(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記ドアの開閉動作時間は、上記ドアの戸開継続時間と、上記ドアが戸閉途中でリオープンしたときに全開するまでのリオープン時間とを含むことを特徴とする請求項3記載のエレベータの利用者検知システム。
上記検知手段によって利用者または物が検知されたときに、上記戸閉ボタンの操作をロックする操作制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項7記載のエレベータの利用者検知システム。
上記操作制御手段によって上記戸閉ボタンの操作をロックする時間は、上記ドアの開閉動作時間を考慮して設定されることを特徴とする請求項8記載のエレベータの利用者検知システム。
上記ドアの開閉動作時間は、上記ドアの戸開継続時間と、上記ドアが戸閉途中でリオープンしたときに全開するまでのリオープン時間とを含むことを特徴とする請求項9記載のエレベータの利用者検知システム。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0012】
(第1の実施形態)
図1は第1の実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0013】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。
【0014】
カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、かごドア13付近を含めて撮影する。
【0015】
このときの撮影範囲はL1+L2に調整されている(L1≫L2)。L1は乗場側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて所定の距離を有する。L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて所定の距離を有する。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0016】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0017】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、
図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0018】
画像処理装置20には、記憶部21と検知部22とが備えられている。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、検知部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0019】
検知部22は、カメラ12の撮影画像を用いてかごドア13付近にいる利用者を検知する。この検知部22を機能的に分けると、検知エリア設定部22aと検知処理部22bとで構成される。
【0020】
検知エリア設定部22aは、カメラ12の撮影画像上で後述する検知エリアE1を設定する。検知処理部22bは、この検知エリア設定部22aによって設定された検知エリアE1内の画像に基づいて利用者または物の有無を検知する。ここで言う「物」とは、例えば利用者の衣服や荷物、さらに車椅子等の移動体を含む。なお、画像処理装置20の一部あるいは全部の機能をかご制御装置30に持たせることでも良い。
【0021】
かご制御装置30は、乗りかご11に設置される各種機器類(行先階ボタンや照明等)の動作を制御する。また、かご制御装置30は、戸開閉制御部31、通知部32、操作制御部33を備える。
【0022】
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の開閉動作を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、戸閉動作中のときに、検知処理部22bによって利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13をリオープンして戸開状態を維持する。
【0023】
通知部32は、検知部22による利用者または物の検知状態をかごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンを通じて通知する。「かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタン」とは、利用者がかごドア13を開閉するときに使用する操作ボタンのことである。具体的には、上記操作ボタンは、後述する乗りかご11内に設けられた戸開ボタン46、戸閉ボタン47(
図4参照)、乗場15に設けられた乗場呼びボタン51,52などである(
図5参照)。
【0024】
通常、これらの操作ボタンは、点灯機能を備えており、利用者が操作していないときは消灯状態にある。通知部32は、これらの操作ボタンの中で通知用として設定された操作ボタンを点灯または点滅することで、検知動作中にあることを通知する。ここで言う「検知動作中」とは、カメラ12によって
図2に示す検知エリアE1内の利用者または物を検知し、かごドア13を戸開動作中にあることを意味する。
【0025】
操作制御部33は、検知部22によって利用者または物が検知されたときに、戸閉ボタン47の操作をロックする。「戸閉ボタン47の操作をロックする」とは、戸閉ボタン47の操作による戸閉指示を無効とすることである。つまり、利用者または物が検知されているときには、かごドア13が戸開状態にある。このとき、乗りかご11内の利用者が勝手に戸閉しないように戸閉ボタン47の操作をロックしておくことが好ましい。
【0026】
図2はカメラ12の撮影画像の一例を示す図である。図中のE1は検知エリアを表している。
図2の例では、2枚戸両開きタイプの乗りかご11を例にしている。
【0027】
かごドア13は、シル13c上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル13a,13bを有する。乗場ドア14も同様であり、シル14c上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル14a,14bを有する。乗場ドア14のドアパネル14a,14bは、かごドア13のドアパネル13a,13bと共に戸開閉方向に移動する。
【0028】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される。このうち、乗場側の所定範囲(L1)に、乗りかご11に乗車する利用者を検知するための検知エリアE1が設定されている。
【0029】
実空間において、検知エリアE1は、出入口(間口)の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有する(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。全開時における検知エリアE1の横幅W1は、出入口(間口)の横幅W0以上の距離に設定されている。検知エリアE1の形状は長方形であっても良いし、
図2に斜線で示すように、シル13c,14cを含み、三方枠17a,17bの死角を除く台形であっても良い。また、検知エリアE1の縦方向(Y方向)および横方向(X方向)のサイズは、固定であっても良いし、かごドア13の開閉動作に合わせて動的に変更されるものであっても良い。
【0030】
図3に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。このカメラ12によって撮影された各画像において、検知エリアE1の部分をブロック単位で比較することで、かごドア13の中心から乗場15の方向、つまりY軸方向に移動中の利用者の足元位置の動きを検知する。
【0031】
図4は乗りかご11内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。
図4の例では、2枚戸両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0032】
乗りかご11の出入口の両側に正面柱41a,41bが設けられており、幕板11aと共に乗りかご11の出入口を囲っている。「正面柱」は、出入口柱あるいは出入口枠とも言い、裏側にはかごドア13を収納するための戸袋が設けられているのが一般的である。
図2の例では、かごドア13が戸開したときに、一方のドアパネル13aが正面柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル13bが正面柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。
【0033】
正面柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、操作盤44、スピーカ48が設置されている。
図4の例では、正面柱41aにスピーカ48、正面柱41bに表示器43、操作盤44が設置されている。操作盤44には、各階に対応した行先階ボタン45の他に、戸開を指示するための戸開ボタン46、戸閉を指示するための戸閉ボタン47が設けられている。
【0034】
ここで、乗りかご11の出入口上部の幕板11aの中央部にカメラ12が設置されている。乗りかご11が任意の階の乗場15で戸開したときに、このカメラ12によって、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される(
図2参照)。
【0035】
図5は乗場15の構成を示す図である。
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設けられている。
図5の例では、2枚戸両開きタイプの乗場ドア14が示されている。乗りかご11の到着時に、乗場ドア14を構成する2枚のドアパネル14a,14bが
図4に示したかごドア13のドアパネル13a,14bに係合して開閉動作する。
【0036】
乗場ドア14の周り(左右と上部)に三方枠17a,17b,17cが設けられている。三方枠17a,17bの少なくとも一方には、乗場呼びボタン51,52を有する操作盤53が設置されている。乗場呼びボタン51は、利用者が上方向の階に行く場合に操作される上方向ボタンとして用いられる。乗場呼びボタン52は、利用者が下方向の階に行く場合に操作される下方向ボタンとして用いられる。三方枠17cには、乗りかご11の現在位置を表示するためのインジケータ54や、乗りかご11の到着と運転方向を表示するためのホールランタン55が設けられている。
【0037】
本システムでは、乗りかご11に設置されたカメラ12を用いて、乗場15から乗りかご11に向かってくる利用者を検知し、かごドア13を戸開した状態で待機する。これにより、利用者は戸閉を気にせずにスムーズに乗車することができる。ここで、カメラ12を用いた利用者検知は、例えば赤外線センサなどに比べると、検知範囲が広く、かごドア13から離れた位置から利用者を早めに検知できる利点がある。しかし、利用者からすると、いつ検知しているのが分からないため、戸開ボタン46または戸閉ボタン47を操作してしまうことがある。
【0038】
すなわち、
図6に示すように、例えば利用者Aが乗りかご11に近づいているときに、乗りかご11内の利用者Bがカメラ12によって利用者Bが検知されていることを知らないと、戸開ボタン46を押して戸開状態を維持させることがある。あるいは、利用者Bが利用者Aの存在に気づかなかった場合には、戸閉ボタン47を押して戸閉を早めようにとすることがある。基本的にはカメラ12による利用者検知が優先されるため、戸閉ボタン47を押しても戸開状態が維持される。しかし、カメラ12によって利用者Aを検知している場合でも、乗りかご11内の戸閉ボタン47の操作を有効にして戸閉可能なシステムも存在する。このようなシステムの場合、利用者Aは乗りかご11が戸開状態にあるものと思って乗車してくるため、乗りかご11内の手動操作によって突然戸閉が開始されると、ドア(かごドア13,乗場ドア14)に衝突したり、挟まれるなどして危険である。
【0039】
以下に、本実施形態の動作について詳しく説明する。
図7は本システムにおける戸開時の利用者検知処理を示すフローチャートである。
【0040】
乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS11のYes)、かご制御装置30は、かごドア13を戸開して乗りかご11に乗車する利用者を待つ(ステップS12)。
【0041】
このとき、乗りかご11の出入口上部に設置されたカメラ12によって乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら(ステップS13)、以下のような利用者検知処理をリアルタイムで実行する(ステップS14)。なお、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や、拡大縮小、画像の一部の切り取りなどを行っても良い。
【0042】
利用者検知処理は、画像処理装置20に備えられた検知部22の検知処理部22bによって実行される。なお、予め検知部22の検知エリア設定部22aによって、カメラ12の撮影画像上で
図2に示した検知エリアE1が設定されているものとする。検知処理部22bは、カメラ12によって時系列で得られる複数の撮影画像から検知エリアE1内の画像を抽出することにより、これらの画像に基づいて利用者または物の有無を検知する。
【0043】
具体的には、
図8に示すように、検知処理部22bは、撮影画像を所定のブロック単位でマトリックス状に分割し、これらのブロックの中で動きのあるブロックに着目して利用者または物の有無を検知する。
【0044】
なお、原画像を一辺Wblockの格子状に区切ったものを「ブロック」と呼ぶ。
図8の例では、ブロックの縦横の長さが同じであるが、縦と横の長さが異なっていても良い。また、画像全域に渡ってブロックを均一な大きさとしても良いし、例えば画像上部ほど縦(Y方向)の長さを短くするなどの不均一な大きさにしても良い。
【0045】
検知処理部22bは、記憶部21に保持された各画像を時系列順に1枚ずつ読み出し、これらの画像の平均輝度値をブロック毎に算出する。その際、初期値として最初の画像が入力されたときに算出されたブロック毎の平均輝度値を記憶部21内の図示せぬ第1のバッファエリアに保持しておくものとする。
【0046】
2枚目以降の画像が得られると、検知処理部22bは、現在の画像のブロック毎の平均輝度値と上記第1のバッファエリアに保持された1つ前の画像のブロック毎の平均輝度値とを比較する。その結果、現在の画像の中で予め設定された閾値以上の輝度差を有するブロックが存在した場合には、検知処理部22bは、当該ブロックを動きありのブロックとして判定する。現在の画像に対する動きの有無を判定すると、検知処理部22bは、当該画像のブロック毎の平均輝度値を次の画像との比較用として上記第1のバッファエリアに保持する。以後同様にして、検知処理部22bは、各画像の輝度値を時系列順にブロック単位で比較しながら動きの有無を判定することを繰り返す。
【0047】
検知処理部22bは、検知エリアE1内の画像に動きありのブロックがあるか否かをチェックする。その結果、検知エリアE1内の画像に動きありのブロックがあれば、検知処理部22bは、検知エリアE1内に人または物が存在するものと判断する。
【0048】
このような方法により、乗りかご11の戸開時に検知エリアE1内で利用者または物の存在が検知されると(ステップS15のYes)、画像処理装置20からかご制御装置30に対して利用者検知信号が出力される。かご制御装置30の戸開閉制御部31は、この利用者検知信号を受信することにより、かごドア13の戸閉動作を禁止して戸開状態を維持する(ステップS16)。
【0049】
詳しくは、かごドア13が全戸開状態になると、戸開閉制御部31は戸開時間のカウント動作を開始し、予め決められた戸開継続時間T1(例えば1分)をカウントした時点で戸閉を行う。この間に利用者が検知され、利用者検知信号が送られてくると、戸開閉制御部31はカウント動作を停止してカウント値をクリアする。これにより、戸開継続時間T1の間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。
【0050】
なお、この間に新たな利用者が検知されると、再度カウント値がクリアされ、戸開継続時間T1の間、かごドア13の戸開状態が維持されることになる。ただし、上記戸開継続時間T1の間に何度も利用者が来てしまうと、かごドア13をいつまでも戸閉できない状況が続いてしまうので、許容時間Tx(例えば3分)を設けておき、この許容時間Txを経過した場合にかごドア13を強制的に戸閉することが好ましい。
【0051】
ここで、上記ステップS15において、検知エリアE1内で利用者または物の存在が検知されたときに、乗りかご11内の利用者に対して、かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンを通じて検知動作中にあることが通知される(ステップS17)。第1の実施形態では、「かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタン」として、戸開ボタン46が用いられ、この戸開ボタン46の点灯または点滅によって検知動作中にあることが通知される。
【0052】
上記ステップS17の通知処理について詳しく説明する。
図9は通知処理の動作を示すフローチャートである。この通知処理は、かご制御装置30に備えられた通知部32によって実行される。
【0053】
まず、通知部32は、通知時間Taを設定する(ステップS21)。通知時間Taは、予め決められた一定の時間(例えば5秒)としても良い。また、かごドア13の開閉動作時間を考慮して通知時間Taを設定することでも良い。
【0054】
「かごドア13の開閉動作時間」には、上述した戸開継続時間T1の他に、リオープン時間T2が含まれる。リオープン時間T2は、かごドア13が戸閉途中でリオープンして全開するまでの時間であり、かごドア13がリオープンを開始した位置(反転移動の開始位置)とかごドア13の移動速度によって求められる。通知時間Taとして、少なくとも戸開継続時間T1に相当する時間を設定して良いし(Ta=T1)、戸開継続時間T1にリオープン時間T2を加えた時間を設定しても良い(Ta=T1+T2)。通知部32は、上記通知時間Taの間、操作盤44上の戸開ボタン46を点灯または点滅する(ステップS22)。
【0055】
図10は利用者検知に伴う乗りかご11内の操作盤44の状態変化を示す図であり、
図10(a)は利用者検知前の操作盤44の状態、同図(b)は利用者検知後の操作盤44の状態を示している。
【0056】
通常、
図10(a)に示すように、戸開ボタン46を含め、操作盤44上の各種操作ボタンは、利用者が操作しない限り、消灯状態にある。利用者が検知されたときに、同図(b)に示すように、操作盤44上の戸開ボタン46を点灯または点滅することで、乗りかご11内の利用者(特に操作盤44の前にいる利用者)に対し、検知動作中であることが通知される。これにより、乗りかご11内の利用者に戸開ボタン46を操作する必要がないことを認識させることができる。さらに、他の利用者が乗車することを認識させることもできる。その結果、戸閉ボタン47の不要な操作を防いで、利用者を安全に乗車させることができる。
【0057】
戸開ボタン46の点灯または点滅は、通知時間Taの間、続けられる。この場合、かごドア13の開閉動作時間を考慮して、Ta=T1あるいはTa=T1+T2に設定しておけば、利用者が乗車するまでの間、戸開ボタン46の点灯または点滅が継続されるので、乗りかご11内の利用者に検知動作中にあることをより確実に知らせることができる。通知時間Taが経過すると(ステップS23のYes)、通知部32は、戸開ボタン46を消灯して、元の状態に戻す(ステップS24)
図7に戻って、かごドア13が戸開してから上記戸開継続時間T1分のカウント動作が終了すると、戸開閉制御部31は乗りかご11を戸閉して、目的階に向けて出発させる(ステップS18)。
【0058】
なお、
図7のフローチャートでは、戸開時に利用者を検知する場合を想定して説明したが、戸閉時も同様であり、戸閉が開始されて全閉するまでの間(戸閉動作中)に検知エリアE1内で利用者または物が検知された場合には戸閉動作が一時中断され、かごドア13がリオープンする。
【0059】
このように第1の実施形態によれば、操作盤44上の戸開ボタン46を通じて検知動作中であることが通知される。この戸開ボタン46は、かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンの1つであり、エレベータ設備として既存の物である。したがって、例えば通知用の表示器を乗りかご11に別途設置することなく、利用者を検知していることを通知することができる。これにより、乗りかご11内の不要なボタン操作を防いで、乗場15から来る利用者を安全に乗車させることができる。
【0060】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態について説明する。
上記第1の実施形態では、通知用の操作ボタンとして戸開ボタン46を用いたが、第2の実施形態では、通知用の操作ボタンとして戸閉ボタン47を用いる。システム構成や利用者検知処理については上記第1の実施形態と同様であるため、ここでは通知処理について説明する。
【0061】
図11は第2の実施形態における通知処理を示すフローチャートである。この通知処理は、上記
図7のステップS17にて実行される。
【0062】
まず、通知部32は、通知時間Taを設定する(ステップS31)。上記第1の実施形態と同様に、通知時間Taは、予め決められた一定の時間(例えば5秒)としても良い。また、かごドア13の開閉動作時間を考慮して、少なくとも戸開継続時間T1に相当する時間を設定して良いし(Ta=T1)、戸開継続時間T1にリオープン時間T2を加えた時間を設定しても良い(Ta=T1+T2)。第2の実施形態では、この通知時間Taを戸閉ボタン47の操作をロックしておく時間として用いる。
【0063】
すなわち、通知部32によって利用者または物が検知されたとき、通知部32は、操作盤44上の戸閉ボタン47を一時的に点灯または点滅した後に消灯する(ステップS32−S33)。
【0064】
図12は利用者検知に伴う乗りかご11内の操作盤44の状態変化を示す図であり、
図12(a)は利用者検知前の操作盤44の状態、同図(b)は利用者検知後の操作盤44の状態を示している。
【0065】
通常、戸閉ボタン47を含め、操作盤44上の各種操作ボタンは、利用者が操作しない限り、消灯状態にある。利用者または物が検知されたときに、
図12(a)に示すように、操作盤44上の戸閉ボタン47を点灯または点滅することで、乗りかご11内の利用者(特に操作盤44の前にいる利用者)に対して、検知動作中であることを通知できる。
【0066】
この戸閉ボタン47の点灯または点滅は一時的であり、同図(b)に示すように数秒後に消灯する。これは、戸閉ボタン47の点灯または点滅を続けていると、かごドア13が閉まるものと誤解される可能性があるためである。ただし、戸閉ボタン47を一時的に点灯または点滅しただけでは、乗りかご11内の利用者に検知動作中であることが伝わりづらく、戸閉ボタン47を操作して強制的に戸閉する可能性がある。
【0067】
そこで、かご制御装置30に備えられた操作制御部33は、上記通知時間Taの間、戸閉ボタン47の操作をロックする(ステップS34)。これにより、例えばカメラ検知中に乗りかご11内の戸閉ボタン47の操作によって戸閉可能なシステムであっても、その間の戸閉操作を禁止して、利用者を安全に乗車させることができる。通知時間Taが経過すると(ステップS23のYes)、操作制御部33は、戸閉ボタン47の操作ロックを解除して、元の状態に戻す(ステップS36)。
【0068】
このように第2の実施形態によれば、操作盤44上の戸閉ボタン47を通じて検知動作中であることが通知される。この戸閉ボタン47は、戸開ボタン46と同様に、かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンの1つであり、エレベータ設備として既存の物である。したがって、上記第1の実施形態と同様に、例えば通知用の表示器を乗りかご11に別途設置することなく、利用者を検知していることを通知できる。また、検知動作中に戸閉ボタン47の操作をロックしておくことで、乗場15から来る利用者を安全に乗車させることができる。
【0069】
なお、上記第1の実施形態と組み合わせて、戸開ボタン46を点灯または点滅する構成を加えても良い。
【0070】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態について説明する。
上記第1および第2の実施形態では、乗りかご11内の利用者に対する通知を想定して説明したが、第3の実施形態では、乗場15の利用者に対して通知を行う構成としている。
【0071】
図13は第3の実施形態における利用者検知に伴う乗場15の操作盤53の状態変化を示す図であり、
図13(a)は利用者検知前の操作盤53の状態、同図(b)は利用者検知後の操作盤53の状態を示している。
【0072】
乗場15に設置された操作盤53上の乗場呼びボタン51,52もかごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンの1つであり、通常は、
図13(a)に示すように消灯状態にある。利用者または物が検知されたときに、通知部32は、乗場呼びボタン51,52の中で乗りかご11の運転方向に対応した乗場呼びボタンを選択し、その乗場呼びボタンを通知時間Taの間、点灯あるいは点滅する。
図13(b)の例では、乗場呼びボタン51(上方向ボタン)が点灯または点滅されている。
【0073】
このように第3の実施形態によれば、操作盤53上の乗場呼びボタン51,52を通じて検知動作中であることが通知される。これにより、利用者が乗りかご11に慌てて駆け込むことや、乗場呼びボタン51,52を押して戸開を維持させようという行為を防いで、安全に乗車させることができる。
【0074】
なお、乗場15の利用者に対する通知だけでは、乗りかご11内の利用者が戸開ボタン46や戸閉ボタン47を操作する可能性があるので、上記第1または第2の実施形態を組み合わせて、乗りかご11内の利用者に対する通知を含めることが好ましい。
【0075】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態について説明する。
近年、エレベータにタッチパネル式の操作盤が用いられることが多くなってきた。タッチパネル式の操作盤では、表示画面上に表示された操作ボタンを利用者の指でタッチ操作する。第4の実施形態では、このようなタッチパネル式の操作盤上の操作ボタンを通じて検知動作中であることを通知する。
【0076】
図14は第4の実施形態におけるタッチパネル式の操作盤の構成を示す図である。
図4に示した物理ボタン式の操作盤44に代わってタッチパネル式の操作盤60が乗りかご11内に設置されている。
【0077】
タッチパネル式の操作盤60は、ディスプレイ61と、このディスプレイ61上に載置された透明のタッチパネル62とで構成される。タッチパネル62は、オブジェクト(例えば、利用者の指など)が接触した画面上の位置を検出可能なポインティングデバイスである。
【0078】
なお、タッチパネル62の方式としては、例えば抵抗膜方式、静電容量方式などがあるが、特にこれらの方式に限定されるものではない。また、ディスプレイ61には、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)、有機EL(Organic Electro-Luminescense)などにより構成されるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0079】
ディスプレイ61の表示画面上に各階に対応した行先階ボタン63の他、ここでは戸開ボタン64と戸閉ボタン65がタッチ操作可能に表示されている。タッチパネル62は、利用者のタッチ位置(座標)を検出し、図示せぬタッチパネルコントローラを介して利用者のタッチ位置に対応した操作ボタンを点灯すると共に、当該操作ボタンの信号をかご制御装置30に出力する。
【0080】
システム構成や利用者検知処理については上記第1の実施形態と同様である。以下では、タッチパネル式の操作盤60を用いた通知処理について説明する。
【0081】
図15は第4の実施形態における通知処理を示すフローチャートである。この通知処理は、上記
図7のステップS17にて実行される。
【0082】
まず、通知部32は、通知時間Taを設定する(ステップS41)。上記第1の実施形態と同様に、通知時間Taは、予め決められた一定の時間(例えば5秒)としても良い。また、かごドア13の開閉動作時間を考慮して、少なくとも戸開継続時間T1に相当する時間を設定して良いし(Ta=T1)、戸開継続時間T1にリオープン時間T2を加えた時間を設定しても良い(Ta=T1+T2)。
【0083】
ここで、第4の実施形態では、通知部32は、上記通知時間Taの間、操作盤60上の戸開ボタン64を点灯または点滅する(ステップS42)。さらに、通知部32は、上記通知時間Taの間、操作盤60上の戸閉ボタン65の表示を消すか、あるいは、別の表示形態に変更する(ステップS43)。詳しくは、通知部32からの指示に従って、図示せぬタッチパネルコントローラが操作盤60上の戸開ボタン64、戸閉ボタン65に対する表示制御を行う。
【0084】
図16は利用者検知後の操作盤60の状態を示す図である。
図17は別の例として利用者検知後の操作盤60の状態を示す図である。
【0085】
通常、戸開ボタン64、戸閉ボタン65を含め、操作盤60上の各種操作ボタンがタッチ操作可能に表示されている。利用者が検知されたときに、
図16に示すように、操作盤60上の戸開ボタン64を点灯または点滅することで、乗りかご11内の利用者(特に操作盤44の前にいる利用者)に対し、検知動作中であることを通知する。これにより、戸開ボタン64をタッチ操作する必要がないことを認識させることができる。
【0086】
また、戸閉ボタン65については、
図16のように表示を消すか、あるいは、
図17のように他の表示形態に変更して戸閉操作できないことを認識させる。なお、
図17に示した戸閉ボタン65は一例であり、戸閉操作できないことを視覚的に認識できれば、どのような表示形態であっても良い。これにより、利用者の検知動作中における戸閉操作を防止でき、利用者を安全に乗車させることができる。
【0087】
このような戸開ボタン64と戸閉ボタン65を用いた通知処理は、通知時間Taの間、続けられる。この場合、かごドア13の開閉動作時間を考慮して、Ta=T1あるいはTa=T1+T2に設定しておけば、利用者が乗車するまでの間、戸開ボタン64の点灯または点滅と、戸閉ボタン65の表示消去または表示変更が継続されるので、乗りかご11内の利用者に検知動作中にあることをより確実に知らせることができる。通知時間Taが経過すると(ステップS44のYes)、通知部32は、図示せぬタッチパネルコントローラを通じて戸開ボタン46を消灯し、戸閉ボタン47を通常表示する(ステップS45−S46)。
【0088】
このように第4の実施形態によれば、タッチパネル式の操作盤60上の戸開ボタン64と戸閉ボタン65を通じて検知動作中であることが通知される。したがって、上記第1の実施形態と同様に、例えば通知用の表示器を乗りかご11に別途設置することなく、利用者を検知していることを通知できる。
【0089】
また、タッチパネルの特性を活かして、戸閉ボタン65については表示を消すか、あるいは、他の表示形態に変更することで戸閉操作を禁止できる。したがって、上記第2の実施形態のように内部的な処理で操作ロックしなくとも(
図11のステップS34参照)、利用者の検知動作中における戸閉操作を防止でき、利用者を安全に乗車させることができる。
【0090】
なお、この第4の実施形態において、上記第3の実施形態で説明した乗場の利用者に対する通知を組み合わせることでも良い。
【0091】
(第5の実施形態)
次に、第5の実施形態について説明する。
上記第1乃至第4の実施形態では、予め通知時間Taを設定しておき、その設定された通知時間Taの間、操作ボタンを通じて通知する構成とした。これに対し、第5の実施形態では、通知時間Taを設定せずに、カメラ12によって利用者または物が検知されている間、あるいは、戸閉信号が出力されるまでの間だけ、操作ボタンを通じて通知する。
【0092】
図18は第5の実施形態における通知処理を示すフローチャートである。この通知処理は、上記
図7のステップS17にて実行される。
【0093】
カメラ12によって検知エリアE1に利用者または物が検知されたときに、通知部32は、乗りかご11内の操作ボタン46を点灯または点滅して、検知動作中であることを通知する(ステップS51)。
【0094】
ここで、例えば利用者が乗りかご11内に乗車し、検知エリアE1から外れるなどして検知動作が終了すると(ステップS52のYes)、通知部32は、通知の必要なしと判断し、戸開ボタン46を消灯する(ステップS53)。あるいは、例えば戸閉釦47の操作によって戸閉が開始されたとき、つまり、乗りかご11内の操作盤44から戸閉動作を示す戸閉信号がかご制御装置30に出力されたときに(ステップS52のYes)、通知部32は、通知の必要なしと判断し、戸開ボタン46を消灯する(ステップS53)。
【0095】
このように第5の実施形態によれば、通知時間Taの設定を不要として、検知動作中の間だけ、あるいは、戸閉信号が出力されるまでの間だけ、戸開ボタン46を通じて検知動作中にあることを通知できる。
【0096】
なお、ここでは上記第1の実施形態における戸開ボタン46を用いた通知を例にして説明したが、上記第2乃至第4の実施形態でも同様であり、通知時間Taを設定せずに、検知動作中の間だけ、あるいは、戸閉信号が出力されるまでの間だけ通知する構成としても良い。
【0097】
(撮像手段について)
上記各実施形態では、1台のカメラ12を用いて利用者を検知するシステムについて説明したが、撮像手段としては1台のカメラ12に限られない。例えば、
図18に示すようなステレオカメラ71を用いても良い。ステレオカメラ71は、2台のカメラ72,73を有し、これらのカメラ72,73で同時に撮影された各画像から奥行き方向の距離を含む3次元情報を得ることができる。なお、カメラ72,73は、ステレオカメラ71として一体化されている必要はなく、単体であっても良い。
【0098】
また、
図18に示すようなTOF(Time of Fight)カメラ81を用いることでも良い。TOFカメラ81は、光源82と反射光対応のカメラセンサ83とを備え、光源82から発光された光が被写体で反射されてカメラセンサ83で受光されるまでの時間から奥行き方向の距離を含む3次元情報を計測できる。
【0099】
このように、2台のカメラ72,73あるいはTOFカメラ81を用いれば、奥行き方向の検知精度が高まるので、かごドア13から離れた場所にいる利用者また物をより正確に検知して戸開閉制御に反映できる。この場合も、上記各実施形態で説明したように、かごドア13の開閉動作に関連した操作ボタンを通じて検知動作中にあることを早めに通知することで、不要なボタン操作を防いで、利用者を安全に乗車させることができる。
【0100】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、特別な装置を必要とせずに、利用者が検知されていることを通知でき、その結果として不要なボタン操作を防いで、利用者を安全に乗車させることのできるエレベータの利用者検知システムを提供することができる。
【0101】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【解決手段】一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、撮像手段と、検知手段と、戸開閉制御手段と、通知手段とを備える。上記撮像手段は、乗りかごから乗場に向けてドアを含む所定の範囲内を撮影する。上記検知手段は、上記撮像手段によって撮影された画像を用いて利用者または物を検知する。上記戸開閉制御手段は、上記検知手段の検知結果に基づいて、上記ドアの開閉動作を制御する。上記通知手段は、上記検知手段によって利用者または物が検知されていることを上記ドアの開閉動作に関連した操作ボタンを通じて通知する。