(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
当該作業工具においては、スピンドルとモータの出力軸部を平行配置することに起因して、両者を近接配置することができるため、作業工具の小型化を図ることが可能である。一方、当該作業工具のハウジングは、スピンドルを含む先端工具駆動機構の収容領域と、モータの収容領域と、使用者が把持する把持領域とが連続して一体化されている。
【0005】
当該作業工具では、先端工具駆動機構およびモータという、比較的重い部材同士が近接することで、重量部品の局所的偏在が生じやすい。このことはハウジングの慣性モーメントの低下につながり、これに起因して、作業時における振動の増加が想定される。
【0006】
本発明は上述の課題に鑑みてなされたものであり、作業工具に係る一層合理的な制振技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述課題は本発明によって解決される。本発明に係る作業工具は、 先端工具を駆動して被加工材に所定の加工作業を行う作業工具として構成され、長尺状に形成されたハウジングと、ブラシレスモータと、当該ブラシレスモータの駆動制御を行うコントローラと、当該ブラシレスモータの出力回動軸と平行に延在する回動軸を有するとともに、当該ブラシレスモータを介して、当該回動軸周りに所定の角度範囲内で回動されることによって当該先端工具を駆動するスピンドルと、を有する。
【0008】
そして当該ハウジングは、当該ハウジングの長尺延在方向を前後方向と定義した場合に、当該前後方向に関して、当該ハウジングの前方領域を定義する前方ハウジング領域と、当該ハウジングの後方領域を定義する後方ハウジング領域と、当該前方ハウジング領域と当該後方ハウジング領域の間の中間部分を定義する中間ハウジング領域と、を有する。当該前方ハウジング領域には、少なくとも当該ブラシレスモータが配置されている。この配置態様に関して、典型的には、ブラシレスモータの他に、上記したスピンドルや、ブラシレスモータの回転運動をスピンドルに伝達して当該スピンドルを駆動する伝達駆動機構についても、この前方インナハウジング領域に配置されることが好ましい。またブラシレスモータの全体が前方アウタハウジング領域に収容される態様、ブラシレスモータの一部のみが前方アウタハウジング領域に収容される態様のいずれも好適に包含する。
【0009】
一方、後方ハウジング領域にはコントローラ(制御装置)が配置されている。本発明では、ブラシレスモータが採用されている関係で、当該コントローラとしては、典型的にはスイッチング素子、CPU,コンデンサなどを基板状に配置したブラシレスモータ駆動制御モジュール(プレアセンブリユニット)がこれに該当し、当該モータ駆動制御モジュールには、典型的には、電源回路、比較回路、電流制御回路、ロジック回路、パワー回路等といった各種の駆動制御回路が包含され得る。また当該コントローラについて、ブラシレスモータ駆動制御モジュール以外の、例えば作業工具搭載電装品の制御装置を適用する態様、あるいはブラシレスモータの駆動制御モジュールに、他の電装品の制御装置を組み合わせた態様が適宜に採用可能である。
【0010】
本形態に係る作業工具にあっては、比較的重量のあるコントローラを後方ハウジング領域に配置することで、少なくともブラシレスモータを配置した前方ハウジング領域と相俟って、ハウジングでの重量物の局所的な偏在(重量物の集中配置)を回避し、ハウジングにおける重量物の前後方向への配置分散を図ることにより、当該ハウジングの慣性モーメントを増大し、これによって、加工作業時におけるハウジングの振動低減を図ることができる。
【0011】
なお本発明では、スピンドルの回動軸とブラシレスモータの回動軸とを平行配置する構成が採用されており、この点に限れば、重量物の近接配置に起因するハウジングの慣性モーメント低下による振動増大の懸念が考えられるが、この点については、比較的重量の大きいコントローラを後方ハウジング領域に配置することでハウジングの慣性モーメント低下を防止し、上記懸念を回避できる構成が用いられている。
【0012】
本発明に係る作業工具では、スピンドルは、当該スピンドルの回動軸周りに所定の角度範囲で回動される構成となっている。かかる「所定の角度」は、常に固定されたものであってもよいし、所定の操作を通じて回動角度を可変とする構成を採用することも可能である。またスピンドルの所定の角度範囲での回動は、典型的には一定の回動周期を設定することが好ましいが、当該回動周期を所定操作を通じて可変とする構成も採用可能である。
【0013】
また、回動軸周りに所定の角度範囲で回動するスピンドルによって駆動される先端工具については、かかる動作態様で加工作業が可能な工具を広く包含することができる。例えば、切断作業、剥離作業、研削作業等が掲げられ、先端工具をこれらの加工作業に応じて任意に交換することも可能である。なお、単一の作業工具に対して、加工作業に応じて複数種類の先端工具の中から任意のものを選択して取付ることから、かかる作業工具は「マルチツール」と称呼することもできる。
【0014】
さらに先端工具のスピンドルへの取付に際しては、クランプシャフトを用いることができる。典型的には、このクランプシャフトとスピンドルの間に先端工具を介在配置させる形で、当該先端工具を挟持する態様である。この場合、スピンドルを回動軸に沿って中空状とし、当該中空箇所にクランプシャフトを挿通する。クランプシャフトはスピンドルに対して回動軸方向に相対移動可能とし、当該相対位置移動を介して、先端工具保持位置と、先端工具開放位置間で切り替えを可能とする。そして作業時には、先端工具保持位置で当該先端工具を保持して加工作業を遂行し、先端工具を交換する場合にはクランプシャフトを移動させて先端工具解放位置に置く。
【0015】
このクランプシャフトによる先端工具の保持・解放にあたっては、当該クランプシャフトのロック機構を採用することが好ましい。当該ロック機構は、使用者の手動操作に応じて、クランプシャフトが先端工具保持位置に置かれた状態で当該クランプシャフトをロック(固定)する係合位置と、クランプシャフトのロックを解除して先端工具開放を許容とする解除位置との間で移動可能に構成するのが好ましい。かかる構成により、使用者によるロック機構の手動操作を通じて、先端工具の保持・解放を容易に行うことができる構成が提供される。
【0016】
本発明の係る作業工具の一つの態様として、更にアウタハウジングを有する構成とし、
前記ハウジングは、当該アウタハウジングに収容されるインナハウジングを構成することができる。そして当該アウタハウジングとインナハウジングとを弾性状に連結し、当該インナハウジングに生じる振動が当該アウタハウジングに伝達されることを抑制する弾性部材を更に有する構成とすることができる。典型的には、アウタハウジングの一部につき、使用者の把持に供されるハンドル部として用いられる態様が考えられる。このように構成することで、加工作業時にハウジング、すなわちインナハウジング側で発生する振動が、使用者の把持に用いられるアウタハウジング側へと伝達されることが、当該弾性部材によって効果的に抑制されることとなる。
【0017】
また本発明の係る作業工具の一つの態様として、当該後方ハウジング領域に設けられた吸気口と、当該前方ハウジング領域に設けられた排気口と、当該中間ハウジング領域内に設けられたエア通路とを有するとともに、当該吸気口から当該エア通路を経由して当該排気口に至る流路上にコントローラおよびブラシレスモータを配置することができる。このように構成することで、後方ハウジング領域に配置されたコントローラと、前方ハウジング領域に配置されたブラシレスモータとを効率的かつ合理的に冷却することが可能となる。さらに後方ハウジング領域に吸気口を設けることにより、加工作業で発生した粉塵が当該吸気口から工具内に吸引されるリスクを低減することができる。
【0018】
上記態様におけるエアの吸気・排気については、典型的には、ブラシレスモータで駆動される冷却ファンを用いることが好適である。また当該冷却ファンについては、ブラシレスモータの出力回動軸に取付けることが好適である。
【0019】
上記態様においては中間ハウジング領域とアウタハウジングの間にエア通路を形成し、このエア通路を経由して排気口に至る冷却流路を設定するとともに、当該冷却流路上にコントローラおよびブラシレスモータが配置することも可能である。
【0020】
さらに上記態様におけるコントローラにつき、後方インナハウジング領域の内部において、吸気口から吸入されたエアの流入直下領域に配置することも可能である。コントローラは、スイッチング素子やインバータ等を含むブラシレスモータ駆動制御モジュールとして構成されるのが典型的であるが、この場合、相当量の発熱が想定されるため、吸気口から吸入されたエアによって流入直下領域で効率よく冷却させることができることになる。
【0021】
また上記した各種の態様において、コントローラとブラシレスモータとを電気的に接続する接続部につき、当該接続部の少なくとも一部をエア通路に設けることができる。接続部としては、典型的には給電ケーブルや信号伝達ケーブルが採用可能である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明に係る作業工具の実施形態を
図1〜
図17に基づき説明する。
図1〜
図13は第1実施形態に係る作業工具を示す図であり、
図14〜
図17は第2実施形態に係る作業工具を示す図である。
なお、第2実施形態に係る作業工具において、第1実施形態に係る作業工具の部品や機構と実質的に同一もしくは近い機能を奏する部品や機構については、同一の名称を用いるとともに同一の符号を付してその説明を省略する場合がある。
【0024】
(第1実施形態)
本発明の第1実施形態を
図1〜
図13に基づき説明する。本発明に係る作業工具の第1実施形態は、電動式の振動工具100である。
図1に示す通り振動工具100は、例えば、ブレードや研磨パッド等の複数種類の先端工具を選択的に装着し、当該先端工具を振動させることによって被加工材に対して工具の種類に応じた加工を行う。なお先端工具の一例として、
図1においてはブレード145が装着されている。このブレード145が本発明に係る「先端工具」の一例である。
【0025】
(本体ハウジング)
図1に示す通り振動工具100は本体ハウジング101を備える。本体ハウジング101は、アウタハウジング102と、当該アウタハウジング102に収容されるインナハウジング104とを主体として構成される。このアウタハウジング102が本発明に係る「アウタハウジング」の一例であり、インナハウジング104が本発明に係る「ハウジング」ないし「インナハウジング」の一例である。
【0026】
図1に示す通り、本体ハウジング101はブラシレスモータ115の回動軸方向と交差する方向に長尺状に延在して設けられている。本実施の形態では、当該本体ハウジング101の長尺延在方向を前後方向、当該前後方向のうち、ブレード145が装着される側(
図1の左側)を振動工具100の前側、当該前側の反対側(
図1の右側)を振動工具100の後側とそれぞれ定義する。また、後述するスピンドル124の回動軸延在方向を上下方向、上下方向において後述するロック操作機構150が設けられる側(
図1の上側)を振動工具100の上側、ブレード145が設けられる側(
図1の下側)を振動工具100の下側とそれぞれ定義する。さらに、当該前後方向および上下方向の双方に対して交差する方向(
図1における紙面法線方向)を振動工具100の横方向と定義する。なお当該横方向は、
図1のI−I線断面図である
図2における上下方向に対応しており、また
図1のIII−III線断面図である
図6における左右方向に対応している。またかかる方向についての定義は、他の図面や構成における説明についても適宜使用される。
【0027】
図1に示す通り本体ハウジング101は、前方本体ハウジング領域101aと、前方本体ハウジング領域101aとは反対側に配置される後方本体ハウジング領域101cと、前方本体ハウジング領域101aと後方本体ハウジング領域101cの間に配置される中間本体ハウジング領域101bとを有する。この前方本体ハウジング領域101aが本発明に係る「前方ハウジング領域」の一例であり、後方本体ハウジング領域101cが本発明に係る「後方ハウジング領域」の一例であり、中間本体ハウジング領域101bが本発明に係る「中間ハウジング領域」の一例である。
【0028】
図1に示す通りアウタハウジング102は、前方アウタハウジング領域102aと、前方アウタハウジング領域102aとは反対側に配置される後方アウタハウジング領域102cと、前方アウタハウジング領域102aと後方アウタハウジング領域102cの間に配置される中間アウタハウジング領域102bとを有する。中間アウタハウジング領域102bは使用者に把持されるグリップ領域を構成する。
【0029】
図1に示す通りインナハウジング104は、前方アウタハウジング領域102a内に配置される前方インナハウジング領域104aと、中間アウタハウジング領域102b内に配置される中間インナハウジング領域104bと、後方アウタハウジング領域102c内に配置される後方インナハウジング領域104cとを有する。
【0030】
図2は、
図1のI−I線断面図である。
図2に示す通り中間アウタハウジング領域102bは、横方向において前方アウタハウジング領域102aおよび後方アウタハウジング領域102cよりも短く(細く)構成された短尺部107を有する。
後述する通り振動工具100は、前方インナハウジング領域104aにブラシレスモータ115を収容し、後方インナハウジング領域104cにコントローラ180を収容する。すなわち、横方向において比較的長い寸法を有する部品が前方インナハウジング領域104aと後方インナハウジング領域104cに配置されるため、中間アウタハウジング領域102bに短尺部107を構成することができる。短尺部107により、使用者は中間アウタハウジング領域102b(グリップ領域)を容易に把持することができる。
【0031】
図1に示す通り短尺部107には、使用者によって操作されるスライドスイッチ108が配置される。スライドスイッチ108およびバッテリ装着部109は、コントローラ180と電気的に接続される。したがって、スライドスイッチ108を操作することで、ブラシレスモータ115のオンまたはオフが切り換えられる。コントローラ180はブラシレスモータ115に設けられた複数のコイルを制御するためのスイッチング素子、中央演算処理装置(CPU)、コンデンサなどを基板に配置したモジュールとして構成されるとともに、スライドスイッチ108の操作に基づきブラシレスモータ115の駆動制御を行う。コントローラ180には、電源回路、比較回路、電流制御回路、ロジック回路、パワー回路等といった各種の駆動制御回路が包含される。このブラシレスモータ115が本発明に係る「ブラシレスモータ」の一例であり、コントローラ180が本発明に係る「コントローラ」の一例である。
【0032】
図2、
図3、
図4、
図5および
図6にはそれぞれ本体ハウジング101に係る構造の一部が示される。
図3および
図4はインナハウジング104と介在部材103の構造を示す斜視図、
図5は
図2のII−II線断面図、
図6は
図1のIII−III線断面図である。
図1、
図5および
図6に示す通り、アウタハウジング102は上側に配置される第1アウタハウジング102Aと、下側に配置される第2アウタハウジング102Bとを主体として構成される。第1アウタハウジング102Aと第2アウタハウジング102Bはそれぞれ合成樹脂により構成される。
図2、
図3、
図4、
図5および
図6には、アウタハウジング102と一体化される介在部材103が示される。特に、介在部材103の全体的な構成は
図3および
図4に示される。介在部材103は合成樹脂により構成される。
【0033】
図2、
図5および
図6に示す通り、介在部材103は横方向に離間して2つ設けられている。
図5に示す通り介在部材103は、固定部材103dによって第1アウタハウジング102Aおよび第2アウタハウジング102Bと一体化される。固定部材103dはネジにより構成される。
図3および
図4に示す通り介在部材103は、上下方向に延在する前方介在部材領域103aおよび後方介在部材領域103cと、当該前方介在部材領域103aと後方介在部材領域103cとの間に配置される中間介在部材領域103bとを有する。
図6に示す通り前方介在部材領域103aには、内側に突出する複数の凸部103a1が構成される。
【0034】
図3および
図4に示す通りインナハウジング104は、駆動機構ハウジング105と、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第3インナハウジング104Cと、第4インナハウジング104Dとを一体化することにより構成される。駆動機構ハウジング105は金属により構成され、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第3インナハウジング104Cと、第4インナハウジング104Dはそれぞれ合成樹脂により構成される。
図1に示す通り、駆動機構ハウジング105は、ブラシレスモータ115の出力によりブレード145を駆動する駆動機構120を収容する。
【0035】
図7は
図2のIV−IV線断面図である。
図7に示す通り、第1インナハウジング104Aと第2インナハウジング104Bはブラシレスモータ115を収容するとともに、固定部材104dによって駆動機構ハウジング105に対して一体化される。固定部材104dはネジにより構成される。前方インナハウジング領域104aは、駆動機構ハウジング105と、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bとを主体として構成される。
【0036】
図1に示す通り、中間インナハウジング領域104bと後方インナハウジング領域104cは中空状に構成されている。このため、中間インナハウジング領域104bの内部には空間部が構成される。この空間部が本発明に係る「空間部」の一例である。
図2、
図3および
図4に示す通り、中間インナハウジング領域104bと後方インナハウジング領域104cは第3インナハウジング104Cと第4インナハウジング104Dとを主体として構成される。第3インナハウジング104Cと第4インナハウジング104Dは横方向に隣接して並べられるとともに、固定部材104fにより一体化される。固定部材104fはネジにより構成される。
図1および
図7に示される固定部材104eにより、第3インナハウジング104Cと駆動機構ハウジング105とが一体化される。固定部材104eはネジにより構成される。また
図1に示す通り、第2インナハウジング104Bの後端部と、第3インナハウジング104Cおよび第4インナハウジング104Dの前端部とが当接される。当該構成によって、駆動機構ハウジング105と、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第3インナハウジング104Cと、第4インナハウジング104Dとは一体化される。
【0037】
図1および
図2に示す通り、第3インナハウジング104Cと第4インナハウジング104Dの後方には拡径領域が構成される。当該拡径領域は後方インナハウジング領域104cを構成する。後方インナハウジング領域104cにはコントローラ180が配置されるとともに、バッテリ190を装着するためのバッテリ装着部109が設けられる。バッテリ装着部109は、バッテリ190の給電端子と電気的に接続される受電端子が設けられる。またバッテリ装着部109は、バッテリ190を上下方向にスライド移動することにより当該バッテリ190を着脱可能とするよう構成される。なお
図1に示す通りコントローラ180は、バッテリ190をバッテリ装着部109に装着する際のスライド移動方向(上下方向)に延在するよう構成される。当該構成によって、前後方向における後方本体ハウジング領域101cの短尺化を図ることができる。
【0038】
図2、
図3および
図4に示す通り、後方インナハウジング領域104cには吸気口104c1が設けられる。なお、吸気口104c1は第3インナハウジング104Cと第4インナハウジング104Dの双方に設けられる。
図3および
図4に示す通り、第2インナハウジング104Bには排気口104a1が設けられる。また、中間インナハウジング領域104bの内部空間(空間部)は当該吸気口104c1と排気口104a1とを連続するエア通路119を構成する。当該構成によって、ブラシレスモータ115の出力軸部115aに取り付けられた冷却ファン118(
図1参照)の回転駆動により流動されたエアが、吸気口104c1から吸気されてエア通路119を経由して排気口104a1から排出されることで、一連の冷却エアの流路が確立され、コントローラ180とブラシレスモータ115を効率的に冷却することができる。なお、かかる冷却エアの流路において、コントローラ180は、吸気口104c1から吸入されたエアの流入直下領域に設けられることで冷却効率アップが図られている。この吸気口104c1が本発明に係る「吸気口」の一例であり、排気口104a1が本発明に係る「排気口」の一例であり、冷却ファン118が本発明に係る「冷却ファン」の一例であり、エア通路119が本発明に係る「エア通路」の一例である。
なお
図1に示す通り、後方アウタハウジング領域102cと後方インナハウジング領域104cとの間には間隙が構成されており、当該間隙が本体吸気口101dを構成する。これによって、冷却ファン118の回転駆動により流動したエアを本体吸気口101dから吸気口104c1へと導くことができる。
【0039】
またエア通路119には、ブラシレスモータ115とコントローラ180とを電気的に接続する接続部(図示省略)が配置される。当該接続部は、給電ケーブルと信号伝達ケーブルにより構成される。エア通路119に接続部を配置することにより、本体ハウジング101の内部空間を効率的に使用することができる。この接続部が本発明に係る「接続部」の一例である。
【0040】
(弾性部材)
アウタハウジング102とインナハウジング104とは弾性部材により連結される。これにより、インナハウジング104の振動がアウタハウジング102へ伝達することを抑制することができる。この弾性部材が本発明に係る「弾性部材」の一例である。弾性部材は、前方弾性部材110aと、中間弾性部材110bと、後方弾性部材110cとにより構成される。
【0041】
図6に示す通り、前方介在部材領域103aの凸部103a1と、駆動機構ハウジング105との間には4つの前方弾性部材110aが配置される。4つの前方弾性部材110aは、上下方向に離間されて配置される上下配置グループと、横方向に離間して配置される横方向グループとを構成する。上述した通り、駆動機構ハウジング105はインナハウジング104を構成し、介在部材103はアウタハウジング102と一体化されているため、前方弾性部材110aによって前方アウタハウジング領域102aと前方インナハウジング領域104aとが連結される。前方弾性部材110aはゴム製の弾性要素によって構成され、凸部103a1を被覆するよう配置される。また駆動機構ハウジング105には、前方弾性部材110aを備える凸部103a1が配置される凹部を有する。当該構成によって前方弾性部材110aは、前方インナハウジング領域104aと前方アウタハウジング領域102aにおける前後方向と、上下方向と、横方向に介在される。このため、前方インナハウジング領域104aに発生する振動が、全方向について前方アウタハウジング領域102aに伝達することを効果的に抑制することができる。
【0042】
図3、
図4、
図8および
図9に示す通り、後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cとの間には4つの後方弾性部材110cが配置される。なお、
図8は
図1におけるV−V線断面図であり、
図9は
図1におけるVI−VI線断面図である。4つの後方弾性部材110cは、上下方向に離間されて配置される上下配置グループと、横方向に離間して配置される横方向グループとを構成する。後方弾性部材110cはゴム製の弾性要素により構成される。
【0043】
図3、
図8および
図9に示す通り上下配置グループにおける上側の後方弾性部材110cは、後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cとの間の空間に配置される。なお当該空間の一部を規定する構成として、後方アウタハウジング領域102cには凸部102c1が構成される。当該上側の後方弾性部材110cは、前後方向と、上下方向と、横方向に延在する構成とされている。
また、
図4、
図9および
図10に示す通り上下配置グループにおける下側の後方弾性部材110cは、後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cとの間における空間に配置される。なお当該空間の一部を規定する構成として、後方アウタハウジング領域102cには凸部102c2が構成される。当該下側の後方弾性部材110cは、前後方向と、上下方向と、横方向に延在する構成とされている。
当該構成によって後方弾性部材110cは、後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cにおける前後方向と、上下方向と、横方向に介在される。このため、後方インナハウジング領域104cに発生する振動が、全方向について後方アウタハウジング領域102cに伝達することを効果的に抑制することができる。
【0044】
なお他の構成として、後方弾性部材110cは、後方インナハウジング領域104cと中間インナハウジング領域104bの境界と、後方アウタハウジング領域102cと中間アウタハウジング領域102bの間に配置することもできる。さらに後方弾性部材110cは、中間インナハウジング領域104bと中間アウタハウジング領域102bとの間に配置することができる。
【0045】
図2、
図3および
図4に示される中間インナハウジング領域104bは、可撓性を有する合成樹脂により弾性を有するよう構成されている。このため、中間インナハウジング領域104bは中間弾性部材110bを構成する。中間弾性部材110bは、前後方向に延在するとともに当該延在軸周りに変形可能である。このため、前方インナハウジング領域104aに発生する振動が後方インナハウジング領域104cに伝達することを効果的に抑制することができる。
【0046】
(駆動機構)
図1、
図11、
図12および
図13に基づき駆動機構120の構成を説明する。なお、
図11は駆動機構120を示す拡大断面図、
図12は
図1のVIII−VIII線断面図、
図13は
図1のIX−IX線断面図である。
図1および
図11に示す通り、駆動機構120は、偏心軸部121と、駆動ベアリング122と、被駆動アーム123と、スピンドル124とを主体として構成される。このスピンドル124が本発明に係る「スピンドル」の一例である。なお、スピンドル124は円筒状に構成されており、当該スピンドル124内にクランプシャフト127が着脱自在に配置される。また振動工具100は、振動工具100に対するクランプシャフト127のロックおよびロック解除を行うロック機構130と、当該ロック機構130を使用者が手動操作するためのロック操作機構150を有する。
【0047】
図11に示す通り駆動機構ハウジング105は、第1駆動機構ハウジング105Aと、第2駆動機構ハウジング105Bとを有し、当該第1駆動機構ハウジング105Aと第2駆動機構ハウジング105Bとの間に、駆動機構120と、ロック機構130と、ロック操作機構150とが配置される。第1駆動機構ハウジング105Aと第2駆動機構ハウジング105Bは固定部材105aにより一体化される。固定部材105aはネジにより構成される。
【0048】
図11に示す通りスピンドル124の回転軸方向は、ブラシレスモータ115の出力軸部115aと平行とされる。出力軸部115aの先端に取り付けられた偏心軸部121は、上側のベアリング121bと下側のベアリング121cによって回転可能に支持されている。このベアリング121bと121cは、駆動機構ハウジング105に保持される。
【0049】
図11および
図12に示す通り被駆動アーム123は、偏心軸部121の偏心部121aに取り付けられた駆動ベアリング122の外周部に当接するよう構成されたアーム部123aと、スピンドル124の所定領域を包囲するとともに当該スピンドル124に固定される固定部123bとを有する。被駆動アーム123とスピンドル124は、ブラシレスモータ115よりも下側に配置される。当該構成によって、上下方向におけるスピンドル124の短尺化を図ることができる。また、当該構成によって、上下方向におけるブレード145と被駆動アーム123の位置を近づけることが可能となる。そのため、被駆動アーム123とブレード145の距離に応じて生じる偶力が低減される。これにより、加工作業時に、被加工材に対するブレード145の作用によって生じる振動が抑制される。
【0050】
図11に示す通りスピンドル124は、クランプシャフト127とともにブレード145を挟持するためのフランジ状の工具保持部126を有する。スピンドル124は、上側のベアリング124aと下側のベアリング124bによって回転可能に支持されている。
【0051】
図11に示されるクランプシャフト127は、スピンドル124に挿入可能とされる略円柱状の部材である。クランプシャフト127の上側には係合溝部127aが、下側にはフランジ状のクランプヘッド127bがそれぞれ設けられる。クランプシャフト127がスピンドル124に挿入された状態にあっては、係合溝部127aがロック機構130に保持され、クランプヘッド127bと工具保持部126の間にブレード145が挟持される。
【0052】
ブラシレスモータ115が駆動されると、出力軸部115aの回転によって偏心軸部121の偏心部121aと駆動ベアリング122がモータ回転軸方向の周りを回転移動する。これにより被駆動アーム123がスピンドル124の回転軸を中心として円弧状に往復駆動される。その結果、スピンドル124とクランプシャフト127に挟持されたブレード145が円弧状に往復駆動され、所定の加工作業(例えば、切断等)が遂行可能となる。
【0053】
(ロック機構)
図11に示されるロック機構130はクランプシャフト127を保持する機構である。
図11に示す通りロック機構130は、クランプ部材131、カラー部材135、第1コイルスプリング134、蓋部材137、ベアリング135bを主体として構成されており、これらの部品は、ロック機構アセンブリを構成する。また、ロック機構130はクランプシャフト127を下側から上側へと付勢する付勢機構140を有する。付勢機構140は、支持部材141と第2コイルスプリング142を主体として構成される。
【0054】
図11に示す通り支持部材141は、クランプシャフト127を挿通する中空状の略円筒部材であり、ベアリング124aにより回転可能に支持されている。ベアリング124aは、スピンドル124と支持部材141をともに支持するよう構成される。当該構成によって、ベアリングの部品点数削減を図るとともに、上下方向における短尺化を図ることが可能となる。第2コイルスプリング142は支持部材141に挿通される。支持部材141の下側は第2コイルスプリング142の下側端部が当接されるようフランジ状に構成される。また、支持部材141の上側端部はクランプ部材131がブレード145を交換する場合の位置(解除位置)に置かれた状態において、クランプ部材131を支持するよう構成される。
【0055】
図11に示す通りロック機構130は、スピンドル124の回転軸方向において、支持部材141の上側の端部と、第1駆動機構ハウジング105Aとの間に配置される。ロック機構130とスピンドル124がそれぞれ独立した構成を有するとともに離間して配置されるため、ロック機構130の設計をスピンドル124に依存することなく行うことが可能となる。
【0056】
図11に示す通りクランプ部材131は、クランプシャフト127の径方向において当該クランプシャフト127の係合溝部127aを挟持する一対の部材で構成されている。それぞれのクランプ部材131は、クランプシャフト127の径方向に移動可能に構成されている。さらにクランプ部材131におけるクランプシャフト127と対向する内面領域には、係合溝部127aと係合可能な複数の凸部が構成される。さらにクランプ部材131は、上下方向に対して傾斜するクランプ部材傾斜部131aを有する。
図11に示す通り、当該クランプ部材傾斜部131aは2か所設けられている。
【0057】
図11に示す通り、クランプ部材131と蓋部材137との間には第1コイルスプリング134がそれぞれのクランプ部材131に対して配置される。第1コイルスプリング134は、クランプ部材131を下側に向かって付勢することによってクランプ部材131の姿勢を安定させる。
図11に示されるカラー部材135は、クランプ部材131によるクランプシャフト127の挟持状態を制御するための部材である。カラー部材135は、クランプ部材131が配置されるとともに、クランプシャフト127を挿通するための孔部を有する。カラー部材135の外側領域には、カラー部材135を回転可能に支持するためのベアリング135bが配置される。ベアリング135bは、第2駆動機構ハウジング105Bに対し摺動可能に構成される。
当該構成によって、ロック機構アセンブリがスピンドル124の回転軸方向において移動可能とされる。カラー部材135は、スピンドル124の回転軸方向に対して傾斜するカラー部材傾斜部135aを有する。なお、カラー部材傾斜部135aとクランプ部材傾斜部131aとは互いに摺接するよう構成されるため、カラー部材傾斜部135aはクランプ部材傾斜部131aに対応して2か所設けられる。
【0058】
図11に示す通り、カラー部材135が第2コイルスプリング142に付勢されるとともに、クランプ部材131が第1コイルスプリング134に付勢されて、カラー部材傾斜部135aがクランプ部材傾斜部131aに当接する。これによりクランプ部材131は、クランプシャフト127の径方向内側に向かって移動される。その結果、クランプ部材131の凸部とクランプシャフト127の係合溝部127aが係合した状態で、2つのクランプ部材131がクランプシャフト127を挟持する。クランプシャフト127は、クランプ部材131に挟持された状態で、第2コイルスプリング142によって上側に付勢される。これにより、クランプシャフト127のクランプヘッド127bとスピンドル124の工具保持部126の間にブレード145が挟持される。
【0059】
(ロック操作機構)
図11および
図13に示されるロック操作機構150は、ロック機構130を操作するよう構成される。より具体的には、ロック操作機構150は、カラー部材135を上下方向に移動させるよう構成される。カラー部材135が上下方向に移動されることで、クランプ部材131とクランプシャフト127の係合と解除とが切り換えられる。
【0060】
図11および
図13に示す通りロック操作機構150は、使用者に操作されるハンドル部151と、当該ハンドル部151と連動する回動軸部151aとを主体として構成される。
図13に示す通り回動軸部151aは、蓋部材137と第1駆動機構ハウジング105Aとの間において駆動機構ハウジング105を貫通して配置される。回動軸部151aの両端部には、カラー部材135に当接可能に構成された一対のカム部151bが設けられる。一対のカム部151bの間には偏心軸部151cが設けられる。
【0061】
図11および
図13はブレード145が振動工具100に装着された状態を示す。当該状態にあっては、カム部151bがカラー部材135に当接しないよう構成される。当該状態のカラー部材135は、第2コイルスプリング142によって上側に付勢されるため、カラー部材傾斜部135aとクランプ部材傾斜部131aが当接する。これにより、クランプ部材131がクランプシャフト127に向かって移動され、2つのクランプ部材131によってクランプシャフト127が挟持される。また偏心軸部151cは、第1駆動機構ハウジング105Aから離間した位置に置かれる。また支持部材141の上端部はクランプ部材131と非接触状態とされる。
上述した通り、当該状態におけるクランプシャフト127の位置はブレード145を保持する保持位置を規定し、クランプ部材131の位置はクランプシャフト127と係合する係合位置を規定し、カラー部材135の位置はクランプ部材131を係合位置に維持する維持位置を規定する。
【0062】
一方、ブレード145を取り外す場合には、使用者がハンドル部151を回動することによって回動軸部151aが回動される。当該ハンドル部151の回動状態にあっては、カム部151bがカラー部材135に当接し、第2コイルスプリング142の付勢力に抗してカラー部材135を下側に移動させる。この結果、支持部材141の上端部がクランプ部材131と当接し、クランプ部材131がカラー部材135に対して相対的に移動される。
【0063】
クランプ部材131がカラー部材135に対して相対的に上側へ移動されることにより、クランプ部材傾斜部131aとカラー部材傾斜部135aの当接が解除され、クランプ部材131がクランプシャフト127から離間する方向へ移動可能となる。すなわち、クランプ部材131によるクランプシャフト127のクランプ力が減少する。この状態で、クランプシャフト127を下方に引き抜くことで、クランプシャフト127がスピンドル124から取り外される。クランプシャフト127の挟持が解除されることで、ブレード145の挟持が解除される。これにより、先端工具としてのブレード145を交換することができる。
当該状態におけるカラー部材135の位置はクランプ部材131の解除位置への移動を許容する許容位置を規定し、クランプ部材131の位置はクランプシャフト127との係合を解除する解除位置を規定し、クランプシャフト127の位置はブレード145を開放する開放位置を規定する。
なお、偏心軸部151cは、第1駆動機構ハウジング105Aと当接する位置に置かれる。
【0064】
(加工作業に係る動作)
次に
図1、
図2および
図11に基づき、加工作業を行う場合の振動工具100の動作を説明する。使用者は、中間アウタハウジング領域102bの短尺部107を把持するとともにスライドスイッチ108をオンに切り替える。これによって、コントローラ180がブラシレスモータ115を回転駆動することに伴い、駆動ベアリング122が偏心軸部121とともに回転される。この結果、駆動ベアリング122が被駆動アーム123を駆動することにより、スピンドル124とともにブレード145が回転軸部を中心として往復回動を行う。当該状態において、使用者がブレード145を被加工材に当接させることにより、加工作業を行うことが可能となる。
【0065】
加工作業においては、後方インナハウジング領域104cにコントローラ180が配置され、バッテリ190が装着されている。これによって、インナハウジング104の慣性モーメントが増加されるため、インナハウジング104の振動を低減することができる。さらに、バッテリ190の給電端子とバッテリ装着部109の受電端子とが短時間の間に接触と非接触を繰り返して誤動作を引き起こす現象や、当該現象の進行に伴い給電端子と受電端子が溶着する現象の発生を防止することができる。
また、前方弾性部材110aが前方インナハウジング領域104aと前方アウタハウジング領域102aとを連結し、中間弾性部材110bが前方インナハウジング領域104aと後方インナハウジング領域104cとを連結し、後方弾性部材110cが後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cとを連結するため、前方インナハウジング領域104aに発生した振動がアウタハウジング102に伝達することを抑制することができる。
よって使用者は、制振が図られた状態の振動工具100により加工作業を遂行することが可能となる。
【0066】
また、ブラシレスモータ115の回転駆動に伴い冷却ファン118が回転駆動される。これに伴い、本体吸気口101dから流入されたエアが吸気口104c1からインナハウジング104内に取り込まれ、エア通路119を介して排気口104a1から排出される。このエアの移動に伴い、吸気口104c1の直下に配置されたコントローラ180と、ブラシレスモータ115とが冷却される。
【0067】
(第2実施形態)
本発明の第2実施形態に係る振動工具200につき、
図14〜および
図17に基づき説明する。第2実施形態に係る振動工具200は、第1実施形態に係る振動工具100と比してインナハウジング104および中間弾性部材の構成が異なる。
【0068】
(インナハウジング)
図14、
図15および
図16に示す通り振動工具200のインナハウジング104は、駆動機構ハウジング105と、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第5インナハウジング104Eと、第6インナハウジング104Fとにより構成される。
図15は
図14のX−X線断面図であり、
図16は
図14のXI−XI線断面図である。
第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第5インナハウジング104Eと、第6インナハウジング104Fとはそれぞれ合成樹脂により構成される。中間インナハウジング領域104bは第5インナハウジング104Eを主体として構成され、後方インナハウジング領域104cは第6インナハウジング104Fを主体として構成される。
【0069】
図14に示される固定部材104eにより、第5インナハウジング104Eと駆動機構ハウジング105とが一体化される。また、第2インナハウジング104Bの後端部と、第5インナハウジング104Eの前端部とが当接される。当該構成によって、駆動機構ハウジング105と、第1インナハウジング104Aと、第2インナハウジング104Bと、第5インナハウジング104Eは一体化される。
図14および
図15に示す通り、第6インナハウジング104Fの後方には拡径領域が構成される。当該拡径領域にはコントローラ180が配置されるとともに、バッテリ装着部109が設けられる。
【0070】
図16に示す通り、後方インナハウジング領域104cには吸気口104c1が設けられる。また、前方インナハウジング領域104aには排気口104a1が設けられる。また
図14に示す通り、中間アウタハウジング領域102bと中間インナハウジング領域104bとの間の空間部はエア通路119を構成する。
図14および
図15に示す通り、後方アウタハウジング領域102cと後方インナハウジング領域104cとの間には本体吸気口101dが構成される。
当該構成によって、冷却ファン118の回転駆動により流動したエアは本体吸気口101dから取り込まれ、吸気口104c1、コントローラ180、エア通路119およびブラシレスモータ115を経由して排気口104a1から排出される。これによって、コントローラ180とブラシレスモータ115は効率的に冷却される。なおエア通路119には、ブラシレスモータ115とコントローラ180とを電気的に接続する接続部が配置される。
【0071】
(弾性部材)
上述した振動工具100と同様に振動工具200においては、前方インナハウジング領域104aと前方アウタハウジング領域102aとは前方弾性部材110aにより連結される。また
図17に示す通り第6インナハウジング104Fと後方アウタハウジング領域102cとは後方弾性部材110cにより連結される。
【0072】
図14、
図15および
図17に示される通り、第5インナハウジング104Eと第6インナハウジング104Fとの間にはゴム製の弾性要素による中間弾性部材110dが配置される。中間弾性部材110dは、円筒状に構成されたゴム製の弾性要素を二つ設けることにより構成される。
図14に示される通り、中間弾性部材110dの内部には第5インナハウジング104Eの後端部分が挿通され、中間弾性部材110dの外側は第6インナハウジング104Fに構成された円筒状の弾性部材配置部に当接される。当該構成により中間弾性部材110dは、第5インナハウジング104Eと第6インナハウジング104Fの双方に密接し、当該第5インナハウジング104Eと第6インナハウジング104Fとを一体化する。中間弾性部材110dによって、前方インナハウジング領域104aに発生する振動が、全ての方向について後方インナハウジング領域104cに伝達することを効果的に抑制することができる。
【0073】
(加工作業に係る動作)
振動工具200は振動工具100と同様に、
図14に示されるブラシレスモータ115、駆動機構120によりブレード145を往復回動し、加工作業を行うことができる。
加工作業においては、前方弾性部材110aが前方インナハウジング領域104aと前方アウタハウジング領域102aとを連結し、中間弾性部材110dが前方インナハウジング領域104aと後方インナハウジング領域104cとを連結し、後方弾性部材110cが後方インナハウジング領域104cと後方アウタハウジング領域102cとを連結するため、前方インナハウジング領域104aに発生した振動がアウタハウジング102に伝達することを抑制することができる。
よって使用者は、制振が図られた状態の振動工具200により加工作業を遂行することが可能となる。
【0074】
また、ブラシレスモータ115の回転駆動に伴い冷却ファン118が回転駆動される。これに伴い、本体吸気口101dから流入されたエアが吸気口104c1、エア通路119および排気口104a1を移動することにより、コントローラ180と、ブラシレスモータ115とが冷却される。
【0075】
以上においては、振動工具100、200を用いて説明したが、作業工具は電動式振動工具には限られない。例えば、作業工具として、グラインダや丸鋸のように先端工具が回転する作業工具にも本発明を適用してもよい。また、前方弾性部材110a、中間弾性部材110b(110d)、後方弾性部材110cは任意の数にて設定することができる。
【0076】
また本実施形態では、バッテリ190を電源として駆動するブラシレスモータ115が例示されているが、振動工具100、200は、バッテリ190に代えて外部電源を利用可能に構成することができる。具体的には後方アウタハウジング領域102cに、外部電源に接続可能、且つ、コントローラ180に電気的に接続される電源ケーブルを接続することができる。ブラシレスモータ115が直流モータの場合には、コントローラ180は、外部電源から供給される交流電流を直流電流に変換するコンバータとしての機能を有するものとして構成することができる。一方、ブラシレスモータ115として、交流モータが採用されてもよい。この場合、コントローラ180がコンバータとしての機能を有する必要はない。
【0077】
上記発明の趣旨に鑑み、本発明に係る作業工具に関しては、下記の態様が構成可能である。なお、各態様は、単独で、あるいは互いに組み合わされて用いられるだけでなく、請求項に記載された発明と組み合わされて用いられる。
(態様1)
アウタハウジングの後端部とハウジング(すなわちインナハウジング)の後端部との間に本体吸気口が構成される。
(態様2)
さらにスピンドルの回動軸延在方向を上下方向、前後方向および上下方向と交差する方向を横方向と定義した場合に、前方弾性部材は、横方向に離間して配置された複数の弾性要素により構成される。
(態様3)
後方弾性部材は、前記上下方向に離間して配置された複数の弾性要素により構成される。
【0078】
(本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係)
本実施形態の各構成要素と本発明の各構成要素の対応関係を以下の通り示す。なお、本実施形態は、本発明を実施するための形態の一例を示すものであり、本発明は、本実施形態の構成に限定されるものではない。
振動工具100または振動工具200は本発明に係る「作業工具」の一例である。ブレード145は本発明に係る「先端工具」の一例である。アウタハウジング102は本発明に係る「アウタハウジング」の一例である。インナハウジング104は本発明に係る「ハウジング」ないし「インナハウジング」の一例である。前方本体ハウジング領域101a、104aは本発明に係る「前方ハウジング領域」の一例である。後方本体ハウジング領域101c、104cは本発明に係る「後方ハウジング領域」の一例である。中間本体ハウジング領域101b、104bは本発明に係る「中間ハウジング領域」の一例である。ブラシレスモータ115は本発明に係る「ブラシレスモータ」の一例である。コントローラ180は本発明に係る「コントローラ」の一例である。吸気口104c1は本発明に係る「吸気口」の一例である。排気口104a1は本発明に係る「排気口」の一例である。冷却ファン118は本発明に係る「冷却ファン」の一例である。エア通路119は本発明に係る「エア通路」の一例である。スピンドル124は本発明に係る「スピンドル」の一例である。