【文献】
Klemes DG et al.,Biochemical and Biophysical Research Communications,1986年,137(2),722-728
【文献】
Van Nispen JW et al.,International Journal of Peptide and Protein Research,1977年,9(3),193-202
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
一態様では、本発明は、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。別の態様では、本発明は、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ノルArg−Trp−NH
2を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。更なる実施形態では、本発明の化合物は、医薬として使用される。本発明の化合物は、皮膚障害の治療的処置に使用されることが好ましい。本発明の化合物は、色素沈着障害、光線性皮膚症、皮膚癌の予防、及び/又は皮膚細胞中のDNA修復の処置に使用されることが好ましい。本発明の化合物は、皮膚に局所的に適用されることが好ましい。
【0008】
一態様では、本発明は、医薬製造のための本発明に基づいた化合物の使用に関する。
【0009】
別の態様では、本発明は、化合物Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−X−Trp−NH
2(式中、XはホモArg又はノルArgから選択される)又は薬学的に許容されるその塩を調製する方法に関し、この方法は、
トリペプチドD−Phe−X−Trp(4−6)を用意するステップと;
トリペプチド(4−6)D−Phe−X−Trpとヒスチジン(3)とを連結するステップと;
ジペプチドNle−Glu(1−2)とテトラペプチドHis−D−Phe−X−Trp(3−6)とを連結するステップと
による。
【0010】
別の態様では、本発明は、トリペプチドD−Phe−ホモArg−Trp(4−6)が、リジン側鎖の遊離アミノ官能基をグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)を用いて変換することにより、トリペプチドD−Phe−Lys−Trpから調製される方法に関する。
【0011】
別の態様では、本発明は、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−X−Trp−NH
2(式中、XはホモArg又はノルArgから選択される)を有する化合物又は薬学的に許容されるその塩を投与することによる治療によって哺乳動物を処置する方法に関する。
【0012】
別の態様では、本発明は、α−MSH類似体の調製中に、最初にリジン基を導入し、続いてリジン側鎖の遊離アミノ官能基をグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)を用いて変換してホモArg基を生成することにより、ホモArg基を含むα−MSH類似体を調製する方法に関する。
【0013】
本発明の化合物は、MC1R結合親和性、効力、及び/又は有効性に関する、特にMC1Rに関連する疾患に対して、in−vitro及び/又はin−vivoの医薬的試験において、有益な結果をもたらすことを、我々は驚いたことに見出した。更に、本発明の化合物は、安全に且つ効率的に合成され、詳細には高収率であり得ることを、我々は見出した。
【0014】
[発明の詳細な説明]
本発明の目的のために、本明細書で表される用語「α−MSH類似体」は、メラノコルチン−1受容体(MC1R)に対してアゴニスト活性を呈するα−MSHの誘導体と定義され、α−MSHが結合する上記受容体はメラノサイト内でメラニンの産生を開始する。
【0015】
本明細書において、以下の略語が使用されている、Arg−アルギニン、D−Phe−フェニルアラニンのD異性体;Glu−グルタミン酸;Gly−グリシン;His−ヒスチジン;ホモArg−ホモアルギニン(Argより、アルキル鎖中に1個の−CH
2−単位が付加されている);ノルArg−ノルアルギニン(Argより、アルキル鎖中に1個の−CH
2単位が少ない);Lys−リジン;Met−メチオニン;Nle−ノルロイシン;Phe−フェニルアラニン;Ser−セリン;Trp−トリプトファン;及びTyr−チロシン。アミノ酸の前の接頭辞「D」は、D−異性体の立体配置を示す。他に詳細に明示しない限り、全てのアミノ酸は、L−異性体の立体配置である。
【0016】
全てのペプチド及びペプチド誘導体は、アシル化アミノ末端を左側に、アミド化カルボキシル末端は右側に書かれる。理解されるように、アシル化アミノ末端は、本発明に基づいて他の基により置き換えることができるが、ペプチド及びペプチド誘導体の配向は同一のままである。一般的慣習に従って、左側の最初のアミノ酸は1位に位置し、例えば、Nle(1)はNleがN末端(左側)に位置することを表す。
【0017】
本明細書では、ホモArg及びノルArgは、厳密にはアミノ酸誘導体であるけれども、アミノ酸として表され得る。同じように、第4級アンモニウム基を含む化合物、ホモArg、ノルArg及び/又は他のアミノ酸誘導体は、厳密にはペプチド誘導体であるけれども、ペプチドとして表され得る。したがって、当業者は、本文書におけるペプチド分子への言及は(ヘキサペプチド及びα−MSH類似体を含む)、それらの誘導体への言及を含むことを理解されたい。
【0018】
本明細書の全体を通して、単語「含む(comprise)」、又は「含む(comprises)」又は「含んでいる(comprising)」などの変化型は、明記された要素、整数若しくはステップ、又は要素群、整数(複数)又はステップ(複数)の包含を意味するが、いかなる他の要素、整数若しくはステップ、又は要素群、整数(複数)若しくはステップ(複数)も排除しないことを理解されたい。
【0019】
本発明は、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−X−Trp−NH
2(式中、XはホモArg又はノルArgから選択される)を有するヘキサペプチドα−MSH類似体化合物又は薬学的に許容されるその塩に関する。本発明の一態様に基づいて、ホモArg又はノルArgは、有効性増大を含む付加的利益のために、α−MSH類似体の骨格中のArgを置き換えて、効率的な調製を提供する。
【0020】
本発明の化合物はまた、薬学的に許容される塩として存在してもよい。
【0021】
環境に応じて、特定のアミノ酸は塩基として作用し、プロトンを引き付け得て、当技術分野で周知のようにペプチドに電荷をもたらす。したがって、本発明の化合物は、薬学的に許容される塩の形態であってもよい。本化合物は、陽イオンであり得て、負電荷を帯びた対イオンと結合する。本発明の化合物に関連し得る薬学的に許容される陽イオンX
+の例は、H
+(水素イオン)、ナトリウム、カリウム、及びカルシウムのイオン、好ましくはH
+である。対イオンは、負電荷を帯びた薬学的に許容される陰イオンY
−であることが好ましい。Y
−はまた、複数の負電荷を有し得て、その場合、1個の陰イオンは複数の正電荷を帯びた化合物と結合し得ることが理解されよう。薬学的に許容される陰イオンY
−の例は、HCl、HBr、HI、H
2SO
4、H
3PO
4、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、マレイン酸、マロン酸、メタンスルホン酸、フマル酸、コハク酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、及びアスコルビン酸などの有機酸又は無機酸から生じる。任意選択で、これらの化合物は、例えばトリフルオロ酢酸塩のようにハロゲン化される。Y
−は、アセテート、クロリド、又はスルフェートであることが好ましく、より好ましくはアセテートである。好ましい塩は酢酸塩である。本発明に基づいて、本化合物は塩として存在し得て;塩への変換は、当技術分野で標準的なステップであり、本発明において任意選択であるが、塩への変換は本化合物の調製中又は調製後に実行され得る。
【0022】
本発明の化合物は、医薬として医療適用に使用され得る。本発明の医療適用は治療的性質のものであることが理解されよう。本発明の目的のために、疾患予防は処置という用語に包含されると考えられる。
【0023】
本発明の化合物は、様々な医療適用の処置及び/又は予防用に、好ましくは排他的な治療的性質の医療適用に有益に使用され得る。本発明の化合物の使用への言及は、薬学的に許容される塩だけでなく、好ましくは本発明の化合物のプロドラッグ、立体異性体、互変異性体、水和物、水素化物及び/又は溶媒和物の使用も含むことが好ましい。
【0024】
本発明の化合物は、本明細書に示される適用及び投与の処置のための医薬製造において使用され得る。
【0025】
本発明の化合物は、疾患の処置のために使用されることが好ましく、本化合物は、結合を通して、疾患を標的とする薬物としてMC1R発現を有益に増加させる。このような疾患の例は、色素沈着障害、光線性皮膚症、皮膚癌、及び/又は皮膚細胞中のDNA修復(UV暴露の後/UV暴露に起因する)である。
【0026】
一態様では、本発明の化合物は、色素沈着(又は皮膚色素沈着)障害の処置用に使用される。このような障害は、色素沈着過剰でもあり得るが、この場合は詳細には色素沈着低下障害が重大である。本発明の化合物は、メラニン形成を誘起し得て、治療的メラニン形成の誘起に有用であることを我々は見出した。
【0027】
一態様では、本発明は、本発明に基づいた化合物を用いた色素沈着障害の処置としての皮膚中のメラニン形成の誘起に関する。用語「メラニン形成」は、本明細書で使用されるとき、治療的目的で、メラノサイトと呼ばれるメラニン産生細胞によりメラニンを産生する対象の能力と定義される。治療的メラニン形成を生み出す例は、UV照射損傷から皮膚を保護すること、例えば、皮膚のしわ、日光皮膚炎及び/又は癌の発達などを防止することである。
【0028】
色素沈着低下障害の重大な例は白斑である。白斑は、メラニンを含む色素の損失を特徴とする慢性の皮膚状態であり、周囲の無影響の有色素の、より暗色の皮膚組織とは異なる色及び外観を有し、それらと対照を成す不規則に蒼白の脱色性の皮膚をもたらす。一態様では、本発明は、白斑の処置、特にUV光処置との組み合わせに関する。
【0029】
本発明の化合物は、白斑の処置に、詳細には白斑部位の再色素沈着のために使用されることが好ましく、したがって、白斑の皮膚と周囲の皮膚組織との間の対照を減少させる。
【0030】
光線性皮膚症は、UV照射に対する皮膚の光線過敏に関連する皮膚疾患であり、5種類の一般的部類に分類され得る:特発性光線性皮膚症(多形日光疹(PLE)、光線痒疹、種痘様水疱症、慢性光線過敏性皮膚炎、及び日光じん麻疹−SUを含む);外因性の要因に続発する光線性皮膚症(光毒性反応及び光アレルギー反応を含む);内因性の要因に続発する光線性皮膚症(骨髄性プロトポルフィリン症−EPPを含む主にポルフィリン症);光線増悪性皮膚疾患(自己免疫疾患、感染状態、及び栄養障害を含む);並びに遺伝性皮膚症。
【0031】
一態様では、本発明は、光線性皮膚症の処置に関する。本発明の化合物は、光線性皮膚症の処置に、詳細にはEPP、PLE、及びSUに対して、最も詳細にはEPPに対して使用されることが好ましい。
【0032】
皮膚癌は、メラノーマ及び非メラノーマの癌を含む。一般的には、より高い皮膚メラニンレベルは、皮膚癌予防の尺度と考えられる。一態様では、本発明は、癌予防のための本発明の化合物の使用に関する。本発明の化合物は、癌予防、詳細には、メラノーマ及び詳細には非メラノーマを含む皮膚癌の予防に使用されることが好ましい。一般の人々が本発明を通して皮膚癌予防から恩恵を受ける一方、免疫無防備状態の患者(詳細にはHIV−AIDS患者、同種移植片患者、すなわち、受給者が別の対象から移植片を受け取る、及び/又は免疫抑制薬処方を受けている患者)、受容体機能の損失又は減少に関連する1つ又は複数のMC1R変異型対立遺伝子を有するヒト対象(好ましくはVal60LEU(V60L)、Asp84Glu(D84E)、Val92Met(V92M)、Arg142His(R142H)、Arg151Cys(R151C)、Arg160Trp(R160W)及びAsp294His(D294H)から選択される)を含む特定の患者群が、本発明の化合物の使用から特に恩恵を受ける。
【0033】
UV照射が、DNAに、詳細には真皮(皮膚)細胞のDNAに損傷を起こし得ることは理解される。一態様では、本発明はDNA修復に関する。したがって、本発明は、好ましくは皮膚内の、詳細には皮膚のUV照射に続くDNAの修復における使用のための本発明の化合物に関する。
【0034】
本発明の化合物は対象に使用されることが好ましく、上記対象は好ましくは哺乳動物、好ましくはげっ歯類及び/又はヒト、より好ましくはヒトの対象である。
【0035】
本発明の一態様では、本発明の化合物は、対象の処置用のUV光と併用される。
【0036】
本発明の化合物は、当技術分野で既知の様々な投与技術又は送達技術を使用して、対象に投与され得る。投与方式は、処置される対象及び選択された化合物に応じて変わる。様々な態様では、本化合物は、経口的に(又は経腸的に)、非経口的又は局所的に(好ましくは皮膚に対して)投与され得る。
【0037】
用語「経口的」は、消化管を介した化合物の投与を包含して本明細書で使用される。
【0038】
用語「非経口的」は、それにより化合物が体循環に導入される、経口投与以外の任意の投与経路を包含して本明細書で使用される。一般的には、非経口投与は、静脈内、筋肉内、皮下、腹腔内、皮内、眼性、吸入、経鼻、直腸式、腟式、経皮的、バッカル、舌下、又は粘膜性の投与で達成され得る。
【0039】
用語「粘膜性」は、本明細書で使用されるとき、ヒトの身体の粘膜(mucosa)(粘膜(mucous membranes))を利用する方法による化合物の投与を包含し、バッカル、鼻腔内、歯肉、腟式、舌下、肺性、又は直腸組織などであるが、これらに限定されない。
【0040】
用語「経皮的」は、本明細書で使用されるとき、皮膚に適用され続いて皮膚を通過し体循環へと入る化合物の投与を包含し、経皮製剤、バッカルパッチ、皮膚パッチ、又は経皮的パッチなどであるが、これらに限定されない。
【0041】
用語「局所的」は、本明細書で使用されるとき、皮膚への投与を包含し、局部効果のための、皮膚、目、又は粘膜領域へのクリーム、ゲル、又は溶液などの適用製剤を含み得る。本発明の化合物は、皮膚投与用の局所用組成物に組み込まれ得る。一態様では、局所用組成物は、皮膚内の適用位置において局部有効性を有し、したがって局部的に投与される。別の態様では、局所用組成物は、化合物が経皮的に(皮膚を通して)血流内へ移動することを必要とし、化合物への全身的暴露をもたらす全身的有効性を有し、したがって経皮的に投与される。
【0042】
化合物への全身的暴露を達成し得る他の好ましい投与経路は、皮下(「皮膚の下」)及び筋肉内(「筋肉の中」)である。
【0043】
一態様では、本発明の化合物は、皮膚に局所的に投与される。したがって、本発明は、本発明の化合物を対象の皮膚に投与することに関する。別の態様では、本発明の化合物は、皮膚に非経口的に投与される。したがって、本発明は、本発明の化合物を対象の皮膚を通して投与することに関する。
【0044】
本発明の化合物は、組成物内に製剤化されることが好ましい。上記組成物は、好ましくは医薬組成物である。上記組成物は、本発明の化合物に加えて、少なくとも1つの薬学的に許容可能な原料を好ましくは含む。そのような薬学的に許容可能な原料の例は、担体、ポリマー、増粘剤、希釈剤、充填剤、緩衝剤、防腐剤及び界面活性剤である。
【0045】
一態様では、上記組成物は、制御放出性の製剤であり、化合物への身体のより長い及び/又はより制御された暴露をもたらす。上記組成物は、インプラントであり得る。好ましい一実施形態では、上記化合物は、国際公開第2006/012667号に記載されるものなどの長期放出性のインプラント製剤で投与される。
【0046】
本発明の化合物は、以下に記載のように好ましくは調製されるが、当業者は本明細書を検討し、本方法を変更したものが利用され得て、また、本方法を変更したものが現在特許請求された発明によって包含されることを理解するであろう。好ましい方法に基づいて、液相又は固相のペプチド合成により、好ましくは続いてクロマトグラフィー精製により、且つ好ましくは凍結乾燥により、本発明の化合物を調製する。
【0047】
一態様において、本発明は、Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2の調製に関し:
ステップ1:トリペプチドD−Phe−X−Trp(4−6)(式中、XはホモArg又はノルArgから選択される)を提供することと;
ステップ2:トリペプチド(4−6)D−Phe−X−Trpとヒスチジン(3)とを連結することと;
ステップ3:ジペプチドNle−Glu(1−2)とテトラペプチドHis−D−Phe−X−Trp(3−6)とを連結することと、
による。
【0048】
化合物を精製し(ステップ4);好ましくは化合物を濃縮し(ステップ5);且つ好ましくは化合物を凍結乾燥する(ステップ6)ことが好ましい。
【0049】
詳細には、Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−X−Trp−NH
2(式中、XはホモArg又はノルArgから選択される)を含む本発明の化合物の合成ステップは、以下の好ましいステップを含む:
ステップ1:エタノール中のPd/C触媒を用いた水素化分解によるトリペプチド(4−6)の脱保護;
ステップ2a:ジクロロメタンとジメチルホルムアミドの混合物中のHBTU/DIPEAを用いた、脱保護されたトリペプチド(4−6)と(Fmoc)及び(Trt)保護されたヒスチジン(3)との連結;
ステップ2b:HOAc/H20混合物中の保護された(3−6)ペプチドの脱トリチル化;
ステップ2c:H2O/メタノール及びNaOHと共にジオキサンの混合物中の(3−6)ペプチドのFmoc保護基の開裂;
ステップ3:ジメチルホルムアミド中のDCC/HOOBtを用いた、(1−2)ジペプチドNle−Glu(Ot.Bu)と、(3−6)ペプチドとの連結;
ステップ3a:8NHCl及びフェノールを用いた処置による、2(Glu)残基の側鎖からのOt.Bu保護基の除去;
ステップ4:C−18カラム及び精製水/アセトニトリル/TFA溶離液を使用した予備RP−HPLCによるペプチドの精製;
ステップ5:同一の成分から構成されているがアセトニトリル含有量がより高い溶離液を用いた、同一のクロマトグラフカラムを使用した濃縮ステップ。有機溶媒を蒸発により除去する;
ステップ6:有機溶媒の蒸発後に得られた水溶液の凍結乾燥
を含む。
【0050】
これらのより特定の好ましい各合成ステップは、上述の一般的な調製方法に独立して及び別々に導入され、好ましいプロセスに到達し得る。したがって、好ましい各ステップは、本発明の化合物の調製のための好ましい条件を別々に表している。
【0051】
好ましい態様では、以下に更に説明されるように、ホモArg基の導入は、最初のLys組み込み及びLysのホモArgへの変換により好ましくは起きる。任意選択で、LysのホモArgへの変換は、調製のより後のステップにおいて行われ、Lys基は、例えばトリフルオロアセチル基などを用いて一時的に保護される。
【0052】
本明細書で使用される略語は、当業者に容易に理解されるであろうが、以下のリストを便宜のためにのみ提供する:
Ac:アセチル又はCH
3−CO−
BCAT:ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート
DCC:ジシクロヘキシルカルビジイミド
DIPEA:ジイソプロピルエチルアミン
Fmoc:フルオレニルメトキシカルボニル
HBTU:ベンゾトリアゾリルテトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート
HOOBT:3−ヒドロキシ−3,4ジヒドロ−4オキソ−ベンゾトリアジン
OtBu−基:O−tert−ブチル基
Trt−基:トリチル基
本発明の化合物は、上述の加工ステップ1のトリペプチドにホモArg又はノルArgの単位として導入され得るホモArg又はノルArgの単位を含む。しかしながら、ホモArgアミノ酸誘導体は、効率的な加工条件を使用して、経費低減のための高収率をもたらし、αMSH類似体に有益に導入され得ることを、我々は驚いたことに見出した。本態様は、一般に、α−MSH類似体、すなわち、ホモArg基を含む、上に提供した定義に基づいたMC1Rアゴニストに関することに留意されたい。これは本発明の化合物を含むが、原則的に国際公開第2008025094号に記載されるものも含み、ホモArg基を含む上記類似体式構造は、本明細書に参照により組み込まれる。
【0053】
したがって、本発明は、リジン基を使用して、リジン側鎖の遊離アミノ官能基とグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)との反応により、リジン基をホモArg基に変換することにより、ホモArg基を含むα−MSH類似体を調製するプロセスに一般に関する。
【0054】
好ましい態様では、最初にトリペプチドD−Phe−Lys−Trpリジンを調製し、続いて、リジン側鎖の遊離アミノ官能基とグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)との反応により、リジン基をホモArgに変換して、トリペプチドD−Phe−ホモArg−Trpを生成する。
【0055】
したがって、好ましい態様では、本発明は、リジン側鎖の遊離アミノ官能基をグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)を用いて変換することにより、上述のステップ1のトリペプチドD−Phe−ホモArg−TrpをD−Phe−Lys−Trpから調製することにより、上に定義したようなAc−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2を調製するプロセスに関する。
【0056】
上述のステップ1の前に、リジン基を導入してホモArgに変換することが好ましい。任意選択で、リジン基は上述のステップ1の前に導入されるが、本発明の化合物の調製のより後のステップにおいてホモArgに変換され得る。その場合には、リジン基の遊離アミノ官能基は好ましくは一時的に保護される。保護は、例えば、トリフルオロアセチル基などを用いて実行され得る。より後のステップで脱保護化の後に、Lysはグアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)を用いてホモArgに変換される。
【実施例】
【0057】
以下の実施例は、本発明に対して例証的なものであり、本発明の範囲を特定の実施例に限定することを望むものではなく提供される。
【0058】
実施例1
詳細には、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2を有する本発明の化合物は、上述の加工ステップ1〜6を使用して一般に調製された。ホモアルギニン単位は、以下のように:ステップ1の前に、保護されたリジン誘導体をトリペプチド4〜6のレベルで最初に組み込み、リジントリペプチドを部分的に脱保護し、グアニル化試薬ベンゾトリアゾール−1−カルボキサミジニウムトシレート(BCAT)を用いてリジン側鎖の遊離アミノ官能基をホモアルギニンに変換して、ステップ1の前にトリペプチドに導入された。
【0059】
本化合物の同定及び純度をMS(トリフルオロアセテート陰イオンを含まない)及びHPLCにより確認し、以下の結果を得た:
【表1】
500MHz陽子スペクトルを用いて固有情報を更に提供した。
【0060】
本発明のノルArg化合物は、上述のように、例えばトリペプチド(4−6)出発単位中にノルArgを使用することにより調製され得る。
【0061】
実施例2:cAMPに対する効果
機能性MC1Rを発現しているヒトのメラノサイト培養物、コード1753を使用して、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2を有する本発明の化合物の試験を行った。メラノサイトを0.3*10
6細胞/ウェルの密度で蒔いて培養した。48時間後、異なる化合物濃度(10
−12〜10
−7M)を用いて1時間、メラノサイトを処置した。化合物を用いない対照を試験に含めた。参照化合物NDP−MSHもまた、比較として同一濃度で含めた。50μlの1NのHClの添加により反応を停止させ、各ウェルの上澄み液を使用して、Suzuki 1996年(Suzuki I、Cone RD、Im S、Nordlund JJ、Abdel−Malek Z:「Binding of melanotropic hormones to the MC1 receptor on human melanocytes stimulates proliferation and melanogenesis」。Endocrinology137:1627−1633、1996年)に記載されるように、ラジオイムノアッセイを使用してcAMPを測定した。各群に含まれる3通りのウェルを用いて、各ウェルからの重複試料の検査を行った。群ごとの6cAMP測定手段を、対照群の%として表した。ANOVAを使用してニューマンコイルス検定に従って、統計解析を実行した。いくつかの場合では、独立t検定を使用した。
【0062】
結果は、本発明の化合物は、最高有効性を達成することにより(10
−7Mで216%対10
−7Mで202%)参照化合物NDP−MSHより機能が優れ、結果は10
−10M〜10
−7Mの濃度で、対照と比較して(p<0.05)で統計的有意差があった。
【0063】
化合物は、MC1R応答のセカンドメッセンジャーであるcAMPの測定試験に関して優れた有効性結果を示したと結論を下す。
【0064】
実施例3:チロシナーゼ活性に対する効果
機能性MC1Rを発現しているヒトのメラノサイト培養物、コード1750を使用して、式Ac−Nle−Glu−His−D−Phe−ホモArg−Trp−NH
2を有する本発明の化合物の試験を行った。メラノサイトを0.3*10
6細胞の密度で60mmディッシュに蒔いて培養した(3通りのディッシュ/群)。48時間後、メラノサイトを1日おきに合計6日間、本化合物の異なる投与量(10
−12M〜10
−7M)を用いて処置した。化合物を用いない対照を試験に含めた。参照化合物NDP−MSH、アファメラノチドもまた、比較として同一濃度で含めた。処置5日目、
3H−ラベル付きの、チロシナーゼに対する基体であるチロシンを添加し、24時間後、Suzukiらによって記載されたように(実施例2を参照されたい)、上澄み液をチロシナーゼ活性に関する検査を行うために保存した。各群に含まれる3通りのディッシュを用いて、それぞれからの重複試料の検査を行った。各ディッシュ内の細胞数を計数し、チロシナーゼ活性をdpm/10
6細胞数及び対照の%として表した。ANOVAを使用してニューマンコイルス検定に従って、統計解析を実行した。
【0065】
このチロシナーゼ活性化試験は、上述のcAMP試験の早期のセカンドメッセンジャー効果と比較して、MC1R活性化後の後期の現象に関連することが理解されよう。上に指摘したように、チロシナーゼ活性は処置日数を必要とする。
【0066】
本化合物は、最高有効性を達成することにより(10
−8Mで227%対10
−9Mで156%;本化合物は10
−9Mで198%の、より高い有効性も実際に有する)参照化合物NDP−MSH、アファメラノチドより機能が優れ、結果は10
−10M〜10
−7Mの濃度で、対照と比較して(p<0.05で)統計的有意差があったことを、我々は見出した。
【0067】
本発明の化合物は、チロシナーゼの測定試験においても優れた有効性を示し、MC1Rに関するアゴニスト活性に続く後期の現象を表していると結論を下す。
【0068】
広範に記載したように、本発明の趣旨又は範囲から逸脱することなく、特定の実施形態に示されるように、多数の変形及び/又は修正が本発明に対してなされ得ることが当業者には理解されよう。したがって、本実施形態は、全ての事項において例証的なものとして、限定的なものではないと考えられる。