(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「〜」を用いて特定される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」や「シート」は、厚みによって区別されないものとする。換言すると、本明細書の「シート」は、厚みの薄いフィルム状のものも含まれ、本明細書の「フィルム」は、厚みのあるシート状のものも含まれるものとする。
また、本明細書において、「(メタ)アクリル系共重合体」は、「アクリル系共重合体」、「メタクリル系共重合体」、「アクリル系−メタクリル系共重合体」を包含する意であり、「(メタ)アクリロイル」は、「アクリロイル」、「メタクリロイル」を包含する意であり、「(メタ)アクリル」は、「アクリル」「メタクリル」を包含する意である。
【0014】
まず本発明の太陽電池モジュール形成シート用プライマー(以下、プライマーとも省略する)に関して説明する。
本発明のプライマーは、太陽電池モジュール形成用シートを構成するプラスチックフィルムに塗布し、必要に応じて溶剤乾燥しプライマー層を形成するために使用する。このプライマー層は太陽電池セルや封止材、表面保護材や裏面保護材を積層し加熱圧着する工程において、部材の一つである封止材と接触するように配置される。封止材としてはEVA封止材やオレフィン系封止材が挙げられ、本発明のプライマーから形成されるプライマー層は、オレフィン系封止材に対し優れた接着性を有する。
尚、本願におけるプライマーとは(メタ)アクリル系共重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、酸変性ポリオレフィン(C)を含有し、さらにロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、及び石油樹脂(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の樹脂を含有する樹脂組成物であり、プライマー層とは前記プライマーをプラスチックフィルムに塗工し層形成したものをいう。プライマー層において前記成分(A)〜(F)同士が硬化していてもよく、未硬化の状態であってもよい。
【0015】
プライマーには(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、酸変性ポリオレフィン(C)、さらにロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、及び石油樹脂(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の樹脂を必須成分として含有する。
【0016】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は、ラジカル重合可能な(メタ)アクリル系モノマーを重合することによって得ることができる。ラジカル重合可能な(メタ)アクリル系モノマーとしては、例えばアルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマー、カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマー、グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーなどが挙げられる。
【0017】
アルキル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ノルマルブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0018】
水酸基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。
【0019】
カルボキシル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、シトラコン酸などが挙げられる。
【0020】
グリシジル基を有する(メタ)アクリル系モノマーとしては、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテルなどが挙げられる。
【0021】
(メタ)アクリル系共重合体の重合には、これらラジカル重合可能な(メタ)アクリル系モノマーに加え、酢酸ビニル、無水マレイン酸、ビニルエーテル、プロピオン酸ビニル、スチレンなどのビニルモノマーを使用しても良い。
【0022】
これらのモノマーを重合する方法としては、通常のラジカル重合、例えば、溶液重合、塊状重合、乳化重合などの公知の重合法で行うことができる。また、重合反応の際に使用される重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドなどの有機過酸化物、アゾビスイソブチロニトリルなどのアゾ系開始剤など公知のものを用いることができる。
【0023】
本発明において、(メタ)アクリル系共重合体(A)の重量平均分子量は10,000〜1,000,000、であることが好ましく、さらには20,000〜750,000であることが好ましく、さらには30,000〜500,000であることがより好ましい。重量平均分子量が1,000,000以下であると塗工性が良化したり、(メタ)アクリル系共重合体(A)の溶剤への溶解性が向上したりする。重量平均分子量が10,000以上であると、接着剤の耐久性がより向上する。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によるポリスチレン換算の値である。
【0024】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は−20〜100℃であることが好ましく、さらには0〜90℃であることが好ましく、さらには20〜80℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が100℃以下であると、プライマー層の柔軟性が増し、オレフィン系封止材への接着力が向上する。−20℃以上の場合には、プライマー層の耐久性がより向上する。
【0025】
(メタ)アクリル系共重合体(A)のガラス転移温度(Tg)は、(メタ)アクリル系共重合体(A)を乾燥させて固形分100%にした樹脂について、示差走査熱量分析(DSC)によって計測したガラス転移温度のことを示す。具体的には、試料約10mgを秤量したサンプルを入れたアルミニウムパンと、試料を入れていないアルミニウムパンとをDSC装置にセットし、これを窒素気流中で、液体窒素を用いて−100℃まで急冷処理し、その後、20℃/分で200℃まで昇温し、DSC曲線をプロットする。このDSC曲線の低温側のベースライン(試験片に転移および反応を生じない温度領域のDSC曲線部分)を高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の曲線の勾配が最大になるような点で引いた接線との交点から、補外ガラス転移開始温度(Tig)を求め、これをガラス転移温度として求めることができる。
【0026】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は水酸基を有すると硬化剤であるポリイソシアネート化合物(B)と架橋し耐久性が向上するため水酸基を有することが好ましい。(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基価は具体的には0.1〜100(mgKOH/g)が好ましく、1〜50(mgKOH/g)がより好ましく、2〜30(mgKOH/g)がさらに好ましい。水酸基価が100(mgKOH/g)以下になるとプラスチックフィルムへの接着性がより向上する。また、水酸基価が0.1(mgKOH/g)以上になると湿熱試験後の剥離強度の低下を抑制し易い。
【0027】
ポリイソシアネート化合物(B)としては、従来公知のポリイソシアネート化合物を使用することができ、例えば、芳香族ポリイソシアネート、鎖式もしくは環状脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート等が挙げられる。芳香族ポリイソシアネートとしては、1、3−フェニレンジイソシアネート、4、4’−ジフェニルジイソシアネート、1、4−フェニレンジイソシアネート、4、4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2、4−トリレンジイソシアネート、2、6−トリレンジイソシアネート、4、4’−トルイジンジイソシアネート、2、4、6−トリイソシアネートトルエン、1、3、5−トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4、4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、4、4’、4”−トリフェニルメタントリイソシアネート等を挙げることができる。
【0028】
鎖式脂肪族ポリイソシアネートとしては、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、ペンタメチレンジイソシアネート、1、2−プロピレンジイソシアネート、2、3−ブチレンジイソシアネート、1、3−ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2、4、4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等を挙げることができる。
脂環族ポリイソシアネートとしては、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)、1、3−シクロペンタンジイソシアネート、1、3−シクロヘキサンジイソシアネート、1、4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2、4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル−2、6−シクロヘキサンジイソシアネート、4、4’−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1、4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等を挙げることができる。
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、ω、ω’−ジイソシアネート−1、3−ジメチルベンゼン、ω、ω’−ジイソシアネート−1、4−ジメチルベンゼン、ω、ω’−ジイソシアネート−1、4−ジエチルベンゼン、1、4−テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1、3−テトラメチルキシリレンジイソシアネート等を挙げることができる。
【0029】
また、前記ポリイソシアネートに加え、前記ポリイソシアネートとトリメチロールプロパン等のポリオール化合物とのアダクト体、前記ポリイソシアネートのビュレット体やイソシアヌレート体、更には前記ポリイソシアネートと公知のポリエーテルポリオールやポリエステルポリオール、アクリルポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオール等とのアダクト体等が挙げられる。
【0030】
これらポリイソシアネート化合物の中でも、意匠性の観点から、低黄変型の脂肪族または脂環族のポリイソシアネートが好ましく、耐湿熱性の観点からは、イソシアヌレート体が好ましい。より具体的には、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)のイソシアヌレート体、3−イソシアネートメチル−3、5、5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート(IPDI)のイソシアヌレート体が好ましい。また、本発明において用いられるイソシアネート化合物は高温で硬化することによってプラスチックフィルムへの接着性を向上する観点からブロック化ポリイソシアネート化合物であることが好ましい。
【0031】
(メタ)アクリル系共重合体(A)が水酸基を有する場合、ポリイソシアネート化合物(B)は(メタ)アクリル系共重合体(A)の水酸基1個に対して0.1〜5個(NCO/OH比=0.1〜5)となるように配合することが好ましい。このように配合することで(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリイソシアネート化合物(B)が十分に架橋し、より耐久性を向上させることができる。
【0032】
本発明に使用される酸変性ポリオレフィン(C)について説明する。酸変性ポリオレフィン(C)はプロピレンのホモポリマー、プロピレンとα−オレフィンとのコポリマー、エチレンのホモポリマー、エチレンとα−オレフィンとのコポリマーなどのポリオレフィンにエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト変性したり共重合化したりすることによって得ることが出来る。グラフト変性または共重合化に用いられるエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体としては、例えばアクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、無水マレイン酸、1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物などが挙げられる。これらのうち無水マレイン酸を好ましく使用することが出来る。また、酸変性ポリオレフィン(C)は無水マレイン酸変性ポリプロピレンを使用するとオレフィン系封止材への密着性向上効果が高く好ましい。
【0033】
ポリオレフィンをグラフト変性する方法としては、例えばポリオレフィンを有機溶剤に溶解しエチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体とラジカル重合開始剤を添加してラジカル重合と水素引き抜き反応を行う方法が挙げられる。ラジカル重合開始剤としては、例えばベンゾイルペルオキシド、ジクロルベンゾイルペルオキシド、ジクミルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1,4−ビス(tert−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ラウロイルペルオキシド、tert−ブチルペルアセテート、2,5−ジメチル− 2,5−ジ(tert−ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルペルフェニルアセテート、tert−ブチルペルイソブチレート、tert−ブチルペルピバレート、クミルペルピバレート,tert−ブチルペルジエチルアセテート、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチルアゾイソブチレートなどが挙げられる。
【0034】
市販されている酸変性ポリオレフィン(C)としては三井化学(株)製「ユニストールP501」「ユニストールP802」、三洋化成工業(株)製「ユーメックス1001」「ユーメックス1010」、アルケマ(株)製「ボンダインLX4110」「ボンダインTX8030」などが挙げられる。
【0035】
酸変性ポリオレフィン(C)はプライマーの塗液中で溶剤に溶解されていても、溶解されていなくても良い。溶剤に溶解されていない場合は、プライマー塗液中に均一に分散されて使用される。分散粒子径は200μm以下であることが好ましく、100μm以下であることがより好ましい。
【0036】
本発明に使用される酸変性ポリオレフィン(C)は融点を持ち、かつその融点が100℃以上である事が好ましく、さらには130℃以上である事がより好ましい。融点が100℃以上の酸変性ポリオレフィン(C)を使用することで、オレフィン系封止材への接着性により優れるプライマー層とすることが出来る。融点が高くなる分には特に不具合は見られないが、200℃以下の酸変性ポリオレフィン(C)を好ましく用いることができる。
【0037】
融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)装置を使用し、JIS K7121−1987に規定された方法で行うものとする。加熱速度は10℃/minとし、融解ピークの頂点の温度を本発明における融点とする。
【0038】
本発明で使用するロジン系樹脂(D)としては、例えば、ロジンエステル、安定化ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、不均化ロジンおよびこれらの水素化物などが挙げられる。本発明で使用するテルペン系樹脂(E)としては、例えば、α−ピネン樹脂、β−ピネン樹脂、テルペンフェノール樹脂、水添テルペンフェノール樹脂等が挙げられる。本発明で使用する石油樹脂(F)としては、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂などが挙げられ、これらの不飽和二重結合部位に一部水素原子を付加したC5系部分水添石油樹脂、C9系部分水添石油樹脂、すべてに水素原子を付加したC5系水添石油樹脂、C9系水添石油樹脂なども使用することができる。
【0039】
本発明のプライマーは上述したように(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、酸変性ポリオレフィン(C)、さらにロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、及び石油樹脂(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の樹脂を必須成分として含有することでオレフィン系封止材に対し優れた接着性及び耐久性を発揮できる。
【0040】
(メタ)アクリル系共重合体(A)は一般的にカルボキシル基またはエステル基のような極性基を有するため、極性を有する素材への親和性はあるが、オレフィン系封止材のような非極性の素材に対しては親和性が低くあまり接着しない。一方、ポリオレフィンを使用するとオレフィン系封止材のような非極性の素材への親和性が高くなるが、極性を有する素材への親和性が不足する。さまざまな素材への親和性を高めるためにこれらの成分を併用することも考えられるが、太陽電池モジュール形成用シート用途では高い接着性と耐久性が求められるため、もともと十分な親和性の無い成分を組み合わせても十分な効果を発揮できない。ところが、驚くべきことに(メタ)アクリル系共重合体(A)とポリイソシアネート化合物(B)にポリオレフィンを併用し、かつそのポリオレフィンには酸変性ポリオレフィン(C)を選択し、加えてロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、及び石油樹脂(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の樹脂を添加することでオレフィン系封止材への接着性に優れ、長期間使用しても劣化することの無い、耐久性の高いプライマー層とする事ができる。これは、ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)が(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、および酸変性ポリオレフィン(C)の親和性を高め一種の相溶化剤として働き、各成分の効果を相互に高めあい酸変性ポリオレフィン(C)が他の成分と一体化して強靭でありながら非極性素材への親和性を有するようになるため、オレフィン系封止材との接着性、耐久性が格段に向上すると発明者らは考えている。このように本発明のプライマーにおいては各成分の親和性が重要であり、ポリオレフィン成分は酸変性ポリオレフィン(C)でなければ十分な効果を発揮できない。
【0041】
本発明で使用するロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)の軟化点は150℃以下であることが好ましい。軟化点が150℃以下のロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)を使用することによって相溶化剤としての効果が高くなり、プライマー層のオレフィン系封止材への接着性、耐久性が高くなる。軟化点が低い分には特に不具合は見られないが、80℃以上のものを好ましく用いることができる。
【0042】
ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)の軟化点はJIS K7234−1986「エポキシ樹脂の軟化点試験方法」に記載されている環球法によって試験し、得られた値を採用するものとする。
【0043】
酸変性ポリオレフィン(C)の含有率は前記(A)〜(F)の合計100重量%中、5〜50重量%である事が好ましく、10〜40重量%であることがさらに好ましい。酸変性ポリオレフィン(C)が5%以上含まれることでオレフィン系封止材へより強く接着することができる。また、含有率が50重量%以下であると耐久性がより高くなり好ましい
。
【0044】
ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)から選ばれる少なくとも一種以上の樹脂の含有率は前記(A)〜(F)の合計100重量%中、1〜30重量%である事が好ましく、5〜25重量%であることがさらに好ましい。ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)から選ばれる少なくとも一種以上の樹脂が1重量%以上含まれることで各成分同士の親和性が高くなりオレフィン系封止材への接着性が強くなる。また、含有率が30重量%以下であるとより耐久性が高くなり好ましい。
ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)はそれぞれ単独で用いてもよく、併用することもできる。併用する場合、ロジン系樹脂(D)とテルペン系樹脂(E)の組み合わせが好ましい。また混合比率は成分(D)と成分(E)の合計100重量%のうち成分(D)が30〜95重量%含まれることが好ましい。
【0045】
また、本発明におけるプライマーには、必要に応じて、本発明による効果を妨げない範囲で、充填剤、チクソトロピー付与剤、老化防止剤、酸化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導性改良剤、可塑剤、ダレ防止剤、防汚剤、防腐剤、殺菌剤、消泡剤、レベリング剤、増粘剤、シランカップリング剤等の各種の添加剤を添加してもよい。
【0046】
本発明のプライマーには、溶剤が含まれてもよい。溶剤としては、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、エチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル等のアルコール類、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル等のエーテル類、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の炭化水素類、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン等の芳香族類、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、などの内からプライマーの組成に応じ適当なものを使用できるが、沸点が50℃〜200℃のものを好ましく用いることができる。沸点が50℃よりも低いと、プライマーを塗布する際に溶剤が揮発しやすく、固形分が高くなって均一な膜厚で塗布することが難しくなる。沸点が200℃よりも高いと、溶剤が残留しやすくなる。なお、溶剤は2種以上用いてもよい。
【0047】
本発明のプライマーはプラスチックフィルムに塗布して必要に応じて溶剤を乾燥させることでプライマー層を形成し、オレフィン系封止材やプラスチックフィルムへの密着性、耐久性に優れる太陽電池モジュール形成シートとすることができる。
【0048】
プラスチックフィルムの種類としては特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートなどのポリエステル系樹脂フィルム、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリシクロペンタジエンなどのオレフィンフィルム、ポリフッ化ビニル、ポリフッ化ビニリデンフィルム、ポリテトラフルオロエチレンフィルム、エチレン‐テトラフルオロエチレン共重合体フィルムなどのフッ素系フィルム、アクリルフィルム、トリアセチルセルロースフィルムなどのプラスチックフィルムが挙げられる。プラスチックフィルムは2枚以上のプラスチックフィルムが接着剤で積層された複層構造でも良く、また金属酸化物や非金属無機酸化物を蒸着した蒸着フィルムが積層されていても良い。プラスチックフィルムはフィルム剛性、コストの観点からポリエステル系樹脂フィルムであることが好ましく、この中でもポリエチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0049】
本発明のプライマーをプラスチックフィルムに塗工する方法としては、従来公知の方法を用いることができる。具体的には、コンマコーティング、グラビアコーティング、リバースコーティング、ロールコーティング、リップコーティング、スプレーコーティングなどが例示できる。これらの方法でプライマーを塗布し、必要に応じて加熱乾燥により溶剤を揮散させることで、プラスチックフィルムにプライマー層を形成することができる。
【0050】
本発明の太陽電池モジュール形成用シートはプライマー層とプラスチックフィルムを具備し、太陽電池モジュールを形成する際の表面保護材や裏面保護材として使用することができる。また、例えば特開2013−187349に開示されているように波長変換材料を含有するフィルムを太陽電池モジュールに内在させ、発電効率を向上させるなどの機能付与層を設ける場合があるが、このような場合でも当該層と封止材は高い接着力が求められるため、本発明の太陽電池モジュール形成用シートを好ましく用いることができる。このように、本発明の太陽電池モジュール形成用シートは太陽電池モジュール内部に使用することもできる。
【0051】
本発明の太陽電池モジュールは太陽電池セルとオレフィン系封止材と太陽電池モジュール形成用シートを少なくとも具備する。ここで、太陽電池モジュール形成用シートはオレフィン系封止材との接着性が良好なプライマー層を具備しており、このプライマー層がオレフィン系封止材と接触するように積層されている。
【0052】
次にオレフィン系封止材について説明する。オレフィン系封止材はエチレンと炭素数3〜20のα−オレフィンとを共重合したエチレン・α−オレフィン共重合体を主成分として含む。その含有量は特に限定されないが、オレフィン系封止材の100重量%中に好ましくは80重量%以上、より好ましくは90重量%以上を含有する。α−オレフィンは1種類単独で用いても良いし、2種類以上を組み合わせて用いることもできる。炭素数3〜20のα−オレフィンとしては、直鎖状または分岐状のα−オレフィン、例えばプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、3−メチル−1−ブテン、3,3−ジメチル−1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−デセン、1−ドデセン等を挙げることができる。これらの中でも好ましいのは、炭素数が10以下のα−オレフィンであり、特に炭素数が3〜8のα−オレフィンが好ましい。入手の容易さからプロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、4−メチル−1−ペンテンおよび1−オクテンが特に好ましい。
【0053】
オレフィン系封止材は必要に応じて架橋剤、架橋助剤、UV吸収剤、HALS、シランカップリング剤などを含有することができる。これらを添加することで、太陽電池モジュールを形成するときの真空ラミネート工程で封止材を架橋して耐久性を付与したり、耐候性を向上させたりすることができる。なお、オレフィン系封止材は構成成分に酢酸ビニルを有さないため、EVAと比較して加水分解が起こりにくく、かつ加水分解によって酢酸を発生させることが無いというメリットがある。一方で、エチレン・α−オレフィン共重合体を主成分とするため非極性であり、極性素材との接着性が低いというデメリットがある。
【0054】
オレフィン系封止材の表面形状はISO 25178−2:2012に準拠して求めた表面性状のアスペクト比(Str)が0.5以上であることが好ましい。オレフィン系封止材の、太陽電池モジュール形成シートのプライマー層と接する面のStrを0.5以上とすることにより、プライマー層との密着性及び耐久性が向上する。
【0055】
Strは、表面性状の方向依存性を表すパラメータであり、0〜1の値を取る。値が1に近づくに従い、表面性状の方向依存性が小さくなる。ヘアライン加工のように一方向に線状の凹凸を設けた場合には、算術平均高さ(Sa)が大きい表面であっても、Strはほぼ0となる。Strの値が小さい場合には、オレフィン系封止材が方向性を有することになるが、プライマー層と接合させたときに一定方向にひずみが生じて内部応力が発生し耐久試験後に接着性が低下する要因となる。一方、Strの値が0.5以上、好ましくは0.6以上、より好ましくは0.7以上の場合には、プライマー層との接着工程においてミクロな気泡を含有することなく接着でき接着性および耐久性を向上できることを本願発明者は見いだした。Strの値は大きい方が好ましく、1.0に近い方が耐久性をより向上させることができ、Strの値は1.0以下とすればよいが、オレフィン系封止材の生産性の観点から最大値は1.0未満であり、好ましくは0.99以下である。
【0056】
Strが所定の値よりも大きければSaの値は問わないが、Saの値を好ましくは0.07μm以上、より好ましくは0.12μm以上とすることにより、プライマー層との接着性密着性をより安定させることができる。
なお、StrおよびSaは、ISO25178に準拠して光学顕微鏡、レーザー顕微鏡、および電子顕微鏡いずれかで得られる表面形状の座標データを、解析ソフトによって処理することにより、算出することができる。
【0057】
オレフィン系封止材のStrは、例えばオレフィン封止材の表面に当該Strの数値範囲を満たす形状を有するロールを用いてエンボス加工することで形成することができる。
【0058】
太陽電池モジュールの一般的な態様としては、太陽電池セルの上下をオレフィン系封止材で挟み、太陽光側の表面に表面保護材を、その反対側の表面に裏面保護材を積層する構成が挙げられる。表面保護材や裏面保護材にはガラス板や本発明の太陽電池モジュール形成用シートなどを使用することができる。
【0059】
本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池セル、オレフィン系封止材、本発明の太陽電池モジュール形成用シート、さらに表面保護材や裏面保護材などを積層した後、真空ラミネートと呼ばれる真空熱圧着工程を経ることで一体化させて作製することができる。真空ラミネートの圧着条件は、例えば140℃〜170℃で3〜10分間程度真空脱泡し、その後温度を維持したまま大気圧で10〜50分間程度プレスする条件が挙げられる。この工程は市販されている太陽電池モジュール形成用の真空ラミネーターを好ましく使用することができ、プレス条件は一般的に1気圧でダイアフラムゴムを用いて圧着する。この時の温度は特に制限されないが、少なくとも100℃以上であることが好ましい。真空ラミネート後、封止材の架橋度を高めるために必要に応じて100〜200℃オーブンで5〜60分程度の加熱を行っても良い。
【0060】
太陽電池セルは、例えば単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコン、銅インジウムセレナイドに代表される化合物半導体などの光電変換層に電極を設けた素子が挙げられる。前記素子はガラスやプラスチックフィルム等の基板上に形成されていても良い。また、プラスチックフィルム上に素子を形成して太陽電池セルを作成する場合は、プラスチックフィルムの素子を形成する反対側の面に本発明のプライマー層を形成し、太陽電池モジュール形成シートとすることによってオレフィン系封止材への接着性が良好な太陽電池セルとすることができる。
【実施例】
【0061】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、以下の実施例によって限定されるものではない。なお、実施例中、部は重量部を示し、%は重量%を示す。
また、重量平均分子量、ガラス転移温度、水酸基価、酸価、融点は下記に記述するようにして測定した。
【0062】
<重量平均分子量(Mw)の測定>
Mwの測定はGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いた。GPCは溶媒(THF;テトラヒドロフラン)に溶解した物質をその分子サイズの差によって分離定量する液体クロマトグラフィーであり、重量平均分子量(Mw)の決定はポリスチレン換算で行った。
【0063】
<ガラス転移温度(Tg)の測定>
ガラス転移温度の測定は、前述した示差走査熱量測定(DSC)法により求めた。
なお、Tg測定用の試料は、測定する樹脂溶液を150℃で約15分、加熱し、乾固させたものを用いた。
【0064】
<水酸基価(OHV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料約1gを精密に量り採り、トルエン/エタノール(容量比:トルエン/エタノール=2/1)混合液100mlを加えて溶解する。更にアセチル化剤(無水酢酸25gをピリジンで溶解し、容量100mlとした溶液)を正確に5ml加え、約1時間攪拌した。これに、フェノールフタレイン試液を指示薬として加え、30秒間持続する。その後、溶液が淡紅色を呈するまで0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定する。
水酸基価は次式により求めた。水酸基価は樹脂の乾燥状態の数値とした(単位:mgKOH/g)。
水酸基価(mgKOH/g)
=[{(b−a)×F×28.05}/S]/(不揮発分濃度/100)+D
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.5Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
D:酸価(mgKOH/g)
【0065】
<酸価(AV)の測定>
共栓三角フラスコ中に試料を、約1gを精密に量り採り、モノクロロベンゼン100mlを加え加熱して溶解する。これにチモールフタレイン溶液(チモールフタレインの1%エタノール溶液)を指示薬として加え、溶液が青変するまで0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液で滴定した。
乾燥状態の樹脂の値として、酸価(mgKOH/g)を次式により求めた。
酸価(mgKOH/g)=[{(b−a)×F×5.611}/S]/(不揮発分濃度/100)
ただし、S:試料の採取量(g)
a:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
b:空実験の0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の消費量(ml)
F:0.1Nアルコール性水酸化カリウム溶液の力価
【0066】
<融点の測定>
融点の測定は、示差走査熱量測定(DSC)装置を使用してJIS K7121−1987に準じて行った。加熱速度は10℃/minとし、融解ピークの頂点の温度を融点とした。
【0067】
<(メタ)アクリル系共重合体A1溶液>
冷却管、撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、メチルメタクリレート10部、エチルメタクリレート10部、n−ブチルメタクリレート63部、2−エチルヘキシルメタクリレート15部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート2部、トルエン100部を仕込み、窒素雰囲気下で撹拌しながら100℃まで昇温した。次いで、アゾビスイソブチロニトリルを0.25部加えて2時間重合反応を行い、次に、アゾビスイソブチロニトリルを0.07部加えてさらに2時間重合反応を行い、更に0.07部のアゾビスイソブチロニトリルを加えてさらに2時間重合反応を行うことにより、重量平均分子量が72,000、水酸基価が8.6(mgKOH/g)、Tgが26℃、固形分50重量%のアクリル系共重合体A1溶液を得た。
【0068】
<(メタ)アクリル系共重合体A2〜A21溶液>
(メタ)アクリル系共重合体A1溶液の合成において、使用したモノマーの組成とアゾビスイソブチロニトリルの量を表1のように変えたこと以外は、(メタ)アクリル系共重合体A1溶液と同様にして(メタ)アクリル系共重合体A2〜A21溶液を合成した。得られた(メタ)アクリル系共重合体のTg(℃)、数平均分子量、水酸基価(OH価ともいう)を表1に示す。
【0069】
【表1】
【0070】
なお、表1中の略語は、以下のものを示す。
MMA:メチルメタクリレート
EMA:エチルメタクリレート
BMA:n−ブチルメタクリレート
2EHMA:2−エチルヘキシルメタクリレート
BA:n−ブチルアクリレート
tBA:t−ブチルアクリレート
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
AIBN:アゾビスイソブチロニトリル
【0071】
<ポリイソシアネート化合物B1溶液>
3,5−ジメチルピラゾールでブロックされた、ヘキサメチレンジイソシアネートのイソシアヌレート体を、酢酸エチルで75重量%に希釈し、ポリイソシアネート化合物B1溶液を得た。
【0072】
<酸変性ポリオレフィンC1>
撹拌装置、温度計、窒素導入管を備えた4つ口フラスコに、チーグラーナッタ触媒で合成された、メルトフローレート(MFR、温度230℃、荷重2.16kg)が5(g/10min)、融点が150℃のホモポリマーポリプロピレンを100部、キシレン500部、無水マレイン酸を50部加え130℃まで窒素ガス雰囲気中で撹拌しながら加熱した。ポリプロピレンが十分に溶解した後、ベンゾイルパーオキサイド1.5部をキシレン75部に溶解したものを1時間で滴下し、滴下終了後、さらに1時間反応を続けた後、放冷した。ここにアセトン2000部を加えて酸変性ポリオレフィンを析出させた。キシレンを加えて加熱して溶かし、放冷後にアセトンを加えて析出させる方法で5回精製し、酸変性ポリオレフィンC1を得た。融点は156℃、酸価は8mgKOH/gであった。
【0073】
<酸変性ポリオレフィンC2>
酸変性ポリオレフィンC1の合成においてポリプロピレン原料を、チーグラーナッタ触媒で合成された、MFRが30(g/10min)、融点が140℃のランダムポリプロピレンとした事以外は、酸変性ポリオレフィンC1と同様にして酸価が11mgKOH/g、融点が148℃の酸変性ポリオレフィンC2を得た。
【0074】
<酸変性ポリオレフィンC3>
酸変性ポリオレフィンC1の合成においてポリプロピレン原料を、メタロセン触媒で合成された、MFRが7(g/10min)、融点が115℃のランダムポリプロピレンとした事以外は、酸変性ポリオレフィンC1と同様にして酸価が14mgKOH/g、融点が127℃の酸変性ポリオレフィンC3を得た。
【0075】
<ロジン系樹脂D1〜D5>
クレイトン製のロジンエステル「Sylvalite RE100L」(軟化点100℃)をロジン系樹脂D1、
荒川化学工業(株)製の不均化ロジンの水素化物「パインクリスタルKE−100」(軟化点100℃)をロジン系樹脂D2、
荒川化学工業(株)製の重合ロジンエステル「ペンセルC」(軟化点125℃)をロジン系樹脂D3、
ハリマ化成工業(株)の安定化ロジンエステル「ハリタックF85」(軟化点85℃)をロジン系樹脂D4、
荒川化学工業(株)製の重合ロジンエステル「ペンセルD−160」(軟化点155℃)をロジン系樹脂D5とした。
【0076】
<テルペン系樹脂E1〜E5>
ヤスハラケミカル(株)製のテルペン樹脂「YSレジンPX1000」(軟化点100℃)をテルペン系樹脂E1、
ヤスハラケミカル(株)製のテルペンフェノール樹脂「YSポリスターT−100」(軟化点100℃)を テルペン系樹脂E2、
ヤスハラケミカル(株)製のテルペンフェノール樹脂「YSポリスターT−145」(軟化点145℃)をテルペン系樹脂E3、
荒川化学工業(株)製のテルペンフェノール樹脂「タマノル901」(軟化点130℃)をテルペン系樹脂E4、
ヤスハラケミカル(株)製のテルペンフェノール樹脂「YSポリスターT−160」(軟化点160℃)をテルペン系樹脂E5とした。
【0077】
<石油系樹脂F1〜F4>
荒川化学工業(株)製のC9系水添石油樹脂「アルコンP−100」(軟化点100℃)を石油系樹脂F1、
荒川化学工業(株)製のC9系水添石油樹脂「アルコンP−125」(軟化点125℃)を石油系樹脂F2、
荒川化学工業(株)製のC9系部分水添石油樹脂「アルコンM−100」(軟化点100℃)を石油系樹脂F3、
イーストマンケミカル製のC5系水添石油樹脂「イーストタックH−130W」(軟化点130℃)を石油系樹脂F4とした。
【0078】
<その他の成分>
三井化学(株)製の酸価を持たない変性オレフィン「ユニストールP―901」(水酸基価50mgKOH/g)を変性オレフィン1、東洋紡(株)製の酸価を持たない変性オレフィン「HARDLEN P−5528」(水酸基価3.3mgKOH/g)を変性オレフィン2とした。
【0079】
<エチレン・α−オレフィン共重合体の合成>
撹拌羽根を備えた内容積50Lの連続重合器の一つの供給口に、共触媒としてメチルアルミノキサンのトルエン溶液を8mmol/hr、主触媒としてビス(1,3−ジメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウムジクロライドのヘキサンスラリーを0.025mmol/hr、トリイソブチルアルミニウムのヘキサン溶液を0.6mmol/hrの割合で供給し、さらに触媒溶液と重合溶媒の合計が20L/hrとなるように脱水精製したノルマルヘキサンを連続的に供給した。同時に重合器の別の供給口に、エチレンを3kg/hr、1−ブテンを15kg/hr、水素を1.5NL/hrの割合で連続供給し、重合温度90℃、全圧3MPaG、滞留時間1.0時間の条件下で連続溶液重合を行った。重合器で生成したエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、重合器の底部に設けられた排出口を介して連続的に排出させ、エチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液が150〜190℃となるように、ジャケット部が3〜25kg/cm2スチームで加熱された連結パイプに導いた。なお、連結パイプに至る直前には、触媒失活剤であるメタノールが注入される供給口が付設されており、約0.75L/hrの速度でメタノールを注入してエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液に合流させた。スチームジャケット付き連結パイプ内で約190℃に保温されたエチレン・α−オレフィン共重合体のノルマルヘキサン/トルエン混合溶液は、約4.3MPaGを維持するように、連結パイプ終端部に設けられた圧力制御バルブの開度の調整によって連続的にフラッシュ槽に送液した。なお、フラッシュ槽内への移送においては、フラッシュ槽内の圧力が約0.1MPaG、フラッシュ槽内の蒸気部の温度が約180℃を維持するように溶液温度と圧力調整バルブ開度設定を行った。その後、ダイス温度を180℃に設定した単軸押出機を通し、水槽にてストランドを冷却し、ペレットカッターにてストランドを切断し、ペレットとしてエチレン・α−オレフィン共重合体を得た。収量は2.0kg/hrであった。得られたエチレン・α−オレフィン共重合体のエチレンと1−ブテンの割合はそれぞれ86mol%、14mol%であった。
【0080】
<オレフィン系封止止材1の作成>
合成したエチレン・α−オレフィン共重合体100部、t−アミルパーオキシベンゾエート0.6部、トリアリルイソシアヌレート1.2部、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.5部を均一になるように配合した。次に20mmφの単軸押出機、270mm幅のT型ダイスを有するフィルム成形機を用いて、ダイス温度100℃、ロール温度30℃、巻き取り速度1.0m/minで、第1冷却ロールにエンボスロールを用いてシート成形を行い、表面のSaが1.2μm、Strが0.52、厚み500μmのオレフィン系封止止材1を得た。
【0081】
<オレフィン系封止材2の作成>
オレフィン系封止材1の作成において、エンボスロールの種類を変更したこと以外はオレフィン系封止材1と同様に作成し、表面のSaが1.0μm、Str値が0.74、厚み500μmのオレフィン系封止材2を得た。
【0082】
<オレフィン系封止材シート3の作成>
オレフィン系封止材1の作成において、エンボスロールの種類を変更しヘアライン加工したこと以外はオレフィン系封止材1と同様に作成し、表面のSaが1.1μm、Str値が0.34、厚み500μmのオレフィン系封止材3を得た。
【0083】
<プライマー塗液の調整>
(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、酸変性ポリオレフィン(C)、ロジン系樹脂(D)および希釈溶剤としてキシレンを使用し、表2に示す組成にて混合してプライマー塗液1を得た。ここで、酸変性ポリオレフィン(C)はキシレンに完全には溶解しないため、乾式粉砕により粒子径を80μm以下に調整したものを、(メタ)アクリル系共重合体(A)等を含む溶液中に均一に分散させて使用した。なお、表2中の配合比は固形分重量比を表し、プライマー塗液の固形分は20重量%となるように調整した。また、空欄は配合しなかったことを意味する。
【0084】
[実施例1]
プライマー塗液1を用い、後述する方法でポリエステルフィルム上にプライマー層を形成し、プライマー層とオレフィン封止材1との剥離強度および耐湿熱試験後の剥離強度を求め、オレフィン封止材に対するプライマー層の接着性と耐久性を評価した。
【0085】
<剥離強度>
プライマー塗液1をグラビアコーターで厚さ125μmのポリエステルフィルム(東レ(株)製ルミラーX10s)のコロナ処理面に塗布し、120℃1分で溶剤を乾燥させ、塗布量:5g/平方メートルのプライマー層を形成した。プライマー層の上にオレフィン封止シート1、白板ガラス板を重ね、この積層体を140℃に加熱したモジュールラミネータPVL0505S(日清紡メカトロニクス社製)の熱板の上に、白板ガラスが下になるように置き、1Torr程度に真空排気して5分間放置した。次いで、140℃を維持したまま大気圧でプレスし、15分間放置して測定サンプルを作製した。ポリエステルフィルムの面をカッターで15mm幅に切り、プライマー層とオレフィン封止シート1との初期の剥離強度を測定した。測定には、引っ張り試験機を用い、荷重速度100mm/minで180度剥離試験を行った。得られた測定値に対して、以下のように評価した。
EX:80N/15mm以上 非常に優れる
S:50N/15mm以上〜80N/15mm未満 優れる
A:40N/15mm以上〜50N/15mm未満 良好
B:30N/15mm以上〜40N/15mm未満 実用域
C:30N/15mm未満 実用不可
【0086】
<耐湿熱試験後剥離強度>
剥離強度評価サンプルを、温度85℃、相対湿度85%RHの環境条件で1000時間、2000時間、3000時間静置した後、前記の剥離強度測定と同様にして、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行った。
【0087】
[プライマー塗液2〜49]
(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、酸変性ポリオレフィン(C)、ロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、石油樹脂(F)および希釈溶剤としてキシレンを使用し、表2、3、4に示す組成にて混合してプライマー塗液2〜47を得た。ここで、酸変性ポリオレフィン(C)はキシレンに完全には溶解しないため、乾式粉砕により粒子径を80μm以下に調整したものを塗液中に均一に分散させて使用した。なお、表2、3、4中の配合比は固形分比率を表し、プライマー塗液の固形分は20重量%となるように調整した。
【0088】
[実施例2〜49]
実施例1においてプライマー塗液1をプライマー塗液2〜49に変更した以外は、実施
例1と同様にして剥離強度、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行い実施例2〜49とした。
結果を表2、3、4に示す。
ただし、実施例9、15、16、21、27、32、44、45、及び49は参考例である。
【0089】
[実施例50]
実施例1においてプライマー塗液1をプライマー塗液2に変更し、オレフィン封止材1をオレフィン封止材2に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離強度、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行い実施例50とした。結果を表4に示す。
[実施例51]
実施例1においてプライマー塗液1をプライマー塗液3に変更し、オレフィン封止材1をオレフィン封止材2に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離強度、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行い実施例51とした。結果を表4に示す。
[実施例52]
実施例1においてプライマー塗液1をプライマー塗液2に変更し、オレフィン封止材1をオレフィン封止材3に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離強度、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行い実施例52とした。結果を表4に示す。
【0090】
【表2】
【0091】
【表3】
【0092】
【表4】
【0093】
[プライマー塗液50〜55]
(メタ)アクリル系共重合体(A)、ポリイソシアネート化合物(B)、酸変性ポリオ
レフィン(C)、ロジン系樹脂(D)、その他の成分および希釈溶剤としてキシレンを使用し、を表5に示す組成にて混合し、プライマー塗液50〜55を得た。ここで、酸変性ポリオレフィン(C)はプライマー塗液中に溶解しないため、乾式粉砕により粒子径を80μm以下に調整したものを塗液中に均一に分散させて使用した。なお、表5中の配合比は固形分比率を表し、プライマー塗液の固形分は20重量%となるように調整した。
【0094】
[比較例1〜6]
実施例1においてプライマー塗液1をプライマー塗液50〜55に変更した以外は、実施例1と同様にして剥離強度、耐湿熱試験後剥離強度の評価を行い比較例1〜6とした。結果を表5に示す。
【0095】
【表5】
【解決手段】 (メタ)アクリル系共重合体(A)と、ポリイソシアネート化合物(B)と、酸変性ポリオレフィン(C)を含有し、さらにロジン系樹脂(D)、テルペン系樹脂(E)、及び石油樹脂(F)からなる群より選ばれる少なくとも一種以上の樹脂とを含有する、太陽電池モジュール形成用シート用プライマー。