【実施例】
【0068】
以下に、本実施形態の各実施例及びそれらに対する各比較例に用いた材料を示す。なお、文中で「部」とあるのは、特に断りのない限り質量基準である。また、本発明は、以下の実施例に限定されるものではない。
[耐熱滑性層付き基材10の作製]
基材10として、4.5μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に、下記組成の耐熱滑性層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が1.0g/m
2になるように塗布し、100℃で1分間乾燥した。その後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、耐熱滑性層付き基材10を得た。
【0069】
[耐熱滑性層用塗布液]
・アクリルポリオール樹脂 :12.5部
・ポリオキシアルキレンアルキルエーテル・リン酸エステル: 2.5部
・タルク : 6.0部
・2,6−トリレンジイソシアネートプレポリマー : 4.0部
・トルエン :50.0部
・メチルエチルケトン :20.0部
・酢酸エチル : 5.0部
【0070】
[スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体の作製方法]
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコにテレフタル酸ジメチル854部、5−ソジウムスルホイソフタル酸355部、エチレングリコール186部、ジエチレングリコール742部、及び反応触媒として酢酸亜鉛1部を仕込んだ。
次いで、それらを130℃から170℃まで2時間かけて昇温し、三酸化アンチモン1部を添加した後、170℃から200℃まで2時間かけて昇温し、エステル化反応を行った。その後、徐々に昇温、減圧し、最終的に反応温度を250℃、真空度1mmHg以下で1〜2時間重縮合反応を行い、ポリエステルを得た。得られたポリエステルを純水に溶解し、次いでグリシジル基含有アクリルモノマーとしてメタクリル酸グリシジルをポリエステルの質量比で30:70となるように加え、更に重合開始剤として過硫酸カリウムを加え、モノマー乳化液を作製した。
次いで、冷却管付き反応容器に、純水とモノマー乳化液とを仕込み、20分間窒素ガスを吹き込んで十分脱酸素を行った。その後、純水とモノマー乳化液とを1時間かけて徐々に昇温し、75℃以上85℃以下の温度を維持しつつ3時間反応を行い、スルホン酸基含有ポリエステル/グリシジル基含有アクリル共重合体を得た。
【0071】
[ポリウレタン・ウレア樹脂の作製方法]
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、1,6−ヘキサンジオールとジエチルカーボネートとを脱エタノール反応させて得られる数平均分子量2000のポリカーボネートジオールを656部、1,4−ブタンジオールにε−カプロラクトンを開環付加反応させて得られる数平均分子量1000の2官能ポリカプロラクトンジオールを300部仕込み、これらを撹拌しながら窒素ガスバブリングし、190℃で24時間エステル交換を行い、常温液状のポリオールを得た。ポリオールの水酸基含有量をJIS K1557に準じた方法により測定したところ、58mgKOH/gであった。
【0072】
続いて、留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、ポリオールを243部、イソホロンジイソシアネート46.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン8.35部、ジ‐n‐ブチルアミン0.176部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール1.30部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−1)とを得た。
このときの水酸基価は10mgKOH/gであった。
【0073】
同様の方法で、ポリオールを247.6部、イソホロンジイソシアネート42.6部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール3.24部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−2)とを得た。
このときの水酸基価は30mgKOH/gであった。
【0074】
同様の方法で、ポリオールを247部、イソホロンジイソシアネート42.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン8.35部、ジ‐n‐ブチルアミン0.18部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール1.30部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−3)とを得た。
このときの水酸基価は5mgKOH/gであった。
【0075】
同様の方法で、ポリオールを247.6部、イソホロンジイソシアネート42.6部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール4.10部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカーボネートと、ポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂(A−4)とを得た。
このときの水酸基価は40mgKOH/gであった。
【0076】
留出管、窒素導入管、温度計、撹拌機を備えた四つ口フラスコに、アジピン酸と3‐メチル‐1,5‐ペンタンジオールの重縮合物(水酸基価56.1mgKOH/g、)245部と、イソホロンジイソシアネート46.5部を仕込み、窒素気流下、85℃で6時間反応させウレタンプレポリマーを得た。次いで、酢酸エチル350部を加え、40℃まで降温した。次いで、イソプロプルアルコール350部、イソホロンジアミン5.96部、2‐アミノ‐2‐ヒドロキシメチル‐1,3‐プロパンジオール4.24部を加え、撹拌下に40℃で5時間反応させ、ポリカプロラクタム骨格を有しないポリウレタン・ウレア樹脂(A−5)を得た。
このときの水酸基価は10mgKOH/gであった。
【0077】
<第1の実施例>
まず、第1の実施例について説明する。
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成のプライマー層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.10g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、プライマー層20を形成した。
続いて下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層30を形成した。
更に、その下引き層30上に、下記組成の染料層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層40を形成した。
こうして、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0078】
[プライマー層用塗布液−1]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−1) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン : 0.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0079】
[下引き層用塗布液−1]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0080】
[染料層用塗布液−1]
・C.I.ソルベントブルー63 : 6.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 : 4.0部
・トルエン :45.0部
・メチルエチルケトン :45.0部
【0081】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−2]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0082】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−3]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :1.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0083】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−4]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :3.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0084】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層用塗布液を下記組成のプライマー層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−2]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−2) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0085】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0086】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.25g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0087】
(実施例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
【0088】
(実施例9)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.35g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
【0089】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、プライマー層20及び下引き層30を形成することなく、実施例1と同様の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m
2になるように塗布、乾燥することで、染料層40を形成した。こうして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0090】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0091】
(比較例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0092】
(比較例4)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−3]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−3) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0093】
(比較例5)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−4]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−4) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0094】
(比較例6)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−5(カプロラクタム骨格を持たないポリウレタン・ウレア樹脂)にした以外は、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−5]
・ポリウレタン・ウレア樹脂(A−5) :2.00部
・メチルエチルケトン :50.0部
・トルエン :30.0部
・イソプロピルアルコール :18.0部
【0095】
(比較例7)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−5]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :0.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0096】
(比較例8)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−6]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :4.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0097】
(比較例9)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例9の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−7]
・ポリビニルピロリドン(K値60) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0098】
(比較例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例10の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−8]
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0099】
(比較例11)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例11の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−9]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0100】
(比較例12)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例12の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−10]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0101】
(比較例13)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−11にした以外は、実施例1と同様にして、比較例13の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−11]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :7.00部
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :3.00部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0102】
(比較例14)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.01g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例14の感熱転写記録媒体を得た。
【0103】
(比較例15)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.30g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例15の感熱転写記録媒体を得た。
【0104】
(比較例16)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.01g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例16の感熱転写記録媒体を得た。
【0105】
(比較例17)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例17の感熱転写記録媒体を得た。
【0106】
[被転写体の作製]
(1)溶剤系熱転写受像シートの作製
基材10として、188μmの白色発泡ポリエチレンテレフタレートフィルムを使用し、その一方の面に下記組成の受像層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が5.0g/m
2になるように塗布、乾燥した。こうして、感熱転写用の被転写体を作製した。
[受像層用塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル−ビニルアルコール共重合体 :19.5部
・アミノ変性シリコーンオイル : 0.5部
・トルエン :40.0部
・メチルエチルケトン :40.0部
【0107】
(2)水系熱転写受像シートの作製
[受像紙基材の用意]
受像紙基材として、厚さ180g/m
2のアート紙を用いた。
[中空粒子層の形成]
受像紙基材の上に、下記組成中空粒子層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/m
2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
[中空粒子層塗布液]
・アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体を含有する既発泡中空粒子 : 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
・ポリビニルアルコール : 10部
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
・水 :200部
【0108】
[受容層の形成]
断熱層上に、下記組成受容層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/m
2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
[受容層塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 80部
(例:ビニブラン900 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン : 10部
(例:KF615A 信越化学工業(株)製)
・水 :400部
【0109】
[印画評価]
実施例1〜9、比較例1〜17の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した。その結果を表1に示す。なお、最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
・印画環境 :23℃50%RH
・印加電圧 :29V
・ライン周期:0.9msec
・印画密度 :主走査300dpi 副走査300dpi
【0110】
[異常転写評価]
実施例1〜9、比較例1〜17の感熱転写記録媒体に関して、常温にて養生された感熱転写記録媒体と被転写体とを使用し、40℃90%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表1に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。○以上が実用上問題ないレベルである。
・◎:被転写体への異常転写が、認められない
・○:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
・△:被転写体への異常転写が、部分的に認められる
・×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0111】
【表1】
【0112】
表1に示す結果から分かるように、プライマー層20にポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とを用い、下引き層30にポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとを用いた実施例1〜5は、プライマー層20を設けない比較例1、比較例2や、ポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有しないポリウレタン・ウレア樹脂(A−5)とをプライマー層20に用いた比較例6と比較して、転写感度の向上がみられ、水系熱転写受像シートを用いた際においても異常転写が発生しないことが分かった。
【0113】
また、下引き層30にスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルとの共重合体を用いた比較例12は、下引き層30が設けられていない比較例1や、スルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例10、スルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルを単に混合した比較例13と比較して、高速印画時における転写感度が高いことが分かった。
また、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例1と、ポリビニルピロリドン単体である比較例9や、ポリエステル−アクリル共重合体の単体である比較例12とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上していることが確認された。このことから、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合すると転写感度が更に高くなることが分かった。
【0114】
更に、ポリエステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられた(実施例1、3、4と、比較例7、8とを参照)。また、ポリビニルピロリドンの割合が減少すると密着性が低下する傾向がみられた。この傾向から、好ましい混合比率は、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとが、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが分かった。
また、プライマー層20に用いるポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価10mgの実施例1や水酸基価30mgの実施例5と、水酸基価40mgKOH/gの比較例5とを比較すると、転写感度及び密着性が低下する傾向がみられた。更に、水酸基価10mgの実施例1と水酸基価5mgの比較例4とを比較すると、密着性は同等だが、転写感度に違いがみられた。これらのことから、ポリウレタン・ウレア樹脂の水酸基価は40mgKOH/g未満が好ましいことが分かり、更には転写感度の点から10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下の範囲がより好ましいことが分かった。
【0115】
また、実施例6の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.03g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例14の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.01g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度は向上せず、密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
また、実施例7の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.25g/m
2であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
【0116】
一方、比較例15の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.30g/m
2であるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
また、実施例8の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.03g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例16の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.01g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
【0117】
また、実施例9の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.35g/m
2であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
一方、比較例17の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.40g/m
2であるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
【0118】
<第2の実施例>
次に、第2の実施例について説明する。
(実施例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、下記組成のプライマー層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.10g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、プライマー層20を形成した。
続いて下記組成の下引き層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.20g/m
2になるように塗布し、100℃で2分間乾燥することで、下引き層30を形成した。
更に、その下引き層30上に、下記組成の染料層用塗布液−1を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.70g/m
2になるように塗布し、90℃で1分間乾燥することで、染料層40を形成した。
こうして、実施例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0119】
[プライマー層用塗布液−1]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・トリレンンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−103H 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0120】
[下引き層用塗布液−1]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
[染料層用塗布液−1]
・C.I.ソルベントブルー63 : 6.0部
・ポリビニルアセタール樹脂 : 4.0部
・トルエン :45.0部
・メチルエチルケトン :45.0部
【0121】
(実施例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−2]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・キシレンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−110N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0122】
(実施例3)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例3の感熱転写記録媒体を得た。
【0123】
[プライマー層用塗布液−3]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・ジフェニルメタンジイソシアネート :0.60部
(固形分71% D−103M−2 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0124】
(実施例4)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−2にした以外は、実施例1と同様にして、実施例4の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−2]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
カルボキシル基含有アクリル共重合体(30:70) :2.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :2.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0125】
(実施例5)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−3にした以外は、実施例1と同様にして、実施例5の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−3]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :1.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0126】
(実施例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−4]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :3.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0127】
(実施例7)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0128】
(実施例8)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.25g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例7の感熱転写記録媒体を得た。
【0129】
(実施例9)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.03g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例8の感熱転写記録媒体を得た。
【0130】
(実施例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.35g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、実施例9の感熱転写記録媒体を得た。
【0131】
(比較例1)
耐熱滑性層付き基材10の耐熱滑性層が塗布されていない面に、プライマー層20及び下引き層30を形成することなく、実施例1と同様の染料層用塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が0.7g/m
2になるように塗布、乾燥することで、染料層40を形成した。こうして、比較例1の感熱転写記録媒体を得た。
【0132】
(比較例2)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例2の感熱転写記録媒体を得た。
【0133】
(比較例3)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−4にした以外は、実施例1と同様にして、比較例3の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−4]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :20.0部
【0134】
(比較例4)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例4の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−5]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・ヘキサメチレンジイソシアネート :0.60部
(固形分71% D−160N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0135】
(比較例5)
プライマー層20を下記組成のプライマー層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例5の感熱転写記録媒体を得た。
[プライマー層用塗布液−6]
・ポリウレタン・ウレア樹脂 :5.00部
(固形分30%)
・水添キシリレンジイソシアネート :0.60部
(固形分75% D−120N 三井化学社製)
・メチルエチルケトン :50.0部
・酢酸エチル :25.0部
・トルエン :19.4部
【0136】
(比較例6)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を形成することなく、実施例1と同様にして、比較例6の感熱転写記録媒体を得た。
【0137】
(比較例7)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−5にした以外は、実施例1と同様にして、比較例7の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−5]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :0.50部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :4.50部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0138】
(比較例8)
下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−6にした以外は、実施例1と同様にして、比較例8の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−6]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :4.00部
・ポリビニルピロリドン(K値60) :1.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0139】
(比較例9)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−7にした以外は、実施例1と同様にして、比較例9の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−7]
・ポリビニルピロリドン(K値60) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0140】
(比較例10)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−8にした以外は、実施例1と同様にして、比較例10の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層30用塗布液−8]
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0141】
(比較例11)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−9にした以外は、実施例1と同様にして、比較例11の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−9]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :10.0部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0142】
(比較例12)
下引き層30を下記組成の下引き層30用塗布液−10にした以外は、実施例1と同様にして、比較例12の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−10]
・スルホン酸基含有ポリエステル/
グリシジル基含有アクリル共重合体(30:70) :5.00部
・純水 :57.0部
・イソプロピルアルコール :38.0部
【0143】
(比較例13)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を下記組成の下引き層用塗布液−11にした以外は、実施例1と同様にして、比較例13の感熱転写記録媒体を得た。
[下引き層用塗布液−11]
・グリシジル基含有アクリル樹脂 :7.00部
・スルホン酸基含有ポリエステル樹脂 :3.00部
・純水 :45.0部
・イソプロピルアルコール :45.0部
【0144】
(比較例14)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.01g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例14の感熱転写記録媒体を得た。
【0145】
(比較例15)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、プライマー層20を乾燥後の塗布量が0.30g/m
2になるようにプライマー層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例15の感熱転写記録媒体を得た。
【0146】
(比較例16)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.01g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例16の感熱転写記録媒体を得た。
【0147】
(比較例17)
実施例1で作製した感熱転写記録媒体において、下引き層30を乾燥後の塗布量が0.40g/m
2になるように下引き層用塗布液を塗布し、乾燥すること以外は、実施例1と同様にして、比較例17の感熱転写記録媒体を得た。
【0148】
[被転写体の作製]
次のように水系熱転写受像シートを作製した。
[受像紙基材の用意]
受像紙基材として、厚さ180g/m
2のアート紙を用いた。
[中空粒子層の形成]
受像紙基材の上に、下記組成中空粒子層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が10g/m
2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、中空粒子層付き受像紙を得た。
【0149】
[中空粒子層塗布液]
・アクリロニトリル及びメタクリロニトリルを
主成分とする共重合体を含有する既発泡中空粒子 : 45部
(平均粒子径3.2μm、体積中空率85%)
・ポリビニルアルコール : 10部
・塩化ビニル酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 45部
(塩化ビニル/酢酸ビニル=70/30、Tg64℃)
・水 :200部
【0150】
[受容層の形成]
断熱層上に、下記組成受容層塗布液を、グラビアコーティング法により、乾燥後の塗布量が4g/m
2になるように塗布、乾燥した後に、40℃環境下で1週間エージングすることで、受容層を得た。
[受容層塗布液]
・塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体樹脂分散物 : 80部
(例:ビニブラン900 日信化学工業(株)製)
・ポリエーテル変性シリコーン : 10部
(例:KF615A 信越化学工業(株)製)
・水 :400部
【0151】
[印画評価]
実施例1〜10、比較例1〜17の感熱転写記録媒体を使用し、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、最高反射濃度を評価した。その結果を表2に示す。なお、最高反射濃度は、X−Rite528にて測定した値である。
なお、印画条件は以下の通りである。
・印画環境 :23℃55%RH
・印加電圧 :29V
・ライン周期:0.9msec
・印画密度 :主走査300dpi 副走査300dpi
【0152】
[異常転写評価]
実施例1〜10、比較例1〜17の感熱転写記録媒体に関して、常温にて保存された感熱転写記録媒体、および40℃90%環境下にそれぞれ168時間後、常温にてさらに24時間保存された感熱転写記録媒体と被転写体を使用し、40℃85%環境下、サーマルシミュレーターにてベタ印画を行い、異常転写の有無を評価した。その結果を表2に示す。
異常転写の評価は、以下の基準にて行った。○以上が実用上問題ないレベルである。
・◎:被転写体への異常転写が、認められない
・○:被転写体への異常転写が、ごく僅かに認められる
・△:被転写体への異常転写が、部分的に認められる
・×:被転写体への異常転写が、全面で認められる
【0153】
【表2】
【0154】
XDI:キシレンジイソシアネート
TDI:トリレンジイソシアネート
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート
HDI:ヘキサメチレンジイソシアネート
HXDI:水添キシリレンジイソシアネート
【0155】
表2に示す結果から分かるように、プライマー層20にポリカーボネートとポリカプロラクタム骨格を有するポリウレタン・ウレア樹脂とポリイソシアネートを用い、下引き層30にポリエステル−アクリル共重合体とポリビニルピロリドンとを用いた実施例1〜10は、プライマー層20を設けない比較例1、比較例2や、プライマー層20にポリイソシナネートを含まない比較例3、下引き層を設けない比較例6と比較して転写感度の向上がみられ、高温多湿下に保存した後においても異常転写が発生しないことが分かった。
【0156】
また、下引き層30にスルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルとの共重合体を用いた比較例12は、下引き層30が設けられていない比較例1や、スルホン酸基含有ポリエステルのみを用いた比較例10、スルホン酸基含有ポリエステルとグリシジル基含有アクリルを単に混合した比較例13と比較して、高速印画時における転写感度が高いことが分かった。
また、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合した実施例1と、ポリビニルピロリドン単体である比較例9や、ポリエステル−アクリル共重合体の単体である比較例12とを比較すると、ポリビニルピロリドンを混合することで最高反射濃度が向上していることが確認された。このことから、ポリエステル−アクリル共重合体にポリビニルピロリドンを混合すると転写感度が更に高くなることが分かった。
【0157】
更に、ポリエステル−アクリル共重合体に対してポリビニルピロリドンの割合が増加すると転写感度が低下する傾向がみられた(実施例1、5、6と、比較例7、8とを参照)。
また、ポリビニルピロリドンの割合が減少すると密着性が低下する傾向がみられた。この傾向から、好ましい混合比率は、ポリエステル−アクリル共重合体と、ポリビニルピロリドンとが、質量比で70:30から20:80までの範囲内であることが分かった。
また、実施例1〜3、比較例4,5からプライマー層20に用いるポリシソシアネートは、ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネートが密着性・転写感度の点から好ましいことがわかった。
【0158】
また、実施例7の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.03g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例14の感熱転写記録媒体では、プライマー層20の塗布量が0.01g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度は向上せず、密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
また、実施例8の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.25g/m
2であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
【0159】
一方、比較例15の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、プライマー層20の塗布量が0.30g/m
2であるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
また、実施例9の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.03g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度のごく僅かな低下が確認された。但し、実用上問題ないレベルである。
一方、比較例16の感熱転写記録媒体では、下引き層30の塗布量が0.01g/m
2であるため、実施例1の感熱転写記録媒体と比較して、転写感度及び密着性の低下が確認された。また、異常転写についても確認された。
【0160】
また、実施例10の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.35g/m
2であるが、転写感度及び密着性はほぼ同等であることが分かった。
一方、比較例17の感熱転写記録媒体は、同じく実施例1の感熱転写記録媒体と比較すると、下引き層30の塗布量が0.40g/m
2であるが、転写感度及び密着性が飽和しているため、コストの観点から好ましくない。
【0161】
以上、本願が優先権を主張する、日本国特許出願2016−037648号(2016年2月29日出願)の全内容は、参照により本開示の一部をなす。
また、各実施形態により本発明を説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらす全ての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項により画される発明の特徴の組合せに限定されるものではなく、全ての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組合せによって画されうる。