(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記補助部材配置工程の前に、前記内隅に仮接合用回転ツールの攪拌ピンのみを挿入してスポットで摩擦攪拌接合を行う仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合方法。
前記補助部材配置工程の前に、前記第二金属部材における前記縦板の基端側の前記突合せ部に仮接合用回転ツールの攪拌ピンのみを挿入してスポットで摩擦攪拌接合を行う仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合方法。
前記補助部材配置工程の前に、前記第二金属部材における前記縦板の基端側の前記突合せ部を溶接によるスポットで接合する仮接合工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接合方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[第一実施形態]
本発明の第一実施形態に係る接合方法について詳細に説明する。第一実施形態では、断面U字形状の二つの金属部材である第一金属部材と第二金属部材とを接合する。第一実施形態に係る接合方法では、突合せ工程と、仮接合工程と、補助部材配置工程と、本接合工程と、除去工程と、を行う。なお、以下の説明における「表面」とは、「裏面」の反対側の面という意味である。
【0016】
突合せ工程は、
図1に示す断面U字形状の第一金属部材10と第二金属部材20とを突き合わせる工程である。
第一金属部材10および第二金属部材20の材料は、例えば、アルミニウム、アルミニウム合金、銅、銅合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等の摩擦攪拌可能な金属から適宜選択される。
【0017】
第一金属部材10は、断面がU字形状に形成された形材である。第一金属部材10は、縦板11と、縦板11の一方の側面11aの基端部11cから一方に向けて突出した第一横板12と、縦板11の一方の側面11aの先端部11dから一方に向けて突出した第二横板13とによって構成されている。なお、
図1の例では第一横板12の突出方向と第二横板13の突出方向とは同じ方向であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
縦板11の基端部11c(
図1における縦板11の右側端部)から一方に向けて第一横板12が直角に屈曲し、縦板11の先端部11d(
図1における縦板11の左側端部)から一方に向けて第二横板13が直角に屈曲している。
縦板11と第一横板12および第二横板13との接続部には、
図2に示すように、直角に屈曲した角部14が形成されている。角部14の外側の頂部には、円弧状に湾曲した曲面が形成されている。
【0018】
第二金属部材20は、
図1に示すように、断面がU字形状に形成された形材であり、第一金属部材10と同じ形状の部材である。すなわち、第二金属部材20は、縦板21と、縦板21の一方の側面21aの基端部21c(
図1における縦板21の下端部)から他方に向けて突出した第一横板22と、縦板21の一方の側面21aの先端部21d(
図1における縦板21の上端部)から他方に向けて突出した第二横板23とで構成されている。
【0019】
縦板21と第一横板22および第二横板23との接続部には、
図2に示すように、直角に屈曲した角部24が形成されている。角部24の外側の頂部には、円弧状に湾曲した曲面が形成されている。
【0020】
図2に示すように、突合せ工程では、第一金属部材10を上方向に向けて開口するように配置する。また、第二金属部材20を、第一金属部材10とは反対側の横方向に向けて開口するように配置する。そして、第一金属部材10における縦板11の他方の側面11bと、第二金属部材20における第一横板22の表面22aとを面一にするとともに、第一金属部材10における第一横板12の表面12aと、第二金属部材20における縦板21の他方の側面21bとを面接触させて突き合わせる。
【0021】
第一金属部材10における第一横板12の表面12aと、第二金属部材20における縦板21の他方の側面21bとが突き合わされると、第二金属部材20の先端部21d側の角部24と、第一横板12の表面12aとによって、突合せ部J1が形成される。
また、第一金属部材10の基端部11c側の角部14と、第二金属部材20の基端部21c側の角部24とによって、突合せ部J2が形成される。さらに、第一金属部材10の第一横板12と第二金属部材20の第二横板23とで内隅Uが形成される。
【0022】
第二金属部材20の先端部21d側の角部24には円弧状に湾曲した曲面が形成されているため、第二金属部材20の先端部21d側の角部24と、第一横板12の表面12aとの間には略V字形状の隙間S1が形成される。また、第一金属部材10の基端部11c側の角部14と第二金属部材20の基端部21c側の角部24とは、逆向きに湾曲しているため、これらの角部14と角部24との間には、略V字形状の隙間S2が形成される。
【0023】
仮接合工程は、
図3、
図4に示すように、回転ツールF(仮接合用回転ツール)を用いて突合せ部J1および突合せ部J2に対して仮接合を行う工程である。
回転ツールFは、例えば工具鋼で形成されている。回転ツールFは、連結部F1と攪拌ピンF2とを備えている。連結部F1は、摩擦攪拌装置の回転軸に連結される部位である。連結部F1は円柱状を呈する。
【0024】
攪拌ピンF2は、連結部F1から延在しており、連結部F1と同軸になっている。攪拌ピンF2は連結部F1から離間するにつれて先細りになっている。攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻設されている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端部から先端部に向かうにつれて左回りに形成されている。
なお、回転ツールFを左回転させる場合は、螺旋溝を基端から先端に向かうにつれて右回りに形成することが好ましい。
【0025】
螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより、被接合金属部材(第一金属部材10、第二金属部材20、後記する補助部材30および補助部材40)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。なお、螺旋溝は省略してもよい。
【0026】
図3に図示する第一仮接合工程(仮接合工程)では、回転させた回転ツールFの攪拌ピンF2のみを突合せ部J1に接触させてスポット仮付けを行う。かかる工程では、所定の間隔をあけて攪拌ピンF2のみを突合せ部J1に浅く押し込んでいく。そして、攪拌ピンF2のみを第一金属部材10および第二金属部材20に接触させる。これにより、攪拌ピンF2の押し込み跡には、塑性化領域W0が形成される。
回転ツールFは、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたアームロボット(図示せず)に取り付けられることが好ましい。これにより、回転ツールFの回転中心軸を容易に傾斜させることができる。
【0027】
図4に図示する第二仮接合工程(仮接合工程)では、
図3の状態にある第一金属部材10および第二金属部材20を相対的に上下反転させ、回転ツールFによって突合せ部J2にスポット仮付けを行う。第二仮接合工程では、
図3に図示する第一仮接合工程と同様に、所定の間隔をあけて攪拌ピンF2のみを突合せ部J2に浅く押し込んでいくことにより、塑性化領域W0が形成される。
【0028】
第一補助部材配置工程(補助部材配置工程)は第一仮接合工程(仮接合工程)後に行う。
図5、
図6に示す第一補助部材配置工程は、内隅Uを覆うように、第一金属部材10および第二金属部材20に補助部材30を配置する工程である。
まず、補助部材30は、金属製の板状部材である。補助部材30は摩擦攪拌可能な金属で形成されていれば特に制限されないが、本実施形態では、第一金属部材10および第二金属部材20と同じ材料になっている。
【0029】
補助部材30の板厚は、後記する第一本接合工程(本接合工程)後に、後記する塑性化領域Wが金属不足にならないとともに、突合せ部J1の隙間S1が金属によって埋まるように適宜設定する。本実施形態では、補助部材30の板厚は第一金属部材10および第二金属部材20の板厚よりも薄く設定している。
【0030】
また、本実施形態で用いる補助部材30は軸断面がL字形をした長尺状の金属部材である。これにより、
図5、
図6に示すように、第一金属部材10の第一横板12と第二金属部材20の第二横板23で構成される内隅U(突合せ部J1)を覆うように、第一金属部材10および第二金属部材20に補助部材30を配置することができる。すなわち、補助部材30の裏面30aが、第一金属部材10の第一横板12の表面12aと、第二金属部材20の第二横板23の表面23aにそれぞれ面接触する。これにより、内隅Uは補助部材30により覆われる。なお、第一実施形態では、補助部材30は軸断面がL字形の板状としているが、他の形状であってもよい。例えば、矩形状且つ平板状の補助部材を2枚用意して、一枚は第一金属部材10の第一横板12の表面12aに面接触させ、もう一枚は第二金属部材20の第二横板23の表面23aに面接触させて、2枚の補助部材30で内隅U(突合せ部J1)を覆うようにしてもよい。
なお、第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材30は治具(図示せず)によって架台(図示せず)に移動不能に拘束する。
【0031】
第一本接合工程(本接合工程)は、
図7、
図8に示すように、回転ツールF(本接合用回転ツール)を用いて突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。ここで、本接合用回転ツールは前記の仮接合用回転ツールと共用するのが好ましい。すなわち、本実施形態では、本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールは、同じ回転ツールFを使用している。第一本接合工程では、
図8に示すように、右回転させた回転ツールFを補助部材30の表面30bから挿入し、突合せ部J1に達するように、攪拌ピンF2の挿入深さを設定する。
【0032】
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻まれている。本実施形態では、回転ツールFを右回転させるため、螺旋溝は、基端部から先端部に向かうにつれて左回りに形成されている。螺旋溝をこのように設定することで、摩擦攪拌の際に塑性流動化した金属が螺旋溝によって攪拌ピンF2の先端側に導かれる。これにより被接合金属部材である第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材30の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。回転ツールFは、例えば、先端にスピンドルユニット等の回転駆動手段を備えたアームロボットに取り付けられる。アームロボットに取り付けることにより、回転ツールFの回転中心軸線の傾斜角度を容易に変更することができる。これにより、連結部F1が第一金属部材10の第一横板12の表面12aに干渉しないように、回転ツールFを第二金属部材20側に傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行う。本実施形態では、第一横板12の表面12aおよび第二横板23の表面23aに対してそれぞれ攪拌ピンF2の軸方向を略45°傾けて摩擦攪拌接合を行っている。
【0033】
第一本接合工程では、攪拌ピンF2のみを補助部材30、第一金属部材10および第二金属部材20に接触させ、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
図7に示すように、第一本接合工程では、第一金属部材10および第二金属部材20と補助部材30とが当接する部分に設定した開始位置Spに攪拌ピンF2を挿入し、突合せ部J1に沿って矢印の方向に回転ツールFを移動させる。なお、回転ツールFの移動方向は、
図7と逆方向であってもよい。これにより、突合せ部J1において、補助部材30、第一金属部材10および第二金属部材20が摩擦攪拌接合される。回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域Wが形成される。
第一本接合工程後には、
図9に示すように、補助部材30は、塑性化領域Wによって第一金属部材10側と第二金属部材20側とに分断される。また、分断された補助部材30,30の端部にはバリV,Vが形成されている。
【0034】
第一除去工程(除去工程)は、補助部材30を第一金属部材10および第二金属部材20から除去する工程である。第一除去工程では、
図9に示すように、補助部材30の端部を矢印方向にめくり上げて、塑性化領域Wを境に折り曲げるようにして切除する。除去工程は、切削工具等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で除去している。補助部材30にはバリVが形成されているので、補助部材30と共にバリVも一緒に除去される。
【0035】
第二補助部材配置工程(補助部材配置工程)は第二仮接合工程(仮接合工程)後に行う。
図10、
図11に示す第二補助部材配置工程は、突合せ部J2を覆うように、第一金属部材10および第二金属部材20に補助部材40を配置する工程である。
まず、補助部材40は、金属製の板状部材である。補助部材40は摩擦攪拌可能な金属で形成されていれば特に制限されないが、本実施形態では、第一金属部材10および第二金属部材20と同じ材料になっている。
補助部材40の板厚は、後記する第二本接合工程(本接合工程)後に、後記する塑性化領域Wが金属不足にならないとともに、突合せ部J2の隙間S2が金属によって埋まるように適宜設定する。本実施形態では、補助部材40の板厚は第一金属部材10および第二金属部材20の板厚よりも薄く設定している。
【0036】
また、本実施形態で用いる補助部材40は長尺の平板状の金属部材である。そして、
図10、
図11に示すように、第一金属部材10の縦板11と第二金属部材20の第一横板22で構成される突合せ部J2を覆うように、第一金属部材10および第二金属部材20に補助部材40を配置する。これにより、補助部材40の裏面40aが、第一金属部材10の縦板11の他方の側面11bと、第二金属部材20の第一横板22の表面22aにそれぞれ面接触する。よって、突合せ部J2は補助部材40により覆われる。なお、第一実施形態では、補助部材40は平板状としているが、他の形状であってもよい。なお、第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材40は治具(図示せず)によって架台(図示せず)に移動不能に拘束する。
【0037】
第二本接合工程(本接合工程)は、
図12、
図13に示すように、回転ツールF(本接合用回転ツール)を用いて突合せ部J2に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。第二本接合工程でも、本接合用回転ツールは前記の仮接合用回転ツールと共用するのが好ましい。すなわち、本実施形態では、本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールは、同じ回転ツールFを使用している。第二本接合工程では、
図12に示すように、右回転させた回転ツールFを補助部材40の表面40bから挿入し、
図13に示すように、突合せ部J2に達するように、攪拌ピンF2の挿入深さを設定する。
【0038】
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻まれている。これにより、第一本接合工程と同様に、被接合金属部材である第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材40の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。また、第二本接合工程では、スピンドルユニット等を備えたアームロボットにより、縦板11の他方の側面11bおよび第一横板22の表面22aに対して攪拌ピンF2の軸方向を略垂直にして摩擦攪拌接合を行っている。
第二本接合工程においても、攪拌ピンF2のみを補助部材40、第一金属部材10および第二金属部材20に接触させ、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で摩擦攪拌接合を行う。
【0039】
図12に示すように、第二本接合工程では、第一金属部材10および第二金属部材20と補助部材40とが当接する部分に設定した開始位置Spに攪拌ピンF2を挿入し、突合せ部J2に沿って矢印の方向に回転ツールFを移動させる。なお、回転ツールFの移動方向は、
図12と逆方向であってもよい。これにより、突合せ部J2において、補助部材40、第一金属部材10および第二金属部材20が摩擦攪拌接合される。回転ツールFの移動軌跡には、線状の塑性化領域Wが形成される。
第二本接合工程後には、
図14に示すように、補助部材40は、塑性化領域Wによって第一金属部材10側と第二金属部材20側とに分断される。また、分断された補助部材40,40の端部にはバリV,Vが形成されている。
【0040】
第二除去工程(除去工程)は、
図14に示すように、補助部材40を第一金属部材10および第二金属部材20から除去する工程である。第二除去工程では、
図14に示すように、補助部材40の端部を矢印方向にめくり上げて、塑性化領域Wを境に折り曲げるようにして切除する。除去工程は、切削工具等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で除去している。補助部材30にはバリVが形成されているので、補助部材30と共にバリVも一緒に除去される。
【0041】
以上説明した第一実施形態に係る接合方法によれば、第一金属部材10と第二金属部材20とが接合されるとともに、
図7、
図12に示すように第一金属部材10および第二金属部材20に加えて、補助部材30や補助部材40も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部(塑性化領域W)の金属不足を防ぐことができる。
【0042】
また、
図7、
図12に示すように、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを補助部材30(または補助部材40)、第一金属部材10および第二金属部材20に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うことにより、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。
さらに、第一実施形態に係る接合方法では、本接合工程および仮接合工程において、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを金属部材に接触させて摩擦攪拌しているため、入熱量を少なくすることができ、第一金属部材10および第二金属部材20の熱歪みを小さくすることができる。
【0043】
そのうえ、第一実施形態に係る接合方法では、突合せ部J1および突合せ部J2に補助部材30または補助部材40を配置し、補助部材30(または補助部材40)、第一金属部材10および第二金属部材20を同時に摩擦攪拌接合しているため、塑性流動化した金属によって、隙間S1、隙間S2(
図6、
図11参照)を埋めることができる。
また、第一実施形態に係る接合方法では、本接合工程によって補助部材30にバリV,Vが形成されるが、
図9、
図14に示すように、除去工程において、バリVを補助部材30ごと取り除くことができる。これにより、バリVを除去する工程を容易に行うことができる。
さらに、第一実施形態に係る接合方法では、仮接合工程を行うため、本接合工程を行う際の突合せ部J1および突合せ部J2の目開きを防ぐことができる。
【0044】
そのうえ、第一実施形態に係る接合方法では、
図3および
図4に示すように、回転ツールFの攪拌ピンF2のみを金属部材に接触させた状態で突合せ部J1および突合せ部J2のスポット仮付けを行うことにより、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。また、従来のように突合せ部J1および突合せ部J2のそれぞれの全長に対して仮接合を行う場合に比べて工程時間を短くすることができる。
また、第一実施形態では、仮接合工程を行う回転ツールF(仮接合用回転ツール)と、本接合工程を行う回転ツールF(本接合用回転ツール)は、同一の回転ツールを用いている。これにより、各工程で回転ツールの交換を行う必要が無いため作業効率を高めることができる。
【0045】
以上本発明の第一実施形態について説明したが、本発明の趣旨に反しない範囲において適宜設計変更が可能である。
例えば、仮接合用回転ツールまたは本接合用回転ツールに、ショルダ部および攪拌ピンを備えた回転ツールを用いてもよい。また、仮接合工程と、本接合工程とで異なる回転ツールを用いてもよい。
また、第一実施形態では、第一金属部材10の角部14と第二金属部材20の角部24が丸面取りされており、突合せ部J1および突合せ部J2にそれぞれ隙間S1および隙間S2を設ける構成としたが、このような隙間が無いように構成してもよい。
【0046】
また、第一実施形態の第一仮接合工程では、
図3に示すように、回転ツールFを用いて内隅U(突合せ部J2)に対して仮接合を行っているが、
図15に示すように、内隅U(突合せ部J2)に対して溶接で仮接合を行ってもよい。このとき、溶接の種類は特に制限されないが、例えば、MIG溶接(Metal Inert Gas welding)、TIG溶接(Tungsten Inert Gas welding)等のアーク溶接やレーザー溶接で行うことができる。そして、溶接トーチHを内隅Uに近接させつつ、所定の間隔をあけてスポット仮付けを行う。このようにして、スポット仮付けを行った部分には、溶接痕W2が形成される。
【0047】
また、この第一仮接合工程の変形例と同様に、
図16に示すように、第二仮接合工程においても、突合せ部J2に対して溶接で仮接合を行ってもよい。この場合も溶接の種類は特に制限されない。そして、溶接トーチHを突合せ部J2に近接させつつ、所定の間隔をあけてスポット仮付けを行う。
【0048】
このように、仮接合工程において、
図15および
図16に示すように、溶接で内隅U(突合せ部J1)および突合せ部J2のスポット仮付けを行う場合には、仮付けを摩擦攪拌にて行う場合より、摩擦攪拌装置に作用する負担を軽減できる。また、従来のように内隅U(突合せ部J1)および突合せ部J2それぞれの全長に対して仮接合を行う場合に比べて工程時間を短くすることができる。第一金属部材10および第二金属部材20は、少なくとも端部が断面U字形状を呈する金属部材でもよい。
【0049】
[第二実施形態]
本発明の第二実施形態に係る接合方法について詳細に説明する。以下の説明において、第一実施形態と同様の部材等については同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。第二実施形態においても、断面U字形状の二つの金属部材である第一金属部材と第二金属部材とを接合する。また、第二実施形態に係る接合方法でも、突合せ工程と、仮接合工程と、補助部材配置工程と、本接合工程と、除去工程と、を行う。このうち、突合せ工程と、仮接合工程は、第一実施形態と同様であるため説明を省略する。
【0050】
仮接合工程後、第一補助部材配置工程(補助部材配置工程)を行う。第一補助部材配置工程は、
図17に示すように、突合せ部J1を覆うように、第一金属部材10および第二金属部材20に補助部材50を配置する工程である。
補助部材50は金属製の平板状部材である。第一実施形態と同様に補助部材50は摩擦攪拌可能な金属であれば特に制限されないが、本実施形態でも、第一金属部材10および第二金属部材20と同じ材料になっている。
【0051】
補助部材50の板厚は、後記する第一本接合工程後に、後記する塑性化領域Wが金属不足にならないとともに、突合せ部J1の隙間S1が金属によって埋まるように適宜設定する。第二実施形態でも、補助部材50の板厚は第一金属部材10および第二金属部材20の板厚よりも薄く設定している。
補助部材50の配置方法は、突合せ部J1を覆うように、第二金属部材20の第二横板23に補助部材50の裏面50aを面接触させて、第一金属部材10の第一横板12の表面12aに補助部材50の端面50bを突き合わせる。
また、第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材50は治具(図示せず)によって移動不能に拘束する。なお、本実施形態では、補助部材50は板状としているが、他の形状であってもよい。
【0052】
第一本接合工程(本接合工程)は、
図18、
図19に示すように、回転ツールF(本接合用回転ツール)を用いて突合せ部J1に対して摩擦攪拌接合を行う工程である。ここで、本実施形態でも、本接合用回転ツールは前記の仮接合用回転ツールと共用するのが好ましい。すなわち、本実施形態では、本接合用回転ツールおよび仮接合用回転ツールは、同じ回転ツールFを使用している。
【0053】
攪拌ピンF2の外周面には螺旋溝が刻まれている。これにより、第一実施形態同様、被接合金属部材(第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材50)の外部に溢れ出る金属の量を少なくすることができる。また、回転ツールFは、スピンドルユニット等を備えたアームロボットに取り付けられることにより、回転ツールFの回転中心軸の傾斜角度を容易に変更することができる。
【0054】
突合せ部J1の摩擦攪拌接合では、第一金属部材10の第一横板12の表面12aと補助部材50の端面50bとが当接する部分に設定した補助部材50の表面50cにおける開始位置Spに、右回転させた攪拌ピンF2を挿入し、突合せ部J1に沿って回転ツールFを相対移動させる。つまり、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材50に接触させて摩擦攪拌を行う。また、回転ツールFの右側に補助部材50が位置するように回転ツールFの進行方向を設定する。
図18の場合、図の手前側から奥側に向かって回転ツールFを移動させる(矢印で示している)。これにより、回転ツールFの移動軌跡には線状の塑性化領域Wが形成される。
【0055】
図18、
図19に示すように、第一本接合工程では、連結部F1が第一金属部材10の第一横板12の表面12aに干渉しないように、回転ツールFを第二金属部材20に対して傾斜させた状態で摩擦攪拌接合を行う。攪拌ピンF2の挿入角度や挿入深さは、第一金属部材10と第二金属部材20とを接合できるように適宜設定すればよい。なお、本実施形態では、第一横板12の表面12aに対して回転ツールFの中心軸線を略45°傾けている。
【0056】
第一本接合工程では、補助部材50にバリが発生するように接合条件を設定するのが望ましい。バリが発生する位置は、接合条件によって異なる。当該接合条件とは、回転ツールFの回転速度、回転方向、移動速度(送り速度)、進行方向、攪拌ピンF2の傾斜角度(テーパー角度)、被接合金属部材(第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材50)の材質、被接合金属部材の厚さ等の各要素とこれらの要素の組み合わせで決定される。
【0057】
例えば、回転ツールFの回転速度が遅い場合は、フロー側(retreating side:回転ツールの外周における接線速度から回転ツールの移動速度が減算される側)に比べてシアー側(advancing side:回転ツールの外周における接線速度に回転ツールの移動速度が加算される側)の方が、塑性流動材の温度が上昇し易くなるため、塑性化領域外のシアー側にバリが多く発生する傾向にある。一方、例えば、回転ツールFの回転速度が速い場合、シアー側の方が塑性流動材の温度が上昇するものの、回転速度が速い分、塑性化領域外のフロー側にバリが多く発生する傾向がある。
【0058】
本実施形態では、回転ツールFの回転速度を速く設定しているため、突合せ部J1の摩擦攪拌接合では、塑性化領域W外のフロー側である補助部材50にバリVが多く発生する傾向にある(
図19参照)。なお、回転ツールFの接合条件および補助部材50の配置位置は、ここで説明したものに限定されるものではなく適宜設定すればよい。
【0059】
このようにして、バリVが発生する側またはバリVが多く発生する側が補助部材50となるように接合条件を設定すれば、
図18、
図19に示すように補助部材50にバリVを集約することができる。そのため、後記する第一除去工程を容易に行うことができるため好ましい。また、回転ツールFの回転速度を速く設定することにより、回転ツールFの移動速度(送り速度)を速めることができる。これにより接合サイクルを短くすることができる。
【0060】
第一本接合工程の後、第一除去工程(除去工程)を行う。第一除去工程は、第二金属部材20から補助部材50を除去する工程である。
図20に示すように、本実施形態の除去工程では、補助部材50の端部を矢印方向にめくり上げて、塑性化領域Wを境に折り曲げるようにして切除する。除去工程は、切削工具等を用いてもよいが、本実施形態では手作業で除去している。補助部材50にはバリVが形成されているので、補助部材50と共にバリVも一緒に除去される。
本実施形態においても、第二補助部材配置工程、第二本接合工程、第二除去工程を行うが、これらの工程の内容は第一実施形態と同様であるため、説明は省略する。
【0061】
以上説明した本実施形態の接合方法によれば、第一金属部材10と第二金属部材20とが接合されるとともに、第一金属部材10および第二金属部材20に加えて、補助部材50も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属不足を防ぐことができる。
【0062】
また、摩擦攪拌接合で発生するバリVを補助部材50ごと金属部材から除去することができるため、バリVを除去する工程が容易となる。また、本接合工程では、攪拌ピンF2のみを被接合金属部材に接触させた状態で摩擦攪拌接合を行うため、摩擦攪拌装置に作用する負荷を軽減することができる。
さらに、仮接合用回転ツールおよび本接合用回転ツールは同一の回転ツールFとすることにより、仮接合工程と本接合工程とで回転ツールFの交換を行う必要がないため、作業効率を高めることができる。
その他、第一実施形態と同様の工程においては、第一実施形態と同様の作用効果を奏することができる。
また、第一実施形態で説明した仮接合工程等の変形例が、本実施形態でも適用可能である。
【0063】
[第三実施形態]
第三実施形態も、突合せ工程と、仮接合工程と、補助部材配置工程と、本接合工程と、除去工程とを行う。突合せ工程および仮接合工程は第一実施形態と同様であり、除去工程は第二実施形態と同様であるため詳細な説明は省略する。また、第二補助部材配置工程、第二本接合工程も第一実施形態と同様であるため、説明は省略する。以下では、第一補助部材配置工程および第一本接合工程について説明する。また、第一実施形態または第二実施形態と同様の部材等については第一実施形態または第二実施形態と同一の符号を用い、詳細な説明は省略する。
【0064】
まず、
図21に示すように、第一補助部材配置工程(補助部材配置工程)においては、内隅U(突合せ部J1)を覆うように、第一金属部材10の第一横板12の表面12aに補助部材50の裏面50aを面接触させて突合せ部J1に補助部材50の端面50bを突き合わせる。
【0065】
次に、第一本接合工程(本接合工程)について説明する。
図22に示すように、突合せ部J1の摩擦攪拌接合では、第一金属部材10の表面12aと補助部材50の端面50bとが当接する部分に設定した補助部材50の表面50cにおける開始位置Spに、高速で右回転させた攪拌ピンF2を挿入し、突合せ部J1に沿って回転ツール(本接合用回転ツール)Fを相対移動させる。つまり、攪拌ピンF2の基端側は露出させた状態で、攪拌ピンF2のみを第一金属部材10、第二金属部材20および補助部材50に接触させて摩擦攪拌を行う。また、回転ツールFの右側に補助部材30が位置するように回転ツールFの進行方向を設定する。
図22の場合、図の奥側から手前側に向かって回転ツールFを移動させる(矢印で示している)。これにより、回転ツールFの移動軌跡には線状の塑性化領域Wが形成される。また、回転ツールFの補助部材50側がフロー側となり、バリVも主として補助部材50に発生する。
【0066】
以上説明した本実施形態の接合方法によれば、第一金属部材10と第二金属部材20とが接合されるとともに、第一金属部材10および第二金属部材20に加えて、補助部材50も同時に摩擦攪拌接合することにより、接合部の金属不足を防ぐことができる。
その他、第三実施形態によれば第二実施形態と同様の効果を奏することができる。