(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6795304
(24)【登録日】2020年11月16日
(45)【発行日】2020年12月2日
(54)【発明の名称】梱包箱
(51)【国際特許分類】
B65D 5/64 20060101AFI20201119BHJP
B65D 85/672 20060101ALI20201119BHJP
B65D 5/72 20060101ALI20201119BHJP
【FI】
B65D5/64 Z
B65D85/672
B65D5/72 A
【請求項の数】18
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2016-2966(P2016-2966)
(22)【出願日】2016年1月8日
(62)【分割の表示】特願2015-527701(P2015-527701)の分割
【原出願日】2015年1月26日
(65)【公開番号】特開2016-84182(P2016-84182A)
(43)【公開日】2016年5月19日
【審査請求日】2018年1月16日
(31)【優先権主張番号】特願2014-26283(P2014-26283)
(32)【優先日】2014年2月14日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000250384
【氏名又は名称】リケンテクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000855
【氏名又は名称】特許業務法人浅村特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】清水 基弘
【審査官】
長谷川 一郎
(56)【参考文献】
【文献】
米国特許第06708874(US,B1)
【文献】
米国特許第04127228(US,A)
【文献】
米国特許出願公開第2007/0228127(US,A1)
【文献】
実開平04−128214(JP,U)
【文献】
米国特許出願公開第2008/0265008(US,A1)
【文献】
特開2012−025461(JP,A)
【文献】
特開2004−067209(JP,A)
【文献】
国際公開第2013/169781(WO,A2)
【文献】
米国特許出願公開第2012/0267385(US,A1)
【文献】
特開平11−115930(JP,A)
【文献】
特開2005−329971(JP,A)
【文献】
特開2002−240868(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 5/64
B65D 5/72
B65D 85/672
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に物品を収容する、ダンボールで構成された上蓋部と下箱部とから成る長尺状の梱包箱であって、
前記上蓋部は前記下箱部の内部全体を覆う天板部と前記天板部の各辺から鉛直方向下向きに伸びて前記下箱部の側面を略覆う側板部とから成り、前記上蓋部を持ち上げて前記下箱部から取り外すように構成され、
前記天板部には、少なくとも一対のミシン目部分を設け、前記ミシン目部分が折り曲げ可能に構成され、
前記少なくとも一対のミシン目部分の各々は、前記天板部の重心についての点対称の位置であって且つ前記天板部の長手方向中心部から短手側の両側の側板部のそれぞれから離間した位置に個別に設けられ、前記上蓋部を持ち上げて前記下箱部から取り外す際に前記ミシン目部分を割いて、夫々違う手の指をかける孔を夫々形成させるように構成されたこと、を特徴とする梱包箱。
【請求項2】
前記ミシン目部分は、前記下箱部の内部に向けて折り曲げ可能に構成されていること、を特徴とする請求項1に記載の梱包箱。
【請求項3】
前記ミシン目部分が前記下箱部の内部に向けて折り曲げられた際に、折り曲げられた部分は、前記天板部の中心線から外側に向かって傾斜する辺を有していること、を特徴とする請求項2に記載の梱包箱。
【請求項4】
前記ミシン目部分が前記下箱部の内部に向けて折り曲げられた際に、折り曲げられた部分は、前記天板部の中心線から外側に向かって湾曲する部分を有していること、を特徴とする請求項2に記載の梱包箱。
【請求項5】
前記ミシン目部分は、前記上蓋部の長手方向に垂直な切り込み部を有し、折り曲げられたときに前記切り込み部から離れて前記下箱部の内部に突出するように構成された一対の折り曲げ片を有していること、を特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項6】
前記上蓋部の長手方向の側板の下辺に少なくとも一つの切り欠き部が設けられていること、を特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項7】
前記上蓋部の前記切り欠き部は、前記長手方向の双方の前記側板部の下辺であって双方の端部から等しい位置に一対設けられていること、を特徴とする請求項6に記載の梱包箱。
【請求項8】
前記切り欠き部のそれぞれは、前記下辺と平行な平坦部分を有すること、を特徴とする請求項6または請求項7に記載の梱包箱。
【請求項9】
前記切り欠き部のそれぞれは、前記上蓋部の長手方向の側板の短辺に向かって所定角度で鉛直方向上向きに傾斜する直線部と前記直線部に連なる円弧部とを有すること、を特徴とする請求項6または請求項7に記載の梱包箱。
【請求項10】
前記所定の角度は25度から40度の範囲であること、を特徴とする請求項9に記載の梱包箱。
【請求項11】
前記切り欠き部のそれぞれは、切り欠き部の長さを直径とする半円状であること、を特徴とする請求項6から請求項10のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項12】
前記切り欠き部の上部に、平坦部が設けられていること、を特徴とする請求項6から請求項11のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項13】
前記下箱部の長手方向の側板部の上辺には、前記長手方向に沿った長さを示す目盛りが設けられていること、を特徴とする請求項1から請求項12のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項14】
前記目盛りは、双方の前記長手方向の側板部に設けられていること、を特徴とする請求項13に記載の梱包箱。
【請求項15】
前記目盛りの長さの表示は、所定間隔の長さごとに、他の長さの表示と異なった態様で示されていること、を特徴とする請求項13または請求項14に記載の梱包箱。
【請求項16】
前記目盛りは、前記側板部の表面及び裏面の双方に設けられていること、を特徴とする請求項13から請求項15のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項17】
前記目盛りの長さの表示が設けられている部分に、更にスリットを設けたこと、を特徴とする請求項13から請求項16のいずれかに記載の梱包箱。
【請求項18】
少なくとも前記下箱部の長手方向上辺は、ダンボールを折り返すことで形成されていること、を特徴とする請求項1から請求項17のいずれかに記載の梱包箱。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダンボールで構成された上蓋と下箱を有する梱包箱にかかり、長手方向の軸に巻回された幅0.5〜2m程度のフィルム、即ち原反などを内容物とする梱包箱に関するものである。なお、このフィルムは主には手作業でガラス窓等に貼るフィルムであり、いわゆる飛散防止フィルム、遮熱フィルム、紫外線カットフィルムなどが含まれる。これらのフィルムは建築現場などで、開梱された後、手作業で所望の幅と長さに切断され、ガラス窓等に貼られるものである。
【背景技術】
【0002】
このようなダンボールを用いた梱包箱は強度が弱く、特に長手方向の長さが大きいことから中央部付近で屈曲し易いという問題がある。また、このような原反を収納した梱包箱を輸送する際に輸送用のパレット上に置いて、そのパレットからはみ出したときなどにも屈曲し易い。即ち長手方向の長さが大きい梱包箱では、その端部に重量が集中していることがあり、パレットの角が、梱包箱の端部以外の箇所にあたると、その部分が圧迫されて屈曲し易い。また、梱包箱を二段以上に重ねて、位置がずれた場合などにも同様に屈曲し易い。
【0003】
また、このような梱包箱は長手方向の長さが大きいことから、開梱後の、上蓋の取り外しを一人の作業者が行うことは作業性が悪く手間がかかるという問題がある。
【0004】
更に、原反から所望の幅や長さのフィルムを取り出す際には、いちいちメジャー等で長さを測定し、それによりフィルムをカットするためのカッターの位置を定めなければならず、やはり作業性が悪く手間もかかるという問題点がある。また、梱包箱を製造したときのダンボールの切断面がむき出しになっているため、紙粉が飛散しやすく、これらは静電気によってフィルムに付着することから作業効率が更に悪化するという問題点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−230670号公報
【特許文献2】特開2013−193782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上記問題点に鑑み、内部に物品を収容する、ダンボールで構成された上蓋部と下箱部とから成る梱包箱であって、前記上蓋部は前記下箱部の内部全体を覆う天板部と前記天板部の各辺から鉛直方向下向きに伸びて前記下箱部の側面を略覆う側板部とから成り、前記天板部には、前記天板部の重心についての点対称の位置に、少なくとも一対のミシン目部分を設け、前記ミシン目部分が折り曲げ可能に構成されている梱包箱を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の梱包箱は、内部に物品を収容する、ダンボールで構成された上蓋部と下箱部とから成る梱包箱であって、前記上蓋部は前記下箱部の内部全体を覆う天板部と前記天板部の各辺から鉛直方向下向きに伸びて前記下箱部の側面を略覆う側板部とから成り、前記天板部には、前記天板部の重心についての点対称の位置に、少なくとも一対のミシン目部分を設け、前記ミシン目部分が折り曲げ可能に構成されている。
【0008】
このような本発明の梱包箱によれば、ミシン目部分を折り曲げた状態で、作業者がその孔に指を入れて上蓋を持ち上げることができるので開梱時の作業効率を改善することができる。また、この部分の孔は、単に作業者が指をかけるために用いるのに留まらず、空気孔としても作用するので、開梱作業をより容易に行うことができる。また、本発明の梱包箱は、前記ミシン目部分は、前記下箱部の内部に向けて折り曲げ可能に構成されている。これにより作業者は折り曲げられた突出部分に煩わされることなく、形成された孔を用いて上蓋部を持ち上げ、開梱作業を行うことができる。
【0009】
本発明の梱包箱は、ミシン目部分は折り曲げられた状態で、上蓋部の天板表面から外側に向かって湾曲する部分を有しているように構成される。
【0010】
このような梱包箱によれば、折り曲げられた部分は下箱内部で、中心から外側に離間するようになるので、折り曲げられた部分が内容物の原反に接触するのを回避することができ、内容物を安全に取り扱うことができる。
【0011】
本発明の梱包箱は、上蓋部の、長手方向の双方の側板部の下辺であって双方の端部から等しい位置に一対の切り欠き部を更に有する構成となっている。
【0012】
このような梱包箱によれば、二人の作業者が梱包箱の両端部に立ち、上蓋部に手をかけて開梱しようとする際に、この切り欠き部に手をかけることができ、開梱の作業効率を向上させることができる。また、切り欠き部の形状はさまざまな形状に定めることが可能であり、例えば長手方向の中心側から所定の角度で上向きに傾斜している部分とその傾斜部分に連なる円弧部分とで構成することができる。なお、少なくとも一箇所の切り欠き部を設けることで、開梱作業の効率改善を図ることができる。このようにすることで、一人の作業になることも多い現場での作業を考慮した構成とすることができる。また、このような少なくとも一箇所の切り欠き部を設ける構成にすることで、上蓋部の製造コストを低減させることも可能である。
【0013】
本発明の梱包箱は、下箱部の長手方向の側板部の上辺には、長手方向に沿った長さを示す目盛りが設けられているように構成される。
【0014】
このような梱包箱によれば、内部に収納した原反からフィルムを引き出しながらカットする際に、所望の幅を把握でき、カッターの位置を容易に定めることができる。
【0015】
本発明の梱包箱は、少なくとも下箱部の長手方向上辺は、ダンボールを折り返すことで形成するように構成されている。
【0016】
このような本発明の梱包箱によれば、下箱の長手方向の強度を改善でき、またダンボールの切断面が露出しないので紙粉の飛散を抑制することができる。更に原反からのフィルムの取り出しにあたっては、この上辺の上でのフィルムの動きが滑らかとなり、フィルムの取り出し作業の効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、ダンボールにより構成された、長手方向の長さが大きい梱包箱の強度を向上させることができる。また作業者の開梱時の作業効率を改善させることができる。更には内容物の原反からフィルムを取り出す際の効率も改善でき、材料であるダンボールからの紙粉の飛散を抑制できる。また取り出すフィルムの所望の長さを簡便に特定でき、取り出し作業の効率も改善できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1A】本願発明にかかる梱包箱の使用状態を示す斜視図である。
【
図1B】本願発明にかかる梱包箱の上蓋部の斜視図である。
【
図1C】本願発明にかかる梱包箱の下箱部の斜視図である。
【
図1D】本願発明にかかる梱包箱の上蓋部の変形例の斜視図である。
【
図3A】本願発明にかかる梱包箱に内容物の原反を収容した状態を示す断面図である。
【
図3B】収容した原反からフィルムを引き出す状態を示す斜視図である。
【
図4】上蓋部に設けられるミシン目部の形態の例を示す平面図である。
【
図5】上蓋部の側板部の長手方向下辺に設けられる切り欠き部の形態の例を示す斜視図である。
【
図6A】下箱部の側面に設けられる目盛りの形態の例を示す斜視図である。
【
図6B】目盛りを設けた際に更にスリットを設ける変形例を示す斜視図である。
【
図7】本発明にかかる梱包箱の、別の実施態様を示す斜視図である。
【
図8】本発明にかかる梱包箱の下箱部の、更に別の実施態様を示す展開図である。
【
図9】本発明にかかる梱包箱の上蓋部の、更に別の実施態様を示す展開図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1Aは、本発明の一実施例による、ダンボールを材料として構成される梱包箱1の使用状態の全体を例示的に示す斜視図である。
【0020】
図1Bは梱包箱1を構成する上蓋部10の、また
図1Cは同じく梱包箱1を構成する下箱部100のそれぞれ一例を示す斜視図である。上蓋部10は長手方向Xに伸びた長辺と、それに直行する短辺方向Yに伸びた短辺を有する矩形の天板部11を有し、それぞれの辺から鉛直下向きに側板部12a、12b、12c及び12dが設けられ、下箱100のそれぞれ対応する側面を略覆うように構成される。
【0021】
天板部11には、上蓋部10の重心Gについて点対称となる位置に一対のミシン目部20a、20bが設けられる。作業者は一人で梱包箱1の開梱作業を行う際、このミシン目部20a、20bを押すことで箱内部に折り曲げ、それによって形成された孔に指をかけて上蓋部10を持ち上げる。この際、孔は単に指をかけるに留まらず、空気孔としても作用するため、開梱作業の効率がいっそう改善される。ミシン目部は箱の外部に折り曲げるようにしても良い。
【0022】
ミシン目部20a、20bは、開梱作業の作業内容を考慮すると、
図1Bのように、重心Gについて点対称となるように配置することが考えられる。また、このような開梱作業の際には、一般的には作業者の利き腕、即ち多くは右腕、に対応するミシン目部が奥に配置されるのが有効であることが知られている。このことから、
図1Bに示すように、更に別の一対のミシン目部21a、21bを設けても良い。これにより、作業者の作業位置は梱包箱に対して任意とすることが可能となる。なお、ミシン目部は、折り曲げることで形成される孔に指が1本ないしは2本挿入できる程度の大きさであれば形状は任意に定めることができるが、角部を有するとその部分からダンボールが破れ易い等の問題があるので、周囲を円弧状に形成して角部を有さないようにするのが望ましい。ミシン目部の位置は、
図1Bのような態様に限られるものではなく、重心Gとは無関係の任意の位置に設けて良く、またミシン目の数も、作業の内容や作業者の便宜を考慮して任意に設定することが可能である。ミシン目部は折り曲げる構成とすることに限定されず、切除するようにしても良い。またこの部分はミシン目の構成とはせずに、単に作業者の指が挿入できるような孔を設けるようにしても良い。ミシン目部の詳細については後述する。
【0023】
上蓋部10には、長辺に沿う側板部12b及び12dのそれぞれの、双方の端部から所定の位置に切り欠き部30a、30bが設けられている。これにより、梱包箱の開梱作業の際、両端部に作業者が一人ずつ立ち、上蓋部に手をかけて持ち上げる作業の作業効率が改善される。切り込み部の位置や形状は任意に定められるが、両端部からの位置は等しいのが望ましい。また切り込み部の大きさは、掌の大きさ程度が望ましい。形状は、側板部の下辺を底辺とした三角形を基本とし、この三角形を適宜変形させることとする。一例として、
図1Bに示すような、中心から端部へ所定の角度で傾斜している部分と、その傾斜している部分に連なる円弧により形成することができる。なお、切り欠き部30aは、
図1Dに示すように、側板部の一方の、しかも一端面の近傍に設けることでも良い。現場での作業は一人のみでの作業となることも多く、そのような作業を考慮すると一箇所のみの切り欠き部で充分に作業効率の改善を図ることが可能であり、上蓋部そのものの製造コストを低減させることもできる。なお、切り欠き部もミシン目部と同様に角部を有さないようにして形成するのが望ましい。切り欠き部についても、詳細は後述する。
【0024】
図2Aは上蓋部10の、また
図2Bは下箱部100のそれぞれの展開図を示す。いずれも一枚のダンボールを折り曲げて形成することが可能である。そして
図2Aのd部分に示されるように上蓋部10の短辺は折り返しにより構成される。また、
図2Bのやはりd部分に示されるように下箱部100の長辺も折り返しにより構成される。これらの構成から、上蓋部及び下箱部共に、構造上の強度を改善することができる。特に下箱部100については長手方向の強度が改善され、重量物を収納した場合に中央部分で下箱部が屈曲するなどの不具合を回避したり、外部からの衝撃による凹みや、梱包箱を持ち上げたときの中心部分の凹みなどを抑えたりすることができる。更に、後述する下箱部側面へのカッターの取り付けを安定して行うことができる。また、このような折り返しの構成を採用することで、ダンボールの切断面が露出しなくなるので、ダンボールの紙粉の飛散を抑制することができる。紙粉は、静電気によってフィルムに付着し易いことから、その飛散を抑制できることで作業効率を大きく改善することができる。また、下箱部の長辺はダンボールの表面となるので、内容物のフィルムを取り出す際の作業を滑らかに行うことができる。なお、このような目盛りは、
図1Dのような、切り欠き部が一つしか設けられないような構成の梱包箱の場合でも設けることができる。
【0025】
図3Aは、梱包箱1に内容物である原反40,41を収納したときの使用状態を示す断面図であり、
図3Bは、内容物を取り出すときの状態を示す斜視図である。原反40,41は、所定の半径の軸40に、フィルム41が巻回されたものであり、下箱部100内部の両端に設けられた一対のプラツバ50a、50bで支持される。なお、ミシン目部20a及び20bは、
図3Aに示すように、折り曲げて下箱部100内部に突出させたときにフィルム41に接触しないような形状とすることが望ましい。フィルム41は手作業でガラス窓等に貼るフィルムであり、いわゆる飛散防止フィルム、遮熱フィルム、紫外線カットフィルムなどが含まれる。そして
図3Bに示すように、建設現場などで、例えばLで示す方向に取り出され、所望の幅や長さに裁断され、ガラス等に貼付される。なお、下箱部100の側面にカッター60を刺すことによって取り付けて固定し、フィルム41の取り出し動作に従って裁断し、それにより所望の幅のフィルムを得るように構成することも可能である。
【0026】
図4は、ミシン目部分20aの態様の一例を示す平面図である。ミシン目部分は、折り曲げて内部に突出したときに、収納されているフィルム表面に接触しない形状として、梱包箱の中心線から外側に離間するように構成されるのが望ましい。具体的には(1)(3)(6)のように、天板部の中心線から外側に向かって傾斜する辺を有し、この傾斜により接触を回避することが可能となる。また、(2)(4)(5)のように、中心線から外側に湾曲する部分を有するように構成し、これにより接触を回避することも可能である。これらの形状にはできるだけ角部の部分がないようにするのが望ましい。内容物である原反の大きさによっては、ミシン目部を突出させてもフィルム表面と接触しない位置関係になることも考えられる。その場合には(7)または(8)のような形状として、梱包箱の外側への離間を意識する必要はない。(7)のように角部を有さない形状にしたり、(8)のように単純な形状とすることで、上蓋部を製造するためのダンボール加工のコストを低減させることができる。なお、(2)(5)(7)のような形状では、角部を有さず、全体が丸みを帯びた形状であるため、作業の開始にあたって指で押した際、箱の内部に向けてきれいに押し抜くことができ、また外部に向けて折り曲げる際も、折り曲げ部が破けることなく作業がし易い。
【0027】
図4の(9)から(11)は、ミシン目の中央部分に切り込み部lを有し、作業者の指により押されたときに、この切り込み部から離れて下箱部内部に突出する一対の折り曲げ片20a1及び20a2を有するものである。このような構成にすることにより、より少ない力により、ミシン目部分の孔を形成することができ、更に作業効率を改善することができる。またこのような構成にすることで、一対の折り曲げ部のうちの所望の一方のみ、あるいは双方の側へ折り曲げることが可能であり、作業内容に柔軟に対応することができる。
【0028】
図5は、上蓋部10の側板部下辺に設けられる切り欠き部30aの例を示す斜視図である。切り欠き部の形状、位置、個数などは任意に定めることができる。しかしながら、この切り欠き部は、梱包箱の両端に開梱作業のための二人の作業者が立ち、共同して上蓋部を持ち上げるためのものである。従って、上蓋部の両端双方から等しい位置であって、両側板部のそれぞれに設けられるのが望ましい。また切り込み部の大きさは、掌の大きさ程度であると、手をかけやすいため望ましい。このような構成により、直線部に沿って指を動かし、円弧部の内部で指の位置を定め、開梱作業を行う。
【0029】
図5中、(1)は、この切り欠き部30aが、梱包箱の中心から端部に向かって傾斜する直線部分と、この直線部分に連なる円弧部分とを有するものである。傾斜部の角度は、上蓋部の長辺の長さや作業者の体格等によって最適に設定することができる。一例として、下辺に対して25度から40度の角度で傾斜するのが好適であり、更には30度から36度の範囲とするのがより好適である。傾斜部を設けることで梱包箱の中心から端部へ向けての指の動きがスムーズにでき、円弧部に指を入れやすくなる。
【0030】
なお、(3)のように円弧部の下辺側を更に中心に向けて突出するように構成することも可能である。このように構成することで、作業者は突出している部分の上面に指をかけて固定し、更に安定して上蓋部端部を把持することが可能となる。
【0031】
図5中、(2)は切り欠き部の長さを直径として、側板部下辺に半円を形成したものである。このような構成とすることで、切り欠き部30aの内部に入った作業者の指は安定し、作業者は上蓋部端部を安定して把持することができる。
【0032】
図5中、(4)から(6)は切り欠きの上面を平坦部として構成したものである。このような構成にすることで、切り欠き部の内部で作業者の指の位置を定める自由度が改善できる。特に作業者の掌の大きさの違いにも充分に対応できる。国内・外国を問わずに、内容物の原反の需要が多いことから、作業者の人種も多岐に亘り、体格も一律ではないことからこのような構成が有用である。
【0033】
図6Aは、下箱部100の長手方向上辺に、長さを示す目盛り70a、70bを設けた場合の一例を示す斜視図である。このような構成とすることで、梱包箱内部からフィルム41を取り出して下箱部100の長手方向、即ち、フィルム41の短手方向、の所望の位置で裁断する際、その位置を的確かつ迅速に定めることができる。なお、このような目盛りは、
図1dのような、切り欠き部が一つしか設けられないような構成の梱包箱の場合でも設けることができる。
【0034】
図6A中、(1)は、下箱部の側板部の長手方向上辺に所定の間隔で目盛りを付した例を示す。目盛りの基点は、前もってプラツバ50aの厚さを考慮するようにしても良い。この場合において目盛りを一方の側板部12bだけでなく、梱包箱の開梱時の作業手順に基づいて、作業が効率的になるように他方の側板部12dにも付すことも考えられる。
【0035】
図6A中、(2)は、目盛り70bを側板部の裏面にも付した例を示す。作業手順によっては梱包箱の内側で長手方向の長さを把握する必要も有り得るので、そのような場合に有効である。更には
図3bのように、カッター60を取り付ける際に、両面に目盛りがあると、カッター60側板部表面に、正確に垂直となるように取り付け易い。このようなカッターの取り付けの際は、目盛りの単位と表示位置は、表面と裏面とで揃えてあるのが望ましい。しかしながら、目盛りの単位は表面と裏面とで必ずしも同じである必要は無く、作業での必要性に応じて任意に設定可能である。例えば表面はセンチメートル表示で裏面はインチ表示等、異なるものであっても差し支えない。
【0036】
図6A中、(3)は、付された目盛りの所定間隔の部分80を他と異なる態様で表示するようにした例を示す。長さは5センチメートル刻み、10センチメートル刻み等、作業手順の必要に応じて任意に決めることができる。このような構成にすることにより、長手方向でのフィルムの長さを容易に把握することができ、フィルムを取り出しながら所望の幅で切断する際に用いるスリット刃85の装着を誤りなく、迅速に行うことができ、作業効率を改善することができる。スリット刃85は、例えば、下箱部の上辺に装着するためのクリップ部85aと刃部85bとで構成することが考えられる。フィルムの材質によっては、刃部85bは単なるピンのようなものでも良い。
【0037】
スリット刃85は下箱部100の上辺に装着可能なクリップ状の本体に、上向きに刃を設けたものが好適である。このような構成のスリット刃を用いて、フィルムを取り出しながら裁断することが可能となる。
【0038】
図6A中、(4)はこのような所定間隔ごとの特別の態様の表示を伴う目盛りを、下箱部100の内側にも設けたものである。
【0039】
図6Bは、目盛り80の所定位置に、スリット90を設けたものである。フィルムの材質によっては、下箱部100の上方でフィルムを裁断するよりも、取り出したフィルムを下方に伸ばして裁断する方が便宜なことも有り得る。そのような場合は、
図3bに示すようにカッター60を下箱部100の側板部に装着するのが、作業効率の点で有利である。そのカッター60を取り付けるためのスリット90を前もって設けておくことで作業効率を向上させることができる。
【0040】
なお、一つの実施態様として、
図1Aに示すような、長方形の天板を有する、ダンボールを用いた梱包箱について説明したが、本発明はそのような態様に限られるものではない。
例えば箱の内容物が原反ではなく、縦0.5〜2m程度、横0.5〜2m程度の大きさのシートが一枚ずつ分離しているいわゆる枚葉の形態を取る場合には、
図7に示すような正方形に近い形状の箱を用いる。この場合でも上蓋の下辺に適宜切り欠き部30a、30bを設けて作業効率の向上を図ることが可能である。また上蓋の天板にミシン目部分や孔部分を設けてもよい。また、梱包箱の使用後の解体作業を容易にするため、
図8や
図9に示すように、更に円弧状や半円形状の切り欠き部31aから31f、32a、32bを、上蓋部短辺の折り返しフラップの先端縁や、下箱部長辺の折り返しフラップの先端縁に設け、指を掛けることができるようにすることも可能である。これらの切り欠き部の形状や数は、箱全体の大きさ、強度、形状や指のかけ易さなどを勘案して任意に設定できるが、指1〜2本程度の大きさの略半円形や略U字形に構成することが考えられる。
【0041】
本発明の構成が具体的に説明されたが、これはただ本発明を例示的に説明したものに過ぎず、本発明の属する技術分野における通常の知識を有する者なら本発明の本質的な特徴から外れない範囲内でさまざまな変形が可能である。例えば以下のように構成することが可能である:
(1)内部に物品を収容する、ダンボールで構成された上蓋部と下箱部とから成る梱包箱であって、前記上蓋部は前記下箱部の内部全体を覆う天板部と前記天板部の各辺から鉛直方向下向きに伸びて前記下箱部の側面を略覆う側板部とから成り、前記天板部には、前記天板部の重心についての点対称の位置に、少なくとも一対のミシン目部分を設け、前記ミシン目部分が折り曲げ可能に構成されていること、を特徴とする梱包箱。
(2)前記ミシン目部分は、前記下箱部の内部に向けて折り曲げ可能に構成されていること、を特徴とする(1)に記載の梱包箱。
(3)前記ミシン目部分は、前記下箱部の内部に向けて折り曲げた際に、折り曲げられた部分が前記天板部の中心線から離間するように構成されていること、を特徴とする(1)または(2)に記載の梱包箱。
(4)前記ミシン目部分の前記折り曲げられた部分は、前記天板部の中心線から外側に向かって傾斜する辺を有していること、を特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の梱包箱。
(5)前記ミシン目部分の前記折り曲げられた部分は、前記天板部の中心線から外側に向かって湾曲する部分を有していること、を特徴とする(1)から(3)のいずれかに記載の梱包箱。
(6)前記ミシン目部分は、前記上蓋部の長手方向に垂直な切り込み部を有し、折り曲げたときに前記切り込み部から離れて前記下箱部内部に突出するように構成された一対の折り曲げ片を有していること、を特徴とする(1)から(5)のいずれかに記載の梱包箱。
(7)前記上蓋部の長手方向の側板の下辺に少なくとも一つの切り欠き部が設けられていること、を特徴とする(1)から(6)のいずれかに記載の梱包箱。
(8)前記上蓋部の前記切り欠き部は、前記長手方向の双方の前記側板部の下辺であって双方の端部から等しい位置に一対設けられていること、を特徴とする(1)から(7)に記載の梱包箱。
(9)前記切り欠き部のそれぞれは、前記下辺と平行な平坦部分を有すること、を特徴とする(1)から(8)のいずれかに記載の梱包箱。
(10)前記切り欠き部のそれぞれは、前記端部に向かって所定角度で鉛直方向上向きに傾斜する直線部と前記直線部に連なる円弧部とを有すること、を特徴とする(1)から(9)のいずれかに記載の梱包箱。
(11)前記所定の角度は25度から40度の範囲であること、を特徴とする(1)から(10)のいずれかに記載の梱包箱。
(12)前記切り欠き部のそれぞれは、切り欠き部の長さを直径とする半円状であること、を特徴とする(1)から(11)に記載の梱包箱。
(13)前記切り欠き部の上部に、平坦部が設けられていること、を特徴とする(1)から(12)のいずれかに記載の梱包箱。
(14)前記下箱部の長手方向の側板部の上辺には、前記長手方向に沿った長さを示す目盛りが設けられていること、を特徴とする(1)から(13)のいずれかに記載の梱包箱
(15)前記目盛りは、双方の前記長手方向の側板部に設けられていること、を特徴とする(1)から(14)のいずれかに記載の梱包箱
(16)前記目盛りの長さの表示は、所定間隔の長さごとに、他の長さの表示と異なった態様で示されていること、を特徴とする(1)から(14)のいずれかに記載の梱包箱
(17)前記目盛りは、前記側板部の表面及び裏面の双方に設けられていること、を特徴とする(1)から(16)のいずれかに記載の梱包箱。
(18)前記目盛りの長さの表示が設けられている部分に、更にスリットを設けたこと、を特徴とする(1)から(17)のいずれかに記載の梱包箱。
(19)少なくとも前記下箱部の長手方向上辺は、ダンボールを折り返すことで形成されていること、を特徴とする(1)から(18)のいずれかに記載の梱包箱。
【0042】
従って、本明細書に開示された実施例は、本発明を限定するものではなく、説明するためのものであり、このような実施例によって本発明の思想と範囲が限定されるものではない。本発明の範囲は特許請求の範囲により解釈すべきであり、それと同等の範囲内にある全ての技術は、本発明の権利範囲に含まれるものと解釈すべきである。
【符号の説明】
【0043】
1 梱包箱
10 上蓋部
11 天板部
12a―12d 側板部
20a・20b ミシン目部
30a・30b 切り欠き部
100 下箱部
40・41 原反
50a・50b プラツバ
60 カッター
70a・70b・80 目盛り
85 スリット刃
85a クリップ部
85b 刃部
90 スリット