(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
さらに酸化防止剤を含有する合成繊維用処理剤の水性液であって、前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、前記イオン界面活性剤、及び前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量%とすると、前記酸化防止剤を0.01〜0.5質量%で含有する請求項1又は2に記載の合成繊維用処理剤の水性液。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(第1実施形態)
先ず、本発明に係る合成繊維用処理剤の水性液(以下、水性液ともいう)を具体化した第1実施形態について説明する。本実施形態の水性液は、平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤(以下、処理剤という)と水とを含んで構成される。処理剤は、酸化防止剤をさらに含有してもよい。
【0017】
本実施形態に供される平滑剤は、下記の化3で示されるエステルA1を含む。
【0018】
【化3】
(化3において、
R
1:炭素数7〜23の飽和炭化水素基、又は炭素数7〜23の不飽和炭化水素基。
【0019】
R
2:炭素数8〜24の飽和炭化水素基、又は炭素数8〜24の不飽和炭化水素基。
但し、R
1、及びR
2の少なくとも1つが分岐鎖構造を有する。)
これらのエステルA1は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも化3のR
1の炭素数が7〜17及びR
2の炭素数が8〜18である化合物が好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の冷却曇点を下げ、水性液の低温ハンドリング性をより向上させる。
【0020】
R
1を構成する直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基等が挙げられる。
【0021】
R
1を構成する分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソヘプチル基、イソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基等が挙げられる。
【0022】
R
1を構成する不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基等が挙げられる。
【0023】
R
1を構成する炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソヘプテニル基、イソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基、イソドコセニル基、イソトリコセニル基等が挙げられる。
【0024】
R
2を構成する直鎖の飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、イコシル基、ドコシル基、トリコシル基、テトラコシル基等が挙げられる。
【0025】
R
2を構成する分岐鎖構造を有する飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクチル基、イソノニル基、イソデシル基、イソウンデシル基、イソドデシル基、イソトリデシル基、イソテトラデシル基、イソペンタデシル基、イソヘキサデシル基、イソヘプタデシル基、イソオクタデシル基、イソイコシル基、イソドコシル基、イソトリコシル基、イソテトラコシル基等が挙げられる。
【0026】
R
2を構成する不飽和炭化水素基としては、不飽和炭素結合として二重結合を1つ有するアルケニル基であっても、二重結合を2つ以上有するアルカジエニル基、アルカトリエニル基等であってもよい。また、不飽和炭素結合として三重結合を1つ有するアルキニル基であっても、三重結合を2つ以上有するアルカジイニル基等であってもよい。炭化水素基中に二重結合を1つ有する直鎖の不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばオクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、イコセニル基、ドコセニル基、トリコセニル基、テトラコセニル基等が挙げられる。
【0027】
R
2を構成する炭化水素基中に二重結合を1つ有する分岐鎖構造を有する不飽和炭化水素基の具体例としては、例えばイソオクテニル基、イソノネニル基、イソデセニル基、イソウンデセニル基、イソドデセニル基、イソトリデセニル基、イソテトラデセニル基、イソペンタデセニル基、イソヘキサデセニル基、イソヘプタデセニル基、イソオクタデセニル基、イソイコセニル基、イソドコセニル基、イソトリコセニル基、イソテトラコセニル基等が挙げられる。
【0028】
エステルA1の具体例としては、例えばイソトリデシルオレアート、ラウリルイソステアラート、イソオクチルオクチラート、オクチルイソオクチラート、イソトリデシルイソステアラート、オレイルイソステアラート、イコシルイソステアラート、イソテトラコシルオレアート等が挙げられる。
【0029】
本実施形態に供される平滑剤としては、任意選択で下記の化4で示されるエステルA2を含む。
【0030】
【化4】
(化4において、
R
3:炭素数7〜23の飽和炭化水素基、又は炭素数7〜23の不飽和炭化水素基。
【0031】
R
4:炭素数8〜24の飽和炭化水素基、又は炭素数8〜24の不飽和炭化水素基。
但し、R
3、及びR
4が直鎖構造を有する。)
これらのエステルA2は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。これらの中でも化4のR
3の炭素数が7〜17及びR
4の炭素数が8〜18であることが好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の冷却曇点を下げ、水性液の低温ハンドリング性をより向上させる。
【0032】
R
3又はR
4を構成する飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基の具体例としては、化3のR
1又はR
2を構成する飽和炭化水素基又は不飽和炭化水素基として例示したもののうち、直鎖状のものが挙げられる。
【0033】
エステルA2の具体例としては、例えばオレイルオクチラート、ラウリルオレアート、ステアリルエルカート、ラウリルエルカート等が挙げられる。
水性液中において、エステルA1及びエステルA2の含有割合の合計を100質量%とすると、エステルA1を50〜100質量%の割合で含有する。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果を向上できる。また、エステルA1及びエステルA2の含有割合の合計を100質量%とすると、エステルA1を60〜100質量%の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の冷却曇点を下げ、低温ハンドリング性をより向上できる。
【0034】
本実施形態に供される平滑剤として、上記以外の平滑剤を併用してもよい。上記以外の平滑剤としては、公知のものを適宜採用できる。平滑剤の具体例としては、例えば(1)ブチルステアラート、イソブチルラウラート、イソヘキサコシルステアラート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(2)1,6−ヘキサンジオールジデカノアート、トリメチロールプロパンモノオレアートモノラウラート、ソルビタントリオレアート、ソルビタンモノオレアート、ソルビタンモノステアラート、グリセリンモノラウラート等の、脂肪族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(3)ジラウリルアジパート、ジオレイルアゼラート、ジイソセチルチオジプロピオナート、ビスポリオキシエチレンラウリルエーテルアジパート等の、脂肪族モノアルコールと脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族多価カルボン酸とのエステル化合物、(4)ベンジルオレアート、ベンジルラウラート及びポリオキシプロピレンベンジルステアラート等の、芳香族モノアルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、芳香族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(5)ビスフェノールAジラウラート、ポリオキシエチレンビスフェノールAジラウラート等の、芳香族多価アルコールと脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、芳香族多価アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と脂肪族モノカルボン酸とのエステル化合物、(6)ビス2−エチルヘキシルフタラート、ジイソステアリルイソフタラート、トリオクチルトリメリタート等の、脂肪族モノアルコールと芳香族多価カルボン酸とのエステル化合物、脂肪族モノアルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した(ポリ)オキシアルキレン付加物と芳香族多価カルボン酸とのエステル化合物、(7)ヤシ油、ナタネ油、ヒマワリ油、大豆油、ヒマシ油、ゴマ油、魚油及び牛脂等の天然油脂等、(8)鉱物油等、処理剤に採用されている公知の平滑剤挙げられる。これらの平滑剤は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0035】
平滑剤中において、エステルA1を40〜100質量%の割合で含有する。かかる範囲に規定することにより、本発明の効果を向上できる。また、平滑剤中において、エステルA1を60〜100質量%の割合で含有することが好ましい。かかる範囲に規定することにより、特に処理剤の冷却曇点を下げ、低温ハンドリング性及び後加工における毛羽抑制効果をより向上できる。
【0036】
処理剤中において平滑剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは30〜70質量%、さらに好ましくは40〜60質量%である。かかる範囲に規定されることにより、繊維の平滑性を向上できる。
【0037】
本実施形態に供される非イオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。非イオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)有機酸、有機アルコール、有機アミン及び/又は有機アミドに炭素数2〜4のアルキレンオキサイドを付加した化合物、例えばポリオキシエチレンジラウリン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸エステル、ポリオキシエチレンオレイン酸ジエステル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンラウリルエーテル、ポリオキシプロピレンラウリルエーテルメチルエーテル、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシブチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシプロピレンノニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンオクチルエーテル、2−ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド付加物、ポリオキシエチレン2−エチル−1−ヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンラウロアミドエーテル、ポリオキシエチレントリスチレン化フェニルエーテル等のエーテル型非イオン界面活性剤、(2)ポリオキシアルキレンソルビタントリオレアート、ポリオキシアルキレンヤシ油、ポリオキシアルキレンヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油トリオクタノアート、ポリオキシアルキレン硬化ヒマシ油のマレイン酸エステル、ステアリン酸エステル、又はオレイン酸エステル等のポリオキシアルキレン多価アルコール脂肪酸エステル型非イオン界面活性剤、(3)ステアリン酸ジエタノールアミド、ジエタノールアミンモノラウロアミド等のアルキルアミド型非イオン界面活性剤、(4)ポリオキシエチレンジエタノールアミンモノオレイルアミド、ポリオキシエチレンラウリルアミン、ポリオキシエチレン牛脂アミン等のポリオキシアルキレン脂肪酸アミド型非イオン界面活性剤等が挙げられる。
【0038】
処理剤中において非イオン界面活性剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは5〜70質量%、より好ましくは15〜60質量%、さらに好ましくは25〜55質量%である。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果及び水性液の安定性を向上できる。
【0039】
本実施形態に供されるイオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。イオン界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。これらの成分は、1種を単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0040】
本実施形態に供されるアニオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。アニオン界面活性剤の具体例としては、例えば(1)ラウリルリン酸エステル塩、セチルリン酸エステル塩、オクチルリン酸エステル塩、オレイルリン酸エステル塩、ステアリルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールのリン酸エステル塩、(2)ポリオキシエチレンラウリルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテルリン酸エステル塩、ポリオキシエチレンステアリルエーテルリン酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したもののリン酸エステル塩、(3)ラウリルスルホン酸塩、ミリスチルスルホン酸塩、セチルスルホン酸塩、オレイルスルホン酸塩、ステアリルスルホン酸塩、テトラデカンスルホン酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸塩、2級アルキルスルホン酸(C13〜15)塩等の脂肪族スルホン酸塩又は芳香族スルホン酸塩、(4)ラウリル硫酸エステル塩、オレイル硫酸エステル塩、ステアリル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールの硫酸エステル塩、(5)ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシアルキレン(ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン)ラウリルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンオレイルエーテル硫酸エステル塩等の脂肪族アルコールにエチレンオキサイド及びプロピレンオキサイドから選ばれる少なくとも一種のアルキレンオキサイドを付加したものの硫酸エステル塩、(6)ひまし油脂肪酸硫酸エステル塩、ごま油脂肪酸硫酸エステル塩、トール油脂肪酸硫酸エステル塩、大豆油脂肪酸硫酸エステル塩、なたね油脂肪酸硫酸エステル塩、パーム油脂肪酸硫酸エステル塩、豚脂脂肪酸硫酸エステル塩、牛脂脂肪酸硫酸エステル塩、鯨油脂肪酸硫酸エステル塩等の脂肪酸の硫酸エステル塩、(7)ひまし油の硫酸エステル塩、ごま油の硫酸エステル塩、トール油の硫酸エステル塩、大豆油の硫酸エステル塩、菜種油の硫酸エステル塩、パーム油の硫酸エステル塩、豚脂の硫酸エステル塩、牛脂の硫酸エステル塩、鯨油の硫酸エステル塩等の油脂の硫酸エステル塩、(8)ラウリン酸塩、オレイン酸塩、ステアリン酸塩等の脂肪酸塩、(9)ジオクチルスルホコハク酸塩等の脂肪族アルコールのスルホコハク酸エステル塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤の対イオンとしては、例えばカリウム塩、ナトリウム塩等のアルカリ金属塩、アンモニウム塩、トリエタノールアミン等のアルカノールアミン塩等が挙げられる。
【0041】
本実施形態に供されるカチオン界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。カチオン界面活性剤の具体例としては、例えばラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等が挙げられる。
【0042】
本実施形態に供される両性界面活性剤としては、公知のものを適宜採用できる。両性界面活性剤の具体例としては、例えばベタイン型両性界面活性剤等が挙げられる。
処理剤中においてイオン界面活性剤の含有量は、適宜設定されるが、好ましくは1〜20質量%、より好ましくは3〜16質量%、さらに好ましくは6〜13質量%である。かかる範囲に規定されることにより、本発明の効果、水性液の安定性、又は帯電防止性を向上できる。
【0043】
本実施形態の水性液は、酸化防止剤を含有することが好ましい。酸化防止剤により繊維への成分の保持性をより向上できる。本実施形態に供される酸化防止剤としては、公知のものを適宜採用できる。酸化防止剤の具体例としては、例えば(1)1,3,5−トリス(3’,5’−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、テトラキス[メチレン−3−(3’,5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオナート]メタン等のフェノール系酸化防止剤、(2)オクチルジフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、テトラトリデシル−4,4’−ブチリデン−ビス−(2−t−ブチル−5−メチルフェノール)ジホスファイト等のホスファイト系酸化防止剤、(3)4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ジラウリル−3,3’−チオジプロピオナート等のチオエーテル系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、単独で使用してもよく、2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0044】
前記平滑剤、前記非イオン界面活性剤、前記イオン界面活性剤、及び前記酸化防止剤の含有割合の合計を100質量%とすると、酸化防止剤は、好ましくは0.01〜0.5質量%含有する。かかる範囲に規定することにより繊維への成分の保持性をより向上できる。
【0045】
前記処理剤の30℃の動粘度は、40〜150mm
2/sに規定される。かかる範囲に規定することにより本発明の効果を向上できる。
水性液中において、前記処理剤及び水の含有割合は、特に限定されない。処理剤の含有割合を100質量部とすると、水が5〜30質量部の割合で含有するものが好ましく、5〜20質量部の割合で含有するものがより好ましい。かかる配合割合に規定することにより、水性液のハンドリング性を向上させるとともに、経時安定性を向上させる。
【0046】
前記水性液の冷却曇点は、10℃以下が好ましく、8℃以下がより好ましく、7℃以下がさらに好ましい。水性液の冷却曇点が10℃以下であると、本発明の効果、特に低温ハンドリング性及び後加工における毛羽抑制効果をより向上できる。なお、冷却曇点は、まず調製した水性液を常温から徐々に冷却し、成分を析出させて濁りのある不透明の溶液とした後、徐々に温度を上げ、濁りがなくなる時の温度を示す。
【0047】
(第2実施形態)
次に、本発明による合成繊維
の製造方法を具体化した第2実施形態を説明する。本実施形態の合成繊維
の製造方法は、第1実施形態の水性液又は水性液をさらに水で希釈したエマルションを、例えば紡糸、延伸工程等において合成繊維に付着させる工程を経て得られる合成繊維
の製造方法である。合成繊維に付着した水性液又はエマルションは、乾燥工程により水分を蒸発させてもよい。製造する合成繊維の具体例としては、特に制限はなく、例えば(1)ポリエチレンテレフタラート、ポリプロピレンテレフタラート、ポリ乳酸エステル等のポリエステル系繊維、(2)ナイロン6、ナイロン66等のポリアミド系繊維、(3)ポリアクリル、モダアクリル等のポリアクリル系繊維、(4)ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系繊維等が挙げられる。
【0048】
処理剤を合成繊維に付着させる割合に特に制限はないが、処理剤を合成繊維に対し0.1〜3質量%(水を含まない)の割合となるよう付着させることが好ましい。かかる構成により、本発明の効果をより向上させる。また、処理剤を付着させる方法は、特に制限はなく、例えばローラー給油法、計量ポンプを用いたガイド給油法、浸漬給油法、スプレー給油法等の公知の方法を採用できる。
【0049】
上記実施形態の水性液
、合成繊維の製造方法、及び合成繊維によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)上記実施形態の水性液では、平滑剤として所定のエステル化合物及び界面活性剤を含み、処理剤の30℃の動粘度が所定の範囲を有するように構成した。したがって、繊維への成分の保持性に優れる。特に成分が繊維表面に良好に保持されるため、後加工における毛羽、断糸の抑制等の機能を十分に発揮することができる。また、低温ハンドリング性に優れるという効果が生ずる。特に氷点下の環境下における低温ハンドリング性に優れ、例えば水性液の保管時における成分の凝固を抑制し、低温での水性液の安定性を向上させる。また、低温保管後、使用時における復元性も向上させる。
【0050】
(2)上記実施形態の合成繊維では、成分の保持性に優れる水性液により処理剤が繊維に付着されるため、後加工における毛羽、断糸を抑制できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
【0051】
・本実施形態の水性液には、本発明の効果を阻害しない範囲内において、水性液の品質保持のための安定化剤や制電剤、つなぎ剤、紫外線吸収剤等の通常水性液に用いられる成分をさらに配合してもよい。
【実施例】
【0052】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0053】
試験区分1(合成繊維用処理剤の水性液の調製)
・水性液(実施例1)の調製
平滑剤としてイソトリデシルオレアート(A1−1)を50%、非イオン界面活性剤として硬化ひまし油のエチレンオキサイド25モル付加物(B−1)を15%、オレイン酸のエチレンオキサイド15モル付加物(B−2)を15%、ラウリルアルコールのエチレンオキサイド8モル・プロピレンオキサイド2モルのランダム付加物(B−3)を10%、イオン界面活性剤としてポリオキシエチレン(2モル)ラウリルエーテルのリン酸エステルとカリウムとの塩を4.9%(C−1)、2級アルキルスルホン酸ナトリウム(炭素数13−15)(C−2)を4%、オレイン酸カリウム(C−3)を1%、酸化防止剤として1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン(D−1)を0.1%を均一混合し、処理剤としての混合物を得た。
【0054】
さらに、前記処理剤を100質量部としたとき11.11質量部のイオン交換水を加えて均一混合し、水性液中における水分が10%となるように実施例1の水性液を調製した。
【0055】
・水性液(実施例2〜13及び比較例1〜4)の調製
実施例1の水性液の調製と同様に、表1に示される成分を用いて実施例2〜13及び比較例1〜4の水性液を調製した。なお、表1においては、処理剤中における各成分の種類を示すとともに、水以外の成分(処理剤)を100%とした場合の各成分の配合比率(%)を示す。また、処理剤を100部とした場合の水の添加率(部)を示す。
【0056】
各例の処理剤中における平滑剤の種類と含有量、非イオン界面活性剤の種類と含有量、イオン界面活性剤の種類と含有量、酸化防止剤の種類と含有量は、表1の「平滑剤」欄、「非イオン界面活性剤」欄、「イオン界面活性剤」欄、「酸化防止剤」欄にそれぞれ示すとおりである。また、平滑剤中におけるエステルA1の含有量の質量比は、表1の「質量比:エステルA1/平滑剤」欄、エステルA1及びエステルA2の含有割合の合計を100%とした場合のエステルA1の含有量の質量比は、表1の「質量比:エステルA1/(エステルA1+エステルA2)」欄に示す。水の添加率(部)は、表1の「水」欄に示す。
【0057】
また、各例の水性液の水を除いた処理剤の30℃における動粘度(mm
2/s)は、表1の「処理剤の30℃における動粘度(mm
2/s)」示す。なお、水を除く操作(脱水処理)は、水性液を105℃で2時間熱処理することにより行った。動粘度は、脱水処理後の処理剤の30℃での動粘度をキャノンフェンスケ法により測定することにより求めた。
【0058】
また、各例の水性液の冷却曇点は、表1の「冷却曇点(℃)」欄に示す。なお、冷却曇点は、処理剤の水性液を試験管に10mL採取し、−10℃の恒温槽で30分冷却した後に、温度計を処理剤の水性液に入れ20℃の室温条件で静置し、目視にて濁りが無いと判断した温度(℃)を測定することにより求めた。
【0059】
【表1】
表1において、
A1−1:イソトリデシルオレアート
A1−2:ラウリルイソステアラート
A1−3:イソオクチルオクチラート
A1−4:オクチルイソオクチラート
A1−5:イソトリデシルイソステアラート
A1−6:オレイルイソステアラート
A1−7:イコシルイソステアラート
A1−8:イソテトラコシルオレアート
A2−1:オレイルオクチラート
A2−2:ラウリルオレアート
A2−3:ステアリルエルカート
A2−4:ラウリルエルカート
a−1:なたね油
a−2:鉱物油(100レッドウッド秒、30℃)
a−3:イソブチルラウラート
a−4:イソヘキサコシルステアラート
B−1:硬化ひまし油のエチレンオキサイド25モル付加物
B−2:オレイン酸のエチレンオキサイド15モル付加物
B−3:ラウリルアルコールのエチレンオキサイド8モル・プロピレンオキサイド2モルのランダム付加物
B−4:オレイルアルコールのエチレンオキサイド20モル付加物
B−5:2−ヘキシルヘキサノールのエチレンオキサイド3モル付加物
B−6:ステアリン酸ジエタノールアミド
C−1:ポリオキシエチレン(2モル:エチレンオキサイドの付加モル数を示す。)ラウリルエーテルのリン酸エステルとカリウムとの塩
C−2:2級アルキルスルホン酸ナトリウム(炭素数13−15)
C−3:オレイン酸カリウム
C−4:ラウリルリン酸エステルカリウム塩
C−5:ラウリルスルホン酸ナトリウム塩
D−1:1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン
D−2:1,3,5−トリス(4−t−ブチル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)イソシアヌル酸
を示す。
【0060】
試験区分2(水性液の評価)
・延伸糸の製造
上記のように得られた各例の水性液に、さらに所定量のイオン交換水を添加し、均一混合して、処理剤の濃度10%のエマルションを調製した。固有粘度0.64、酸化チタン含有量0.2%のポリエチレンテレフタラートのチップを常法により乾燥した後、エクストルーダーを用いて295℃で紡糸した。口金から吐出して冷却固化した後、走行糸条に前記のエマルションを、計量ポンプを用いたガイド給油法にて、走行糸条に対し処理剤として1.0%となるよう付着させた。その後、ガイドで集束させて、90℃に加熱した引き取りローラーにより1400m/分の速度で引き取り、ついで引き取りローラーと4800m/分の速度で回転する延伸ローラーとの間で3.2倍に延伸し、83.3デシテックス(75デニール)36フィラメントの延伸糸を製造した。製造した延伸糸を用いて、繊維への成分の保持性を後加工での毛羽・断糸として評価した。また、水性液の低温ハンドリング性を次の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0061】
・後加工毛羽の評価
上記方法で得た延伸糸のパッケージを、整経機を模したミニチュア整経機に10本仕立て、25℃×65%RHの雰囲気下で糸速度600m/分で24時間巻き取った。
【0062】
・毛羽の評価
このときの巻き取り直前に、毛羽計数装置(東レエンジニアリング社製の商品名DT−105)にて毛羽数を4時間測定し、以下の評価基準で後加工毛羽を評価した。結果を表1の「後工程毛羽」欄に示す。
【0063】
◎◎(優れる):4時間での毛羽の数が0〜2個の場合
◎(良好):4時間での毛羽の数が3〜5個の場合
○(可):4時間での毛羽の数が6〜9個の場合
×(不良):4時間での毛羽の数が10個以上の場合
・後加工断糸の評価
毛羽の評価と同様の方法にて24時間巻き取った。24時間の巻き取り時に断糸した回数を測定し、以下の評価基準で後加工断糸を評価した。結果を表1の「後工程断糸」欄に示す。
【0064】
・断糸の評価
◎◎(優れる):24時間での断糸回数が0回の場合
◎(良好):24時間での断糸回数が1〜2回の場合
○(可):24時間での断糸回数が3〜4回の場合
×(不良):24時間での断糸回数が5回以上の場合
・低温ハンドリング性
水性液の低温ハンドリング性を凝固性及び
復元性として評価した。凝固性及び
復元性は、以下の方法で求めた。
【0065】
・凝固性の評価
30℃まで加温し、撹拌均一化させた水性液を容量100mLのふた付きポリビン(内径45mm)に60mL入れ、容器を密閉した。設定温度を−5℃にしたインキュベーターに水性液を入れたポリビンを3日静置した。静置後、水性液の外観を目視判定し、以下の基準により凝固性を評価した。下記基準に示される「流動性」とは水性液を入れたポリビンを横(90°)に傾け、30秒以内に水性液の一部が容器外へ流れ出た場合、流動性ありと判断した。結果を表1の「凝固性」欄に示す。
【0066】
◎◎(優れる):外観に曇り、濁りはなく、流動性がある場合
◎(良好):外観に曇り、濁りがあり、一部固化している場合
○(可):外観に曇り、濁りがあり、大半が固化している場合
×(不良):完全に凝固しており、流動性がない場合
・復元性の評価
凝固性評価で用いた水性液の入ったポリビンを−5℃インキュベーターから取り出し、設定温度を10℃にしたインキュベーターに3時間静置した。その後の水性液の外観を目視判定し、以下の基準により復元性を評価した。なお、下記基準に示される「流動性」の判断基準は、凝固性欄に示される基準と同様である。結果を表1の「復元性」欄に示す。
【0067】
◎◎(優れる):外観に曇り、濁りはなく、流動性がある場合
◎(良好):外観に曇り、濁りがあり、一部固化している場合
○(可):外観に曇り、濁りがあり、大半が固化している場合
×(不良):完全に凝固しており、流動性がない場合
表1の結果からも明らかなように、各実施例の水性液は、後加工での毛羽・断糸、低温ハンドリング性の評価がいずれも可以上の評価であった。本発明によれば、繊維への成分の保持性に優れるとともに、低温ハンドリング性に優れる水性液を得ることができる。
【解決手段】本発明は、平滑剤、非イオン界面活性剤、及びイオン界面活性剤を含有する合成繊維用処理剤の水性液であって、平滑剤が所定の構造のエステルA1、及び任意選択で所定の構造のエステルA2を含み、かつ平滑剤中にエステルA1を40〜100質量%の割合で含有し、かつエステルA1及びエステルA2の含有割合の合計を100質量%とすると、エステルA1を50〜100質量%の割合で含有し、かつ合成繊維用処理剤の30℃の動粘度が40〜150mm