【実施例】
【0090】
つぎに、本発明の実施例について説明する。ただし、本発明は、下記実施例により制限されない。市販の試薬は、特に示さない限り、それらのプロトコールに基づいて使用した。
【0091】
[実施例1]
以下に示す合成例により、MK4を調製した。
【0092】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、質量分析装置(API2000、販売元:Applied Biosystems社製)を用い、ポジティブイオンモードまたはネガティイオンモードで実施した。
1H NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(JNM-ECS400、JEOL社製)を用い、取得した。化学シフトは、内部標準であるテトラメチルシラン(Me
4Si)に対する相対値δ(ppm)として表される。イオン交換クロマトグラフは、クロマトグラフシステム(ECONO system、Bio-Rad社製)を用いて実施した。前記イオン交換クロマトグラフでは、diethylaminoethyl(DEAE)A-25-Sephadex(Amershambiosciences社製)を充填したガラスカラム(φ25×500mm)を使用した。
【0093】
(合成例1)MK1の合成
【化7】
【0094】
AZ6(290mg、9.06×10
−4mol)を真空乾燥させ、dry−DMF(N,N−ジメチルホルムアミド、3mL)に溶かした。これにHOBt・H
2O(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール・一水和物、176mg、1.15×10
−5mol、1.2eq.)、PyBOP(登録商標)(ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム、579mg、1.15×10
−5mol、1.2eq.)、およびDIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン、4.6mL、2.72×10
−2mol、30eq.)を加え、さらにdry−DMF(1mL)に溶かしたNK1(493mg、9.48×10
−4mol、1.1eq.)を加え、撹拌した。前記攪拌開始40分後において、減圧留去し、残渣を水に溶かし、吸引ろ過で沈殿物を回収した。ろ液を逆相カラムクロマトグラフで粗精製した後、ろ物と共にカラムクロマトグラフで精製し、MK1を得た。MK1の物性値を以下に示す。
収量:261mg 収率:60%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 481.2, calculated for [(M+H)+] = 481.2
found = 503.1, calculated for [(M+Na)+] = 503.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.22 (1H, m), 8.11 (1H, s), 8.10 (1H, s), 7.87 (1H, s), 7.63 (1H, d), 6.52 (1H, q), 6.35 (1H, d), 5.27 (1H, s), 3.82 (1H, m), 2.18 (1H, m)
【0095】
(合成例2)MK2の合成
【化8】
【0096】
MK1(108mg、2.25×10
−4mol)を真空乾燥させ、Ar(アルゴン)で置換した。つぎに、dry−DMFで2回(1回目:40mL、2回目:4mL)、およびdry−MeCN(アセトニトリル)で3回(1回目:9mL、2回目:5mL、3回目:5mL)共沸した。dry−Trimethyl phosphate(6mL)で懸濁させた後、dry−Tributhyl amine(130μL、5.44×10
−4mol、2.5eq.)を加えた。そして、氷冷下でPhosphoryl chloride(42μL、4.50×10
−4mol、2eq.)を加え、撹拌した。前記攪拌開始40分後において、再びdry−Tributhyl amine(250μL、1.05×10
−3mol、5eq.)およびPhosphoryl chloride(84μL、4.50×10
−4mol、4eq.)を加え、氷冷下で1時間撹拌した。前記撹拌後、冷1mol/L TEAB(Triethylammonium bicarbonate) buffer(5mL)を加え、5分間撹拌し、クエンチした。そして、減圧留去し、Etherで結晶化させ、吸引ろ過し、黄色固体を得た。前記固体を水に溶かし、陰イオン交換カラムクロマトグラフで精製し、凍結乾燥させ、MK2を得た。MK2の物性値を以下に示す。
収量:30.0μmol 収率:13.4%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 559.1, calculated for [(M-H)-] = 559.2
【0097】
(合成例3)MK3の合成
【化9】
【0098】
MK2(30.03μmol)を真空乾燥させ、dry−Pyridine(10mL)で3回共沸し、一晩真空乾燥させた。前記乾燥後、Arで置換し、dry−DMF(2mL)およびdry−TEA(トリエチルアミン、28μL、1.98×10
−4mol、6.6eq.)で溶かした。さらに、Imidazole(16mg、14.02×10
−4mol、4eq.)、2,2’−Dithiodipyridine(17mg、7.72×10
−4mol、1.6eq.)、およびTriphenylphosphine(20mg、7.63×10
−4mol、1.6eq.)を加え、室温で撹拌した。前記攪拌開始6.5時間後、得られた反応液を、Sodium perchlorate(39mg、3.19×10
−4mol、10eq.)をdry−Acetone(18mL)、dry−Ether(27mL)、およびdry−TEA(2mL)で溶かした溶液に加え、前記添加後4℃で30分静置した。そして、沈殿物をdry−Ether(12mL)で5回デカンテーションした。これを真空乾燥させ、MK3をクルードとして得た。
理論収量:30.03μmol
【0099】
(合成例4)MK4の合成
【化10】
【0100】
MK3(30.03μmol)を真空乾燥させ、Arで置換し、dry−Pyridine(5mL)で2回共沸した後、dry−DMF(1mL)で懸濁させた。これにdry−n−Tributylamine(30μL、1.25×10
−4mol、4eq.)および0.5mol/L n−Tributylamine pyrophosphate in DMF(310μL、1.53×10
−4mol、5eq.)を加え、室温で撹拌した。前記攪拌開始6.5時間後、1mol/L TEAB buffer(5mL)を加え、30分間撹拌し、減圧留去した。これに水を加え、Etherで2回分液し、水層を陰イオン交換カラムクロマトグラフで精製し、凍結乾燥することでMK4を得た。MK4の物性値を以下に示す。
収量:3.33μmol 収率:11.1%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 719.0, calculated for [(M-H)-] = 719.1
【0101】
[実施例2]
以下に示す合成例により、NG7を調製した。
【0102】
エレクトロスプレーイオン化質量分析(ESI−MS)は、質量分析装置(API2000、販売元:Applied Biosystems社製)を用い、ポジティブイオンモードまたはネガティイオンモードで実施した。
1H NMRスペクトルは、核磁気共鳴装置(JNM-ECS400、JEOL社製)を用い、取得した。化学シフトは、内部標準であるテトラメチルシラン(Me
4Si)に対する相対値δ(ppm)として表される。イオン交換クロマトグラフは、クロマトグラフシステム(ECONO system、Bio-Rad社製)を用いて実施した。前記イオン交換クロマトグラフでは、diethylaminoethyl(DEAE)A-25-Sephadex(Amershambiosciences社製)を充填したガラスカラム(φ25×500mm)を使用した。
【0103】
(合成例1)NH1の合成
【化11】
【0104】
Ethylendiamine(7mL、105mmol、1eq.)を溶かしたCHCl
3(120mL)に、tert-butyl dicarbonate(5g、22.9mmol、0.2eq.)を溶かしたCHCl
3(20mL)を、撹拌しながら滴下した。前記滴下から24時間後、吸引ろ過し、ろ液を減圧留去し、NH1を得た。NH1の物性値を以下に示す。
収量:3.573g 収率:97.4%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found= 161.4, calculated for [(M+H)+] = 161.1
1HNMR(400 MHz, CDCl3) δ3.13 (2H, q) 2.76 (2H, t) 1.41 (9H, s)
【0105】
(合成例2)NG1の合成
【化12】
【0106】
2,6-Dichloropurine(1000mg、5.29×10
−3mol、1.0eq.)をAr(アルゴン)置換し、水酸化ナトリウム水溶液(10.6mL、2.12×10
−2mol、2N)に溶かした後、90℃で還流させ、反応を行った。前記反応後、室温に戻し、吸引ろ過した。得られたろ物を回収し、最小量の水に溶かし、pHを3〜4に調製し、析出したろ物を吸引ろ過で回収することで、NG1を得た。NG1の物性値を以下に示す。
収量:720mg 収率:79%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 171.0, calculated for [(M+H)+] = 171.0
found = 193.1, calculated for [(M+Na)+] = 193.0
found = 209.1, calculated for [(M+K)+] = 209.0
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 169.0, calculated for [(M-H)-] = 518.0
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.29 (1H, s)
【0107】
(合成例3)NG2の合成
【化13】
【0108】
NG1(870mg、5.10×10
−3mol)およびNH1(3.281g、2.05×10
−2mol, 4eq.)を、それぞれ真空乾燥させた後、Ar置換した。NG1をMethoxyethanol(5mL)で懸濁させ、NH1をMethoxyethanol(1mL)に溶解させた。得られたNH1の溶液をNG1の入っているナスフラスコへ移し、130℃で還流させ、反応を行った。前記反応後、室温に戻し、減圧留去した。さらに、クロロホルムで再沈後、吸引ろ過し、ろ物を回収することで、NG2を得た。NG2の物性値を以下に示す。
収量:1.117mg 収率:74%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 171.0, calculated for [(M+H)+] = 171.0,
found = 193.1, calculated for [(M+Na)+] = 193.0,
found = 209.1, calculated for [(M+K)+] = 209.0,
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 169.0, calculated for [(M-H)-] = 518.0
1HNMR (400 MHz, CD3OD) δ7.73 (1H, s), 3.45 (2H, m), 3.30 (2H,s), 1.39 (9H, s)
【0109】
(合成例4)NG3の合成
【化14】
【0110】
NG2(500mg、1.70×10
−3mol)を、メタノール(3mL)で懸濁し、Trifluoroacetate(15mL)を加え、室温で撹拌し、反応を行った。前記反応後、減圧留去し、Etherで懸濁させた後、吸引ろ過し、ろ物を回収することで、NG3を得た。NG3の物性値を以下に示す。
収量:467mg 収率:89.1%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 195.1, calculated for [(M+H)+] = 195.1,
found = 217.2, calculated for [(M+Na)+] = 217.1,
found = 233.0, calculated for [(M+K)+] = 233.1
1HNMR (400 MHz, D2O) δ7.83 (1H, s), 3.55 (2H, t), 3.11 (2H, t)
【0111】
(合成例5)NG4の合成
【化15】
【0112】
ナスフラスコAに、(E)−5−(2−Carboxyrinyl)−2’−deoxyuridine(101mg、3.39×10
−4mol)と撹拌子とを入れた。また、ナスフラスコBに、NG3(171mg、4.12×10
−4mol、1.2eq.)と撹拌子とを入れた。そして、ナノフラスコAおよびBについて、それぞれ、真空乾燥させた。つぎに、ナスフラスコAをAr置換し、HOBt・H
2O(68mg、4.44×10
−4mol、1.3eq.)およびPyBOP(登録商標)(ヘキサフルオロリン酸(ベンゾトリアゾール−1−イルオキシ)トリピロリジノホスホニウム、229mg、4.40×10
−4mol、1.3eq.)を加え、dry−DMF(N,N−ジメチルホルムアミド、1mL)で溶解した。さらに、ナスフラスコBをAr置換し、DRY−dmf(0.5mL)で溶かした。ナスフラスコAおよびBに、DIPEA(N,N−ジイソプロピルエチルアミン、ナスフラスコA:0.79mL、4.51×10
−3mol、13.3eq.、ナスフラスコB:0.79mL、4.51×10
−3mol、6.7eq.)をそれぞれ加えた後、ナスフラスコBの中身をナスフラスコAに素早く加え、室温で撹拌し、反応を行った。前記反応後、減圧留去し、CDCl
3(重水素化クロロホルム)で懸濁した。さらに、得られた懸濁液をソニケーションし、ろ過した。得られたろ物を回収後、MeOHで懸濁し、さらに、ソニケーション後、ろ過した。得られたろ物を回収することで、NG4を得た。NG4の物性値を以下に示す。
収量:147mg 収率:91%
ESI-MS (positive ion mode) m/z, found = 475.1, calculated for [(M+H)+] = 475.2,
found = 497.2, calculated for [(M+Na)+] = 497.2,
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 473.1, calculated for [(M-H)-] = 473.2
1HNMR (400 MHz, DMSO-d6) δ8.27 (1H, s), 8.20 (1H, s), 7.10 (1H,s), 7.05 (1H, s), 6.13 (1H, t), 5.25 (1H, d), 5.16 (1H, m), 4.09 (1H, m), 3.79 (1H, m), 3.60 (2H, m), 3.16 (2H, d), 2.14 (2H, m)
【0113】
(合成例6)NG5の合成
【化16】
【0114】
NG4(101mg、2.13×10
−4mol)を真空乾燥後、Ar下、dry−Pyridine(30mL)で2回共沸した。つぎに、dry−Trimetyl phosphate(21mL)で懸濁後、氷浴下でPhosphoryl chloride(400μL、4.29×10
−3mol、20eq.)を加え、2.5時間撹拌した。前記撹拌後、Phosphoryl chloride(200μL、2.15×10
−3mol、10eq.)を追加し、8.5時間撹拌した。その後、冷水10mLを加えクエンチし、10分間撹拌した。TEA(トリエチルアミン、2.7mL、1.94×10
−2mol、90eq.)を加え、15分程撹拌した。そして、減圧留去後、EtherおよびMeCN(アセトニトリル)で結晶化させ、ろ過することにより、黄色沈殿物を回収した。得られた黄色沈殿物を水に溶かし、陰イオン交換カラムクロマトグラフにより精製し、凍結乾燥させることでNG5を得た。NG5の物性値を以下に示す。
収量:41.49μmol 収率:19.5%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 553.1, calculated for [(M-H)-] = 553.1
【0115】
(合成例7)NG6の合成
【化17】
【0116】
NG5(78.65μmol)を真空乾燥後、dry−Pyridine(5mL)で3回共沸し、さらに一晩真空乾燥させた。前記乾燥後、これをArで置換し、dry−DMF(2mL)およびdry−TEA(72μL、5.19×10
-4mol、4eq.)で溶かし、さらに、Imidazole(24mg、3.53×10
−4mol、4eq.)、2,2‘−Dithiodipyridine(29mg、1.32×10
−4mol、1.6eq.)、およびTriphenylphosphine(36mg、1.37×10
−4mol、1.6eq.)を加えて室温で撹拌した。前記攪拌開始後8時間において、反応液を、Sodium perchlorate(97mg、7.92×10
−4mol、10eq.)をdry−Acetone(18mL)、dry−Ether(27mL)、およびdry−TEA(2mL)で溶かした溶液に入れ、4℃で30分静置した。前記静置後、沈殿物をdry−Ether(12mL)で5回デカンテーションした。デカンテーション後の沈殿物を真空乾燥させ、NG6をクルードとして得た。
理論収量:78.65μmol
【0117】
(合成例8)NG7の合成
【化18】
【0118】
真空乾燥させたNG6(78.65μmol)を、Arで置換し、dry−Pyridine(5mL)で2回共沸した後、dry−DMF(1mL)で懸濁した。つぎに、得られた懸濁液に、dry−n−Tributylamine(75μL、3.15×10
−4mol、4eq.)および0.5mol/L n−Tributylamine pyrophosphate in DMF(0.8mL、3.93×10
−4mol、5eq.)を加え、室温で撹拌した。前記攪拌開始後9時間において、1mol/L TEAB(Triethylammonium bicarbonate) buffer(5mL)を加えた後、30分撹拌し、減圧留去した。これに水を加え、Etherで2回分液後、水層を陰イオン交換カラムクロマトグラフおよび逆相カラムクロマトグラフを用いて精製し、凍結乾燥することで、NG7を得た。NG7の物性値を以下に示す。
収量:19.55μmol 収率:24.9%
ESI-MS (negative ion mode) m/z, found = 712.9, calculated for [(M-H)-] = 713.1
【0119】
[実施例3]
本例では、配列番号1〜21のアプタマーについて、sIgAに対する結合能および動態パラメータを、SPRにより確認した。
【0120】
(1)アプタマー
下記ポリヌクレオチドを合成し、実施例のアプタマーとした。配列番号1〜4のアプタマー(以下、「MK4アプタマー」ともいう)は、下記表3において下線で示すアデニンを含むヌクレオチド残基が、前記化学式(1)で示すヌクレオチド残基である。また、配列番号8〜12および16〜21のアプタマー(以下、「KS9アプタマー」ともいう)は、下記表3において下線で示すチミンを含むヌクレオチド残基が、前記化学式(2)で示すヌクレオチド残基であり、配列番号5〜7および13〜15のアプタマー(以下、「NG7アプタマー」ともいう)は、下記表3において下線で示すチミンを含むヌクレオチド残基が、前記化学式(3)で示すヌクレオチド残基である。
【0121】
【表3】
【0122】
前記MK4アプタマーは、その3’末端に、20塩基長のポリデオキシチミン(ポリdT)を付加し、ポリdT付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。前記KS9アプタマーおよび前記NG7アプタマーは、その3’末端に、20塩基長のポリデオキシアデニン(ポリdA)を付加し、ポリdA付加アプタマーとして、後述するSPRに使用した。
【0123】
(2)試料
市販のヒトsIgA(IgA (Secretory) ,Human、MP Biomedicals, LLC-Cappel Products社製、カタログ番号: #55905)を、試料として、以下の試験に使用した。
【0124】
(3)SPRによる結合能の解析
結合能の解析には、ProteON XPR36(BioRad社)を、その使用説明書にしたがって使用した。
【0125】
まず、前記ProteON専用のセンサーチップとして、ストレプトアビジンが固定化されたチップ(商品名 ProteOn NLC Sensor Chip、BioRad社)を、前記ProteON XPR36にセットした。前記センサーチップのフローセルに、超純水(DDW)を用いて、5μmol/Lのビオチン化ポリdAをインジェクションし、シグナル強度(RU:Resonance Unit)が約900RUになるまで結合させた。前記ビオチン化ポリdAは、20塩基長のデオキシアデノシンの5’末端をビオチン化して調製した。そして、前記チップの前記フローセルに、SPRバッファーを用いて、200nmol/Lの前記ポリdTを付加したMK4アプタマーを、流速25μL/minで80秒間インジェクションし、シグナル強度が約800RUになるまで結合させた。この結果を、アプタマーのセンサーチップへの固層化量を示すシグナルとして、アプタマー固層化測定値(A)という。続いて、前記試料を、SPRバッファーを用いて、流速50μL/minで120秒間インジェクションし、引き続き、同じ条件で、SPRバッファーを流して洗浄を300秒間行った。前記試料における前記ヒトsIgA濃度は、400nmol/Lとした。前記試料のインジェクションおよび前記SPRバッファーによる洗浄に並行して、シグナル強度の測定を行った。インジェクション開始を0秒として、115〜125秒の間におけるシグナル強度の平均値を求め、これを、前記アプタマーとタンパク質との結合量を示すシグナルとして、タンパク質結合測定値(B)という。そして、タンパク質結合測定値(B)をアプタマー固層化測定値(A)で割った値(B/A)を、相対値(Relative Unit)として求めた。また、前記KS9アプタマーおよび前記NG7アプタマーは、前記ビオチン化ポリdAに代えて、20塩基長のデオキシチミジンの5’末端をビオチン化して調製したビオチン化ポリdTを、前記MK4アプタマーに代えて、前記KS9アプタマーまたは前記NG7アプタマーを用いた以外は、同様にして測定した。さらに、比較例3−1は、前記MK4アプタマーに代えて、sIgAに結合性を示さないネガティブコントロールの核酸分子(配列番号22)を用い、比較例3−2は、ヒトsIgAに代えてBSA(Bovine Serum Albumin、SIGMA社製、カタログ番号:#A7906)を含む試料を用いた以外は同様にして、シグナル強度の測定を行った。
【0126】
ネガティブコントロールの核酸分子(N30-0 pool)
5’-GGTAACGCCCAGTCTAGGTCATTTG-(N)
30-GTTACGGGAGCCTGCACTTAATG-3’(配列番号22)
【0127】
前記SPRバッファーの組成は、40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2および0.01% Tween(登録商標)20とし、pHは、7.4とした。
【0128】
各アプタマーとsIgAとの結合の結果を
図1A〜Fに示す。
図1A〜Fは、各アプタマーのsIgAに対する結合能を示すグラフである。
図1において、横軸は、試料をインジェクション後の経過時間を示し、縦軸は、結合力の相対値(RU)を示す。
図1A〜Fに示すように、いずれのアプタマーも、sIgAに結合した。
【0129】
つぎに、タンパク質結合測定値(B)をアプタマー固層化測定値(A)で割った値(B/A)を、相対値(Relative Unit)の結果を
図2A〜Dに示す。
図2A〜Dは、各アプタマーのsIgAへの結合量の相対値(Relative Unit)を示すグラフである。
図2において、横軸は、アプタマーの種類を示し、縦軸は、相対値を示す。
図2A〜Dに示すように、BSAを用いた比較例3−2では結合が確認できなかった。また、ネガティブコントロールの核酸分子を用いた比較例3−1では、sIgAへの結合が確認されなかった。これに対し、いずれのアプタマーも、sIgAに結合した。中でも、配列番号15および配列番号21の核酸分子が、極めて高い結合性を示した。
【0130】
(4)解離定数の測定
前記試料中のsIgAの濃度を、12.5、25、50、100、または200nmol/Lとした以外は、前記(3)と同様にして、結合量の相対値(RU)を測定した。そして、前記結合量の相対値に基づき、前記sIgA結合核酸分子と前記sIgAとの解離定数を算出した。この結果を下記表4に示す。下記表4に示すように、いずれのアプタマーも解離定数が37.7nM以下であり、特に、配列番号2、配列番号3、配列番号9、配列番号11、配列番号15、配列番号19、および配列番号21の核酸分子は、解離定数が、8nM以下であり、極め優れたsIgAとの結合能を有することがわかった。
【0131】
【表4】
【0132】
(5)公差性の確認
配列番号3、5および9のアプタマーを用い、試料として、400nmol/LとなるようにsIgA、ヒトIgG−Fc(比較例3−3、BETHYL社製、カタログ番号:P-80-104)、未標識ヒトIgG(比較例3−4、BECKMAN COULTER社製、カタログ番号:731696)、未標識ヒトIgG−Fc(比較例3−5、BECKMAN COULTER社製、カタログ番号:731703)またはヒトIgG1κ(比較例3−6、Southern Biotech社製、カタログ番号:0151K-01)を含む試料を用いた以外は、前記(3)と同様にして、結合量の相対値を求めた。
【0133】
この結果を
図3に示す。
図3は、結合量の相対値を示すグラフである。
図3において、横軸は、試料の種類を示し、縦軸は、結合量の相対値(RU)を示す。
図3に示すように、いずれのアプタマーも、sIgA以外の免疫グロブリンには結合しなかった。これらのことから、本発明の核酸分子が、sIgA特異的であることがわかった。
【0134】
[実施例4]
本例では、配列番号5、9および11のアプタマーについて、sIgAに対する結合能を、磁気ビーズによるプルダウンにより確認した。
【0135】
(1)アプタマー結合ビーズ
磁気ビーズの表面にストレプトアビジン(SA)が結合したSAビーズ(Invitrogen社製、商品名:MyOne−SA C1)に、前記配列番号5、9または11のアプタマーを結合させ、アプタマー結合ビーズを作製した。具体的には、まず、前記アプタマーに100%相補的な相補鎖を調製した。他方、前記アプタマーの5’領域の配列(配列番号23、5’-GGATACCTTAACGCCGCCTATTG-3’)を準備し、その5’末端をビオチン化して、ビオチン化プライマーを調製した。そして、前記相補鎖を鋳型として、前記ビオチン化プライマーを用い、PCRによる増幅を行い、5’末端がビオチン化された前記アプタマーを合成した。前記合成された前記アプタマーと前記相補鎖とからなる二本鎖に対して、前記SAビーズを反応させ、前記二本鎖におけるビオチンと前記SAビーズのアビジンとを結合させた。つぎに、前記二本鎖とSAビーズとが結合した複合体を、NaOHでアルカリ処理し、前記二本鎖の解離を行うことによって、前記相補鎖を除去した。これによって、前記SAビーズに、ビオチン−アビジン結合により前記ビオチン化アプタマーが結合した、前記アプタマー結合ビーズを作製した。
【0136】
(2)試料
5μgのヒトsIgAまたはヒトの唾液を、試料として、以下の実験に使用した。
【0137】
(3)プルダウンアッセイ
前記アプタマー結合ビーズ(終濃度10mg/ml)と前記試料(sIgA:終濃度50μg/mL、唾液:終濃度90%)とを、SB1T緩衝液(40mmol/L HEPES、125mmol/L NaCl、5mmol/L KCl、1mmol/L MgCl
2および0.01% Tween(登録商標)20、pH7.4)中で混合し、この反応液を、室温で30分間反応させた。前記反応液を遠心して前記ビーズを回収し、前記SB1T緩衝液で3回遠心洗浄した。前記アプタマーがsIgAに結合する場合、前記ビーズには、前記アプタマーを介してsIgAが結合していることになる。そこで、前記ビーズをSDSバッファー緩衝液に混合し、95℃で10分間、加熱処理することによって、前記ビーズからsIgAを遊離させた。そして、加熱処理後の前記SDS緩衝液から、前記ビーズを除去して、PAGEL(C520L、アトー社)を用いてSDS−PAGEに供した。泳動用のバッファーは、前記SDSバッファーを使用した。前記SDSバッファーの組成は、25mmol/L Tris、192mmol/L グリシン、0.1% SDSとした。
【0138】
つぎに、SDS−PAGE後のゲルについて、GelCode Blue Stain Reagent(Thermo SCIENTIFIC社)を用いて染色を行った。なお、分子量マーカーとして、Bench Mark Protein Ladder(Invitrogen社)を使用した。また、コントロール1として、前記アプタマー結合ビーズに代えて、前記ビオチン化プライマーを結合させた前記SAビーズを使用した以外は、同様にして、SDS−PAGEと検出とを行った。また、コントロール2として、前記ヒトsIgAについて、SDS−PAGEと検出とを行った。
【0139】
これらの結果を
図4に示す。
図4(A)および(B)は、前記アプタマー結合ビーズから遊離させたタンパク質のSDS−PAGEの結果を示す写真である。
図4(A)は、sIgAを含む試料を用いた結果を示し、(B)は、唾液を用いた結果を示す。
図4(A)および(B)において、写真の左側が、分子量を示し、レーンMは、分子量マーカー(M)、レーン1は、配列番号5のアプタマーを結合させた前記アプタマー結合ビーズを用いた結果、レーン2は、配列番号9のアプタマーを結合させた前記アプタマー結合ビーズを用いた結果、レーン3は、配列番号11のアプタマーを結合させた前記アプタマー結合ビーズを用いた結果、レーンC1は、前記プライマーを結合させた前記SAビーズを用いた結果、レーンIgAは、ヒトsIgAの結果である。
【0140】
図4(A)および(B)に示すように、前記アプタマー結合ビーズを用いたレーン1〜3は、sIgAを示すレーンIgAと同じ部位にバンドが確認された(図において矢印で示すバンド)。他方、前記プライマー結合ビーズを用いた場合、sIgAと同じ部位にバンドは確認できなかった。
【0141】
これらの結果から、本発明のアプタマーは、前記ヒトsIgAに対して、結合性を示すことがわかった。
【0142】
以上、実施形態および実施例を参照して本発明を説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではない。本発明の構成や詳細には、本発明のスコープ内で当業者が理解しうる様々な変更をできる。
【0143】
この出願は、2016年9月15日に出願された日本出願特願2016−180892を基礎とする優先権を主張し、その開示のすべてをここに取り込む。