(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
昇降路内に設置される乗りかごと、前記昇降路内に設置され前記乗りかごを駆動させる巻上機と、前記巻上機の回転をロック可能とする電磁ブレーキと、を備えるエレベータシステムであって、
前記電磁ブレーキへの電源供給を制御するスイッチ部に接続される電源制御装置
を具備し、
前記電源制御装置は、
停電時に、保守員の操作に応じて前記スイッチ部がオンされると、第1電圧の印加により前記電磁ブレーキによるロックの解除を開始し、
前記スイッチ部がオンされたことを検出してからの時間に応じて変化する時間因子に基づいて、前記電磁ブレーキによるロックが解除されたことを検出すると、前記電磁ブレーキに印加する出力電圧を、前記第1電圧よりも低い第2電圧に切り替えて、前記電磁ブレーキによるロックの解除を保持する電源制御を行い、
前記保守員の操作に応じて、前記スイッチ部がオフされたことを検出すると、前記出力電圧を前記第2電圧から前記第1電圧に切り替え、
前記乗りかごが最寄階まで移動したことを検出すると、前記出力電圧を前記第1電圧から0Vに切り替える、
エレベータシステム。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、図面を参照して実施形態を説明する。
図1は、実施形態に係るエレベータシステムの概略構成例を示す図である。図中の10はエレベータの昇降路であり、建物内に設置されている。また、10a,10b,10c,…は、各階の乗場である。
【0013】
昇降路10内に乗りかご11およびカウンタウエイト12が設けられている。乗りかご11およびカウンタウエイト12は、図示しないガイドレールに昇降動作可能に支持されている。
【0014】
メインロープ13の一端に乗りかご11が連結され、メインロープ13の他端にカウンタウエイト12が連結されている。メインロープ13は、巻上機14の回転軸に取り付けられたメインシーブ14aに巻回されている。14bはそらせシーブである。本実施形態においては、巻上機14が昇降路10内に設置されている、マシンルームレスタイプのエレベータである場合を想定している。
【0015】
巻上機14には、電磁ブレーキ15が設けられている。電磁ブレーキ15は、乗りかご11の停止時、または、停電時に、乗りかご11が昇降しないように、メインシーブ14aの回転をロックする。電磁ブレーキ15は、乗りかご11の主な運転動作を制御する制御装置16と、乗りかご11の停電時の動作を制御する停電時自動着床装置17とに接続されている。電磁ブレーキ15は、電磁ブレーキ15に含まれるブレーキコイルに電流が流れ、励磁されると、開放状態となり、電磁ブレーキ15によるロックを解除する。一方で、電磁ブレーキ15に含まれるブレーキコイルに流れる電流が遮断されると、拘束状態となり、電磁ブレーキ15はメインシーブ14aの回転をロックする。巻上機14および電磁ブレーキ15の種類および構造については、特に限定はされない。
【0016】
制御装置16は、乗りかご11の主な運転動作(例えば、正常時の運転動作)を制御する。停電時自動着床装置17は、停電時の乗りかご11の運転動作を制御する。
【0017】
ここで、建物で停電が発生した際の乗りかご11の動作について説明する。
乗りかご11の走行中に建物で停電が発生した場合、乗りかご11の落下や急上昇等を防止するために、巻上機14の回転は電磁ブレーキ15により自動的かつ機械的にロックされる。この動作は、例えば、開放状態にあった電磁ブレーキ15への通電が停電によって遮断されたことに伴い実行される。これによれば、乗りかご11は、停電が発生した際に走行していた位置で停止することになる。
【0018】
建物で発生した停電、および、停電に伴う乗りかご11の停止を検出すると、停電時自動着床装置17は、蓄電部(非常用電源)に蓄電されている電力を利用して、電磁ブレーキ15のブレーキコイルに電流を流し、電磁ブレーキ15を拘束状態から開放状態に遷移させ、電磁ブレーキ15によるロックを解除する。なお、上記した蓄電部は、停電時自動着床装置17内に設けられていても良いし、停電時自動着床装置17とは別に設けられていても良い。
【0019】
その後、停電時自動着床装置17は、蓄電部に蓄電されている電力を利用して、巻上機14を駆動し、乗りかご11を最寄階まで移動させて、乗りかご11内にいる利用者を降車させる。なお、乗りかご11を最寄階まで移動させる際には、停電時自動着床装置17は巻上機14を駆動しなくても良い。この場合、乗りかご11の重さとカウンタウエイト12の重さとの不釣り合いにより、重力で上方か下方のいずれかに乗りかご11を移動させて、乗りかご11を最寄階まで移動させる。
【0020】
この一連の動作によれば、停電が発生した際に走行していた位置が乗りかご11の着床位置以外であっても(つまり、乗りかご11が停止した位置が着床位置以外であっても)、乗りかご11内にいる利用者を安全に最寄階まで移動させることが可能であり、閉じ込め事故の発生を抑制することが可能となる。
【0021】
その一方で、上記した一連の動作を実行するための機能、具体的には、電磁ブレーキ15によるロックを解除し、乗りかご11を最寄階まで自動的に移動させる機能(以下、自動開放機能と表記する)に異常が発生してしまった場合、乗りかご11を最寄階まで移動させることができないため、閉じ込め事故が発生してしまう恐れがある。
【0022】
このような事態の発生を抑制するために、停電時自動着床装置17には、上記した自動開放機能とは別に、保守員の操作に応じて電磁ブレーキ15によるロックを解除し、停電により停止中の乗りかご11を最寄階まで移動させることが可能な機能(以下、手動開放機能と表記する)が搭載されている。以下では、この手動開放機能を実現するために停電時自動着床装置17に設けられている救出運転用電源制御装置18の機能構成について説明する。
【0023】
なお、本実施形態では、救出運転用電源制御装置18が停電時自動着床装置17に設けられている場合を想定するが、これに限定されず、救出運転用電源制御装置18は停電時自動着床装置17とは別の装置として設けられても良い。この場合、停電時自動着床装置17が完全に故障してしまったとしても、上記した閉じ込め事故の発生を抑制することが可能である。
【0024】
図2は、救出運転用電源制御装置18の機能構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、救出運転用電源制御装置18は、スイッチ部SWを介して、電磁ブレーキ15に接続されている。
【0025】
スイッチ部SWは、保守員の操作に応じて、オン・オフが切り替えられ、電磁ブレーキ15への電源供給を制御する。スイッチ部SWがオンの場合、救出運転用電源制御装置18の出力電圧が電磁ブレーキ15のブレーキコイルに印加される。これにより、ブレーキコイルに電流が流れ、励磁され、電磁ブレーキ15は開放状態となり、電磁ブレーキ15によるロックが解除される。一方で、スイッチ部SWがオフの場合、救出運転用電源制御装置18の出力電圧は電磁ブレーキ15のブレーキコイルに印加されないため、電磁ブレーキ15は拘束状態となり、巻上機14の回転は電磁ブレーキ15によりロックされる。
【0026】
なお、詳細については後述するが、救出運転用電源制御装置18の出力電圧には、電磁ブレーキ15の状態を拘束状態から開放状態に遷移させるためのフォーシング電圧(第1電圧)と、電磁ブレーキ15の状態を開放状態のまま保持する保持電圧(第2電圧)とが存在する。フォーシング電圧は、保持電圧より高い電圧であり、例えば保持電圧の約2〜4倍程度の電圧に相当する。
【0027】
救出運転用電源制御装置18は、
図2に示すように、制御部181、電力変換回路182、蓄電部183および電流検出部184、等を備えている。
【0028】
制御部181は、救出運転用電源制御装置18内の各部の動作を制御するマイコンである。電力変換回路182は、蓄電部183による電源電圧を電磁ブレーキ15に出力するための電圧に変換し、変換後の電圧を電磁ブレーキ15に出力する。蓄電部183は、例えば二次電池であり、上記した自動開放機能時に利用される蓄電部と同一であっても良いし、別途設けられていても良い。電流検出部184は、いわゆる電流計であり、電磁ブレーキ15に出力される電流値を計測(検出)する。計測された電流値は、計測結果として、制御部181にフィードバックされる。
【0029】
図3は、制御部181の機能構成の一例を示すブロック図である。制御部181は、
図3に示すように、電流値取得部181a、スイッチ状態判定部181b、タイマ部181cおよび電力制御部181d、等をさらに備えている。
【0030】
電流値取得部181aは、電流検出部184によって計測された救出運転用電源制御装置18の出力電流の値を取得する。スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWの状態、つまり、スイッチ部SWがオンであるか、オフであるかを判定する。タイマ部181cは、予め設定された時間をカウントする。電力制御部181dは、電力変換回路182を制御して、救出運転用電源制御装置18の出力電圧を制御する。詳細については後述するが、電力制御部181dは、スイッチ部SWがオンであると判定されてからの時間に応じて変化する時間因子に基づいて、救出運転用電源制御装置18の出力電圧を制御する。
【0031】
なお、制御部181に設けられる各部181a〜181dの詳細な機能は、フローチャートの説明と共に後述するため、ここではその詳しい説明を省略する。
【0032】
図4は、救出運転用電源制御装置18によって実行される救出運転処理の手順の一例を示すフローチャートである。
【0033】
まず、救出運転用電源制御装置18の制御部181は、建物で停電が発生したにも関わらず、停電時自動着床装置17に異常が生じていることが示される異常信号の入力を受け付けると、救出運転用電源制御装置18の状態をオフ状態から待機状態に移行させる。具体的には、制御部181の電力制御部181dは、電力変換回路182を制御して、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを、0Vからフォーシング電圧V
1に切り替える制御を行う(ステップS1)。
【0034】
このように、救出運転処理においては、いつ保守員の操作に応じてスイッチ部SWがオンされるかが分からないため、電力制御部181dは、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを、フォーシング電圧V
1(後述の
図5を参照)に予め切り替えておく必要がある。なお、電力制御部181dは、例えば、電力変換回路182に対して出力するパルス信号のパルス幅を変化させることで、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを切り替える制御を行う。
【0035】
続いて、制御部181の電流値取得部181aは、電流検出部184によって計測される救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outの値を取得する(ステップS2)。そして、制御部181のスイッチ状態判定部181bは、ステップS2の処理において取得された電流値I
outが予め設定された第1閾値I
1(後述の
図5を参照)を超えているか否かを判定する(ステップS3)。
【0036】
ステップS3の処理の結果、電流値I
outが第1閾値I
1未満であると判定された場合(ステップS3のNo)、スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWはオフであると判定し(ステップS4)、上記したステップS2の処理に戻り、再度同様な処理を実行する。
【0037】
一方で、上記したステップS3の処理の結果、電流値I
outが第1閾値I
1を超えていると判定された場合(ステップS3のYes)、スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWがオンになっていると判定する(換言すると、救出運転用電源制御装置18の状態が既に出力状態にあるものと判定する)(ステップS5)。
【0038】
スイッチ状態判定部181bによりスイッチ部SWがオンになっていると判定されると、制御部181のタイマ部181cは、第1時間t
1のカウントを開始する(ステップS6)。第1時間t
1は、電磁ブレーキ15の状態を拘束状態から開放状態に遷移させるまでに要する時間(つまり、電磁ブレーキ15によるロックを解除するまでに要する時間)に相当し、例えば2秒間等、巻上機14(および電磁ブレーキ15)の大きさに応じて予め設定されている。
【0039】
制御部181の電力制御部181dは、タイマ部181cによる第1時間t
1のカウントが終了したか否かを判定する(ステップS7)。ステップS7の処理の結果、第1時間t
1のカウントがまだ終了していないと判定された場合(ステップS7のNo)、電力制御部181dは、上記したステップS7の処理に戻り、タイマ部181cによる第1時間t
1のカウントが終了するまで、同様な処理を繰り返し実行する。
【0040】
一方で、上記したステップS7の処理の結果、第1時間t
1のカウントが終了したと判定された場合(ステップS7のYes)、電力制御部181dは、電磁ブレーキ15が拘束状態から開放状態に遷移し終え、以降は、電磁ブレーキ15を開放状態のまま保持すれば良いものと判定する。そして、電力制御部181dは、電力変換回路182を制御して、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを、フォーシング電圧V
1から保持電圧V
2(後述の
図5を参照)に切り替える制御を行う(ステップS8)。
【0041】
その後、スイッチ状態判定部181bは、電流値取得部181aによって継続的に取得される電流値I
outが予め設定された第2閾値I
2未満であるか否かを判定する(ステップS9)。
【0042】
ステップS9の処理の結果、電流値I
outが第2閾値I
2を超えていると判定された場合(ステップS9のNo)、スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWはオンであると判定し(ステップS10)、上記したステップS9の処理に戻り、再度同様な処理を実行する。
【0043】
一方で、上記したステップS9の処理の結果、電流値I
outが第2閾値I
2未満であると判定された場合(ステップS9のYes)、スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWがオフになっていると判定する(ステップS11)。なお、上記した第1閾値I
1と第2閾値I
2とは同じ値であっても良いし、異なる値であっても良い。但し、第1閾値I
1と第2閾値I
2とは、I
1≧I
2の関係を有するものとする。
【0044】
スイッチ状態判定部181bによりスイッチ部SWがオフになっていると判定されると、制御部181のタイマ部181cは、第2時間t
2のカウントを開始する(ステップS12)。第2時間t
2は、救出運転用電源制御装置18の状態を出力状態から待機状態に復帰させるまでに要する時間に相当する。
【0045】
制御部181の電力制御部181dは、タイマ部181cによる第2時間t
2のカウントが終了したか否かを判定する(ステップS13)。ステップS13の処理の結果、第2時間t
2のカウントがまだ終了していないと判定された場合(ステップS13のNo)、電力制御部181dは、上記したステップS13の処理に戻り、タイマ部181cによる第2時間t
2のカウントが終了するまで、同様な処理を繰り返し実行する。
【0046】
一方で、上記したステップS13の処理の結果、第2時間t
2のカウントが終了したと判定された場合(ステップS13のYes)、電力制御部181dは、救出運転用電源制御装置18を待機状態に復帰させるために、電力変換回路182を制御して、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを、保持電圧V
2からフォーシング電圧V
1に切り替える制御を行う(ステップS14)。これによれば、保守員によってスイッチ部SWが再度オンされた場合にも対応可能となる。
【0047】
しかる後、制御部181は、乗りかご11内にいる利用者の降車が無事完了したことが示される通知信号の入力を受け付けると、救出運転用電源制御装置18の状態を待機状態からオフ状態に移行させ、ここでの一連の処理を終了させる。具体的には、制御部181の電力制御部181dは、電力変換回路182を制御して、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを、フォーシング電圧V
1から0Vに切り替える制御を行い(ステップS15)、ここでの一連の処理を終了させる。
【0048】
なお、ここでは、上記した通知信号の入力を受け付けた場合に、救出運転用電源制御装置18の状態を待機状態からオフ状態に移行させるとしたが、これに限定されず、例えば、所定時間が経過しても、救出運転用電源制御装置18の状態が待機状態から出力状態に変化しない場合に、救出運転用電源制御装置18の状態をオフ状態に移行させるとしても良い。
【0049】
次に、
図5のタイミングチャートを参照して、スイッチ部SWのオン・オフと、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outおよび出力電流I
outと、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inおよびブレーキ電流I
inとの関係を説明する。なお、ブレーキ電圧V
inは、電磁ブレーキ15のブレーキコイルに印加される電圧に相当し、ブレーキ電流I
inは、電磁ブレーキ15のブレーキコイルに流れる電流に相当する。
【0050】
図5に示すタイミングT
1は、上記した異常信号の入力を受け付けたタイミングに相当する。
図5(b)に示すように、タイミングT
1の時点で、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outは、0Vからフォーシング電圧V
1に切り替えられる。タイミングT
1の時点では、
図5(a)に示すように、スイッチ部SWはオフであるため、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outは、
図5(c)に示すように0Aである。また、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inは
図5(d)に示すように0Vであり、電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは
図5(e)に示すように0Aである。
【0051】
図5に示すタイミングT
2は、スイッチ部SWがオフからオンに切り替わったタイミングに相当する。
図5(a)に示すように、タイミングT
2の時点でスイッチ部SWがオフからオンに切り替わると、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outが電磁ブレーキ15のブレーキコイルに印加される。このため、
図5(d)に示すように、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inは、タイミングT
2の時点で、0Vからフォーシング電圧V
1に変化する。また、タイミングT
2の時点を境に、
図5(c)および(e)に示すように、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは徐々に上昇し始める。
【0052】
図5に示すタイミングT
3は、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outが第1閾値I
1を超えたタイミングに相当する。
タイミングT
3の時点を境に、上記した第1時間t
1のカウントが開始される。なお、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは、
図5(c)および(e)に示すように、上記したタイミングT
2の時点から徐々に上昇し始め、第1時間t
1が経過するより前に、最大値I
maxに到達する。
【0053】
図5に示すタイミングT
4は、第1時間t
1のカウントが終了したタイミング、換言すると、電磁ブレーキ15の状態が開放状態になったタイミングに相当する。
図5(b)に示すように、タイミングT
4の時点で、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outは、フォーシング電圧V
1から保持電圧V
2に切り替えられる。これに伴い、
図5(d)に示すように、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inもまた、フォーシング電圧V
1から保持電圧V
2に変化する。また、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inの変化に伴い、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは、
図5(c)および(e)に示すように、徐々に下降し、所定値I
cで安定して一定となる。
【0054】
図5に示すタイミングT
5は、スイッチ部SWがオンからオフに切り替わったタイミングに相当する。
図5(a)に示すように、タイミングT
5の時点でスイッチ部SWがオンからオフに切り替わると、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outが電磁ブレーキ15のブレーキコイルに印加されなくなるため、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inは、保持電圧V
2から0Vに変化する。また、タイミングT
5の時点を境に、
図5(c)および(e)に示すように、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは徐々に下降し始める。
【0055】
図5に示すタイミングT
6は、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outが第2閾値I
2未満となったタイミングに相当する。
タイミングT
6の時点を境に、上記した第2時間t
2のカウントが開始される。なお、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outおよび電磁ブレーキ15のブレーキ電流I
inは、
図5(c)および(e)に示すように、上記したタイミングT
5の時点から徐々に下降し始め、第2時間t
2のカウントが終了するタイミング、つまり後述するタイミングT
7の時点で共に0Aとなる。
【0056】
図5に示すタイミングT
7は、第2時間t
2のカウントが終了したタイミング、換言すると、電磁ブレーキ15の状態が拘束状態になったタイミングに相当する。
図5(b)に示すように、タイミングT
7の時点で、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outは保持電圧V
2からフォーシング電圧V
1に切り替えられる。
【0057】
図5に示すタイミングT
8は、上記した通知信号の入力を受け付けたタイミングに相当する。
図5(b)に示すように、タイミングT
8の時点で、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outは、フォーシング電圧V
1から0Vに切り替えられる。
【0058】
以上が、
図4に示した救出運転処理時における、スイッチ部SWのオン・オフと、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outおよび出力電流I
outと、電磁ブレーキ15のブレーキ電圧V
inおよびブレーキ電流I
inとの関係である。
【0059】
以下では、一般的な救出運転用電源制御装置と対比して、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18の効果について説明する。なお、一般的な救出運転用電源制御装置は、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18が奏し得る効果の一部を説明するためのものであって、一般的な救出運転用電源制御装置と本実施形態とで共通する構成や効果を除外するものではない。
【0060】
図6は、スイッチ部SWのオン・オフと、一般的な救出運転用電源制御装置の出力電圧V
out’および出力電流I
out’との関係を説明するためのタイミングチャートである。なお、
図6では、実線で示される一般的な救出運転用電源制御装置の出力電圧V
out’および出力電流I
out’の変化に加えて、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outおよびI
outの変化を点線で示している。また、
図6に示すタイミングT
1〜T
8は、
図5に示したタイミングT
1〜T
8と同様である。
【0061】
一般的な救出運転用電源制御装置は、
図6(a)および
図6(b)の実線によって示されるように、スイッチ部SWのオン・オフに関わらず、待機状態に移行した時点以降、常にフォーシング電圧V
1(単一電圧)を出力している。これは、一般的な手動開放機能においては、保守員の操作に応じて、いつスイッチ部SWがオン・オフされたかが分からないことに起因している。これによれば、電磁ブレーキ15の状態が拘束状態から開放状態に遷移し、以降は、開放状態を保持すれば良いだけの場合であっても、一般的な救出運転用電源制御装置は、電磁ブレーキ15の状態を開放状態に遷移させることが可能な高い値の電流を出力していることになる。
【0062】
これに対し、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18は、
図6(a)および
図6(b)の点線によって示されるように、出力電流I
outの値に基づいてスイッチ部SWがオンになっていることを検出し、かつ、スイッチ部SWがオンになっていることを検出してから第1時間t
1のカウントが終了するまでの間はフォーシング電圧V
1を出力し、第1時間t
1のカウントが終了した以降はフォーシング電圧V
1よりも低い保持電圧V
2を出力するとしている。このため、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outは、
図6(c)の点線によって示されるように、スイッチ部SWがオンであっても、開放状態を保持すれば良いだけの場合には、フォーシング電圧V
1に応じた高い値の電流ではなく、保持電圧V
2に応じた低い値の電流を出力している。
【0063】
これによれば、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18は、一般的な救出運転用電源制御装置と比較して、
図6の斜線部分に相当する電圧および電流を抑制することが可能であり、上記した救出運転処理に要する電力を抑制することが可能となる。つまり、省電力化を実現することが可能である。
【0064】
また、一般的な救出運転用電源制御装置は、上記したように、常にフォーシング電圧V
1を出力しているため、自装置にかかる発熱負荷を考慮すると、あまり大きい電流を出力することができないという不都合がある。これに対し、本実施形態に係る救出運転用電源制御装置18は、一般的な救出運転用電源制御装置と比較して、フォーシング電圧V
1を出力する時間が短いため、自装置にかかる発熱負荷を抑制することが可能であり、さらには、一般的な救出運転用電源制御装置に比べて一時的に大きい電流を出力することが可能である(換言すると、出力電流の最大値I
maxを大きくすることが可能である)。これによれば、一般的な救出運転用電源制御装置と比較して、より大きな巻上機14(および電磁ブレーキ15)に対応することが可能となる。
【0065】
なお、本実施形態においては、スイッチ状態判定部181bは、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outが第1閾値I
1を超えている場合に、スイッチ部SWがオンになっていると判定し、救出運転用電源制御装置18の出力電流I
outが第2閾値I
2未満である場合に、スイッチ部SWがオフになっていると判定するとしたが、スイッチ部SWがオンであるか、オフであるかを判定する方法はこれに限定されない。
【0066】
例えば、スイッチ状態判定部181bは、スイッチ部SWがオンになったことを示すオン信号、および、スイッチ部SWがオフになったことを示すオフ信号を、スイッチ部SWより直接取得し、取得された信号に基づいて、スイッチ部SWがオンであるか、オフであるかを判定しても良い。
【0067】
あるいは、スイッチ状態判定部181bは、電磁ブレーキ15の状態が開放状態であることを示す開放信号、および、電磁ブレーキ15の状態が拘束状態であることを示す拘束信号を、電磁ブレーキ15より直接取得し、取得された信号に基づいて、スイッチ部SWがオンであるか、オフであるかを判定しても良い。
【0068】
また、本実施形態においては、電力制御部181dは、電力変換回路182に対して出力するパルス信号のパルス幅を変化させることで、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを切り替える制御を行うとしたが、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを切り替え制御する方法はこれに限定されない。
【0069】
例えば、電力制御部181dは、蓄電部183を構成する複数の電池のうち、出力電圧に寄与する電池のセル数を変化させることで、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを切り替える制御を行うとしても良い。
【0070】
あるいは、電力制御部181dは、電力変換回路182に含まれるチョッパ回路の出力を変化させることで、救出運転用電源制御装置18の出力電圧V
outを切り替える制御を行うとしても良い。
【0071】
さらに、本実施形態においては、電力制御部181dは、予め設定された第1時間t
1のカウントが終了すると、電磁ブレーキ15が拘束状態から開放状態に遷移し終え、以降は、電磁ブレーキ15を開放状態のまま保持すれば良いものと判定するとしたが、電磁ブレーキ15が拘束状態から開放状態に遷移し終えたと判定する方法はこれに限定されない。
【0072】
例えば、電力制御部181dは、電流値取得部181aによって継続的に取得される電流値に基づいて、出力電流I
outの値が第1閾値I
1を超えてからの電流値の変化の平均を算出し、算出される電流値の変化の平均が所定値以下となった場合に、電磁ブレーキ15が拘束状態から開放状態に遷移し終えたと判定するとしても良い。この方法は、電磁ブレーキ15の状態が開放状態に近づくにつれて、出力電流I
outの波形が安定してくることを利用した方法である。
【0073】
あるいは、電力制御部181dは、電磁ブレーキ15の状態が開放状態であることを示す開放信号を、電磁ブレーキ15より直接取得し、取得された開放信号に基づいて、電磁ブレーキ15が拘束状態から開放状態に遷移し終えたと判定するとしても良い。
【0074】
本実施形態におけるエレベータシステムは、昇降路10内に設置される乗りかご11と、乗りかご11を駆動するための駆動装置であって、昇降路10内に設置される巻上機14と、停電時に巻上機14の回転をロック可能な電磁ブレーキ15と、停電時における乗りかご11の運転動作を制御する停電時自動着床装置17と、を備えている。また、停電時自動着床装置17は、停電時に、電磁ブレーキ15によるロックを解除し、乗りかご11を最寄階まで自動的に移動させる制御を行う自動開放機能と、停電時に自動開放機能に異常が発生した場合、保守員の操作に応じて、電磁ブレーキ15によるロックを解除し、乗りかご11を最寄階まで移動させる制御を行う手動開放機能とを備えている。
【0075】
上記した手動開放機能を実現するための救出運転用電源制御装置18は、自動開放機能に異常が発生すると、出力電圧V
outを0Vからフォーシング電圧V
1に切り替え、保守員の操作に応じて、救出運転用電源制御装置18と電磁ブレーキ15とを接続するスイッチ部SWがオンになっていることを検出すると、電磁ブレーキ15によるロックが解除されたかどうかを判定し、電磁ブレーキ15によるロックが解除されたと判定された場合、出力電圧V
outをフォーシング電圧V
1よりも低い保持電圧V
2に切り替えるように構成されている。
【0076】
これによれば、電磁ブレーキによるロックを手動で解除し、停電により停止中のエレベータかごを最寄階に移動させる機能の省電力化を実現し得るエレベータシステムを提供することが可能である。
【0077】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】実施形態によれば、エレベータシステムは、乗りかごと、巻上機と、巻上機の回転をロック可能とする電磁ブレーキと、を備える。エレベータシステムは、電磁ブレーキへの電源供給を制御するスイッチ部に接続される電源制御装置を備える。電源制御装置は、停電時に、保守員の操作に応じてスイッチ部がオンされると、第1電圧の印加により電磁ブレーキによるロックの解除を開始し、スイッチ部がオンされたことを検出してからの時間に応じて変化する時間因子に基づいて、電磁ブレーキによるロックが解除されたことを検出すると、電磁ブレーキに印加する出力電圧を、第1電圧よりも低い第2電圧に切り替えて、電磁ブレーキによるロックの解除を保持する電源制御を行う。