(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795299
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】薬剤拡散状況認識システム
(51)【国際特許分類】
G01M 9/06 20060101AFI20201119BHJP
A01M 29/12 20110101ALI20201119BHJP
【FI】
G01M9/06
A01M29/12
【請求項の数】2
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2015-234648(P2015-234648)
(22)【出願日】2015年12月1日
(65)【公開番号】特開2017-101996(P2017-101996A)
(43)【公開日】2017年6月8日
【審査請求日】2018年9月10日
【審判番号】不服2020-6513(P2020-6513/J1)
【審判請求日】2020年5月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000207584
【氏名又は名称】大日本除蟲菊株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【弁理士】
【氏名又は名称】沖中 仁
(72)【発明者】
【氏名】丹羽 涼子
(72)【発明者】
【氏名】鹿島 誠一
(72)【発明者】
【氏名】川尻 由美
(72)【発明者】
【氏名】中山 幸治
(72)【発明者】
【氏名】上山 久史
【合議体】
【審判長】
森 竜介
【審判官】
伊藤 幸仙
【審判官】
磯野 光司
(56)【参考文献】
【文献】
特開2010−181404(JP,A)
【文献】
特開平10−182301(JP,A)
【文献】
特表2015−519621(JP,A)
【文献】
特開2011−220910(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 9/00-10-00
A01M 1/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を、当該薬剤含有製品の利用者に認識させる薬剤拡散状況認識システムであって、
前記薬剤の拡散状況をイメージ化した視認データとして、所定のシミュレーション空間で前記薬剤含有製品から時間の進行に伴い薬剤が拡散していく状況を解析したシミュレーションの結果をイメージ化したものがコンピュータ、ホームページ、又はウェブ上に設けられており、
前記視認データとリンクされている薬剤拡散情報が、前記薬剤含有製品に付されており、
前記薬剤含有製品は、静置式薬剤揮散具、ファン式薬剤揮散具、エアゾール剤、ワンプッシュ式噴射剤、燻煙剤、蒸散剤、蚊取リキッド剤、及び蚊取線香からなる群から選択される少なくとも一つであり、
前記シミュレーションにおいて、前記シミュレーション空間における気流の速度及び気流の方向、並びに空気の温度を含む気流状態の空間分布を定常状態になるまで解析し、次に、前記薬剤含有製品から薬剤を発生させ、解析した定常状態での気流状態を用いて、薬剤濃度の空間分布を定常解析により予測する薬剤拡散状況認識システム。
【請求項2】
前記薬剤拡散情報は、コード化されている請求項1に記載の薬剤拡散状況認識システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を、当該薬剤含有製品の利用者に認識させる薬剤拡散状況認識システムに関する。
【背景技術】
【0002】
薬剤揮散具、エアゾール剤、ワンプッシュ式噴射剤、燻煙剤、蒸散剤、蚊取リキッド剤、蚊取線香等の薬剤含有製品において、近年、消費者意識の高まりから、薬剤の効能(殺虫効果、忌避効果)を利用者に分かり易く認識させることが求められている。ところが、これまでの多くの薬剤含有製品では、薬剤の効能を確かめるには利用者が実際に製品を購入し、それを使用して判断する必要があった。このように、実際に製品を使用してみないと薬剤含有製品の効能を確認できないのは、利用者にとって大変不便である。また、初めて薬剤含有製品を購入しようとする利用者は、当該薬剤含有製品のパッケージ等に記載されている情報に頼って製品を選択することとなり、その結果、必ずしも使用目的に合った薬剤含有製品が購入されているとは言えないケースも散見される。
【0003】
そこで、上記の問題を解決すべく、例えば、薬剤揮散具においては、稼働時の吸排気の様子や気流の拡散状態を可視化することにより、消費者が薬剤揮散具の効能を認識し易くする技術が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−181404号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の薬剤揮散器具のデモンストレーション方法は、薬剤揮散器具の後方に背景材を設置し、薬剤揮散器具の吸気口から可視化したトレーサ(ドライアイスの白煙)を吸引させ、それを排気口から排出させることにより、稼働時の吸排気の様子や気流の拡散状態を可視化したものである。このようなデモンストレーション方法は、例えば、販売店の店頭や展示会の会場などで実施される場合、利用者が購入前に薬剤揮散器具の効能をある程度把握することに役立つと思われる。ところが、店頭ではなく、例えば、テレビやインターネットを介した通信販売等で薬剤含有製品を購入するような場合は、当該製品のデモンストレーションを常に確認できるとは限らない。また、上記のデモンストレーション方法は、トレーサとしてドライアイスの白煙を利用しているため、実施する環境や条件が変化するとトレーサの挙動が不規則になり、デモンストレーションの結果が利用者にとって分かり難い場合がある。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、薬剤含有製品を購入しようとする者(利用者)が、その購入前又は使用前であっても、薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を確実且つ容易に認識することを可能にする薬剤拡散状況認識システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための本発明に係る薬剤拡散状況認識システムの特徴構成は、
薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を、当該薬剤含有製品の利用者に認識させる薬剤拡散状況認識システムであって、
前記薬剤の拡散状況に関連する薬剤拡散情報を含むことにある。
【0008】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況は、薬剤の拡散状況に関連する薬剤拡散情報として本認識システムに含まれているため、薬剤含有製品の利用者は、当該薬剤拡散情報を参照して薬剤含有製品の購入前又は使用前に、薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を確実且つ容易に認識することができる。
【0009】
本発明に係る薬剤拡散状況認識システムにおいて、
前記薬剤拡散情報は、前記薬剤含有製品に付されていることが好ましい。
【0010】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、薬剤拡散情報は、薬剤含有製品に付されているため、その場ですぐに薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を認識することができる。
【0011】
本発明に係る薬剤拡散状況認識システムにおいて、
前記薬剤の拡散状況をイメージ化した視認データがコンピュータ、ホームページ、又はウェブ上に設けられ、前記視認データは、前記薬剤含有製品の利用者が利用可能に構成されていることが好ましい。
【0012】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、薬剤含有製品の利用者は、コンピュータ、ホームページ、又はウェブ上に設けられた薬剤の拡散状況をイメージ化した視認データを利用することにより、場所を選ばずに薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を認識することができる。また、コンピュータ、ホームページ、又はウェブ上であれば、通常は上記視認データを大量に格納することが可能なため、数多くの薬剤含有製品の中から利用者が希望する製品に関する薬剤の拡散状況を、迅速且つ容易に抽出して認識することができる。
【0013】
本発明に係る薬剤拡散状況認識システムにおいて、
前記薬剤拡散情報は、前記視認データとリンクされていることが好ましい。
【0014】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、薬剤拡散情報は、視認データとリンクされているため、本認識システムに含まれる薬剤拡散情報を参照すれば、自動的に視認データを見ることができる。
【0015】
本発明に係る薬剤拡散状況認識システムにおいて、
前記薬剤拡散情報は、コード化されていることが好ましい。
【0016】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、薬剤拡散情報は、コード化されているため、薬剤拡散情報が膨大な場合でも、利用者は当該薬剤拡散情報を容易に利用することができる。また、薬剤拡散情報がコード化されていることで、情報の安全性及び信頼性を利用者に訴求することができる。
【0017】
本発明に係る薬剤拡散状況認識システムにおいて、
前記薬剤含有製品は、静置式薬剤揮散具、ファン式薬剤揮散具、エアゾール剤、ワンプッシュ式噴射剤、燻煙剤、蒸散剤、蚊取リキッド剤、及び蚊取線香からなる群から選択される少なくとも一つであることが好ましい。
【0018】
本構成の薬剤拡散状況認識システムによれば、上に列挙した薬剤含有製品は、利用者にとって身近な製品であるため、薬剤含有製品から放出される薬剤の拡散状況を認識させることは非常に有用なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の薬剤拡散状況認識システムの構成を表すブロック図である。
【
図2】
図2は、本発明の出願人が製造販売する薬剤含有製品の一つである害虫防除用蒸散剤を用いた場合の薬剤拡散状況のシミュレーション結果である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の薬剤拡散状況認識システムに関する実施形態について説明する。ただし、本発明は、以下に説明する実施形態や図面に記載される構成に限定されることを意図しない。
【0021】
図1は、本発明の薬剤拡散状況認識システム100の構成を表すブロック図である。本発明の薬剤拡散状況認識システム100は、薬剤含有製品50から放出される薬剤の拡散状況を、当該薬剤含有製品50の利用者に認識させるためのシステムであり、その特徴は、薬剤拡散情報10を有することにある。ここで、薬剤拡散情報10とは、薬剤含有製品50に含まれる薬剤の拡散状況に関連する情報であり、例えば、薬剤の拡散状況を表現するためのイメージ(動画又は静止画)や当該イメージを解説する説明文に関連付けられた、コンピュータで読み取り可能な情報である。従って、薬剤拡散情報10は、読取機能を備えた情報端末21で読み取り可能に構成されている。情報端末21としては、カメラ付きのスマートホン、カメラ付きの携帯電話、カメラ付きのタブレットコンピュータ、通信機能付きのデジタルカメラ等が挙げられる。利用者は、自身の情報端末21を使用して薬剤拡散情報10を読み取り、これを同じ情報端末21で、又は別の情報機器22に転送して利用することができる。
【0022】
薬剤拡散情報10は、具体的には、薬剤の拡散状況に関連する動画ファイル31、静止画ファイル32、又は文書ファイル33にリンクするコード情報(バーコード、QRコード(登録商標)等)として構成することができる。このように、薬剤拡散情報10がコード化されていれば、情報としての安全性及び信頼性が確保され、利用者は安心して薬剤拡散状況認識システム100を利用することができる。
【0023】
コード情報のリンク先にある薬剤の拡散状況に関連する動画ファイル31、静止画ファイル32、及び文書ファイル33は、薬剤含有製品50のメーカー又は販売店が管理するコンピュータ41、あるいはクラウドシステム42に格納され、利用者はインターネットを介して自身の情報端末21、又はパソコンやデジタルテレビ等の別の情報機器22から、動画ファイル31、静止画ファイル32、及び文書ファイル33に自動的にアクセスすることができる。ここで、薬剤拡散状況認識システム100は、利用者が、上記コンピュータ41、あるいはクラウドシステム42に直接アクセス可能に構成することもできるが、薬剤含有製品50のメーカー又は販売店のホームページ等を通じてアクセス可能とすることが安全上好ましい。そして、利用者は、自身の情報端末21又は別の情報機器22で動画ファイル31又は静止画ファイル32を実行すると、薬剤含有製品50から放出される薬剤の拡散シミュレーションが再生され、薬剤の拡散状況を視覚的に認識し、理解することができる。なお、動画ファイル31又は静止画ファイル32の実行(再生)は、薬剤含有製品50のメーカー又は販売店のホームページ等を通じて一旦利用者の情報端末21又は別の情報機器22にファイルをダウンロードしてから行うものであってもよいし、ダウンロードせずにストリーミング再生により行うものであってもよい。さらに、利用者は、コンピュータ41、あるいはクラウドシステム42にアクセスし、動画ファイル31及び静止画ファイル32に関連する文書データ33を開くと、画像を確認しながら薬剤の拡散状況の説明文を参照することができる。
【0024】
図2は、動画ファイル31の一例であり、薬剤拡散状況のシミュレーション動画の任意の時間におけるスクリーンショットを示したものである。
図2は、本発明の出願人が製造販売する薬剤含有製品の一つである害虫防除用蒸散剤(商品名「虫コナーズ(登録商標)プレートタイプ」)を用いた場合の薬剤拡散状況のシミュレーション結果である。参考のため、
図2のシミュレーションに利用した薬剤濃度の解析手法について、以下に説明する。
【0025】
薬剤濃度を解析するにあたり、時間の進行に伴い薬剤が拡散していく状況を解析結果として出力した。最初に、気流算出手段により、風速、温度等の空間分布を定常状態になるまで解析し、次に、製品から薬剤を発生させ、解析した風速分布等を用いて、濃度算出手段により、薬剤濃度の空間分布を定常解析により予測した。また、濃度分布の時間による変化を非定常解析により予測した。
【0026】
気流算出手段は、シミュレーション空間において、3次元の移流拡散方程式を有限差分法により離散化して数値的に解くことにより、気流の速度及び気流の方向(風速、風向)・空気の温度(以下「気流状態」ということがある)を求める手段である。気流算出手段は、気流の速度及び方向、並びに圧力の各運動要素を変数とするナビエストークス式に基づくk−ε乱流モデル(運動量の輸送方程式(1)、乱流エネルギーの輸送方程式(2)、及び乱流消散率の輸送方程式(3)から構成される)、熱量の輸送方程式(4)、並びに連続の式(5)から構成される前記移流拡散方程式について、各微小分割領域の隣接する格子点間で、微小時間ごとに有限差分法による数値解析を用いて繰り返し計算を行い、前記各格子点間の風速、風向、気温、及び風圧が所定の平衡状態となった場合において、その値をもって前記各格子点の予測風速データ、予測風向データ、及び予測気温データとして決定することができるように構成されている。
〔運動量の輸送方程式〕
【0027】
【数1】
〔乱流エネルギーの輸送方程式〕
【0028】
【数2】
〔乱流消散率の輸送方程式〕
【0032】
C
1,C
2,C
3,C
t:定数
U
i :気流の瞬時風速ベクトルの各成分
P :風圧
ρ :空気の密度
ν :動粘性係数
ν
t :渦粘性係数
k :乱流エネルギー
ε :乱流消散率
【0033】
濃度算出手段は、シミュレーション空間において、対象とする薬剤に関し、3次元の濃度拡散支配方程式を有限差分法により離散化して数値的に解くことにより、濃度分布を求める手段である。すなわち、濃度算出手段は、算出された微小分割領域における各格子点での気流状態(予測風速データ、予測風向データ、及び予測気温データ)、並びに拡散物質の発生量を所与としたときに、薬剤(拡散物質)の輸送方程式(9)から構成される濃度拡散支配方程式について、各微小分割領域の隣接する格子点間で、微小時間ごとに有限差分法による数値解析を用いて繰り返し計算を行い、前記各格子点間の薬剤濃度が平衡状態となった場合において、その値をもって前記各格子点の予測薬剤濃度データの定常解として決定することができるように構成されている。さらに、繰り返し計算を行う過程で、微小時間の積算値と、その時間における各微小分割領域の薬剤濃度をあらかじめ決定した一定時間毎に記録することによって、予測薬剤濃度データの非定常解を決定することも可能である。また、拡散物質の発生量を無次元量とすることにより、予測薬剤濃度データを絶対値でなく、拡散物質の発生量に対応した相対値として予測することも可能である。
〔拡散物質の輸送方程式〕
【0035】
U
j :気流の瞬時風速ベクトルの各成分
C :拡散物質の単位体積当たりの濃度
d :拡散物質の発生項
D
m :拡散係数
【0036】
解析形状について、単独で建設され周辺植栽・街区の影響を考慮しない状態の2階建戸建住宅(延床面積:125.86m
2)を設定し、その中の内法約22.68m
2(14畳)の1室(内法:W5.815m×D3.9m×H2.4m)、及び住宅の外部空間を解析対象とした。室内に掃出し窓・成人2名・什器(ソファー・テーブル・テレビ台)・テレビ・照明を設置した。開口部は南側に面する高さ1.85m、幅1.56mの掃出し窓1ヶ所とし、その上端中央に接するように95mm×160mm×11mmの直方体に模擬した「虫コナーズ(登録商標)プレートタイプ」の薬剤を設置した。解析空間は、水平方向に80m四方、鉛直方向に25mとし、解析格子は、解析形状及び空間を約71万の格子に分割した。
【0037】
解析条件について、風速0.1m/秒の南風が開口部に向かって流れるように解析領域南側に流入境界条件、解析領域北側に流出境界条件を設定した。室内外の発熱・温度の影響は無視した。掃出し窓の上部に設置した「虫コナーズ(登録商標)プレートタイプ」より、時間について一定量の薬剤を発生させ、拡散した薬剤濃度の空間分布の解析を実施した。便宜上、薬剤の発生量を0.1μg/秒とし、薬剤分布をμg/m
3の単位で表示した。
【0038】
上記の解析の結果、「虫コナーズ(登録商標)プレートタイプ」の使用を開始してから1分程度で開口部の上部から下部まで薬剤が拡散し、1.6μg/m
3の水準では2〜3時間、0.1μg/m
3の水準では30分で室内全体に薬剤がほぼ拡散する結果を得た。以上が
図2のシミュレーションにおける薬剤濃度の解析手法である。
【0039】
動画ファイル31、静止画ファイル32、及び文書ファイル33を格納するコンピュータ41、あるいはクラウドシステム42は、通常は数Mバイト以上の容量を備えており、本発明の薬剤拡散状況認識システム100で取り扱う動画ファイル31、静止画ファイル32、及び文書ファイル33(ファイルサイズ:数Kバイト〜数百Kバイト程度)であれば大量に格納することが可能なため、例えば、薬剤含有製品50の種類が多岐に亘り、薬剤拡散情報10が膨大になった場合でも、自身の情報端末21又は別の情報機器22の検索機能等を利用すれば、数多くの薬剤含有製品50の中から利用者が希望する製品に関する薬剤の拡散状況を、迅速且つ容易に抽出して認識することができる。
【0040】
薬剤拡散情報10は、
図1に示すように、薬剤含有製品50に付されていることが好ましい。ここで、「薬剤含有製品50に付されている」とは、薬剤含有製品50そのものに直接付されているケース(例えば、薬剤揮散具の筐体に印字されていたり、蚊取線香に刻印されている。)の他、薬剤含有製品50のパッケージに付されているケース(例えば、薬剤揮散具を収納する箱や、蚊取線香が詰め合わされている缶に印字されている。)も意味する。この場合、利用者は、目的の薬剤含有製品50を選択し、当該薬剤含有製品50に付されている薬剤拡散情報10を自身の情報端末21で撮影するだけで、その薬剤含有製品50から放出される薬剤の拡散状況をその場ですぐに確認し、認識することができる。
【0041】
薬剤含有製品50を例示すると、静置式薬剤揮散具、ファン式薬剤揮散具、エアゾール剤、ワンプッシュ式噴射剤、燻煙剤、蒸散剤、蚊取リキッド剤、及び蚊取線香等が挙げられる。また、上掲の薬剤含有製品50に含まれる薬剤を例示すると、昇華性殺虫成分(p−ジクロロベンゼン、ナフタレン等)、ピレスロイド系防虫成分(トランスフルトリン、メトフルトリン、プロフルトリン、エムペントリン、アレスリン、プラレトリン、フラメトリン、レスメトリン、フタルスリン、フェノトリン、及びシフェノトリン等)、香料成分(ガラクソリド、ムスクケトン、ヘキシルシンナミックアルデヒド、エチレンブラシレート、メチルアトラレート、ヘキシルサリシレート、トリシクロデセニルアセテート、オレンジャークリスタル、アンブロキサン、キャシュメラン、カロン、ヘリオトロピン、インドールアロマ、インドール、メチルセドリルケトン、メチルβ−ナフチルケトン、メチルジヒドロジャスモネート、ローズフェノン、7−アセチル−1,2,3,4,5,6,7,8−オクタヒドロ−1,1,6,7−テトラメチルナフタレン、アセト酢酸−m−キシリダイド、アセト酢酸−o−トルイダイド、アセトシリンゴン、アセチルトリエチルシトレート、ベンゾフェノン、ベンジルベンゾエート、ベンジルカプリレート、ベンジルシンナメート、ベンジルオイゲノール、ベンジルラウレート、ベンジルメチルチグレート、ベンジルフェニルエーテル、ベンジルフェニルアセテート、ベンジルサリチレート、ゲラニルアントラニレ−ト、ゲラニルヘキサノエート、ゲラニルシクロペンタノン、ゲラニルフェニルアセテート、ヘキシルフェニルアセテート、イコサン、インダン、シンナミルブチレート、シンナミルフェニルアセテート、ヘキセニルベンゾエート、シトラールジエチルアセタール、イソアミルベンゾエート、リナリルオクタノエート、1−メンチルサリチレート、シトロネリルアントラニレート、ジメチルフェネチルカルビニルイソブチレート、ジフェニルオキシド、ドデシルブチレート、エチルバニレート、エチルバニリン、メンチルイソバレレート、メトキシエチルフェニルグリシデート、メチル2,4−ジヒドロキシ−3,6−ジメチルベンゾエート、ネロリジルアセテート、ネリルイソバレレート、オクテニルシクロペンタノン、オクチルカプリレート、フェネチルイソアミルエーテル、フェネチルオクタノエート、フェネチルフェニルアセテート、エチルバニリンアセテート、エチルバニリンプロピレングリコールアセタール、エチルヘキシルパルミテート、オイゲニルベンゾエート、ファルネソール、ファルネシルアセテート、ファルネシルメチルエーテル、ホルムアルデヒドシクロドデシルメチルアセタール、ホルミルエチルテトラメチルテトラリン、フルフリルベンゾエート、γ−ドデカラクトン、フェネチルサリチレート、フェノキシエチルプロピオネート、フェニルベンゾエート、フェニルジスルフィド、サンタリルブチレート、テトラヒドロ−プソイド−イオノン、テオブロミン、バレンセン、α−イオノン、β−イオノン、ダマセノン、フェニルアセティックアシッド、ダマスコンα、ダマスコンβ、及びダマスコンδ等)が挙げられる。上掲の薬剤含有製品50は、害虫防除忌避製品として利用者にとって身近な商品であるため、当該薬剤含有製品50を購入しようとする者(利用者)に薬剤の拡散状況を認識させることは非常に有用である。
【0042】
このように、薬剤含有製品50を購入しようとする者(利用者)は、本発明の薬剤拡散状況認識システム100を利用することで、場所を選ばずに何時でも薬剤含有製品50に関する薬剤の拡散状況を確認することができる。その結果、利用者は、薬剤含有製品50を購入する前又は使用する前に、その薬剤含有製品50における薬剤の拡散状況を確実且つ容易に認識することが可能となり、このことは利用者にとって目的に合った薬剤含有製品50を選択する上で非常に有益な情報となる。
【0043】
また、本発明の薬剤拡散状況認識システム100は、薬剤含有製品50のメーカー又は販売店が管理するコンピュータ41、あるいはクラウドシステム42に格納されている薬剤の拡散状況に関連する動画ファイル31、静止画ファイル32、及び文書ファイル33を参照するものであるから、特に、デモンストレーションでは薬剤の拡散状況が体感的には理解され難いピレスロイド系防虫成分を含む殺虫剤や、香料成分を含む忌避剤について、利用者に薬剤の拡散状況を容易に理解させることに有用となる。
【0044】
〔別実施形態〕
上記実施形態では、薬剤拡散状況認識システム100のしくみについて説明したが、本発明の薬剤拡散状況認識システム100を使用すれば、利用者にとって有益なさらなるサービスを展開することも可能である。以下、そのようなサービスの例を別実施形態として説明する。
【0045】
<1>薬剤拡散状況認識システム100の利用者に対し、薬剤含有製品50のメーカー又は販売店から当該利用者の情報端末21や情報機器22に、当該薬剤含有製品50の購入に利用可能なポイントを送信することも可能である。この場合、利用者に薬剤含有製品50の購入を促すことができる。
【0046】
<2>薬剤拡散状況認識システム100の利用者が、自身の情報端末21や情報機器22で動画ファイル31や静止画ファイル32を再生し、薬剤含有製品50から放出される薬剤の拡散状況を閲覧した後、当該利用者に薬剤含有製品50の使用環境に関する質問を送信し、利用者が閲覧した薬剤含有製品50が使用目的に合ったものかどうかをアドバイスする機能を設けることも可能である。この場合、利用者は、アドバイスを参考にして薬剤含有製品50を購入するか否かを判断することができる。
【0047】
<3>薬剤拡散状況認識システム100の利用者が、複数の異なる薬剤含有製品50について薬剤の拡散状況を確認した場合、当該利用者に複数の異なる薬剤含有製品50を比較する情報を提供することも可能である。この場合、利用者は、数多くの薬剤含有製品50の中から使用目的に合った最適な製品を選択することができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の薬剤拡散状況認識システムは、薬剤揮散具、エアゾール剤、ワンプッシュ式噴射剤、燻煙剤、蒸散剤、蚊取リキッド剤、蚊取線香等の薬剤含有製品に含まれる薬剤の拡散状況を利用者に認識させる目的において利用されるものであるが、芳香剤、お香、香水、精油、アロマオイル、アロマディフューザー等の香料含有製品に含まれる香料の拡散状況を利用者に認識させる目的において利用することも可能である。
【符号の説明】
【0049】
10 薬剤拡散情報
21 情報端末
22 情報機器
31 動画ファイル
32 静止画ファイル
33 文書ファイル
41 コンピュータ
42 クラウドシステム
50 薬剤含有製品
100 薬剤拡散状況認識システム