃外装体10及び後身頃外装体20の間に位置する吸収性本体30を吊持するための部材である。前身頃外装体10と後身頃外装体20は,おむつの幅方向の左右両側縁部に,一対のサイドシール部4を有している。前身頃外装体10と後身頃外装体20は,おむつの幅方向の左右両側縁部を互いに重ね合わせた状態で,一対のサイドシール部4において接合される。この一対のサイドシール部4は,おむつの長さ方向に延びて直線的に形成される。サイドシール部4において,前身頃外装体10と後身頃外装体20は,例えば,熱エンボス溶着や超音波エンボス溶着のような公知の接合手段により接合される。
【0025】
吸収性本体30は,公知の構成を採用することができる。吸収性本体30は,前身頃外装体10と後身頃外装体20の間に架け渡された状態で保持され,使い捨ておむつ100の着用時おいて,着用者の股下部に位置し,着用者が排泄した尿などの液体を吸収保持する。吸収性本体30は,使い捨ておむつの股下部3を中心に,前身頃1及び後身頃2にかけて配置される。図2に示されるように,吸収性本体30は,吸収体31と,トップシート32と,バックシート33とを備えていればよい。
【0026】
吸収体31は,尿などの液体を吸収し,吸収した液体を保持するための部材である。吸収体31は,液透過性のトップシート32と,液不透過性のバックシート33の間に配置される。吸収体31は,トップシート32を透過した液体を吸収する機能を有し,吸収性材料により構成される。吸収体31を構成する吸収性材料には,公知の材料を採用することができる。吸収性材料としては,例えば,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートを用いることとしても良い。また,吸収性材料には,フラップパルプ,高吸収性ポリマー,又は親水性シートのうち1種類を単独で用いてもよいし,2種類以上を併用することとしてもよい。吸収性材料は,通常,単層又は複数層のマット状に形成され,用いられる。吸収体31の形状は,適宜,使い捨ておむつの形状や,大きさ,用途に合せて設計することができる。例えば,吸収体31の形状は,図2に示されるように,砂時計型としてもよい。また,一般的な使い捨ておむつに使用されている,矩形型,楕円形型,又はひょうたん型とすることとしてもよい。
【0027】
トップシート32は,着用者の股下部の肌に直接接し,尿などの液体を吸収体31へ透過させるための部材である。このため,トップシート32は,柔軟性が高い液透過性材料で構成される。また,トップシート32は,吸収体31の肌当接面側を被覆するように配置される。トップシート32を構成する不透過性材料の例は,織布,不織布,又は多孔性フィルムである。また,例えばポリプロピレンやポリエチレン,ポリエステル,ナイロンのような熱可塑性樹脂の繊維を親水化処理してさらに不織布にしたものを用いることとしてもよい。
【0028】
バックシート33は,トップシート32を透過し吸収体31に吸収された液体が,おむつの外側へ漏出することを防止するための部材である。このため,バックシート33は,液不透過性材料によって構成される。そして,バックシート33は,吸収体31の底面からの液漏れを防止するため,吸収体31を肌非当接面側から被覆する。バックシート33を構成する不透過材料の例は,ポリエチレン樹脂からなる液不透過性のフィルムである。特に,0.1〜4μmの微細な孔が複数形成された微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。
【0029】
使い捨ておむつ100は,さらに,固定用ベルト40を備える。固定用ベルト40は,着用者がパンツ型の使い捨ておむつ100を履いた後に,そのおむつのウエスト周りを着用者にフィットさせるために用いられる。図1及び図2に示されるように,固定用ベルト40は,使い捨ておむつ100の側縁を超えて幅方向の外側に延出するように,幅方向に沿って長く延びる。図1に示した例において,固定用ベルト40は,着用時において着用者の右手側の側縁から延出し,後身頃2を被覆して,着用者の左手側の側縁を回り,その先端部41が前身頃1にまで届く長さ以上の長さを有している。なお,固定用ベルト40は,着用者の左手側の側縁から延出し,着用者の右手側の側縁を回るようにしてもよい。
【0030】
図1及び図2に示された第1の実施形態において,固定用ベルト40は,使い捨ておむつの左右の側縁のいずれか一方にのみ取り付けられている。図示した例では,着用時において着用者の右手側の側縁にのみ取り付けられている。
【0031】
具体的に説明すると,固定用ベルト40は,前身頃1(前身頃外装体10)又は後身頃2(後身頃外装体20)に固定された基端部43と,この基端部43とは反対側の先端部41とを有する帯状の部材である。固定用ベルト40の基端部43は,例えばホットメルト接着剤などによっておむつ本体に接着されているか,又はヒートシールや超音波シールによっておむつ本体に接合されている。固定用ベルト40の基端部43は,基本的にはおむつ本体から剥離することがないように強力に接合されている。また,例えば固定用ベルト40の基端部43は,前身頃1と後身頃2にサイドシール部4を形成する際に,前身頃1と後身頃2の間に挟み込んで,このサイドシール部4において前身頃1と後身頃2の間に接合されていてもよい。他方で,固定用ベルト40の先端部41には,おむつ本体の外表面に係合する係合部42が設けられている。係合部42の例は,メカニカルファスナーの雄部材や粘着テープであり,不織布などで構成されているおむつ本体の外表面に剥離可能に止め付けることができるようになっている。また,係合部42は,固定用ベルト40の外表面に係合可能なものであることが好ましい。この場合,固定用ベルト40を着用者のウエスト周りを一周以上巻きつけたときに,係合部42を固定用ベルト40の外表面に止め付けることができる。
【0032】
固定用ベルト40は,一定の横幅W(使い捨ておむつの長手方向における長さ)と延出長さL(使い捨ておむつの幅方向における長さ)を持つ。固定用ベルト40の横幅は,それが取り付けられた外装体(図2の例では後身頃外装体20)の長手方向の長さSに対して,20%〜100%,30〜100%,又は50〜100%とすることが好ましい。固定用ベルト40の横幅Wは,外装体の長さSと等しくてもよいが,それよりも短くすることもできる。固定用ベルト40の横幅Wをあまり短くしすぎるとウエスト周りに適切なフィット感を与えることができなくなるため,外装体の長さSに対して少なくとも20%の幅を有することが好ましい。他方で,固定用ベルト40の延出長さLは,それが取り付けられた外装体(図2の例では後身頃外装体20)の幅方向の長さBに対して,110%〜300%,130%〜280%,又は150%〜200%とすることが好ましい。固定用ベルト40の延出長さLが外装体の長さBに対して110%以上(特に150%)であれば,固定用ベルト40の先端部41を後身頃2側を回して前身頃1に取り付けることができる。固定用ベルト40の延出長さLはあまり長すぎると却って邪魔になるため,外装体の長さBに対して最大でも300%程度に留めることがよい。
【0033】
固定用ベルト40は,伸縮性を持つことが好ましい。例えば,固定用ベルト40は,伸縮性のシート部材を一枚で構成するか,若しくは伸縮性のシート部材を複数枚積層して構成することができる。また,固定用ベルト40は,例えば肌触りの良い不織布などで構成することとしてもよい。また,固定用ベルト40は,複数枚の不織布を重ね合わせ,不織布同士の間に使い捨ておむつの幅方向(固定用ベルト40の延出方向)に沿って弾性伸縮部材を固定することで,当該不織布に伸縮性を付与したものであってもよい。
【0034】
本実施形態に係る使い捨ておむつ100を装着する際には,まず通常どおり,着用者の両脚を腰周り開口部5から入れて,各脚部を左右の脚部周り開口部6から出すようにして,使い捨ておむつ100を履く。その後,固定用ベルト40を,一方の側縁から延出させて,後身頃2側を通り,反対側の側縁を回して,その先端部41を前身頃1側にまで持ってくる。このように,固定用ベルト40を着用者のウエスト周りに巻き付けるようにして,適切にフィットする位置で,先端部41に設けられた係合部42をおむつ本体の又は固定用ベルト40の外表面に止め付ける。このようにすれば,腰周り開口部5近傍において,使い捨ておむつ100と着用者の肌との隙間をなくし,簡単にフィットさせることができる。
【0035】
上記のように,本発明に係る使い捨ておむつ100は,基本的に固定用ベルト40を利要して使い捨ておむつ100を着用者のウエスト周りに固定する。従って,従来のパンツ型使い捨ておむつで用いられていた,ウエスト周りの弾性伸縮部材の数を減らす或いは完全に無くすこともできる。図1及び図2に示した実施形態において,前身頃外装体10及び後身頃外装体20には,それぞれ,複数の弾性伸縮部材11,21が,使い捨ておむつの幅方向に沿った伸長状態で配置される。これらの弾性伸縮部材11,21は,前身頃外装体10及び後身頃外装体20の腰周りや腹周りにギャザーを形成するための部材である。ギャザーとは,各外装体10,20を構成するシート部材の間に伸長状態で挟持された複数本の弾性伸縮部材11,21が収縮することにより,各シート部材に襞が生じて形成されたものである。ギャザーを形成することで,前身頃外装体10及び後身頃外装体20の柔軟性や密着性を高めることができる。
【0036】
本発明では,このような弾性伸縮部材11,21の数を,前身頃外装体10及び後身頃外装体20のそれぞれにおいて5本以下とすることが好ましい。なお,図1に示すように,お,使い捨ておむつのウエスト周りに設けられる弾性伸縮部材には,幅方向の中央部において切断もしくは非伸縮状態とされているものが存在するが,このような不連続な弾性伸縮部材であっても幅方向に沿って延長線上にあるものは1本として計算する。図1及び図2に示した例では,弾性伸縮部材11,21は,前身頃外装体10及び後身頃外装体20のそれぞれにおいて5本ずつ設けられている。ただし,これら弾性伸縮部材11,21の数は,4本以下とすることもできるし,0本にすることもできる。弾性伸縮部材11,21は,例えば糸ゴムなどによって形成されているが,弾性伸縮部材11,21を完全に無くすことで,糸ゴムの肌触りや締め付けが着用者に与える不快感をなくすことができる。
【0037】
続いて,図3及び図4を参照して,本発明に係る使い捨ておむつ100の第2の実施形態を説明する。図3は,本発明の第2の実施形態に係る使い捨ておむつ100の例を外観斜視図であり,図4は,図2に示された使い捨ておむつ100の平面展開図である。図3及び図4に示されるように,本実施形態では,固定用ベルト40が使い捨ておむつの左右の側縁の両方に取り付けられている。第1の固定用ベルト40は,その基端部43が着用者の右手側の側縁に固定されており,第2の固定用ベルト40は,その基端部43が着用者の左手側の側縁に固定されている。なお,図4に示されるように,第1及び第2の固定用ベルト40は,使い捨ておむつの幅方向に沿った延長線上に位置している。
【0038】
図2に示されるように,第2の実施形態においては,パンツ型の使い捨ておむつ100を装着する際に,第1及び第2の固定用ベルト40をそれぞれ後身頃2側に回し,この後身頃2側において交差させて,前身頃1側の外表面に係止部42を止め付けるようにする。このようにすれば,両手を使って第1及び第2の固定用ベルト40を引き締めることで,使い捨ておむつ100を着用者のウエスト周りに簡単にフィットさせることができる。また,第1の固定用ベルト40と第2の固定用ベルト40が十分な長さを有する場合には,これら2本の固定用ベルト40を前身頃1側において結ぶこともできる。なお,元々2本の固定用ベルト40を結ぶことを想定している場合,各固定用ベルト40の先端部41に係止部42を設ける必要はない。
【0039】
第2の実施形態のように,固定用ベルト40を左右の側縁の両方に取り付ける場合,固定用ベルト40の横幅Wは,それが取り付けられた外装体の長手方向の長さSに対して,5%〜50%,10%〜30%,又は15%〜25%とすることが好ましい。各固定用ベルト40の横幅Wが太すぎると,後身頃2側において2本の固定用ベルト40を交差させることが困難になる。他方で,各固定用ベルト40の横幅Wが例えば外装体の長さSの20〜50%であれば,後身頃2側において交差せやすくなるとともに,適度なホールド力を得ることができる。
【0040】
図5は,図3及び図4に示した実施形態の変形例を示している。図5の変形例は,使い捨ておむつの左右両側にそれぞれ固定用ベルト40が設けられている点において図3等の例と共通している。他方で,図5の変形例は,第1及び第2の固定用ベルト40が,それぞれ使い捨ておむつの長手方向にずれた位置(オフセットした位置)に設けられている。すなわち,第1及び第2の固定用ベルト40は,使い捨ておむつの幅方向に沿った延長線上に位置していない。
【0041】
図5に示されるように,第1及び第2の固定用ベルト40の位置をずらすことで,これらの固定用ベルト40をウエスト周りに巻き付ける際に,後身頃2側において交差させる必要がなくなる。つまり,第1及び第2の固定用ベルト40を,それぞれ使い捨ておむつの幅方向と平行に巻き付けることができる。このように,第1及び第2の固定用ベルト40をずれた位置に設けるか,或いは図3等に示したように第1及び第2の固定用ベルト40を幅方向の延長線上に設けるかは,使い捨ておむつの用途や着用者の好みや需要に合わせて適宜変更することができる。
【0042】
以上,本願明細書では,本発明の内容を表現するために,図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし,本発明は,上記実施形態に限定されるものではなく,本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。例えば,本願明細書において説明した実施形態では,固定用ベルト40は片側に1本のみ設けられているか,又は両側に1本ずつ(合計2本)設けられていたが,片側に2本以上設けることもできるし,両側に2本ずつ以上設けることも当然に可能である。
【産業上の利用可能性】
【0043】
本発明は,乳幼児用や高齢者用のパンツ型使い捨ておむつに関する。従って,本発明は,育児及び介護に関する産業において好適に利用し得る。
【符号の説明】
【0044】
1…前身頃 2…後身頃
3…股下域 4…サイドシール部
5…腰周り開口部 6…脚部周り開口部
10…前身頃外装体 11…弾性伸縮部材
20…後身頃外装体 21…弾性伸縮部材
30…吸収性本体 31…吸収体
32…トップシート 33…バックシート
40…固定用ベルト 41…先端部
42…係止部 43…基端部
100…使い捨ておむつ
図1
図2
図3
図4
図5