(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記アナログデジタル変換部における前記変換の際に前記接地電位生成部における前記第1の接地電位の生成動作を停止させる接地電位制御部をさらに具備する請求項2記載の固体撮像装置。
前記画素と前記アナログデジタル変換部および前記参照電圧生成部とは異なる半導体チップに形成されるとともに前記画素が形成された前記半導体チップのウェル領域に前記第1の接地電位が印加される請求項1記載の固体撮像装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(接地電位生成部を常時動作させた場合の例)
2.第2の実施の形態(接地電位生成部を間欠動作させた場合の例)
3.第3の実施の形態(画素アレイ部が形成されたウェル領域に第1の接地線を接続する場合の例)
【0017】
<1.第1の実施の形態>
[固体撮像装置の構成]
図1は、本技術の第1の実施の形態における固体撮像装置10の構成例を示す図である。この固体撮像装置10は、画素アレイ部100と、垂直駆動部200と、水平転送部300と、接地電位生成部400と、参照電圧生成部500と、参照電圧補正部600とを備える。
【0018】
画素アレイ部100は、画像信号を生成する画素110が行列形状に配置されたものである。この画素アレイ部100には、各画素110に対する制御信号を伝達する信号線101と、画素110が生成した画像信号を伝達する信号線102とが、XYマトリクス状に配線されている。すなわち、同じ行に配置された画素110には1つの信号線101が共通に配線され、同じ列に配置された画素110の出力は、1つの信号線102に共通に配線されている。画素アレイ部100には、画素アレイの動作に必要な電源電圧として電源電圧Vddが信号線103により印加される。また、画素アレイ部100は、第1の接地線401により低接地電位Vssに接地される。すなわち、画素アレイ部100は、この低接地電位Vssに基づいて動作する。ここで、低接地電位Vssは、後述する水平転送部300等の接地電位GNDより低い電位である。ここで、接地電位GNDとしては、0Vを想定する。電源電圧Vddとしては、例えば、2.7Vを想定する。また、低接地電位Vssとしては、例えば、−0.9Vを想定する。なお、低接地電位Vssは、請求の範囲に記載の第1の接地電位の一例である。接地電位GNDは、請求の範囲に記載の第2の接地電位の一例である。
【0019】
水平転送部300は、画素アレイ部100から出力された画像信号に対して処理を行うものである。この処理には、後述する画像信号のアナログデジタル変換(AD変換)等が該当する。この水平転送部300には、画素アレイ部100の1行分の画素110に対応する出力信号が同時に入力される。この入力された画像信号に対して、水平転送部300は、信号処理を行った後に水平方向に転送を行って信号線301に出力する。水平転送部300から出力された画像信号は、固体撮像装置10の外部に供給される。また、上述のAD変換における基準となる電圧である参照電圧が、後述する参照電圧補正部600から信号線601を経由して入力される。この水平転送部300における処理の詳細については、後述する。また、水平転送部300は、信号線103により電源電圧Vddが印加され、第2の接地線303により接地電位GNDに接地される。
【0020】
垂直駆動部200は、制御信号を生成して画素アレイ部100に対して出力するものである。この垂直駆動部200は、画素アレイ部100の全ての行に対応する信号線101に対して制御信号を出力する。垂直駆動部200による制御信号には、画素アレイ部100の画素110に対して露光の開始および停止を制御するための信号出力と露光により得られた画像信号の画素110からの読出しを制御するための信号出力とが含まれる。なお、垂直駆動部200は、水平転送部300と同様に、信号線103により電源電圧Vddが印加され、第2の接地線303により接地電位GNDに接地される。
【0021】
参照電圧生成部500は、水平転送部300における処理に必要となる参照電圧を生成し、信号線501に出力するものである。参照電圧生成部500の詳細については、後述する。また、参照電圧生成部500は、水平転送部300と同様に、信号線103により電源電圧Vddが印加され、第2の接地線303により接地電位GNDに接地される。
【0022】
参照電圧補正部600は、信号線501から入力された参照電圧を補正し、信号線601に出力するものである。参照電圧補正部600の詳細については、後述する。
【0023】
接地電位生成部400は、上述の低接地電位Vssを生成するものである。この接地電位生成部400には、例えば、電源電圧として印加された電源電圧Vddを低接地電位Vssに変換するスイッチングレギュレータを使用することができる。
【0024】
[画素の回路構成]
図2は、本技術の第1の実施の形態における画素110の構成例を示す図である。この画素110は、光電変換部111と、電荷転送部113と、電荷保持部115と、電荷排出部114と、増幅部116と、選択部117と、オーバーフロードレイン112とを備える。なお、オーバーフロードレイン112、電荷転送部113、電荷排出部114、増幅部116および選択部117は、NチャンネルMOSトランジスタにより構成される。
【0025】
画素110には、信号線101および102が接続されている。信号線101は、複数の信号線(OFD、TR、RSTおよびSEL)により構成されている。オーバーフロードレイン制御信号線OFD(Over Flow Drain)は、オーバーフロードレイン112に制御信号を伝達する信号線である。転送信号線TR(Transfer)は、電荷転送部113に制御信号を伝達する信号線である。リセット信号線RST(Reset)は、電荷排出部114に制御信号を伝達する信号線である。選択信号線SEL(Select)は、選択部117に制御信号を伝達する信号線である。同図に表したように、これらは何れもMOSトランジスタのゲートに接続される。ゲートおよびソース間の閾値電圧以上の電圧(以下、オン信号と称する。)がこれらの信号線を通して入力されると、該当するMOSトランジスタが導通状態になる。また、信号線102には、出力信号Voが出力される。
【0026】
これらの他に、画素110は、信号線103により電源電圧Vddが印加され、第1の接地線303により低接地電位Vssに接地される。
【0027】
同図に表したように、光電変換部111のアノードは第1の接地線401に接続され、カソードは電荷転送部113のソースとオーバーフロードレイン112のソースに接続される。オーバーフロードレイン112のゲートおよびドレインは、それぞれOFDおよび信号線103に接続される。電荷転送部113のドレインは、電荷排出部114のソース、増幅部116のゲートおよび電荷保持部115の一端に接続される。電荷保持部115の他の一端は、第1の接地線401に接続される。電荷転送部113のゲートはTR信号線に接続される。電荷排出部114のゲートおよびドレインは、それぞれリセット信号線RSTおよび信号線103に接続される。増幅部116のドレインおよびソースは、それぞれ信号線103および選択部117のドレインに接続される。選択部117のゲートおよびソースは、それぞれSELおよび信号線102に接続される。
【0028】
光電変換部111は、照射された光量に応じた電荷を生成し、生成した電荷を蓄積するものである。この光電変換部111は、フォトダイオードにより構成される。
【0029】
電荷転送部113は、転送信号線TRにより制御されて、光電変換部111により生成された電荷を電荷保持部115に転送するものである。この電荷転送部113は、光電変換部111と電荷保持部115との間を導通させることにより電荷の転送を行う。
【0030】
電荷保持部115は、電荷転送部113により転送された電荷を保持するものである。この電荷保持部115は、半導体チップの拡散領域に形成された、いわゆるフローティングディフュージョンにより構成される。
【0031】
電荷排出部114は、リセット信号線RSTにより制御されて、電荷保持部115に保持された電荷を排出するものである。この電荷排出部114は、電荷保持部115と信号線103との間を導通させることにより、電荷の排出を行う。
【0032】
オーバーフロードレイン112は、光電変換部111で過剰に生成された電荷を排出するものである。また、このオーバーフロードレイン112は、光電変換部111と電源電圧Vddとの間を導通させることにより光電変換部111に蓄積された電荷の排出をさらに行う。この際、オーバーフロードレイン112は、オーバーフロードレイン制御信号線OFDにより制御される。
【0033】
増幅部116は、電荷保持部115に保持された電荷に応じた電圧をソースに出力するものである。また、選択部117は選択信号線SELにより制御され、この選択部117が導通状態の時に増幅部116のソースの電圧が信号線102に出力される。
【0034】
[画素における動作]
オーバーフロードレイン制御信号線OFDからオン信号が入力されるとオーバーフロードレイン112は導通し、光電変換部111のカソードに電源電圧Vddが印加される。これにより、光電変換部111に蓄積された電荷が排出され、画素110は初期化、すなわちリセットされる。その後、露光量に応じた電荷が新たに生成されて、光電変換部111に蓄積される。すなわち、露光が開始される。
【0035】
所定の露光時間が経過した後、リセット信号線RSTからオン信号が入力されて電荷排出部114が導通し、電荷保持部115に電源電圧Vddが印加される。これにより、電荷保持部115に蓄積されていた暗電流に基づく電荷が排出される。この際、増幅部116は、電荷保持部115に蓄積された電荷に基づく信号が生成される。
【0036】
次に、選択信号線SELからオン信号が入力されると選択部117が導通し、増幅部116により生成された信号が信号線102に出力される。この信号は、電荷が排出された状態で生成された信号であり、上述の画像信号の基準となるリセット電圧に応じた信号である。以下、この信号をリセット信号と称する。
【0037】
選択部117が導通した状態で、電荷排出部114を非導通の状態にする。その後、転送信号線TRからオン信号が入力されることにより、電荷転送部113が導通する。これにより、光電変換部111と電荷保持部115との間が導通状態になり、光電変換部111に蓄積された電荷が電荷保持部115に転送される。また、増幅部116により、電荷保持部115に転送された電荷に応じた信号が生成される。
【0038】
次に、選択信号線SELからオン信号が入力されると選択部117が導通し、増幅部116により生成された信号が信号線102に出力される。この信号は、固体撮像装置10に入射した光に応じた画像信号に該当する。
【0039】
これらの操作により画素110から出力されたリセット信号および画像信号は、水平転送部300により処理される。具体的には、画像信号からリセット信号が減算されて、画素110ごとの差異が除去される。このような方式は相関二重サンプリング(Correlated Double Sampling:CDS)と呼ばれる方式であり、撮像装置において広く使用される方式である。
【0040】
このように、画素110は、接地電位GNDより低い電位の低接地電位Vssに基づいて動作する。すなわち、画素110の実質的な電源電圧は、低接地電位Vssから電源電圧Vddまでの電圧である。このため、光電変換部111は、この電圧の範囲において画像信号を生成する。接地電位GNDに基づいて動作するとともに電源電圧Vddが印加される水平転送部300等と比較して、光電変換部111のダイナミックレンジを広くすることができる。
【0041】
[水平転送部の構成]
図3は、本技術の第1の実施の形態における水平転送部300の構成例を示す図である。この水平転送部300は、定電流電源310と、アナログデジタル変換部(ADC:Analog Digital Converter)320と、画像信号転送部330とを備える。
【0042】
信号線102は、定電流電源310の一端およびアナログデジタル変換部320の入力に接続される。定電流電源310の他の一端は、第2の接地線303に接続される。アナログデジタル変換部320の出力は、画像信号転送部330の入力に接続される。なお、アナログデジタル変換部320と画像信号転送部330との間は、信号線302により接続される。
【0043】
定電流電源310は、
図2において説明した増幅部116の負荷として動作するものである。すなわち、増幅部116とともにソースフォロワ回路を構成する。
【0044】
アナログデジタル変換部320は、画素110から出力されたアナログの画像信号をデジタルの画像信号に変換し、出力するものである。この変換は、参照電圧に基づいて行われる。ここで、参照電圧とは、アナログの画像信号からデジタルの画像信号への変換を行う際の基準となる電圧である。同図の全てのアナログデジタル変換部320に対して同一の参照電圧が入力される。また、アナログデジタル変換部320は、前述したCDSの処理も行う。アナログデジタル変換部320は、信号線103により電源電圧Vddが印加され、第2の接地線303により接地電位GNDに接地される。アナログデジタル変換部320の構成の詳細については、後述する。
【0045】
画像信号転送部330は、複数のアナログデジタル変換部320により出力されたデジタルの画像信号を水平方向に転送するものである。具体的には、画像信号転送部330は、各画像信号を同図の左端に配置されたアナログデジタル変換部320が出力した画像信号から順に信号線301に対して出力する。
【0046】
[アナログデジタル変換部の構成]
図4は、本技術の第1の実施の形態におけるアナログデジタル変換部320の構成例を示す図である。同図のアナログデジタル変換部320は、比較部329と、カウント部326とを備える。
【0047】
比較部329は、アナログの画像信号および参照電圧を比較することによりアナログの画像信号および参照電圧の一致の検出を行うものである。この比較部329は、定電流電源321乃至323と、NチャンネルMOSトランジスタ324および325とを備える。
【0048】
定電流電源321および322は、一端が信号線103に接続され、他の一端がそれぞれNチャンネルMOSトランジスタ324および325のドレインに接続される。NチャンネルMOSトランジスタ324および325のゲートは、それぞれ信号線601および102に接続される。また、NチャンネルMOSトランジスタ324および325のソースは、定電流電源323の一端に接続され、定電流電源の他の一端は、第2の接地線303に接続される。カウント部326の入力はNチャンネルMOSトランジスタ325のドレインに接続され、カウント部326の出力は信号線302に接続される。
【0049】
NチャンネルMOSトランジスタ324および325ならびに定電流電源321乃至323により差動増幅器を構成し、NチャンネルMOSトランジスタ324および325のゲートに入力された画像信号および参照電圧の比較を行う。この比較の結果は、NチャンネルMOSトランジスタ325のドレインから出力される。例えば、参照電圧の方が画像信号の電圧より高い場合には、NチャンネルMOSトランジスタ325のドレインの電位は、高いレベル(Hレベル)となる。この状態から、参照電圧が画像信号の電圧より低い状態に移行すると、NチャンネルMOSトランジスタ325のドレインの電位は、低いレベル(Lレベル)に遷移する。この遷移は、参照電圧および画像信号の電圧が略等しい時に発生する。これにより、比較部329は、参照電圧および画像信号の電圧が略等しいことを検出してカウント部326に対して出力することができる。比較部329の出力は、信号線304を経由してカウント部326に出力される。
【0050】
カウント部326は、比較部329における比較の開始に伴ってカウントを開始し、比較部329による参照信号および画像信号の一致の検出に伴いカウントを停止するカウンタである。このカウント値をAD変換の結果として出力する。このカウント部326は、アップカウントおよびダウンカウントの両方を行うことによりCDSを行う。カウント部326の動作の詳細については、後述する。
【0051】
[参照電圧生成部の構成]
図5は、本技術の第1の実施の形態における参照電圧生成部500の構成例を示す図である。この参照電圧生成部500は、カウント部510と、デジタルアナログ変換部(DAC:Digital Analog Converter)520と、抵抗530とを備える。
【0052】
カウント部510は、デジタルの参照電圧を生成するカウンタである。このカウント部510は、参照電圧に相当するデジタル値をダウンカウントすることによりランプ形状の参照電圧を生成する。
【0053】
デジタルアナログ変換部520は、カウント部510により生成されたデジタルの参照電圧をアナログの参照電流に変換するものである。このデジタルアナログ変換部520は、デジタル値として入力された参照電圧をアナログ値に変換するとともに電流として出力する。すなわち、デジタル信号からアナログ信号への変換とともに電圧から電流への変換を行う。
【0054】
抵抗530は、デジタルアナログ変換部520から出力された電流を電圧に変換するものである。この抵抗530は、デジタルアナログ変換部520の出力と第2の接地線303との間に接続される。デジタルアナログ変換部520の出力電流は、抵抗530を通して接地線303に流れることにより、参照電圧Vrampに変換されて信号線501に出力される。
【0055】
カウント部510は、制御部(不図示)の制御により、設定された初期値のダウンカウントを開始する。これと同期して、前述のアナログデジタル変換部320における比較部329およびカウント部326の比較動作およびカウントが開始される。
【0056】
[アナログデジタル変換動作]
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるAD変換動作の一例を示す図である。同図は、アナログデジタル変換部320におけるAD変換の様子を表したものである。また、同図は、アナログデジタル変換部320に入力された画素110の出力信号Vo、参照電圧Vramp、比較部329の出力およびカウント部326の出力ならびに低接地電位Vssの関係を表したものである。同図において、低接地電位Vssの波形に記載された破線は、0Vの電位を表すものである。また、同図に表したAD変換動作は、前述した画素110からのリセット信号の出力に伴い開始される。
【0057】
[リセット電圧変換期間:T1乃至T5]
まず、画素110からリセット信号が出力信号Voとして出力される(T1)。リセット信号が安定した後に参照電圧生成部500のカウント部510がダウンカウントを開始し、参照電圧Vrampがランプ形状に低下、すなわち直線的に低下する。同時に、カウント部326がダウンカウントを開始する(T2)。その後、出力信号Voおよび参照電圧Vrampが一致した時、比較部329の出力がHレベルからLレベルに遷移する。これにより、カウント部326はダウンカウントを停止する(T3)。カウント部510は、ダウンカウントを継続し、所定の期間の経過後に、ダウンカウントを停止する(T4)。その後、カウント部510が初期化されるとともに比較部329の出力もLレベルからHレベルに遷移する(T5)。一方、カウント部326は、カウント値を保持する。これによりカウント部326にリセット電圧に相当するデジタル値が保持される。
【0058】
[セトリング期間:T6]
次に、画素110から画像信号が出力信号Voとして出力される(T6)。その後、このVoが安定するまで待機する。
【0059】
[画像信号変換期間:T7乃至T10]
セトリング期間の経過後、カウント部510のダウンカウントが開始され、再度参照電圧Vrampがランプ形状に低下する。同時に、カウント部326は、アップカウントを開始する(T7)。その後、Voおよび参照電圧Vrampが一致して、比較部329の出力がHレベルからLレベルに遷移する。これにより、カウント部326はアップカウントを停止する(T8)。カウント部510は、ダウンカウントを継続し、所定の期間の経過後に、ダウンカウントを停止する(T9)。その後、カウント部510が初期化されるとともに比較部329の出力もLレベルからHレベルに遷移する(T10)。一方、カウント部326は、カウント値を保持する。このカウント値は、AD変換された画像信号として画像信号転送部330により水平転送される。
【0060】
このように、画像信号のAD変換が行われる。また、カウント部326は、リセット電圧変換期間に行ったダウンカウントにより、リセット電圧を保持する。画像信号変換期間にこの保持したカウント値からアップカウントを行うことにより、画像信号からリセット電圧の減算を行うことができる。これにより、CDSが実行される。
【0061】
[低接地電位の変化]
図7は、本技術の第1の実施の形態における低接地電位の変化を示す図である。同図は、画素110、水平転送部300の定電流電源310およびアナログデジタル変換部320、接地電位生成部400、参照電圧生成部500ならびに参照電圧補正部600の信号等の関係を表した図である。便宜上、同図の接地電位生成部400は、並列に接続された負電圧電源402およびキャパシタ403により構成される例を想定する。
【0062】
この接地電位生成部400により生成された低接地電位Vssは、画素110からVoが出力された際の負荷変動により電圧が変化する。また負電圧電源402の動作に伴って発生したノイズによっても電圧が変化する。通常、キャパシタ403により、これら低接地電位Vssの変化は低減される。しかし、システムを小型化するため、小容量のキャパシタ403を接続した場合には、低接地電位Vssの変化(ΔVss)は大きいものとなる。このΔVssは、画素110の接地線に重畳されるため、出力信号Voが影響を受け、ΔVoの変化を生じる。そこで、参照電圧補正部600により参照電圧を補正する。具体的には、ΔVssを検出して参照電圧にΔVoに相当する電圧を重畳させる。これにより、ΔVoが打ち消され、AD変換後の画像信号の変動を低減することができる。
【0063】
[参照電圧の補正]
図8は、本技術の第1の実施の形態における補正前の参照電圧を示す図である。同図は、出力信号Vo、補正前の参照電圧Vramp、比較部329の出力および低接地電位Vssの関係を表したものである。なお、参照電圧Vrampおよび比較部329の出力の波形に記載された破線は、出力信号Voが変化しなかった場合の波形を表したものである。同図に表したように、低接地電位VssにΔVssの変化が生じたことにより、出力信号VoにΔVoの変化が生じる。このVoと補正前の参照電圧Vrampが比較されるため、比較部329の出力がHレベルからLレベルに遷移する時期がT8からT8'に変化し、AD変換された画像信号に誤差を生じることとなる。
【0064】
図9は、本技術の第1の実施の形態における補正後の参照電圧を示す図である。
図8と比較して、参照電圧Vrampに対してΔVo'の補正がされている。なお、参照電圧Vrampおよび比較部329の出力の波形に記載された二点鎖線は、比較のため
図8における波形を示す線である。このように、参照電圧Vrampを補正することにより、AD変換された画像信号の変動を削減することができる。
【0065】
[参照電圧補正部の構成]
図10は、本技術の第1の実施の形態における参照電圧補正部600を例示する図である。同図におけるaの参照電圧補正部600は、定電流電源602および609と、NチャンネルMOSトランジスタ608と、PチャンネルMOSトランジスタ606および607と、抵抗603乃至605と、キャパシタ611とを備える。
【0066】
PチャンネルMOSトランジスタ606および607のソースは、信号線103に接続される。PチャンネルMOSトランジスタ606のドレインは、PチャンネルMOSトランジスタ607のゲートおよびNチャンネルMOSトランジスタ608のドレインに接続される。PチャンネルMOSトランジスタ607のドレインは定電流電源609の一端に接続され、定電流電源609の他の一端は第2の接地線303に接続される。NチャンネルMOSトランジスタ608のソースは抵抗605の一端に接続され、抵抗605の他の一端は第2の接地線303に接続される。定電流電源602は一端が信号線103に接続され、他の一端が抵抗603および604の一端に接続される。抵抗603および604の他の一端は、それぞれ第2の接地線303およびNチャンネルMOSトランジスタ608のゲートに接続される。キャパシタ611は、NチャンネルMOSトランジスタ608のゲートおよび第1の接地線401の間に接続される。なお、信号線501および601は、参照電圧補正部600の内部において共通に接続されるとともにPチャンネルMOSトランジスタ607のドレインが接続される。
【0067】
キャパシタ611は、結合用キャパシタであり、低接地電位Vssの変化分ΔVssをNチャンネルMOSトランジスタ608のゲートに入力する。NチャンネルMOSトランジスタ608および抵抗605は、ΔVssを増幅するとともにΔVssをドレイン電流Idの変化(ΔId)に変換する増幅回路を構成する。定電流電源602、抵抗603および抵抗604は、NチャンネルMOSトランジスタ608のゲートにバイアス電圧を供給するバイアス回路である。PチャンネルMOSトランジスタ606および607は、カレントミラー回路を構成し、Idと等しい電流を信号線501および601に供給する。定電流電源609は、PチャンネルMOSトランジスタ607のドレイン負荷である。この定電流電源609に流れる電流とIdとの差分が、信号線501および601に供給される電流になる。PチャンネルMOSトランジスタ606および607ならびに定電流電源609は、参照電圧の補正を行う補正回路を構成する。
【0068】
定常時には、バイアス回路により設定されたドレイン電流IdがNチャンネルMOSトランジスタ608に流れる。このIdと定電流電源609の電流値とを同じ値に設定する。これにより、定常時には、参照電圧補正部600から信号線501および601に流れる電流は0Aとなる。
【0069】
低接地電位Vssが低下すると、この変化(ΔVss)が増幅回路により増幅されてIdが減少する。このIdの減少に相当する電流が信号線501および601から定電流電源609に流れる。このため、
図5において説明した抵抗530に流れる電流が減少し、参照電圧Vrampも低下する。
【0070】
同図におけるbは、参照電圧補正部600の他の例である。この参照電圧補正部600は、定電流電源622および629と、アンプ624と、PチャンネルMOSトランジスタ626および627と、抵抗623乃至625と、キャパシタ631とを備える。
【0071】
この参照電圧補正部600は、同図におけるaのNチャンネルMOSトランジスタ608および抵抗605からなる増幅部をアンプ624および抵抗625からなる電圧電流変換回路に置き換えた回路に相当するため、説明を省略する。
【0072】
[参照電圧補正処理]
図11は、本技術の第1の実施の形態における参照電圧補正処理の処理手順の一例を示す図である。まず、画素110が画像信号を水平転送部300に対して出力する(ステップS901)。次に、参照電圧生成部500が参照電圧を生成する(ステップS902)。次に、参照電圧補正部600が参照電圧の補正を行う(ステップS903)。最後に、アナログデジタル変換部320が補正された参照電圧に基づいて画像信号のAD変換を行う(ステップS904)。
【0073】
このように、本技術の第1の実施の形態では、画素に印加される低接地電位Vssの変化に応じて参照電圧Vrampを補正し、これを基準として画像信号のAD変換を行う。このため、低接地電位Vssの変化に起因して画像信号が変動した場合において、AD変換後の画像信号の変動を低減することができる。
【0074】
<2.第2の実施の形態>
上述の実施の形態では、接地電位生成部400が常時、低接地電位Vssの生成を行っていた。これに対し、本技術の第2の実施の形態では、画像信号のAD変換を行う期間に、接地電位生成部400の動作を停止させる。これにより、接地電位生成部400が発生するノイズの影響を低減する。
【0075】
[固体撮像装置の構成]
図12は、本技術の第2の実施の形態における固体撮像装置10の構成例を示す図である。この固体撮像装置10は、接地電位制御部700を備える点で、
図1において説明した固体撮像装置10と異なる。
【0076】
接地電位制御部700は、接地電位生成部400を制御するものである。この接地電位制御部700は、水平転送部300のアナログデジタル変換部320がAD変換を行っている期間に、接地電位生成部400における低接地電位Vssの生成を停止させる。
【0077】
接地電位生成部400は、接地電位制御部700による制御に基づいて低接地電位Vssを生成する。
【0078】
前述のように接地電位生成部400は、スイッチングレギュレータ等により構成される。このため、低接地電位Vssの生成にともないノイズが発生する。このノイズがAD変換後の画像信号に重畳し、画像品質が低下する。そこで、本技術の第2の実施の形態では、アナログデジタル変換部320がAD変換を行っている期間に接地電位生成部400を停止させることにより、ノイズを減少させ、画像品質の低下を防止する。しかし、接地電位生成部400が停止した期間には、低接地電位Vssが給電されないため、低接地電位Vssが徐々に低下(0Vに近づく)する。この低接地電位Vssの変化により画像信号が影響を受けるため、参照電圧補正部600により参照電圧を補正する。
【0079】
これ以外の固体撮像装置10の構成は、
図1において説明した固体撮像装置10の構成と同様であるため、説明を省略する。
【0080】
[参照電圧の補正]
図13は、本技術の第2の実施の形態における参照電圧の補正を示す図である。同図は、低接地電位Vss、出力信号Vo、補正前の参照電圧Vrampおよび補正後の参照電圧Vrampの関係を表したものである。接地電位制御部700は、アナログデジタル変換部320がAD変換を行う期間に、接地電位生成部400を制御して低接地電位Vssの生成を停止させる。アナログデジタル変換部320のAD変換が終了した後、接地電位制御部700は、接地電位生成部400を制御して低接地電位Vssの生成を再開させる。接地電位制御部700は、この制御をライン毎に繰返し行い、接地電位生成部400を間欠動作させる。このため、同図の低接地電位Vssは、接地電位生成部400が動作を停止した期間に変化する。この変化の影響を受け、出力信号VoにΔVoの変化が生じる。そこで、参照電圧補正部600により参照電圧の補正を行う。同図に表したように、ΔVoの変化に応じて参照電圧Vrampを補正し、AD変換後の画像信号の変動を低減することができる。
【0081】
このように、本技術の第2の実施の形態では、AD変換を行う期間に、接地電位生成部400の動作を停止させるとともに参照電圧を補正する。これにより、画像信号のノイズを低減することができ、画像品質の低下を防ぐことができる。
【0082】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、画素アレイ部とそれ以外の部分を同一の半導体チップに形成していた。これに対し、本技術の第3の実施の形態では、これらを異なる半導体チップに形成する。これにより、低接地電位Vssおよび接地電位GNDの分離を容易にすることができる。
【0083】
[固体撮像装置の構成]
図14は、本技術の第3の実施の形態における固体撮像装置10の構成例を示す図である。この固体撮像装置10は、画素アレイチップ810と、周辺回路チップ820とを備える。
【0084】
画素アレイチップ810は、画素アレイ部100が形成された半導体チップである。すなわち、この画素アレイチップ810は、低接地電位Vssに基づいて動作する回路等が形成された半導体チップである。画素アレイ部100は、画素アレイチップ810のウェル領域811に形成されており、このウェル領域811に第1の接地線401が接続されて、低接地電位Vssに接地される。
【0085】
周辺回路チップ820は、垂直駆動部200、水平転送部300、参照電圧生成部500、参照電圧補正部600および接地電位生成部400が形成されたチップである。この周辺回路チップは、接地電位GNDに基づいて動作する回路等が形成された半導体チップである。垂直駆動部200等は、周辺回路チップ820のウェル領域821に形成されており、このウェル領域821に第2の接地線303が接続されて、接地電位GNDに接地される。
【0086】
このように、本技術の第3の実施の形態の固体撮像装置10は、低接地電位Vssおよび接地電位GNDに接地される回路等がそれぞれ異なる半導体チップに形成されている。このため、これらの電位に接地するための第1の接地線401および第2の接地線は、それぞれのウェル領域811およびウェル領域821に接続することができる。
【0087】
なお、画素アレイ部100等の構成は、
図1において説明した固体撮像装置10と同様であるため、説明を省略する。
【0088】
このように、本技術の第3の実施の形態では、固体撮像装置10を画素アレイチップ810および周辺回路チップ820により構成し、画素アレイチップ810のウェル領域に第1の接地線401を接続する。これにより、低接地電位Vssおよび接地電位GNDの分離を容易にすることができる。
【0089】
上述のように、本技術の実施の形態では、周辺回路の接地電位より低い低接地電位Vssが画素に印加される。この低接地電位Vssが変化しても、参照電圧を補正して画像信号のAD変換を行うことにより、変換後の画像信号の変動を低減することができる。これにより、画像品質の低下を防止することができる。
【0090】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0091】
また、上述の実施の形態において説明した処理手順は、これら一連の手順を有する方法として捉えてもよく、また、これら一連の手順をコンピュータに実行させるためのプログラム乃至そのプログラムを記憶する記録媒体として捉えてもよい。この記録媒体として、例えば、CD(Compact Disc)、MD(MiniDisc)、DVD(Digital Versatile Disc)、メモリカード、ブルーレイディスク(Blu-ray(登録商標)Disc)等を用いることができる。
【0092】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0093】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)第1の接地線に印加される第1の接地電位に基づいて動作し、照射された光に応じたアナログの画像信号を出力する画素と、
第2の接地線に印加される前記第1の接地電位より高い第2の接地電位に基づいて動作し、前記アナログの画像信号からデジタルの前記画像信号への変換を行う際の基準となる参照電圧に基づいて前記変換を行うアナログデジタル変換部と、
前記第2の接地電位に基づいて動作し、前記参照電圧を生成する参照電圧生成部と、
前記第1の接地電位の変化に応じて前記生成された前記参照電圧を補正して前記アナログデジタル変換部に供給する参照電圧補正部と
を具備する固体撮像装置。
(2)前記第1の接地電位を生成して前記第1の接地線に印加する接地電位生成部をさらに具備する前記(1)に記載の固体撮像装置。
(3)前記アナログデジタル変換部における前記変換の際に前記参照電圧生成部における前記第1の接地電位の生成動作を停止させる接地電位制御部をさらに具備する前記(2)に記載の固体撮像装置。
(4)前記アナログデジタル変換部は、
前記アナログの画像信号および前記参照電圧を比較することにより前記アナログの画像信号および前記参照電圧の一致の検出を行う比較部と、
前記比較部における前記比較の開始から前記検出までの期間にカウントを行い、カウント値を前記デジタルの画像信号として出力するカウント部と
を備える
前記(1)から(3)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(5)前記画素および前記アナログデジタル変換部に同一の電源電圧が印加される前記(1)から(4)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(6)行列形状に配置される複数の前記画素と、
1行に配置された複数の前記画素から出力された前記アナログの画像信号に対してそれぞれ前記変換を行う複数の前記アナログデジタル変換部と、
を具備し、
前記参照電圧補正部は、前記複数のアナログデジタル変換部のそれぞれに同一の前記補正された前記参照電圧を供給する
前記(1)から(5)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(7)前記画素と前記アナログデジタル変換部および前記参照電圧生成部とは異なる半導体チップに形成されるとともに前記画素が形成された前記半導体チップのウェル領域に前記第1の接地電位が印加される前記(1)から(6)のいずれかに記載の固体撮像装置。
(8)第1の接地線に印加される第1の接地電位に基づいて動作し、照射された光に応じたアナログの画像信号を出力する画像信号出力手順と、
第2の接地線に印加される前記第1の接地電位より高い第2の接地電位に基づいて動作し、前記アナログの画像信号からデジタルの前記画像信号への変換を行う際の基準となる参照電圧に基づいて前記変換を行うアナログデジタル変換手順と、
前記第2の接地電位に基づいて動作し、前記参照電圧を生成する参照電圧生成手順と、
前記第1の接地電位の変化に応じて前記生成された前記参照電圧を補正して前記アナログデジタル変換部に供給する参照電圧補正手順と
を具備する固体撮像装置の駆動方法。