特許第6795283号(P6795283)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6795283内燃機関における車載の触媒状態監視/制御システムの適合
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795283
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】内燃機関における車載の触媒状態監視/制御システムの適合
(51)【国際特許分類】
   F01N 3/20 20060101AFI20201119BHJP
   F01N 3/08 20060101ALI20201119BHJP
   F02D 41/04 20060101ALI20201119BHJP
   F02D 45/00 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
   F01N3/20 C
   F01N3/08 H
   F02D41/04
   F02D45/00 358
   F02D45/00 368F
【請求項の数】3
【外国語出願】
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2014-232294(P2014-232294)
(22)【出願日】2014年11月17日
(65)【公開番号】特開2015-98869(P2015-98869A)
(43)【公開日】2015年5月28日
【審査請求日】2017年11月13日
【審判番号】不服2019-7680(P2019-7680/J1)
【審判請求日】2019年6月10日
(31)【優先権主張番号】14/083,823
(32)【優先日】2013年11月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】319005659
【氏名又は名称】エーアイ アルパイン ユーエス ビドゥコ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091568
【弁理士】
【氏名又は名称】市位 嘉宏
(72)【発明者】
【氏名】マルティ・ナラシンガ・ラオ・デヴァラコンダ
【合議体】
【審判長】 渡邊 豊英
【審判官】 鈴木 充
【審判官】 西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−301103(JP,A)
【文献】 特開2007−9889(JP,A)
【文献】 特開2005−140011(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/132233(WO,A1)
【文献】 特開平2−125941(JP,A)
【文献】 特開2010−261327(JP,A)
【文献】 特開平10−71325(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/00-3/38
F01N11/00
F02D41/04
F02D45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
触媒コンバータ前ガスセンサ(120)と、
触媒コンバータ後ガスセンサ(130)と、
前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサ(120、130)に連絡した少なくとも1つの演算装置(140)と
を備えており、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)からの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)からの触媒コンバータ後ガスレベルとを比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップ(P110)と、
前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップ(P120)と、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップ(P130)と、
を含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するようにプログラムされている、
触媒変質検出システム(100)であって、
前記触媒変質検出システム(100)が、
モデルに基づく尿素注入制御システムをさらに備えており、
選択触媒還元(SCR)触媒コンバータとともに使用されるSCR触媒コンバータシステムであり、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)が、チッ素酸化物(NOx)センサを含み、
前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)が、NOxセンサを含み、
前記触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NOxレベルを含み、
前記触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NOxレベルを含み、
前記推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒NOx貯留レベルを含み、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NOx貯留レベルを含み、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前NOxレベルおよび前記触媒コンバータ後NOxレベルを分析することによって触媒アンモニア(NH)貯留レベルを推定するステップと、
前記触媒コンバータ後NOxレベルに基づきNOx排出レベルを決定するステップと、
を含む動作を実行するようにさらにプログラムされており、
前記触媒が変質したとの判断が、前記決定による触媒NOx排出レベルがしきい値差によってベースラインNOx排出レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって前記推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行される、触媒変質検出システム(100)。
【請求項2】
触媒コンバータ前ガスセンサ(120)と、
触媒コンバータ後ガスセンサ(130)と、
前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサ(120、130)に連絡した少なくとも1つの演算装置(140)と
を備えており、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)からの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)からの触媒コンバータ後ガスレベルとを比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップ(P110)と、
前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップ(P120)と、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップ(P130)と、
を含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するようにプログラムされている、
触媒変質検出システム(100)であって、
前記触媒変質検出システム(100)が、
モデルに基づく尿素注入制御システムをさらに備えており、
選択触媒還元(SCR)触媒コンバータとともに使用されるSCR触媒コンバータシステムであり、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)が、アンモニア(NH)センサを含み、
前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)が、NHセンサを含み、
前記触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NHレベルを含み、
前記触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NHレベルを含み、
前記推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒NH貯留レベルを含み、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NH貯留レベルを含み、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前NHレベルおよび前記触媒コンバータ後NHレベルを分析することによってNOx排出レベルを推定するステップと、
前記触媒コンバータ前NHレベルを前記触媒コンバータ後NHレベルと比較することによってNH貯留レベルを推定するステップと
を含む動作を実行するようにさらにプログラムされており、
前記触媒が変質したとの判断が、前記推定によるNOx排出レベルがしきい値差によってベースライン触媒NOx貯留レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって前記推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行される、触媒変質検出システム(100)。
【請求項3】
触媒コンバータ前ガスセンサ(120)と、
触媒コンバータ後ガスセンサ(130)と、
前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサ(120、130)に連絡した少なくとも1つの演算装置(140)と
を備えており、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)からの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)からの触媒コンバータ後ガスレベルとを比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップ(P110)と、
前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップ(P120)と、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップ(P130)と、
を含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するようにプログラムされている、
触媒変質検出システム(100)であって、
前記触媒変質検出システム(100)が、
モデルに基づく尿素注入制御システムをさらに備えており、
選択触媒還元(SCR)触媒コンバータとともに使用されるSCR触媒コンバータシステムであり、
前記触媒コンバータ前ガスセンサ(120)が、チッ素酸化物(NOx)センサを含み、
前記触媒コンバータ後ガスセンサ(130)が、NOxセンサおよびアンモニア(NH)センサを含み、
前記触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NOxレベルを含み、
前記触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NOxレベルおよび触媒コンバータ後NHレベルを含み、
前記推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒NOx貯留レベルを含み、
前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NOx貯留レベルおよびベースライン触媒NH貯留レベルを含み、
前記少なくとも1つの演算装置(140)が、
前記触媒コンバータ前NOxレベル、前記触媒コンバータ後NOxレベル、および前記触媒コンバータ後アンモニア(NH)レベルを分析することによって触媒NH貯留レベルを推定するステップを含む動作を実行するようにさらにプログラムされており、
前記触媒が変質したとの判断が、前記推定による触媒NOx貯留レベルがしきい値差によって前記ベースライン触媒NOx貯留レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって前記推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行される、触媒変質検出システム(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書において開示される主題は、概して、燃焼機関の触媒に関する。より具体的には、本明細書に提示される開示は、燃焼機関の触媒の変質の検出に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関においては、触媒の経年劣化および変質が、深刻な懸念である。そのような変質により、機関が、排出物の規制を守れなくなる可能性がある。伝統的な触媒の保守として、所与の時間期間の後の触媒または触媒コンバータの定期的な交換が挙げられる。定期的な交換は、触媒の寿命が残っているかもしれない場合に、高価かつ無駄が多くなる。
【0003】
触媒の寿命を判断するために、触媒の変質を監視する試みが行われている。燃焼機関の触媒の変質を監視しようとするそのような伝統的な試みは、上流および下流のラムダセンサなどの酸素センサからの信号の間のタイムラグの比較に厳密に基づいている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2007/017212号明細書
【発明の概要】
【0005】
種々の実施形態は、触媒の変質を監視するように構成されたシステムを含む。いくつかの実施形態は、触媒コンバータ前ガスセンサと、触媒コンバータ後ガスセンサと、前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサに連絡した少なくとも1つの演算装置とを備えており、前記少なくとも1つの演算装置が、前記触媒コンバータ前ガスセンサからの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサからの触媒コンバータ後ガスレベルとの間の差を比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップと、前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップと、前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップとを含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するように構成されている触媒変質検出システムを含む。
【0006】
第1の態様は、触媒コンバータ前ガスセンサと、触媒コンバータ後ガスセンサと、前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサに連絡した少なくとも1つの演算装置とを備えており、前記少なくとも1つの演算装置が、前記触媒コンバータ前ガスセンサからの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサからの触媒コンバータ後ガスレベルとの間の差を比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップと、前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップと、前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップとを含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するように構成されている触媒変質検出システムを提供する。
【0007】
第2の態様は、コンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に具現化されたプログラムコードを含んでいるコンピュータプログラム製品であって、少なくとも1つの演算装置によって実行されたときに、該少なくとも1つの演算装置に、触媒コンバータ前ガスレベルと触媒コンバータ後ガスレベルとの間の差を比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップと、前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較することによって触媒の変質レベルを割り出すステップと、前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップとを含む動作を実行することによる触媒の変質の監視を実行させるコンピュータプログラム製品を提供する。
【0008】
第3の態様は、内燃機関の排気の経路に位置する触媒コンバータと、前記排気の経路において前記触媒コンバータの上流に配置された触媒コンバータ前ガスセンサと、前記排気の経路において前記触媒コンバータの下流に配置された触媒コンバータ後ガスセンサと、前記触媒コンバータ前および触媒コンバータ後ガスセンサに通信可能に接続された少なくとも1つの演算装置とを備えており、前記少なくとも1つの演算装置が、前記触媒コンバータ前ガスセンサからの触媒コンバータ前ガスレベルと前記触媒コンバータ後ガスセンサからの触媒コンバータ後ガスレベルとの間の差を比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップと、前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較するステップと、前記ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルをしきい値差によって超えている場合に触媒が変質したと判断するステップとを含む動作を実行することによって触媒の変質を監視するように構成されている触媒変質検出システムを提供する。
【0009】
本発明のこれらの特徴および他の特徴が、本発明の種々の態様の以下の詳細な説明を、本発明の種々の実施形態を示している添付の図面と併せて検討することによって、さらに容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の種々の実施形態によるシステムの概略図を示している。
図2】本発明の種々の実施形態による方法を説明するフロー図を示している。
図3】本発明の種々の実施形態によるシステムを含む環境を示している。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の図面が、必ずしも比例尺ではないことに注意すべきである。図面は、本発明の典型的な態様のみを示すように意図されており、したがって本発明の技術的範囲を限定するものとして解釈されてはならない。図面の間で類似の番号が付されている構成要素が、お互いに関して説明されるように実質的に同様であってよいことを、理解すべきである。さらに、図1〜3に関して図示および説明される実施形態において、類似の番号は、類似の構成要素を表わすことができる。これらの構成要素の重複する説明は、分かり易くするために省略されている。最後に、図1〜3のコンポーネントおよびそれらに関する説明を、本明細書に記載のあらゆる実施形態に適用できることを、理解すべきである。
【0012】
本明細書において開示される主題は、概して、燃焼機関の触媒に関する。より具体的には、本明細書に提示される開示は、燃焼機関の触媒の変質の検出に関する。
【0013】
上述のように、燃焼機関の触媒の変質を監視しようとする伝統的な試みは、上流および下流のラムダセンサ(酸素センサ)からの信号の間のタイムラグの比較に厳密に基づいている。伝統的な試みから区別されるとおり、本明細書に記載の実施形態は、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のセンサからのガスレベルを分析することによって、触媒の変質を推定する。1つの伝統的な方法が、センサの出力電圧に基づいて触媒活性を診断するために使用される。触媒前および触媒後の酸素またはラムダセンサの信号の電圧の変化の時間差が大きいほど、触媒活性が高い。より短い時間差は、触媒の失活を示している。
【0014】
内燃機関の触媒の交換および保守は、高コストかつ時間がかかるため、本発明の実施形態は、所与の総時間の後に触媒を交換するのではなく、触媒の変質を監視し、変質の検出後も触媒を使用するために空燃比を変更することを可能にする。
【0015】
図1に目を向けると、本発明の種々の態様によるシステムを説明する概略図が示されている。システム100が、内燃機関の排気の経路に配置される触媒コンバータ110を備えている。触媒コンバータ110は、三元触媒(TWC)触媒コンバータまたは二元触媒コンバータであってよい。二元触媒コンバータを、選択触媒還元(SCR)の触媒に基づく触媒コンバータを使用する実施形態(例えば、酸素の貯留の代わりにアンモニア(NH)の貯留の推移を比較する)において使用することができる。
【0016】
システム100は、触媒コンバータ110を備えており、触媒コンバータ110は、触媒110Aを備えている。システム100は、触媒コンバータ前ガスセンサ120および触媒コンバータ後ガスセンサ130をさらに備えている。本発明の態様によれば、そのようなセンサは、酸素センサ、チッ素酸化物(NOx)センサ、または両方を含むことができ、触媒コンバータ後ガスセンサは、NHセンサを含むことができる。触媒コンバータ前ガスセンサ120を、触媒コンバータ110の上流において、内燃機関からの排気の流れの中に配置することができる。排気の流れの方向が、図1において矢印によって示されている(内燃機関は図示されていない)。触媒コンバータ後ガスセンサ130を、触媒コンバータ110の下流において、排気の流れの中に配置することができる。
【0017】
システム100は、触媒コンバータ前ガスセンサ120および触媒コンバータ後ガスセンサ130に通信可能に接続された少なくとも1つの演算装置140をさらに備える。少なくとも1つの演算装置140を、本明細書に記載の方法によって触媒の変質を監視するように構成することができる。システム100は、本明細書において後述される機能を有するエンジン制御ユニット(ECU)150を備えることができる。システム100がTWCシステムを備える実施形態においては、システム100が、モデルに基づく空燃比(A/F)制御システム160を備えることができ、システム100がSCR触媒コンバータシステムを備える実施形態においては、システム100が、モデルに基づく尿素注入制御システム170を備えることができる。尿素注入制御システムは、システムがTWCの変質を検出したときにA/F制御システムがA/F比を調節するやり方と同様のやり方で、システムが触媒の変質を検出したときに尿素の流量を調節することができる。
【0018】
図2が、本発明の種々の実施形態による方法を説明するフロー図を示している。図2は、触媒の変質を監視するように構成された少なくとも1つの演算装置140によって実行することができるプロセスを示している。そのようなプロセスは、触媒コンバータ前ガスレベルと触媒コンバータ後ガスレベルとの間の差を比較することによって触媒ガス貯留レベルを推定するステップを含むプロセスP110を含む。触媒コンバータ前ガスレベルを、触媒コンバータ前ガスセンサ120によって検出し、触媒コンバータ前ガスセンサ120から信号によって送信できる一方で、触媒コンバータ後ガスレベルを、触媒コンバータ後ガスセンサ130によって検出し、触媒コンバータ後ガスセンサ130から信号によって送信することができる。検出されるガスとして、酸素、チッ素酸化物(NOx)、および/またはアンモニア(NH)を挙げることができる。
【0019】
ガスが酸素である場合、ラムダセンサを使用することができる。ラムダセンサは、外部の空気中の酸素の量と比較した排気中の未燃焼の酸素の量に基づいて変化する電圧を生成する。差が大きいほど、出力電圧が大きくなる。触媒酸素貯留レベルを、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のガスセンサ120/130の電圧出力の間の差に基づいて推定することができる。ガスレベルの検出に使用することができる他のセンサとして、ダイオードレーザに基づくセンサが挙げられる。チッ素酸化物(NOまたはNOを含むことができるNOx)を含む検出ガスの場合には、酸素センサの信号に基づく酸素の貯留の推定よりもむしろ、SCRシステムにおけるNOxセンサの信号に基づくアンモニアの貯留の推定を、分析することができる。SCRシステムは、典型的には、NOx還元触媒の前方の排気の流れに尿素を注入する。尿素の分子が、尿素の熱分解および加水分解の後に2つのアンモニア分子を形成する。次いで、アンモニアが排気中のNOxと反応し、チッ素および水が形成される。しかしながら、尿素の制御が正確でないと、NHの大気中への排出が増え、さらには/あるいはNOxの変換が不足する可能性がある。典型的には、SCRの入口およびSCRの出口におけるNOxまたはNHセンサの測定値が、SCR触媒におけるNHの貯留を推定するために必要である。いくつかの事例において、例えばDOC(ディーゼル酸化触媒)−SCRまたはDOC−DPF(ディーゼル粒子状物質除去装置)−SCRシステムを有する場合、NOxセンサが機関の出口に配置され、DOCおよびDPFの数学モデルが、機関の出口におけるNOxセンサの読み取り値に基づいてSCRの入口におけるNOおよびNOのそれぞれの濃度を推定するために使用される。そのような筋書きにおいては、典型的に、機関の出口におけるNOxセンサおよびSCRの出口におけるNOxセンサが、SCRするために使用される。
【0020】
プロセスP120が、前記推定による触媒ガス貯留レベルをベースライン触媒ガス貯留レベルと比較することによって触媒の変質レベルを割り出すステップを含む。ベースライン触媒ガス貯留レベルは、新鮮、新品未使用、またはわずかに使用されただけの触媒のガス貯留レベルであってよい。さらに、ベースライン触媒ガス貯留レベルは、ならし(degreen)後のガス貯留レベルであってよい。ならし後とは、触媒が比較的短い時間を経たことを意味する。上述の比較を、リアルタイムで実行することができる。
【0021】
プロセスP130が、ベースライン触媒ガス貯留レベルが前記推定によるガス貯留レベルを或るしきい値差によって超えている場合に、触媒が変質していると判断するステップを含む。しきい値差は、ベースラインガス貯留レベルと前記推定による触媒ガス貯留レベルとの間に10パーセント(または、それ以上)の差が存在する場合に超えられることができる。しきい値差は、例えば5または15パーセントなど、10パーセントより大きくても、小さくてもよい。さらに、しきい値差は、所与のパーセントに、例えば1または2パーセントなどの標準的な誤差を加算または減算したものであってもよい。しきい値差が超えられる場合、少なくとも1つの演算装置によって故障と検出されてよく、故障警報を、例えば図3に示される入力/出力コンポーネントインターフェイス208などのインターフェイスに送信することができる。インターフェイスが、人間である運転者またはシステムに故障を警告するために、運転者またはシステムに聴覚または視覚信号をもたらすことができる。あるいは、故障警報を、単に後の読み出しまたは分析のためにメモリに保存してもよい。変質のしきい値差が超えられるか否かを、意志決定アルゴリズムを使用して判断することができる。意志決定アルゴリズムは、統計的または確率論的のいずれかであってよい。例えば、ベイズ決定理論を、実際に触媒が経年劣化したかどうかの判断を行うために使用することができる。
【0022】
故障が検出されない場合、または触媒の変質がプロセスP130の後に検出されない場合、プロセスP110〜P120をループにて繰り返すことができる。プロセスP110を、連続的に実行することができ、あるいは時間間隔の後で実行することができる。触媒の変質のレベルがしきい値差を超える場合には、触媒を交換すべきである旨をユーザに警告するために、入力/出力コンポーネント208などのインターフェイスに信号を送信することができる。
【0023】
図2は、触媒が変質したと判断された場合にプロセスP110〜P130の後で実行することができる随意によるプロセスP140をさらに示している。プロセスP140は、触媒が変質したと判断された場合に空燃比を調節するように制御ユニットに対して指示をもたらすステップを含む。指示は、適切な空燃比(A/F)の補正を決定するための計算に基づくことができる。制御ユニットは、エンジン制御ユニット(ECU)であってよい。空燃比の調節を、触媒の経年劣化または被毒に起因する触媒箇所の喪失に対処する「補正」項を適用することによって達成することができる。典型的には、空燃比は、機関に取り込まれる空気の量が、機関に注入される燃料を燃焼させるために理論的に必要な空気の量に相当する場合に、理想的であると考えられる。ECU150が、空気および燃料が理想的な比で機関に(あるいは、各々のシリンダに個別に)導入されるようにA/Fを制御することができる。しきい値差を超える変質のレベルに応答して触媒の交換を実行することができるが、そのような交換は、すぐには実施できないかもしれず、触媒を使用する機関を、そのような交換まで運用し続ける必要があるかもしれない。そのような場合に、プロセスP140のA/Fの補正を利用することが可能である。
【0024】
本発明の実施形態によれば、システムは、三元触媒コンバータ(TWC)とともに使用されるTWCシステムであってよい。いくつかのそのような実施形態によれば、触媒コンバータ前ガスセンサが、酸素センサを備えることができ、触媒コンバータ後ガスセンサが、酸素センサを備えることができ、触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前酸素レベルを含み、触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後酸素レベルを含み、推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒酸素貯留レベルを含み、ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒酸素貯留レベルを含む。そのような実施形態によれば、触媒の変質に関する判断を、触媒のガス貯留に関して上述したとおりの酸素の貯留に基づいて行うことができる。触媒を、酸素貯留レベルのどちらかがそれぞれのしきい値差を超える場合に、変質したと考えることができる。
【0025】
TWCシステムを使用する本発明のいくつかの実施形態によれば、少なくとも1つの演算装置を、推定による触媒酸素貯留レベルに基づく一酸化炭素(CO)排出レベルの推定を含む動作を実行するようにさらに構成することができる。また、本発明のそのような実施形態によれば、触媒が変質したとの判断を、参照の触媒酸素貯留レベルがしきい値差によってベースライン触媒酸素貯留レベルを超えること、および推定によるCO排出レベルが第2のしきい値差によって基準CO排出レベルを超えることの両方に応答して実行することができる。
【0026】
いくつかの実施形態によれば、関連のデータをECU150に送信し、ECU150によって記録することができ、あるいはそのようなデータを、任意の適切なデータ記憶コンポーネントによって記録することができる。そのようなデータを、酸素貯留推定器および制御戦略を備えるモデルに基づくA/F制御システムに送信することができる。推定器または監視器は、典型的には、測定信号を使用して測定不可能な量を推定する数学に基づくモデルである。推定される量は、この場合には酸素の貯留であるが、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後の酸素(ラムダ)センサの信号に基づいて計算される。次いで、この情報を、制御アルゴリズムを使用してA/F指令を計算するために使用することができる。いくつかの実施形態においては、酸素の貯留以外の量を推定できることを、理解すべきである。
【0027】
いくつかの実施形態によるシステムおよびプロセスは、選択触媒還元(SCR)の用途に採用することが可能である。例えば、酸素センサの信号に基づく酸素の貯留の推定よりもむしろ、SCRシステムにおけるNOxセンサの信号に基づくアンモニアの貯留の推定を、分析することができる。例えば、これに限られるわけではないが、そのようなシステムを、Jenbacher and GE Transportationプラットフォームとともに使用することができる。そのようなプラットフォームに関して、意志決定のアルゴリズムおよび制御の適合は、同じままであってよい。意志決定のアルゴリズムおよび制御の適合の技術は、あらゆる触媒または機関のサブシステムの診断に適用可能であるかもしれない。
【0028】
SCRシステムを使用する実施形態は、モデルに基づく尿素注入制御システムを含むことができる。そのような実施形態によれば、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のガスセンサが、チッ素酸化物(NOx)センサを含むことができる。さらに、触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NOxレベルを含むことができ、触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NOxレベルを含むことができる。推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒NOx貯留レベルを含むことができ、ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NOx貯留レベルを含む。そのような実施形態においては、少なくとも1つの演算装置を、触媒コンバータ前NOxレベルおよび触媒コンバータ後NOxレベルを分析することによって触媒アンモニア(NH)貯留レベルを推定するステップと、触媒コンバータ前NOxレベルを触媒コンバータ後NOxレベルと比較することによってNOx排出レベルを割り出すステップとを含む動作を実行するように、さらに構成することができる。触媒NH貯留レベルの推定を、SCR触媒についての数学モデルを使用して実行することができる。触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のNOxセンサを使用するシステムにおいて、NHの相互感受性についての補償を実行しなければならないことに、注意すべきである。NOxセンサのNHの相互感受性を、カルマンフィルタなどの信号フィルタ処理技術によって補償することができ、あるいは他の信号処理技術を使用して補償することができる。そのようなSCRシステムを使用する実施形態において、触媒が変質したとの判断を、割り出された触媒NOx排出がしきい値差によってベースラインNOx排出レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行することができる。ベースラインNOx排出レベルを、適切な新鮮またはならし後の触媒についてのマップまたは相関テーブルから読み取ることができる。たった今述べた実施形態によれば、NOxレベルが、推定されるよりもむしろ感知(または、検出)される。
【0029】
SCRシステムを使用するさらに他の実施形態によれば、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のNHセンサを、NOxの排出を推定するために使用することができる。いくつかのそのようなシステムによれば、モデルに基づく尿素注入制御システムが含まれてよく、そのような尿素注入制御の動作は、本明細書において上述されており、簡潔さの理由で再度の説明は省略する。そのようなSCRシステムに基づく実施形態によれば、触媒コンバータ前ガスセンサが、アンモニア(NH)センサを含み、触媒コンバータ後ガスセンサが、NHセンサを含む。触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NHレベルを含み、触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NHレベルを含む。推定による触媒ガス貯留レベルが、推定による触媒NH貯留レベルを含み、ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NH貯留レベルを含む。そのような実施形態によれば、少なくとも1つの演算装置を、触媒コンバータ前NHレベルおよび触媒コンバータ後NHレベルを分析することによってNOx排出レベルを推定するステップと、触媒コンバータ前NHレベルを触媒コンバータ後NHレベルと比較することによってNH貯留レベルを推定するステップとを含む動作を実行するように、さらに構成することができる。やはりそのような実施形態によれば、触媒が変質したとの判断が、推定によるNOx排出レベルがしきい値差によってベースライン触媒NOx貯留レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行される。
【0030】
SCRに基づくシステムを使用する他の実施形態は、触媒コンバータ前および触媒コンバータ後のNOxセンサを、触媒コンバータ後のNHセンサとともに備えることができる。そのような実施形態を、NHをフィルタにて取り除くことが困難または不可能な場合に使用することができる。そのような実施形態によれば、システムが、モデルに基づく尿素注入制御システムを含むことができる。上述した一般的なガスに基づくセンサスステムと対照的に、そのようなSCRに基づく実施形態においては、触媒コンバータ前ガスレベルが、触媒コンバータ前NOxレベルを含み、触媒コンバータ後ガスレベルが、触媒コンバータ後NOxレベルおよび触媒コンバータ後NHレベルを含む。推定による触媒ガス貯留レベルは、推定による触媒NOx貯留レベルを含む。NOxレベルの推定が、使用されるSCR触媒に適した少なくとも1つの数学モデルを使用して実行される。評価器または監視器は、反応速度論、質量移動、および熱伝達などのSCR触媒に関する関連の物理学を表現する低次元または制御指向(control−oriented)ゼロ次元SCRモデルであってよい。典型的なモデルに基づく監視器または推定器は、種の濃度、温度、および触媒におけるNH貯留レベルの算出を含む。そのような実施形態によれば、ベースライン触媒ガス貯留レベルが、ベースライン触媒NOx貯留レベルおよびベースライン触媒NH貯留レベルを含む。ベースライン触媒NOx貯留レベルは、上述のように、新鮮またはならし後の触媒における貯留レベルであってよい。少なくとも1つの演算装置を、触媒コンバータ前NOxレベル、触媒コンバータ後NOxレベル、および触媒コンバータ後アンモニア(NH)レベルを分析することによって触媒NH貯留レベルを推定するステップを含む動作を実行するように、さらに構成することができる。そのような推定を、適切な数学モデルを使用して実行することができる。そのような実施形態によれば、触媒が変質したとの判断が、推定による触媒NOx貯留レベルがしきい値差によってベースライン触媒NOx貯留レベルを超えること、およびベースライン触媒NH貯留レベルが第2のしきい値差によって推定による触媒NH貯留レベルを超えることの両方に応答して実行される。
【0031】
図3が、本発明の種々の実施形態に従って本明細書に記載の機能を実行するための監視システム100を含む例示の環境201を示している。この限りにおいて、環境201は、触媒の変質のために本明細書に記載の1つ以上のプロセスを実行することができるコンピュータシステム202を含む。本発明の態様は、コンピュータにとって読み取り可能な記憶媒体に具現化されたプログラムコードを含んでいるコンピュータプログラム製品であって、少なくとも1つの演算装置によって実行されたときに、この少なくとも1つの演算装置に本明細書に記載の方法およびプロセスによる触媒の変質の監視を実行させるコンピュータプログラム製品を含む。とくには、コンピュータシステム202が、コンピュータシステム202を本明細書に記載のプロセスの一部/いずれか/すべてを実行し、本明細書に記載の実施形態のいずれか/すべてを実現することによって触媒の変質を監視すべく動作できるようにする監視システム100を含むものとして示されている。
【0032】
コンピュータシステム202は、処理コンポーネント204(例えば、1つ以上のプロセッサ、または処理ユニット(PU)211)と、記憶コンポーネント206(例えば、記憶階層)と、入力/出力(I/O)コンポーネント208(例えば、1つ以上のI/Oインターフェイスおよび/または装置)と、通信経路210とを含むことができる演算装置224を含むものとして示されている。一般に、処理コンポーネント204は、監視システム100によって使用されるコードなど、記憶コンポーネント206内に少なくとも部分的に用意されてよいプログラムコードを実行する。プログラムコードの実行時に、処理コンポーネント204は、さらなる処理のための記憶コンポーネント206および/またはI/Oコンポーネント208における変換後のデータの読み出しおよび/または書き込みをもたらすことができるデータの処理を行うことができる。記憶コンポーネントおよび処理コンポーネントを、ECU150に一体化でき(図示されていない)、あるいはECU150に連絡させることができ(図3に示されている)、経路210が、コンピュータシステム202内の各々のコンポーネントの間の通信リンクを提供する。I/Oコンポーネント208は、システムユーザ212が任意の種類の通信リンクを使用してコンピュータシステム202と通信できるように、コンピュータシステム202および/または1つ以上の通信装置とのやり取りをユーザ(例えば、人間および/またはコンピュータ化されたユーザ)212にとって可能にする1つ以上の対人I/O装置を備えることができる。この限りにおいて、監視システム100は、人間および/またはシステムユーザ212が監視システム100とやり取りすることを可能にするインターフェイス一式(例えば、グラフィカルユーザインターフェイス、アプリケーションプログラムインターフェイス、など)を管理することができる。さらに、監視システム100は、ガスレベルデータ260および/またはしきい値差データ290(例えば触媒変質のしきい値差などの1つ以上のしきい値差についてのデータ)などのデータを管理(例えば、記憶、読み出し、生成、操作、組織化、提示、など)することができる。
【0033】
いずれにせよ、コンピュータシステム202は、監視システム100などのインストールされたプログラムコードを実行するように具体的にプログラムされた1つ以上の汎用のコンピュータ製造物(例えば、演算装置)を備えることができる。本明細書において使用されるとき、「プログラムコード」は、任意の言語、符号、または表記法でのインストラクションの任意の集まりであって、情報処理能力を有する演算装置に特定の機能を直接的に実行させ、あるいは(a)別の言語、符号、または表記法への変換、(b)異なる物質的形態での再現、および/または(c)解凍の任意の組み合わせの後に実行させるインストラクションの集まりを意味すると理解される。この限りにおいて、監視システム100を、システムソフトウェアおよび/またはアプリケーションソフトウェアの任意の組み合わせとして具現化することができる。さらに、監視システム100を、1つ以上のプロセスが別個の演算装置(例えば、複数の演算装置224)において実行され、それら別個の演算装置のうちの1つ以上が図3の演算装置224に関して図示および説明したコンポーネントのうちの一部だけを含めばよいクラウドに基づくコンピュータ環境において実現できることを、理解すべきである。
【0034】
さらに、監視システム100を、モジュール232の組を使用して実現することができる。この場合、モジュール232は、監視システム100によって使用される一連のタスクのコンピュータシステム202による実行を可能にすることができ、監視システム100の他の部分から離れて開発および/または実現されてよい。本明細書において使用されるとき、用語「コンポーネント」が、当該コンポーネントに関連して説明される機能を任意の解決策を使用して実現するハードウェアのあらゆる構成(ソフトウェアを有しても、有さなくてもよい)を意味する一方で、用語「モジュール」は、コンピュータシステム202が当該モジュールに関連して説明される機能を任意の解決策を使用して実現することを可能にするプログラムコードを意味する。処理コンポーネント204を含むコンピュータシステム202の記憶コンポーネント206内に用意されるとき、モジュールは、機能を実現するコンポーネントの実質的な部分である。しかしながら、2つ以上のコンポーネント、モジュール、および/またはシステムが、それらのそれぞれのハードウェアおよび/またはソフトウェアの一部/すべてを共有できることを、理解すべきである。さらに、本明細書において述べられる機能の一部が実現されなくてもよく、あるいはさらなる機能がコンピュータシステム202の一部として含まれてもよいことを、理解すべきである。
【0035】
コンピュータシステム202が複数の演算装置を備える場合、各々の演算装置には、監視システム100の一部分だけ(例えば、1つ以上のモジュール232)が用意されてよい。しかしながら、コンピュータシステム202および監視システム100が、本明細書に記載のプロセスを実行することができる種々の考えられる同等のコンピュータシステムの代表にすぎないことを、理解すべきである。この限りにおいて、他の実施形態においては、コンピュータシステム102および監視システム100によってもたらされる機能を、汎用および/または特定の目的のハードウェア(プログラムコードを有しても、有さなくてもよい)の任意の組み合わせを含む1つ以上の演算装置によって少なくとも部分的に実現することができる。各々の実施形態において、ハードウェアおよびプログラムコード(含まれる場合)を、標準的な工学およびプログラミングの技術をそれぞれ用いて生成することができる。
【0036】
ところで、コンピュータシステム202が複数の演算装置224を含むとき、演算装置は、任意の種類の通信リンクを介して通信することができる。さらに、本明細書に記載のプロセスを実行するとき、コンピュータシステム202は、任意の種類の通信リンクを使用して1つ以上の他のコンピュータシステムと通信することができる。いずれの場合も、通信リンクは、種々の種類の有線および/または無線リンクの任意の組み合わせを備えることができ、1種類以上のネットワークの任意の組み合わせを備えることができ、さらには/あるいは種々の種類の伝送技術およびプロトコルの任意の組み合わせを利用することができる。
【0037】
コンピュータシステム202は、任意の解決策を使用してガスレベルデータ260および/またはしきい値差データ290などのデータを取得または提供することができる。コンピュータシステム202は、1つ以上のデータ格納場所からのガスレベルデータ260および/またはしきい値差データ290の生成、検出システム150および/またはユーザ212などの他のシステムからのガスレベルデータ260および/またはしきい値差データ290の受信、ならびに他のシステムへのガスレベルデータ260および/またはしきい値差データ290の送信、などを行うことができる。
【0038】
本明細書においては触媒の変質を監視するための方法およびシステムとして図示および説明されているが、本発明の態様が、種々の別の実施形態もさらにもたらすことを、理解すべきである。例えば、一実施形態において、本発明は、少なくとも1つのコンピュータにとって読み取り可能な媒体に用意され、実行されたときにコンピュータシステムが触媒の変質を監視することを可能にするコンピュータプログラムを提供する。この限りにおいて、コンピュータにとって読み取り可能な媒体は、本明細書に記載のプロセスおよび/または実施形態の一部またはすべてを実現する監視システム100(図1および3)などのプログラムコードを含む。用語「コンピュータにとって読み取り可能な媒体」は、現時点において公知であり、あるいは後に開発される任意の種類の実体のある表現媒体のうちの1つ以上であって、そこからプログラムコードのコピーを演算装置によって読み取ることができ、複製でき、あるいは他のやり方で通信することができる表現媒体を含む。例えば、コンピュータにとって読み取り可能な媒体は、1つ以上の可搬の記憶用の製造物、演算装置の1つ以上のメモリ/記憶コンポーネント、紙、などを含むことができる。
【0039】
別の実施形態において、本発明は、本明細書に記載のプロセスの一部またはすべてを実現する監視システム100(図1および3)などのプログラムコードのコピーを提供する方法を提供する。この場合、コンピュータシステムは、本明細書に記載のプロセスの一部またはすべてを実現するプログラムコードのコピーを処理し、第2の別の場所において受信されるデータ信号一式であって、その特徴のうちの1つ以上がプログラムコードのコピーをこのデータ信号一式に符号化するようなやり方で設定および/または変更されたデータ信号一式を生成して送信することができる。同様に、本発明の実施形態は、本明細書に記載のプロセスの一部またはすべてを実現するプログラムコードのコピーを取得する方法であって、コンピュータシステムが本明細書に記載のデータ信号一式を受信するステップと、データ信号一式を少なくとも1つのコンピュータにとって読み取り可能な媒体に用意されたコンピュータプログラムのコピーに変換するステップとを含む方法を提供する。いずれの場合も、データ信号一式を、任意の種類の通信リンクを使用して送信/受信することができる。
【0040】
いずれにせよ、例えば監視システム100を含む本発明の種々の実施形態の技術的効果は、機関の触媒の変質を監視することである。
【0041】
演算装置140は、図1および2に関連して説明した方法の各プロセスで符号化されたプログラムコードなど、インストールされたプログラムコードを実行することができる1つ以上の汎用のコンピュータ製造物を含むことができる。演算装置140が複数の演算装置を備える場合、各々の演算装置には、プログラムの一部分だけ(例えば、1つ以上のモジュール)が用意されてよい。しかしながら、演算装置140および本明細書に記載の方法を実行するための任意のプログラムが、本明細書に記載のプロセスを実行することができる種々の考えられる同等のコンピュータシステムの代表にすぎないことを、理解すべきである。この限りにおいて、他の実施形態においては、これに限られるわけではないが本明細書において述べたとおりの触媒の変質の状態の検出など、演算装置140および本明細書に記載の方法を符号化するプログラムによってもたらされる機能を、汎用および/または特定の目的のハードウェア(プログラムコードを有しても、有さなくてもよい)の任意の組み合わせを含む1つ以上の演算装置によって少なくとも部分的に実現することができる。各々の実施形態において、ハードウェアおよびプログラムコード(含まれる場合)を、標準的な工学およびプログラミングの技術をそれぞれ用いて生成することができる。
【0042】
演算装置140が複数の演算装置を含む場合、演算装置は、任意の種類の通信リンクを介して通信することができる。さらに、本明細書に記載のプロセスを実行するとき、演算装置140は、任意の種類の通信リンクを使用して1つ以上の他のコンピュータシステムと通信することができる。いずれの場合も、通信リンクは、種々の種類の有線および/または無線リンクの任意の組み合わせを備えることができ、1種類以上のネットワークの任意の組み合わせを備えることができ、さらには/あるいは種々の種類の伝送技術およびプロトコルの任意の組み合わせを利用することができる。
【0043】
本明細書において使用される用語は、あくまでも特定の実施形態を説明する目的のためのものにすぎず、本発明を限定しようとするものではない。本明細書において使用されるとき、単数形「a」、「an」、および「the」は、文脈からそのようでないことが明らかでない限り、複数形も含むように意図されている。さらに、用語「・・・を備える」および/または「・・・を含む」が、本明細書において使用されるときに、そこで述べられている特徴、完全体、工程、動作、構成要素、および/またはコンポーネントの存在を指定しているが、1つ以上の他の特徴、完全体、工程、動作、構成要素、コンポーネント、および/またはこれらのグループの存在または追加を排除するものではないことを、理解すべきである。
【0044】
本明細書においては、本発明を最良の態様を含めて開示するとともに、あらゆる装置またはシステムの製作および使用ならびにあらゆる関連の方法の実行を含む本発明の実施を当業者にとって可能にするために、いくつかの実施例を使用している。本発明の特許可能な技術的範囲は、特許請求の範囲によって定められ、当業者にとって想到される他の実施例も含むことができる。そのような他の実施例は、それらが特許請求の範囲の文言から相違しない構造要素を有しており、あるいは特許請求の範囲の文言から実質的には相違しない同等の構造要素を含むならば、特許請求の範囲の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0045】
100 監視システム
110 触媒コンバータ
110A 触媒
120 触媒コンバータ前ガスセンサ
130 触媒コンバータ後ガスセンサ
140 演算装置
150 制御ユニット(ECU)
201 環境
202 コンピュータシステム
204 処理コンポーネント
206 記憶コンポーネント
208 入力/出力(I/O)コンポーネント
210 通信経路
211 処理ユニット(PU)
212 ユーザ
224 演算装置
232 モジュール
図1
図2
図3