(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
それぞれが高分子樹脂材料からなり、小径の第一チューブの一端部を大径の第二チューブに嵌挿して第一及び第二チューブの重合わせ端部を高周波誘電溶着させる高周波誘電溶着装置であって、
前記第一チューブの一端部近傍の外周面を押圧して高周波電圧を印加する押圧面を有する第一電極と、
前記第二チューブの重合わせ端部の外周面を押圧して高周波電圧を印加する押圧面を有する第二電極と、
前記第一及び第二電極間に介装され、第一及び第二電極を電気的に絶縁させる絶縁板であって、前記第一及び第二チューブを重合わせたときに段状に形成される第二チューブの端面の全面に当接して取り付けられる側面と、前記第一チューブの一端部近傍の外周面を押圧する押圧面とを有する絶縁板と、
前記第一電極と前記第二電極との間に高周波電圧を印加するための高周波電源と、を備え、
前記高周波電源により前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加したときに、前記絶縁板で前記第二チューブの端面に対する前記第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止し、前記第一電極及び第二電極間の、前記第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内に、前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加するよう構成し、
前記第一チューブと前記第二チューブの分子の極性が反転する誘電作用により発熱して溶融し、前記第一チューブと前記第二チューブが互いに融け合わさった後、冷却固化して互いを溶着させる領域を形成する、ことを特徴とする高周波誘電溶着装置。
前記高周波電源により前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加したときに、前記絶縁板で前記第二チューブの端面に対する前記第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止し、前記第一電極及び第二電極間の、前記第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内の半径方向に、前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加するよう構成した、ことを特徴とする請求項1に記載の高周波誘電溶着装置。
前記第二チューブの軸方向に、第二電極の隣に第二の絶縁板、第三電極、第三の絶縁板、第四電極を更に重ね、前記第二チューブの外周にこれら第二の絶縁板、第三電極、第三の絶縁板、第四電極のそれぞれの押圧面を押圧し、第二電極と第三電極の間、第三電極と第四電極の間にも高周波電圧を印加することにより、第一チューブと第二チューブの当接面を誘電溶着するようにした請求項1に記載の段付きチューブの高周波誘電溶着装置。
それぞれが高分子樹脂材料からなり、小径の第一チューブの一端部を大径の第二チューブに嵌挿して第一及び第二チューブの重合わせ端部を高周波誘電溶着させる高周波誘電溶着方法であって、
前記第一チューブの一端部近傍の外周面を押圧して高周波電圧を印加する押圧面を有する第一電極と、前記第二チューブの重合わせ端部の外周面を押圧して高周波電圧を印加する押圧面を有する第二電極と、前記第一及び第二電極間に介装され、第一及び第二電極を電気的に絶縁させる絶縁板であって、前記第一及び第二チューブを重合わせたときに段状に形成される第二チューブの端面の全面に当接して取り付けられる側面と、前記第一チューブの一端部近傍の外周面を押圧する押圧面とを有する絶縁板と、前記第一電極と前記第二電極との間に高周波電圧を印加するための高周波電源と、を用い、
前記第一チューブの外周に第一電極と絶縁板のそれぞれの押圧面を当接し、
前記第二チューブの端面の全面に前記絶縁板の側面を当接し、
前記第二チューブの外周に第二電極の押圧面を当接し、
前記第一電極と前記第二電極に前記高周波電源装置を接続し、
前記高周波電源により前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加し、前記絶縁板で前記第二チューブの端面に対する前記第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止した状態で、
前記第一電極及び第二電極間の、前記第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内に、前記第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加し、
前記第一チューブと前記第二チューブを分子の極性が反転する誘電作用により発熱させて溶融し、
前記第一チューブと前記第二チューブが互いに融け合わさった後、冷却固化して互いを溶着させる、
ことを特徴とする高周波誘電溶着方法。
前記第二チューブの軸方向に、第二電極の隣に第二の絶縁板、第三電極、第三の絶縁板、第四電極を更に重ね、前記第二チューブの外周にこれら第二の絶縁板、第三電極、第三の絶縁板、第四電極のそれぞれの押圧面を押圧し、第二電極と第三電極の間、第三電極と第四電極の間にも高周波電圧を印加することにより、第一チューブと第二チューブの当接面を誘電溶着する、請求項4に記載の段付きチューブの高周波誘電溶着方法。
【背景技術】
【0002】
従来、医療用の一対の異径チューブを重ねた段付き部分や、点滴用容器の点滴用チューブ取り付け用の段付き部分を高周波誘電加熱して溶着する高周波誘電溶着装置、および高周波誘電溶着方法が知られている。
高周波誘電加熱は、有極性のプラスチックに高周波(高周波交番電圧)を印加すると、高周波の極性の変化に応じてプラスチックの分子の極が反転し続け、分子運動が活発となり発熱するというもので、ポリ塩化ビニル(PVC)などの熱可塑性樹脂が好適な材料とされている。そして実際に、
図14や
図17のように、熱可塑性樹脂を高周波誘電加熱して溶着している(例えば、特許文献1、参照)。
【0003】
図14では、第一チューブ21の左端に第二チューブ22を被せ、第二チューブ22の外周に、それぞれがブロック状又は板状の形状を持ち、紙面の上下に分割・合体自在に構成し、それぞれの重ね合わせ面に第一チューブ21と第二チューブ22を受容してこれに密着する断面半円形状の切欠部を備える、第一電極23a、23bと、絶縁板24a、24bと、第二電極25a、25bを当て、高周波電源26に第一電極23a、23bと第二電極25a、25bを接続している。ちなみに、高周波電源26では、例えば、第一電極23a、23bと第二電極25a、25bに10MHzから40MHzの高周波電流を通電する。
【0004】
図14において、高周波電源26により高周波で正極、負極が交番する高周波電流を、第一電極23a、23bと第二電極25a、25bの間に流すと、一方の電極から他方の電極に向けて交互に高周波電圧が印加される。そして、
図14の両端矢印付き点線のように絶縁板24a、24bの切欠部内側の第一チューブ21と第二チューブ22の分子の極が反転し続ける。
【0005】
絶縁板24a、24bの近傍にある第一チューブ21と第二チューブ22の中では高周波電流の誘電作用により、第一チューブ21と第二チューブ22の分子が正極と負極の極性反転を繰り返して発熱し、
図15の点線で示したハッチング領域29が溶融する。高周波電源26の通電を止めると、第一チューブ21と第二チューブ22のハッチング領域29は冷えて固まって溶着する。
【0006】
なお、
図14では、プラスチックの分子の極が反転するイメージを3つの両端矢印付き点線で示した。第一チューブ21と第二チューブ22の第一、第二電極が当接している表面に近い部分ではプラスチックの分子の極が反転するが、第一、第二電極から離れた部分はプラスチックの分子の極が反転しにくい。そのため、第二チューブ22の肉厚又は、第一チューブ21と第二チューブ22の肉厚が厚いと、第一チューブ21と第二チューブ22に第一、第二電極が当接している表面から離れたところでは発熱量は減る。
【0007】
極端な場合、第一電極23a、23bと第二電極25a、25bが当接している近傍の第二チューブ22は発熱、溶融、固化するが、第一電極23a、23bと第二電極25a、25bから離れている第一チューブ21は発熱も溶融もせず、第一チューブ21と第二チューブ22の当接した部分が溶着しないこともある。このような理由で、従来の高周波誘電溶着装置では、溶着できるチューブの肉厚、特に第二チューブの肉厚が薄いものに限られるという問題があった。
【0008】
また、特許文献1には、
図16、
図17のように、点滴用容器31の端部にチューブ32を設け、チューブ32に段付き継手37を溶着して、段付き継手37に点滴用チューブ38を嵌めるようにした例が示されている。この従来例では、
図17に高周波誘電溶着装置の概略断面を示したように、チューブ32の端面32aと段付き継手37の段付き部分の端面を突合せて、それぞれの外周に、紙面に向かって上下に分割・合体自在な第一電極33a、33bと、絶縁板34a、34bと、第二電極35a、35bを当て、高周波電源36から高周波電圧を印加する構成になっている。
【0009】
図17に示す溶着電極の組み付け状態で、高周波電源36に通電すると、第一電極33a、33bと第二電極35a、35bとの間に、交互に、絶縁板34の切欠部内側を
図17の両端矢印付き点線のように高周波電圧が印加され、プラスチックの分子の極が反転する。
図18A、18Bは、
図17のE部分を、発明理解のために拡大して示した拡大図である。なお、
図17ではプラスチックの分子の極が反転する向きを示すイメージを3つの両端矢印付き点線で示したが、
図18A、
図18Bは、一つの矢印付き点線を例に、プラスチックの分子の極の向きが、どの部材からどの部材に向けて反転するかを図示したものである。
【0010】
すなわち、高周波電源装置36によって、第一電極33aと第二電極35aの間に高周波電圧を印加すると、
図18Aのように、(S)第一電極33aから段付き継手37へプラスチックの分子の極が向き、(T)絶縁板34aの直下の段付き継手37からチューブ32へチューブの軸方向にプラスチックの分子の極が向き、(U)チューブ32から第二電極35aへとプラスチックの分子の極が向く。次に
図18Bのようにプラスチックの分子の極は逆方向に反転し、(U’)第二電極35aからチューブ32へ、(T’)絶縁板34aの直下のチューブ32から段付き継手37へチューブの軸方向に、そして(S’)段付き継手37から第一電極33aへとプラスチックの分子の極が向く。その後、高周波の極性の変化に応じてプラスチックの分子の極が反転し続ける。
【0011】
そして、段付き継手37とチューブ32ではチューブの軸方向に分子が極性反転を繰り返して発熱して溶融する。高周波電流の通電を止めると、段付き継手37とチューブ32が突き合わさっている部分が、
図19の点線を付けて示した領域39a、39bのよう固まって溶着する。
段付き継手37とチューブ32では、第一、第二電極が当接している表面に近い部分ではプラスチックの分子の極が反転するが、第一、第二電極から離れた部分はプラスチックの分子の極が反転しにくい。そのため、段付き継手37の段付き部分の端面とチューブ32の端面が突合せられている部分はプラスチックの分子が発熱するが、チューブ32と段付き継手37が半径方向に重なった部分は発熱量が減る。そのため、
図17の例では、第一、第二電極が当接している表面に近い部分チューブ32の端面と段付き継手37の段付き部分の端面が突合せられている突合せ面と近傍部分を溶着して必要な強度を得るようにしている。
【0012】
ちなみに、
図19Aは、チューブ32と段付き継手37を溶着したときの断面図、
図19Bは、チューブ32に溶着した段付き継手37の他端に、他のチューブ38を嵌めた状態を示している。他のチューブ38を嵌める側の段付き継手37の端面の形状は変形していないので、他のチューブ38と段付き継手37の端面は良好に密着できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図。
【
図2】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した左側面図。
【
図3】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の下側電極部分と上側電極部分とを離し、両者の間に一部を重ねた第一チューブと第二チューブを示し、互いの位置関係を示した分解断面図。
【
図4】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置で、段付きチューブの上下の外周面に上側電極と下側電極をそれぞれ当接させ、高周波電圧を印加している状態を示した図。
【
図5A】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の
図4のD部分の拡大図。
【
図5B】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の
図4のD部分の拡大図であり、別の電圧印加状態を示した図。
【
図6A】発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置で溶着した段付きチューブの断面図。
【
図6B】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置で溶着した段付きチューブに他のチューブを嵌めた状態を示した断面図。示した図。
【
図7A】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の変形例を示し、
図4のD部分に対応する類似の拡大図。
【
図7B】本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の別の変形例を示し、
図4のD部分に対応する類似の拡大図。
【
図8】本発明の実施形態2に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図。
【
図9】本発明の実施形態2に係る高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着したチューブの断面図。
【
図10】本発明の実施形態3に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図。
【
図11】本発明の実施形態3に係る高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着したチューブの断面図。
【
図12】本発明の実施形態4に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図。
【
図13】本発明の実施形態5に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図。
【
図14】従来の高周波誘電溶着装置で、段付きチューブの上下の外周面に上側電極と下側電極をそれぞれ当接させ、高周波電圧を印加している状態を示した図。
【
図15】従来の高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着した段付きチューブの断面を示した図。
【
図16】従来の点滴用容器と、段付き継手と、点滴用チューブの位置関係を示した分解斜視図。
【
図17】従来の高周波誘電溶着装置で、点滴用容器端チューブの上下の外周面と段付き継手の上下の外周面に第一電極と第二電極をそれぞれ当接させ、高周波電圧を印加している状態を示した図。
【
図18B】従来の高周波誘電溶着装置の
図17のE部分の拡大図であり別の電圧印加状態を示した図。
【
図19A】従来の高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着した段付きチューブの断面を示した図。
【
図19B】従来の高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着した段付きチューブに他のチューブを嵌めた状態を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
実施形態1では、外径が小径、言い換えれば細い第一チューブの一端部を、内径が第一チューブと実質的に同径で、外径が第一チューブより大径、言い換えれば太い第二チューブに嵌挿して両チューブの端部を重ね合わせ、当該重合わせ端部に形成される第二チューブの端面を段部の端面とした段付きチューブを例に、かかる段付きチューブの重合わせ端部をチューブの半径方向に高周波誘電溶着する高周波誘電溶着装置を説明する。
【0021】
図1は、実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図であり、
図2は、実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した左側面図である。
実施形態1に係る高周波誘電溶着装置は、
図1に示したように、細い第一チューブ1の一端に第二チューブ2を重ねた段付きチューブを高周波誘電溶着する高周波誘電溶着装置であって、この実施形態1では、図面上、上下に分割される、分割ブロック型電極及び分割型絶縁板が使用され、詳細は後述するように各電極及び絶縁板の合わせ面には、チューブを密着して収容する切欠部(押圧面)が形成されている。
【0022】
より具体的には、実施形態1の溶着装置は、細い第一チューブ1の外周面を押圧する押圧面3a1、3b1をそれぞれ有する第一電極3a、3bと、同じく細い第一チューブ1の外周面を押圧する押圧面4a1、4b1をそれぞれ有する、L字型断面をした絶縁板4a、4bと、第二チューブ2の外周面を押圧する押圧面5a1、5b1をそれぞれ有する第二電極5a、5bを備えている。絶縁板4a、4bは、それぞれの側面4a2、4b2に第二チューブ2の端面2aの全面を当接させ、
図1において、第二電極5aの上方に給電板6と給電端子部6aを配置し、第一電極3bの下方にアース板7を配置している。そして、L字型断面をした絶縁板4aと4bをL字の水平部分を互いに反対側に延ばした形で配置し、絶縁板4aは、給電板6と第一電極3a、3bを絶縁し、絶縁板4bは、アース板7と第二電極5a、5bを絶縁している。
【0023】
そして、第一電極3a、3bと第二電極5a、5bは、それぞれ上下方向に分割、合体自在として、
図2に示す接続板3cで第一電極3aと3bを電気的に接続し、
図2に示す接続板5cで第二電極5aと5bを電気的に接続している。すなわち、第一電極3a、3bは、アース板7と電気的に接続されており、第二電極5a、5bは、給電板6に電気的に接続されている。そして、給電板6とアース板7に高周波電源装置Pを接続している。なお、
図1のプラス(+)、マイナス(−)の記号は、発明理解のために正極、負極を示す記号として示した。
【0024】
第二チューブ2の先端の外直径及び内直径は、後述する
図6A、
図6Bのように、細い第一チューブ1に嵌められる他のチューブ10のそれらと同じにしてある。第二チューブ2の先端の端面2aは、絶縁板4a,4bの側面4a2、4b2や他のチューブ10の端面10aに当接する平面に仕上げられている。
図3は、本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の下側電極部分と上側電極部分とを離し、両者の間に一部を重ねた第一チューブと第二チューブを示し、互いの位置関係を示した分解断面図である。
【0025】
溶着作業を開始するときは、下側電極部分に第一チューブ1の一端部を第二チューブ2に嵌挿してこれらを重ねた段付きチューブをA矢印のように載せ、上側電極部分をB矢印のように被せて、下側電極部分と上側電極部分とを一体に組み合わせる。このとき、各電極の押圧面がチューブ1,2の外周面を押圧し、電極がチューブの外周面に密着するように取り付けられ、チューブ重合わせ部の均一な溶着性能が確保されるようにしている。電極をこの様に組み付けた後、給電板6とアース板7に高周波電源装置Pから高周波電圧を印加する。
【0026】
図4は、本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置で、段付きチューブの上下の外周面に上側電極部分と下側電極部分をそれぞれ当接させ、高周波電流を通電している状態を示した図である。
図5A、
図5Bは、本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の
図4のD部分を発明理解のために拡大して示した拡大図である。
図5A、
図5Bは、高周波電圧を印加する向きを逆に示して、タイミングにより交互に極性が反転することを示した。なお、
図4では、プラスチックの分子の極が反転する向きを示すイメージを3本の点線矢印で示したが、
図5A、
図5Bは、一つの矢印付き点線を例に、プラスチックの分子の極の向きが、どの部材からどの部材に向けて反転するかを説明した。
【0027】
高周波電源装置Pによって、給電板6とアース板7の間に高周波電圧を印加すると、
図5Aのように、(a)第一電極3aから第一チューブ1へプラスチックの分子の極が向き、(b)絶縁板4aの直下の第一チューブ1でチューブの軸方向にプラスチックの分子の極が向き、(c)第一チューブ1から第二チューブ2へチューブの半径方向にプラスチックの分子の極が向き、(d)第二チューブ2から第二電極5aへプラスチックの分子の極が向く。そして
図5Bのようにプラスチックの分子の極は逆方向に反転し、(d’)第二電極5aから第二チューブ2へ、(c’)第二チューブ2から第一チューブ1へチューブの半径方向に、(b’)絶縁板4の直下の第一チューブ1でチューブの軸方向に、そして(a’)第一チューブ1から第一電極3aへとプラスチックの分子の極が向く。その後、高周波の極性の変化に応じてプラスチックの分子の極が反転し続ける。
【0028】
そして、高周波電流の誘電作用により、第一チューブ1と第二チューブ2の内部の分子が正極と負極の極性反転を繰り返して発熱して溶融する。
高周波電流の通電を止めると、第一チューブ1と第二チューブ2のチューブの半径方向に重なっている部分が、
図6A、
図6Bの点線を付けて示した領域9のように固まって溶着する。
【0029】
本願発明では、高周波電源により第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加したときに、絶縁板で第二チューブの端面に対する第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止するようにしたこと、そして第一電極及び第二電極間の、第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内で半径方向に、第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加するようしたことに特徴がある。
【0030】
そして、本発明によれば、第一チューブ1の先端の外周面1bは第一電極3a、3bの押圧面に押圧されて全周が均一に当接していて円筒形が保たれ、第二チューブ2の先端の端面2aは絶縁板4a、4bに当接していて平面が保たれ、第二チューブ2の先端の外周面2bは第二電極5a、5bに当接していて円筒形が保たれ、溶着時の加熱にも元の形が変形せずに保たれる。
【0031】
図6Aの右側から、二点鎖線の仮想線で示した他のチューブ10を第一チューブ1に嵌めて軸方向に押していくと、
図6Bに示したように、チューブ10の端面10bが第二チューブ2の先端面2aの平面に当接する。
本発明によれば、チューブの外周面や端面を電極及び絶縁板で拘束した状態で誘電溶着するので、段付き部分の外形の変形が防止される。第一チューブの外周面1bが溶着時の加熱による変形が防止されるため、段付き部分の外形と他のチューブ10は、良好に密着して結合させることができる。
【0032】
繰り返しの説明になるが、本発明によれば、第一チューブ1と第二チューブ2のチューブの半径方向に重なっている部分(重合わせ端部)で、高周波電圧をチューブの半径方向に印加し、高周波電流の誘電作用により、第一チューブ1と第二チューブ2の内部の分子が正極と負極の極性反転を繰り返して発熱して溶融させ、互いに溶着させている。
そして、第一チューブ1と第二チューブ2の肉厚の厚さに左右されずに所定の強度で溶着することを可能にしている。
【0033】
また、第一チューブ1と第二チューブ2の段付き部分の形状を変形させないようにしている。
なお、本発明に係る実施形態1では、第一チューブ1の外周面1bに第一電極3a、3bと絶縁板4a、4bのそれぞれの押圧面を当接させ、絶縁板4a、4bの側面に第二チューブ2の端面2aの全面に当接させ、第二チューブの外周面2bに第二電極の押圧面を当接させる構成を要件としているが、第一電極の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径と、前記絶縁板の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径は同じ直径であってもよいし、
図7Aや
図7Bの本発明の実施形態1に係る高周波誘電溶着装置の変形例のように異なっていてもよい。
【0034】
図7Aでは、第一電極の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径が絶縁板の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径より大きく、
図7Bでは、第一電極の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径が絶縁板の押圧面が当接する第一チューブの外周の直径より小さいが、このように第一チューブの外周の直径が途中で変わったとしても、高周波電流の流れ方は、
図5Aと
図5Bと変わらないからである。
【0035】
また、本発明は割型タイプの電極を使用している。そのため、誘電溶着前にチューブに電極を通し、誘電溶着後にチューブから電極を取り外す、という時間のかかる作業が不要なので、溶着作業のタクトタイムを短縮することができる。
(実施形態2)
実施形態2では、第二チューブ12の先端側外周面の形状を先に向かって半径が順次小さくなる円錐台形にしている。
図8は、本発明の実施形態2に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図である。なお、図において、先に説明した実施態様1と類似の構成要素、部材、部分等であって、作用効果が容易類推することができるものには、同じ符号を付して説明を省略する(以下、同様)。
【0036】
図8で、第二チューブ12の先端部12bは円錐台状に細くなっていて、先端の外径は、細い第一チューブ1に嵌められる他のチューブ13の外経と同じにしてある。また第二チューブ12の先端面12aは、絶縁板4aの側面や他のチューブ13の端面13aに当接する平面に仕上げられている。
図8で、図示しない高周波電源Pから高周波電圧を第一電極3a、3b及び第二電極5c、5dに印加すると、第一電極3a、3bから第一チューブ1へプラスチックの分子の極が向き、そして絶縁板4a、4bの直下の第一チューブ1でチューブの軸方向にプラスチックの分子の極が向き、絶縁板4a、4bの直下をくぐると、第一チューブ1から第二チューブ12へチューブの半径方向にプラスチックの分子の極が向き、次いで第二チューブ12から第二電極5c、5dへプラスチックの分子の極が向く。そしてプラスチックの分子の極は逆方向に反転し、第二電極5c、5dから第二チューブ12へ、そして第二チューブ12から第一チューブ1へチューブの半径方向に、絶縁板4a、4bの直下をくぐって、第一チューブ1から第一電極3a、3bへとプラスチックの分子の極が向く。その後、高周波の極性の変化に応じてプラスチックの分子の極が反転し続ける。
【0037】
そして、高周波電流の誘電作用により、第一チューブ1と第二チューブ12の内部の分子が正極と負極の極性反転を繰り返して発熱して溶融する。高周波電流の通電を止め、高周波電圧の印加を止めると、第一チューブ1と第二チューブ12が重なった部分が、
図9の点線を付けて示したハッチング領域9aのよう固まって溶着する。
本願発明の実施形態2でも、高周波電源により第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加したときに、絶縁板で第二チューブの端面に対する第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止するようにしたこと、そして第一電極及び第二電極間の、第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内で半径方向に、第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加するようしたことは、実施形態1と同じである。
【0038】
なお、
図9は、本発明の実施形態2に係る高周波誘電溶着装置で高周波誘電溶着したチューブの断面図を示した図であり、本願発明の実施形態2によれば、
図9のように、第二チューブ12の先端の外周面12bは第二電極5c、5dに当接していて円錐形が保たれ、先端の端面12aは絶縁板4a、4bに当接していて平面が保たれ、第一チューブ1の外周面1bは第一電極3a、3bに当接していて円筒形が保たれ、誘電溶着の加熱にも拘わらず元の形が変形せずに保たれている。
【0039】
図9の右側から、二点鎖線の仮想線で示した他のチューブ13を第一チューブ1の端部外周1bに嵌めて軸方向に押していくと、チューブ13の端面13aが第二チューブ12の先端面12aの平面に当接する。誘電溶着しても段付き部分の外形が変形していないため、段付き部分の外形と他のチューブ13は、良好に密着する。
本発明の実施形態2では、第二チューブ12の先端は円錐台状に先端が細くなっていて、先端12aの外径は、細い第一チューブ1に嵌められる他のチューブ13の外経と同じにしてあるので、チューブの外形が滑らかに推移して、見た目に美しく、曲げ力が働いてもしなやかに曲がるという利点がある。
(実施形態3)
実施形態3では、第二チューブ14の先端側外周面の形状を先に向かって半径が段階的に小さくなる形、つまり円筒を積み重ねた形にしている。
図10は、本発明の実施形態3に係る高周波誘電溶着装置の概略構成を示した断面図である。
図11は、本発明の実施形態3に係る高周波誘電溶着装置で、高周波誘電溶着したチューブの断面図である。
【0040】
図10で、第二チューブ14の先端部は段階的に細くなっていて、先端14aでの外径は、細い第一チューブ1の外周面1bに嵌められる他のチューブ13の外経と同じにしてある。そのため、第二チューブ14の先端面14aは、絶縁板4aの表面に当接する。
図10で、図示しない高周波電源Pから高周波電圧を印加すると、第一電極3a、3bから第一チューブ1へプラスチックの分子の極が向き、そして絶縁板4a、4bの直下の第一チューブ1でチューブの軸方向にプラスチックの分子の極が向き、絶縁板4a、4bの直下をくぐると、第一チューブ1から第二チューブ14へ半径方向にプラスチックの分子の極が向き、次いで第二チューブ14から第二電極5e、5fへプラスチックの分子の極が向く。
【0041】
そしてプラスチックの分子の極は逆方向に反転し、第二電極5e、5fから第二チューブ14へ、第二チューブ14から第一チューブ1へ半径方向に、絶縁板4a、4bの直下をくぐって、第一チューブ1から第一電極3a、3bへとプラスチックの分子の極が向く。その後、高周波の極性の変化に応じてプラスチックの分子の極が反転し続ける。
そして、高周波電流の誘電作用により、第一チューブ1と第二チューブ14の内部の分子が極性反転を繰り返して溶融する。高周波電流の通電を止め、高周波電圧の印加を止めると、第一チューブ1と第二チューブ14の重なった部分では、
図11の点線を付けて示したハッチング領域9bのよう固まって溶着する。
【0042】
本願発明の実施形態3でも、高周波電源により第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加したときに、絶縁板で第二チューブの端面に対する第一電極及び第二電極間に印加した高周波電圧を阻止するようにしたこと、そして第一電極及び第二電極間の、第一チューブ及び第二チューブの重合わせ端部内で半径方向に、第一電極及び第二電極間に高周波電圧を印加するようしたことは、実施形態1と同じである。
【0043】
本願発明の実施形態3では、第二チューブ14の先端の外周面14bは第二電極5e、5fに当接していて円筒形が保たれ、先端の端面14aは絶縁板4a、4bに当接していて平面が保たれ、第一チューブ1の外周面1bは第一電極3a、3bに当接していて円筒形が保たれる。その結果、元の形が変形せずに保たれる。
図11の右側から、二点鎖線の仮想線で示した他のチューブ13を第一チューブ1に嵌めて軸方向に押していくと、チューブ13の端面13aが第二チューブ14の先端面14aの平面に当接する。誘電溶着しても段付き部分の外形が変形していないため、段付き部分の外形と他のチューブ13は、良好に密着する。
【0044】
本発明の実施形態3では、第二チューブ14の先端部は段階的に先端が細くなっていて、先端の外径は、細い第一チューブ1に嵌められる他のチューブ13の外経と同じにしてあるので、チューブの外形が段階的に推移していて、曲げ力が働いてもしなやかに曲がるという利点がある。
(実施形態4)
なお上記実施形態では示さなかったが、本発明により、点滴用容器の点滴用チューブ取り付け用の段付き部分を形成するときに、段付き継手の代わりにストレートなチューブを用いて点滴用容器に溶着して形成することもできる。
【0045】
図12は、本発明の実施形態4を示した、点滴用容器の点滴用チューブ取り付け用の段付き部分を形成するための高周波誘電溶着装置の概略断面図である。第一チューブ11の外周面に第一電極33a、33bの押圧面と絶縁板34a、34bの押圧面を当接し、絶縁板34a、34bの側面を点滴用容器のチューブ32の端面に当接し、第二電極35a、35bの押圧面を点滴用容器のチューブ32の外周面に当接して、高周波電源36から高周波電圧を第一電極33a、33b及び第二電極35a、35bに印加して、第一チューブ11と点滴用容器のチューブ32を溶融し、高周波電圧の印加を止めて、第一チューブ11と点滴用容器のチューブ32の重なつた部分をチューブの半径方向に溶着している。
【0046】
本発明の実施形態4では、
図16、
図17で示した従来例のように段付き継手を用いずに誘電溶着しても段付き部分の外形が変形していないため、段付き部分の外形と他のチューブ38は、良好に密着する。
(実施形態5)
なお実施形態5として、段付きチューブの段部から軸方向に一定の長さの範囲を誘電溶着する高周波誘電溶着装置を説明する。
【0047】
図13は、本発明の実施形態5の段付きチューブの段部から軸方向に一定の長さの範囲を誘電溶着する高周波誘電溶着装置の要部の概略断面図を示している。
図13では、実施形態1から4で説明した第一電極3a、3b、絶縁板4a、4b、第二電極5a、5bに加えて、第二電極5a、5bの左隣に第二の絶縁板4c、4d、第三電極3c、3d、第三の絶縁板4e、4f、第四電極5c、5dがチューブの軸方向に重ねられている。
【0048】
図13で、絶縁板4a、4bの側面に第二チューブ2の端面を当接させているのは、実施形態1から4と同じであるが、細い第一チューブ1の外周1bを押圧しているのは第一電極3a、3bと絶縁板4a、4bだけであり、第二電極5a、5b、第二の絶縁板4c、4d、第三電極3c、3d、第三の絶縁板4e、4f、第四電極5c、5dは、太い第二チューブ2の外周2bを押圧している。
【0049】
なお、第一電極3a、3bと第三電極3c、3dは接続部材3eで電気的に接続し、第二電極5a、5bと第四電極5c、5dは接続部材5eで電気的に接続している。このことにより、高周波電源装置Pから、給電部6a、給電板6、第四電極5c、5d、第三電極3c、3d、第二電極5a、5b、第一電極3a、3b、アース板7へ、そしてその逆方向へと高周波電圧が印加されるように構成されている。
【0050】
段付きチューブの段部で、細い第一チューブ1の外周1bを第一電極3a、3bと絶縁板4a、4bが押圧しているため、第一チューブ1と第二チューブ2の半径方向に高周波電圧が印加され、第一チューブ1と第二チューブ2の重なっている当接面同士が誘電発熱して溶着することは、実施形態1から4で説明したのと同じである。
実施形態5では上記に加えて、第二電極5a、5bと第三電極3c、3dの間、そして第三電極3c、3dと第四電極5c、5dの間でも高周波電圧を印加するようにしている。そのため、チューブの軸方向について第二電極5a、5bと第三電極3c、3dの間、そして第三電極3c、3dと第四電極5c、5dの間でも、第一チューブ1と第二チューブ2の半径方向に高周波電圧が印加される。
【0051】
第二電極5a、5bと第三電極3c、3dの間、そして第三電極3c、3dと第四電極5c、5dの間でも高周波電圧が印加されると、チューブの軸方向について第二電極と第三電極の間、そして第三電極と第四電極の間でも誘電溶着される。そのため、段付きチューブの段部の段部近傍だけでなく、段付きチューブの段部から軸方向に一定の長さの範囲を誘電溶着することができる。
図13では、誘電溶着範囲を太線で強調して例示した。
【0052】
実施形態5では、段付きチューブの段部から軸方向に一定の長さの範囲を誘電溶着することができるので、第一チューブと第二チューブの溶着強度が大きくなる効果がある。なお、必要により電極数を増やすことにより、チューブの軸方向に誘電溶着範囲を拡大することができる。