特許第6795154号(P6795154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795154
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】干渉計
(51)【国際特許分類】
   G01B 9/02 20060101AFI20201119BHJP
【FI】
   G01B9/02
【請求項の数】3
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2016-142034(P2016-142034)
(22)【出願日】2016年7月20日
(65)【公開番号】特開2018-13371(P2018-13371A)
(43)【公開日】2018年1月25日
【審査請求日】2019年7月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】800000068
【氏名又は名称】学校法人東京電機大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101269
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 道夫
(72)【発明者】
【氏名】古谷 涼秋
【審査官】 九鬼 一慶
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−194410(JP,A)
【文献】 特開平09−079855(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2014/0080171(US,A1)
【文献】 特開2015−125046(JP,A)
【文献】 特開2002−107519(JP,A)
【文献】 特開平05−133715(JP,A)
【文献】 特開2007−199071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光束を発生させるレーザー光源およびこのレーザー光源からの光束を拡散させて拡散光とする拡散レンズとを含む光源と、
光源からの拡散光を入射した光軸に沿ってそれぞれ反射する複数のボールレンズと、
光源と複数のボールレンズとの間に配置されて個々のボールレンズに対する拡散光の入射を遮断可能とする液晶フィルターと、
個々のボールレンズに対応する液晶フィルターの各部分における光の遮断を制御する制御手段と、
ボールレンズで反射された反射光を受光すると共に、光源に源を有する光の一部を参照光として受光する受光素子と、
を含む干渉計。
【請求項2】
複数のボールレンズが、光源に対して対面する平面上に少なくとも6つのボールレンズが配置された形とされている請求項1に記載の干渉計。
【請求項3】
液晶フィルターが、液晶の偏光角を変えて光の透過率を変更することで光の遮断を可能とする光学シャッターにより構成される請求項1又は請求項2に記載の干渉計。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の位置までの各距離を高精度にそれぞれ測定する際に用いられる干渉計に関し、特にレーザー干渉計に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
レーザー干渉計等の干渉計は、物体の位置や姿勢、更には物体までの距離などの測定に使用されている。これに伴い、干渉計により温度や振動などによる長さ変化に依存する項目の測定も可能となっている。そして、複数の位置までの各距離を高精度にそれぞれ測定する際には近年、レーザー干渉計が用いられている。このレーザー干渉計は、測定点に対応して複数のコーナーキューブやキャッツアイ等のレトロリフレクタを反射鏡として採用し、各測定点にこれらをそれぞれ固定し、これらからの反射光を利用して測定していた。さらに、このように複数の位置を測定する場合、各測定点に合わせるようにレーザー光を広げて出射することが考えられるが、レーザー光が広がるのに伴って複数のレトロリフレクタに同時に光が入射すると共に反射して測定が困難であった。
【0003】
このため、レトロリフレクタを1つずつ固定して設置しレーザー光を照射するか、あるいはレトロリフレクタを複数設置するのに合わせてレーザー光の光軸を細く絞り、光軸の姿勢を各レトロリフレクタに順次変更することによって、レトロリフレクタと参照鏡との間で順番に干渉させて距離を計測することが考えられていた。
【0004】
この一方、このような干渉計の従来技術として、下記特許文献1〜4が知られている。
特許文献1では、レーザ光を被測定面上に載置されたコーナーキューブに入射させ、基準平面と被測定面との間の寸法に応じて平行に変位させた反射光をこのコーナーキューブで反射し、この反射光を検出して受光位置の変化から被測定面の平面度を測定していた。
【0005】
また、特許文献2では、複数のガラス玉を用いた反射鏡が採用されると共に反射フィルムとキャッツアイ反射鏡のような平面状の反射要素が反射鏡の基準軸に対して配置することで測定する技術が開示されている。さらに、特許文献3では、干渉縞パターンのうち同位相の領域を抽出する窓を有する空間的な液晶フィルターを光路中に配置し、この液晶フィルターにより同位相のスペックル干渉縞パターンを形成して、位相情報を選択する技術が示されている。
【0006】
特許文献4では、測定対象物である反射鏡を任意の空間位置にセットし、光源から等しい周波数間隔で並んだ複数の周波数成分を有する光コムを出射し、この光コムを参照光と測距光とに分割するものであるが、複数の光源に光スイッチを設けて、反射鏡に光を入射して距離を算出する技術が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開6-102030公報
【特許文献2】特表2009-510413公報
【特許文献3】特開平5-196419公報
【特許文献4】特開2015-194410公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、これら特許文献1〜4であっても、複数の位置を簡易且つ高精度に測定できる干渉計は存在していなかった。これに対して、産業の高度化に伴い複数の位置を簡易且つ高精度に測定する計測技術の必要性が高まっていた。
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、複数の位置を簡易且つ高精度に測定できる干渉計を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決した請求項1記載の発明は、光束を発生させるレーザー光源およびこのレーザー光源からの光束を拡散させて拡散光とする拡散レンズとを含む光源と、
光源からの拡散光を入射した光軸に沿ってそれぞれ反射する複数のボールレンズと、
光源と複数のボールレンズとの間に配置されて個々のボールレンズに対する拡散光の入射を遮断可能とする液晶フィルターと、
個々のボールレンズに対応する液晶フィルターの各部分における光の遮断を制御する制御手段と、
ボールレンズで反射された反射光を受光すると共に、光源に源を有する光の一部を参照光として受光する受光素子と、
を含む干渉計である。
【0010】
請求項1の発明のような干渉計によれば、光束を発生させるレーザー光源およびこのレーザー光源からの光束を拡散させて拡散光とする拡散レンズとを含む光源にて発生された拡散光が複数のボールレンズに入射され、この入射した光軸に沿ってそれぞれボールレンズが反射する。また、光源と複数のボールレンズとの間に配置されている液晶フィルターが、個々のボールレンズに対する拡散光の入射を遮断可能とし、制御手段が個々のボールレンズに対応する液晶フィルターの各部分における光の遮断を制御する。
【0011】
この一方、受光素子がボールレンズで反射された反射光を受光すると共に、光源に源を有する光の一部を参照光として受光することで、何れかのボールレンズからの反射光と参照光との間の光路差を測定することを順次行うのに伴い、各ボールレンズの位置が把握可能となる。
【0012】
従って、本請求項に係る干渉計は、複数のボールレンズと液晶フィルターとを一体的な構造として、測定対象物に設置することで、複数のボールレンズの各位置を簡易且つ高精度に測定できる。この結果として、例えば測定対象物の空間内における3軸上の位置や姿勢を正確に計測可能となる。
【0013】
さらに、本請求項に係る干渉計を用いることによって、例えばレーザー装置で励起されたレーザー光を拡散光とすることができるので、拡散光のとどく広い範囲を一度に測定可能となる。また、レトロリフレクタの再設置の必要性がないので、レトロリフレクタの再設置によって生じるコストが不要となる。
【0014】
他方、本請求項に係る干渉計によれば、ボールレンズと液晶フィルターにより構成される反射鏡を拡散光の中に置くだけで、光学の知織がなくても簡単にレーザー干渉計等の干渉計を構成することができるため、レーザー干渉計を用いた測定の用途や市場が広がる。これに伴い、レーザー干渉計を使うことへの敷居が低くなり、気楽に位置等の測定をすることで測定の精度向上や品質向上への要求の高まりに答えることもできる。
【0015】
また、本発明では、光源が、光束を発生させるレーザー光源とこのレーザー光源からの光束を拡散させて拡散光とする拡散レンズとを含んでいる。このようにレーザー光源と拡散レンズとを組み合わせることにより、広角で均一に拡散する拡散光を容易に作り出すことが可能となり、これに伴い各ボールレンズを複数の相互に異なる位置に配置した場合でも、個々のボールレンズに光源からの光がいき渡り、高精度に計測可能となる。
【0016】
請求項2の発明は、複数のボールレンズが、光源に対して対面する平面上に少なくとも6つのボールレンズが配置された形とされている請求項1に記載の干渉計である。
このように6つのボールレンズを採用したことで、6つのボールレンズ及び液晶フィルターを測定対象物に設置するのに伴い、測定対象物の相互に直交する3軸上(例えば、高さ方向、横方向、奥行き方向)の各位置の計測だけで無く、この3軸上における測定対象物の各傾きを計測可能となる。
【0017】
請求項3の発明は、液晶フィルターが、液晶の偏光角を変えて光の透過率を変更することで光の遮断を可能とする光学シャッターにより構成される請求項1又は請求項2に記載の干渉計である。
このように一般的な液晶技術を採用することで、より一層の低コストとしつつ複数のボールレンズの各位置を簡易且つ高精度に測定可能になる。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る干渉計によれば、複数の位置を簡易且つ高精度に測定可能になる。これに伴い、本発明に係る干渉計はボールレンズと液晶フィルターにより構成される反射鏡を拡散光の中に置くだけで良いので、光学の知織がなくても簡単に干渉計を構成できる結果として、測定の用途も広がることになる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の第1の実施形態に係るレーザー干渉計の概略図である。
図2】本発明の第1の及び第2の実施形態に適用されるボールレンズと液晶フィルターを含む反射鏡を示す図であって、(A)は一部破断した上面図であり、(B)は正面図である。
図3】本発明の第1の実施形態に係るレーザー干渉計の測定手順を示す反射鏡の斜視図であって、(A)は第1の手順であり、(B)は第2の手順である。
図4】本発明の第2の実施形態に係るレーザー干渉計の概略図である。
図5】本発明の第2の実施形態に係るレーザー干渉計の測定手順を示す反射鏡の斜視図であって、(A)は第1の手順であり、(B)は第2の手順である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る干渉計の第1の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。
図1及び図2に示すように本実施形態のレーザー干渉計10においては、レーザー光を発生するレーザー光源であるレーザー装置12の前に、このレーザー装置12からのレーザー光の光束Lを拡散させて拡散光Kとする拡散レンズ14が配置されている。
【0021】
この拡散レンズ14を透過して拡散光Kとなった光の中心軸CA上には、この拡散光Kを2つに分離するためのビームスプリッタ16が配置されていて、このビームスプリッタ16に対して中心軸CAと直交する方向に沿って参照鏡18が配置されている。このため、ビームスプリッタ16で分離された拡散光Kの一部が直角に出射して参照鏡18に送り込まれると共に参照鏡18で反射して、ビームスプリッタ16側に戻るようになっている。
【0022】
この一方、ビームスプリッタ16に対して中心軸CAと直交し且つ参照鏡18と逆方向に沿って、拡散光Kを集光するための集光レンズ20及びこの集光レンズ20により集められた光を検出する受光素子である光検出器22がそれぞれ位置している。このため、参照鏡18で反射して戻ってきた光を参照光Sとしてこの光検出器22が受光する。
【0023】
さらに、ビームスプリッタ16を直線的に透過した拡散光K内に位置するように反射鏡30が配置されている。この反射鏡30は、図1及び図2に示すように拡散光Kを光軸LA〜LIに沿ってそれぞれ反射する9個とされる複数のボールレンズ34A〜34Iが、直方体状に樹脂材料や金属材料等により形成されたブラケット32の各凹部32A内に支持されつつ配置された構造になっている。なおここでボールレンズとは、高屈折率ガラスを球形に精密研磨したレンズであり、入射した光を入射方向と平行かつ反対方向へと反射する機能を有するものである。また、ブラケット32の各凹部32Aは、各ボールレンズ34A〜34Iとの対向面が反射面となるように表面がコートされている。
【0024】
具体的には、図1に示すように、レーザー装置12や拡散レンズ14に対して直交して対面する平面上に図2に示す9個のボールレンズ34A〜34Iが1列あたり3個で3列に配列されて配置される形になるように、ブラケット32に支持されている。これに伴い、9個のボールレンズ34A〜34Iから各光軸LA〜LIに沿って反射光Hがビームスプリッタ16にそれぞれ戻るようになっている。
【0025】
但し、9個のボールレンズ34A〜34Iのビームスプリッタ16側の位置には、個々のボールレンズ34A〜34Iに対する拡散光Kの照射を遮断可能とする液晶フィルター36が配置されている。また、この液晶フィルター36もブラケット32に支持されて複数のボールレンズ34A〜34Iと液晶フィルター36とで一体的な構造の反射鏡30とされている。そして、この液晶フィルター36は、液晶の偏光角を変えて光の透過率を変更することで光の遮断を可能とする光学シャッターとされている。したがって、この液晶フィルター36は、拡散レンズ14と各ボールレンズ34A〜34Iとの間を繋ぐ各光軸LA〜LIに対応する領域を液晶の偏光角の変更に伴って拡散光Kの透過と遮断との選択を可能としている。
【0026】
さらに、この液晶フィルター36は、液晶フィルター36の動作を制御する制御手段であるコントローラ24に接続されていて、このコントローラ24によって液晶フィルター36の個々のボールレンズ34A〜34Iに対応する各光軸LA〜LIを含む各領域での拡散光Kの透過と遮断とが制御されている。このため、コントローラ24に制御された液晶フィルター36により、9個のボールレンズ34A〜34Iの内のいずれか一つ或いは二つ以上で光の通過が可能となる。
【0027】
そして、液晶フィルター36を透過してボールレンズ34A〜34Iの内の何れかで反射して光軸LA〜LI上を戻ってきた反射光Hがビームスプリッタ16に再度入射し、この内の主な反射光Hが集光レンズ20に送られて、この集光レンズ20により絞られた光を光検出器22が検出することになる。
【0028】
以上より、この光検出器22は、ボールレンズ34A〜34Iで反射されて戻ってきた反射光Hを受光すると共に、前述の参照鏡18からの参照光Sを受光することになる。これに伴い、図1に示す反射光Hと参照光Sとの間の光路差を測定可能になる。また、前述のコントローラ24は、この光検出器22にも接続されていると共に、光路差に基づく反射鏡30の位置や姿勢を表示したりするディスプレイやこれらのデータを蓄積したりするハードディスク等の記憶媒体からなる表示記憶部26にも接続されている。
【0029】
次に、本実施形態に係るレーザー干渉計10の作用を以下に説明する。
本実施形態のレーザー干渉計10によれば、レーザー装置12が発生させた光束Lを拡散レンズ14が拡散させて拡散光Kとしている。拡散レンズ14及びビームスプリッタ16に対して対面する平面上に配置されている9個のボールレンズ34A〜34Iが、この拡散光Kを入射した光軸LA〜LIに沿ってそれぞれ反射し得るようになっている。また、ビームスプリッタ16と9個のボールレンズ34A〜34Iとの間に配置されている液晶フィルター36の動作がコントローラ24により制御されて、個々のボールレンズ34A〜34Iに対応する液晶フィルター36の各部分における拡散光Kの入射を遮断可能としている。
【0030】
さらに、光検出器22がボールレンズ34A〜34Iで反射された反射光Hを受光すると共に、レーザー装置12に源を有する光の一部である参照鏡18からの参照光Sとして受光することで、各ボールレンズ34A〜34Iの何れかからの反射光Hと参照光Sとの間の光路差をコントローラ24が測定し、表示記憶部26が表示や記憶等するのに伴い、各ボールレンズ34A〜34Iの位置が把握可能となる。
【0031】
以上のように、本実施形態に係るレーザー干渉計10は、9個のボールレンズ34A〜34Iとその前方に設置された液晶フィルター36とを一体的な構造とした反射鏡30を採用し、ボールレンズ34A〜34Iの前方に設置された液晶フィルター36によって任意の領域以外の光を遮断可能になっている。
【0032】
このため、この反射鏡30を図示しない測定対象物に例えば設置することで、レーザー装置12で励起されたレーザー光を図1のような拡散光Kとし、9個のボールレンズ34A〜34Iの位置に同時に出射可能にすることができる。つまり、この拡散光Kの届く範囲の広い範囲において9個のボールレンズ34A〜34Iの各位置を簡易且つ高精度に測定できるのに伴い、このレーザー干渉計10により一度に空間内における測定対象物の位置や姿勢を正確に測定可能となる。
【0033】
この際、本実施形態では、レーザー装置12と拡散レンズ14とを組み合わせたことにより、広角で均一に拡散する拡散光Kを容易に作り出すことが可能となり、これに伴い各ボールレンズ34A〜34Iを相互に異なる位置に配置した場合でも、個々のボールレンズ34A〜34Iにレーザー装置12からの光がいき渡り、高精度に計測可能となる。
【0034】
また、液晶フィルター36の制御によってボールレンズ34A〜34Iのいずれかを選択可能となることで、レトロリフレクタの設置や再配置などの作業の必要性がないので、レトロリフレクタの再設置によって生じるコストが不要となるとともに、測定誤差の低減という大きな効果も期待できる。
【0035】
他方、本実施形態のレーザー干渉計10によれば、ボールレンズ34A〜34Iと液晶フィルター36により構成される反射鏡30を上記のように拡散光Kの中に置くだけで良いことになる。このため、光学の知織がなくても簡単にレーザー干渉計10等の干渉計を構成できるのに合わせて、干渉計を使った測定の市場が広がる。これに伴い干渉計を使うことへの敷居が低くなり、位置等の測定を気楽にすることにより、測定の精度向上や品質向上への要求の高まりに答えることもできる。
【0036】
なお、レーザー装置12や拡散レンズ14に対してビームスプリッタ16を介して対面する平面上に9個のボールレンズ34A〜34Iが配置された構造と本実施形態ではされている。但し、ボールレンズを少なくとも6つ採用すれば、液晶フィルター36と共に測定対象物に設置するのに伴って、測定対象物の相互に直交する3軸上(例えば、高さ方向、横方向、奥行き方向)の各位置の計測だけで無く、この3軸上における測定対象物の各傾きを計測可能となる。
【0037】
さらに、本実施形態では、図示しない2枚のガラス板間の液晶の偏光角を変え、光の透過率を変更することで光の遮断を可能とするデバイスである光学シャッターにより、液晶フィルター36が構成されている。つまり、このように一般的な液晶技術を採用することで、干渉計の製造コストをより一層低減しつつ、複数のボールレンズ34A〜34Iの各位置を簡易且つ高精度に測定可能になる。
【0038】
次に、本実施形態に係るレーザー干渉計10による測定手順の例を説明する。
図3(A)に示すように、9個のボールレンズ34A〜34Iの内の左上に位置するボールレンズ34Aだけで透過及び反射が可能なように、コントローラ24が液晶フィルター36を制御する。この結果として、このボールレンズ34Aからの反射光Hと参照鏡18からの参照光Sとが図1に示すように光検出器22で受光されることで、ボールレンズ34Aからの反射光Hと参照光Sとの間の光路差を測定できる。
【0039】
さらに、図3(B)に示すように、左中に位置するボールレンズ34Bだけで透過及び反射が可能なように、同様にコントローラ24が液晶フィルター36を制御する。そして、同様にこのボールレンズ34Bからの反射光Hと参照鏡18からの参照光Sとの間の光路差を測定する。そして、同様の手順でボールレンズ34C、34G〜34Iの光路差を順次測定することで、測定対象物の相互に直交する3軸上の各位置の計測だけで無く、この3軸上における測定対象物の各傾きを計測可能となる。
【0040】
次に、本発明に係る干渉計の第2の実施形態を、図面を参照しつつ詳細に説明する。ただし、第1の実施形態で説明した部材と同一の部材には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0041】
図2及び図4に示すような本実施形態のレーザー干渉計10は、第1の実施形態とほぼ同一の構造とされている。ただし、本実施形態では参照鏡18が存在していない。これに伴い、光検出器22が参照鏡18からの参照光Sを受光しない替りに9個のボールレンズ34A〜34Iの内のいずれか2個にだけで透過及び反射が可能なように、コントローラ24が液晶フィルター36を制御する。
【0042】
具体的には、9個のボールレンズ34A〜34Iの内の中央に位置するボールレンズ34Eを参照鏡18の替りとして毎度、透過及び反射を可能とする。そして、図5(A)に示すように、まず他のボールレンズとされる左上に位置するボールレンズ34Aとこのボールレンズ34Eだけで透過及び反射を可能として、第1回目の測定をする。
【0043】
さらに、図5(B)に示すように、左中に位置するボールレンズ34Bとこのボールレンズ34Eだけで透過及び反射を可能として、第2回目の測定をする。この後、順次、左下、右上、右中、右下の順でボールレンズ34A〜34C、34G〜34Iの透過及び反射を可能として、2個のボールレンズからの反射光H間の光路差を測定するという手順で光路差を測定する。このことで、第1の実施形態と同様に図示しない測定対象物の相互に直交する3軸上の各位置の計測だけで無く、この3軸上における測定対象物の各傾きを計測可能となる。
【0044】
尚、上記のようなコントローラ24と反射鏡30の液晶フィルター36との間は有線により接続して制御しても良いが、測定対象物の移動範囲が大きい場合には、コントローラ24及び液晶フィルター36にそれぞれ送受信機を付けることで、無線により接続して制御しても良い。また、この液晶フィルターも本実施形態では一体のものを採用したが、ボールレンズの数に対応した数の小さな液晶フィルターを採用し、個々の液晶フィルターをそれぞれ制御するようにしても良い。
【0045】
各ボールレンズの大きさは種々選択可能であるが、たとえば2mm〜5mm程度の直径のものが考えられ、また、ボールレンズの数としては少なくとも2個とすることができるが、測定対象物のピッチングやヨーイング等を測定する場合には上記のように例えば6個等とすることが考えられる。そして、各ボールレンズとビームスプリッタ16との距離と参照鏡18とビームスプリッタ16との距離とは、光の干渉を考慮するとほぼ同一とすることが考えられる。
【0046】
他方、本実施形態のビームスプリッタ16から反射鏡30までの距離はたとえば数m程度が考えられ、測定対象物としては防振台に乗せられている精密機器等が考えられる。ただし、他の用途に用いても良く、測定対象物が大きく移動する場合には、拡散光をトラッキングしながら測定しても良い。また、レーザー装置12は可視光である700nm程度の波長のヘリウムネオンレーザーを用いたものが良いが、他の異なる波長のレーザー装置を採用しても良い。
【0047】
表示記憶部26は、CRTモニタやLCD等の表示装置としても良く、ハードディスクスやソリッドステートドライブ(Solid State Drive)等の他、CD、DVD、USBメモリー等の記録媒体を採用することが考えられるが、これら記録媒体に限定されるものではない。また、入力操作部を追加しても良く、パソコンを採用しても良い。
【0048】
以上、本発明に係る実施の形態を説明したが、本発明は係る実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、精密測定器等の測定物対象物の位置や姿勢の測定の他にさまざまな産業分野に適用可能となる。たとえば、無人飛行するドローン等に取り付ければドローン等の飛行位置を計測可能になる。
【符号の説明】
【0050】
10 レーザー干渉計
12 レーザー装置(光源)
14 拡散レンズ(光源)
16 ビームスプリッタ
18 参照鏡
20 集光レンズ
22 光検出器(受光素子)
24 コントローラ(制御手段)
26 表示記憶部
30 反射鏡
34A〜34I ボールレンズ
32 ブラケット
36 液晶フィルター
CA 中心軸
LA〜LI 光軸
L 光束
K 拡散光
S 参照光
H 反射光
図1
図2
図3
図4
図5