特許第6795230号(P6795230)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6795230
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】石炭灰混合材料の品質管理方法
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/00 20060101AFI20201119BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20201119BHJP
   B09B 5/00 20060101ALN20201119BHJP
【FI】
   B09B3/00 301N
   B09B3/00 304G
   C04B18/10 A
   !B09B5/00 N
【請求項の数】9
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2020-32969(P2020-32969)
(22)【出願日】2020年2月28日
【審査請求日】2020年5月25日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】519188101
【氏名又は名称】福島エコクリート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001025
【氏名又は名称】特許業務法人レクスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】横田 季彦
【審査官】 田中 永一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2019−042624(JP,A)
【文献】 特開2016−221472(JP,A)
【文献】 特開2002−059148(JP,A)
【文献】 特開2008−275181(JP,A)
【文献】 特開2006−035123(JP,A)
【文献】 特開2018−196853(JP,A)
【文献】 特開2018−183737(JP,A)
【文献】 特開2011−013197(JP,A)
【文献】 特開平04−078481(JP,A)
【文献】 特開平07−280709(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 18/10
B09B 3/00
B09B 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
石炭灰混合材料の品質管理システムを用いて、石炭灰を含む原料を混合して製造される石炭灰混合材料の品質を管理する方法において、
前記品質管理システムは、性状認識部と、前記石炭灰を格納する複数の石炭灰格納部と、記憶部と、決定部と、を備え、
前記性状認識部が、前記石炭灰混合材料の原料となる前記石炭灰に含有される所定の重金属の種類及び該重金属の含有量を含む該石炭灰の性状を認識する工程と、
前記複数の石炭灰格納部のいずれかが、前記性状の認識された前記石炭灰を異なる性状の該石炭灰を混在させて、かつ異なる性状の該石炭灰を混ぜずに、前記石炭灰格納部に格納される順に並べて配置して格納する格納工程と、
前記記憶部が、前記性状認識部により認識された石炭灰の性状、量及びいずれの前記石炭灰格納部に格納されているかを前記石炭灰格納部に格納された単位ごとに記憶する工程と、
前記決定部が、異なる性状の前記石炭灰を混在させて格納する前記石炭灰格納部を含む前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから次に排出される前記石炭灰の前記性状を前記記憶部から取得し、該取得された性状に基づいて、該石炭灰格納部から排出されて前記石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量を該複数の石炭灰格納部のそれぞれについて決定する決定工程と、を含み、
前記決定工程において前記決定部は、該決定部が決定する前記石炭灰の前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるように該排出量を決定することを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記決定工程において前記決定部は、前記記憶部から取得された前記性状に基づいて、該決定部が決定する前記石炭灰の前記排出量に従って排出した場合に得られる石炭灰を原料として用いて製造した場合の前記石炭灰混合材料から溶出する重金属の溶出量を推定し、該推定された溶出量があらかじめ定められた溶出上限量以下となるように前記複数の石炭灰格納部のそれぞれからの該排出量を決定することを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムは、溶出量受付部を備え、
前記決定工程の前に、前記溶出量受付部が、前記性状の認識された前記石炭灰を原料として用いて製造された前記石炭灰混合材料について行われた前記所定の重金属の溶出検査である第1溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力を受け付けて、該溶出量を前記性状と対応付けて前記記憶部に記憶させる工程を含み、
前記決定工程において前記決定部は、前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから次に排出される前記石炭灰の前記性状及び該性状に対応付けられた前記溶出量を前記記憶部から取得し、該取得された性状及び溶出量に基づいて、該複数の石炭灰格納部のそれぞれからの前記排出量を決定することを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項4】
請求項1〜3の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記記憶部は、前記石炭灰の価格及び前記石炭灰混合材料からの所定の重金属の溶出を抑制するための添加剤の価格を記憶しており、
前記決定工程において前記決定部は、前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量に基づいて前記添加剤の量を決定し、かつ該排出量及び該添加剤の量に基づく該石炭灰及び該添加剤の価格の合計が所定の上限金額以下となるように該排出量及び該添加剤の量を決定することを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項5】
請求項1〜4の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムはシミュレーション部を備え、
前記格納工程の前に、前記シミュレーション部が、前記石炭灰格納部に格納されている前記石炭灰の前記性状及び量に基づいて、前記複数の石炭灰格納部のそれぞれからの将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションするシミュレーション工程を含み、
前記シミュレーション部は、該シミュレーション部のシミュレーション結果に従って前記石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量が前記含有上限量以下となるように前記将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションし、
前記格納工程の前に、前記決定部が、前記シミュレーション部のシミュレーション結果と、次に前記石炭灰格納部に格納される前記石炭灰の前記性状及び量とに基づいて、該次に格納される石炭灰を格納させる前記石炭灰格納部を前記複数の石炭灰格納部から選択して決定する工程を含むことを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項6】
請求項1〜5の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムは、前記石炭灰混合材料の前記石炭灰以外の原料である複数の他原料をそれぞれ格納する他原料格納部と、排出制御部と、混練部と、を備え、
前記排出制御部が、前記決定工程における決定結果に基づいて前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから前記石炭灰を排出させるとともに、該排出された石炭灰の量に応じて前記他原料格納部から複数の前記他原料を排出させる工程と、
前記混練部が、前記排出された前記石炭灰と前記他原料とを受け入れて練り混ぜる工程とを含むことを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項7】
請求項1〜6の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムは噴霧部を備え、
前記噴霧部が、前記決定工程において前記決定部が決定した前記石炭灰の前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量が所定の閾値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部の決定結果に基づいて製造された前記石炭灰混合材料に噴霧する工程を含むことを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項8】
請求項1〜6の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムは噴霧部を備え、
前記決定部が、前記決定工程における決定結果に基づいて排出された前記石炭灰を原料として用いて製造した前記石炭灰混合材料について行われた前記所定の重金属の溶出検査である第2溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力を受け付ける工程と、
前記噴霧部が、前記決定部が受け付けた前記所定の重金属の溶出量が所定の基準値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部の決定結果に基づいて製造された前記石炭灰混合材料に噴霧する工程とを含むことを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【請求項9】
請求項1〜8の何れかに記載の石炭灰混合材料の品質管理方法において、
前記品質管理システムは、出力部を備え、
前記出力部が、前記複数の石炭灰格納部それぞれに格納されている前記石炭灰の前記性状及び量を示す格納石炭灰情報を該複数の石炭灰格納部に格納された単位ごとに出力する工程を含み、
前記格納石炭灰情報は、前記複数の石炭灰格納部それぞれに格納されている前記石炭灰の前記性状及び量を該石炭灰格納部ごとに表す複数の棒グラフであり、該棒グラフは該複数の石炭灰格納部に格納された前記単位ごとの該石炭灰の該性状及び量を、該棒グラフの一端から他端に向けて該石炭灰格納部に格納された時期が古い順に並べて配置して出力されることを特徴とする石炭灰混合材料の品質管理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、石炭灰混合材料の品質を管理する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、石炭灰混合材料の品質を管理するシステムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−211968号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
石炭灰にセメント、水及び添加剤等を必要に応じて混合して製造される石炭灰混合材料の原料となる石炭灰は、微量の重金属を含有している。そして石炭灰混合材料は、環境基準などを超える重金属が溶出しないように製造することが求められる。
【0005】
また、石炭灰の主な供給元である石炭火力発電所では、生産国、採掘所の異なる多種の石炭を使用しており、その炭種の違いにより組成成分が異なる。そのため、当該石炭から生じた石炭灰の性状、すなわちたとえば含有される重金属の種類及びその量、は様々であり、石炭灰からの溶出が懸念される重金属類の種類及びその量も様々である。
【0006】
石炭灰に起因する重金属類の溶出を抑制する方法として、石炭灰混合材料の製造の際に添加する添加剤の量を増加させること、あるいは混合するセメント量を増加させることなどが考えられる。
【0007】
特許文献1のシステムによれば、石炭灰に石灰、石膏などの添加材を加え、水で混練するなどして石炭灰混合材料を製造する際に、石炭灰サイロから採取した石炭灰のRO量等をもとに、添加する石灰、石膏などの添加材の量を制御することにより、製造される石炭灰混合材料の品質を管理している。
【0008】
しかしながら添加剤やセメントは石炭灰に比して高価であるため、添加剤又はセメントの量を増やした場合は、石炭灰混合材料の製造コストが上がり、経済性が損なわれるという問題が生じる。
【0009】
そこで本発明は、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑え、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる石炭灰混合材料品質管理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の石炭灰混合材料の品質管理方法は、
石炭灰混合材料の品質管理システムを用いて、石炭灰を含む原料を混合して製造される石炭灰混合材料の品質を管理する方法において、
前記品質管理システムは、性状認識部と、前記石炭灰を格納する複数の石炭灰格納部と、記憶部と、決定部と、を備え、
前記性状認識部が、前記石炭灰混合材料の原料となる前記石炭灰に含有される所定の重金属の種類及び該重金属の含有量を含む該石炭灰の性状を認識する工程と、
前記複数の石炭灰格納部のいずれかが、前記性状の認識された前記石炭灰を異なる性状の該石炭灰を混在させて、かつ異なる性状の該石炭灰を混ぜずに、前記石炭灰格納部に格納される順に並べて配置して格納する格納工程と、
前記記憶部が、前記性状認識部により認識された石炭灰の性状、量及びいずれの前記石炭灰格納部に格納されているかを前記石炭灰格納部に格納された単位ごとに記憶する工程と、
前記決定部が、異なる性状の前記石炭灰を混在させて格納する前記石炭灰格納部を含む前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから次に排出される前記石炭灰の前記性状を前記記憶部から取得し、該取得された性状に基づいて、該石炭灰格納部から排出されて前記石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量を該複数の石炭灰格納部のそれぞれについて決定する決定工程と、を含み、
前記決定工程において前記決定部は、該決定部が決定する前記石炭灰の前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるように該排出量を決定することを特徴とする。
【0011】
本発明の石炭灰混合材料の品質管理方法によれば、性状認識部により石炭灰混合材料の原料となる石炭灰に含有される所定の重金属の種類及び該重金属の含有量を含む該石炭灰の性状が認識される。
そして複数の石炭灰格納部のいずれかにより、前記性状の認識された前記石炭灰が異なる性状の該石炭灰を混在させて、かつ異なる性状の該石炭灰を混ぜずに、石炭灰格納部に格納される順に並べて配置して格納される。
【0012】
そして決定部により、異なる性状の該石炭灰を混在させて格納する前記石炭灰格納部を含む前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから次に排出される石炭灰の性状に基づいて、石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量がそれぞれの石炭灰格納部について決定される。
【0013】
また当該排出量は、決定部により、当該排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるように決定される。
【0014】
これにより、次に排出されるべき石炭灰の重金属の含有量が多い石炭灰格納部の石炭灰と、重金属の含有量が少ない石炭灰格納部の石炭灰とを混ぜることで、重金属の含有量が多い石炭灰格納部の石炭灰のみを用いる場合に比して重金属の含有量を減らすことができる。結果的に、重金属の溶出を抑制するための添加剤の量も減らすことができるので、製造コストの上昇を抑えることができて経済的である。
【0015】
また、石炭灰に含有される所定の重金属の含有量はあらかじめ定められた含有上限量以下となるように決定されるので、石炭灰混合材料からの重金属の溶出を抑えることが可能である。
【0016】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑え、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0017】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記決定工程において前記決定部は、前記記憶部から取得された前記性状に基づいて、該決定部が決定する前記石炭灰の前記排出量に従って排出した場合に得られる石炭灰を原料として用いて製造した場合の前記石炭灰混合材料から溶出する重金属の溶出量を推定し、該推定された溶出量があらかじめ定められた溶出上限量以下となるように前記複数の石炭灰格納部のそれぞれからの該排出量を決定することが好ましい。
【0018】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法においては、決定部により、記憶部から取得された性状に基づいて、該決定部が決定する石炭灰の排出量に従って排出した場合に得られる石炭灰を原料として用いて製造した場合の石炭灰混合材料から溶出する重金属の溶出量が推定される。
【0019】
そして決定部により、該推定された溶出量があらかじめ定められた溶出上限量以下となるようにそれぞれの石炭灰格納部からの該排出量が決定される。
【0020】
これにより、決定部が決定しようとする石炭灰の排出量に従って排出した場合に得られる石炭灰を原料として用いて製造した場合に溶出するであろう重金属の量があらかじめ推定されて、当該推定された溶出量があらかじめ定められた溶出上限量以下となるように排出量が決定されるので、石炭灰混合材料からの重金属の溶出を抑えることができる確実性が高まる。
【0021】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑える確実性を高めつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0022】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムは、溶出量受付部を備え、
前記決定工程の前に、前記溶出量受付部が、前記性状の認識された前記石炭灰を原料として用いて製造された前記石炭灰混合材料について行われた前記所定の重金属の溶出検査である第1溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力を受け付けて、該溶出量を前記性状と対応付けて前記記憶部に記憶させる工程を含み
前記決定工程において前記決定部は、前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから次に排出される前記石炭灰の前記性状及び該性状に対応付けられた前記溶出量を前記記憶部から取得し、該取得された性状及び溶出量に基づいて、該複数の石炭灰格納部のそれぞれからの前記排出量を決定することが好ましい。
【0023】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、溶出量受付部により、性状の認識された石炭灰を原料として用いて製造された石炭灰混合材料について行われた所定の重金属の溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力が受け付けられて、性状と対応付けて記憶部に記憶される。
【0024】
そして決定部により、それぞれの石炭灰格納部から次に排出される石炭灰の性状及び該性状に対応付けられた溶出量を記憶部から取得し、該取得された性状及び溶出量に基づいて、それぞれの石炭灰格納部からの該排出量が決定される。
【0025】
これにより、実際に石炭灰混合材料を製造して所定の溶出検査を行った際の、所定の重金属の溶出量が考慮されてそれぞれの石炭灰格納部からの該排出量が決定されるので、石炭灰混合材料からの重金属の溶出を抑えることができる確実性が高まる。
【0026】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑える確実性を高めつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0027】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記記憶部は、前記石炭灰の価格及び前記石炭灰混合材料からの所定の重金属の溶出を抑制するための添加剤の価格を記憶しており、
前記決定工程において前記決定部は、前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量に基づいて前記添加剤の量を決定し、かつ該排出量及び該添加剤の量に基づく該石炭灰及び該添加剤の価格の合計が所定の上限金額以下となるように該排出量及び該添加剤の量を決定することが好ましい。
【0028】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、記憶部に石炭灰及び添加剤を含む石炭灰混合材料の各原料の価格が記憶されている。
【0029】
そして決定部により、排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量に基づいて添加剤の量が決定されるとともに、該排出量及び該添加剤の量に基づく該石炭灰及び該添加剤の価格の合計が所定の上限金額以下となるように該排出量及び該添加剤の量が決定される。
【0030】
これにより、石炭灰混合材料の原料の価格を抑えることができるので経済的である。
【0031】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑え、かつ経済性の高い石炭灰混合材料を製造することができる。
【0032】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムはシミュレーション部を備え、
前記格納工程の前に、前記シミュレーション部が、前記石炭灰格納部に格納されている前記石炭灰の前記性状及び量に基づいて、前記複数の石炭灰格納部それぞれからの将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションするシミュレーション工程を含み
前記シミュレーション部は、該シミュレーション部のシミュレーション結果に従って前記石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量が前記含有上限量以下となるように前記将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーション
前記格納工程の前に、前記決定部、前記シミュレーション部のシミュレーション結果と、次に前記石炭灰格納部に格納される前記石炭灰の前記性状及び量とに基づいて、該次に格納される石炭灰を格納させる前記石炭灰格納部を前記複数の石炭灰格納部から選択して決定する工程を含むことが好ましい。
【0033】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、シミュレーション部により、石炭灰格納部に格納されている石炭灰の性状及び量に基づいて、石炭灰格納部それぞれからの将来の該石炭灰の排出量及び排出順がシミュレーションされる。
【0034】
また、将来の石炭灰の排出量及び排出順は、シミュレーション部により、シミュレーション結果に従って石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるようにシミュレーションされる。
【0035】
そして決定部により、シミュレーション部のシミュレーション結果と、次に石炭灰格納部に格納される石炭灰の性状及び量とに基づいて、該次に格納される石炭灰を格納させる石炭灰格納部が複数の石炭灰格納部から選択されて決定される。
【0036】
これにより、将来的に石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が含有上限量以下となるように石炭灰を排出し続けられるように、石炭灰を格納する時点でシミュレーションをしたうえで石炭灰格納部に石炭灰を格納するので、実際に石炭灰を排出する際に、石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が含有上限量以下となるように石炭灰を排出できる確実性が高まる。
【0037】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑える確実性を高めつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0038】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムは、前記石炭灰混合材料の前記石炭灰以外の原料である複数の他原料をそれぞれ格納する他原料格納部と、排出制御部と、混練部と、を備え、
前記排出制御部が、前記決定工程における決定結果に基づいて前記複数の石炭灰格納部のそれぞれから前記石炭灰を排出させるとともに、該排出された石炭灰の量に応じて前記他原料格納部から複数の前記他原料を排出させる工程と、
前記混練部が、前記排出された前記石炭灰と前記他原料とを受け入れて練り混ぜる工程とを含むことが好ましい。
【0039】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、排出制御部により、決定部の決定結果に基づいてそれぞれの石炭灰格納部から石炭灰が排出されるとともに、該排出された石炭灰の量に応じて他原料格納部から複数の他原料が排出されるように制御される。そして、混練部により、当該排出された石炭灰と他原料とが受け入れられて練り混ぜられる。
【0040】
これにより、決定部の決定結果に基づいて自動的に石炭灰混合材料の原料が排出されて練り混ぜられるので、決定されたとおりに確実に石炭灰混合材料が製造される。
【0041】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑えた石炭灰混合材料を確実に製造しつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0042】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムは噴霧部を備え、
前記噴霧部が、前記決定工程において前記決定部が決定した前記石炭灰の前記排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される前記所定の重金属の含有量が所定の閾値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部の決定結果に基づいて製造され前記石炭灰混合材料に噴霧する工程を含むことが好ましい。
【0043】
石炭灰に含有される重金属の含有量によっては、当該石炭灰を原料として用いて製造された石炭灰混合材料に安定化剤などを噴霧することが必要となる場合がある。
【0044】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、噴霧部により、石炭灰の排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が所定の閾値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤、該決定部の決定結果に基づいて製造され石炭灰混合材料に噴霧される。
【0045】
これにより、原料の石炭灰に含有される所定の重金属の量が所定の閾値以上である場合には、製造され石炭灰混合材料に所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤自動的に噴霧される。そのため、所定の重金属の溶出が抑制された石炭灰混合材料を製造できる確実性が高まる。
【0046】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑えた石炭灰混合材料を製造できる確実性を高めつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0047】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムは噴霧部を備え、
前記決定部前記決定工程における決定結果に基づいて排出された前記石炭灰を原料として用いて製造した前記石炭灰混合材料について行われた前記所定の重金属の溶出検査である第2溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力を受け付ける工程と、
前記噴霧部が、前記決定部が受け付けた前記所定の重金属の溶出量が所定の基準値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部の決定結果に基づいて製造され前記石炭灰混合材料に噴霧する工程とを含むことが好ましい。
【0048】
本発明の石炭灰混合材料の品質管理方法によれば、決定部により決定工程における決定結果に基づいて排出された石炭灰を原料として用いて製造した石炭灰混合材料について行われた所定の重金属の溶出検査である第2溶出検査の結果であって、該所定の重金属の溶出量を含む検査結果の情報の入力を受け付けられる。
そして噴霧部により、決定部が受け付けた所定の重金属の溶出量が所定の基準値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤が、決定結果に基づいて製造された石炭灰混合材料に噴霧される。
これにより、実際に石炭灰混合材料を製造して所定の溶出検査を行った場合の、所定の重金属の溶出量が所定の基準値以上である場合に、製造され石炭灰混合材料に所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤自動的に噴霧される。そのため、所定の重金属の溶出が抑制された石炭灰混合材料を製造できる確実性が高まる。
【0049】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑えた石炭灰混合材料を製造できる確実性を高めつつ、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0054】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法において、
前記品質管理システムは、出力部を備え、
前記出力部が、前記複数の石炭灰格納部それぞれに格納されている前記石炭灰の前記性状及び量を示す格納石炭灰情報を該複数の石炭灰格納部に格納された単位ごとに出力する工程を含み
前記格納石炭灰情報は、前記複数の石炭灰格納部それぞれに格納されている前記石炭灰の前記性状及び量を該石炭灰格納部ごとに表す複数の棒グラフであり、該棒グラフは該複数の石炭灰格納部に格納された前記単位ごとの該石炭灰の該性状及び量を、該棒グラフの一端から他端に向けて該石炭灰格納部に格納された時期が古い順に並べて配置して出力されることが好ましい。
【0055】
本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、出力部により、複数の石炭灰格納部それぞれに格納されている石炭灰の性状及び量を示す格納石炭灰情報が、該複数の石炭灰格納部に格納された単位ごとに出力される。
【0056】
また、石炭灰格納部に格納された単位ごとの石炭灰の該性状及び量が、石炭灰格納部に格納された時期が古い順に並べられて棒グラフとして出力される。
【0057】
これにより、石炭灰混合材料品質管理システムの操作者は、複数の石炭灰格納部のそれぞれに、どのような性状の石炭灰がどの程度格納されているかを視覚的かつ直感的に知ることができる。そのため、石炭灰混合材料品質管理システムの操作者は、石炭灰格納部内の石炭灰の状況の把握を効率的に行うことができる。
【0058】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理方法によれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、操作者による石炭灰格納部内の石炭灰の状況の把握を効率化しつつ、重金属の溶出を抑え、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
図1】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムの全体像を示すブロック図。
図2】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図3】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムの処理内容を示すフローチャート。
図4】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムが処理に用いるデータの内容を示す図。
図5】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムの処理内容を示すイメージ図。
図6】本発明の石炭灰混合材料品質管理システムの出力内容を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0060】
<石炭灰混合材料品質管理システムの構成>
まず図1を用いて、本実施形態の石炭灰混合材料品質管理システムの構成について説明する。なお同一の構成については、同一の符号を付して説明を省略することがある。
【0061】
本実施形態の石炭灰混合材料品質管理システムは、石炭灰を含む原料を混合して製造される石炭灰混合材料の品質を管理するシステムであり、例えばコンピュータ10と、性状認識部30と、石炭灰混合材料製造プラント50とを含んで構成される。
【0062】
コンピュータ10は、制御部100と、記憶部120と、入力部140と、出力部160とを備える、例えばパーソナルコンピューター又はサーバーであり、あるいはタブレット端末やスマートフォンであってもよい。
【0063】
制御部100は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている。制御部100は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば決定部101、溶出量受付部103、シミュレーション部105、排出制御部107として機能する。
【0064】
決定部101は、それぞれの石炭灰格納部500から次に排出される石炭灰の性状を記憶部から取得し、該取得された性状に基づいて、該石炭灰格納部500から排出されて石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量を該それぞれの石炭灰格納部500について決定する。なお決定部101は、該決定部101が決定する石炭灰の排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるように該排出量を決定するように構成されている。
【0065】
あるいは決定部101は、該決定部101が決定した石炭灰の排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が所定の閾値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部101の決定結果に基づいて製造される石炭灰混合材料に噴霧することを決定するように構成されていてもよい。
【0066】
溶出量受付部103は、性状認識部30により性状の認識された石炭灰を原料として用いて製造した石炭灰混合材料について所定の重金属の溶出検査である第1溶出検査を行った際の該所定の重金属の溶出量の入力を、例えば入力部140を介して受け付けて、性状と対応付けて記憶部120に記憶させる。
【0067】
シミュレーション部105は、石炭灰格納部500に格納されている石炭灰の性状及び量に基づいて、石炭灰格納部500それぞれからの将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションする。またシミュレーション部105は、該シミュレーション部105のシミュレーション結果に従って石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が含有上限量以下となるように将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションするように構成されている。
【0068】
排出制御部107は、決定部101の決定結果に基づいてそれぞれの石炭灰格納部500から石炭灰を排出させるとともに、該排出された石炭灰の量に応じて他原料格納部520から複数の他原料を排出させる。
【0069】
コンピュータ10と、石炭灰格納部500それぞれ及び他原料格納部520それぞれとは、例えば通信可能に接続されており、石炭灰格納部500それぞれ及び他原料格納部520それぞれは、排出制御部107により、決定部101の決定結果に基づいて石炭灰及び他原料を排出するように制御される。
【0070】
記憶部120は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されている。記憶部120は、例えば性状認識部30により認識された石炭灰の性状、量及びいずれの石炭灰格納部500に格納されているかを石炭灰格納部500に格納された単位ごとに記憶を記憶している。
【0071】
性状認識部30により認識された石炭灰の性状、量及びいずれの石炭灰格納部500に格納されているかを示す情報としては、例えば図2に示すように、石炭灰格納部ID、石炭灰が格納された日時、石炭灰の搬入元の電力会社及び発電所の名前、残格納量、搬入車両番号、格納量、性状認識部30により認識された石炭灰の性状及び量としての重金属名とその含有量、あるいはこれらに対応付けられて、性状の認識された石炭灰を原料として用いて製造した石炭灰混合材料について所定の重金属の溶出検査である第1溶出検査を行った際の該所定の重金属の溶出量及び溶出液のph値が記憶される。
【0072】
記憶部120は、例えば何年何月何日の、何台目の搬入車両により搬入された石炭灰であるかを1単位として石炭灰の性状等を記憶している。あるいはさらに、搬入車両が搬入した石炭灰の前半分、後半分などさらに細かい粒度が1単位とされてもよい。
【0073】
入力部140は、石炭灰混合材料品質管理システムの操作者による入力を受け付ける、例えばキーボード又はタッチパネル、マウスその他のポインティングデバイスである。
【0074】
出力部160は、石炭灰混合材料品質管理システムの操作者に対して情報を出力する例えばディスプレイであり、あるいはプリンターであってもよい。
【0075】
性状認識部30は、石炭灰混合材料の原料となる石炭灰に含有される所定の重金属の種類及び該重金属の含有量を含む該石炭灰の性状を認識する検査装置であり、例えば蛍光エックス線分析装置であるが、その他種々の検査装置が性状認識部30として用いられてもよい。
【0076】
石炭灰混合材料製造プラント50は、石炭灰混合材料を製造するプラントであり、石炭灰格納部500、あるいはさらに他原料格納部520、混練部540、成形部560、養生部580、破砕部600、噴霧部620を含んで構成される。
【0077】
石炭灰格納部500は、複数備えられており、そのそれぞれは、性状の認識された石炭灰を格納する容器部501と、該格納された石炭灰を排出する排出部503とを有する、例えば石炭灰格納用のサイロである。
【0078】
他原料格納部520は、複数備えられており、そのそれぞれは、石炭灰混合材料の石炭灰以外の原料である複数の他原料をそれぞれ格納する例えばタンク、サイロである。複数の他原料としては、例えばセメント、石炭灰混合材料からの所定の重金属の溶出を抑制するための添加剤、噴霧剤、水などが含まれる。
【0079】
混練部540は、石炭灰格納部500及び他原料格納部520から排出された石炭灰と他原料とを受け入れて練り混ぜる、例えばミキサーである。成形部560は、混練部540に混錬された後の原料をブロック状などの所定の形状に成形する例えば加圧成形機である。養生部580は、成形部560により成形された石炭灰の強度を上げるために、所定の温度及び湿度において一定期間養生する養生装置である。
【0080】
破砕部600は、養生部580にて養生されたブロックを大割、すり割り等する破砕機である。あるいはさらに破砕後にふるいにかけて分級する分級機を含んで構成されていてもよい。
【0081】
噴霧部620は、決定部101の決定結果に基づいて、所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を破砕部600による破砕後の石炭灰混合材料に噴霧する例えばスプレーである。
【0082】
<処理の概要>
次に、本実施形態の石炭灰混合材料品質管理システムの処理内容について説明する。まず図3を参照して、石炭灰混合材料品質管理システムによる一連の処理について説明する。
【0083】
<石炭灰の格納>
本発明の石炭灰混合材料品質管理システムは、処理を開始するとまず、石炭灰の格納に関する処理を実行する(図3/S10)。
【0084】
当該処理は、例えば石炭灰混合材料品質管理システムの操作者が、性状認識部30を用いて、受け入れようとする石炭灰の性状を認識することにより開始される。当該処理においては、まず石炭灰の性状が認識される(図3/S11)。
【0085】
すなわち例えば、まず受け入れようとする石炭灰から石炭灰格納部に格納しようとする単位ごとに、性状の認識に必要な量のサンプルが採取される。そして、例えば当該石炭灰に含まれるヒ素及びホウ素の量が蛍光エックス線分析装置により測定されることにより、石炭灰の性状が認識される。
【0086】
性状認識部30による認識結果は、例えば入力部140を介して石炭灰混合材料品質管理システムの操作者により入力される。あるいは性状認識部30とコンピュータ10とが通信可能に接続されており、通信ケーブル等を介して性状認識部30による認識結果がコンピュータ10に送信されるように構成される。
【0087】
次に、当該性状が認識された石炭灰が格納される石炭灰格納部500が決定されて(図3/S13)、該決定結果に応じて石炭灰が石炭灰格納部500に格納されて(図3/S15)、性状認識部30により認識された石炭灰の性状、量及びいずれの石炭灰格納部500に格納されたかが、性状データとして石炭灰格納部500に格納された単位ごとにコンピュータ10の記憶部120に記憶される(図3/S17)。なお、石炭灰が格納される石炭灰格納部500を決定する流れについては、後述する。
【0088】
その後必要に応じて、重金属の溶出検査が行われる(図3/S19)。当該溶出検査は、例えば5,000立方メートルの石炭灰を受け入れるごとに行われる。
【0089】
より具体的には、S10にて性状の認識された石炭灰から、溶出検査に必要な量のサンプルが採取されて、当該サンプルを原料として用いて、実際に製造された石炭灰混合材料についての所定の重金属の溶出検査が行われる。本溶出検査が、本実施形態における第1溶出検査に該当する。
【0090】
所定の金属の溶出検査(第1溶出検査)とは、例えば環境省告示18号に基づくヒ素、セレン、ふっ素、ほう素及びこれらの化合物、並びにガラス電極法等による溶出液のph値の測定である。
【0091】
所定の金属の溶出検査(第1溶出検査)が行われた場合には、当該溶出検査の結果は、当該サンプルの採取元となった石炭灰に関する性状と対応付けられて、例えば入力部140を介して石炭灰混合材料品質管理システムの操作者により入力されて性状データの一部として記憶部120に記憶される。
【0092】
<石炭灰格納部の決定>
性状が認識された石炭灰が格納される石炭灰格納部500の決定(図3/S13)には、種々の手法を採用しうる。例えば決定部101は、シミュレーション部105に以下のようなシミュレーションをさせて、当該シミュレーションの結果に基づいて石炭灰が格納される石炭灰格納部500決定する。
【0093】
すなわち例えば、シミュレーション部105は、記憶部120に記憶されている、石炭灰混合材料の過去の製造実績を取得し、過去の製造実績を参照して例えば毎回何トンごとに石炭灰が排出されて、石炭灰混合材料が製造、出荷がされているなどの傾向を排出パターンとして認識する。
【0094】
そしてシミュレーション部105は、当該排出パターンにて今後繰り返し石炭灰が排出された場合の、石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量をシミュレーションする。より具体的には例えば認識された排出パターンが図4に示すような内容である場合に、シミュレーション部105は、排出パターンの1番目の量の石炭灰を得るための石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量の組み合わせの候補を複数決定し、当該決定された組み合わせの候補の排出量に従って石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限値以下となる、組み合わせの候補を選定し、当該選定された組み合わせの中の、例えば最も含有上限値に近い含有量となる組み合わせを、排出パターンの1番目の量の石炭灰を得るための石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量の組み合わせとして決定する。
【0095】
図5は、当該組み合わせの決定の内容を示すイメージ図である。それぞれの棒グラフの高さが、石炭灰格納部500それぞれに格納されている石炭灰の量を表している。図5の上方の図中の「1」と記載された部分が、排出パターンの1番目の量の石炭灰を得るための石炭灰の排出量の組み合わせである。
【0096】
シミュレーション部105は、例えばこのような処理を、排出パターンの2番目、3番目…と、排出パターンに従った量の石炭灰を、シミュレーション上得ることができなくなるまで繰り返すことにより将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションする。すなわち排出パターンに従ったn番目の石炭灰の量が1tである場合に、複数の石炭灰格納部500にシミュレーション上残っている石炭灰の総量が1tを下回ったときに、排出パターンに基づく石炭灰の排出量の組み合わせの決定処理を終了する。
【0097】
その後、決定部101は、次に石炭灰格納部500に格納されようとしている石炭灰の量と当該石炭灰に含有される所定の重金属の含有量とを取得し、当該石炭灰と、複数の石炭灰格納部500にシミュレーション上残っている石炭灰とを混ぜ合わせて得られる石炭灰に含有される所定の重金属の量があらかじめ定められた含有上限値以下であれば、シミュレーション上残っている石炭灰の量がゼロとなっている何れかの石炭灰格納部500を選択して、次に格納される石炭灰を格納させる石炭灰格納部500として決定する。
【0098】
一方、次に格納される石炭灰と、複数の石炭灰格納部500にシミュレーション上残っている石炭灰とを混ぜ合わせて得られる石炭灰に含有される所定の重金属の量があらかじめ定められた含有上限値を上回る場合は、シミュレーション上残っている石炭灰の量がゼロではない何れかの石炭灰格納部500を選択して、次に格納される石炭灰を格納させる石炭灰格納部500として決定する。
【0099】
あるいはシミュレーション部105は複数の石炭灰格納部500に格納されている石炭灰の性状、量及び格納順などを学習データとして用いて、各石炭灰格納部500からの石炭灰の排出量及び排出順を決定するための決定モデルの機械学習をし、当該機械学習のなされた決定モデルを用いて将来の該石炭灰の排出量及び排出順をシミュレーションするように構成されていてもよい。
【0100】
このようにして次に格納される石炭灰を格納させる石炭灰格納部500として決定された状態が、図5の下方の図に示されている。図5の下方の図においては、次に格納される石炭灰を格納させる石炭灰格納部500として石炭灰格納部IDが「FA1C」である石炭灰格納部500が決定されている。なお、図5に示すような内容が、出力部160であるディスプレイに表示されてもよい。
【0101】
<石炭灰混合材料の製造>
その後、石炭灰混合材料品質管理システムは、石炭灰混合材料の製造の処理を実行する(図3/S30)。
【0102】
石炭灰混合材料の製造の処理を開始するとまずコンピュータ10の決定部101は、石炭灰の排出量を決定する(図3/S31)。
【0103】
決定部101は、例えばまず操作者による操作に基づいて、今回の石炭灰混合材料の製造に必要な石炭灰の量を認識する。そして決定部101は、それぞれの石炭灰格納部500(500a、b…)から次に排出される石炭灰の性状を記憶部120から取得し、該取得された性状に基づいて、該石炭灰格納部500から排出されて石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量を該それぞれの石炭灰格納部500について決定する。
【0104】
石炭灰の排出量の決定には種々の手法を採用しうる。例えば決定部101は、シミュレーション部105に以下のようなシミュレーションをさせて、当該シミュレーションの結果に基づいて、石炭灰の排出量を該それぞれの石炭灰格納部500について決定する。
【0105】
すなわち例えば、シミュレーション部105は、記憶部120を参照して、それぞれの石炭灰格納部500から次に排出される石炭灰の性状と、当該性状の石炭灰の残格納量とを認識する。そしてシミュレーション部105は、今回の石炭灰混合材料の製造に必要な石炭灰の量の石炭灰を得るための石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量の組み合わせの候補を複数決定する。
【0106】
そして決定部101、当該決定された組み合わせの候補の排出量に従って石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限値以下となる、組み合わせの候補を選定する。
【0107】
すなわち例えば決定部101は、記憶部120にあらかじめ記憶されている、ヒ素及びセレンの含有量に関する環境基準の値(例えば環境省告示第19号に定められた数値。)を参照して、石炭灰に含有されるヒ素及びセレンの含有量がそれぞれ当該環境基準の1/2以下となるように、それぞれの石炭灰格納部500からの排出量の組み合わせの候補を選定する。
【0108】
その後、決定部101は、例えば当該選定された組み合わせの中の、例えば最も含有上限値に近い含有量となる組み合わせを、今回の石炭灰混合材料の製造に必要な石炭灰の量の石炭灰を得るための石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量の組み合わせとして決定する。そして、決定部101は、当該決定された組み合わせの排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量に基づいて添加剤の量を決定する(図3/S33)。
【0109】
あるいは例えば決定部101は、石炭灰の価格及び石炭灰混合材料からの所定の重金属の溶出を抑制するための添加剤の価格を記憶部から取得して、当該選定された組み合わせの排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量に基づいて添加剤の量を決定し、かつ該排出量及び該添加剤の量に基づく該石炭灰及び該添加剤の価格の合計が所定の上限金額以下となるいずれかの組み合わせを、今回の石炭灰混合材料の製造に必要な石炭灰の量の石炭灰を得るための石炭灰格納部500それぞれからの石炭灰の排出量の組み合わせとして決定する。
【0110】
その後、排出制御部107は、決定部101の決定結果に基づいてそれぞれの石炭灰格納部500から石炭灰を排出させるとともに、該排出された石炭灰の量に応じた他原料格納部520それぞれから複数の他原料を排出させる(図3/S35)。
【0111】
そして当該排出された石炭灰及び他原料は混練部540により混錬され(図3/S37)、成形部560により成形され(図3/S39)、養生部580により養生(図3/S41)された後に、破砕部600により破砕、分級される(図3/S43)。
【0112】
その後、必要に応じて噴霧部620により、所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤が石炭灰混合材料に噴霧される(図3/S45)。
【0113】
すなわち例えば決定部101は、該決定部101が決定した石炭灰の排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量が所定の閾値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部101の決定結果に基づいて製造される石炭灰混合材料に噴霧することを決定し、噴霧部620は、決定部101の決定結果に基づいて、所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を石炭灰混合材料に噴霧する。
【0114】
その後、製造された石炭灰混合材料について、重金属の溶出検査が行われる(図3/S47)。本溶出検査が、本実施形態における第2溶出検査に該当する。この際行われる重金属の溶出検査(第2溶出検査)とは、例えばJIS K0058−1又は環境省告示18号に基づく検査である。あるいはさらに、JIS K0058−2又は環境省告示19号に基づく、重金属等の含有量試験が行われてもよい。
【0115】
このような検査の結果が、石炭灰混合材料を製品として出荷する際に求められる所定の基準値に適合する場合には(図3/S49:Yes)、当該石炭灰混合材料は出荷される(図3/S51)。一方、当該所定の基準値に適合しない場合には、再度噴霧剤が噴霧されて(図3/S43)、例えば1週間程度ストックヤードにて養生された後に、S47以降の処理が再度行われる。
【0116】
<出力イメージ>
図6は、石炭灰混合材料品質管理システムが出力部160であるディスプレイ等に出力する内容の一例である。図6に示すように、複数の石炭灰格納部500それぞれに格納されている石炭灰の性状及び量を示す格納石炭灰情報が、該複数の石炭灰格納部500に格納された単位ごとに出力される。
【0117】
より具体的には、格納石炭灰情報は、複数の石炭灰格納部500それぞれに格納されている石炭灰の性状及び量を該石炭灰格納部ごとに表す複数の棒グラフ(例えばGr1、Gr2、Gr3…)であり、該棒グラフは該複数の石炭灰格納部500に格納された単位ごとの該石炭灰の該性状及び量が、該棒グラフの一端である下端から他端である上端に向けて該石炭灰格納部500に格納された時期が古い順に並べて配置されて出力される。石炭灰混合材料の製造のために石炭灰が排出された場合には、排出された量に応じて棒グラフの下端から短くなっていき、石炭灰が新たに格納された場合には、格納された量に応じて棒グラフの上端に積み上げられていく。
【0118】
本実施形態においては、棒グラフ中に、石炭灰が格納された日時、電力会社名及び発電所名、搬入車両番号、残格納量、ヒ素及びセレンの含有量(mg/kg)が表示されている。
【0119】
あるいはさらに図6の下部に示すように、格納石炭灰情報が一覧表として出力されてもよい。
【0120】
このように本発明の石炭灰混合材料品質管理システムによれば、多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑え、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、これに限定されない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、種々の変更が可能である。
【0122】
例えば決定部101は、記憶部120から取得された性状に基づいて、該決定部101が決定する石炭灰の排出量に従って排出した場合に得られる石炭灰を原料として用いて製造した場合の石炭灰混合材料から溶出する重金属の溶出量を推定し、該推定された溶出量があらかじめ定められた溶出上限量以下となるようにそれぞれの石炭灰格納部500からの排出量を決定するように構成されていてもよい。
【0123】
あるいは決定部101は、それぞれの石炭灰格納部500から次に排出される石炭灰の性状及び該性状に対応付けられた、第1溶出検査を行った際の該所定の重金属の溶出量を記憶部120から取得し、該取得された性状及び溶出量に基づいて、それぞれの石炭灰格納部500からの排出量を決定するように構成されていてもよい。
【0124】
あるいは決定部101は、該決定部101の決定結果に基づいて排出された石炭灰を原料として用いて製造した石炭灰混合材料について所定の重金属の溶出検査である第2溶出検査を行った際の該所定の重金属の溶出量の入力を受け付けて、該受け付けた該所定の重金属の溶出量が所定の基準値以上である場合に、該所定の重金属の溶出を抑制するための噴霧剤を、該決定部101の決定結果に基づいて製造される石炭灰混合材料に噴霧することを決定するように構成されていてもよい。
【符号の説明】
【0125】
30…性状認識部、101…決定部、103…溶出量受付部、105…シミュレーション部、107…排出制御部、120…記憶部、160…出力部、500…石炭灰格納部、501…容器部、503…排出部、520…他原料格納部、540…混練部、620…噴霧部。
【要約】
【課題】多様な性状の石炭灰を原料として用いても、重金属の溶出を抑え、かつ経済性を損なわずに石炭灰混合材料を製造することができる石炭灰混合材料品質管理システムを提供する。
【解決手段】石炭灰混合材料品質管理システムは、石炭灰の性状を認識する性状認識部と、複数の石炭灰格納部と、記憶部と、該石炭灰格納部から排出されて前記石炭灰混合材料の原料として用いられる該石炭灰の排出量を該それぞれの石炭灰格納部について決定する決定部を備える。決定部は、該決定部が決定する石炭灰の排出量に従って該石炭灰を排出した場合に得られる石炭灰に含有される所定の重金属の含有量があらかじめ定められた含有上限量以下となるように該排出量を決定するように構成されている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6