特許第6795265号(P6795265)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795265エレベータのドア係合装置の隙間測定方法および隙間測定具
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】6795265
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】エレベータのドア係合装置の隙間測定方法および隙間測定具
(51)【国際特許分類】
   B66B 13/28 20060101AFI20201119BHJP
   B66B 13/12 20060101ALI20201119BHJP
   B66B 5/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   B66B13/28 F
   B66B13/12 C
   B66B5/00 D
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-145623(P2019-145623)
(22)【出願日】2019年8月7日
【審査請求日】2019年8月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100091982
【弁理士】
【氏名又は名称】永井 浩之
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100105153
【弁理士】
【氏名又は名称】朝倉 悟
(74)【代理人】
【識別番号】100150717
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 和也
(72)【発明者】
【氏名】齋藤 大寛
【審査官】 須山 直紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2001−002350(JP,A)
【文献】 特開平06−255961(JP,A)
【文献】 特開2015−051843(JP,A)
【文献】 特開2009−113976(JP,A)
【文献】 特開2007−137568(JP,A)
【文献】 特開平09−132369(JP,A)
【文献】 特開2001−039658(JP,A)
【文献】 国際公開第2018/207323(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 13/28
B66B 5/00
B66B 13/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかごのかごドア側に設けられた係合ベーンに乗場の乗場ドア側に設けられた係合ローラを係合させるドア係合装置において、前記乗りかごが着床したときに前記係合ローラと前記係合ベーンの間にできる隙間の巾を測定するエレベータのドア係合装置の隙間測方法であって、
前記係合ローラと前記係合ベーンの間の隙間に差し込み可能な2枚の長尺な測定板と、
前記測定板の間隔を調整可能に前記測定板を平行に連結するねじ部材と、からなる測定具を用い、
前記測定具の前記測定板の間隔をねじ部材により調整し、
乗りかご上から前記測定具を前記係合ローラと前記係合ベーンの間に隙間に差し込んで前記測定板の間隔を前記隙間の巾に合わせ、前記測定板の間隔を測ることにより前記隙間の巾を測定することを特徴とするエレベータのドア係合装置の隙間測定方法。
【請求項2】
前記測定板の上下端部がそれぞれ前記ねじ部材により連結され、前記測定板の中央部の間隔を前記隙間に間隔に合わせること特徴とする請求項1に記載のエレベータのドア係合装置の隙間測定方法。
【請求項3】
乗りかごのかごドア側に設けられた係合ベーンに乗場の乗場ドア側に設けられた係合ローラを係合させるドア係合装置において、前記乗りかごが着床したときに前記係合ローラと前記係合ベーンの間にできる隙間の巾を測定するエレベータのドア係合装置の隙間測定具であって、
前記係合ローラと前記係合ベーンの間の隙間に差し込み可能な2枚の長尺な測定板と、
前記測定板の間隔を調整可能に前記測定板を平行に連結するねじ部材と、
からなることを特徴とするエレベータのドア係合装置の隙間測定具。
【請求項4】
前記測定板の上下端部がそれぞれ前記ねじ部材により連結され、前記測定板の中央部のが前記隙間に間隔の測定部になっていること特徴とする請求項3に記載のエレベータのドア係合装置の隙間測定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータのドア係合装置の隙間測定方法および隙間測定具に関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータでは、かごドアと乗場ドアとを連動させて開閉するために、ドア係合装置が設けられている。このドア係合装置が作動することによって、乗りかごが乗場に着床した時に、かごドアと乗場ドアはいっしょに開閉するようになる。
この種のドア係合装置は、乗場ドア装置に設けられている係合ローラと、かごドア装置に配置されている係合ベーンと、から構成されている。ドア係合装置では、インターロックレバーを有する施錠機構が設けられているのが一般であり、インターロックレバーの先端部は、乗場ドア側に取り付けられている係合部に掛かっている。これによって、乗場ドアは開かないように施錠されている状態にある。乗りかごが着床して係合ベーンと係合ローラとが係合すると、インターロックレバーの先端部が係合部から外れ、施錠が解除される。その後、かごドアが開くと、乗場ドアも同時に開くことになる。このようにドア係合装置は、安全上重要な機能を担っているので、エレベータの定期点検では、点検項目の一つに入っている。
【0003】
従来、ドア係合装置の点検では、点検作業員は、乗りかごの上に乗って、ドア係合装置の動作を目視点検するとともに、係合ローラと係合ベーンとの間にできる隙間の巾の寸法の測定を行って、係合ローラと係合ベーンの間の隙間の巾が一定の範囲内に収まっているか否かをチェックしている。係合ローラと係合ベーンとの間の隙間が小さすぎると、乗りかごが着床する際に係合ローラが係合ベーンに係合しなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−126619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来、ドア係合装置の測定には、これといった専用の測定器具がある訳ではないので、長さの測定に汎用的に用いられる直尺を使用している。直尺はそのままでは、係合ローラと係合ベーンの間の隙間の巾を測れないので、一般には、直尺を直角に折り曲げたものを利用している。
【0006】
しかしながら、乗りかごのかご上には、かごドアを開閉駆動するドアマシンが設置されており、点検作業員は、うつ伏せになってドアマシンの上に身を乗り出し、手を下に伸ばして、係合ローラと係合ベーンの間の隙間を測定しなければならない。
【0007】
エレベータによっては、係合ローラまで距離がある場合があり、直尺を届かせるために無理な姿勢を強いられて測定し難く、正確な測定値を得るのが難しいことがある。
【0008】
また、直尺を一度折り曲げてしまうと、他の長さ測定に使用できなくなるという問題がある。
【0009】
本発明は、前記従来技術の有する問題点に鑑みなされたものであって、点検作業員に無理な姿勢を強いることなく、楽にしかも安全に係合ローラと係合ベーンの間の隙間巾を正確に測定することができるようにするエレベータのドア係合装置の隙間測定方法および隙間測定具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記の目的を達成するために、本発明の一実施形態に係るエレベータのドア係合装置の隙間測定方法は、乗りかごのかごドア側に設けられた係合ベーンに乗場の乗場ドア側に設けられた係合ローラを係合させるドア係合装置において、前記乗りかごが着床したときに前記係合ローラと前記係合ベーンの間にできる隙間の巾を測定するエレベータのドア係合装置の隙間測方法であって、前記係合ローラと前記係合ベーンの間の隙間に差し込み可能な2枚の長尺な測定板と、前記測定板の間隔を調整可能に前記測定板を平行に連結するねじ部材と、からなる測定具を用い、前記測定具の前記測定板の間隔をねじ部材により調整し、乗りかご上から前記測定具を前記係合ローラと前記係合ベーンの間に隙間に差し込んで前記測定板の間隔を前記隙間の巾に合わせ、前記測定板の間隔を測ることにより前記隙間の巾を測定することを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の一実施形態に係るエレベータのドア係合装置の隙間測定具は、乗りかごのかごドア側に設けられた係合ベーンに乗場の乗場ドア側に設けられた係合ローラを係合させるドア係合装置において、前記乗りかごが着床したときに前記係合ローラと前記係合ベーンの間にできる隙間の巾を測定するエレベータのドア係合装置の隙間測定具であって、前記係合ローラと前記係合ベーンの間の隙間に差し込み可能な2枚の長尺な測定板と、前記測定板の間隔を調整可能に前記測定板を平行に連結するねじ部材と、からなることを特徴とするものであ。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態よるエレベータのドア係合装置の隙間測定方法が適用されるエレベータの乗りかごを正面から(乗場側から)見た図である。
図2】係合ベーンとともにドア係合装置を構成するインターロックレバーを示す正面図である。
図3】乗りかごが乗場に着床した直後の係合ベーンと係合ローラの位置関係を示す図である。
図4】本発明の実施形態によるエレベータのドア係合装置の隙間測定具を示す側面図である。
【発明を実施するため形態】
【0013】
以下、本発明によるエレベータのドア係合装置の隙間測定方法および隙間測定具の実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態よるエレベータのドア係合装置の隙間測定方法が適用されるエレベータの乗りかごを正面から(乗場側から)見た図である。
図1おいて、参照番号10は、乗りかごを示す。乗りかご10の出入口は、かごドア12A、12Bによって開閉される。かごドア12A、12Bは、ドアレール14に沿って移動するドアハンガー13A、13Bに吊られた状態で開閉される。参照番号16は、かごドア12A、12Bのかご敷居である。15は、かご上に設置されているドアマシンであり、かごドア12A、12Bを開閉駆動する。
図1に示されるように、片方のかごドア12Aの上部には、ドア係合装置を構成する係合ベーン17、18が取り付けられている。
【0014】
次に、図2は、係合ベーン17、18とともにドア係合装置を構成するインターロックレバー20を示す。このインターロックレバー20は、図示はしないが、各乗場の乗場ドアに設けられている。
インターロックレバー20のレバー本体22は、支軸23を介して回転自在に支持されている。係合ローラ24、26は、インターロックレバー20に設けられている。インターロックレバー20のレバー本体22の先端には、フック部27が形成され、このフック部27が係合部材28に係合すると乗場ドアが開かないように施錠されるようになっている。
【0015】
次に、図3は、乗りかごが乗場に着床した直後の係合ベーン17、18と係合ローラ24、26の位置関係を示す図である。
図3に示されるように、係合ベーン17、18は、ベーン本体から垂直に立ち上がったベーン17a、18aを有している。乗りかごの着床時には、ベーン17a、18aは重なり合った状態で、係合ローラ24、26の間に進入する。かごドア12A、12Bが戸開し始めると、係合ベーン17、18もいっしょに移動し、係合ベーン18のベーン18aが係合ローラ26に当たる結果、図2においてインターロックレバー20のフック部27は係合部材28から外れるので、施錠が解除される。施錠解除後は、係合ベーン17、18に係合ローラ24、26が係合した状態のままかごドア12A、12Bの移動といっしょに乗場ドアも戸開することになる。戸閉については逆の動作で行われる。
【0016】
本実施形態によるドア係合装置の隙間測定方法では、図3に示されるように、係合ベーン17のベーン17aと係合ローラ24の間の隙間A1と、係合ベーン18のベーン18aと係合ローラ26の隙間A2が測定対象とされている。これらの隙間A1、A2の幅が適正な寸法範囲内に確保されていれば、乗りかご10の着床時に係合ベーン17、18と係合ローラ24、26との係合は円滑に行われるが、隙間A1、A2が狭すぎたりすると、係合ベーン17、18と係合ローラ24、26とが係合せずに、その後のドア開閉に支障が生じる可能性がある。
【0017】
本実施形態では、図4に示される測定具29を用いて、係合ベーン17、18のベーン17a、18aと係合ローラ24、26の間の隙間A1、A2の巾を測定する。図4において、本実施形態による測定具29は、長尺な2枚の測定板34、35をねじ、ボルトなどのねじ部材33a、33bにより上下の端部を連結した構造の測定具である。測定板34、35は、例えば長さ100〜150mm程度の(エレベータの乗りかごの大きさによって異なる)細長い金属板あるいは樹脂製の板である。測定板34、35のうち、片方の測定板35には雌ねじが切られており、この雌ねじにねじ部材33a、33bが螺合することで、測定板34、35は平行に連結されている。この測定具29では、ねじ部材33a、33bを回すことで、測定板34、35の間隔を調整することができるようになっている。
【0018】
次に、測定具29を用いたドア係合装置の隙間測定方法について、より詳細に説明する。
図1において、ドア係合装置の隙間測定は、点検作業員が乗りかご10のかご上に乗って以下のようにして行なわれる。
点検作業員は、測定具29をもって乗りかご10のかご上に乗り上がる。このとき、乗りかご10は乗場に着床しているものとする。
【0019】
そこで、まず図3において、係合ベーン17のベーン17aと係合ローラ24との隙間A1の巾を測定する場合について説明する。点検作業員は、かご上で、測定具29のねじ部材33a、33bを回しにながら、隙間A1の巾にだいたいの見当をつけた間隔になるように測定板34、35の間隔をあらかじめ調整しておく。
【0020】
そうしておいてから、点検作業員は、測定具29を鉛直にして下げてゆき、図4に示されるように、係合ベーン17のベーン17aと係合ローラ24との隙間A1の間に差し入れる。測定板34、35の中央部の間隔(測定板34、35の板厚を含む)が隙間A1にちょうど合っていれば、このときの測定板34、35の間隔をメジャーなどで測って隙間A1の幅の測定値とする。
【0021】
他方、測定板34、35の間隔が隙間A1に合っていない場合には、再度、測定具29を引き上げてから、ねじ部材33a、33bを回しながら間隔を調整する。再調整後、測定具29を係合ベーン17のベーン17aと係合ローラ24との隙間A1の間に差し入れ、隙間A1にぴったり合うか確認する。以上の調整はぴったり合うまで行い、ぴったり合ったところで、測定具29を引き上げ、測定板34、35の間隔を測ってこの値を隙間A1の幅の測定値とする。
【0022】
残りの係合ベーン18のベーン18aと係合ローラ26との隙間A2の巾の測定も同様に行われる。
【0023】
以上のように、本実施形態によれば、点検作業員は、乗りかご10上で立ったまま測定具29を鉛直に下げるだけで、係合ローラ24、26と係合ベーン17、18の間の隙間を測定することが可能になる。このため、従来のように、点検作業者はうつ伏せになりドアマシン15の上に身を乗り出して手を下に伸ばして直尺で測定するというように、無理な姿勢を強いられることなく、楽にしかも安全に係合ローラ24、26と係合ベーン17、18の間の隙間を正確に測定することができる。また、直尺を折り曲げ、他の測定に使えなくするといった無駄をなくすことができる。
【0024】
以上、本発明に係るエレベータの隙間測定方法および装置について、好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は、これらの実施形態は、例示として挙げたもので、発明の範囲の制限を意図するものではない。もちろん、明細書に記載された新規な装置、方法およびシステムは、様々な形態で実施され得るものであり、さらに、本発明の主旨から逸脱しない範囲において、種々の省略、置換、変更が可能である。請求項およびそれらの均等物の範囲は、発明の主旨の範囲内で実施形態あるいはその改良物をカバーすることを意図している。
【符号の説明】
【0025】
10…乗りかご、12A、12B…かごドア、13A、13B…ドアハンガー、14…ドアレール、15…ドアマシン、16…かご敷居、17、18…係合ベーン、20…インターロックレバー、24、26…係合ローラ、27…フック部、28…係合部材、29…測定具、34、35…測定板、33a、33b…ねじ部材
【要約】
【課題】点検作業員に無理な姿勢を強いることなく、楽にしかも安全に係合ローラと係合ベーンの間の隙間巾を正確に測定することができるようにする。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るエレベータのドア係合装置の隙間測定具は、乗りかごのかごドア側に設けられた係合ベーン17、18に乗場の乗場ドア側に設けられた係合ローラ24、26を係合させるドア係合装置において、乗りかごが着床したときに係合ローラ24、26と係合ベーン17、18の間にできる隙間の巾を測定するエレベータのドア係合装置の隙間測定具であって、係合ローラ24、26と係合ベーン17、18の間に隙間に差し込み可能な2枚の長尺な測定板34、35と、測定板34、35の間隔を調整可能に測定板34、35を平行に連結するねじ部材33a、33bと、から構成される。
【選択図】図4
図1
図2
図3
図4