(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795101
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】タッチセンサ構造及び情報端末用のケース
(51)【国際特許分類】
G06F 3/041 20060101AFI20201119BHJP
G06F 3/044 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
G06F3/041 400
G06F3/044 128
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-541534(P2019-541534)
(86)(22)【出願日】2017年9月13日
(86)【国際出願番号】JP2017033005
(87)【国際公開番号】WO2019053800
(87)【国際公開日】20190321
【審査請求日】2019年8月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004075
【氏名又は名称】ヤマハ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100125254
【弁理士】
【氏名又は名称】別役 重尚
(74)【代理人】
【識別番号】100118278
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 聡
(72)【発明者】
【氏名】芝 賢一
(72)【発明者】
【氏名】小瀧 浩
(72)【発明者】
【氏名】山野 裕之
【審査官】
岩橋 龍太郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2015−191433(JP,A)
【文献】
特開2015−166177(JP,A)
【文献】
特開2005−352896(JP,A)
【文献】
特開2011−076172(JP,A)
【文献】
特開2013−131129(JP,A)
【文献】
国際公開第2012/132846(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06F 3/041
G06F 3/044
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電極パターンが形成されたPETフィルムが複数枚積層されて成り、少なくとも1つの貫通穴が形成された静電容量方式のセンサシートと、
前記センサシートの第1面に固着された第1の樹脂層と、
前記センサシートの第2面に固着されると共に、前記貫通穴を通じて前記第1の樹脂層と固着されている第2の樹脂層と、を有するタッチセンサ構造。
【請求項2】
前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の少なくとも一方には、前記貫通穴に挿入された凸部が形成され、該凸部が前記第1の樹脂層及び前記第2の樹脂層の他方と固着されている請求項1に記載のタッチセンサ構造。
【請求項3】
前記センサシートには、前記貫通穴を囲んで前記PETフィルム同士の間をシールするシール部が形成されている請求項1または2に記載のタッチセンサ構造。
【請求項4】
前記センサシートにおいて、前記貫通穴は前記電極パターンを避けて配置されている請求項1〜3のいずれか1項に記載のタッチセンサ構造。
【請求項5】
前記第2の樹脂層はエラストマで構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載のタッチセンサ構造。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載のタッチセンサ構造を有する、情報端末用のケース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PET(ポリエチレンテレフタレート)フィルムが複数枚積層されて成る静電容量方式のセンサシートを有するタッチセンサ構造、及び該タッチセンサ構造を備える情報端末用のケースに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の電子機器の表示部や操作部に適用される静電容量方式のセンサシートが知られている。このセンサシートは、例えば、導電性インクの印刷等によって電極パターンを形成したPETフィルムを2枚貼り合わせて構成される(例えば、下記非特許文献1)。また、センサシートを樹脂成型品の表面に形成する構造も知られている(下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017−56624号公報
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】“NISSHA”、[online]、ディバイス、静電容量方式タッチセンサー〔平成29年9月5日検索〕、インターネット<URL:http://www.nissha.com/products/dev/cap.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、PETフィルムを2枚貼り合わせたセンサシートをプラスチック等の樹脂基材の上に固着したものに対して、保護、感触または装飾の目的でゴム材等の樹脂部を配設することを考える。例えば、ゴム材等の樹脂部を、接着または成形によってPETフィルムの上面に固着する。すると、完成品全体の層のうち、2枚のPETフィルムの間の固着力が相対的に弱く、PETフィルム間で剥がれが生じやすくなる。製品の耐久使用によって剥がれが生じるおそれもあり、センサとしての強度が低くなるという問題が想定される。
【0006】
本発明の目的は、PETフィルム同士の剥がれを抑制し、センサ強度を高めることができるタッチセンサ構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために本発明によれば、電極パターン(24、25)が形成されたPETフィルム(21、22)が複数枚積層されて成り、少なくとも1つの貫通穴(23)が形成された静電容量方式のセンサシート(20)と、前記センサシートの第1面(20a)に固着された第1の樹脂層(11)と、前記センサシートの第2面(20b)に固着されると共に、前記貫通穴を通じて前記第1の樹脂層と固着されている第2の樹脂層(12)と、を有するタッチセンサ構造が提供される。なお、上記括弧内の符号は例示である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、PETフィルム同士の剥がれを抑制し、センサ強度を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】タッチセンサ構造を有する情報端末用のケースの斜視図である。
【
図3】センサシートを構成するPETフィルムの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
図1は、本発明の一実施の形態に係るタッチセンサ構造を有する情報端末用のケースの斜視図である。このケース100は、例えば、スマートフォンの裏面側に装着される保護ケースとして構成される。ケース100は、広い面積を有する主部100aがスマートフォンの背面と対向し、主部100から湾曲部100bを介して連接する側部100cがスマートフォンの側面を覆うように装着される。ケース100は、主として第1の樹脂層11と、センサシート20と、第2の樹脂層12とが積層された3層構造である。センサシート20から延設される給電及び信号出力用の端子部26が、側部100cの内側から露出している。
【0012】
図2は、第1の樹脂層11の斜視図である。第1の樹脂層11は、例えばポリエチレン等のプラスチックで成る。センサシート20と対向する第1の樹脂層11の第1面11aには、凸部14が複数突設形成されている。側部100cの各々に対応する第1の樹脂層11の外側部分には段差部11bが形成されている。
図3は、センサシート20を構成するPETフィルムの斜視図である。第1のPETフィルム21と第2のPETフィルム22とが積層されてセンサシート20が構成される。第1のPETフィルム21には、透明な電極パターン24が複数本、互いに略平行に配設される。第2のPETフィルム22には、透明な電極パターン25が複数本、互いに略平行に配設される。積層後のセンサシート20において、電極パターン24と電極パターン25とは略直交する。また、PETフィルム21、22の各々には凸部14に対応する貫通穴23が形成されている。貫通穴23は、電極パターン24、25を避けた位置に形成されている。
【0013】
センサシート20は静電容量方式のフレキシブルタッチセンサシートである。押圧力を受けることで、電極パターン24の配設方向(例えばX方向)と電極パターン25の配設方向(例えばY方向)のそれぞれの静電容量の変化から、X−Y方向のタッチ位置が検知される。電極パターン24、25の配設方法は限定されないが、例えば、導電性インクの印刷等によって実現される。
【0014】
図4は、第1の樹脂層11にセンサシート20が積層されて成る積層体の斜視図である。この積層体30は、第1の樹脂層11の第1面11aにセンサシート20が固着されて成る。両者の固着の態様は問わないが、例えば接着による。両者が固着される際、凸部14の各々が対応する貫通穴23に挿入されることで、第1の樹脂層11に対するセンサシート20との位置決め(X−Y方向、及びX−Y方向に直交する軸に関する回転方向の位置決め)がなされる。また、センサシート20の縁部20cが第1の樹脂層11の段差部11bに近接または当接する。第2の樹脂層12は、例えばエラストマで構成される。第2の樹脂層12は、例えばコンプレッション成形によって形成され、積層体30に対して固着される。
【0015】
図5は、ケース100の部分断面図である。
図5では、1つの凸部14の断面が表れている。凸部14の周辺に関する構成は他の凸部14についても同様である。
図5では、電極パターン24、25の図示が省略されている。第1の樹脂層11の第1面11aとセンサシート20の第1面20aとが固着されている。センサシート20の第2面20bと第2の樹脂層12の面12aとが固着されている。また、凸部14の先端面はセンサシート20の第2面20bと略面一になっている。凸部14の先端面と第2の樹脂層12の面12aとは固着されている。貫通穴23を通じて第1の樹脂層11と第2の樹脂層12とが固定関係となっているので、センサシート20に対してPETフィルム21、22間を離間させる力が作用しにくくなる。従って、PETフィルム21、22間が剥がれにくくなる。
【0016】
ところで、第2の樹脂層12の成形時に、凸部14と貫通穴23との隙間があればその隙間に第2の樹脂層12が入り込むことが想定される。すると、貫通穴23の内縁からPETフィルム21、22間に第2の樹脂層12が浸入するおそれがある。そこで、PETフィルム21、22の各貫通穴23の周りにシール部27が設けられている。シール部27は、例えば、熱によるPETフィルム21、22の溶着で実現されるが、これに限らず接着等であってもよい。なお、第2の樹脂層12の浸入回避の観点で、センサシート20の縁部20c(
図4)にもシール部を設けてもよい。
【0017】
次に、ケース100の製造方法を説明する。まず、作業者は、第1の樹脂層11を射出成形等によって形成する。その際、全ての凸部14も第1の樹脂層11と一体に形成される。第1の樹脂層11の形成方法は成形に限定されない。また作業者は、導電性インクの印刷等によって、第1のPETフィルム21に電極パターン24を形成すると共に、第2のPETフィルム22に電極パターン25を形成する。そして作業者は、第1のPETフィルム21と第2のPETフィルム22とを接着により貼り合わせる。なお、両者を接着することは必須でなく、重ね合わせるだけでもよい。そして作業者は、積層されたPETフィルム21、22に貫通穴23を形成する。作業者は、貫通穴23が、電極パターン24、25を避けた位置(対応する位置)に形成されるよう、予め位置を決めて穴明けする。これにより、センサシート20が得られる。なお、作業者は、貫通穴23を、PETフィルム21、22を積層する前段階でPETフィルム21、22の各々にあけてもよい。
【0018】
次に、作業者は、センサシート20の第1面20aと第1の樹脂層11の第1面11aとを接着等によって固着することで、積層体30を得る。その際、作業者は、互いに対応する凸部14と貫通穴23とが嵌るように両者を位置決めしてから、センサシート20と第1の樹脂層11とを重ねて接着する。次に、作業者は、センサシート20の第2面20bと第2の樹脂層12の面12aとを固着する。例えばコンプレッション成形を採用する場合、作業者は、積層体30をインサートした金型を所定温度の高温にし、金型内に素材であるエラストマを投入して圧縮する。エラストマは溶融された後、固化すると、第1の樹脂層11の凸部14とセンサシート20の第2面20bとに固着された状態となる。また、上述したように、凸部14と貫通穴23との隙間にもエラストマが入り込んで固化する。このように、第2の樹脂層12がセンサシート20の第2面20bの側に積層固着される。なお、第2の樹脂層12の成形にコンプレッション成形を採用することは必須でなく、例えば射出成形を採用してもよい。
【0019】
こうして完成したケース100の、特に第2の樹脂層12の表面をユーザがタッチすると、電極パターン24、25の静電容量の変化に基づき、第2の樹脂層12の表面におけるタッチ位置が検知される。検知信号は端子部26から出力される。なお、ケース100が装着される情報端末等の電子機器とケース100との通信方式は、無線・有線を問わない。
【0020】
本実施の形態によれば、第2の樹脂層12が、センサシート20の第2面20bに固着されると共に、センサシート20の貫通穴23を通じて第1の樹脂層11と固着されている。これにより、センサシート20を構成するPETフィルム同士の剥がれを抑制し、センサ強度を高めることができる。
【0021】
また、センサシート20には、貫通穴23を囲んでPETフィルム同士の間をシールするシール部27が形成されているので、第2の樹脂層12を成形により形成する場合に第2の樹脂層12がPETフィルム21、22間に浸入するのを回避することができる。また、センサシート20において、貫通穴23は電極パターン24、25を避けて配置されるので、適切な位置検知の機能を維持することができる。
【0022】
また、第2の樹脂層12はエラストマで構成されるので、積層体30に対して第2の樹脂層12を成形で形成し固着する製法を採用した場合に、成形時に貫通穴23を通じて第2の樹脂層12を第1の樹脂層11に固着させることができる。なおこの観点からは、第2の樹脂層12は熱可塑性及び熱硬化性を有する合成樹脂であればよい。
【0023】
また、凸部14と貫通穴23とはそれぞれ複数存在する。従って、対応する凸部14と貫通穴23との係合によって、センサシート20の第2面20bに平行な方向、及び第2面20bに垂直な軸の回りの回転方向に関する、センサシート20と第1の樹脂層11との位置決めが可能となる。
【0024】
次に、変形例を
図6A、Bで説明する。
図6A、Bはそれぞれ、第1、第2変形例のケース100の部分断面図であり、
図5に対応している。
図5に示した例では、凸部14は第1の樹脂層11に形成されるとした。しかし、貫通穴23を通じて第1の樹脂層11と第2の樹脂層12とが固着されればよい。従って、第1の樹脂層11及び第2の樹脂層12の少なくとも一方に凸部が設けられ、貫通穴23に挿入された凸部が第1の樹脂層11及び第2の樹脂層12の他方と固着される構成としてもよい。
【0025】
第1変形例(
図6A)では、第1の樹脂層11には凸部が設けられず、第2の樹脂層12の面12aには貫通穴23に対応して凸部13が突設形成されている。凸部13の先端面はセンサシート20の第1面20aと略面一になっていて、第1の樹脂層11の第1面11aに固着されている。積層体30に対して第2の樹脂層12をコンプレッション成形で形成し固着する際、エラストマは溶融されて貫通穴23を埋める。これにより凸部13が形成される。エラストマの固化後は、第2の樹脂層12の面12aがセンサシート20の第2面20bに固着されると共に、凸部13が第1の樹脂層11の第1面11aに固着された状態となる。
【0026】
第2変形例(
図6B)では、第1の樹脂層11の第1面11aに凸部14が突設形成されると共に、第2の樹脂層12の面12aに凸部13が突設形成される。凸部14、凸部13及び貫通穴23は対応している。凸部14の先端面と凸部13の先端面とは固着されている。積層体30に対して第2の樹脂層12をコンプレッション成形で形成し固着する際、エラストマは溶融されて、貫通穴23における凸部14を除く領域を埋める。これにより凸部13が形成される。エラストマの固化後は、第2の樹脂層12の面12aがセンサシート20の第2面20bに固着されると共に、凸部13が凸部14に固着された状態となる。
【0027】
なお、センサシート20はPETフィルムが2枚積層されたものとしたが、積層数は3枚以上であってもよい。なお、本発明のタッチセンサ構造は、情報端末用のケースに限らず、各種の電子機器に適用可能である。
【符号の説明】
【0028】
11 第1の樹脂層
12 第2の樹脂層
13、14 凸部
20 センサシート
20a 第1面
20b 第2面
21 第1のPETフィルム
22 第2のPETフィルム
23 貫通穴
24、25 電極パターン
27 シール部