(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記2種以上のビニル化合物には、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーからなる群より選択される1種以上のビニル化合物が含まれる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
前記コート層に含有される前記2種以上のビニル化合物の共重合体は、前記式(1)で表される1種以上の化合物と、1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体の共重合体である、請求項1〜4のいずれか一項に記載の正帯電性トナー。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態について説明する。なお、粉体(より具体的には、トナー母粒子、外添剤、トナー、又はキャリア等)に関する評価結果(形状又は物性などを示す値)は、何ら規定していなければ、その粉体に含まれる相当数の粒子について測定した値の個数平均である。
【0014】
粉体の個数平均粒子径は、何ら規定していなければ、顕微鏡を用いて測定された1次粒子の円相当径(ヘイウッド径:粒子の投影面積と同じ面積を有する円の直径)の個数平均値である。また、粉体の体積中位径(D
50)の測定値は、何ら規定していなければ、ベックマン・コールター株式会社製の「コールターカウンターマルチサイザー3」を用いてコールター原理(細孔電気抵抗法)に基づき測定した値である。
【0015】
帯電性は、何ら規定していなければ、摩擦帯電における帯電性を意味する。摩擦帯電における正帯電性の強さ(又は負帯電性の強さ)は、周知の帯電列などで確認できる。
【0016】
以下、化合物名の後に「系」を付けて、化合物及びその誘導体を包括的に総称する場合がある。化合物名の後に「系」を付けて重合体名を表す場合には、重合体の繰返し単位が化合物又はその誘導体に由来することを意味する。また、アクリル及びメタクリルを包括的に「(メタ)アクリル」と総称する場合がある。また、アクリロイル(CH
2=CH−CO−)及びメタクリロイル(CH
2=C(CH
3)−CO−)を包括的に「(メタ)アクリロイル」と総称する場合がある。また、結晶性ポリエステル樹脂は「結晶性ポリエステル樹脂」と記載し、非結晶性ポリエステル樹脂は、単に「ポリエステル樹脂」と記載する。
【0017】
本願明細書中では、未処理のチタニア粒子(以下、「チタニア基体」と記載する)も、チタニア基体に表面処理を施して得たチタニア粒子(すなわち、表面処理されたチタニア粒子)も、「チタニア粒子」と記載する。また、表面処理剤で疎水化されたチタニア粒子を「疎水性チタニア粒子」と、表面処理剤で正帯電化されたチタニア粒子を「正帯電性チタニア粒子」と、それぞれ記載する場合がある。
【0018】
本実施形態に係るトナーは、静電潜像の現像に好適に用いることができる正帯電性トナーである。本実施形態のトナーは、複数のトナー粒子(それぞれ後述する構成を有する粒子)を含む粉体である。本実施形態に係るトナーは、1成分現像剤として使用してもよい。ただし、高画質の画像を形成するためには、例えば混合装置(より具体的には、ボールミル等)を用いて、本実施形態に係るトナーとキャリアとを混合することにより、2成分現像剤を調製することが好ましい。正帯電性トナーは、キャリアとの摩擦により正に帯電する。
【0019】
キャリアとしては、強磁性物質(例えば、フェライト)を含有するキャリアコアと、キャリアコアを覆う樹脂層とを備えるキャリア粒子の粉体が好ましい。長期にわたってトナーに対するキャリアの十分な帯電付与性を確保するためには、樹脂層がキャリアコアの表面を完全に覆っていること(すなわち、樹脂層から露出するキャリアコアの表面領域がないこと)が好ましい。キャリア粒子に磁性を付与するためには、強磁性物質でキャリアコアを形成してもよいし、強磁性粒子を分散させた樹脂でキャリアコアを形成してもよい。樹脂層を構成する樹脂の例としては、フッ素樹脂(より具体的には、PFA又はFEP等)、ポリアミドイミド樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、エポキシ樹脂、及びフェノール樹脂からなる群より選択される1種以上の樹脂が挙げられる。ただし、十分なキャリアの耐ストレス性を確保するためには、キャリアコアを覆う樹脂層がシリコーン樹脂を含有することが特に好ましい。トナーの体積中位径(D
50)が4μm以上9μm以下である場合には、キャリアの体積中位径(D
50)は、20μm以上120μm以下であることが好ましく、30μm以上70μm以下であることが特に好ましい。また、高画質の画像を形成するためには、2成分現像剤におけるトナーの量は、キャリア100質量部に対して、5質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
【0020】
本実施形態に係るトナーは、例えば電子写真装置(画像形成装置)において画像の形成に用いることができる。以下、電子写真装置による画像形成方法の一例について説明する。
【0021】
まず、電子写真装置の像形成部(例えば、帯電装置及び露光装置)が、画像データに基づいて感光体(例えば、感光体ドラムの表層部)に静電潜像を形成する。続けて、電子写真装置の現像装置(詳しくは、正帯電性トナー及びキャリアを含む2成分現像剤がセットされた現像装置)が、トナーを感光体に供給して、感光体に形成された静電潜像を現像する。トナーは、感光体に供給される前に、現像装置内でキャリアとの摩擦により正に帯電する。現像工程では、感光体の近傍に配置された現像スリーブ(例えば、現像装置内の現像ローラーの表層部)上のトナー(詳しくは、正に帯電したトナー)が感光体に供給され、供給されたトナーが感光体の静電潜像に付着することで、感光体上にトナー像が形成される。消費されたトナーは、補給用トナーを収容するトナーコンテナから現像装置へ補給される。
【0022】
続く転写工程では、電子写真装置の転写装置が、感光体上のトナー像を中間転写体(例えば、転写ベルト)に転写した後、さらに中間転写体上のトナー像を記録媒体(例えば、紙)に転写する。その後、電子写真装置の定着装置(定着方式:加熱ローラー及び加圧ローラーによるニップ定着)がトナーを加熱及び加圧して、記録媒体にトナーを定着させる。その結果、記録媒体に画像が形成される。例えば、ブラック、イエロー、マゼンタ、及びシアンの4色のトナー像を重ね合わせることで、フルカラー画像を形成することができる。転写工程の後、感光体上に残ったトナーは、クリーニング部材(例えば、クリーニングブレード)により除去される。なお、転写方式は、感光体上のトナー像を、中間転写体を介さず、記録媒体に直接転写する直接転写方式であってもよい。また、定着方式は、ベルト定着方式であってもよい。
【0023】
本実施形態に係るトナーは、複数のトナー粒子を含む。トナー粒子は、結着樹脂を含有するトナー母粒子と、外添剤とを備える。外添剤はトナー母粒子の表面に付着する。トナー母粒子は、必要に応じて、結着樹脂以外に、内添剤(例えば、離型剤、着色剤、電荷制御剤、及び磁性粉の少なくとも1つ)を含有してもよい。
【0024】
トナー母粒子は、シェル層を備えないトナー母粒子(以下、非カプセルトナー母粒子と記載する)であってもよいし、シェル層を備えるトナー母粒子(以下、カプセルトナー母粒子と記載する)であってもよい。非カプセルトナー母粒子(トナーコア)の表面にシェル層を形成することで、カプセルトナー母粒子を製造することができる。シェル層は、実質的に樹脂から構成される。例えば、低温で溶融するトナーコアを、耐熱性に優れるシェル層で覆うことで、トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図ることが可能になる。シェル層を構成する樹脂中に添加剤が分散していてもよい。シェル層は、トナーコアの表面全体を覆っていてもよいし、トナーコアの表面を部分的に覆っていてもよい。
【0025】
非カプセルトナー母粒子は、例えば粉砕法又は凝集法により作製できる。これらの方法は、非カプセルトナー母粒子の結着樹脂中に内添剤を良好に分散させ易い。一般に、非カプセルトナー母粒子は、粉砕トナーと重合トナー(ケミカルトナーとも呼ばれる)とに大別される。粉砕法で得られた非カプセルトナー母粒子は粉砕トナーに属し、凝集法で得られた非カプセルトナー母粒子は重合トナーに属する。
【0026】
粉砕法の一例では、まず、結着樹脂、着色剤、電荷制御剤、及び離型剤を混合する。続けて、得られた混合物を、溶融混練装置(例えば、1軸又は2軸の押出機)を用いて溶融混練する。続けて、得られた溶融混練物を粉砕し、得られた粉砕物を分級する。これにより、所望の粒子径を有する非カプセルトナー母粒子が得られる。粉砕法を用いた場合には、凝集法を用いた場合よりも容易にトナー母粒子を作製できることが多い。
【0027】
凝集法の一例では、まず、複数の結着樹脂微粒子と複数の離型剤微粒子と複数の着色剤微粒子とを含む水性媒体中で、これらの微粒子を所望の粒子径になるまで凝集させる。これにより、結着樹脂、離型剤、及び着色剤を含む凝集粒子が形成される。続けて、得られた凝集粒子を加熱して、凝集粒子に含まれる成分を合一化させる。これにより、所望の粒子径を有する非カプセルトナー母粒子が得られる。
【0028】
カプセルトナー母粒子を製造する場合、シェル層の形成方法は任意である。例えば、in−situ重合法、液中硬化被膜法、又はコアセルベーション法により、トナーコア(非カプセルトナー母粒子)の表面にシェル層を形成できる。
【0029】
本実施形態に係るトナーは、次に示す構成(以下、基本構成と記載する)を有する正帯電性トナーである。
【0030】
(トナーの基本構成)
トナーが、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含む。外添剤は、チタニア粒子と、チタニア粒子を覆うコート層とを備える粒子(以下、「被覆チタニア粒子」と記載する)の粉体を含む。以下、被覆チタニア粒子の粉体を「被覆チタニア粉体」と記載する場合がある。コート層は、少なくとも前述の式(1)で表される化合物を含む2種以上のビニル化合物の共重合体(以下、「特定ビニル共重合体」と記載する)を含有する。被覆チタニア粒子の粉体1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量(以下、「未開環OXZ量」と記載する)は、0.100mmol以上0.600mmol以下である。被覆チタニア粒子の粉体1gに含まれる、チタニア粒子の表面に存在する官能基との反応により開環しているコート層中のオキサゾリン基の量(以下、「開環OXZ量」と記載する)は、0.100mmol以上0.400mmol以下である。未開環OXZ量及び開環OXZ量はそれぞれ、ガスクロマトグラフィー質量分析法により測定できる。以下、コート層を形成するための材料を、「コート材料」と記載する場合がある。
【0031】
また、上記基本構成を有するトナーと、このトナーを摩擦により正に帯電させ得るキャリアとを混合することで、2成分現像剤を調製できる。キャリアは、強磁性物質を含有するキャリアコアと、キャリアコアを覆う樹脂層とを備えるキャリア粒子の粉体であることが好ましい。
【0032】
ビニル化合物の重合体において、ビニル化合物に由来する繰返し単位は、炭素2重結合「C=C」により付加重合していると考えられる。ビニル化合物は、ビニル基(CH
2=CH−)、又はビニル基中の水素が置換された基を有する化合物である。ビニル化合物の例としては、エチレン、プロピレン、ブタジエン、塩化ビニル、アクリル酸、アクリル酸エステル、メタクリル酸、メタクリル酸エステル、アクリロニトリル、又はスチレンが挙げられる。
【0033】
前述の式(1)で表される化合物は、付加重合により下記式(1−1)で表される単位になって共重合体を構成する。以下、前述の式(1)で表される化合物を「化合物(1)」と記載し、下記式(1−1)で表される単位を「単位(1−1)」と記載する。
【0035】
式(1−1)中、R
1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基を表す。
【0036】
前述の基本構成において、被覆チタニア粒子(外添剤)は、チタニア粒子を含む。一般に、チタニア粒子は、硬い。このため、チタニア粒子は、研磨性を有する。また、被覆チタニア粒子のコート層は、特定ビニル共重合体を含有する。特定ビニル共重合体は、単位(1−1)を含む。単位(1−1)は、未開環のオキサゾリン基を有する。未開環のオキサゾリン基は、環状構造を有し、強い正帯電性を示す。未開環のオキサゾリン基は、カルボキシル基、芳香族性スルファニル基、及び芳香族性ヒドロキシル基と反応し易い。また、未開環のオキサゾリン基は、チタニア粒子の表面に存在する水酸基(−OH)とも反応し得る。チタニア粒子の表面の酸性は強く、チタニア粒子の表面に存在する水酸基(−OH)はオキサゾリン基と反応し易い傾向がある。例えば、コート層中の単位(1−1)がチタニア粒子(式(1−2)中では、R
0と表す)の水酸基と反応すると、下記式(1−2)に示すようにオキサゾリン基が開環し、チタニア粒子とコート層との間に化学的な結合(詳しくは、共有結合)が形成される。こうした結合が形成されることで、チタニア粒子とコート層との結合が強固になり、チタニア粒子からのコート層の脱離が抑制されることになる。以下、下記式(1−2)で表される単位を「単位(1−2)」と記載する。
【0038】
被覆チタニア粒子のコート層は、単位(1−1)と単位(1−2)とを含むことが好ましい。単位(1−2)は、チタニア粒子の表面に存在する官能基との反応により開環しているオキサゾリン基を含む。式(1−2)中、R
1は、式(1−1)中のR
1と同一の基を表し、R
0は、チタニア粒子を表す。
【0039】
未開環のオキサゾリン基は、架橋性と正帯電性とを併せ持つ。このため、コート層に特定ビニル共重合体を含有させることで、優れた正帯電性と十分な耐ストレス性とを有する被覆チタニア粒子(外添剤)が得られる。こうした被覆チタニア粒子(外添剤)を含むトナーを使用することで、連続印刷において、かぶり及びトナー飛散を抑制して、高画質の画像を継続的に形成することが可能になる。
【0040】
前述の基本構成において、未開環OXZ量が多くなるほど、トナーの正帯電性は強くなる傾向がある。ただし、未開環OXZ量が多くなり過ぎると、トナーが電荷減衰し易くなる。前述の基本構成を有するトナーでは、未開環OXZ量が適量(詳しくは、0.100mmol以上0.600mmol以下)であることで、トナーの電荷減衰を十分に抑制しながら、十分なトナーの正帯電性を確保することが可能になる。トナーの正帯電性が不十分であったり、トナーが電荷減衰し易かったりすると、トナー飛散が生じ易くなる。
【0041】
前述の基本構成において、開環OXZ量が多くなるほど、チタニア粒子とコート層との結合が強固になる傾向がある。被覆チタニア粒子において、チタニア粒子とコート層との結合強度が不十分であり、コート層が剥がれてチタニア粒子が露出すると、被覆チタニア粒子の帯電性が変動する。例えば、被覆チタニア粒子のコア部(チタニア粒子)としては、チタニア基体を使用できる。チタニア基体は、コート層(樹脂層)と比べて、強い正帯電性を有する。このため、コート層が剥がれてチタニア基体が露出すると、トナーが過剰にチャージアップし易くなる。トナーの過剰なチャージアップは、トナーによって形成される画像の質(詳しくは、画像濃度)を低下させる。ただし、開環OXZ量が多過ぎると、トナーの現像性が悪くなる傾向がある。チタニア基体は、低い電気抵抗を有する。このため、チタニア粒子を外添剤として使用すると、トナーの過剰な帯電が抑制されるとともに、トナーの帯電量分布の狭小化が図られる。被覆チタニア粒子を外添剤として使用した場合も、開環OXZ量が十分少なければ、同様の効果が奏される。他方、開環OXZ量が多過ぎると、被覆チタニア粒子の電気抵抗が高くなることにより、上記効果が奏されなくなる。その結果、トナーの現像性が悪くなる。前述の基本構成を有するトナーでは、開環OXZ量が適量(詳しくは、0.100mmol以上0.400mmol以下)であることで、外添剤のコート層の剥離を抑制しながら、高画質の画像を継続的に形成することが可能になる。
【0042】
前述の基本構成において、未開環OXZ量と開環OXZ量との合計量は、1.000mmol以下であることが好ましく、0.950mmol以下であることがより好ましい。コート層形成工程において、チタニア粒子の分散液に対して、未開環OXZ量と開環OXZ量との合計量が1.000mmolを超えるような量のコート材料を添加すると、適切にコート層が形成される前にチタニア粒子が凝集してしまうことがある。トナーの生産性の観点からも、前述の基本構成において、開環OXZ量が0.400mmolを超えることは好ましくない。
【0043】
外添剤(詳しくは、複数の外添剤粒子を含む粉体)は、内添剤とは異なり、トナー母粒子の内部には存在せず、トナー母粒子の表面(トナー粒子の表層部)のみに選択的に存在する。例えば、トナー母粒子(粉体)と外添剤(粉体)とを一緒に攪拌することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させることができる。トナー母粒子と外添剤粒子とは、互いに化学反応せず、化学的ではなく物理的に結合する。トナー母粒子と外添剤粒子との結合の強さは、攪拌条件(より具体的には、攪拌時間、及び攪拌の回転速度等)、外添剤粒子の粒子径、外添剤粒子の形状、及び外添剤粒子の表面状態などによって調整できる。
【0044】
トナー粒子からの外添剤粒子の脱離を抑制するためには、外添剤粒子がトナー母粒子の表面に強く結合していることが好ましい。埋め込みによる機械的結合で、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を固定してもよい。しかし、外添剤粒子によってトナーの流動性を向上させるためには、外添剤粒子がトナー母粒子の表面に弱く結合していることが好ましい。例えば、粒子径の小さい球状の外添剤粒子が回転可能な状態でトナー母粒子の表面に付着していることが好ましい。トナー母粒子の表面を外添剤粒子が回転しながら移動できることで、トナーの流動性が向上すると考えられる。トナーの流動性を向上させるための外添剤粒子は、主にファンデルワールス力又は静電気力によってトナー母粒子の表面に付着していることが好ましい。
【0045】
なお、チタニア粒子の表面全域がコート層によって完全に被覆されていてもよいし、コート層によってチタニア粒子の表面全域が完全には被覆されておらず、チタニア粒子の表面に、コート層で覆われた領域(以下、被覆領域と記載する)と、コート層で覆われていない領域(以下、露出領域と記載する)とが存在していてもよい。ただし、優れた正帯電性及び耐ストレス性を有する被覆チタニア粒子を得るためには、コート層が、チタニア粒子の表面全域のうち、95%以上100%以下の面積を覆っていることが好ましく、100%の面積を覆っていること(すなわち、コート層がチタニア粒子の表面を完全に覆っていること)が特に好ましい。
【0046】
画像形成に適したトナーの一例では、前述の基本構成において、チタニア粒子が、表面処理されていないチタニア基体であり、コート層が、チタニア粒子の表面全域を覆っており、被覆チタニア粒子の粉体におけるチタニア粒子の粒子径が、個数平均で15nm以上50nm以下(特に好ましくは、15nm以上30nm以下)であり、被覆チタニア粒子の粉体の量が、トナー母粒子100質量部に対して0.5質量部以上5.0質量部以下である。こうした構成を有するトナーでは、外添剤がシリカ粒子を含まなくても、被覆チタニア粒子によって十分なトナーの流動性を確保できる。
【0047】
以下、
図1及び
図2を参照して、前述の基本構成を有するトナーを含む2成分現像剤の一例について説明する。
【0048】
図1に示される2成分現像剤は、トナー(詳しくは、トナー粒子10の粉体)とキャリア(詳しくは、キャリア粒子20の粉体)とを含む。トナーは、トナー母粒子11と複数の被覆チタニア粒子13とを備えるトナー粒子10を、複数含む。複数の被覆チタニア粒子13はそれぞれ、主にファンデルワールス力又は静電気力によってトナー母粒子11の表面に付着している。キャリアは、複数のキャリア粒子20を含む。
【0049】
キャリア粒子20は、強磁性物質(例えば、フェライト)を含有するキャリアコアと、キャリアコアの表面を覆う樹脂層とを備えることが好ましい。樹脂層は、キャリアコアの表面全域を覆っていてもよいし、キャリアコアの表面領域を部分的に覆っていてもよい。ただし、十分なキャリアの帯電付与性及び耐久性を確保するためには、樹脂層がキャリアコアの表面全域を完全に(すなわち、被覆面積率100%で)覆っていることが好ましい。
【0050】
被覆チタニア粒子13は、
図2に示すように、チタニア粒子131と、チタニア粒子131を覆うコート層132とを備える。コート層132は、特定ビニル共重合体を含有する。チタニア粒子131は、例えばチタニア基体(すなわち、未処理の酸化チタン粒子)である。チタニア粒子131は、表面処理された酸化チタン粒子(例えば、疎水性チタニア粒子又は正帯電性チタニア粒子)であってもよい。ただし、被覆チタニア粒子13の生産性、及びコート層132の被覆性の観点からは、チタニア粒子131は、チタニア基体であることが好ましい。
【0051】
前述の基本構成によれば、トナー母粒子が、負帯電性を有する樹脂(より具体的には、ポリエステル樹脂又はスチレン−アクリル酸系樹脂等)を含有する場合でも、十分なトナーの帯電性を確保し易くなる。トナーの耐熱保存性と低温定着性との両立を図るためには、前述の基本構成を有するトナーにおいて、トナー母粒子が、ポリエステル樹脂を含有し、かつ、オキサゾリン基を含まない非カプセルトナー母粒子であることが好ましい。すなわち、非カプセルトナー母粒子の内添剤が、オキサゾリン基を有する材料を含まないことが好ましい。また、ポリエステル樹脂を含有する非カプセルトナー母粒子は、粉砕トナーであることが特に好ましい。こうした粉砕トナーでは、非カプセルトナー母粒子が、溶融混練された1種以上のポリエステル樹脂を含有する。
【0052】
画像形成に適したトナーを得るためには、トナーの体積中位径(D
50)が4μm以上9μm以下であることが好ましい。
【0053】
次に、トナー粒子の構成について説明する。詳しくは、非カプセルトナー母粒子(結着樹脂及び内添剤)及び外添剤について、順に説明する。
【0054】
[トナー母粒子]
(結着樹脂)
トナー母粒子では、一般的に、成分の大部分(例えば、85質量%以上)を結着樹脂が占める。このため、結着樹脂の性質がトナー母粒子全体の性質に大きな影響を与えると考えられる。結着樹脂として複数種の樹脂を組み合わせて使用することで、結着樹脂の性質(より具体的には、水酸基価、酸価、Tg、又はTm等)を調整することができる。結着樹脂がエステル基、ヒドロキシル基、エーテル基、酸基、又はメチル基を有する場合には、トナー母粒子はアニオン性になる傾向が強くなり、結着樹脂がアミノ基を有する場合には、トナー母粒子はカチオン性になる傾向が強くなる。
【0055】
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナー母粒子が、結着樹脂として熱可塑性樹脂を含有することが好ましく、結着樹脂全体の85質量%以上の割合で熱可塑性樹脂を含有することがより好ましい。トナー母粒子に含有される熱可塑性樹脂としては、例えば、スチレン系樹脂、アクリル酸系樹脂(より具体的には、アクリル酸エステル重合体又はメタクリル酸エステル重合体等)、オレフィン系樹脂(より具体的には、ポリエチレン樹脂又はポリプロピレン樹脂等)、塩化ビニル樹脂、ポリビニルアルコール、ビニルエーテル樹脂、N−ビニル樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、又はウレタン樹脂が好ましい。また、上記樹脂の共重合体、すなわち上記樹脂中に任意の繰返し単位が導入された共重合体(より具体的には、スチレン−アクリル酸系樹脂又はスチレン−ブタジエン系樹脂等)も、トナー母粒子の結着樹脂として好ましい。
【0056】
トナーの低温定着性を向上させるためには、トナー母粒子が、ポリエステル樹脂又はスチレン−アクリル酸系樹脂を含有することが好ましく、ポリエステル樹脂を含有することが特に好ましい。また、トナー母粒子は、結着樹脂として結晶性ポリエステル樹脂を含有してもよい。
【0057】
ポリエステル樹脂は、1種以上の多価アルコール(より具体的には、以下に示すような、脂肪族ジオール、ビスフェノール、又は3価以上のアルコール等)と1種以上の多価カルボン酸(より具体的には、以下に示すような2価カルボン酸又は3価以上のカルボン酸等)とを縮重合させることで得られる。また、ポリエステル樹脂は、他のモノマー(多価アルコール及び多価カルボン酸のいずれでもないモノマー)に由来する繰返し単位を含んでいてもよい。
【0058】
脂肪族ジオールの好適な例としては、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,2−プロパンジオール、α,ω−アルカンジオール(より具体的には、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、又は1,12−ドデカンジオール等)、2−ブテン−1,4−ジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、又はポリテトラメチレングリコールが挙げられる。
【0059】
ビスフェノールの好適な例としては、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物、又はビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0060】
3価以上のアルコールの好適な例としては、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、ジグリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、又は1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
【0061】
2価カルボン酸の好適な例としては、芳香族ジカルボン酸(より具体的には、フタル酸、テレフタル酸、又はイソフタル酸等)、α,ω−アルカンジカルボン酸(より具体的には、マロン酸、コハク酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、又は1,10−デカンジカルボン酸等)、又はシクロアルカンジカルボン酸(より具体的には、シクロヘキサンジカルボン酸等)が挙げられる。
【0062】
3価以上のカルボン酸の好適な例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8−オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、又はエンポール三量体酸が挙げられる。
【0063】
トナーの耐熱保存性及び低温定着性の両立を図るためには、結着樹脂(トナー母粒子が複数種の結着樹脂を含有する場合には、質量基準で最も多い結着樹脂)のガラス転移点(Tg)が50℃以上65℃以下であることが好ましい。
【0064】
画像形成に適したトナーを得るためには、結着樹脂(トナー母粒子が複数種の結着樹脂を含有する場合には、質量基準で最も多い結着樹脂)の軟化点(Tm)が80℃以上150℃以下であることが好ましい。
【0065】
十分なトナーの強度及び定着性を確保するためには、結着樹脂(トナー母粒子が複数種の結着樹脂を含有する場合には、質量基準で最も多い結着樹脂)の、数平均分子量(Mn)が1000以上2000以下であり、かつ、分子量分布(数平均分子量(Mn)に対する質量平均分子量(Mw)の比率Mw/Mn)が20以上40以下であることが好ましい。
【0066】
(着色剤)
トナー母粒子は、着色剤を含有していてもよい。着色剤としては、トナーの色に合わせて公知の顔料又は染料を用いることができる。画像形成に適したトナーを得るためには、着色剤の量が、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
【0067】
トナー母粒子は、黒色着色剤を含有していてもよい。黒色着色剤の例としては、カーボンブラックが挙げられる。また、黒色着色剤は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、及びシアン着色剤を用いて黒色に調色された着色剤であってもよい。
【0068】
トナー母粒子は、イエロー着色剤、マゼンタ着色剤、又はシアン着色剤のようなカラー着色剤を含有していてもよい。
【0069】
イエロー着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、イソインドリノン化合物、アントラキノン化合物、アゾ金属錯体、メチン化合物、及びアリールアミド化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。イエロー着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントイエロー(3、12、13、14、15、17、62、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、191、又は194)、ナフトールイエローS、ハンザイエローG、又はC.I.バットイエローを好適に使用できる。
【0070】
マゼンタ着色剤としては、例えば、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、及びペリレン化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。マゼンタ着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントレッド(2、3、5、6、7、19、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、144、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、又は254)を好適に使用できる。
【0071】
シアン着色剤としては、例えば、銅フタロシアニン化合物、アントラキノン化合物、及び塩基染料レーキ化合物からなる群より選択される1種以上の化合物を使用できる。シアン着色剤としては、例えば、C.I.ピグメントブルー(1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、又は66)、フタロシアニンブルー、C.I.バットブルー、又はC.I.アシッドブルーを好適に使用できる。
【0072】
(離型剤)
トナー母粒子は、離型剤を含有していてもよい。離型剤は、例えば、トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させる目的で使用される。トナーの定着性又は耐オフセット性を向上させるためには、離型剤の量は、結着樹脂100質量部に対して、1質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
【0073】
離型剤としては、例えば、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、ポリオレフィン共重合物、ポリオレフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、又はフィッシャートロプシュワックスのような脂肪族炭化水素ワックス;酸化ポリエチレンワックス又はそのブロック共重合体のような脂肪族炭化水素ワックスの酸化物;キャンデリラワックス、カルナバワックス、木ろう、ホホバろう、又はライスワックスのような植物性ワックス;みつろう、ラノリン、又は鯨ろうのような動物性ワックス;オゾケライト、セレシン、又はペトロラタムのような鉱物ワックス;モンタン酸エステルワックス又はカスターワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような、脂肪酸エステルの一部又は全部が脱酸化したワックスを好適に使用できる。1種類の離型剤を単独で使用してもよいし、複数種の離型剤を併用してもよい。
【0074】
(電荷制御剤)
トナー母粒子は、電荷制御剤を含有していてもよい。電荷制御剤は、例えば、トナーの帯電安定性又は帯電立ち上がり性を向上させる目的で使用される。トナーの帯電立ち上がり性は、短時間で所定の帯電レベルにトナーを帯電可能か否かの指標になる。
【0075】
トナー母粒子に負帯電性の電荷制御剤(より具体的には、有機金属錯体又はキレート化合物等)を含有させることで、トナー母粒子のアニオン性を強めることができる。また、トナー母粒子に正帯電性の電荷制御剤(より具体的には、ピリジン、ニグロシン、又は4級アンモニウム塩等)を含有させることで、トナー母粒子のカチオン性を強めることができる。ただし、トナーにおいて十分な帯電性が確保される場合には、トナー母粒子に電荷制御剤を含有させる必要はない。
【0076】
(磁性粉)
トナー母粒子は、磁性粉を含有していてもよい。磁性粉の材料としては、例えば、強磁性金属(より具体的には、鉄、コバルト、ニッケル、又はこれら金属の1種以上を含む合金等)、強磁性金属酸化物(より具体的には、フェライト、マグネタイト、又は二酸化クロム等)、又は強磁性化処理が施された材料(より具体的には、熱処理により強磁性が付与された炭素材料等)を好適に使用できる。1種類の磁性粉を単独で使用してもよいし、複数種の磁性粉を併用してもよい。
【0077】
[外添剤]
前述の基本構成を有するトナーでは、外添剤が、トナー母粒子の表面に付着している。外添剤は、前述の基本構成で規定される被覆チタニア粉体を含む。被覆チタニア粉体に含まれる被覆チタニア粒子は、チタニア粒子と、チタニア粒子を覆うコート層とを備える粒子である。コート層は、特定ビニル共重合体(詳しくは、少なくとも化合物(1)を含む2種以上のビニル化合物の共重合体)を含有する。
【0078】
被覆チタニア粒子に加えて、被覆チタニア粒子以外の外添剤粒子(以下、「他の外添剤粒子」と記載する)を、外添剤として使用してもよい。他の外添剤粒子としては、シリカ粒子、チタニア粒子、及び樹脂粒子からなる群より選択される1種以上の外添剤粒子が特に好ましい。
【0079】
(コート層)
被覆チタニア粒子のコート層は、前述の式(1)で表される1種以上のビニル化合物と、1種以上の他のビニル化合物(すなわち、化合物(1)以外のビニル化合物)との共重合体を含有することが好ましい。前述の式(1)、式(1−1)、及び式(1−2)の各々において、R
1は、水素原子、又は置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)を表す。R
1が置換基を有するアルキル基を表す場合の置換基の例としては、フェニル基が挙げられる。R
1としては、水素原子、メチル基、エチル基、又はイソプロピル基が特に好ましい。例えば、コート材料が2−ビニル−2−オキサゾリンである場合には、R
1が水素原子を表す。
【0080】
コート層は、1種以上の化合物(1)と、1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体(樹脂原料)の共重合体を含有することが特に好ましい。コート層を形成するための材料としては、例えばオキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロス(登録商標)WSシリーズ」)を使用できる。「エポクロスWS−300」及び「エポクロスWS−700」はそれぞれ、2−ビニル−2−オキサゾリンと1種以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルとを含む単量体(樹脂原料)の重合物を含む。
【0081】
他のビニル化合物としては、スチレン系モノマー及びアクリル酸系モノマーからなる群より選択される1種以上のビニル化合物が好ましい。スチレン系モノマーの好適な例としては、スチレン、アルキルスチレン(より具体的には、α−メチルスチレン、p−エチルスチレン、又は4−tert−ブチルスチレン等)、ヒドロキシスチレン(より具体的には、p−ヒドロキシスチレン、又はm−ヒドロキシスチレン等)、又はハロゲン化スチレン(より具体的には、α−クロロスチレン、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、又はp−クロロスチレン等)が挙げられる。また、アクリル酸系モノマーの好適な例としては、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アリールエステル、(メタ)アクリロニトリル、又は(メタ)アクリルアミドが挙げられる。
【0082】
例えば、他のビニル化合物が、アルキル基に置換基を有してもよいアクリル酸アルキルエステルである場合、そのアクリル酸アルキルエステルは、付加重合により、例えば下記式(2)で表される繰返し単位になって共重合体を構成する。
【0084】
式(2)中、R
2は、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)を表す。アルキル基としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましい。R
2が置換基を有するアルキル基を表す場合、アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基が好ましい。R
2としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、又はヒドロキシブチル基が好ましい。
【0085】
例えば、他のビニル化合物が、置換基を有してもよいメタクリル酸アルキルエステルである場合、置換基を有してもよいメタクリル酸アルキルエステルは、付加重合により、例えば下記式(3)で表される繰返し単位になって共重合体を構成する。
【0087】
式(3)中、R
3は、置換基を有してもよいアルキル基(直鎖、分岐、及び環状のいずれでもよい)を表す。アルキル基としては、炭素数1以上8以下のアルキル基が好ましい。R
3が置換基を有するアルキル基を表す場合、アルキル基の置換基としては、ヒドロキシル基が好ましい。R
3としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、2−エチルヘキシル基、ヒドロキシエチル基、ヒドロキシプロピル基、又はヒドロキシブチル基が好ましい。
【0088】
例えば、他のビニル化合物がスチレン系モノマーである場合、スチレン系モノマーは、付加重合により、例えば下記式(4)で表される繰返し単位になって共重合体を構成する。
【0090】
式(4)中、R
41〜R
47は、各々独立して、水素原子、又は任意の置換基を表す。R
41〜R
45としては、各々独立して、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、置換基を有してもよいアルキル基、又は置換基を有してもよいアリール基が好ましく、ハロゲン原子、メチル基、エチル基、又はヒドロキシル基が特に好ましい。R
46及びR
47としては、各々独立して、水素原子又はメチル基が好ましい。
【0091】
[トナーの製造方法]
以下、前述の基本構成を有するトナーを製造する方法の一例について説明する。
【0092】
(トナー母粒子の準備)
まず、トナー母粒子を準備する。トナー母粒子は、例えば、前述した粉砕法又は凝集法によって作製できる。トナー母粒子は、市販品であってもよい。
【0093】
(外添剤の準備)
チタニア粒子をコート層で被覆する。チタニア粒子とコート層とを強固に結合させるためには、反応法でチタニア粒子を被覆することが特に好ましい。
【0094】
反応法の一例では、まず、コート材料(例えば、オキサゾリン基含有高分子)を溶媒中に溶解させる。予めコート材料を溶媒に溶かしておくことで、後述の加熱によりチタニア粒子とコート層とが強固に結合し易くなる。コート材料の溶媒としては、水性媒体が好ましい。なお、水性媒体は、水を主成分とする媒体(より具体的には、純水、又は水と極性媒体との混合液等)である。水性媒体は溶媒として機能してもよい。水性媒体中に溶質が溶けていてもよい。水性媒体は分散媒として機能してもよい。水性媒体中に分散質が分散していてもよい。水性媒体中の極性媒体としては、例えば、アルコール(より具体的には、メタノール又はエタノール等)を使用できる。水性媒体の沸点は約100℃である。
【0095】
続けて、コート材料の溶液中にチタニア粒子を分散させて、チタニア粒子の分散液を得る。また、必要に応じて、分散液のpHを調整する。
【0096】
続けて、チタニア粒子の分散液を加熱して、分散液中のコート材料をチタニア粒子の表面で重合反応させる。液の温度を高温に保っている間(又は、昇温中)に、コート材料はチタニア粒子と反応し、チタニア粒子の表面に固定化される。その後、分散液を常温(約25℃)まで冷却する。これにより、チタニア粒子の表面にコート層が形成され、被覆チタニア粒子が形成される。その結果、被覆チタニア粉体(外添剤)を含む分散液が得られる。
【0097】
コート層の形成に先立って、又はコート層の形成中に、チタニア粒子の分散液中に塩基性物質(より具体的には、アンモニア、又は水酸化ナトリウム等)及び/又は開環剤(より具体的には、酢酸等)を添加してもよい。
【0098】
オキサゾリン基含有高分子(コート材料)の重合反応を促進するためには、チタニア粒子の分散液の温度を、適当な速度(例えば、0.1℃/分以上3.0℃/分以下から選ばれる速度)で上昇させて、60℃以上100℃以下に保つことが好ましい。分散液の温度を適切な温度に保つことで、コート材料の重合反応が促進され易くなる。
【0099】
被覆チタニア粒子の分散液を濾過することにより、液と被覆チタニア粒子とを分離(固液分離)することができる。得られた被覆チタニア粒子を洗浄してもよい。被覆チタニア粒子を洗浄した場合には、洗浄後に被覆チタニア粒子を乾燥することが好ましい。
【0100】
(外添工程)
次に、トナー母粒子の表面に外添剤を付着させる。外添剤としては、前述の基本構成で規定されるトナー用外添剤(詳しくは、被覆チタニア粉体)のみを使用してもよいし、被覆チタニア粉体と一緒に他の外添剤を使用してもよい。混合装置を用いて、トナー母粒子に外添剤が埋め込まれないような条件でトナー母粒子と外添剤とを混合することで、トナー母粒子の表面に外添剤粒子を付着させることができる。混合装置としては、例えば、FMミキサー、マルチパーパスミキサー、又はハイブリダイゼーションシステム(登録商標)を好適に使用できる。
【0101】
上記工程により、トナー粒子を多数含むトナーを製造することができる。なお、必要のない工程は割愛してもよい。例えば、市販品をそのまま材料として用いることができる場合には、市販品を用いることで、その材料を調製する工程を割愛できる。効率的にトナーを製造するためには、多数のトナー粒子を同時に製造することが好ましい。同時に製造されたトナー粒子は、互いに略同一の構成を有すると考えられる。
【0102】
[2成分現像剤の製造方法]
混合装置(例えば、ボールミル)を用いて、上記のようにして得たトナーと、キャリアとを混合することで、2成分現像剤が得られる。キャリアとしては、強磁性物質を含有するキャリアコアと、キャリアコアを覆う樹脂層とを備えるキャリア粒子の粉体が好ましい。キャリアコアに含有される強磁性物質としては、例えば、マグネタイト、バリウムフェライト、マグヘマイト、Mn−Znフェライト、Ni−Znフェライト、Mn−Mgフェライト、Mn−Mg−Srフェライト、Ca−Mgフェライト、Liフェライト、又はCu−Znフェライトのような酸化鉄が好ましい。キャリアコアとしては、市販品を使用してもよい。また、磁性材料を粉砕及び焼成してキャリアコアを自作してもよい。樹脂層の形成方法の例としては、樹脂(又は、樹脂の材料)を含む液にキャリアコアを浸漬する方法、又は、樹脂(又は、樹脂の材料)を含む液を流動層中のキャリアコアに噴霧する方法が挙げられる。
【実施例】
【0103】
本発明の実施例について説明する。表1に、実施例又は比較例に係るトナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6(それぞれ正帯電性トナー)を示す。
【0104】
【表1】
【0105】
表1中、表面処理の「材料」に関して、「S−1」〜「S−3」は、下記のとおりであった。
表面処理剤S−1は、n−オクチルトリメトキシシラン(東京化成工業株式会社製)であった。
表面処理剤S−2は、3−アミノプロピルトリエトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBE−903」)であった。
表面処理剤S−3は、n−プロピルトリメトキシシラン(信越化学工業株式会社製「KBM−3033」)であった。
【0106】
表1中、コート層の「材料」に関して、「C−1」及び「C−2」は、下記のとおりであった。
コート材料C−1は、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−300」、モノマー組成:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン、固形分濃度:10質量%)であった。
コート材料C−2は、オキサゾリン基含有高分子水溶液(株式会社日本触媒製「エポクロスWS−700」、モノマー組成:メタクリル酸メチル/2−ビニル−2−オキサゾリン/アクリル酸ブチル、固形分濃度:25質量%)であった。
【0107】
表1中、コート層の「量」は、コート材料(すなわち、コート層の材料)の添加量(単位:g)を示している。
【0108】
表1中、「開環剤」は、酢酸(販売元:和光純薬工業株式会社、等級:試薬特級)を意味する。酢酸は、オキサゾリン基の開環剤として機能する。
【0109】
表1中、「OXZ量」の「未開環」は、外添剤1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量を示している。表1中、「OXZ量」の「開環」は、外添剤1gに含まれる、チタニア粒子の表面に存在する官能基との反応により開環しているコート層中のオキサゾリン基の量を示している。
【0110】
以下、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6の製造方法、評価方法、及び評価結果について、順に説明する。誤差が生じる評価においては、誤差が十分小さくなる相当数の測定値を得て、得られた測定値の算術平均を評価値とした。
【0111】
[材料の準備]
(トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−4用の外添剤)
トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−4の各々のための外添剤としては、被覆チタニア粒子を使用した。ただし、トナーごとに異なる条件でコート層を形成した。詳しくは、コート材料の添加量を、表1に示すようにした。外添剤の作製方法の詳細は、以下のとおりであった。
【0112】
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、表1に示す種類及び量のコート材料(コート材料C−1又はC−2)と、イオン交換水とを入れた。イオン交換水の添加量は、コート材料とイオン交換水との合計量が300gになるような量とした。例えば、トナーTA−1用外添剤の作製では、15gのコート材料C−1(エポクロスWS−300)と、285gのイオン交換水とを添加した。また、トナーTA−5用外添剤の作製では、25gのコート材料C−2(エポクロスWS−700)と、275gのイオン交換水とを添加した。
【0113】
続けて、フラスコ内容物を攪拌しながら、ウォーターバスを用いてフラスコ内の温度を30℃に保った。続けて、フラスコ内に、チタニア粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE(登録商標)P25」、内容:未処理の乾式フュームド酸化チタン、個数平均1次粒子径:21nm)50gを添加し、回転速度200rpmでフラスコ内容物を1時間攪拌した。
【0114】
続けて、フラスコ内にイオン交換水200gを添加した。続けて、濃度1質量%アンモニア水溶液6mLをフラスコ内に添加した。続けて、回転速度150rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内の温度を1.0℃/分の速度で80℃まで昇温させた。昇温完了後、オキサゾリン基の開環剤(酢酸)を、表1に示す量だけ添加した。例えば、トナーTA−1の製造では、6gの開環剤(酢酸)を添加した。また、トナーTB−3、TB−5、及びTB−6の各々の製造では、開環剤(酢酸)を添加しなかった。
【0115】
続けて、回転速度100rpmでフラスコ内容物を攪拌しながら、フラスコ内の温度を80℃に1時間保った。続けて、フラスコ内に濃度1質量%アンモニア水溶液を加えて、フラスコ内容物のpHを7に調整した。続けて、フラスコ内容物をその温度が常温(約25℃)になるまで冷却して、外添剤(被覆チタニア粉体)を含む分散液を得た。
【0116】
続けて、上記のようにして得られた外添剤の分散液を、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)して、ウェットケーキ状の外添剤を得た。その後、得られたウェットケーキ状の外添剤をイオン交換水に再分散させた。さらに、分散とろ過とを3回繰り返して、外添剤を洗浄した。
【0117】
続けて、得られた外添剤を、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー(登録商標)」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m
3/分の条件で乾燥させた。その結果、トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−4の各々のための外添剤(被覆チタニア粉体)が得られた。いずれの被覆チタニア粉体においても、コート層は、チタニア粒子の表面全域を覆っていた。
【0118】
上記のようにして得られたトナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−4の各々のための外添剤は、シャープな粒度分布を有していた。詳しくは、各外添剤は、「個数平均1次粒子径−5nm」以上「個数平均1次粒子径+5nm」以下の粒子径(詳しくは、円相当径)を有するチタニア粒子を80個数%以上の割合で含んでいた。
【0119】
(トナーTB−5及びTB−6用外添剤)
トナーTB−5及びTB−6の各々のための外添剤としては、表面処理されたチタニア粒子を使用した。外添剤の作製方法の詳細は、以下のとおりであった。
【0120】
温度計及び攪拌羽根を備えた容量1Lの3つ口フラスコをウォーターバスにセットし、フラスコ内に、トルエン(東京化成工業株式会社製)500gと、表1に示す種類及び量の表面処理剤と、チタニア粒子(日本アエロジル株式会社製「AEROXIDE P25」)50gとを入れた。トナーTB−5用外添剤の作製では、表面処理剤として、6gの表面処理剤S−1(n−オクチルトリメトキシシラン)を添加した。また、トナーTB−6用外添剤の作製では、表面処理剤として、3gの表面処理剤S−2(3−アミノプロピルトリエトキシシラン)と、3gの表面処理剤S−3(n−プロピルトリメトキシシラン)とを添加した。
【0121】
続けて、温度80℃でフラスコ内容物を2時間反応させた。この反応により、チタニア粒子が表面処理された。続けて、約100℃の温度条件でフラスコ内容物を2時間沸騰させることによって、フラスコ内容物からトルエンを除去した。その結果、洗浄前の外添剤(粉状の固形物)が得られた。
【0122】
続けて、上記のようにして得られた外添剤をイオン交換水に再分散させた。続けて、ブフナー漏斗を用いてろ過(固液分離)した。さらに、分散とろ過とを3回繰り返して、外添剤を洗浄した。
【0123】
続けて、得られた外添剤を、連続式表面改質装置(フロイント産業株式会社製「コートマイザー」)を用いて、熱風温度45℃かつブロアー風量2m
3/分の条件で乾燥させた。その結果、トナーTB−5及びTB−6用外添剤(表面処理されたチタニア粒子の粉体)が得られた。
【0124】
[トナーの製造]
多目的小型混合粉砕機(日本コークス工業株式会社製「マルチパーパスミキサ」、羽根回転速度(最大):10000rpm)を用いて、回転速度3000rpmの条件で、トナー母粒子100質量部と、表1に示す外添剤(被覆チタニア粉体、又は表面処理されたチタニア粒子の粉体)2質量部とを5分間混合した。
【0125】
使用したトナー母粒子は、未外添非磁性トナー(製法:粉砕法(粉砕トナー)、シェル層:無し(非カプセルトナー母粒子)、結着樹脂:ポリエステル樹脂、離型剤:エステルワックス(日油株式会社製「ニッサンエレクトール(登録商標)WEP−3」)、着色剤:カーボンブラック(三菱化学株式会社製「MA100」)、電荷制御剤:4級アンモニウム塩(オリヱント化学工業株式会社製「BONTRON(登録商標)P−51」)、体積中位径(D
50):7.0μm)であった。
【0126】
上記混合により、トナー母粒子の表面に外添剤が付着した。その後、得られた粉体を、200メッシュ(目開き75μm)の篩を用いて篩別した。その結果、多数のトナー粒子を含むトナー(トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6)が得られた。
【0127】
上記のようにして得られたトナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6に関して、未開環OXZ量(詳しくは、外添剤1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量)と、開環OXZ量(詳しくは、外添剤1gに含まれる、チタニア粒子の表面に存在する官能基との反応により開環しているコート層中のオキサゾリン基の量)とは、それぞれ表1に示すとおりであった。例えば、トナーTA−1に関して、未開環OXZ量は0.128mmol/gであり、開環OXZ量は0.173mmol/gであった。未開環OXZ量及び開環OXZ量の各々の測定方法は、以下の示すとおりであった。
【0128】
<OXZ量の測定方法>
ノニオン界面活性剤(花王株式会社製「エマルゲン(登録商標)120」、成分:ポリオキシエチレンラウリルエーテル)の濃度2質量%水溶液を水で10倍に希釈して、界面活性剤水溶液を調製し、その界面活性剤水溶液500mL中に、トナー(測定対象:トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6のいずれか)10gを分散させて、トナー分散液を得た。
【0129】
続けて、得られたトナー分散液に、超音波分散機(超音波工業株式会社製「ウルトラソニックミニウェルダーP128」、出力:100W、発振周波数:28kHz)を用いて超音波処理を施し、トナー母粒子と外添剤とを分離させた。続けて、得られた外添剤に対して、イオン交換水を加えるリスラリーと、吸引濾過とを、3回繰り返して、評価用外添剤を得た。
【0130】
次に、得られた評価用外添剤について、ガスクロマトグラフィー質量分析法(GC/MS法)を行った。GC/MS法では、測定装置として、ガスクロマトグラフ質量分析計(株式会社島津製作所製「GCMS−QP2010 Ultra」)及びマルチショット・パイロライザー(フロンティア・ラボ株式会社製「FRONTIER LAB Multi−functional Pyrolyzer(登録商標)PY−3030D」)を用いた。カラムとしては、GCカラム(アジレント・テクノロジー社製「Agilent(登録商標)J&W ウルトライナートキャピラリGCカラム DB−5ms」、相:シロキサンポリマーにアリレンを入れてポリマーの主鎖を強化したアリレン相、内径:0.25mm、膜厚:0.25μm、長さ:30m)を用いた。
【0131】
(ガスクロマトグラフ)
・キャリアガス:ヘリウム(He)ガス
・キャリア流量:1mL/分
・気化室温度:210℃
・熱分解温度:加熱炉「600℃」、インターフェイス部「320℃」
・昇温条件:40℃で3分間保持した後、40℃から速度10℃/分で300℃まで昇温し、300℃で15分間保持した。
【0132】
(質量分析)
・イオン化法:EI(Electron Impact)法
・イオン源温度:200℃
・インターフェイス部の温度:320℃
・検出モード:スキャン(測定範囲:45m/z〜500m/z)
【0133】
上記条件で測定されたマススペクトルを解析することにより成分を推定し、測定されたクロマトグラムのピーク面積に基づいて、未開環OXZ量及び開環OXZ量(それぞれ評価用外添剤1gあたりの量)を測定した。定量には、検量線を用いた。なお、被覆チタニア粉体に関して、未開環OXZ量と開環OXZ量との合計は、コート層形成工程におけるオキサゾリン基の添加量(詳しくは、未開環の状態で添加されたオキサゾリン基の量)に相当する。
【0134】
[評価方法]
各試料(トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6)の評価方法は、以下のとおりである。
【0135】
(2成分現像剤の調製)
現像剤用キャリア100質量部と、トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6のいずれか)10質量部とを、ボールミルを用いて30分間混合して、2成分現像剤を調製した。現像剤用キャリアは、被覆キャリア粒子(キャリアコア:Mn−Mg−Srフェライトコア(パウダーテック株式会社製「EF−50」)、樹脂層:シリコーン樹脂(東レダウコーニング株式会社製)、樹脂層の被覆率:100%(完全被覆)、体積中位径(D
50):50μm)であった。得られた2成分現像剤を用いて、以下に示す手順で、画像濃度、かぶり、及びトナー飛散を評価した。
【0136】
(耐刷試験)
評価機として、複合機(京セラドキュメントソリューションズ株式会社製「TASKalfa5550ci」)を用いた。前述の方法で得た2成分現像剤を評価機の現像装置に投入し、補給用トナー(評価対象:トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6のいずれか)を評価機のトナーコンテナに投入した。初期の画像濃度(測定装置:X−Rite社製「RD914」)が1.20になるように、評価機の現像バイアス(詳しくは、現像スリーブとマグネットロールとの間の電圧)を調整した。
【0137】
続けて、温度20℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率2%で10000枚の紙(A4サイズの普通紙)に連続印刷を行う第1耐刷試験を行った。第1耐刷試験の後、上記評価機を用いて、ソリッド部と空白部とを含むサンプル画像を記録媒体(評価用紙)に印刷した。そして、反射濃度計(X−Rite社製「RD914」)を用いて、印刷された記録媒体におけるサンプル画像のソリッド部の反射濃度(ID:画像濃度)を測定した。
【0138】
測定された画像濃度(ID)が、1.00以上であれば○(良い)と評価し、1.00未満であれば×(良くない)と評価した。
【0139】
第1耐刷試験の後、温度20℃かつ湿度50%RHの環境下、上記評価機を用いて、印字率20%で2000枚の紙(A4サイズの普通紙)に連続印刷を行う第2耐刷試験を行った。第2耐刷試験中、50枚印刷するごとに、反射濃度計(X−Rite社製「RD914」)を用いて、印刷された紙における空白部の反射濃度を測定した。そして、次の式に基づいて、かぶり濃度(FD)を求めた。
かぶり濃度=空白部の反射濃度−未印刷紙の反射濃度
【0140】
上記第2耐刷試験中の各タイミング(50枚印刷ごとのタイミング)で測定された全てのかぶり濃度(FD)の中で最も高いかぶり濃度(すなわち、最大かぶり濃度)を求めた。
【0141】
測定された最大かぶり濃度が、0.010以下であれば○(良い)と評価し、0.010超であれば×(良くない)と評価した。
【0142】
第2耐刷試験後、評価機の現像装置内に飛散したトナーの全部を回収した。そして、回収したトナーの質量(すなわち、トナー飛散量)を測定した。
【0143】
測定されたトナー飛散量が80mg未満であれば○(良い)と評価し、トナー飛散量が80mg以上であれば×(良くない)と評価した。
【0144】
[評価結果]
トナーTA−1〜TA−5及びTB−1〜TB−6の各々について、画像濃度、かぶり(かぶり濃度)、及びトナー飛散(トナー飛散量)を評価した結果を、表2に示す。
【0145】
【表2】
【0146】
トナーTA−1〜TA−5(実施例1〜5に係る正帯電性トナー)はそれぞれ、前述の基本構成を有していた。詳しくは、トナーTA−1〜TA−5はそれぞれ、トナー母粒子と、トナー母粒子の表面に付着した外添剤とを備えるトナー粒子を、複数含んでいた。外添剤は、被覆チタニア粒子(詳しくは、チタニア粒子と、チタニア粒子を覆うコート層とを備える粒子)の粉体を含んでいた。コート層は、特定ビニル共重合体(詳しくは、少なくとも前述の式(1)で表される化合物を含む2種以上のビニル化合物の共重合体)を含有していた(前述の「トナーTA−1〜TA−5用の外添剤」の製法を参照)。未開環OXZ量(詳しくは、被覆チタニア粒子の粉体1gに含まれる未開環オキサゾリン基の量)は、0.100mmol以上0.600mmol以下であった(表1参照)。開環OXZ量(詳しくは、被覆チタニア粒子の粉体1gに含まれる、チタニア粒子の表面に存在する官能基との反応により開環しているコート層中のオキサゾリン基の量)は、0.100mmol以上0.400mmol以下であった(表1参照)。
【0147】
表2に示すように、トナーTA−1〜TA−5はそれぞれ、連続印刷において、かぶり及びトナー飛散を抑制して、高画質の画像を継続的に形成することができた。
【0148】
トナーTB−3(比較例3に係る正帯電性トナー)では、耐刷試験中に、外添剤のコート層の剥離が生じ、トナーの帯電性が変動した。
【0149】
トナーTB−4(比較例4に係る正帯電性トナー)では、トナーの現像性が悪かった。この理由は、開環OXZ量が多過ぎるコート層でチタニア粒子を覆ったことで、被覆チタニア粒子がトナーの現像性を改善するように作用しなくなったからであると考えられる。
【0150】
トナーTB−5及びTB−6(比較例5及び6に係る正帯電性トナー)ではそれぞれ、耐刷試験中に、外添剤の表面処理剤が削られて、トナーの帯電性が変動した。
【0151】
なお、トナーTA−1の製造方法において、外添剤のコート層形成工程で、オキサゾリン基含有高分子水溶液(エポクロスWS−300)に加えて、さらにスチレン系モノマー(詳しくは、スチレン)を添加することによって得られたトナーについても、全ての評価で良い結果(○)が得られた。