【0024】
本実施形態に係るコークスの製造方法は、
複数種の単味炭を配合して得られる装入炭を乾留することによりコークスを製造するコークスの製造方法であって、
所定の目開きの篩で各前記単味炭を篩分けする工程A、
前記工程Aにより篩分けされた所定粒度以下のフラクションの全膨張率を、ジラトメーターにより測定する工程B、
粉砕効果を示す値Yを、下記式(1)により算出する工程C、
Y=a×X
1+b×X
2+c・・・・・・・式(1)
(ただし、X
1は、ギーセラー最高流動度(ddpm)であり、X
2は、所定粒度以下のフラクションの全膨張率であり、a、b及びcは定数である。)
少なくとも前記値Yの一番大きい単味炭を決定する工程D、及び、
少なくとも前記値Yが一番大きいと決定された単味炭を粉砕する工程E
を少なくとも含む。
【実施例】
【0036】
以下、本発明に関し、実施例を用いて詳細に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0037】
<実測粉砕効果と所定粒度以下のフラクションの全膨張率との相関性>
まず、表1に示す4種類の銘柄の単味炭を準備した。
表1には、これらの単味炭の石炭性状(VM、Ro
、MF、TI、全膨張率、−3mm全膨張率、−1.5mm全膨張率、−0.5mm全膨張率)について、示している。表1中、VM、Ro
、MF、TI、全膨張率、−3mm全膨張率、−1.5mm全膨張率、−0.5mm全膨張率は、下記を意味する。
VM:空気との接触を断って、既定の条件のもとで試料を加熱したときの、質量減少率から水分を差引いた値(JIS M 8812に従って測定できる。)
Ro:ビトリニット(主として植物の木質部に由来する微細組織)の反射率測定において、1個の研磨資料の50点以上の最大反射率の平均値。原料石炭の石炭化度を示すパラメーター。)
MF:ギーセラー最高流動度(ギーセラ−プラストメーターを使用する試験(JISM8801にその詳細が規定されている石炭の加熱軟化溶融特性試験)において回転翼が最高回転数を示す値の対数値。原料石炭の粘結性を代表する指標。)
TI:イナート組織全量の石炭全体に対する体積割合(JIS M 8816に従って測定できる。)
全膨張率:篩分けしていない状態の単味炭の全膨張率
−3mm全膨張率:篩分けしていない状態の単味炭を目開き3mmの篩で篩分けした後の、粒度3mm以下のフラクションの全膨張率
−1.5mm全膨張率:篩分けしていない状態の単味炭を目開き1.5mmの篩で篩分けした後の、粒度1.5mm以下のフラクションの全膨張率
−0.5mm全膨張率:篩分けしていない状態の単味炭を目開き0.5mmの篩で篩分けした後の、粒度0.5mm以下のフラクションの全膨張率
上記全膨張率、−3mm全膨張率、−1.5mm全膨張率、及び、−0.5mm全膨張率は、いずれも、JIS M8801に記載の膨張性測定方法(ジラトメーター法)により測定される収縮率及び膨張率の和(Total Dilatation)である。
【0038】
【表1】
【0039】
<実測粉砕効果と−0.5mm全膨張率との相関性>
(製造例1〜製造例4)
ベースとなる配合炭に、表2の「配合率」に示す配合率でA炭〜D炭のいずれかが配合された評価用配合炭を作製した。ベースとなる配合炭と、評価対象の炭(A炭〜D炭)との合計が100%となるように配合した。例えば、製造例1では、ベースとなる配合炭80%に対して、A炭を20%配合して評価用配合炭とした。
配合する際には、粉砕粒度が3.0mm以下のものが含まれる割合を、表2の「3.0mm以下割合」に示す割合となるように、ハンマーミル、ジョークラッシャーあるいはコーヒーミルで粉砕した上で、配合した。
具体的には、各製造例において、それぞれ評価石炭A〜Dの粉砕粒度を3.0mm以下が約80%となるものと、100%となるものとの2水準に粉砕した。
例えば、製造例1において製造例1−Aでは、評価石炭Aの粉砕粒度を、3.0mm以下が82.6%(A炭全体を100%としたときの3.0mm以下のものの割合が82.6%)となるようにする一方、製造例1−Bでは、100%とした。
【0040】
評価用配合炭を作成後、水分を7.5%±0.2%に調整した。
【0041】
次に、水分調整した試料をL:235mm×W:300mm×H:235mmの缶容器に充填密度735dry−kg/m
3で充填した。
【0042】
次に、乾留温度1,000℃で約19時間乾留してコークスを得た。
【0043】
[ドラム強度試験]
得られたコークスをシャッター試験2回実施後、ドラム試験機で150回転させ、DI
15015を測定した。結果を表2に示す。また、実測粉砕効果も表2に示した。実測粉砕効果は、粒度3.0mm以下の炭1%当たりのDI向上量である。例えば、製造例1では、粒度3.0mm以下の炭が17.4%増加すると(100%−82.6%=17.4%)、DIが0.7向上しているから(85.0−84.3=0.7)、実測粉砕効果は、約0.040となる(0.7/17.4≒0.040)。ここで、実測粉砕効果の値が大きいほど、粉砕による強度向上の効果が大きいことを意味する。そこで、実測粉砕効果の大きい順に、順位をつけた。
【0044】
図1は、上記ドラム強度試験により実際に求めた3.0mm以下割合1%あたりのDI向上幅、すなわち、「実測粉砕効果」と、「−0.5mm全膨張率」との関係を示すグラフである。具体的には、表1の炭A〜炭Dの−0.5mm全膨張率の値を横軸に、表2の実測粉砕効果の値を縦軸として、プロットしたものである。
図1から分かるように、実測粉砕効果の値と、−0.5mm全膨張率とはよい相関を示している。
【0045】
<実測粉砕効果と−1.5mm全膨張率との相関性>
図2は、上記ドラム強度試験と同様にして実際に求めた3.0mm以下割合1%あたりのDI向上幅、すなわち、「実測粉砕効果」と、「−1.5mm全膨張率」との関係を示すグラフである。
【0046】
<実測粉砕効果と−3.0mm全膨張率との相関>
図3は、上記ドラム強度試験と同様にして実際に求めた3.0mm以下割合1%あたりのDI向上幅、すなわち、「実測粉砕効果」と、「−3.0mm全膨張率」との関係を示すグラフである。
【0047】
図2からわかるように、実測粉砕効果の値と、−1.5mm全膨張率とはよい相関を示している。また、
図3からわかるように、実測粉砕効果の値と、−3.0mm全膨張率とはよい相関を示している。従って、本実施例では、粒度3mm以下のフラクションの全膨張率を用いれば、精度よく粉砕効果の推定値が得られることが分かる。なかでも、本実施例では、実測粉砕効果の値と、−1.5mm全膨張率とがよりよい相関を示していることが分かる。従って、−0.5mm全膨張率を用いれば、より精度よく粉砕効果の推定値が得られることが分かる。
以上より、工程Aにより、目開きが3mmかそれよりも小さい篩を用いることにすれば、精度よく粉砕効果の推定値が得られ、精度よく粉砕する単味炭を決定することが可能となる。
なお、工程Aにおいて使用する篩の目開きは、実測粉砕効果との間で、所望の相関が得られる範囲内において、適宜設定すればよく、3mm以下に限定されない。
【0048】
<−0.5mm全膨張率を採用した場合の推定粉砕効果の算出>
本実施例では、もっとも相関のよかった−0.5mm全膨張率を採用し、推定粉砕効果を算出した。具体的には、推定粉砕効果を示す値Yを、下記式(1)により算出した。結果を表2に示す。
Y=a×X
1+b×X
2+c・・・・・・・式(1)
(ただし、X
1は、ギーセラー最高流動度(ddpm)であり、X
2は、−0.5mmのフラクションの全膨張率であり、a、b及びcは定数である。具体的なa、b及びcは、下記の通りであり、重回帰分析により求めた。)
a:4.48×10
−6
b:0.000834
c:−0.0320
【0049】
【表2】
【0050】
図4は、上記ドラム強度試験により実際に求めた
3.0mm以下割合1%あたりのDI向上幅、すなわち、「実測粉砕効果」と、工程A〜工程Cの手順により算出した石炭A〜Dの値Y「推定粉砕効果」との関係を示すグラフである。
図4からわかるように、実測粉砕効果の値と、本発明に係る推定粉砕効果の値とはよい相関を示している。従って、推定粉砕効果の値、すなわち、値Yの高い単味炭から順に粉砕すれば、装入炭全体の粉砕粒度が細かくなりすぎない態様で、コークス強度を効率的に高強度化することができることがわかる。