(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の例示の態様について説明するが、本発明は以下の態様に限定されず、特許請求の範囲の精神及び範囲から逸脱しない任意の改変が本発明に包含されることが意図される。また本開示の各特性値は、特記がない限り本開示の[実施例]の項に記載する方法又はこれと同等であることが当業者に理解される方法で測定される値を意図する。
【0015】
本開示は、
ループ層及び基材層を含む、面ファスナー用のループ部材であって、
前記ループ層が、融着されている短繊維不織布を含み、
前記基材層が、カレンダー加工されている短繊維不織布を含み、
前記ループ層中の繊維の平均繊度の、前記基材層中の繊維の平均繊度に対する比[ループ層中の繊維の平均繊度]/[基材層中の繊維の平均繊度]が、1.5〜30であり、
前記基材層の厚みが、15μm〜100μmである、ループ部材を提供する。
【0016】
本開示のループ部材は、従来公知の種々の止着手段による面ファスナーを構成するループ部材として使用できる。一態様において、本開示のループ部材を雌材として用い、雄材と組合せて面ファスナーを構成できる。別の態様において、面ファスナーは、雄材と、本開示のループ部材である雌材との両方の構造が同一面に存在しているような部材の対であってもよい。本開示のループ部材は、例えば、壁や布帛等に直接係合してもよい。
【0017】
より具体的には、本開示のループ部材においては、ループ層に含まれる短繊維不織布が係合素子として機能し、基材層に含まれる短繊維不織布が印刷面を構成することが意図される。不織布である係合素子との強固な係合が可能である点で好ましい雄材として、例えばフックを例示できる。フックは、面ファスナー厚み方向に突き出た突起物で構成される。突起物は、係合力を満足できるものであれば種類を問わないが、例えば、キノコ状、錨状、J字状の形状が好ましい。ピン密度は、1平方インチあたり500本から5000本程度が一般的である。素材は、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、ポリアミド、これらのコポリマーや混合物から選択できる。本開示のループ部材は、フックと、該フックが係合可能な係合素子としての短繊維不織布を含むループ層とが同一面に存在するように構成された止着部材の一部であってもよい。
【0018】
図1は、本発明の一態様に係るループ部材の例を示す図である。
図1を参照し、ループ部材1は、基材層11と、ループ層12とを有する。典型的な態様において、ループ部材1は、印刷層13を更に有することができる。
【0019】
ループ層及び基材層は短繊維不織布を含む。典型的な態様において、ループ部材は、本質的に不織布で構成されていることができ、更に典型的には本質的に短繊維不織布で構成されていることができる。本質的に不織布で構成されているループ部材は、衛生用品としての使用に好適な程度の柔軟性及び通気性を有することができる。短繊維不織布は、薄くかつ柔らかい層を形成でき有利である。なお本開示で、「短繊維不織布」とは、少なくとも主要部(構成繊維の50質量%超)がステープル(すなわち短繊維)で構成される不織布を意図し、フィラメント(すなわち長繊維)で構成される不織布とは区別される。短繊維不織布は、カーデッド不織布、エアレイド不織布、湿式不織布等を包含する。一方長繊維不織布は、一般的に、スパンボンド不織布等を包含する。ステープルは、これに限定されないが、一般的には数百mm以下の繊維長を有していることができる。
【0020】
ループ層は、融着されている短繊維不織布を含む。本開示で、「融着されている短繊維不織布」とは、短繊維不織布を構成する繊維が、当該繊維の溶融によって互いに固着されているような形態を有する短繊維不織布を意図する。短繊維不織布が融着されたものであることは、状態観察(例えば光学顕微鏡による状態観察)において、短繊維不織布の繊維表面に繊維材料の溶融痕があり、その溶融痕の部位で繊維同士が結合されている形態がみられることにより確認できる。ここで、溶融痕とは、ループ層のみを融着することを目的とした処理が施された痕(従ってループ層のみにみられる)を意図し、例えば、ループ層と基材層との結合等、他の目的の加工で生じた溶融痕(このような溶融痕はループ層と基材層との両者に亘ってみられる)とは区別される。また、溶着は、短繊維不織布を手で触れてみると表面がやや固くなっている状態としても確認される。本開示において、融着されている短繊維不織布を形成するための融着は、例えば、高温エアスルー加工によって形成され得る。本開示で、短繊維不織布の「高温エアスルー加工」とは、高温(少なくとも短繊維不織布の繊維の外側の素材の融点以上)のエアを短繊維不織布の厚み方向に貫通させる加工を意図する。融着の他の方法としては、さらに高温下でエアーをスルーさせずに熱する手段や薬品によって繊維の外側を溶かして繊維間を固着する手段も考えられる。ただし、短繊維不織布の表面だけでなく奥側(の繊維の外側)も融着させる観点から高温エアスルー加工が好ましい。またおむつ等の衛生用品の用途では繊維を溶かす薬品等は敬遠されることも多く高温エアスルー加工が好ましい。このように、ロール等で短繊維不織布に対して大きな圧力を直接かける方法ではない方法により繊維を融着させることで、ループ部材としての係合力を維持しつつ耐久性を向上させることが可能となる。
【0021】
基材層は、カレンダー加工されている短繊維不織布を含む。本開示で、「カレンダー加工されている短繊維不織布」とは、圧力の適用によって平滑化されている表面形態を有する短繊維不織布を意図する。従って本開示において、カレンダー加工されている短繊維不織布を形成するためのカレンダー加工は、平滑化の目的で、対の平滑ロールの間に被処理層を通す加工に加え、例えば、平滑ロールと凹凸ロール(例えばサーマルボンドロール)との間に被処理層を通し、被処理層を平滑化する加工等も包含しうる。なお、例えば凹凸ロールを用いる場合には、所望の平滑化効果を得るための工程の調整(例えば、ロール間に被処理層を通す操作を複数回行うこと、後述のポイントボンドにおける処理面積が比較的多くなるようにポイントボンド条件を調整すること等)が当業者により適宜行われることが意図される。なお、上記「高温エアスルー加工」と「カレンダー加工」とは、後者が平滑化を目的としてロール等を短繊維不織布に直接接触させる加工であるのに対し、前者はそうでない点等の相違点を有する。
【0022】
本開示のループ部材は、基材層とループ層とが別個の層であるため、各層の特性を、目的に応じて互いに独立に制御できる。本発明者は、良好な印刷特性(すなわち鮮明に印刷された意匠の実現)を実現するためには高平滑性の印刷面が求められることに着目し、更に、対の止着部材(例えば、本開示のループ部材を雌材として用いる場合の雄材、フックとも呼ばれる)との間の係合強度(特に剥離強度及び剪断強度)、並びに繰り返し脱着時の該係合強度の持続性を確保することが求められることに着目した。本発明者はまた、従来、不織布がポイント結合されているために印刷面が平滑でなく、従ってインク滴が印刷面上で不安定に存在すること、及びループ部材が厚く、ループ部材を通して印刷層を視認すると印刷イメージがぼやけて見えることが、視認される印刷イメージが不鮮明であることの主要な原因であることに着目した。本発明者は更に、不織布を用いた従来のループ部材は、繰り返し脱着に耐える係合強度持続性を備えていないことに着目した。
【0023】
そして本発明者は、基材層に用いられる不織布に比べ繊度が大きくかつ融着されている不織布を含むループ層と、カレンダー加工によって薄く平滑にされた基材層とを積層することで、止着部材間の係合強度及び繰り返し脱着時の係合強度の持続性と、印刷特性及び部材としての形状保持性とを高度に両立させることができることを見出した。また、薄いループ部材(すなわちループ層と基材層とが積層されたもの)は、低コストであり柔軟性にも優れる点で有利である。
【0024】
ループ層は係合素子として機能できる。一態様において、ループ層が含む短繊維不織布はフックと係合可能である。なおフックの材質としては種々の熱可塑性樹脂材料、例えば、ポリエチレン(例えば、高密度ポリエチレン)、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ナイロン、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリアセタール、ポリメチルペンテン、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン、ポリフェニレンエーテル、ポリフェニレンサルファイド、並びに、スチレン−ブタジエン−スチレン、スチレン−イソプレン−スチレン等のスチレン系エラストマー、エチレン−α−オレフィンコポリマー等のオレフィン系エラストマー、エステル系エラストマー、アミド系エラストマー、ウレタン系エラストマー、塩化ビニル系エラストマー、シリコーン系エラストマー、フッ素系エラストマー、及びそのアロイ、等を例示できる。
【0025】
ループ層及び基材層の各々に含まれる短繊維不織布を構成する繊維としては、ポリオレフィン(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、ポリエステル(例えばPET、PBT等)、ポリアミド、ポリウレタン、EVA(エチレン・ビニルアセテート)、ポリ乳酸、レーヨン、これらのコポリマー及び混合物の繊維、並びに天然繊維等が挙げられる。
【0026】
ある態様においては、他の止着部材との係合によるループ層破壊(繊維の抜け等)を防ぐという観点から、ループ層には高強度であるポリアミドが使用されることがあり得る。一方、材料コストや環境安定性を考慮すると、ループ層及び/又は基材層においてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が好ましく使用される。
【0027】
短繊維不織布を構成する繊維は親水性でも撥水性でも良い。繊維は複合繊維であっても良い。複合繊維の好ましい繊維形態としては、芯鞘型(コア・シース型(同心円型及び偏心型))、並列型(すなわちサイド・バイ・サイド型)、分割型(例えば断面が円弧状に分割されたもの)等が挙げられる。また繊維は異形断面繊維、捲縮繊維、熱収縮繊維等であっても良い。これらの繊維は一種を単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
また、結晶性ポリプロピレンからなるハードエラスチック成分を第1成分とし、熱可塑性エラストマーを第2成分とする2成分系の伸縮弾性複合繊維、又は、これと他の繊維との混紡繊維も例示できる。
【0029】
好ましい態様において、ループ層に含まれる短繊維不織布を構成する繊維は、芯鞘構造を有する。また、より好ましい態様において、ループ層及び基材層の各々に含まれる短繊維不織布を構成する繊維は、芯鞘構造を有する。芯鞘構造を有する繊維としては、第1の融点を有する芯部(例えば、ポリアミド)と、該第1の融点よりも低い第2の融点を有する鞘部(例えば、ポリエチレン)とを有する芯鞘繊維が、熱融着性に優れ有利である。材料コストや環境安定性を考慮すると、ループ層及び/又は基材層においてポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等が好ましく使用されるという観点に鑑み、第1の融点を有する芯部と、該第1の融点よりも低い第2の融点を有する鞘部とを有する芯鞘繊維としては、例えば、ポリプロピレン芯部とポリエチレン鞘部とを有する芯鞘繊維、ポリプロピレン芯部と変性ポリエチレン鞘部とを有する芯鞘繊維、ポリプロピレン芯部と変性ポリプロピレン鞘部とを有する芯鞘繊維等を例示できる。ある態様においては、軽量、高強度、高柔軟性等の観点から、ポリプロピレン芯部とポリエチレン鞘部とを有する芯鞘繊維を選択することができる。特に、ループ層が、上述のような芯鞘構造を有する繊維で構成される短繊維不織布を含むことは、融着部位の良好な形成の観点で有利である。
【0030】
例えば、ループ層に含まれる短繊維不織布を構成する繊維が、第1の融点を有する芯部と第2の融点を有する鞘部とを有する芯鞘繊維である場合の好ましい態様において、第1の融点は、ループ層の良好な機械強度を得る観点から、約150℃以上、又は約160℃以上、又は約170℃以上であり、ポリエチレン又はポリプロピレンを用いる場合には材料の性質から約200℃以下、ポリエステルを用いる場合には材料の性質から約300℃以下である。また、好ましい態様において、第2の融点は、ループ層の良好な機械強度を得る観点、ループ層において融着による固着部位を良好に形成する観点、並びにループ層の柔軟性を良好に得る観点から、約130℃以下、又は約120℃以下、又は約110℃以下であり、高分子材料を用いる観点から約80℃以上、又は約100℃以上である。上述の範囲の第1の融点と上述の範囲の第2の融点との組合せは特に好ましい。なお、上述の範囲の第1の融点及び第2の融点、並びにこれらの組合せは、基材層においても、通気性及び平滑性に優れる短繊維不織布を形成する観点で有利である。なお、芯部が複数の融点を有する場合、及び鞘部が複数の融点を有する場合、もそれぞれあり得る。この場合、芯部の複数の融点のいずれもが第1の融点ではあり、鞘部の複数の融点のいずれもが第2の融点ではあるが、特にそれぞれ最も低いものが融着および形状維持に貢献する。一態様において、本開示における芯部の第1の融点及び鞘部の第2の融点の例示は、芯部の第1の融点のうち最も低いもの及び鞘部の第2の融点のうち最も低いものに関するものであってよい。なお融点はDSC等によって測定される値である。
【0031】
別の好ましい態様において、ループ層に含まれる短繊維不織布を構成する繊維は、例えば第1の融点として上記で例示した範囲の融点を有する単独材料の繊維であってもよい。
【0032】
好ましい態様において、ループ層の平均繊度は、約2.0デニール以上約15.0デニール以下である。該平均繊度は、良好な係合強度を得る観点から好ましくは約2.0デニール以上、又は約4.0デニール以上であり、ループ部材の良好な柔軟性を維持する観点から好ましくは約15.0デニール以下、又は約12.0デニール以下、又は約10.0デニール以下、又は約8.0デニール以下、又は約6.0デニール以下である。
【0033】
好ましい態様において、基材層の平均繊度は、約0.5デニール以上約3.0デニール以下である。該平均繊度は、基材層の機械強度の維持、製造容易性の観点から好ましくは約0.5デニール以上、又は約0.7デニール以上、又は約0.9デニール以上、又は約1.0デニール以上であり、平滑な印刷面を与えて良好な印刷特性に寄与するという観点から好ましくは約3.0デニール以下、又は約2.5デニール以下、又は約2.0デニール以下、又は約1.5デニール以下である。
【0034】
ループ層中の繊維の平均繊度の、基材層中の繊維の平均繊度に対する比[ループ層中の繊維の平均繊度]/[基材層中の繊維の平均繊度]は、約1.5以上約30以下である。上記比は、ループ層の係合強度と基材層の印刷特性とを両立する観点から、約1.5以上であり、好ましくは約1.7以上、又は約2以上である。また上記比は、ループ部材の柔軟性の維持、基材層の機械強度の維持、製造容易性等の観点から、約30以下であり、好ましくは約18以下、又は約6以下である。
【0035】
上記比は、ループ層及び基材層の各々の平均繊度を繊度測定装置であるVibromat ME(TEXTECHNO社製)又はこれと同等の測定装置にて測定した値から算出する。具体的には、まず、可能な限りランダムに繊維を10本程度採取する。その際、切れている繊維等、ダメージを受けた繊維は測定に利用できないため、採取しない。採取した繊維の内、1本の繊維の端をピンセットで挟み取り、繊維をねじったり、伸ばしたりせず、繊維両端を測定器のクランプに固定する。その際、糸が垂直になるように配置する。一定の繊維長さ及び張力において、クランプに固定した繊維の振動からその固定振動率を測定し、繊度に換算する。この操作を5回繰り返し、5本分の繊維の繊度平均値を平均繊度とする。測定環境は温度21℃±1℃、湿度65%±2%に設定する。求められたループ層及び基材層それぞれの平均繊度から、上記[ループ層中の繊維の平均繊度]/[基材層中の繊維の平均繊度]の比を算出する。
【0036】
ループ層及び基材層に含まれる短繊維不織布は、各々、短繊維不織布の製造方法として一般的な方法を用いて製造されたものであってよく、例えばカーデッド不織布、エアレイド不織布等であることができる。ここで、スパンボンド法やメルトブロー法によって製造される長繊維不織布を基材層として用いる場合には、得られる基材層の通気性を低減させるため高密度の不織布を使用する必要がある。また、かかる長繊維不織布から構成される基材層をカレンダー加工により薄くする場合、厚さが薄くなるほど、得られる基材層が硬くなってしまう傾向がみられる。一方、短繊維不織布を含む基材層は、カレンダー加工により薄くした場合に、柔軟で適度な通気性を容易に付与できる。短繊維不織布における繊維の結合様式は、サーマルボンド、ケミカルボンド、水流交絡、ニードルパンチ、ステッチボンド、スチームジェット等であってよい。好ましい態様において、基材層に含まれる短繊維不織布は、薄く柔軟性に優れるという観点から、サーマルボンド不織布である。好ましい態様において、ループ層に含まれる短繊維不織布は、短繊維不織布を高温エアスルー加工によって融着して得られるものである。
【0037】
ループ層に含まれる、融着されている短繊維不織布においては、短繊維不織布を構成する繊維が、繊維の溶融(典型的には繊維の表面の溶融)による固着部位において互いに結合されている。これにより、ループ層の短繊維不織布は優れた機械強度を有し、従って繰り返し脱着時の係合強度の良好な持続性を示すことができる。
【0038】
融着は、高温エアスルー加工が可能な任意の装置を用いて実施できる。装置としては、例えば、不織布の製造に用いられるオーブン等を使用できる。しかし本開示の典型的な態様において、融着は、不織布の製造においてそれぞれの不織布の材質に対して設定される通常の温度条件よりも高温で行われる。従って、本開示の典型的な態様においては、例えば後述で例示するような温度でのエアスルー加工が可能な装置を用いる。
【0039】
既定の材質の短繊維不織布を融着する際、溶融温度を高温にすること等によってもたらされる、繊維のより高い溶融レベルは、繊維表面の溶融によって形成される、繊維間の固着部位の増大に寄与する。繊維間の固着部位が多いと、短繊維不織布における繊維間の空隙が小さくなり、短繊維不織布の体積は小さくなる。典型的な態様において、融着を高温エアスルー加工にて行う場合の融着温度(具体的にはエア温度)及びエアブロー量は、目的に応じた固着部位の所望の形成程度に応じて設計できる。以下、温度及びエアブロー量の例示の態様について説明するが、本開示はこれらに限定されない。
【0040】
鞘がポリエチレンの場合の好ましい態様においては、ループ層の短繊維不織布が、温度約135℃〜約160℃の融着温度(例えば高温エアスルー加工におけるエア温度)で融着されている。融着温度は、固着部位の良好な形成によってループ層における短繊維不織布のファイバー抜けを防止し、良好な機械強度、従って係合強度の良好な持続性を得る観点から、約135℃以上、又は約140℃以上であり、ループ層の柔軟性及び通気性を良好に維持する観点から、約160℃以下、又は約150℃以下、又は約145℃以下である。
【0041】
好ましい態様において、融着温度(T1)と、圧着される繊維の表面を構成する材料の融点(T2)との差(T1−T2)は、固着部位の良好な形成の観点から、約5℃以上、又は約10℃以上、又は約30℃以上である。
【0042】
好ましい態様において、高温エアスルー加工におけるエアブロー量は、固着部位の良好な形成によってループ層における短繊維不織布のファイバー抜けを防止し、良好な機械強度、従って係合強度の良好な持続性を得る観点から、約1%以上、又は約10%以上、又は約20%以上、又は約30%以上であり、固着部位が多くなり過ぎることを防止して良好な柔軟性及び通気性を維持する観点から、約100%以下、又は約50%以下である。なお、エアブロー量は温度とのバランスで選定される。
【0043】
好ましい態様において、ループ層の破断時の引張強度は、約20N/50mm以上約200N/50mm以下である。好ましい態様において、該引張強度は、ループ部材の良好な係合強度を得る観点から、約20N/50mm以上、又は約25N/50mm以上、又は約30N/50mm以上であり、ループ部材の良好な柔軟性及び通気性を得る観点から、約200N/50mm以下、又は約100N/50mm以下である。
【0044】
典型的な態様において、ループ層は表面平滑化を目的とするカレンダー加工が実質的にされていない。これにより、ループ層が含む短繊維不織布を係合素子として良好に機能させることができる。なお、例えばループ層と基材層とを結合・固定する際、ループ層がロールによる圧縮等の圧縮を受けることは排除しない。例えば短繊維不織布層の一方の表面のみを表面平滑化する場合、該短繊維不織布層の他方の表面も一部同時に表面平滑化されてしまう場合がある。この場合、かかる他方表面に存在する短繊維不織布の係合強度(例えば剥離強度及び剪断強度)が低くなる可能性がある。これに対し、本開示のループ部材においては、ループ層が既にカレンダー加工されている基材層と組合されているため、基材層へのカレンダー加工の影響をループ層が受けておらず、従って所望の係合強度が損なわれることなくループ層を形成することができる。
【0045】
基材層に含まれるカレンダー加工されている短繊維不織布を得るためのカレンダー加工の方法及び条件は目的に応じて設定できる。カレンダー加工によって基材層の密度が高くなると、基材層は平滑な表面を有することができる。
【0046】
例えば、カレンダー加工は、基材層用の短繊維不織布を所望厚みまで圧縮するように設定された条件下で行う。例示の態様において、基材層がポリプロピレン/ポリエチレン芯鞘繊維で構成される場合、カレンダー加工は、ロール温度約100℃〜約180℃の条件で行うことができる。
【0047】
カレンダー加工された基材層の短繊維不織布は、基材層とループ層との間の安定的な結合、すなわち基材層によるループ層の安定的な保持に寄与し、ループ部材の係合強度を大きくする点で有利である。またカレンダー加工された基材層は、例えばカレンダー加工されていない不織布と比べて低い通気度を有することができるため、不織布を使用することの寄与による所望の通気度は維持しつつ、製造工程において不都合になる過度に大きな通気度を回避できる。
【0048】
典型的な態様において、基材層は、フィルム様(すなわち不織布表面の平滑性が高く不織布表面に繊細な印刷が可能となる状態)となる程度にカレンダー加工され得る。カレンダー加工後のフィルム様の基材層は、カレンダー加工前の基材層に比べて、通気度が低くなっている。
【0049】
好ましい態様において、ループ層の厚みは、約0.5mm以上約20mm以下である。ループ層の厚みは、良好な機械強度を維持して良好な係合強度及び繰り返し脱着時のその持続性を得る観点から、好ましくは約0.5mm以上、又は約1.0mm以上、又は約1.5mm以上であり、低コスト化及び良好な柔軟性の観点から、好ましくは約20mm以下、又は約10mm以下、又は約2.0mm以下である。
【0050】
本発明の一態様において、基材層の厚みは、約15μm以上約100μm以下である。基材層の厚みは、良好な機械強度を維持して良好な係合強度を得る観点から約15μm以上であり、好ましくは約20μm以上、又は約25μm以上、又は約35μm以上である。該厚みは、低コスト化及び柔軟性の観点から約100μm以下であり、好ましくは約85μm以下、又は約70μm以下、又は約55μm以下である。短繊維不織布(例えば、サーマルボンド不織布)により構成される基材層においては、カレンダー加工によって上記所定の厚さとした場合、基材層の通気度の所望程度までの低減と柔軟性の維持との両立が可能である。
【0051】
本開示で、ループ層及び基材層の厚みは、以下のように測定される。まず、ループ部材から10x10mmの面積で厚み測定用サンプルを採取する。次いで、ループ層の測定の場合には、測定用サンプルから基材層を取り除き、基材層と結合・固定されていない状態で存在するループ層の厚みを測定し、基材層の測定の場合には、測定用サンプルからループ層を取り除き、ループ層と結合・固定されていない状態で存在する基材層の厚みを測定する。上記厚み測定をサンプルの異なる箇所で5回繰り返し、5回測定した結果の厚み平均値をループ層又は基材層の厚みとする。厚みの測定には、厚み測定器(Mitsutoyo ABSOKUTE(KK−547−055、又はこれと同等の測定器))を用い、当該測定器の円柱端面と基盤の間にサンプルを挟み、2秒後にデジタル表記される厚さを読み取ることでループ層又は基材層の厚みを測定する。
【0052】
好ましい態様において、ループ層の坪量は、約12gsm以上約50gsm以下である。該坪量は、ループ層の機械強度を維持して良好な係合強度及び繰り返し脱着時のその持続性を得る観点から、好ましくは約12gsm以上、又は約15gsm以上、又は約20gsm以上、又は約25gsm以上であり、薄く低コストで、柔軟なループ部材を得る観点から、好ましくは約50gsm以下、又は約45gsm以下、又は約35gsm以下である。
【0053】
好ましい態様において、基材層の坪量は、約8gsm以上約30gsm以下である。該坪量は、基材層の機械強度を維持する観点から、好ましくは約8gsm以上、又は約10gsm以上、又は約12gsm以上であり、薄く低コストで、柔軟なループ部材を得る観点から、好ましくは約30gsm以下、又は約25gsm以下、又は約21gsm以下、又は約18gsm以下である。
【0054】
基材層の印刷層形成面の表面には、表面処理(例えばコロナ放電処理、Eビーム処理)がされていてもよい。またループ層及び/又は基材層に着色等の処理が施されていてもよい。
【0055】
ループ層及び/又は基材層は、本開示のループ部材の利点を良好に得る観点から、典型的には、短繊維不織布からなることができる。また、短繊維不織布以外の追加の層を含んでいてもよい。ループ層及び基材層、並びに、ループ層及び基材層に含まれる短繊維不織布は、各々、単層でも複数層でもよい。追加の層としては、接着層、樹脂フィルム、編物、織布、紙、又はこれらの積層体等が挙げられる。追加の層の形成方法は特に限定されないが、コーティング、ドライラミネート、押し出しラミネート、ウェットラミネート、熱ラミネート、超音波等、従来公知の方法を使用できる。
【0056】
典型的な態様において、ループ部材は印刷層を更に含む。印刷層は基材層上に直接固定されていてよい。本開示で、印刷層が基材層上に直接固定されているとは、印刷層が基材層上に他の部材又は層を介さずに配置されて(つまり、基材層に接して)おり、且つ、印刷層がその形態を保ったまま基材層から実質的に剥離不能であることを意図する。このような印刷層は、薄いループ部材を単純な工程で得ることができる点で有利である。
【0057】
印刷層は、少なくともインク層を有し、1層又は複数層である。印刷層は、インク層のみで構成されてもよいし、インク層に加え、ベースコート及び/又はトップコートを有してもよい。ベースコート及びトップコートはそれぞれインク層の基材層上での定着性の向上に寄与する。
【0058】
インク層、並びに任意のベースコート及びトップコートは、それぞれ、基材層上に連続層として存在してもよいし、不連続に配置されていてもよく、所望の目的、例えばインク層の目的の図柄に応じて適宜デザインできる。図柄は文字、絵、模様等、任意に選択できる。
【0059】
インク層の材料としては、従来公知の種々のインクが挙げられ、水溶性、溶剤型のインクが用いられる。インクに含有される樹脂としては、従来より通常用いられている樹脂を使用できる。例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ウレア樹脂、ポリエステル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合樹脂、エチレン−酢酸ビニル共重合樹脂、オレフィン樹脂、塩素化オレフィン樹脂、エポキシ樹脂、石油系樹脂、セルロース誘導体樹脂などが用いられる。堅牢性に優れるインク層によれば、本開示のループ部材を有する物品の使用時にインク層が露出しているような場合でも、インク層が脱落しにくい。この観点から、例えばアクリル系インク、ウレタン系インク等は好適である。
【0060】
インク層自体が粘着性を有していることは、印刷層の基材層上での定着性の観点から好ましい。粘着性を有するインク層を形成するための材料としては、上記した接着層に用いられる材料をインクに混合したものが例示できる。
【0061】
印刷層を構成するインク層並びに任意のベースコート及びトップコートの各々の厚みは、これらに限定されないが、印刷層の堅牢性及び衛生用品に用いた場合の着用感(柔軟性、通気性等)という観点から、例えば、それぞれ約0.5μm以上約20μm以下、又は約1μm以上約15μm以下、又は約2μm以上約10μm以下であることができる。
【0062】
ある態様において、印刷層は、接着剤によって基材層と接着されていてもよい。この場合、印刷層の定着性が良好である。接着剤の材料としては、アクリル系ポリマー(例えばSKダイン(綜研化学から市販で入手可能なアクリル系粘着剤)、シリコーン系ポリマー、ゴム系ポリマー等の粘着性ポリマー、及び、例えばJet−melt
TM EC−3748(スリーエム ジャパン社から市販で入手可能)等のホットメルト型接着剤を例示できる。上記粘着性ポリマーには更に任意に粘着付与樹脂、架橋剤等の添加剤を組合せてもよい。
【0063】
接着剤の厚さは、通常約5μm〜約200μmであることができる。接着剤は、例えば基材層の表面に上記のような接着剤の材料を塗布した後、乾燥させることで形成できる。
【0064】
本開示のループ部材の製造方法は種々可能である。例示の態様において、ループ部材は、ループ層用の短繊維不織布及び基材層用の短繊維不織布を準備すること、基材層用の短繊維不織布をカレンダー加工すること、ループ層用の短繊維不織布を融着すること、カレンダー加工された短繊維不織布と融着されたループ層用の短繊維不織布とを積層し、これらを互いに結合して、基材層とループ層とを有する積層ウエブを得ること、及び任意に積層ウエブの基材層側に印刷層を形成すること、を含む方法で製造できる。
【0065】
短繊維不織布の作製、基材層におけるカレンダー加工、及びループ層における融着は、例えば前述したような方法及び条件で行うことができる。次いで、カレンダー加工済の短繊維不織布と融着済のループ層用の短繊維不織布とを積層する。
【0066】
典型的な態様において、ループ層と基材層とは、エンボス加工、ケミカルボンド、ウォータージェット、エアスルー(高温エアスルー含む)等によって互いに結合されている。
図2は、ループ層と基材層とがエンボスによって固定された状態を表す、本発明の一態様に係るループ部材の例を示す図である。
図2に示すように、ループ部材1においては、基材層11とループ層12とが、エンボスパターンAによって互いに結合されていることができる。エンボス加工によって形成されるエンボスパターンの形状は種々可能であり、例えば矩形、波形等であってよい。例えば、ループ層と基材層とが結合されている結合領域の例示の態様において、ループ層及び/又は基材層がカーデッド不織布を含む場合、カーデッド不織布の繊維方向における結合領域のピッチが、これに概略直交する方向の結合領域のピッチよりも短くなるように配置することが好ましい。このような結合領域は、カーデッド不織布の毛羽立ちが回避できる点で有利である。ループ層がカレンダー加工された基材層と結合する構造となっているため、ループ層を基材層に安定かつ強固に固定することが可能となる。そのため、ループ部材を雄材等から剥がす際、ループ層の基材層からの剥離、ループ層の破れ、破壊等の問題が生じにくい。エンボス加工の条件としては、温度約110℃〜約180℃、圧力0N/m
2〜約1000N/m
2の範囲を例示できる。
【0067】
基材層上に印刷層を形成する方法としては、例えば、印刷層を形成するための材料(本開示で、印刷材料ともいう)を基材層上に直接コーティングする方法が挙げられる。また、予めライナー上に形成した印刷層を基材層上に転写し、ライナーを取外す方法等を用いることができる。上記の転写による方法は、印刷層のインクが基材層及びループ層を貫通しにくい点で好ましい。
【0068】
転写による方法として、具体的には、まず、ライナー上に印刷層を形成する。ライナーは、印刷層を基材層に転写するために、表面が適度な離型性を有していることが好ましい。ライナーとしては、転写用ライナーとして従来公知である種々のシートを使用でき、例えばシリコーン被覆クラフト紙、シリコーン被覆ポリエチレン被覆紙、シリコーン被覆又は非被覆のポリマー材料(例えばポリエチレン、ポリプロピレン等)、並びに、ポリマー剥離剤、例えばシリコーン尿素、ウレタン類、及び長鎖アルキルアクリレート等で被覆された基材等が挙げられる。適当な市販の剥離ライナーとしては、イリノイ州オークブルックのレキサム・リリース(Rexam Release of Oakbrook,Illinois)から「ポリシルク(POLYSLIK)」の商品名で販売されているもの、及びペンシルベニア州スプリング・グローブのP.H.グラトフェルター・カンパニー(P.H.Glatfelter Company of Spring Grove,Pennsylvania)から「エクスヒア(EXHERE)」の商品名で販売されているものなどがある。ライナーは、印刷層形成面に、例えばエンボス加工等が施されていてもよい。
【0069】
このようなライナー上に、印刷材料を適用する。典型的な態様において、例えばロール塗布、グラビア塗布、カーテン塗布、スプレー塗布、スクリーン印刷等の任意の印刷方法にて、ライナー上にインクを適用する。又は、ライナー上に例えばトップコート、インク、ベースコートをこの順に適用してもよい。上記手順により、ライナー上に印刷層が形成されてなる転写用シートを得る。
【0070】
次いで、この転写用シートの印刷層側と積層ウエブの基材層側とが対向するように、転写用シートと積層ウエブとを対のローラー間に通すことで、印刷層をライナーから基材層に転写する。これにより、基材層上に印刷層が形成されたループ部材を得ることができる。
【0071】
なお、印刷層がインク層とベースコート及び/又はトップコートとを有する場合、印刷層は複数の工程で順次形成してもよい。例えばベースコート、インク層及びトップコートからなる印刷層の場合、基材層上に予めベースコートを形成し、次いでインク層を転写し、次いでトップコートを形成してもよい。以上の方法で、印刷層を、基材層に直接固定できる。
【0072】
好ましい態様において、ループ部材の坪量は、約20gsm以上約60gsm以下である。該坪量は、ループ部材の機械強度を維持して良好な係合強度を得る観点から、好ましくは約20gsm以上、又は約25gsm以上、又は約28gsm以上、又は約33gsm以上であり、薄く低コストで、柔軟なループ部材を得る観点から、好ましくは約60gsm以下、又は約50gsm以下、又は約43gsm以下、又は約37gsm以下である。
【0073】
好ましい態様において、ループ部材とこれが係合する他の止着部材(具体的には面ファスナー用フック)との間の90度剥離強度は、約0.2N/25.4mm以上約10N/25.4mm以下である。上記90度剥離強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1221に準拠して測定される。該90度剥離強度は、良好な係合強度の観点から好ましくは約0.2N/25.4mm以上、又は約0.3N/25.4mm以上、又は約0.4N/25.4mm以上、又は約0.45N/25.4mm以上であり、良好な使用感の観点から好ましくは約10N/25.4mm以下、又は約8N/25.4mm以下、又は約7N/25.4mm以下、又は約6N/25.4mm以下である。
【0074】
好ましい態様において、ループ部材とこれが係合する他の止着部材(具体的には面ファスナー用フック)との間の係合及び90度剥離を20回繰り返したときの20回目の90度剥離強度は、約0.1N/25.4mm以上約5.0N/25.4mm以下である。上記90度剥離強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1221に準拠して測定される。該90度剥離強度は、良好な係合強度の観点から好ましくは約0.1N/25.4mm以上、又は約0.2N/25.4mm以上、又は約0.3N/25.4mm以上、又は約0.4N/25.4mm以上であり、良好な使用感の観点から好ましくは約5.0N/25.4mm以下、又は約3.0N/25.4mm以下、又は約1.0N/25.4mm以下である。
【0075】
好ましい態様において、ループ部材とこれが係合する他の止着部材(具体的には面ファスナー用フック)との間の剪断強度は、約25N/20mmX25.4mm以上である。上記剪断強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1235に準拠して測定される値である。該剪断強度は、良好な係合強度の観点から好ましくは約25N/20mmX25.4mm以上、又は約30N/20mmX25.4mm以上である。該剪断強度の上限は特に限定されないが、製造容易性や止着部材の強度の観点から、例えば約100N/20mmX25.4mm以下であってよい。
【0076】
好ましい態様において、ループ部材とこれが係合する他の止着部材(具体的には面ファスナー用フック)との間の係合及び90度剥離をJTM−1221に準拠して20回繰り返した後の剪断強度は、約5N/20mmX25.4mm以上約100N/20mmX25.4mm以下である。上記剪断強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1235に準拠して測定される値である。該剪断強度は、良好な係合強度の観点から好ましくは約5N/20mmX25.4mm以上、又は約9N/20mmX25.4mm以上、又は約14N/20mmX25.4mm以上である。該剪断強度の上限は特に限定されないが、製造容易性や止着部材の強度の観点から、例えば約100N/20mmX25.4mm以下であってよい。
【0077】
好ましい態様において、ループ部材の5%伸長時の引張強度は、目的に応じて所定範囲に制御される。ループ部材の引張強度が高すぎると、ループ部材が硬くなる傾向がある。一方、ループ部材の引張強度が低すぎると、衛生用品(おむつ等)の製造時にループ部材がMD方向に伸びてしまうという不都合(MD方向の引張強度が低すぎる場合)、又は、ループ部材を有する衛生用品(おむつ等)の使用時に、ループ部材が組み合わされるフックとの剪断によりループ層が伸びてしまうという不都合(CD方向の引張強度が低すぎる場合)が生じるおそれがある。なお本開示で、ループ部材のMD方向とは、ループ部材製造時における機械方向を意味する。ループ部材の製造時のMD方向は、通常ループ層及び基材層の製造時のMD方向に一致している。またCD方向とは、該MD方向に対して直交する(すなわち90度をなす)方向を意味する。上記の観点から、MD方向においては、引張強度は、好ましくは約7N/25.4mm以上、又は約10N/25.4mm以上、又は約12N/25.4mm以上であることができ、また好ましくは約200N/25.4mm以下、又は約100N/25.4mm以下、又は約50N/25.4mm以下であることができる。またCD方向においては、引張強度は、好ましくは約2.5N/25.4mm以上、又は約3N/25.4mm以上、又は約3.5N/25.4mm以上であることができ、また好ましくは約50N/25.4mm以下、又は約30N/25.4mm以下、又は約20N/25.4mm以下であることができる。
【0078】
本開示のループ部材は、種々の物品、例えば床材、壁材、衣料、清掃用部材、自動車内装材等における種々の被適用物の固定に使用できる。本開示のループ部材は、その構成に起因して良好な柔軟性及び通気性、並びに良好な係合強度及び繰り返し脱着時のその持続性を有することができるため、衛生用品、特に大人用おむつに取り付けられる面ファスナー用のループ部材として好適である。
【0079】
本発明の別の態様は、上述した本発明の一態様に係るループ部材を含む面ファスナーを含む、大人用おむつを提供する。
【0080】
衛生用品としては、子供用及び大人用のおむつ、生理用及びその他の用途のナプキン、等が挙げられるが、本開示のループ部材は、繰り返し脱着時の係合強度の持続性が良好であるため、このような繰り返し脱着がしばしば行われる大人用おむつに対して特に好適に適用される。典型的な態様において、本開示のループ部材を、本開示のループ部材又は他の任意の止着部材とそれぞれ組合せて、衛生用品、好ましくは大人用おむつにおける面ファスナーとして使用できる。
【0081】
好ましい態様において、衛生用品は通気性に優れる。より具体的には、衛生用品の、ガーレー法で測定される通気度は、衛生用品に良好な着用感を与えることができるという観点から、約5秒以下であることが好ましい。より好ましく約3秒以下、更に好ましくは約1秒以下である。下限については特に制限はないが、ある態様においては、約0.1秒以上である。
【0082】
衛生用品の製造方法は特に限定されないが、例えば以下の方法を例示できる。衛生用品におけるループ部材以外の要素としては従来公知の任意の要素を採用可能であり、ここでは詳細は説明しない。衛生用品において、被適用部にループ部材を取り付ける方法は従来公知の任意の方法であることができる。ループ部材の印刷層形成面を、従来公知の接合方法(グルー、熱融着、超音波加工等による接着、縫製、ステープラーによる機械的固定等)で被適用部に接合する。グルーによる固定においてはSIS、SBS等のゴム系、アクリル系、シリコン系、EVA系等の公知の粘着剤が必要に応じて適宜選択されるが、これらの樹脂に限定されるものではない。
【実施例】
【0083】
以下、実施例によって本発明を更に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0084】
<ループ部材の作製>
[実施例1〜7、比較例1]
(ループ層用の短繊維不織布)
以下の、カーディング不織布を用いた。鞘部の融点は約115℃、芯部の融点は約163℃である。
品番:6.6 ESC cure repeat PE 1185、ポリエチレン(鞘)/ポリプロピレン(芯)二成分繊維、平均繊度6デニール、繊維長40mm、Fibervisions社から市販で入手可能
品番:SESC4013、ポリエチレン(鞘)/ポリプロピレン(芯)二成分繊維、平均繊度4デニール、繊維長40mm、Fibervisions社から市販で入手可能
品番:ESC225SDGK、平均繊度2デニール、ポリエチレン(鞘)/ポリプロピレン(芯)二成分繊維、繊維長40mm、Fibervisions社から市販で入手可能
品番:ETC212C、平均繊度12デニール、ポリエチレン(鞘)/ポリエチレンテレフタレート(芯)二成分繊維、繊維長40mm、Fibervisions社から市販で入手可能
【0085】
(ループ層の融着)
下記オーブン内で下記条件にて短繊維不織布を高温エアスルー加工することで、融着された、ループ層用の短繊維不織布を得た。
オーブン:STRAHM HiPer(TM) Therm System(Strahm Textile Systems AG社製)
ライン速度:表1及び2記載のとおり
エアスルー温度:表1及び2記載のとおり
エアブロー量
(*):表1及び2記載のとおり
(*)オーブンの最大吹出量100%に対する割合
【0086】
また、ポリエチレン(鞘)/ポリプロピレン(芯)二成分繊維で構成されたカーディング不織布(品番:1.7ESC cure repeat PE 1185又はSESC4014、平均繊度1.5デニール、繊維長40mm、Fibervisions社から市販で入手可能)を、150℃の熱ポイントボンドローラーに通して100%カレンダー(フットボールパターン)加工し、基材層用の短繊維不織布(坪量15gsm、繊度1.5デニール)を得た。
上記で得た、ループ層用の短繊維不織布と基材層用の短繊維不織布とを重ね、温度約135℃、ニップ圧80kgにてパターンエンボス加工して積層し、ループ部材を得た。
【0087】
[比較例2]
KLL GKL:品番:CLP−06603、3Mカンパニーから市販で入手可能。
【0088】
<特性評価>
1.90°剥離強度
90°剥離強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1221に準拠して測定した。ループ部材及び雄材の係合と90°剥離とを20回繰り返したときの初回及び20回目の90°剥離強度を記録した。
【0089】
2.剪断強度
剪断強度は、雄材として1600ピン/平方インチのフック部材(3Mカンパニー製 1600DH)を用い、JTM−1235に準拠して測定した。ループ部材と雄材とを係合させた後測定した剪断強度を初回の剪断強度とし、上記1.の方法でJTM−1221に従ってループ部材と雄材との係合と90°剥離とを20回繰り返し、次いでループ部材と雄材とを係合させた後測定した剪断強度を20回目の剪断強度とした。
【0090】
3.引張強度
引張強度は、ループ層について、テンシロン万能試験機(AND(エーアンドデイ)製RTG−1225)を用い、以下の方法で測定した。
レザーカッターにて、ループ層について長さ100mm以上、幅50mmにカットしてサンプルを作製した。
テンシロンの設定は以下のとおりとした。
チャック間隔:100mm
引張スピード:300mm/分
サンプルをチャックに取り付け、破断時引張強度を測定した。
【0091】
4.ループ層表面状態
実施例1及び比較例1で作製したループ部材のループ層につき、光学顕微鏡を用いて表面状態を観察した。
図3は、実施例1におけるループ層の表面状態画像を示す図であり、
図4は、比較例1におけるループ層の表面状態画像を示す図である。
図3及び4はそれぞれ拡大率175倍で撮影したものである。
【0092】
【表1】
【0093】
【表2】
【0094】
各実施例に係るループ部材は良好な剥離強度及び剪断強度を示した。実施例1〜4では繰り返し脱着20回を経ても良好な剥離強度及び剪断強度(すなわち剥離強度及び剪断強度の良好な持続性)を示している。各実施例の剥離強度及び剪断強度の持続性は、ニットループである比較例2と遜色ないものであった。一方、不織布のループ部材である比較例1は、剥離試験において、10〜15回の繰り返しでループ層が重りを保持できなくなり、また剪断強度は繰り返しの脱着によって劇的に低下した。比較例1においては、低温のエアスルー条件でループ層を形成したため、ループ層が実質的に融着されていなかった。