【実施例】
【0036】
以下、本発明の構成及び効果をより具体的にするため、実施例等を挙げるが、本発明がこれらの実施例に限定されるというものではない。尚、以下の実施例及び比較例において、部は質量部を、また%は質量%を意味する。
【0037】
試験区分1(合成繊維用処理剤の調製)
(実施例1)
表1に示される各成分を使用し、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(A−4)が30部、シリコーン(B−1)が70部の配合割合となるようにビーカーに加えた。これらを撹拌してよく混合した。撹拌を続けながら固形分濃度が25%となるようにイオン交換水を徐々に添加することで実施例1の合成繊維用処理剤の25%水性液を調製した。
【0038】
(実施例2〜18及び比較例1〜4)
実施例2〜18及び比較例1〜4の各合成繊維用処理剤は、表1に示される各成分を使用し、実施例1と同様の方法にて調製した。
【0039】
なお、各例の処理剤中におけるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの種類と含有量、シリコーンの種類と含有量、及びその他成分の種類と含有量は、表1の「(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」欄、「(B)シリコーン」欄、及び「(C)その他成分」欄にそれぞれ示すとおりである。
【0040】
【表1】
表1の記号欄に記載するA−1〜A−22、a−1〜a−7、B−1〜B−10、C−1〜C−7の各成分の詳細は以下のとおりである。
【0041】
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル)
A−1:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを3モル付加させた化合物
A−2:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A−3:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
A−4:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
A−5:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを30モル付加させた化合物
A−6:2−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A−7:2−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
A−8:2−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
A−9:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A−10:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
A−11:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを15モル付加させた化合物
A−12:2−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを3モル付加させた化合物
A−13:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを3モル付加させた化合物
A−14:2−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
A−15:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
A−16:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
A−17:2−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを12モル付加させた化合物
A−18:2−ヘキサデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
A−19:2−デカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
A−20:2−オクタデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
A−21:2−ノナノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
A−22:2−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル、プロピレンオキサイドを3モル付加させた化合物
a−1:4−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを7モル付加させた化合物
a−2:6−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
a−3:6−トリデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
a−4:3−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
a−5:7−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを9モル付加させた化合物
a−6:1−ドデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
a−7:1−テトラデカノール1モルに対してエチレンオキサイドを5モル付加させた化合物
上記ポリオキシアルキレンアルキルエーテルに用いられるポリオキシアルキレンアルキルエーテルの種類、1価脂肪族アルコールの炭素数、及びヒドロキシ基の位置について、表2の「(A)ポリオキシアルキレンアルキルエーテル」欄、「1価脂肪族アルコールの炭素数」欄、及び「ヒドロキシ基の位置」欄にそれぞれ示す。
【0042】
【表2】
(シリコーン)
B−1:粘度:250mm
2/s、当量:7600g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−2:粘度:1300mm
2/s、当量:1700g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−3:粘度:1700mm
2/s、当量:3800g/molであるモノアミン型のアミノ変性シリコーン
B−4:粘度:5000mm
2/s、当量:7000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−5:粘度:10000mm
2/s、当量:2000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−6:粘度:600mm
2/s、当量:3000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−7:粘度:80mm
2/s、当量:4000g/molであるジアミン型のアミノ変性シリコーン
B−8:粘度:10000mm
2/sのジメチルシリコーン
B−9:粘度:500mm
2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=100/0、シリコーン/ポリエーテルの質量比=50/50のポリエーテル変性シリコーン
B−10:粘度:1700mm
2/s、エチレンオキサイド/プロピレンオキサイド=40/60、シリコーン/ポリエーテルの質量比=20/80のポリエーテル変性シリコーン
(その他成分)
C−1:1−エチル−2−(ヘプタデセニル)−4,5−ジハイドロ−3−(2−ハイドロキシエチル)−1H−イミダゾリニウムのエチル硫酸塩
C−2:イソドデシルホスフェート
C−3:ポリオキシエチレン(n=10)ラウリルエーテル酢酸
C−4:酢酸
C−5:ジエタノールアミン
C−6:ラウロイルサルコシネート
C−7:ビスフェノールAのエチレンオキサイド2モル付加物のジドデシルエステル
試験区分2(合成繊維、及び炭素繊維の製造)
試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を用いて、合成繊維、及び炭素繊維を製造した。
【0043】
まず、工程1として、合成繊維としてアクリル樹脂を湿式紡糸した。具体的には、アクリロニトリル95質量%、アクリル酸メチル3.5質量%、メタクリル酸1.5質量%からなる極限粘度1.80の共重合体を、ジメチルアセトアミド(DMAC)に溶解してポリマー濃度が21.0質量%、60℃における粘度が500ポイズの紡糸原液を作成した。紡糸原液は、紡浴温度35℃に保たれたDMACの70質量%水溶液の凝固浴中に孔径(内径)0.075mm、ホール数12,000の紡糸口金よりドラフト比0.8で吐出した。
【0044】
凝固糸を水洗槽の中で脱溶媒と同時に5倍に延伸して水膨潤状態のアクリル繊維ストランド(原料繊維)を作成した。このアクリル繊維ストランドに対して、固形分付着量が1質量%(溶媒を含まない)となるように、試験区分1で調製した合成繊維用処理剤を給油した。合成繊維用処理剤の給油は、合成繊維用処理剤の4%イオン交換水溶液を用いた浸漬法により実施した。その後、アクリル繊維ストランドに対して、130℃の加熱ローラーで乾燥緻密化処理を行い、更に170℃の加熱ローラー間で1.7倍の延伸を施した後に巻き取り装置(以下、ワインダーともいう。)を用いて糸管(以下、ボビンともいう。)に巻き取った。
【0045】
次に、工程2として、巻き取られた合成繊維から糸を解舒し、230〜270℃の温度勾配を有する耐炎化炉で空気雰囲気下1時間、耐炎化処理した後にボビンに巻き取ることで耐炎化糸(耐炎化繊維)を得た。
【0046】
次に、工程3として、巻き取られた耐炎化糸から糸を解舒し、窒素雰囲気下で300〜1300℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換後、ボビンに巻き取ることで炭素繊維を得た。
【0047】
試験区分3(評価)
実施例1〜18及び比較例1〜4の処理剤について、合成繊維の集束性、合成繊維の巻き形状、及び合成繊維の平滑性を評価した。各試験の手順について以下に示す。また、試験結果を表1の“集束性”、“巻き形状”、“平滑性”欄に示す。
【0048】
(集束性)
試験区分2の工程1において、合成繊維用処理剤を給油したアクリル繊維ストランドが加熱ローラーを通過する際の集束状態を目視で確認して、以下の基準で集束性の評価を行った。
【0049】
・合成繊維の集束性の評価基準
◎(良好):集束性が良く、加熱ローラーへの巻きつきもなく、操業性に全く問題ない場合
〇(可):やや糸がばらけることがあるが断糸は無く操業性に問題ない場合
×(不良):糸のばらけが多く、頻繁に断糸が発生して操業性に影響がある場合
(巻き形状)
試験区分2の工程1において、ワインダーで合成繊維を巻き取った時の形状を目視で確認して、以下の基準で巻き形状の評価を行った。なお、通常、ワインダーで合成繊維を巻き取ると、合成繊維はボビンの周面に沿って円筒状に巻き取られる。
【0050】
・巻き形状の評価基準
◎(良好):合成繊維を100kg以上巻き取っても綺麗な円筒状の形状を保つ場合
〇(可):合成繊維を80kg以上100kg未満巻き取った状態で綺麗な円筒状の形状を保つ場合
×(不良):合成繊維を80kg未満巻き取った状態で綺麗な円筒状の形状を保つことができない場合
ここで、綺麗な円筒状の形状を保つことができないとは、合成繊維の巻き付け状態にばらつきが生じて円筒状の周面に凹凸が生じた状態や、巻き付けられた合成繊維の位置がずれて長球状になった状態等を意味するものとする。
【0051】
(平滑性)
平滑性を測定する装置として、島津製作所社製のオートグラフABS−1kNX(張力測定装置)を使用した。
【0052】
図1に示されるように、処理剤を付着させた合成繊維(以下、試験糸1ともいう。)の一端をオートグラフの把持治具2に固定し、フリーローラー3、クロムメッキ梨地ピン4、及びフリーローラー5を順に介して、試験糸1の他端に50gの分銅6を固定した。クロムメッキ梨地ピン4において、試験糸1が接する駆動軸4aの直径は1cmで、表面粗度は2Sである。フリーローラー3とクロムメッキ梨地ピン4との間における試験糸1の延びる方向に対する、クロムメッキ梨地ピン4とフリーローラー5との間における試験糸1の延びる方向のなす角度が90°となるように配されている。この状態で25℃で60%RHの条件下クロムメッキ梨地ピン4の駆動軸4aを周速100m/分の速度でオートグラフに張力がかかる方向に回転させた状態にしてオートグラフによる張力を0.1秒毎に30秒間測定した。この時の張力の平均値(N)を求め、次の基準で評価した。
【0053】
◎◎(優れる):張力の平均値が2N未満
◎(良好):張力の平均値が2N以上、3N未満
〇(可):張力の平均値が3N以上、4N未満
×(不良):張力の平均値が4N以上
表1の結果から、本発明によれば、合成繊維の集束性を好適に向上させることができる。また、合成繊維を巻き取った際に、巻き形状を綺麗に保つことができる。また、合成繊維の平滑性を向上させることができる。