特許第6795026号(P6795026)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6795026-感熱転写記録媒体 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795026
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】感熱転写記録媒体
(51)【国際特許分類】
   B41M 5/44 20060101AFI20201119BHJP
   B41M 5/42 20060101ALI20201119BHJP
   B41M 5/40 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B41M5/44 410
   B41M5/42 410
   B41M5/40 440
【請求項の数】7
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2018-503024(P2018-503024)
(86)(22)【出願日】2017年2月16日
(86)【国際出願番号】JP2017005752
(87)【国際公開番号】WO2017150202
(87)【国際公開日】20170908
【審査請求日】2020年1月23日
(31)【優先権主張番号】特願2016-37648(P2016-37648)
(32)【優先日】2016年2月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】凸版印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(72)【発明者】
【氏名】福永 悟大
【審査官】 野田 定文
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2014/041779(WO,A1)
【文献】 特開2012−206351(JP,A)
【文献】 特開2013−202842(JP,A)
【文献】 特開2011−104971(JP,A)
【文献】 特開2015−24576(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 5/382 − 5/52
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材の一方の面にプライマー層、下引き層、及び染料層がこの順に積層形成され、前記基材の他方の面に耐熱滑性層が設けられ、
前記プライマー層は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを含有し、
前記下引き層は、ポリエステルとアクリルとの共重合体と、ポリビニルピロリドンとを含有し、
前記共重合体は、スルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体であることを特徴とする感熱転写記録媒体。
【請求項2】
前記プライマー層に含まれる前記ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価は、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることを特徴とする請求項1に記載した感熱転写記録媒体。
【請求項3】
前記プライマー層は、更にポリイソシアネートを含有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載した感熱転写記録媒体。
【請求項4】
前記ポリイソシアネートが、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、およびキシレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項3に記載した感熱転写記録媒体。
【請求項5】
前記下引き層に含まれる前記共重合体と前記ポリビニルピロリドンとの組成比は、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載した感熱転写記録媒体。
【請求項6】
前記プライマー層の単位面積当たりの質量は、乾燥状態で0.03g/m以上0.25g/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載した感熱転写記録媒体。
【請求項7】
前記下引き層の単位面積当たりの質量は、乾燥状態で0.03g/m以上0.35g/m以下の範囲内であることを特徴とする請求項1〜請求項6のいずれか1項に記載した感熱転写記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱転写記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、感熱転写記録媒体はサーマルリボンと呼ばれており、感熱転写記録媒体は、例えば、感熱転写方式のプリンタのインクリボンに使用される。
従来の感熱転写記録媒体としては、例えば、特許文献1、2に記載されたものがある。特許文献1や特許文献2には、基材の一方の面に感熱転写層を備え、その基材の他方の面に耐熱滑性層(バックコート層)を備えた感熱転写記録媒体が記載されている。ここで感熱転写層は、インクを含んだ層(染料層)を備えており、プリンタのサーマルヘッドに発生する熱によって、そのインクを昇華(昇華転写方式)あるいは溶融(溶融転写方式)させ、被転写体側(熱転写受像シート)に転写されるものである。
【0003】
熱転写受像シートとしては、溶剤系の染料受容層(受像層)を備える「溶剤系熱転写受像シート」と水系の染料受容層を備える「水系熱転写受像シート」が知られているが、環境配慮や安全性の観点から、水系の塗布液を用いて受像シートの各層を形成することが望まれている。しかしながら、水系熱転写受像シートは、溶剤系熱転写受像シートと比較し、染料層と染料受容層との離型性の点で劣る。このため、水系熱転写受像シートは、染料層と染料受容層間で熱融着を起こしやすくなり、転写感度の低下や、染料受容層に染料層が転写する異常転写が発生しやすい傾向がある。
【0004】
実際に本発明者らが、昨今の昇華転写方式の高速プリンタを用いて、水系熱転写受像シートと特許文献1、2に記載されている構成の感熱転写記録媒体とを組み合わせて印画を行ってみたところ、十分な印画濃度が得られなかったり、熱転写の際に異常転写が生じたりする等、十分に満足できる品質の印画物が得られなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−131760号公報
【特許文献2】特開2005−231354号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような点に着目してなされたものであり、水系熱転写受像シートと感熱転写記録媒体とを組み合わせて印画を行った際、異常転写の発生が防止できると共に、印画における転写感度を向上した感熱転写記録媒体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様に係る感熱転写記録媒体は、基材の一方の面に耐熱滑性層が設けられ、前記基材の他方の面にプライマー層、下引き層、及び染料層が順次積層形成された感熱転写記録媒体であって、前記プライマー層は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを含有し、前記下引き層は、ポリエステルとアクリルとの共重合体と、ポリビニルピロリドンとを含有し、前記共重合体は、スルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の一態様であれば、水系熱転写受像シートを用いた際、高速印画時における転写感度を向上させることができ、且つ異常転写の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態に係る感熱転写記録媒体の構造を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
また、以下の詳細な説明では、本発明の理解のために多くの特定の細部について記載される。しかしながら、かかる特定の細部がなくても1つ以上の実施態様が実施できることは明らかであろう。すなわち、この実施形態以外の形態であっても、本発明に係る技術的思想を逸脱しない範囲であれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。他にも、図面を簡潔にするために、周知の構造及び装置については、その記載を省略している。また、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各層の厚みの比率等は現実のものとは異なる。
【0011】
(感熱転写記録媒体1)
本発明の一実施形態に係る感熱転写記録媒体1は、基材上に、少なくとも水系バインダーと中空粒子とを含有する水系中空粒子層を介して、水系バインダーと離型剤とを含有する水系受容層が形成された熱転写受像シートに熱転写によって画像を形成するための感熱転写記録媒体である。
本実施形態に係る感熱転写記録媒体1は、図1に示すように、基材10の一方の面(表面)にはプライマー層20と下引き層30と染料層40とがこの順で形成されている。また、基材10の他方の面(裏面)には、サーマルヘッドとの滑り性を付与する耐熱滑性層50が形成されている。以下、これらの部材の詳細について説明する。
【0012】
(基材10)
基材10は、熱転写における熱圧で軟化変形しない耐熱性と強度とが要求される。そのため、基材10としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレン、セロファン、アセテート、ポリカーボネート、ポリサルフォン、ポリイミド、ポリビニルアルコール、芳香族ポリアミド、アラミド、ポリスチレン等の合成樹脂のフィルム、及びコンデンサー紙、パラフィン紙等の紙類等を単独で又は組み合わされた複合体が使用可能である。これらの中でも、物性面、加工性、コスト面等を考慮するとポリエチレンテレフタレートフィルムが好ましい。
また、基材10は、操作性、加工性を考慮し、その厚さが2μm以上50μm以下の範囲内のものが使用可能である。その範囲内のものでも、転写適性や加工性等のハンドリング性を考慮すると、2μm以上9μm以下の範囲内のものが好ましい。
【0013】
(プライマー層20)
プライマー層20は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを含有する。
後述する下引き層30を形成すると共に、基材10と下引き層30との間に上記のようなプライマー層20を形成することによって、水系熱転写受像シートを用いた際においても異常転写が発生せず、且つ、染料層40に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られる。
【0014】
ここで、「異常転写」とは、熱転写時に基材10から染料層40が剥離し、染料層40と被転写体とが融着する現象である。
この異常転写は、特に、高温多湿環境下では顕著に発生しやすくなる傾向にある。これを考慮して、プライマー層20には、上述のポリカーボネート、及びポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂に加えて、ポリイソシアネートを含有することが好ましい。このようなポリイソシアネートを含有するプライマー層20を、基材10と下引き層30との間に形成することによって、高温多湿環境保存後においても異常転写を抑制し、且つ、染料層40に使用する染料を増やすことなく高濃度の印画が得られる感熱転写記録媒体1を提供可能となる。
【0015】
(下引き層30)
下引き層30は、ポリエステルとアクリルとの共重合体(ポリエステル−アクリル共重合体)と、ポリビニルピロリドンとを含有する。このポリエステル−アクリル共重合体は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体である。
下引き層30には、上述した異常転写の防止のみならず、転写感度を向上させるための染料バリア性と、更には通常溶剤系を含有する染料層40を下引き層30上に積層させるために耐溶剤性とが求められる。このため、下引き層30の主成分を、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとしている。
【0016】
ここで、「染料バリア性」とは、染料層40に含まれる染料が基材10側に拡散するのをブロック(防止)する性質を意味する。
また、「主成分」とは、本実施形態の効果を損なわない限り、ポリエステル−アクリル共重合体及びポリビニルピロリドン以外に、更に他の成分が添加されていても良い旨を表している。具体的には、ポリエステル−アクリル共重合体及びポリビニルピロリドンが、下引き層30の形成時の全体からみて50質量%超で含まれることを意味する。
ここで、下引き層30に占めるポリエステル−アクリル共重合体及びポリビニルピロリドンの割合は、好ましくは90質量%以上である。
【0017】
下引き層30に含まれるポリエステル成分は、プライマー層20との密着性を得るために必須となる。また、下引き層30に含まれるアクリル成分は、染料バリア性や耐溶剤性を得るために必須となる。
しかし、ポリエステル成分とアクリル成分とを単にブレンドした場合は、ポリエステル成分とアクリル成分との相溶性が良好でないため、材料としての安定性に欠ける。
更には、ポリエステル成分が有するプライマー層20との密着性、アクリル成分が有する耐溶剤性や染料バリア性が共に得られず、それぞれの成分を単独で用いた場合よりも性能が低下する結果となる。
【0018】
これは、相溶性の悪いポリマー同士のブレンドにより非相溶の海島構造が形成され、密着性を有するポリエステル成分と染料バリア性を有するアクリル成分とが局所的に存在するためと考えられる。つまり、下引き層30を全体としてみたときに密着性が悪い箇所と染料バリア性が悪い箇所とが存在するためと考えられる。
一方で、ポリエステル成分とアクリル成分とを共重合することにより、相溶性の悪さが改善される。これにより、ポリエステル成分とアクリル成分が相分離することなく、下引き層30全体に、ポリエステル成分とアクリル成分とが存在するために、それぞれの成分が有する機能(例えば、密着性、耐溶剤性、染料バリア性)が効果的に発現したものと考えられる。
【0019】
[ポリエステル成分の詳細]
以下、下引き層30に含まれるポリエステル成分の詳細について説明する。
下引き層30に含まれるポリエステルの共重合成分であるジカルボン酸成分は、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物を必須成分とし、例えば、フタル酸、テレフタル酸、テレフタル酸ジメチル、イソフタル酸、イソフタル酸ジメチル、2,5−ジメチルテレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、オルソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、コハク酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、及びドデカンジカルボン酸等の脂肪族ジカルボン酸、並びにシクロヘキサンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸等が挙げられる。
【0020】
エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物以外のジカルボン酸成分としては、例えば、芳香族ジカルボン酸が好ましい。
これは、芳香族ジカルボン酸の芳香核が、疎水性のプラスチックと親和性が大きいために、密着性の向上、耐加水分解性に優れているからである。なお、本実施形態においては、特にテレフタル酸、イソフタル酸が好ましい。
また、エステル形成性スルホン酸アルカリ金属塩化合物としては、例えば、スルホテレフタル酸、5−スルホイソフタル酸、4−スルホイソフタル酸、4−スルホナフタレン酸−2,7−ジカルボン酸等のアルカリ金属塩(スルホン酸のアルカリ金属塩)、及びこれらのエステル形成性誘導体が挙げられ、5−スルホイソフタル酸のナトリウム塩、及びそのエステル形成性誘導体がより好ましく用いられる。
【0021】
これは、スルホン酸基を有することによって耐溶剤性が向上するためである。
下引き層30に含まれるポリエステルの共重合成分であるジグリコ−ル成分としては、例えば、ジエチレングリコールと炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコ−ル等が挙げられる。炭素数2〜8の脂肪族又は炭素数6〜12の脂環族グリコ−ルの具体例としては、エチレングリコ−ル、1,3−プロパンジオ−ル、1,2−プロピレングリコ−ル、ネオペンチルグリコ−ル、1,4−ブタンジオ−ル、1,4−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,3−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,2−シクロヘキサンジメタノ−ル、1,6−ヘキサンジオール、p−キシリレングリコ−ル、トリエチレングリコ−ル等が挙げられ、これらの1種もしくは2種以上を併用しても良い。
【0022】
[アクリル成分の詳細]
以下、下引き層30に含まれるアクリル成分の詳細について説明する。
下引き層30に含まれるアクリル成分としては、例えば、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーの単独あるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマー単独、あるいは上記モノマーと共重合できる他のラジカル重合性不飽和モノマーが挙げられる。
本実施形態では、グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーあるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーが必要となる。
【0023】
これは、グリシジル基及びカルボキシル基は、染料との相溶性が悪いため、染料バリア性を有するからである。
つまり、下引き層30にグリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリル成分を用いることによって、転写感度が向上する。更には、例えば、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤及び酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶剤に対する耐溶剤性が向上する。また、本実施形態においては、グリシジル基、カルボキシル基が後述するプライマー層20に含まれる水酸基や残存アミン基と反応することで、更に転写感度が向上する。
【0024】
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、アリルグリシジルエーテルといったグリシジルエーテル類等が挙げられる。
また、カルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸、2−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、2−カルボキシプロピル(メタ)アクリレート、5−カルボキシペンチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
グリシジル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーあるいはカルボキシル基含有ラジカル重合性不飽和モノマーと共重合できるラジカル重合性不飽和モノマーとしては、例えば、ビニルエステル、不飽和カルボン酸エステル、不飽和カルボン酸アミド、不飽和ニトリル、アリル化合物、含窒素系ビニルモノマー、炭化水素ビニルモノマー又はビニルシラン化合物が挙げられる。
上述のビニルエステルとしては、例えば、プロピオン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、高級第3級ビニルエステル、塩化ビニル、臭化ビニルが挙げられる。
【0026】
また、上述の不飽和カルボン酸エステルとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、マレイン酸ブチル、マレイン酸オクチル、フマル酸ブチル、フマル酸オクチル、メタクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸ヒドロキシプロピル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、アクリル酸ジメチルアミノエチル、エチレングリコールジメタクリル酸エステル、エチレングリコールジアクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジメタクリル酸エステル、ポリエチレングリコールジアクリル酸エステルが挙げられる。
【0027】
また、上述の不飽和カルボン酸アミドとしては、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、メチロールアクリルアミド、ブトキシメチロールアクリルアミドが挙げられる。
また、上述の不飽和ニトリルとしては、例えば、アクリロニトリルが挙げられる。
また、上述のアリル化合物としては、例えば、酢酸アリル、メタクリル酸アリル、アクリル酸アリル、イタコン酸ジアリルが挙げられる。
また、上述の含窒素系ビニルモノマーとしては、例えば、ビニルピリジン、ビニルイミダゾールが挙げられる。
【0028】
また、上述の炭化水素ビニルモノマーとしては、例えば、エチレン、プロピレン、ヘキセン、オクテン、スチレン、ビニルトルエン、ブタジエンが挙げられる。
また、上述のビニルシラン化合物としては、例えば、ジメチルビニルメトキシシラン、ジメチルビニルエトキシシラン、メチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルジメトキシシランが挙げられる。
【0029】
下引き層30におけるポリエステルとアクリルとの共重合比は、質量比で20:80から40:60までの範囲内であることが好ましい。
これは、下引き層30において、ポリエステル成分が20%を下回ると、高い印画濃度が得られるがプライマー層20との密着性が不足する傾向になり、ポリエステル成分が40%を超えると、密着性が向上するものの印画濃度が低下する傾向となるためである。
下引き層30に含まれるポリエステルは、ジカルボン酸とジグリコールとをエステル化あるいはエステル交換反応後に重縮合反応させる製造方法によって得ることができ、その製造方法についてはなんら限定されるものではない。
また、下引き層30に含まれるポリエステル−アクリル共重合体の製造方法については、なんら限定されるものではない。例えば、乳化重合の場合は、ポリエステル分散液あるいは水溶液を用いてアクリルモノマーを乳化して重合する方法や、ポリエステル分散液あるいは水溶液にアクリルモノマーを滴下しながら重合する方法が挙げられる。
【0030】
[ポリビニルピロリドンの詳細]
以下、下引き層30に含まれるポリビニルピロリドンの詳細について説明する。
本発明者らが見出したように、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを含ませることで、両者(つまり、共重合体とポリビニルピロリドン)をそれぞれ単独で使用した場合と比較して、転写感度が増加するのは、ポリビニルピロリドンが、染料を吸着しやすい性質を持つ共重合体中のスルホン酸基を有するポリエステル部位の近傍に存在することで、染料の吸着を防止したためと考えられる。
【0031】
また、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとの組成比は、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが好ましい。
これは、ポリビニルピロリドンの比率が30%を下回ると、高い印画濃度が得られにくくなり、ポリビニルピロリドンの比率が80%を超えると、高い印画濃度が得られにくく、更にはポリビニルピロリドンが有する吸湿性に由来して保存安定性が低下するためである。
このポリビニルピロリドンとしては、例えば、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等のビニルピロリドンの単独重合体(ホモポリマー)又はこれらの共重合体が挙げられる。更には、変性ポリビニルピロリドン樹脂等が挙げられる。
【0032】
この変性ポリビニルピロリドン樹脂は、例えば、N−ビニルピロリドン系モノマーと他のモノマーとの共重合体である。その共重合体の共重合形態としては、例えば、ランダム共重合、ブロック共重合、グラフト共重合等であり、特に限定されるものではない。
上記のN−ビニルピロリドン系モノマーとしては、例えば、N−ビニルピロリドン(N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニル−4−ピロリドン等)及びその誘導体が挙げられる。また、その誘導体としては、例えば、N−ビニル−3−メチルピロリドン、N−ビニル−5−メチルピロリドン、N−ビニル−3,3,5−トリメチルピロリドン、N−ビニル−3−ベンジルピロリドン等のピロリドン環に置換基を有するものが挙げられるが、特に限定されるものではない。
【0033】
N−ビニルピロリドン系モノマーと共重合する他のモノマーとしては、例えば、ビニル重合性モノマーが挙げられる。具体的には、(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル系モノマー、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸等の不飽和カルボン酸、ビニルカプロラクタム、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ビニルアルコール、スチレン、ビニルトルエン、ジビニルベンゼン、塩化ビニリデン、四フッ化エチレン、フッ化ビニリデン等が挙げられる。
【0034】
本実施形態における下引き層30で使用するポリビニルピロリドンは、フィッケンチャーの公式におけるK値で、30以上100以下の範囲内のものであることが好ましい。特に好ましいのは、60以上90以下の範囲内である。K値が30未満のポリビニルピロリドンを用いると、印画における転写感度の向上の効果が薄くなり、K値が100超のポリビニルピロリドンを用いると、塗布液の粘度が高まって塗工適正が低下するので、好ましくない。
【0035】
[下引き層30の乾燥後の塗布量]
下引き層30の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.03g/m以上0.35g/m以下の範囲内であることが好ましい。
下引き層30の乾燥後の塗布量が0.03g/m未満の場合には、染料層40の積層時における下引き層30の劣化により、高速印画時における転写感度及び密着性が不足する。
一方、下引き層30の乾燥後の塗布量が0.35g/m超の場合には、感熱転写記録媒体1自体の感度は変わらず、印画濃度は飽和する。よって、コスト面の観点から0.35g/m以下であることが好ましい。
ここで、下引き層30の乾燥後の塗布量とは、下引き層30の形成用の塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。また、後述するプライマー層20、染料層40の乾燥後の塗布量及び耐熱滑性層50の乾燥後の塗布量も、同様に、各塗布液を塗布し、乾燥した後に残った固形分量のことをいう。
【0036】
(プライマー層20)
下引き層30をポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとで形成することで、転写感度が得られるが、水系熱転写受像シートとを組み合わせた印画においては、基材10と下引き層30との密着性が不足し、異常転写が発生する。
これは、水系熱転写受像シートは溶剤系熱転写受像シートと比較し、染料層40と染料受容層との離型性の点で劣るため、染料層40と染料受容層間で熱融着を起こしやすくなるためである。
【0037】
ここで、本発明者らは、プライマー層20に、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを用いることで、水系熱転写受像シートを用いた場合においても異常転写を防止するだけでなく、更には下引き層30の単体で用いた場合よりも転写感度が向上することを見出した。
これは、密着性については、ポリウレタン・ウレア樹脂に含まれるアミド結合に類似するウレア結合が基材10、下引き層30との密着性を有していることと、更には、ポリカーボネート、及びポリカプロラクタム骨格を有することで耐熱性・柔軟性が向上するため、高速プリンタ使用時における高エネルギー・高圧力印加の場合においても密着性が低下しないためと考えられる。
【0038】
転写感度の向上については、下引き層30に含まれるポリビニルピロリドンのラクタム構造部分とウレア結合部とが水素結合による相互作用をすることによって、プライマー層20又は下引き層30の全体の膜凝集力が向上し、染料がプライマー層20又は下引き層30に拡散しづらくなり、転写感度が向上したものと考えられる。
また、高温多湿環境保存下においては、下引き層30に含まれるポリビニルピロリドンが水分を吸湿し、下引き層30が劣化する為、異常転写が発生しやすい。
これに対し、本発明者らは、プライマー層20に、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とに加えて、ポリイソシアネートを用いることで、高温多湿環境保存後において異常転写を防止するだけでなく、更には下引き層30の単体で用いた場合よりも転写感度が向上することを見出した。
【0039】
この場合、ポリウレタン・ウレア樹脂に含まれるアミド結合に類似するウレア結合が基材10および下引き層30との密着性を有するに加え、ポリイソシアネートと基材10、下引き層30に存在する水酸基・カルボキシル基との反応することで吸湿性が抑えられ、さらにはポリカーボネート、及びポリカプロラクタム骨格が有する耐熱性、ポリウレタン・ウレア樹脂に含まれる水酸基とポリイソシアネートが反応することで得られる耐熱性が向上する。この結果、高温多湿環境下、高速プリンタ使用時における高エネルギー・高圧力印加の場合においても密着性が低下しないためと考えられる。
【0040】
またこの場合には、転写感度の向上については、下引き層30に含まれるポリビニルピロリドンのラクタム構造部分とウレア結合部とが水素結合による相互作用、下引き層30に含まれるグリジシル基、エポキシ基とポリイソシアネートとが反応することによって、プライマー層20又は下引き層30の全体の膜凝集力が向上し、染料がプライマー層20又は下引き層30に染料が拡散しづらくなり、転写感度が向上したものと考えられる。
更に、本発明者らは、ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価を10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下とすることで、転写感度が更に向上することも見出した。
【0041】
これは、ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基がポリビニルピロリドンのラクタム構造部分と相互作用をし、且つ、アクリル・ポリエステル共重合体中のグリシジル基と反応することによって、より膜凝集力が向上するためであると考えられる。
水酸基価が30mgKOH/gを超えると、得られるポリウレタン・ウレア樹脂の親水性が高まり、下引き層30の積層時にポリウレタン・ウレア樹脂が侵食されるため、密着性が低下する傾向がみられる。
なお、下引き層30を設けず、プライマー層20を単独で用いた場合は、染料層40との密着性が悪いばかりでなく、転写感度も大きく低下する。
また、下引き層用塗布液とプライマー層用塗布液は相溶性が悪く、混合して用いることはできない。
【0042】
本実施形態に係るポリウレタン・ウレア樹脂は、有機ジイソシアネートと、高分子ジオールと、アミン系鎖延長剤とを反応させて得られる。
本実施形態に係るポリウレタン・ウレア樹脂の製造法は特に限定されるものではないが、例えば、高分子ジオール及びイソシアネート基をそれぞれ1個以上有する化合物、及び必要に応じてジイソシアネート化合物をイソシアネート基が過剰となる割合で反応させ、高分子ポリオールの両末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを調整し、次いでこれを適当な溶媒中で鎖伸長剤とを反応させ、更に必要に応じて反応停止剤と反応させる二段法が一般的に知られている。
【0043】
[有機ポリイソシアネート]
ポリウレタン・ウレア樹脂を得るために使用する有機ポリイソシアネートとしては特に限定されるものではないが、プライマー層20の基材10及び下引き層30との密着性を考慮すると、芳香族ジイソシアネート、脂環族ジイソシアネートが好ましい。具体的には、トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネートを挙げることができ、これらは単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0044】
[高分子ポリオール]
ポリウレタン・ウレア樹脂を得るために使用する高分子ポリオールは、耐熱性、溶解性、乾燥性、及び密着性等を考慮して適宜決定されるが、通常は数平均分子量が500個以上5000個以下の範囲が好ましく、より好ましくは1000個以上3000個以下である。
分子量が500未満になると耐熱性や印刷適性が劣る傾向があり、分子量が5000を超えると密着性が低下する傾向がある。
高分子ポリオールとしては、例えば、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクタムポリオール、ポリオレフィンポリオールを挙げることができる。これらの高分子ポリオールは、単独で用いても、2種以上併用しても良い。本実施形態においては、耐熱性、柔軟性、耐アルコール、及び耐水性の点から少なくともポリカーボネートポリオール、ポリカプロラクタムポリオールを用いる事が必須である。
【0045】
[アミン系鎖延長剤]
ポリウレタン・ウレア樹脂を得るために使用するアミン系鎖延長剤は、2個のアミノ基を一分子中に有する、脂肪族ジアミン、脂環式ジアミン、複素環ジアミン等が挙げられる。このうち、1分子中に1個以上の水酸基を有するジアミンであることが好ましい。なかでも、1分子中に1〜4個の水酸基を有するアルカノールアミンが好ましいが、本実施形態を損なわないかぎり水酸基含有ジアミンとともに水酸基を含有しないジアミンを併用しても良い。
【0046】
アミン系鎖延長剤としては、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、トリメチレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−シクロヘキシレンジアミン、4,4′−ジアミノジフェニルメタン、トリレンジアミン、フェニレンジアミン、キシレンジアミン、ピペラジン、1,4−ジアミノピペラジン、2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、N,N′−ジ−2−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、N,N′−ジ−2−ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、N,N′−ジ−2−ヒドロキシプロピルエチレンジアミン、2−ヒドロキシプロパンジアミン等があげられる。
【0047】
本実施形態に係るポリウレタン・ウレア樹脂は、高分子ジオールの一部を低分子ポリオール類、たとえば高分子ジオールの製造に用いられる各種低分子ポリオールに置換しても良く、その際の低分子ジオールの使用量は20質量%以下であり、好ましくは10質量%以下である。
低分子ポリオール類の使用量が20質量%を越えると、基材10に対する密着性が低下し、転写感度も低下する。
本実施形態に係るポリイソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する化合物であれば適宜用いることができる。ポリイソシアネートとして、例えば、トリレンジイソシアネート等の芳香族ポリイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂環式ポリイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族ポリイソシアネート、これらのアダクト体、ビウレット体、イソシアヌレート体等の変性ポリイソシアネート等が挙げられる。
【0048】
特に転写感度・密着性の観点から、本実施形態に係るポリイソシアネートとしては、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートからなるポリイソシアネートが好ましい。
なお、ポリイソシアネートとしては市販されているものを利用することができ、例えば、タケネートD-101E、D-103H、D-103M−2、D-268、D-110N、D-268、D-204(以上、三井化学社製)、バーノックD−750、D−800、DN−950(DIC株式会社製)コロネート2030、2031、2037、2071、コロネートL、HX、HK、HL(東ソー社製)等が挙げられる。
【0049】
プライマー層20の乾燥後の塗布量は、一概に限定されるものではないが、0.03g/m以上0.25g/m以下の範囲内であることが好ましい。
プライマー層20の乾燥後の塗布量が0.03g/m未満の場合には、転写感度が向上しないばかりか、密着性も十分に確保できない。
一方、プライマー層20の乾燥後の塗布量が0.25g/m超の場合には、感熱転写記録媒体1自体の感度は変わらず、印画濃度は飽和する。よって、コスト面の観点から0.25g/m以下であることが好ましい。
【0050】
(染料層40)
染料層40は、例えば、熱移行性染料、バインダー樹脂、溶剤等を配合して染料層40形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥することで形成されたものである。染料層40の乾燥後の塗布量は、1.0g/m程度が適当である。なお、染料層40は、1色の単一層で構成したり、色相の異なる染料を含む複数の層を、同一の基材10の同一面に面順次に、繰り返し形成したりすることもできる。
染料層40に含まれる熱移行性染料は、熱により、溶融、拡散、もしくは昇華移行する染料であれば使用可能であり、特に限定されるものではない。
【0051】
この熱移行性染料の色成分としては、例えば、シアン成分、マゼンタ成分、イエロー成分及びブラック成分(CMYK)がある。
シアン成分としては、例えば、C.I.ディスパースブルー354、C.I.ソルベントブルー63、C.I.ソルベントブルー36、あるいはC.I.ディスパースブルー24等を挙げることができる。
また、マゼンタ成分としては、例えば、C.I.ディスパースレッド60、C.I.ディスパースバイオレット26、C.I.ソルベントレッド27、あるいはC.I.ソルベントレッド19等を挙げることができる。
【0052】
また、イエロー成分としては、例えば、ソルベントイエロー56、16、30、93、33、ディスパースイエロー201、231、33等を挙げることができる。
ブラック成分としては、例えば、カーボンブラック(ピグメントブラック7)や墨等を挙げることができる。なお、ブラック成分は、前述の各染料(シアン成分、マゼンタ成分及びイエロー成分)を組み合わせて調色することもできる。
染料層40に含まれるバインダー樹脂としては、例えば、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、酢酸セルロース等のセルロース系樹脂やポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルブチラール、ポリビニルアセタール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリルアミド等のビニル系樹脂やポリエステル樹脂、スチレン−アクリロニトリル共重合樹脂、フェノキシ樹脂等を用いることが可能である。しかしながら、染料層40に含まれるバインダー樹脂は、特に限定されるものではない。
【0053】
ここで、染料層40の染料とバインダーとの配合比率(染料/バインダー)は、質量基準で10/100から300/100までの範囲内であることが好ましい。
これは、染料層40の染料とバインダーとの配合比率が10/100を下回ると、染料が少な過ぎて発色感度が不十分となり、良好な熱転写画像が得られないためである。
また、染料層40の染料とバインダーとの配合比率が300/100を超えると、バインダーに対する染料の溶解性が極端に低下するために、感熱転写記録媒体1を形成した際に保存安定性が悪くなり、染料が析出し易くなってしまうためである。
また、染料層40には、性能を損なわない範囲で、例えば、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、分散剤、粘度調整剤、安定化剤等の添加剤が含まれていても良い。
【0054】
(耐熱滑性層50)
耐熱滑性層50は、例えば、バインダー樹脂、離型性や滑り性を付与する機能性添加剤、充填剤、硬化剤、溶剤等を配合して耐熱滑性層形成用の塗布液を調製し、塗布、乾燥して形成したものである。この耐熱滑性層50の乾燥後の塗布量は、0.1g/m以上2.0g/m以下の範囲内が適当である。
耐熱滑性層50に含まれるバインダー樹脂としては、例えば、ポリビニルブチラール樹脂、ポリビニルアセトアセタール樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエーテル樹脂、ポリブタジエン樹脂、アクリルポリオール、ポリウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、ポリエーテルアクリレート、エポキシアクリレート、ニトロセルロース樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリカーボネート樹脂等を挙げることができる。
【0055】
また、耐熱滑性層50に含まれる機能性添加剤としては、例えば、動物系ワックス、植物系ワックス等の天然ワックス、合成炭化水素系ワックス、脂肪族アルコールと酸系ワックス、脂肪酸エステルとグリセライト系ワックス、合成ケトン系ワックス、アミン及びアマイド系ワックス、塩素化炭化水素系ワックス、アルファーオレフィン系ワックス等の合成ワックス、ステアリン酸ブチル、オレイン酸エチル等の高級脂肪酸エステル、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸カリウム、ステアリン酸マグネシウム等の高級脂肪酸金属塩、長鎖アルキルリン酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアリールエーテルリン酸エステル又は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等のリン酸エステル等の界面活性剤等を挙げることができる。
【0056】
また、耐熱滑性層50に含まれる充填剤としては、例えば、タルク、シリカ、酸化マグネシウム、酸化亜鉛、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、カオリン、クレー、シリコーン粒子、ポリエチレン樹脂粒子、ポリプロピレン樹脂粒子、ポリスチレン樹脂粒子、ポリメチルメタクリレート樹脂粒子、ポリウレタン樹脂粒子等を挙げることができる。
また、耐熱滑性層50に含まれる硬化剤としては、例えば、トリレンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、テトラメチルキシレンジイソシアネート等のイソシアネート類、及びその誘導体を挙げることができるが、特に限定されるものではない。
【0057】
(作用効果)
(1)本実施形態に係る感熱転写記録媒体1は、基材10の一方の面にプライマー層20、下引き層30、染料層40をこの順に備え、基材10の他方の面に耐熱滑性層50を備えた構成とし、プライマー層20は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを含有し、更に、下引き層30は、ポリエステルとアクリルとの共重合体(ポリエステル−アクリル共重合体)と、ポリビニルピロリドンとを含有する。このポリエステル−アクリル共重合体は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体である。
この構成によれば、水系受容層が形成された熱転写受像シート(水系熱転写受像シート)を用いた際であっても異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層40に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。
【0058】
(2)プライマー層20は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂と、ポリイソシアネートとを含有することが好ましい。
この構成によれば、高温多湿環境下保存後においても、異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層40に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。
【0059】
(3)プライマー層20に含まれるポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートからなる群より選択される少なくとも1種とすることが好ましい。
この構成によれば、基材10とプライマー層と下引き層30と染料層40の密着性が向上し、さらにはプライマー層20と下引き層30の膜凝集力が向上するため、転写感度をより効果的に高めることができる。
【0060】
(4)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、プライマー層20に含まれるポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価を10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下としている。
この構成によれば、プライマー層20と下引き層30の膜凝集力が向上するため、転写感度をより効果的に高めることができる。
【0061】
(5)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引き層30に含まれるポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとの組成比を質量比で70:30から20:80までの範囲内としている。
この構成によれば、高速印画時における印画濃度を更に高めることができ、且つ、異常転写の発生を抑制することができる。
【0062】
(6)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、下引き層用塗布液をプライマー層20上に塗布し、乾燥させて下引き層30を形成しており、その下引き層30の乾燥後の塗布量を0.03g/m以上0.35g/m以下の範囲内としている。
【0063】
(7)また、本実施形態に係る感熱転写記録媒体1では、プライマー層用塗布液を基材10上に塗布し、乾燥させてプライマー層20を形成しており、そのプライマー層20の乾燥後の塗布量を0.03g/m以上0.25g/m以下の範囲内としている。
この構成によれば、基材10あるいは染料層40と、プライマー層20、下引き層30との密着性を高めることができ、且つ、高速印画時であっても十分な印画濃度を維持することができる。また、感熱転写記録媒体の製造コストが高騰するのを防止することができる。
【0064】
(プライマー層用塗布液)
ここで、上述したプライマー層20を形成するためのプライマー層用塗布液について、以下説明する。
本実施形態で用いられるプライマー層用塗布液は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを含んだものである。
特に、プライマー層用塗布液は、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とに加え、ポリイソシアネートが含まれているものが好ましい。このプライマー層用塗布液におけるポリイソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートから選択されることが好ましい。
また、このプライマー層用塗布液において、ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価が10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが好ましい。
【0065】
(下引き層用塗布液)
上述した下引き層30を形成するための下引き層用塗布液について、以下説明する。
本実施形態で用いられる下引き層用塗布液は、ポリエステルとアクリルとの共重合体(ポリエステル−アクリル共重合体)と、ポリビニルピロリドンとを含んだものである。このポリエステル−アクリル共重合体は、側鎖にスルホン酸基を有するポリエステルと、グリシジル基及びカルボキシル基の少なくとも一方を有するアクリルとの共重合体である。
【0066】
また、この下引き層用塗布液において、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとの組成比は、質量比で70:30から20:80の範囲内であることが好ましい。
プライマー層用塗布液を用いて形成したプライマー層20と、下引き層用塗布液を用いて形成した下引き層30とを備えた感熱転写記録媒体1であれば、水系受容層が形成された熱転写受像シートを用いて画像を形成した際においても、異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層40に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。特に、プライマー層20にポリイソシアネートが含まれている場合には、高温多湿環境保存後においても、異常転写の発生を抑制することができ、且つ、染料層40に使用する染料量を増やすことなく高速印画時における転写感度を高めることができる。
【0067】
(製造方法)
上述した耐熱滑性層50、及びプライマー層20、下引き層30、染料層40は、いずれも汎用の塗布方法にて順次積層するように塗布し、乾燥することで形成可能である。各層の塗布方法としては、例えば、グラビアコーティング法、スクリーン印刷法、スプレーコーティング法、リバースロールコート法を挙げることができる。
【実施例】
【0068】
以下に、本実施形態の各実施例及びそれらに対する各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[耐熱滑性層付き基材10の作製]
基材10として、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に、下記組成の耐熱滑性層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/mになるように塗布し、100℃で1分間乾燥した。その後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材10を得た。
【0069】
[耐熱滑性層用塗布液]
・アクリルポリオール樹脂 :12.5部
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル: 2.5部
・タルク : 6.0部
・2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー : 4.0部
・トルエン :50.0部
・メチルエチルケトン :20.0部
・酢酸エチル : 5.0部
【0070】
[スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体の作製方法]
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部、及び反応触媒として酢酸亜鉛1部を仕込んだ。
次いで、それらを130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン1部を添加した後、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを純水に溶解し、次いでグリシジル基含有アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジルをポリエステルの質量比で30:70となるように加え、更に重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、モノマー乳化液を作製した。
次いで、冷却管付き反応容器に、純水とモノマー乳化液とを仕込み、20分間窒素ガスを吹き込んで十分脱酸素を行った。その後、純水とモノマー乳化液とを1時間かけて徐々に昇温し、75℃以上85℃以下の温度を維持しつつ3時間反応を行い、スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体を得た。
【0071】
[ポリウレタン・ウレア樹脂の作製方法]
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとを脱エタノール反応させて得られる数平均分子量2000のポリカーボネートジオールを656部、1,4−ブタンジオールにε−カプロラクトンを開環付加反応させて得られる数平均分子量1000の2官能ポリカプロラクトンジオールを300部仕込み、これらを撹拌しながら窒素ガスバブリングし、190℃で24時間エステル交換を行い、常温液状のポリオールを得た。ポリオールの水酸基含有量をJIS K1557に準じた方法により測定したところ、58mgKOH/gであった。
【0072】
続いて、留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、ポリオールを243部、イソホロンジイソシアネート46.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン8.35部、ジ‐n‐ブチルアミン0.176部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール1.30部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−1)とを得た。
このときの水酸基価は10mgKOH/gであった。
【0073】
同様の方法で、ポリオールを247.6部、イソホロンジイソシアネート42.6部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール3.24部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−2)とを得た。
このときの水酸基価は30mgKOH/gであった。
【0074】
同様の方法で、ポリオールを247部、イソホロンジイソシアネート42.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン8.35部、ジ‐n‐ブチルアミン0.18部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール1.30部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−3)とを得た。
このときの水酸基価は5mgKOH/gであった。
【0075】
同様の方法で、ポリオールを247.6部、イソホロンジイソシアネート42.6部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール4.10部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−4)とを得た。
このときの水酸基価は40mgKOH/gであった。
【0076】
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸と3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオールの重縮合物(水酸基価56.1mgKOH/g、)245部と、イソホロンジイソシアネート46.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール4.24部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカプロラクタム骨格を有しないポリウレタン・ウレア樹脂(A−5)を得た。
このときの水酸基価は10mgKOH/gであった。
【0077】
<第1の実施例>
まず、第1の実施例について説明する。
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成のプライマー層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.10g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、プライマー層20を形成した。
続いて下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層30を形成した。
更に、その下引き層30上に、下記組成の染料層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/mになるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層40を形成した。
こうして、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0078】
[プライマー層用塗布液−1]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−1) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン : 0.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0079】
[下引き層用塗布液−1]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0080】
[染料層用塗布液−1]
・C.I.ソルベントブルー63 : 6.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 : 4.0部
・トルエン :45.0部
・メチルエチルケトン :45.0部
【0081】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−2]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0082】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−3]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :1.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0083】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−4]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :3.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0084】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層用塗布液を下記組成のプライマー層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−2]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−2) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0085】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.03g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0086】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.25g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0087】
(実施例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.03g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
【0088】
(実施例9)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.35g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
【0089】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、プライマー層20及び下引き層30を形成することなく、実施例1と同様の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/mになるように塗布、乾燥することで、染料層40を形成した。こうして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0090】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0091】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0092】
(比較例4)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−3]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−3) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0093】
(比較例5)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−4]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−4) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0094】
(比較例6)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−5(カプロラクタム骨格を持たないポリウレタン・ウレア樹脂)にした以外は、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−5]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−5) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0095】
(比較例7)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−5]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :0.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0096】
(比較例8)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−6]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :4.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0097】
(比較例9)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例9の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−7]
・ポリビニルピロリドン(K値60) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0098】
(比較例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例10の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−8]
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0099】
(比較例11)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例11の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−9]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0100】
(比較例12)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例12の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−10]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0101】
(比較例13)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−11にした以外は、実施例1と同様にして、比較例13の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−11]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :7.00部
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :3.00部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0102】
(比較例14)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.01g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例14の感熱転写記録媒体を得た。
【0103】
(比較例15)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.30g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例15の感熱転写記録媒体を得た。
【0104】
(比較例16)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.01g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例16の感熱転写記録媒体を得た。
【0105】
(比較例17)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.40g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例17の感熱転写記録媒体を得た。
【0106】
[被転写体の作製]
(1)溶剤系熱転写受像シートの作製
基材10として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/mになるように塗布、乾燥した。こうして、感熱転写用の被転写体を作製した。
[受像層用塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 :19.5部
・アミノ変性シリコーンオイル : 0.5部
・トルエン :40.0部
・メチルエチルケトン :40.0部
【0107】
(2)水系熱転写受像シートの作製
[受像紙基材の用意]
受像紙基材として、厚さ180g/mのアート紙を用いた。
[中空粒子層の形成]
受像紙基材の上に、下記組成中空粒子層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/mになるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
[中空粒子層塗布液]
・アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体を含有する既発泡中空粒子 : 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
・ポリビニルアルコール : 10部
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
・水 :200部
【0108】
[受容層の形成]
断熱層上に、下記組成受容層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/mになるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
[受容層塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 80部
(例:ビニブラン900 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン : 10部
(例:KF615A 信越化学工業(株)製)
・水 :400部
【0109】
[印画評価]
実施例1〜9、比較例1〜17の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した。その結果を表1に示す。なお、最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
・印画環境 :23℃50%RH
・印加電圧 :29V
・ライン周期:0.9msec
・印画密度 :主走査300dpi 副走査300dpi
【0110】
[異常転写評価]
実施例1〜9、比較例1〜17の感熱転写記録媒体に関して、常温にて養生された感熱転写記録媒体と被転写体とを使用し、40℃90%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表1に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。○以上が実用上問題ないレベルである。
・◎:被転写体への異常転写が、認められない
・○:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
・△:被転写体への異常転写が、部分的に認められる
・×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示す結果から分かるように、プライマー層20にポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを用い、下引き層30にポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとを用いた実施例1〜5は、プライマー層20を設けない比較例1、比較例2や、ポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有しないポリウレタン・ウレア樹脂(A−5)とをプライマー層20に用いた比較例6と比較して、転写感度の向上がみられ、水系熱転写受像シートを用いた際においても異常転写が発生しないことが分かった。
【0113】
また、下引き層30にスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルとの共重合体を用いた比較例12は、下引き層30が設けられていない比較例1や、スルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例10、スルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルを単に混合した比較例13と比較して、高速印画時における転写感度が高いことが分かった。
また、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例1と、ポリビニルピロリドン単体である比較例9や、ポリエステル−アクリル共重合体の単体である比較例12とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上していることが確認された。このことから、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合すると転写感度が更に高くなることが分かった。
【0114】
更に、ポリエステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられた(実施例1、3、4と、比較例7、8とを参照)。また、ポリビニルピロリドンの割合が減少すると密着性が低下する傾向がみられた。この傾向から、好ましい混合比率は、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとが、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが分かった。
また、プライマー層20に用いるポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価10mgの実施例1や水酸基価30mgの実施例5と、水酸基価40mgKOH/gの比較例5とを比較すると、転写感度及び密着性が低下する傾向がみられた。更に、水酸基価10mgの実施例1と水酸基価5mgの比較例4とを比較すると、密着性は同等だが、転写感度に違いがみられた。これらのことから、ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価は40mgKOH/g未満が好ましいことが分かり、更には転写感度の点から10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲がより好ましいことが分かった。
【0115】
また、実施例6の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.03g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例14の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.01g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度は向上せず、密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
また、実施例7の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.25g/mであるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
【0116】
一方、比較例15の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.30g/mであるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
また、実施例8の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.03g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例16の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.01g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
【0117】
また、実施例9の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.35g/mであるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
一方、比較例17の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.40g/mであるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
【0118】
<第2の実施例>
次に、第2の実施例について説明する。
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成のプライマー層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.10g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、プライマー層20を形成した。
続いて下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/mになるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層30を形成した。
更に、その下引き層30上に、下記組成の染料層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/mになるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層40を形成した。
こうして、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0119】
[プライマー層用塗布液−1]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・トリレンンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−103H 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0120】
[下引き層用塗布液−1]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
[染料層用塗布液−1]
・C.I.ソルベントブルー63 : 6.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 : 4.0部
・トルエン :45.0部
・メチルエチルケトン :45.0部
【0121】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−2]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・キシレンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−110N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0122】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0123】
[プライマー層用塗布液−3]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・ジフェニルメタンジイソシアネート :0.60部
(固形分71% D−103M−2 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0124】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−2]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0125】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−3]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :1.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0126】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−4]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :3.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0127】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.03g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0128】
(実施例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.25g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0129】
(実施例9)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.03g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
【0130】
(実施例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.35g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
【0131】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、プライマー層20及び下引き層30を形成することなく、実施例1と同様の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/mになるように塗布、乾燥することで、染料層40を形成した。こうして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0132】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0133】
(比較例3)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−4]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :20.0部
【0134】
(比較例4)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−5]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・ヘキサメチレンジイソシアネート :0.60部
(固形分71% D−160N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0135】
(比較例5)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−6]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・水添キシリレンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−120N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0136】
(比較例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0137】
(比較例7)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−5]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :0.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0138】
(比較例8)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−6]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :4.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0139】
(比較例9)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例9の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−7]
・ポリビニルピロリドン(K値60) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0140】
(比較例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例10の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層30用塗布液−8]
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0141】
(比較例11)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例11の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−9]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0142】
(比較例12)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例12の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−10]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0143】
(比較例13)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−11にした以外は、実施例1と同様にして、比較例13の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−11]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :7.00部
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :3.00部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0144】
(比較例14)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.01g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例14の感熱転写記録媒体を得た。
【0145】
(比較例15)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.30g/mになるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例15の感熱転写記録媒体を得た。
【0146】
(比較例16)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.01g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例16の感熱転写記録媒体を得た。
【0147】
(比較例17)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.40g/mになるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例17の感熱転写記録媒体を得た。
【0148】
[被転写体の作製]
次のように水系熱転写受像シートを作製した。
[受像紙基材の用意]
受像紙基材として、厚さ180g/mのアート紙を用いた。
[中空粒子層の形成]
受像紙基材の上に、下記組成中空粒子層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/mになるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
【0149】
[中空粒子層塗布液]
・アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体を含有する既発泡中空粒子 : 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
・ポリビニルアルコール : 10部
・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
・水 :200部
【0150】
[受容層の形成]
断熱層上に、下記組成受容層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/mになるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
[受容層塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 80部
(例:ビニブラン900 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン : 10部
(例:KF615A 信越化学工業(株)製)
・水 :400部
【0151】
[印画評価]
実施例1〜10、比較例1〜17の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した。その結果を表2に示す。なお、最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
・印画環境 :23℃55%RH
・印加電圧 :29V
・ライン周期:0.9msec
・印画密度 :主走査300dpi 副走査300dpi
【0152】
[異常転写評価]
実施例1〜10、比較例1〜17の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%環境下にそれぞれ168時間後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、40℃85%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表2に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。○以上が実用上問題ないレベルである。
・◎:被転写体への異常転写が、認められない
・○:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
・△:被転写体への異常転写が、部分的に認められる
・×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0153】
【表2】
【0154】
XDI:キシレンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
HXDI:水添キシリレンジイソシアネート
【0155】
表2に示す結果から分かるように、プライマー層20にポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とポリイソシアネートを用い、下引き層30にポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとを用いた実施例1〜10は、プライマー層20を設けない比較例1、比較例2や、プライマー層20にポリイソシナネートを含まない比較例3、下引き層を設けない比較例6と比較して転写感度の向上がみられ、高温多湿下に保存した後においても異常転写が発生しないことが分かった。
【0156】
また、下引き層30にスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルとの共重合体を用いた比較例12は、下引き層30が設けられていない比較例1や、スルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例10、スルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルを単に混合した比較例13と比較して、高速印画時における転写感度が高いことが分かった。
また、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例1と、ポリビニルピロリドン単体である比較例9や、ポリエステル−アクリル共重合体の単体である比較例12とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上していることが確認された。このことから、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合すると転写感度が更に高くなることが分かった。
【0157】
更に、ポリエステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられた(実施例1、5、6と、比較例7、8とを参照)。
また、ポリビニルピロリドンの割合が減少すると密着性が低下する傾向がみられた。この傾向から、好ましい混合比率は、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとが、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが分かった。
また、実施例1〜3、比較例4,5からプライマー層20に用いるポリシソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートが密着性・転写感度の点から好ましいことがわかった。
【0158】
また、実施例7の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.03g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例14の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.01g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度は向上せず、密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
また、実施例8の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.25g/mであるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
【0159】
一方、比較例15の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.30g/mであるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
また、実施例9の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.03g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例16の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.01g/mであるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
【0160】
また、実施例10の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.35g/mであるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
一方、比較例17の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.40g/mであるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
【0161】
以上、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016−037648号(2016年2月29日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
また、各実施形態により本発明を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組合せに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組合せによって画されうる。
【産業上の利用可能性】
【0162】
本発明により得られる感熱転写記録媒体は、昇華転写方式のプリンタに使用することができ、プリンタの高速・高機能化と併せて、各種画像を簡便にフルカラー形成できる。このため、デジタルカメラのセルフプリント、身分証明書等のカード類、アミューズメント用出力物等に広く利用できる。
【符号の説明】
【0163】
1 …感熱転写記録媒体
10…基材
20…プライマー層
30…下引き層
40…染料層
50…耐熱滑性層
図1